【文献】
バイオマスからの気体燃料製造とそのエネルギー利用,株式会社 エヌ・ティー・エス,2007年10月 5日,80-83頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線に沿って延びる筒状に形成される本体部と、前記軸線に沿って延びる筒状に形成されると共に前記本体部の内周面との間に有機廃棄物を炭化させるための間隙を形成する外周面を有する筒部と、前記間隙へ前記有機廃棄物を投入する投入部と、前記間隙から前記有機廃棄物が炭化した炭化物を排出する炭化物排出部と、前記間隙に堆積する前記有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼用空気を供給する第1空気供給部と、前記有機廃棄物の燃焼により生成される燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼用空気を前記本体部の内部へ供給する第2空気供給部と、前記有機廃棄物の燃焼により生成される燃焼ガスを外部へ排出する燃焼ガス排出部と、前記有機廃棄物の燃焼条件を制御する炭化炉制御部とを備える炭化炉において、
前記燃焼ガス排出部から排出される前記燃焼ガスの温度を検出する温度検出工程と、
前記温度検出工程が検出する前記燃焼ガスの温度が第1燃焼ガス温度以上となるまでは前記第2空気供給部が供給する前記2次燃焼用空気の供給量を一定とする工程と、
前記温度検出工程が検出する前記燃焼ガスの温度が前記第1燃焼ガス温度を下回る場合に前記燃焼ガスの温度が前記第1燃焼ガス温度以上となるように前記第2空気供給部が供給する前記2次燃焼用空気の供給量を減少させる工程と、
前記温度検出工程が検出する前記燃焼ガスの温度が第2燃焼ガス温度を上回る場合に前記燃焼ガスの温度が前記第2燃焼ガス温度以下となるように前記第2空気供給部が供給する前記2次燃焼用空気の供給量を増加させる工程と、を備え、
前記第1燃焼ガス温度が900℃〜1200℃であり、
前記第2燃焼ガス温度が前記第1燃焼ガス温度よりも高く、1100℃〜1300℃であることを特徴とする炭化炉の制御方法。
有機廃棄物を部分燃焼させて炭化物と燃焼ガスとを生成する炭化炉と、前記炭化炉が生成した前記炭化物を水蒸気とともに前記燃焼ガスにより加熱して水性ガスを生成する熱分解炉と、前記燃焼ガスにより水を加熱して前記水蒸気を生成する蒸気発生器と、前記蒸気発生器が生成した前記水蒸気を前記燃焼ガスにより過熱するとともに過熱された前記水蒸気を前記熱分解炉へ供給する蒸気過熱器と、前記有機廃棄物を前記燃焼ガスにより乾燥させるとともに乾燥された前記有機廃棄物を前記炭化炉へ供給する乾燥機とを備える水性ガス生成システムにおいて、
前記炭化炉が生成した前記燃焼ガスを前記熱分解炉に供給する第1工程と、
前記熱分解炉から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気過熱器へ供給する第2工程と、
前記蒸気過熱器から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気発生器へ供給する第3工程と、
前記蒸気発生器から排出された前記燃焼ガスを前記乾燥機へ供給する第4工程とを備える水性ガス生成システムの燃焼ガス供給方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の炭化炉には、主として、1)有機廃棄物の部分燃焼により生成する可燃性ガスに含まれる、冷却に伴って凝固して高い粘性を示す液体(「タール」ともいう)となる高分子炭化水素の問題、2)有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の冷却が不十分で、炭化物搬送機構の損傷や排出された炭化物と空気との接触による発火の問題、及び、3)有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の炭化効率の問題、がある。
【0013】
まず、上記高分子炭化水素の問題は、燃焼ガスに高分子炭化水素が多く含まれていると、高分子炭化水素が凝固して炭化炉やその下流側に設置される機器に付着してしまうという問題である。そのため、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスの燃焼効率を高めて高分子炭化水素を減少させることが望ましい。
【0014】
しかしながら、特許文献3に開示される炭化炉は、本体に設けられた空気供給口及び円筒体に設けられた空気供給口から炭化部に向けて空気を供給するものである。そのため、炭化部に向けて供給される空気量を調整すると、それに伴って2次燃焼部に供給される空気量が変動してしまう。2次燃焼部へ供給される空気量が、2次燃焼部で可燃性ガスを燃焼させるのに適した量とならない場合、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを適切に燃焼させることができない。特に、2次燃焼部に過剰な量の空気が供給されてしまうと、2次燃焼部の雰囲気温度が低下し、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスの燃焼効率が悪化してしまう。そして、可燃性ガスの燃焼効率が悪化し、可燃性ガスに高分子炭化水素が多く含まれたままであると炭化炉やその下流側に設置される機器に不具合が発生する可能性がある。
【0015】
次いで、上記発火の問題は、特許文献3に開示された炭化炉において、本体と円筒体との間に形成された領域に投入口から有機廃棄物が連続的に投入される場合、炭化部で生成された炭化物が不燃部で消火されるため、炭化炉から排出される炭化物の温度は一定温度以下に低下するが、例えば、炭化炉の運転を停止させる場合等投入口からの有機廃棄物の投入が停止される場合に生じる、炭化炉から排出される炭化物の温度が十分に低下しないという問題である。すなわち、このような場合、炭化炉から外部へ排出される炭化物の温度が十分に低下しないまま外部へ排出されるため、炭化炉から排出された炭化物を搬送させる機構に過剰な熱が与えられて損傷してしまったり、排出された炭化物が空気に触れることで再度発火してしまうという問題が生じる。これは、本体と円筒体との間に形成された領域に堆積する有機廃棄物の量が徐々に少なくなり、炭化物を消火する不燃部として機能する領域が狭くなってしまうからである。
【0016】
最後に、上記炭化効率の問題は、一般に有機廃棄物の部分燃焼に必要な空気が、炭化炉に設けられる空気供給口から供給されるが、その外部の空気が炭化部の雰囲気温度を低下させることによって生じる有機廃棄物の炭化効率の低下という問題である。例えば、このような問題に対して、特許文献3に開示された炭化炉は、円筒体に設けられた空気供給口から外部の空気を炭化部へ供給するものであるが、円筒体を二重壁構造とした予備加熱室を設けたことを特徴としているが、炭化部へ供給する外部の空気の温度を十分制御することができない場合もあり、炭化効率低下を十分に解消することが困難であった。
【0017】
次に、従来の熱分解炉には、主として、1)外筒と内筒との間の空隙に供給される炭化炉で生成された燃焼ガス及び熱分解炉で生成する水性ガスの外部への流出の問題、及び、2)水性ガスの収率の問題がある。
【0018】
まず、上記燃焼ガスの外部流出の問題は、特許文献4に開示されたように、外筒(本体部)と内筒(反応管)とを有し、内筒の内周側に炭化物とガス化剤とを供給し、外筒と内筒との間の空隙に炭化炉で生成された燃焼ガスを供給するようにした構造では、この空隙に高温の燃焼ガスを供給することにより、内筒の外周面が燃焼ガスによって熱せられ、内筒の内周側における熱分解反応を促進させるため、内筒と外筒の熱膨張の差異によって生じる問題である。
【0019】
特許文献4の
図1に示すように、このような熱分解炉の外筒の内周面は、燃焼ガスで熱されるため、耐久性を考慮して断熱材等を貼り付けることができ、外筒の内周面は燃焼ガスの熱から保護される。しかし、同様に熱せられる内筒は、水性ガスの収率等の観点から、本体部のような断熱材を張り付けることはできず、外筒の熱膨張に比べて大きくなる。しかも、内筒は鉛直方向(長手方向)に長い筒状に形成されているため、熱膨張によって鉛直方向に沿った長さが顕著に変化する。従って、特許文献4に開示されたような熱分解炉では、内筒の上端部が外筒の上面から突出した形状となっているため、内筒が熱膨張すると内筒と外筒の上面が接触する部分から空隙内の燃焼ガスが外部へ流出してしまうという問題がある。更に、内筒の下端部と外筒の下面との接触する部分においても、内筒の下端部が外筒の下面から突出した形状となっているため、同様の問題が生じる。
【0020】
また、水性ガスの収率の問題は、従来の熱分解反応を生じさせるガス化領域が狭いことに起因する収率の低さである。
【0021】
例えば、特許文献4に開示された熱分解炉は、内筒の内部の下端側に蓄熱性突起を設けたことを特徴とするものである。この蓄熱性突起は、その幅射熱によって蓄熱性突起と内筒との間のガス化領域で炭化物の温度分布を速やかに均一化し、炭化物とガス化剤との熱分解反応を行わせることができるため、熱分解ガスの組成比を均一化することができる。しかしながら、特許文献4に開示された熱分解炉のガス化領域でも、十分広いガス化領域が確保されているとはいえず、必ずしも水性ガスの収率が高いものではなかった。
【0022】
そして、特許文献4には、上記炭化炉及び上記熱分解炉の組合せた水性ガス生成システムが提案されている。この水性ガス生成システムは、炭化炉で炭化物と共に生成される燃焼ガスを熱分解炉に導入して熱分解反応の熱源として用い、炭化物のガス化剤として水蒸気を用いるものである。しかしながら、特許文献4には、水からガス化剤となる水蒸気を生成する熱源についての具体的な開示がない。この水蒸気を生成する熱源として専用の熱源を用いる場合、炭化炉と熱分解ガス化炉と熱源とを含むシステム全体の熱効率は十分に高いものではなく改善の余地がある。しかも、上述した、炭化炉及び熱分解炉の課題があるため、純度の高い水性ガスが、効率的に生成することは困難である。
【0023】
特許文献2には、上記熱効率の課題に対し、ガス化剤となる水蒸気の熱源として、炭化炉乃至は熱分解炉から供給される燃焼排ガスを利用し、上記炭化炉及び上記熱分解炉を組合せて生成される水性ガスを用いたバイオマス発電システムが開示されている。しかしながら、上述したように、炭化炉及び熱分解炉の課題があるため、純度の高い水性ガスが、効率的に生成することは困難であり、効率的な発電は困難である。
【0024】
一方、非特許文献2の水素ガス生成システムは、99.9%の水素回収率が約60%を達成しているが、有機廃棄物を高温水蒸気による熱分解反応によってガス化するため、水素ガスと一酸化炭素ガス以外の、低分子炭化水素(メタン、エタン等)、高分子炭化水素(タール)が多く含まれ、これらの分離や改質に要する設備の負担が大きくなる。
【0025】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、要約すると、下記に示すような、炭化炉、熱分解炉、水性ガス生成システム、水素ガス生成システム、及び、発電システムを提供することを目的とするものである。
【0026】
まず、炭化炉に関する本発明は、有機廃棄物の部分燃焼により生成される燃焼ガスに含まれる可燃性ガスの燃焼効率を高めて自装置やその下流側に設置される機器に与える不具合を抑制することが可能な炭化炉、有機廃棄物が燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出させることが可能な炭化炉、及び、有機棄物の燃焼用空気として外部の空気を供給しつつ有機廃棄物の炭化効率を向上させることが可能な炭化炉及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0027】
次いで、熱分解炉に関する本発明は、本体部との間に流通する加熱用ガスによって熱分解反応が内部で行われる反応管が熱膨張する場合に、本体部の上面と反応管の外周面との隙間から加熱用ガスが外部へ流出することを抑制することが可能な熱分解炉、及び、炭化物とガス化剤とが熱分解反応する領域を広げつつ熱分解による吸熱反応により温度が低下する領域が発生することを抑制することが可能な熱分解炉を提供することを目的とする。
【0028】
更に、水性ガス生成システムに関する本発明は、炭化物のガス化剤として用いる水蒸気を生成する専用の熱源を用いずに熱効率を向上させると共に熱分解炉における熱分解反応を促進させることが可能で、しかも、燃焼効率が高く、燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出する、炭化効率の高い炭化炉と、加熱用ガスの外部流出が抑制され、熱分解反応が進行する熱分解炉とを用いた、収率の高い水性ガス生成システム及びその燃焼ガス供給方法を提供することを目的とする。
【0029】
そして、本発明は、上記水性ガス生成システムから製造された水性ガスを用いて、効率的な水素ガス生成システム及び発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、上述した種々の課題を解決するため、以下のような種々の手段を採用した。炭化炉、熱分解炉、水性ガスシステム、水素ガス生成システム、及び、発電システムについて、順次説明する。
【0031】
まず、本発明の炭化炉について説明する。第一に、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスの燃焼効率を高めて高分子炭化水素を減少させることが可能な本発明の一態様に係る炭化炉は、軸線に沿って延びる筒状に形成される本体部と、前記軸線に沿って延びる筒状に形成されると共に前記本体部の内周面との間に有機廃棄物を炭化させるための間隙を形成する外周面を有する筒部と、前記間隙へ前記有機廃棄物を投入する投入部と、
前記間隙に堆積する前記有機廃棄物の燃焼用空気を供給する空気供給部と、前記有機廃棄物の燃焼により生成される燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出部と、前記間隙から前記有機廃棄物が炭化した炭化物を排出する炭化物排出部と、
前記有機廃棄物の燃焼条件を制御する炭化炉制御部とを備え、前記空気供給部が、前記間隙に堆積する前記有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼用空気を供給する第1空気供給部と、前記有機廃棄物の燃焼により生成される燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼用空気を前記本体部の内部へ供給する第2空気供給部と
を備え、
前記本体部が、前記1次燃焼用空気が供給される第1次燃焼領域の雰囲気の温度を検出する第1温度検出部を備え、前記燃焼ガス排出部が、前記燃焼ガス排出部から排出される前記燃焼ガスの温度を検出する
第2温度検出部
を備え、
前記炭化炉制御部が、前記本体部に備えられた前記第1温度検出部が検出した温度と前記燃焼ガス排出部に備えられた前記第2温度検出部が検出した温度に応じて、前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部を制御す
る炭化炉である。前記
炭化炉制御部は、前記温度検出部が検出する前記燃焼ガスの温度が第1燃焼ガス温度以上となるように前記第2空気供給部が供給する前記2次燃焼用空気の供給量を制御することが好ましい。更に、前記
空気供給量制御部は、
前記燃焼ガス排出部に備えられた前記第2温度検出部が検出する温度が第1燃焼ガス温度以上となるまでは前記2次燃焼用空気の供給量を一定とし、前記温度検出部が検出する前記燃焼ガスの温度が前記第1燃焼ガス温度を下回る場合には、前記2次燃焼用空気の供給量を減少させることにより前記燃焼ガスの温度を前記第1燃焼ガス温度以上に上昇させ、前記温度検出部が検出する前記燃焼ガスの温度が前記第2燃焼ガス温度を上回る場合には、前記2次燃焼用空気の供給量を増加させることにより前記燃焼ガスの温度を前記第2燃焼ガス温度以下に低下さ
せ、前記第1燃焼ガス温度が900℃〜1000℃であり、前記第2燃焼ガス温度が1200℃〜1300℃であ
る。
【0032】
上記高分子炭化水素を減少させることが可能な本発明の一態様に係る炭化炉の制御方法は、軸線に沿って延びる筒状に形成される本体部と、前記軸線に沿って延びる筒状に形成されると共に前記本体部の内周面との間に有機廃棄物を炭化させるための間隙を形成する外周面を有する筒部と、前記間隙へ前記有機廃棄物を投入する投入部と、前記間際から前記有機廃棄物が炭化した炭化物を排出する炭化物排出部と、前記間隙に堆積する前記有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼用空気を供給する第1空気供給部と、前記有機廃棄物の燃焼により生成される燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼用空気を前記本体部の内部へ供給する第2空気供給部と、前記燃焼ガスを外部へ排出する燃焼ガス排出部とを備える炭化炉の制御方法であって、前記燃焼ガス排出部から排出される前記燃焼ガスの温度を検出する温度検出工程と、
前記温度検出工程が検出する前記燃焼ガスの温度が第1燃焼ガス温度以上となるまでは前記第2空気供給部が供給する前記2次燃焼用空気の供給量を一定とする工程と、前記温度検出工程が検出する前記燃焼ガスの温度が
前記第1燃焼ガス温度を下回る場合に前記燃焼ガスの温度が前記第1燃焼ガス温度以上となるように前記第2空気供給部が供給する前記2次燃焼用空気の供給量を
減少させる工程と
、前記温度検出工程が検出する前記燃焼ガスの温度が第2燃焼ガス温度を上回る場合に前記燃焼ガスの温度が前記第2燃焼ガス温度以下となるように前記第2空気供給部が供給する前記2次燃焼用空気の供給量を増加させる工程と、を備え
、前記第1燃焼ガス温度が900℃〜1200℃であり、前記第2燃焼ガス温度が前記第1燃焼ガス温度よりも高く、1100℃〜1300℃である。
【0033】
第二に、有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の冷却が不十分で、炭化物搬送機構の損傷や排出された炭化物と空気との接触による発火の問題を解決することができる本発明の一態様の炭化炉は、
前記本体部が、前記間隙の下端側に堆積する前記炭化物の温度を検出する第3温度検出部を備え、前記
炭化炉制御部は、前記
第3温度検出部が検出する前記
炭化物の温度
が所定の炭化物温度よりも低い温度から前記所定の炭化物温度以上となった場合に、前記炭化物排出部が排出する前記炭化物の温度を低下させるように前記炭化物の排出量を減少させる。さらに、前記炭化物排出部は、前記炭化物を排出する排出口と、前記間隙の下端と対向する位置に設けられるとともに前記軸線回りに回転することにより前記間隙の下端から前記排出口へ前記炭化物を導く回転体と、前記回転体を前記軸線回りに回転させる駆動部とを有し、前記炭化炉制御部は、前記第3温度検出部が検出する前記炭化物の温度が前記所定の炭化物温度よりも低い温度から前記所定の炭化物温度以上となった場合に、前記炭化物排出部が排出する前記炭化物の温度を低下させるように前記駆動部が前記回転体を回転させる回転速度を低下させることが好ましい。さらに、前記炭化炉制御部は、前記
第3温度検出部が検出する前記温度が所定温度より低い場合は第1回転速度で前記回転体を回転させるよう前記駆動部を制御し、前記
第3温度検出部が検出する前記温度が前記所定温度以上である場合は前記第1回転速度より低い第2回転速度で前記回転体を回転させるよう前記駆動部を制御することがより更に好ましい。
【0034】
上記炭化物の温度を検出して炭化物の温度を制御する本発明の一態様に係る炭化炉の制御方法は、前記間隙の下端側に堆積する前記炭化物の温度を検出する炭化物温度検出工程と、前記炭化物温度検出工程が検出する前記温度
が所定の炭化物温度よりも低い温度から前記所定の炭化物温度以上となった場合に、前記炭化物排出部が排出する前記炭化物の
温度を低下させるように前記炭化物の排出量を
減少させる制御工程と、を備える。
【0035】
同様に、有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の冷却が不十分で、炭化物搬送機構の損傷や排出された炭化物と空気との接触による発火の問題を解決することができる本発明の一態様に係る炭化炉は、
前記本体部が、前記間隙に堆積する前記有機廃棄物の堆積量を検出する堆積量検出部
を備え、前記
炭化炉制御部は、前記堆積量検出部が検出する前記堆積量
が所定の堆積量よりも多い堆積量から前記所定の堆積量以下となった場合に、前記炭化物排出部が排出する前記炭化物の温度を低下させるように前記炭化物の排出量を減少させる。さらに、前記炭化物排出部は、前記炭化物を外部へ排出する排出口と、前記間隙の下端と対向する位置に設けられるとともに前記軸線回りに回転することにより前記間隙の下端から前記排出口へ前記炭化物を導く回転体と、前記回転体を前記軸線回りに回転させる駆動部とを有し、前記炭化炉制御部は、前記堆積量検出部が検出する前記堆積量が所定の堆積量よりも多い堆積量から前記所定の堆積量以下となった場合に、前記炭化物排出部が排出する前記炭化物の温度を低下させるように前記駆動部が前記回転体を回転させる回転速度を
低下させることがより好まし
い。炭化炉制御部は、前記堆積量検出部が検出する前記堆積量が所定堆積量以上である場合は第1回転速度で前記回転体を回転させるよう前記駆動部を制御し、前記堆積量検出部が検出する前記堆積量が前記所定堆積量以下である場合は前記第1回転速度より低い第2回転速度で前記回転体を回転させるよう前記駆動部を制御することがより更に好ましい。
【0036】
上記有機廃棄物の堆積量を検出して炭化物の温度を制御する本発明の別の一態様に係る炭化炉の制御方法は、軸線に沿って延びる筒状に形成される本体部と、前記軸線に沿って延びる筒状に形成されると共に前記本体部の内周面との間に有機廃棄物を炭化させるための間隙を形成する外周面を有する筒部と、前記間隙へ前記有機廃葉物を投入する投入部と、前記間隙から前記有機廃棄物が炭化した炭化物を排出する炭化物排出部と、前記間隙に堆積する前記有機廃棄物を部分燃焼させる燃焼用空気を供給する空気供給部とを備える炭化炉の制御方法であって、前記間隙に堆積する前記有機廃棄物の堆積量を検出する堆積量検出工程と、前記堆積量検出工程が検出する前記堆積量に応じて前記炭化物排出部が外部へ排出する前記炭化物の排出量を制御する制御工程と、を備える。
【0037】
第三に、有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の炭化効率の問題を解決する本発明の一態様に係る炭化炉は、軸線に沿って延びる筒状に形成される本体部と、前記軸線に沿って延びる筒状に形成されると共に前記本体部の内周面との間に有機廃棄物を炭化させるための間隙を形成する外周面を有する筒部と、前記間隙へ前記有機廃棄物を投入する投入部と、前記間隙から前記有機廃棄物が炭化した炭化物を排出する炭化物排出部と、前記間隙に堆積する前記有機廃棄物に向けて前記有機廃棄物を部分燃焼させる燃焼用空気を供給する空気供給部と、を備え、前記空気供給部は、外部から導入した空気を送風する送風部と、前記送風部により送風された空気を加熱する加熱部と、前記加熱部により加熱された空気を前記間隙へ供給する空気供給口と、を有する炭化炉である。更に、前記間隙の外周側に配置されると共に前記本体部の前記外周面との間に前記軸線回りに延びる閉空間を形成するカバー部を有し、前記送風部は、外部から導入した空気を前記閉空間に送風し、前記加熱部は、前記閉空間に配置されると共に前記送風部により前記閉空間に供給された空気を加熱し、前記空気供給口は、前記閉空間で前記加熱部により加熱された空気を前記間隙へ供給することを特徴とする炭化炉である。
【0038】
このような炭化炉において、前記加熱部は、前記本体部の前記外周面を介して前記間隙の雰囲気に伝熱する伝熱部材を有し、前記伝熱部材は、前記空気供給口よりも下方に配置されており、前記送風部により前記閉空間に供給された空気を加熱する目的で備えられている。そのため、前記送風部は、前記間隙の下方の外周側に位置する前記本体部の前記外周面に向けて外部から導入した空気を送風するものであって、前記空気供給口が配置される位置における前記本体部の前記内周面から前記外周面までの距離よりも、前記伝熱部材が配置される位置における前記本体部の前記内周面から前記外周面までの距離の方が短いことが好ましい。同様の目的で、前記伝熱部材は、前記本体部の前記外周面に接触すると共に前記外周面に沿って前記軸線回りに延びる環状の放熱フィンであって、前記軸線に沿った複数箇所に設けられていることがより好ましく、前記本体部の前記外周面に接触すると共に前記外周面に沿って前記軸線回りに下方から上方へ向けて旋回する螺旋状の流路を形成する放熱フィンであることがより好ましい。
【0039】
次いで、熱分解炉について説明する。第一に、外筒(本体部)と内筒(反応管)との間の空隙に供給される炭化炉で生成された燃焼ガスの外部への流出の問題を解決できる本発明の一態様に係る熱分解炉は、軸線に沿って延びる筒状に形成される本体部(外筒)と、前記軸線に沿って延びる筒状に形成されると共に前記本体部の内周面との間に加熱用ガスを流通させるための加熱用ガス流路を形成する外周面を有し、上端部と下端部がそれぞれ前記本体部の上面と底面から突出した反応管(内筒)と、前記反応管の内部で水性ガスを生成させるために前記反応管の内部へ炭化物とガス化剤とを供給する供給部と、前記反応管の下端部に取り付けられると共に前記反応管の内部で前記炭化物の熱分解反応により生成された水性ガスを外部へ導く水性ガス出口部と、前記本体部の前記上面の下方に前記上面と接するように設けられると共に前記反応管の前記外周面と接触する内周面を有しており、前記本体部の上面からの前記加熱用ガスの流出を遮断する第1シール部と、前記本体部の前記底面の上方に前記底面と接するように設けられると共に前記反応管の前記外周面と接触する内周面を有しており、前記本体部の底面からの前記加熱用ガスの流出を遮断する第2シール部と、を備える熱分解炉である。
【0040】
更に、上記熱分解炉において、水性ガスの流出の可能性がある箇所には、次のような解決手段を設けたことを特徴とする熱分解炉である。すなわち、本発明の一態様に係る熱分解炉は、上記熱分解炉において、更に、前記反応管の下端部と前記水性ガス出口部との取付位置において、前記反応管の前記外周面及び前記水性ガス出口部の外周面のそれぞれと接触する内周面を有しており、前記取付位置からの前記水性ガスの流出を遮断する第3シール部を備える熱分解炉である。
【0041】
そして、本発明の上記熱分解炉の上端部において、前記本体部の前記上面が上板で構成され、前記本体部の側面の上端に第1フランジ部が設けられ、前記上板と前記第1フランジ部とは、前記軸線回りの複数面所で前記上板と前記第1フランジ部との間に第4シール部を挟んだ状態で締結部材によって締結されていてもよい。一方、本発明の上記熱分解炉の下端部において、前記本体部の前記底面が底板で構成され、前記本体部の側面の下端に第2フランジ部が設けられ、前記底板と前記第2フランジ部とは、前記軸線回りの複数箇所で前記底板と前記第2フランジ部との間に第5シール部を挟んだ状態で締結部材によって締結されていてもよい。また、本発明の上記熱分解炉の前記反応管の前記上端部には第3フランジ部が、前記供給部の下端部には第4フランジ部が設けられ、前記第3フランジ部と前記第4フランジ部とは、前記軸線回りの複数筒所で前記第3フランジ部と前記第4フランジ部との間に第6シール部を挟んだ状態で締結部材によって締結されていてもよい。
【0042】
第二に、水性ガスの収率の問題を解決することが可能な本発明の一態様に係る熱分解炉は、軸線に沿って延びる筒状に形成される本体部と、前記軸線に沿って延びる筒状に形成されると共に前記本体部の内周面との間に加熱用ガスを流通させるための加熱用ガス流路を形成する外周面を有する反応管と、前記反応管の上端部に設けられると共に前記反応管の内部で水性ガスを生成させるために前記反応管の内部へ炭化物とガス化剤とを供給する供給部と、前記反応管の下端部に設けられると共に前記反応管の内部で生成された前記水性ガスを外部へ導く水性ガス出口部と、前記本体部の上方に設けられると共に前記加熱用ガス流路へ前記加熱用ガスを供給する加熱用ガス供給部と、前記本体部の下方に設けられると共に前記加熱用ガス流路から前記加熱用ガスを排出する加熱用ガス排出部と、前記反応管の内部に収容されると共に前記上端部から供給される前記炭化物を前記筒状部材の上端側から下端側まで段階的に導いて前記炭化物及び前記ガス化剤の熱分解反応を促進させる熱分解促進機構と、を備える熱分解炉である。
【0043】
前記熱分解促進機構は、前記炭化物を前記反応管の内周面の一端部から他端部に設けられた第1開口部へ導くように傾斜した第1傾斜面を形成する複数の第1傾斜板と、前記第1傾斜板によって前記第1開口部から下方へ落下した前記炭化物を前記他端部から前記一端部に設けられた第2開口部へ導くように傾斜した第2傾斜面を形成する複数の第2傾斜板と、前記軸線に沿って前記第1傾斜板と前記第2傾斜板とが交互に配置されるように、前記複数の第1傾斜板と前記複数の第2傾斜板を保持する保持部とを有し、前記保持部は、前記軸線に沿って延びる棒状部材から成り、前記複数の第1傾斜板及び前記複数の第2傾斜板は、前記棒状部材の前記軸線に沿った複数箇所で前記棒状部材に保持されていることが好ましい。そして、前記熱分解促進機構は、前記筒状部材から着脱可能となっていることがより好ましい。
【0044】
更に、純度の高い水性ガスが、効率的に生成することが可能な本発明の一態様に係る水性ガス生成システムは、有機廃棄物を部分燃焼させて炭化物と燃焼ガスとを生成する炭化炉と、前記炭化炉が生成した前記炭化物を水蒸気と共に前記燃焼ガスにより加熱して水性ガスを生成する熱分解炉と、前記燃焼ガスにより水を加熱して前記水蒸気を生成する蒸気発生器と、前記蒸気発生器が生成した前記水蒸気を前記燃焼ガスにより過熱すると共に加熱された前記水蒸気を前記熱分解炉へ供給する蒸気過熱器と、前記有機廃棄物を前記燃焼ガスにより乾燥させると共に乾燥された前記有機廃棄物を前記炭化炉へ供給する乾操機と、前記炭化炉が生成した前記燃焼ガスを前記熱分解炉へ供給し、前記熱分解炉から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気過熱器へ供給し、前記蒸気過熱器から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気発生器へ供給し、前記蒸気発生器から排出された前記燃焼ガスを前記乾燥機へ供給する燃焼ガス流路と、を備える水性ガス生成システムである。更に好ましくは、前記熱分解炉から排出される未反応の前記炭化物を回収して前記熱分解炉へ再び供給するチャー回収装置を備える水性ガス生成システムである。より更に好ましくは、前記乾燥機から排出される前記燃焼ガスを前記乾燥機から排出される前記燃焼ガスから有害物質を除去して無害化する排ガス冷却洗浄装置へ供給する燃焼ガス流路を備える水性ガス生成システムである。
【0045】
このような水性ガス生成システムにおいて、上述したように、従来の炭化炉や熱分解炉に内在する種々の問題を解決できる手段を講じた、燃焼効率が高く、燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出する、炭化効率の高い炭化炉と、加熱用ガスの外部流出が抑制され、熱分解反応が進行する熱分解炉とを用いることによって、より純度が高い水性ガスをより効率的に生成することが可能となる。
【0046】
そして、上記水性ガス生成システムを稼働させる燃焼ガス供給方法に係る本発明の一態様は、有機廃棄物を部分燃焼させて炭化物と燃焼ガスとを生成する炭化炉と、前記炭化炉が生成した前記炭化物を水蒸気と共に前記燃焼ガスにより加熱して水性ガスを生成する熱分解炉と、前記燃焼ガスより水を加熱して前記水蒸気を生成する蒸気発生器と、前記蒸気発生器が生成した前記水蒸気を前記燃焼ガスにより過熱すると共に過熱された前記水蒸気を前記
熱分解炉へ供給する蒸気過熱器と、前記有機廃棄物を前記燃焼ガスにより乾燥させると共に乾燥された前記有機廃棄物を前記炭化炉へ供給する乾燥機と、を備える水性ガス生成システムの燃焼ガス供給方法であって、前記炭化炉が生成した前記燃焼ガスを前記熱分解炉に供給する第1工程と、前記熱分解炉から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気過熱器へ供給する第2工程と、前記蒸気過熱器から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気発生器へ供給する第3工程と、前記蒸気発生器から排出された前記燃焼ガスを前記乾燥機へ供給する第4工程と、を備える。更に、前記乾燥機から排出された前記燃焼ガスを排ガス冷却洗浄装置へ供給する第5工程を備えることがより好ましい。
【0047】
本発明の水性ガス生成システムで製造された純度の高い水性ガスを利用することによって、効率的に、純度の高い水素ガスを製造すると共に、発電することが可能となる。
【0048】
本発明の一態様に係る水素ガス生成システムは、有機廃棄物を部分燃焼させて炭化物と燃焼ガスとを生成する炭化炉と、前記炭化炉が生成した前記炭化物を水蒸気と共に前記燃焼ガスにより加熱して水性ガスを生成する熱分解炉と、前記燃焼ガスにより水を加熱して前記水蒸気を生成する蒸気発生器と、前記蒸気発生器が生成した前記水蒸気を前記燃焼ガスにより過熱すると共に加熱された前記水蒸気を前記熱分解炉へ供給する蒸気過熱器と、前記有機廃棄物を前記燃焼ガスにより乾燥させると共に乾燥された前記有機廃棄物を前記炭化炉へ供給する乾操機と、前記炭化炉が生成した前記燃焼ガスを前記熱分解炉へ供給し、前記熱分解炉から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気過熱器へ供給し、前記蒸気過熱器から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気発生器へ供給し、前記蒸気発生器から排出された前記燃焼ガスを前記乾燥機へ供給する燃焼ガス流路と、水性ガスに含まれる残渣を除去するサイクロンと、前記熱分解炉で生成された水性ガスから水素を精製する水素精製装置と、を備える水素ガス生成システムである。更に、水性ガス冷却装置と、水性ガスを貯蔵する水性ガスホルダと、を備えることがより好ましい。
【0049】
本発明の一態様に係る発電システムは、有機廃棄物を部分燃焼させて炭化物と燃焼ガスとを生成する炭化炉と、前記炭化炉が生成した前記炭化物を水蒸気と共に前記燃焼ガスにより加熱して水性ガスを生成する熱分解炉と、前記燃焼ガスにより水を加熱して前記水蒸気を生成する蒸気発生器と、前記蒸気発生器が生成した前記水蒸気を前記燃焼ガスにより過熱すると共に加熱された前記水蒸気を前記熱分解炉へ供給する蒸気過熱器と、前記有機廃棄物を前記燃焼ガスにより乾燥させると共に乾燥された前記有機廃棄物を前記炭化炉へ供給する乾操機と、前記炭化炉が生成した前記燃焼ガスを前記熱分解炉へ供給し、前記熱分解炉から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気過熱器へ供給し、前記蒸気過熱器から排出された前記燃焼ガスを前記蒸気発生器へ供給し、前記蒸気発生器から排出された前記燃焼ガスを前記乾燥機へ供給する燃焼ガス流路と、水性ガスに含まれる残渣を除去するサイクロンと、前記熱分解炉で生成された水性ガスを燃料として動作することが可能な発電機と、を備える発電システムである。更に、水性ガス冷却装置と、水性ガスを貯蔵する水性ガスホルダと、を備えることがより好ましい。また、前記発電機は、水性ガスを燃焼させることにより動作するガスエンジンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、次のような効果をもたらすことができる。
【0051】
第一に、有機廃棄物の部分燃焼により生成される燃焼ガスに含まれる可燃性ガスの燃焼効率を高めて自装置やその下流側に設置される機器に与える不具合を抑制することが可能な炭化炉及びその炭化炉の制御方法を提供することができる。
【0052】
第二に、有機廃棄物が燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出させることが可能な炭化炉及びその炭化炉の制御方法を提供することができる。
【0053】
第三に、有機廃棄物の燃焼用空気として外部の空気を供給しつつ有機廃棄物の炭化効率を向上させることが可能な炭化炉を提供することができる。
【0054】
第四に、本体部との間に流通する加熱用ガスによって熱分解反応が内部で行われる反応管が熱膨張する場合に、本体部の上面と反応管の外周面との隙間から加熱用ガスが外部へ流出することを抑制することが可能な熱分解炉を提供することができる。
【0055】
第五に、炭化物とガス化剤とが熱分解反応する領域を広げつつ熱分解による吸熱反応により温度が低下する領域が発生することを抑制することが可能な熱分解炉を提供することができる。
【0056】
第六に、炭化物のガス化剤として用いる水蒸気を生成する専用の熱源を用いずに熱効率を向上させると共に熱分解炉における熱分解反応を促進させることが可能な水性ガス生成システム及びその燃焼ガス供給方法を提供することができる。更に、第一、第二、及び、第三の効果をもたらす炭化炉、並びに、第4及び第五の効果をもたらす熱分解炉の少なくとも一つの炭化炉或いは熱分解炉を用いることにより、より純度の高い水性ガスを高効率で生成することが可能となる。有機廃棄物種類やシステムコストを考慮する必要があるが、第一から第五の全ての効果をもたらす本発明の炭化炉及び熱分解炉を採用することによって、あらゆる有機廃棄物に対応した工業的に実用可能な水性ガス生成システムを提供することが可能となる。
【0057】
第七に、本発明の水性ガス生成システムから、有害物質を排出しない、純度の高い水性ガスが効率的に生成されるため、一般的な水素精製装置を用いることによって、枯渇しない再利用可能なバイオマスから、再生可能なクリーンエネルギーとして期待される水素ガスが、環境を破壊することなく、高純度・高効率で製造することが可能となる水素ガス生成システムを構築することができる。
【0058】
第八に、本発明の発電システムによって、本発明の水素ガス生成システム同様、一般的な発電機を用いて、バイオマスから生成された水性ガスを燃料として、効率的に電気エネルギーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100について図面を参照して説明する。
【0061】
本実施形態の水性ガス生成システム100は、炭素を含む廃棄物である有機廃棄物を炭化させて炭化物を生成した後に、過熱された水蒸気(以下、「蒸気」ともいう。)をガス化剤として用いて炭化物を熱分解反応させることにより水性ガス(水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスを主成分とする混合ガス)を生成するシステムである。
【0062】
有機廃棄物とは、例えば、食品廃棄物、建設廃材、シュレッダーダスト、畜産廃棄物、間伐材や剪定枝等の樹木製の廃材、汚泥、家庭から排出される一般廃棄物である。水性ガスを生成する原料として以上に例示されるような種々の有機廃棄物を用いることができるが、樹木製の廃材(「木質バイオマス」ともいう。)を用いるのが特に好ましい。
【0063】
図1の全体構成図に示すように、水性ガス生成システム100は、有機廃棄物を乾燥させる乾燥機10と、乾燥機10へ投入する有機廃棄物を貯留するホッパ11と、乾燥機10にて乾燥された有機廃棄物を貯留するホッパ12と、乾燥された有機廃棄物から炭化物を生成する炭化炉20と、炭化炉20で生成された炭化物とガス化剤とを熱分解反応させる熱分解炉30と、熱分解炉30で生成された水性ガスを冷却する減温器40と、炭化炉20から排出された未燃の炭化物を回収するチャー回収装置41と、減温器40から供給される水性ガスから残渣を除去するサイクロン50と、サイクロン50で除去された残渣を回収する残渣回收装置51とを備える。
【0064】
また、水性ガス生成システム100は、サイクロン50で残渣が除去された水性ガスを冷却する水性ガス冷却装置60と、水性ガス冷却装置60で冷却された水性ガスを貯蔵する水性ガスホルダ70と、余剰の水性ガス等を焼却処理するフレアースタック71と、水性ガスを燃料として発電設備72と、水性ガスから水素ガスを精製する水素精製装置73と、水から飽和蒸気を生成する蒸気発生器80と、蒸気発生器80が生成した蒸気を過熱する蒸気過熱器81と、蒸気発生器80へ水を供給する水供給装置82と、水性ガス生成システム100の全体を制御する制御装置90と、を備える。
【0065】
以下、水性ガス生成システム100が備える各部について説明する。
【0066】
乾燥機10は、有機廃棄物を燃焼ガスにより乾燥させると共に乾燥された有機廃棄物を炭化炉20へ供給する装置である。乾燥機10には、有機廃棄物を貯蔵するホッパ11から原料供給路11aを介して有機廃棄物が供給される。また、乾燥機10には、有機廃棄物を乾燥させる熱源として、蒸気発生器80から排出された燃焼ガスが燃焼ガス流路200dを介して供給される。
【0067】
ホッパ11から乾燥機10に供給される有機廃棄物は、例えば、5mm以上かつ60mm以下の長さの木質チップである。また、有機廃棄物は、例えば、55%程度の重量比で水分を含有するものが用いられる。乾燥機10は、55%程度の重量比で水分を含有する木質チップを加熱して乾燥させることにより、有機廃棄物が含有する水分を15%程度の重量比まで低下させるものである。
【0068】
乾燥機10は、燃焼ガスの熱により乾燥させた有機廃棄物を、原料供給路10aを介してホッパ12へ供給する。また、乾燥機10は、有機廃棄物を乾操させる熱源として用いた燃焼ガスを、燃焼ガス流路200eを介して排ガス冷却洗浄装置13へ供給する。乾燥機10が排ガス冷却洗浄装置13へ供給する燃焼ガスの温度は、150℃以上かつ210℃以下となるように調整されている。
【0069】
排ガス冷却洗浄装置13は、燃焼ガスに含まれる硫黄酸化物(SO
X)、硫酸(H
2SO
4)、塩酸(HCl)等の有害物質を除去して燃焼ガスを無害化する装置である。排ガス冷却洗浄装置13は、有害物質が除去された燃焼ガス(排ガス)を無害化しつつ冷却した後に大気中に排出する。排ガス冷却洗浄装置13は、例えば、スクラバとされており、大気中に排出する燃焼ガスの温度が120℃以上かつ180℃以下となるように調整している。
【0070】
炭化炉20は、乾燥した有機廃棄物を部分燃焼させることにより炭化物と燃焼ガスとを生成する装置である。炭化炉20には、有機廃棄物を貯蔵するホッパ12から原料供給路12aを介して乾燥した有機廃棄物が供給される。炭化炉20は、有機廃棄物の燃焼によって生成された炭化物を、炭化物供給路101を介して熱分解炉30へ供給する。また、炭化炉20は、有機廃棄物の燃焼によって生成された燃焼ガスを、燃焼ガス流路200aを介して熱分解炉30へ供給する。
【0071】
熱分解炉30は、炭化炉20が生成した炭化物を過熱蒸気と共に燃焼ガスにより加熱して熱分解反応させることにより水性ガスを生成する装置である。熱分解炉30には、炭化物供給路101を介して炭化炉20が生成した炭化物が供給される。また、熱分解炉30には、蒸気過熱器81が生成した過熱蒸気がガス化剤として供給される。また、熱分解炉30には、熱分解反応を促進させる熱源として燃焼ガス流路200aから燃焼ガスが供給される。
【0072】
熱分解炉30は、炭化物と過熱蒸気とを熱分解反応をさせて、水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスを主成分とする水性ガスを生成する。炭化物と過熱蒸気との熱分解反応は、主に以下の式(1)、(2)に示す反応である。式(1)に示す水性ガス反応は吸熱反応であり、式(2)に示す水性ガスシフト反応は発熱反応である。式(2)に示す発熱反応の発熱量よりも式(1)に示す吸熱反応の吸熱量の方が大きい。そのため、炭化物と過熱蒸気との熱分解反応は、全体として吸熱反応となる。
C+H
2O → CO+H
2 (1)
CO+H
2O → CO
2+H
2 (2)
【0073】
熱分解炉30に供給される炭化物の温度は、常温(例えば、25℃)以上かつ350℃以下となるように調整されている。また、熱分解炉30に供給される過熱蒸気の温度は、730℃以上かつ830℃以下となるように調整されている。また、熱分解炉30に供給される燃焼ガスの温度は、900℃以上かつ1300℃以下となるように調整されている。また、熱分解炉30が生成する水性ガスの温度は、650℃以上かつ850℃以下となるように調整されている。
【0074】
熱分解炉30は、熱分解反応により生成された水性ガスと炭化物の未反応分及び残渣を、水性ガス供給路102を介して減温器40へ供給する。また、熱分解炉30は、熱分解反応の熱源として用いられた燃焼ガスを、燃焼ガス流路200bを介して蒸気過熱器81へ供給する。蒸気過熱器81に供給される燃焼ガスの温度は、820℃以上かつ920℃以下となるように調整されている。
【0075】
減温器40は、液体である水を噴霧することにより水性ガス供給路102から供給される水性ガスの温度を低下させる装置である。減温器40には、水供給装置82から水供給ポンプ(図示略)により水が供給される。減温器40は、減温させた水性ガスを、水性ガス供給路103を介してサイクロン50へ供給する。また、減温器40は、水性ガス供給路102から供給される炭化物の未反応分及び残渣をチャー回収装置41へ供給する。減温器40は、650℃以上かつ850℃以下となるように熱分解炉30で調整された水性ガスを、220℃以上かつ280℃以下となるように水の噴霧量を調整する。
【0076】
チャー回収装置41は、炭化物の未反応分を回収して再び熱分解炉30へ供給する装置である。チャー回収装置41を設けることにより、炭化物の未反応分が水性ガスの生成に用いられず廃棄されることが回避される。そのため、チャー回収装置41を設けることにより、炭化物からの水性ガスの収率が向上する。
【0077】
サイクロン50は、水性ガス供給路103を介して供給される水性ガスに含まれる残渣を除去する装置である。サイクロン50は、水性ガス供給路103を介して供給される水性ガスを内部で旋回させることにより水性ガスに含まれる残渣を遠心分離して下方へ導いて残渣回収装置51へ供給する。また、サイクロン50は、残渣が除去された水性ガスを上方へ導いて水性ガス供給路104を介して水性ガス冷却装置60へ供給する。
【0078】
水性ガス冷却装置60は、液体である水を噴霧することにより水性ガス供給路104から供給される水性ガスの温度を低下させる装置である。水性ガス冷却装置60は、水性ガス中に嘖霧した冷却水を回収して循環ポンプ(図示略)により再び水性ガス中に噴霧させるように冷去水を循環させる。
【0079】
水性ガス冷却装置60は、冷却した水性ガスを水性ガスホルダ70へ供給する。水性ガス冷却装置60は水性ガスホルダ70へ供給する水性ガスの温度を検出する温度センサ(図示略)を備えており、検出する温度が目標温度と一致するように循環ポンプ(図示略)により循環させる冷却水の水量を制御する。水性ガス冷却装置60は、220℃以上かつ280℃以下となるように減温器40で調整された水性ガスを、30℃以上かつ50℃以下となるように水の噴霧量を調整する。
【0080】
水性ガスホルダ70は、水性ガス冷却装置60から供給される水性ガスを貯蔵する装置である。水性ガスホルダ70は、貯蔵した水性ガスをフレアースタック71、発電設備72、水素精製装置73のそれぞれに個別に供給することが可能となっている。
【0081】
フレアースタック71は水性ガスホルダ70の貯蔵量が過剰となった場合等、水性ガスに余剰が生じた場合に焼却処理するための装置である。フレアースタック71は、液化天然ガス等の燃料によって常時燃焼が行われるようになっている。そのため、フレアースタック71に水性ガスが供給されると、水性ガスが焼却処理される。
【0082】
発電設備72は、水性ガスを燃料として動作することにより発電機を駆動させて発電出力を得る設備である。発電設備72が発電機を駆動させる動力源としては、例えば、水性ガスを燃焼させることにより動作するガスエンジンが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0083】
水素精製装置73は、水性ガスに含まれる一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分を除去することで純度が高い水素ガス(例えば、純度99.995%以上の水素ガス)に精製する装置である。例えば、水素精製装置73は、水性ガスを圧縮機(図示略)にて所定の圧力まで加圧して吸着剤(一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分の除去に適したもの)を充填した吸着塔(図示略)に供給し、吸着剤により、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分を吸着除去し、純度が高い水素ガスに精製する。吸着終了後は、水素精製装置73の吸着塔を減圧することで、吸着剤から、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の成分を脱着する。複数の吸着塔を交互に使用することで、水素を連続的に精製、送出できる。また、水素精製装置73として、水素以外の物質を全く透過しないパラジウム合金膜を用いた水素精製モジュールを用いることもできる。
【0084】
蒸気発生器80は、燃焼ガスで加熱することにより水を気化させて飽和水蒸気を生成する装置である。蒸気発生器80には、水供給装置82から水供給ポンプ(図示略)を介して水が供給される。また、蒸気発生器80には、蒸気過熱器81から排出される燃焼ガスが燃焼ガス流路200cを介して供給される。蒸気発生器80に供給される燃焼ガスの温度は、750℃以上かつ850℃以下となるように調整されている。
【0085】
蒸気発生器80が生成した飽和水蒸気は蒸気過熱器81へ供給される。また、蒸気発生器80で水を気化させる熱源として用いられた燃焼ガスは、燃焼ガス流路200dを介して乾燥機10へ供給される。乾燥機10へ供給される燃焼ガスの温度は、540℃以上かつ640℃以下となるように調整されている。
【0086】
蒸気過熱器81は、燃焼ガスで飽和水蒸気を加熱することにより飽和水蒸気から加熱蒸気を生成する装置である。蒸気過熱器81には、蒸気発生器80が生成した飽和水蒸気が供給される。また、蒸気過熱器81には、熱分解炉30から排出される燃焼ガスが燃焼ガス流路200bを介して供給される。蒸気過熱器81に供給される燃焼ガスの温度は、820℃以上かつ920℃以下となるように調整されている。蒸気過熱器81が生成した過熱蒸気は、熱分解炉30へガス化剤として供給される。また、蒸気過熱器81で過熱蒸気を生成する熱源として用いられた燃焼ガスは、燃焼ガス流路200cを介して蒸気発生器80へ供給される。
【0087】
制御装置90は、水性ガス生成システム100を制御する装置である。制御装置90は、水性ガス生成システム100を構成する各部が備える制御部(図示略)と通信可能となっている。制御装置90は、水性ガス生成システム100を構成する各部が備える制御部に制御指令を伝達することにより、各部を制御することができるようになっている。また、制御装置90は、水性ガス生成システム100を構成する各部から温度、圧力等の各部の状態を示す信号を受信可能となっている。制御装置90は、記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、水性ガス生成システム100を構成する各部に所望の動作を実行させることができる。
【0088】
図1に示す水性ガス生成システム100において、炭化炉20で生成された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200a、200b、200c、200d、200eからなる燃焼ガス流路によって以下のように流通する。第1に、炭化炉20が生成した燃焼ガスは、燃焼ガス流路200aによって熱分解炉30へ供給される。第2に、熱分解炉30から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200bによって蒸気過熱器81へ供給される。第3に、蒸気過熱器81から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200cによって蒸気発生器80へ供給される。第4に、蒸気発生器80から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200dによって乾燥機10へ供給される。第5に、乾操機10から排出された燃焼ガスは、燃焼ガス流路200eによって排ガス冷却洗浄装置13へ供給される。第6に、排ガス冷却洗浄装置13が無害化した燃焼ガスは、排ガス冷却洗浄装置13によって大気中に排出される。
【0089】
ここで、炭化炉20が生成した燃焼ガスを他の熱媒体との熱交換をさせないで熱分解炉30へ供給しているのは、高温な状態が維持された燃焼ガスを用いて熱分解炉30における熱分解反応を促進して炭化物からの水性ガスの収率を向上させるためである。炭化炉20が生成した燃焼ガスを他の熱媒体との熱交換をさせた後に熱分解炉30へ供給する場合に比べ、熱分解炉30の内部を高温に維持することができるため、熱分解反応が促進されて炭化物からの水性ガスの收率が向上する。
【0090】
次に、
図2から
図5を用いて、本実施形態の炭化炉20について詳細に説明する。
【0091】
図2は、
図1に示す炭化炉20の縦断面図である。
図2において、軸線Xは、炭化炉20が設置される設置面(図示略)に対して直交する鉛直方向(重力方向)を示している。
【0092】
図2に示すように、本実施形態の炭化炉20は、本体部21と、円筒部22(筒部)と、有機廃棄物投入部23(投入部)と、炭化物排出部24と、1次空気供給部25と、2次空気供給部26と、燃焼ガス排出部27と、温度センサ28a(温度検出部)と、温度センサ28b(温度検出部)と、温度センサ28c(温度検出部)と、レベルセンサ28d(堆積量検出部)と、着火バーナ20cと、炭化炉制御部29(制御部)とを備える。
【0093】
本体部21は、軸線Xに沿って延びる略円筒状に形成されると共に炭化炉20の外装となる部材である。本体部21は、その内部に有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼領域R2と、有機廃棄物から生成された燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼領域R4とを形成している。本体部21は、炭化炉20の外装を形成する金属製(例えば鉄製)のハウジング21aと、ハウジング21aの内周面に貼り付けられる断熱材21bと、断熱材21bの内周面に貼り付けられる耐火材21cとを有する。
【0094】
円筒部22は、軸線Xに沿って延びる略円筒状に形成される部材である。円筒部22は、本体部21の内周面21dとの間で有機廃棄物を燃焼させて炭化物を生成するための間隙20aを形成する外周面22aを有する。円筒部22は、有機廃棄物の燃焼によって高温となるため、耐熱性の材料(例えば、ステンレス等の金属材料)によって形成するのが好ましい。
図2に示すように、円筒部22の内部は中空の閉空間となっておりこの閉空間は他の空間と連通しない状態となっている。そのため、円筒部22は一定の熱量を畜熱可能であり、外部の温度変化による影響を受けにくくなっている。
【0095】
円筒部22は、後述するターンテーブル24aに取り付けられておりターンテーブル24aが軸線X回りに回転するのに応じて軸線X回りに回転するようになっている。円筒部22が軸線X回りに回転することにより、間隙20aとその上部に存在する有機廃棄物は間隙20aに沿って上方から下方へ導かれる。
【0096】
間隙20aに供給された有機廃棄物は、1次燃焼領域R2において1次空気供給部25から供給される1次燃焼用空気によって部分燃焼し、炭化物を多く含む固形分と可燃性ガスを含む燃焼ガスとが生成される。炭化物を多く含む固形分は間際20aに沿って下方の炭化物精錬・冷却領域R1へ導かれ、可燃性ガスを含む燃焼ガスは2次燃焼領域R4へ導かれる。炭化物精錬・冷却領域R1は、上方が有機廃棄物で閉塞されていると共に1次空気供給部25からの1次燃焼用空気が供給されない領域となっている。そのため、炭化物は、炭化物精錬・冷却領域R1において冷却されながら精錬される。
【0097】
有機廃棄物投入部23は、本体部21に設けられると共にホッパ12から原料供給路12aを介して供給される有機廃業物(図示略)を本体部21の内部へ投入する開口部である。有機廃棄物投入部23の下方には軸線Xに近付くにつれて上方から下方へ傾斜する傾斜面23aが形成されている。有機廃棄物投入部23から供給された有機廃棄物は、傾斜面23aに沿って円筒部22の上面22b及び間隙20aに導かれる。
【0098】
図2に示すように有機廃棄物投入部23が配置される領域が原料投入領域R3である。原料投入領域R3において、軸線Xに対して有機廃棄物投入部23と反対側には点検窓20bが設けられている。点検窓20bは、炭化炉20の内部を視認可能にするものである。
【0099】
炭化物排出部24は、間隙20aにおいて有機廃棄物が部分燃焼することにより生成される炭化物を炭化物供給路101へ排出する機構である。炭化物排出部24から炭化物供給路101へ排出された炭化物は、熱分解炉30へ供給される。
図2及び
図4に示すように、炭化物排出部24は、ターンテーブル24a(回転体)と、駆動部24bと、炭化物排出口24cとを有する。
【0100】
ターンテーブル24aは、
図3に示すように間隙20aの軸線X方向の下端と対向する位置に設けられる部材であり、軸線X回りの周方向に延びる円環状の回転体である。ターンテーブル24aは、駆動部24bから伝達される駆動力によって軸線X回りに回転する。
図3に示すように、間隙20aの下端と対向するターンテーブル24aの面は軸線Xから遠ざかるに従って下方へ傾斜する傾斜面となっている。そのため、間隙20aの下端とターンテーブル24aの傾斜面との間には隙間が形成されている。
【0101】
間隙20aの下端に存在する炭化物(図示略)は、ターンテーブル24aが軸線X回りに回転するのに応じてターンテーブル24aの傾斜面に沿って下方へ移動して炭化物排出口24cへと導かれる。そのため、ターンテーブル24aの回転速度が増加するのに応じて、間隙20aの下端から炭化物排出口24cへ導かれる炭化物の量が増加する。同樣に、ターンテーブル24aの回転速度が減少するのに応じて、間隙20aの下端から炭化物排出口24cへ導かれる炭化物の量が減少する。
【0102】
駆動部24bは、ターンテーブル24aに駆動力を伝達し、ターンテーブル24aを軸線X回りに回転させる装置である。
図2に示すように、駆動部24bは、駆動モータ24eと、減速機24fと、駆動ベルト24gと、駆動軸24hとを有する。
【0103】
駆動モータ24eは、炭化炉制御部29から伝達される制御信号によって回転数が制御されるインバータモータである。駆動モータ24eの回転動力は、駆動ベルト24gによって減速機24fに伝達される。減速機24fは駆動ベルト24gによって駆動モータ24eから伝達される回転動力の回転速度を減速させつつトルクを増加させる装置である。減速機24fは、トルクを増加させた回転動力を軸線X回りに延びる駆動軸24hに伝達する。ターンテーブル24aは駆動軸24hに連結されている。そのため、駆動軸24hが軸線X回りに回転するのに伴って、ターンテーブル24aが軸線X回りに回転する。
【0104】
炭化物排出ロ24cは、炭化物を炭化物供給路101へ排出する開口部である。炭化物排出口24cから炭化物供給路101へ排出された炭化物は、炭化物供給路101を介して熱分解炉30へ供給される。
【0105】
クリンカクラッシャ24dは、間隙20aの下端とターンテーブル24aの傾斜面との間に形成される隙間よりも大きな塊であるクリンカを破砕するための部材である。ここでクリンカとは、1次燃焼領域R2での有機廃棄物の燃焼により生成された燃焼灰が溶融して塊となったものである。
図4(a)に示すように、クリンカクラッシャ24dは、軸線X回り配置される略円環状の部材となっており、周方向の複数の位置に径方向の内側に突出する爪24iが設けられている。
図4(b)(
図4(a)のC−C矢視端面図)に示すように、爪24iはターンテーブル24aの傾斜面に沿うように上方に向けて折れ曲がった形状となっている。
【0106】
図3に示すように、クリンカクラッシャ24dは、締結ボルトによって本体部21に取り付けられている。クリンカクラッシャ24dは、ターンテーブル24aが軸線X回りに回転しても本体部21に対して固定されたままとなる。そのため、ターンテーブル24aの回転に伴ってクリンカが移動すると、クリンカがクリンカクラッシャの爪24iに衝突して破砕される。
【0107】
次に、1次空気供給部25について説明する。1次空気供給部25は、間隙20aに堆積する有機廃棄物に向けて有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼用空気を供給する装置である。1次空気供給部25は、1次燃焼ファン25a(送風部)と、カバー部25bと、空気供給口25cとを有する。
【0108】
1次燃焼ファン25aは、外部から導入した空気(大気)を送風する装置であり、インバータモータ(図示略)とインバータモータにより駆動されるファン(図示略)を有している。1次燃焼ファン25aは、インバータモータの回転数を制御することにより送風する風量を調整することができる。
【0109】
カバー部25bは、1次燃焼ファン25aから送風される空気が導入されると共に空気供給口25cへ空気を供給する閉空間25dを形成する部材である。
図5(a)(
図2に示す炭化炉20のA−A矢視端面図)に示すように、カバー部25bは、本体部21の外周面21eとの間に軸線X回りに延びる閉空間25dを形成する。
【0110】
空気供給口25cは、1次燃焼ファン25aから閉空間25dに送風された空気を閉空間25dから本体部21の内部の1次燃焼領域R2へ供給する流路である。
図2に示すように、空気供給口25cは、有機廃棄物を1次燃焼用空気により部分燃焼させる1次燃焼領域R2において、軸線Xに沿って鉛直方向の複数箇所に設けられている。
【0111】
また、
図5(a)に示すように、空気供給口25cは軸線X回りの周方向に沿った等間隔(
図5(a)では30°間隔)で本体部21に設けられている。また、
図5(a)に示すように、空気供給口25cは、本体部21の外周面21eから軸線Xに向けた延びる直線状の流路となっている。なお、
図5(a)に示す例は軸線X回りの周方向に沿った30°間隔で空気供給口25cを配置するものとしたが、他の間隔(例えば、20°、45°等)としても良いし、等間隔でなく任意の間隔で配置してもよい。
【0112】
図2に示す1次空気供給部25は、1次燃焼ファン25aから送風される空気を加熱する加熱部(図示略)を有する。空気供給口25cは、加熱部によって加熱された空気を空気供給口25cへ供給する。そのため、1次燃焼ファン25aから送風される空気を加熱しない場合に比べ、1次燃焼領域R2の雰囲気温度を高温に維持することができる。
【0113】
1次空気供給部25が備える加熱部として、
図6及び
図7に示す放熱フィン25eを採用してもよい。
図6及び
図7に示す1次空気供給部25の変形例は、炭化炉20の間隙20aから本体部21を介して伝達される熱を利用して1次燃焼ファン25aから送風される空気を加熱する放熱フィン25eを備えるものである。
図6及び
図7に示すように、放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eに接触すると共に外周面21eに沿って軸線X回りに延びる環状の部材である。放熱フィン25eは、軸線Xに沿った複数箇所に設けられている。放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eに対して溶接等によって取り付けられている。
【0114】
図6は、1次空気供給部25の第1変形例を示す縦断面図である。
図2に示す1次空気供給部25のカバ一部25bは、空気供給ロ25cと軸線X方向の略同じ位置のみに設けられる。それに対して、
図6に示す1次空気供給部25のカバー部25bは、空気供給口25cと軸線X方向の略同じ位置に加えて空気供給口25cよりも下方の位置も包含するように設けられる。
【0115】
図6に示す放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eを介して間隙20aの雰囲気温度が伝熱される伝熱部材である。本体部21の外周面21eは、耐火材21cと断熱材21bによってハウジング21aが加熱しすぎないように保護されているものの、50℃〜70℃程度に加熱された状態となっている。そのため、放熱フィン25eによって1次燃焼ファン25aから送風される空気(大気)を加熱することができる。
【0116】
図6に示すように、1次燃焼ファン25aは、間隙20aの下方の外周側に位置する本体部21の外周面21eに向けて外部から導入した空気を送風するようになっている。このようにしているのは、間隙20aの下方の外周側に位置する本体部21の外周面21eを外部から導入した空気によって冷却するためである。
【0117】
図6に示すように、間隙20aの下方は炭化物精錬・冷却領域R1となっている。炭化物精錬・冷却領域R1は、1次燃焼領域R2で生成された炭化物を冷却しながら精錬する領域であるため、ある程度低い温度に維持されるのが望ましい。そこで、本実施形態では、炭化物精錬・冷却領域R1が冷却されるように1次燃焼ファン25aが空気を送風する位置を設定している。
【0118】
図7は、1次空気供給部25の第2変形例を示す断面図である。
図7に示す1次空気供給部25の第2変形例は、放熱フィン25eが配置される位置における断熱材21bの厚さ及び本体部21の外周面21eの位置が異なっている点を除き、
図6に示す第1変形例と同様である。
【0119】
図7に示すように、空気供給口25cが配置される位置における本体部21の内周面21dから外周面21eまでの距離は、距離D1となっている。一方、放熱フィン25eが配置される位置における本体部21の内周面21dから外周面21eまでの距離は、距離D2となっている。
図7に示すように距離D1よりも距離D2の方が短くなっている。
【0120】
図7に示す1次空気供給部25の第2変形例によれば、
図6に示す1次空気供給部25の第1変形例に比べ、放熱フィン25eが配置される位置において、間隙20aの雰囲気温度が外周面21eに伝達されやすくなっている。そのため、第2変形例によれば、第1変形例よりも放熱フィン25eがより高温に加熱される。よって、第2変形例の1次空気供給部25によれば、1次燃焼ファン25aが送風する空気をより高い温度に加熱した状態で空気供給口25cへ供給することができる。
【0121】
なお、
図6及び
図7に示す放熱フィン25eは、軸線X回りに延びる環状の部材であるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、放熱フィン25eを、本体部21の外周面21eに接触すると共に外周面21eに沿って軸線X回りに下方から上方へ向けて旋回する螺旋状の流路を形成するような構造としてもよい。
【0122】
次に、2次空気供給部26について説明する。2次空気供給部26は、1次燃焼領域R2において有機廃棄物の燃焼により生成される燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼用空気を本体部21の内部へ供給する装置である。
図2に示すように、2次空気供給部26は2次燃焼領域R4に設けられており、2次燃焼領域R4に向けて2次燃焼用空気を供給する。2次空気供給部26は、2次燃焼ファン26aと、カバー部26bと、空気供給口26cとを有する。
【0123】
2次燃焼ファン26aは、外部から導入した空気(大気)を送風する装置であり、インバータモータ(図示略)とインバータモータにより駆動されるファン(図示略)を有している。2次燃焼ファン26aは、インバータモータの回転数を制御することにより送風する風量を調整することができる。
【0124】
カバー部26bは、2次燃焼ファン26aから送風される空気が導入されると共に空気供給口26cへ空気を供給する閉空間26dを形成する部材である。
図5(b)(
図2に示す炭化炉20のB−B矢視端面図)に示すように、カバー部26bは、本体部21の外周面2leとの間に軸線X回りに延びる閉空間26dを形成する。
【0125】
空気供給口26cは、2次燃焼ファン26aから閉空間26dに送風された空気を閉空間26dから本体部21の内部の2次燃焼焼領域R4へ供給する流路である。
図2に示すように、空気供給口26cは、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを2次燃焼用空気により燃焼させる2次燃焼領域R4において、軸線Xに沿った鉛直方向の複数箇所に設けられている。
【0126】
また、
図5(b)に示すように、空気供給口26cは軸線X回りの周方向に沿った等間隔(
図5(b)では30°間隔)で本体部21に設けられている。また、
図5(b)に示すように、空気供給口26cは、本体部21の外周面21eから軸線Xに向けた延びる直線状の流路となっている。なお、
図5(b)に示す例は軸線X回りの周方向に沿った30°間隔で空気供給口26cを配置するものとしたが、他の間隔(例えば、20°、45°等)としても良いし、等間隔でなく任意の間隔で配置してもよい。
【0127】
燃焼ガス排出部27は、1次燃焼領域R2で生成されて2次燃焼領域R4で可燃性ガス成分を燃焼させた燃焼ガスを燃焼ガス流路200aへ排出する排出口である。燃焼ガス流路200aへ排出された燃焼ガスは、熱分解反応の熱源として利用するために熱分解炉30へ供給される。
【0128】
温度センサ28aは、燃焼ガス排出部27から排出される燃焼ガスの温度を検出するセンサである。温度センサ28aは、検出した温度を示す温度検出信号を炭化炉制御部29へ伝達する。
図2に示すように、温度センサ28aは2次燃焼焼領域R4の中でも燃焼ガス流路200aに近接した領域に配置されている。そのため、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgは、燃焼ガス流路200aに排出される燃焼ガスの温度と略一致した温度となる。
【0129】
温度センサ28bは、1次燃焼焼領域R2の雰囲気温度を検出するセンサである。温度センサ28bは、検出した温度を示す温度検出信号を炭化炉制御部29へ伝達する。
【0130】
温度センサ28cは、間隙20aの下端側に堆積する炭化物の温度である炭化物温度Tcを検出するセンサである。温度センサ28cは、検出した炭化物温度Tcを示す温度検出信号を炭化炉制御部29へ伝達する。
【0131】
レベルセンサ28dは、間隙20aに堆積する有機廃棄物の堆積量を検出するセンサである。レベルセンサ28dは、1次燃焼領域R2において、
図1に示す軸線Y方向に存在する有機廃棄物の堆積量を堆積量に応じた出力信号を得ることにより検出する。レベルセンサ28dは、出射した光や超音波等の反射を受信することで堆積量を検出する反射型のセンサであってもよい。また、レベルセンサ28dは、出射したX線等を受信する受信部を円筒部22に設けた透過型のセンサであってもよい。
【0132】
後述するように、レベルセンサ28dは、有機廃棄物供給部23からの新たな有機廃棄物の投入が停止される場合等、間隙20aに存在する有機廃棄物の堆積量が減少したことを検出するためのセンサである。そのため、レベルセンサ28dは、取り付け位置から鉛直方向の下方に向けた軸線Yに沿った堆積量を検出するようになっている。炭化炉制御部29は、レベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量である堆積量Aoが0である旨の検出信号を出力する場合、間隙20aに存在する有機廃棄物の堆積量が所定の第1堆積量Ao1以下へ減少したと判定する。
【0133】
着火バーナ20cは、炭化炉20における有機廃棄物の燃焼を開始させる際に、有機廃棄物を着火させるために用いられる装置である。
図2に示すように、着火バーナ20cは、間隙20aの下端側に設けられている。また、
図2に示すように、着火バーナ20cは、軸線Xに対して対向する2箇所に配置されている。
【0134】
着火バーナ20cは、灯油等の着火用燃料を利用して火炎を発生させることにより間隙20aの下端側に堆積する有機廃棄物を燃焼させる。着火バーナ20cは、炭化炉制御部29からの制御指令によって炭化炉20における有機廃棄物の燃焼を開始させる際に火炎を発生させる。また、着火バーナ20cは、炭化炉制御部29からの制御指令によって所定のタイミングで火炎の発生を停止させる。
【0135】
炭化炉制御部29は、炭化炉20が備える各部から各部の状態を示す検出信号を受信すると共に検出信号に基づいて各部に制御信号を伝達することで各部を制御する装置である。また、炭化炉制御部29は、制御装置90へ炭化炉20の状態を示す信号を伝達すると共に制御装置90から伝達される制御信号に応答して炭化炉20を制御する装置である。
【0136】
炭化炉制御部29は、温度センサ28a、28b、28cのそれぞれが検出する温度を示す温度検出信号と、レベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量Aoを示す堆積量検出信号とを受信する。また、炭化炉制御部29は、1次燃焼ファン25aの送風量を制御する制御信号を1次空気供給部25へ伝達する。また、炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aの送風量を制御する制御信号を2次空気供給部26へ伝達する。また、炭炭化炉制御部29は、着火バーナ20cに制御信号を伝達して有機廃棄物の燃焼を開始させる際に火炎を発生させると共に所定のタイミングで制御信号を伝達して火炎の発生を停止させる。また、炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を制御する制御信号を駆動モータ24eへ伝達する。
【0137】
次に、炭化炉制御部29による1次燃焼ファン25aの送風量の制御方法について説明1する。炭化炉制御部29は、温度センサ28bが検出する1次燃焼領域R2の雰囲気温度に基づいて1次燃焼焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御する。1次燃焼ファン25aが送風する空気の送風量は空気供給口25cから炭化炉20の1次燃焼領域R2へ供給される1次燃焼用空気の空気量と一致している。そのため、炭化炉制御部29は、1次燃焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御することにより、1次燃焼領域R2に送風される1次燃焼用空気の空気量を調整することができる。
【0138】
炭化炉制御部29は、間隙20aに堆積した有機廃葉物を炭化させるのに適した燃焼状態が維持されるように温度センサ28bが検出する1次燃焼領域R2の雰囲気温度に基づいて1次燃焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御する。具体的に、炭化炉制御部29は、1次燃焼領域R2の雰囲気温度が1000℃以上かつ1200℃以下の範囲に収まるように1次燃焼焼ファン25aが送風する空気の送風量を制御する。
【0139】
次に、炭化炉制御部29による2次燃焼ファン26aの送風量の制御方法について、
図8フローチャートを用いて説明する。炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgに基づいて2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御する。2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量は空気供給口26cから炭化炉20の2次燃焼領域R4へ供給される2次燃焼用空気の空気量と一致している。そのため、炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御することにより、2次燃焼領域R4に送風される2次燃焼用空気の空気量を調整することができる。
【0140】
炭化炉制御部29は、2次燃焼焼領域R4の燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させるのに適した燃焼状態が維持されるように温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgに基づいて2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御する。具体的に、炭化炉制御部29は、
図8に示すフローチャートに従って2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御する。
図8に示すフローチャートにおける各処理は、炭化炉制御部29が有する演算部(図示略)が記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを実行することにより行われる処理である。
【0141】
図8のフローチャートに示す処理に先立って、炭化炉制御部29は、炭化炉20における有機廃棄物の燃焼を開始させる際に、着火バーナ20cによって火炎を発生させて間隙20aに堆積する有機廃棄物の燃焼を開始させる。炭化炉制御部29は、その後に2次燃焼ファン26aによる外部の空気(大気)の送風を開始させる。炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第1燃焼焼ガス温度Tg1以上となるまでは一定の送風量となるように2次燃焼ファン26aを制御する。温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1以上となった後に、
図8のフローチャートに示す各処理が開始される。
【0142】
なお、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1以上となるまでに2次燃焼ファン26aが送風する2次燃焼用空気の送風量は、2次燃焼領域R4に存在すると想定される可燃性ガスを完全燃焼させるのに必要な量に一定の余剰量を加算した量となっている。
【0143】
ステップS800で炭化炉制御部29は、温度センサ28aから伝達される温度検出信号を受信することにより、燃焼ガス排出部27から排出される燃焼ガスの温度である燃焼焼ガス温度Tgを検出する。
【0144】
ステップS801で炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1より低いか否かを判定する。炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼焼ガス温度Tg1よりも低いと判定した場合はステップS802に処理を進め、そうでなければステップS803に処理を進める。
【0145】
ステップS802で炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aの送風量を減少させるための制御信号を2次燃焼ファン26aに伝達する。2次燃焼ファン26aは、炭化炉制御部29から制御信号を受信したのに応答して送風量を減少させる。ここで、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1よりも低いと判定した場合に2次燃焼ファン26aの送風量を減少させているのは次の理由による。
【0146】
2次空気供給部26が2次燃焼領域R4へ供給する2次燃焼用空気の量は、2次燃焼領域R4に存在する燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを完全燃焼させる量よりも一定量だけ多い量とするのが好ましい。すなわち、2次燃焼領域R4における空気過剰率を1.0より大きい一定値とするのが好ましい。
【0147】
しかしながら、2次燃焼領域R4に存在する可燃性ガスの量は、有機廃棄物の性状や1次燃焼領域R2における有機廃棄物の燃焼状態等の要因により変動するのが一般的である。そのため、2次空気供給部26が2次燃焼領域R4へ供給する2次燃焼用空気の量を一定としたままでは可燃性ガスを完全燃焼させるのに適した空気量を維持することができない。
【0148】
そして、2次燃焼用空気の量が可燃性ガスを完全燃焼させる量に対して過剰に多くなる場合、可燃性ガスの燃焼に用いられない余剰空気が2次燃焼領域R4に多量に供給されることとなる。2次燃焼ファン26aが送風する空気(大気)の温度は2次燃焼焼領域R4の雰閉気温度よりも低いため、多量の余剰空気によって2次燃焼領域R4の雰囲気温度が低下してしまう。
【0149】
そうすると、2次燃焼領域R4における可燃性ガスの燃焼効率が悪化し、可燃性ガスを多く含んだままの燃焼ガスが燃焼ガス排出部27から排出されてしまうこととなる。可燃性ガスには、凝固してタールとなる成分である高分子炭化水素が含まれている。そのため、可燃性ガスに凝固してタールとなる成分が多量に含まれたままであると、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に損傷を与える可能性がある。そのため燃焼ガスに凝固してタールとなる成分が多量に含まれないようにし、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に与える損傷を抑制するのが望ましい。そこで、炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1よりも低いと判定した場合に、2次燃焼領域R4に供給される余剰空気量を減少させるために、2次燃焼ファン26aの送風量を減少させている。
【0150】
ステップS803で炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2より高いか否かを判定する。炭化炉制御部29は、検出した燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2よりも高いと判定した場合はステップS804に処理を進め、そうでなければステップS801に処理を進める。
【0151】
ステップS804で炭化炉制御部29は、2次燃焼ファン26aの送風量を増加させるための制御信号を2次燃焼ファン26aに伝達する。2次燃焼ファン26aは、炭化炉制御部29から制御信号を受信したのに応答して送風量を増加させる。炭化炉制御部29は、
図8に示すフローチャートの処理を終了すると、再び
図8に示す処理の実行を開始する。ここで、燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2よりも高いと判定した場合に2次燃焼ファン26aの送風量を増加させているのは次の理由による。
【0152】
燃焼ガス温度Tgに上限を定めずに炭化炉20を運転させる場合、想定される最高の燃焼ガス温度を想定し、その燃焼ガス温度でも十分に耐熱性が保たれるように炭化炉20及び燃焼ガス流路200aを設計する必要がある。この場合、耐熱性の高い高価な部材を用いて炭化炉20等を製造する必要があり、炭化炉20等の製造コストが増加してしまう。炭化炉20等の製造コストを増加させないようにするためには、燃焼ガス温度Tgが予め定めた上限温度以下となるようにするのが好ましい。
【0153】
そこで、炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2よりも高いと判定した場合に2次燃焼ファン26aの送風量を増加させている。前述したように、2次燃焼ファン26aの送風量を増加させることにより多量の余剰空気が2次燃焼領域R4に供給されると、2次燃焼領域R4の雰囲気温度が低下することとなる。
【0154】
以上のように、炭化炉制御部29は、温度センサ28aが検出する燃焼ガス温度Tgに基づいて2次燃焼ファン26aが送風する空気の送風量を制御することにより、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1以上かつ第2燃焼ガス温度Tg2以下となるようにしいる。ここで、第1燃焼ガス温度Tg1及び第2燃焼ガス温度Tg2として、例えば、第1燃焼ガス温度Tg1を900℃とし、第2燃焼ガス温度Tg2を1300℃と設定することができる。
【0155】
第1燃焼ガス温度Tg1を900℃としているのは、2次燃焼領域R4の温度を900℃以上に維持することにより、燃焼ガスから高分子炭化水素の大部分を除去することができるからである。高分子炭化水素は、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスのうち凝固してタールとなる成分である。そのため、燃焼ガスから高分子炭化水素の大部分を除去することにより、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に与える損傷を抑制することができる。
【0156】
また、第1燃焼ガス温度Tg1及び第2燃焼ガス温度Tg2として、例えば、第1燃焼ガス温度Tg1を1000℃とし、第2燃焼ガス温度Tg2を1200℃と設定するようにしてもよい。また、例えば、第1燃焼ガス温度Tg1及び第2燃焼ガス温度Tg2の双方を1100℃に設定するようにしてもよい。この場合、炭化炉制御部29は、燃焼ガス温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1より低い場合は送風量を減少させ、燃焼ガス温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2より高い場合は送風量を増加させるよう2次燃焼ファン26aを制御する。
【0157】
次に、炭化炉制御部29によるターンテーブル24aの回転速度の制御方法について
図9のフローチャートを用いて説明する。
図9に示すフローチャートにおける各処理は、炭化炉制御部29が有する演算部(図示略)が記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを実行することにより行われる処理である。
【0158】
図9に示すフローチャートにおいて、炭化炉制御部29は、炭化物排出部24が排出する炭化物の排出量を制御している。本実施形態において炭化物排出部24が排出する炭化物の排出量を制御しているのは、有機廃棄物投入部23から間隙20aへの有機廃棄物の投入が停止されるのに伴って炭化物排出部24から排出される炭化物の温度が上昇してしまうことを防ぐためである。
【0159】
間隙20aに堆積する有機廃棄物の量が徐々に少なくなると、炭化物を消火させる炭化物精錬・冷却領域R1が徐々に狭くなる。この場合、ターンテーブル24aの回転速度を一定のままで維持すると、炭化物が十分に冷却されない状態で間隙20aの下端から排出されてしまう。これは、1次燃焼領域R2で炭化されて高温となった炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1で十分に冷却されないためである。そこで、炭化炉制御部29は、炭化物排出部24が排出する炭化物の排出量を制御することにより、炭化物排出部24が排出する炭化物の温度を調整している。
【0160】
本実施形態において、炭化炉制御部29は、温度センサ28cとレベルセンサ28dの双方を用いて、炭化物排出部24が排出する炭化物の温度を調整している。前者は炭化物の温度を直接的に検出するセンサであり、後者は炭化物の堆積量から炭化物の温度が高温となる状態を間接的に検出するセンサである。
【0161】
以下、
図9のフローチャートの各ステップについて説明する。ステップS900で炭化炉制御部29は、温度センサ28cから伝達される温度検出信号を受信することにより、間隙20aの下端側に堆積する炭化物の温度である炭化物温度Tcを検出する。ステップS901で炭化炉制御部29は、レベルセンサ28dから伝達される堆積量検出信号を受信することにより、間際20aに堆積する有機廃棄物の堆積量である堆積量Aoを検出する。
【0162】
ステップS902で炭化炉制御部29は、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上であるか否かを判定する。炭化炉制御部29は、検出した炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上であると判定した場合はステップS903に処理を進め、そうでなければステップS904に処理を進める。ここで、第1炭化物温度Tc1として、例えば、250℃以上かつ300℃以下の範囲の任意の温度を設定することができる。
【0163】
ステップS903で炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を第2回転速度Rs2で回転させるよう駆動部24bを制御する。第2回転速度Rs2は後述する第1回転速度Rs1よりも低速度である。ここで、第1回転速度Rs1は、炭化炉20が通常運転状態を維持するために必要な量の炭化物を炭化物排出部24から排出させるための速度である。ステップS903では、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上となった場合に炭化物排出部24が排出する炭化物の温度が低下するように、ターンテーブル24aの回転速度を第1回転速度Rs1よりも低い第2回転速度Rs2としている。ターンテーブル24aの回転速度を低下させることにより炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1に滞留する時間が長くなり、それに伴って炭化物排出部24が排出する炭化物の温度が低下する。
【0164】
ステップS904で炭化炉制御部29は、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下であるか否かを判定する。炭化炉制御部29は、検出した堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下であると判定した場合はステップS905に処理を進め、そうでなければステップS906に処理を進める。
【0165】
ステップS905で炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を第2回転速度Rs2で回転させるよう駆動部24bを制御する。第2回転速度Rs2は後述する第1回転速度Rs1よりも低速度である。ステップS905では、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下となった場合に炭化物排出部24が排出する炭化物の温度が低下するように、ターンテーブル24aの回転速度を第1回転速度Rs1よりも低い第2回転速度Rs2としている。
【0166】
ステップS906で炭化炉制御部29は、ターンテーブル24aの回転速度を第1回転速度Rs1で回転させるよう駆動部24bを制御する。前述したように、第1回転速度Rs1は、炭化炉20が通常運転状態を維持するために必要な量の炭化物を炭化物排出部24から排出させるための速度である。炭化炉制御部29は、ステップS906において、炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1よりも低くかつ堆積量Aoが第1堆積量Ao1よりも多いことから、運転状態を推持するために必要な量の炭化物を炭化物排出部24から排出させるように駆動部24bを制御する。
【0167】
炭化炉制御部29は、
図9に示すフローチャートの処理を終了すると、再び
図9に示す処理の実行を開始する。このようにして、炭化炉制御部29は、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tc及びレベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量Aoに基づいて駆動部24bがターンテーブル24aを回転させる回転速度を制御する。
【0168】
以上の
図9に示すフローチャートにおいては、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcが第1炭化物温度Tc1以上であるか否かに応じてターンテーブル24aの回転速度を2段階に切り替えるものであったが他の態様であってもよい。例えば、炭化物温度Tcに応じて2段階以上の複数段階でターンテーブル24aの回転速度を切り替えるようにしてもよい。また例えば、ターンテーブル24aの回転速度を段階的に切り替えず、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcと反比例する速度となるようにターンテーブル24aの回転速度を制御するようにしてもよい。
【0169】
また、以上の
図9に示すフローチャートにおいては、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoが第1堆積量Ao1以上であるか否かに応じてターンテーブル24aの回転速度を2段階に切り替えるものであったが他の態様であってもよい。例えば、堆積量Aoに応じて2段階以上の複数段階でターンテーブル24aの回転速度を切り替えるようにしてもよい。また例えば、ターンテーブル24aの回転速度を段階的に切り替えず、レベルセンサ28dが検出する堆積量Aoと比例する速度となるようにターンテーブル24aの回転速度を制御するようにしてもよい。
【0170】
また、以上の
図9に示すフローチャートにおいては、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcとレベルセンサ28dが検出する堆積量Aoの双方を用いてターンテーブル24aの回転速度を制御するものであったが他の態様であってもよい。例えば、温度センサ28cが検出する炭化物温度Tcとレベルセンサ28dが検出する堆積量Aoの何れか一方を用いてターンテーブル24aの回転速度を制御するようにしてもよい。
【0171】
次に、
図10から
図12を用いて、本実施形態の熱分解炉30について詳細に説明する。
図10は、
図1に示す熱分解炉30の縦断面図である。
図10において、軸線Zは、熱分解炉30が設置される設置面(図示略)に対して直交する鉛直方向(重力方向)を示している。
【0172】
図10に示すように、本実施形態の熱分解炉30は、本体部31と、反応管32と、反応管ヘッド33(供給部)と、水性ガス出口ノズル34(水性ガス出口部)と、燃焼ガス供給部35(加熱用ガス供給部)と、燃焼ガス排出部36(加熱用ガス排出部)と、グランドパッキン37(第1シール部)と、グランドパッキン38(第2シール部)と、グランドパッキン39(第3シール部)とを備える。
【0173】
本体部31は、軸線Zに沿って延びる略円筒状に形成される部材である。本体部31はその内部に反応管32を収容する空間を形成している。本体部31は、熱分解炉30の外装を形成する金属製(例えば鉄製)のハウジング31aと、ハウジング31aの内周面に貼り付けられる断熱材31bと、断熱材31bの内周面に貼り付けられる耐熱材31cとを有する。
【0174】
略円筒状の本体部31の上面は平面視円環状の上板31dで構成されており、本体部31の底面は平面視円環状の底板31eで構成されている。また、本体部31の側面31fの上端には上端フランジ31g(第1フランジ部)が設けられており、本体部31の側面31fの下端には下端フランジ31i(第2フランジ部)が設けられている。
【0175】
上板31dと上端フランジ部31gとは、軸線Z回りの複数箇所で上板31dと上端フランジ部31gとの間に図示しないガスケット(第4シール部)を挟んだ状態で締結ボルト31h(締結部材)によって締結されている。同様に、底板31eと下端フランジ31iとは、軸線Z回りの複数箇所で底板31eと下端フランジ31iとの間に図示しないガスケット(第5シール部)を挟んだ状態で締結ボルト31j(締結部材)によって締結されている。
【0176】
反応管32は、軸線Zに沿って延びる略円筒状に形成される機構である。反応管32は、本体部31の内周面との間に燃焼ガス(加熱用ガス)を流通させるための燃焼ガス流路30aを形成する外周面32dを有する。反応管32は、センターパイプ32a(管状部材)と、上端フランジ32b(第3フランジ部)と、複数の第1傾斜板32fと、複数の第2傾斜板32gと、複数の保持棒32h(保持部)とを有する。
【0177】
図10に示すように、反応管32の上端フランジ32b及び上端フランジ32b側のセンターパイプ32aの端部は、本体部31の上板31d(上面)から上方へ突出している。また、反応管32の下端部32cは、本体部31の底板31d(底面)から下方へ突出している。
【0178】
センターパイプ32aは、軸線Zに沿って延びる円筒状に形成される部材である。センターパイプ32aの内部には、複数の第1傾斜板32fと複数の第2傾斜板32gと複数の保持棒32h(保持部)からなる熱分解促進機構が収容されている。熱分解促進機構は、炭化物をセンターパイプ32aの上端側から下端側まで段階的に導いて炭化物を反応管32の内部に滞留させることにより、炭化物及び過熱蒸気(ガス化剤)の熱分解反応を促進させる機構である。
【0179】
図10及び
図11に示すように、複数の第1傾斜板32f及び複数の第2傾斜板32gは、軸線Zに沿った複数箇所で4本の保持棒32hによって保持されている。また、第1傾斜板32f及び第2傾斜板32gは、軸線Zに沿って交互に配置されている。4本の保持棒32hの上端は、反応管ヘッド33の下端フランジ33aの下面に取り付けられている。反応管32の上端フランジ32bと反応管ヘッド33の下端フランジ33aとの締結を解除することにより、熱分解促進機構はセンターパイプ32aから上方に取り外す(着脱する)ことが可能となっている。
【0180】
図11(a)に示す第1傾斜板32fは、炭化物を反応管32の内周面32eの一端部(
図11(a)中の左端部)から他端部(
図11(a)中の右端部)に設けられた第1開口部32iへ導くように傾斜した第1傾斜面を形成するように配置されている。また、
図11(b)に示す第2傾斜板32fは、炭化物を反応管32の内周面32eの他端部(
図11(b)中の右端部)から一端部(
図11(b)中の左端部)に設けられた第2開口部32jへ導くように傾斜した第2傾斜面を形成するように配置されている。
【0181】
図10に示すように、第1傾斜板32fが形成する第1傾斜面は第2開口部32jから落下した炭化物を下方へ導くように傾斜しており、第2傾斜板32gが形成する第2傾斜面は第1開口部32iから落下した炭化物を下方へ導くように傾斜している。このように、熱分解促進機構は、軸線Zに沿って交互に配置される第1傾斜板32fと第2傾斜板32gとを用いて炭化物をセンターパイプ32aの上端側から下端側まで段階的に導くことができる。
【0182】
第1傾斜面及び第2傾斜面の軸線Zに直交する平面に対する傾斜角度は、炭化物の性状に応じて任意に設定することができるが、炭化物を確実に傾斜面に沿って移動させるために炭化物の安息角以上の角度とするのが好ましい。一方、傾斜角度を大きくしすぎると炭化物の反応管32内での滞留時間が短くなり、熱分解反応が十分に促進されない。そのため、第1傾斜面及び第2傾斜面の軸線Zに直交する平面に対する傾斜角度は、20°以上かつ60°以下の範囲で炭化物の安息角以上となるように定めるのが特に好ましい。
【0183】
反応管ヘッド33は、反応管32に取り付けられると共に反応管32の内部へ炭化物と過熱蒸気(ガス化剤)とを供給して反応管32の内部で水性ガスを生成させるものである。反応管ヘッド33は、反応管32と取り付けられる下端フランジ33a(第4フランジ)と、炭化物供給路101に取り付けられる上端フランジ33bと、蒸気過熱器81から過熱蒸気が供給される流路(図示略)に取り付けられる側方フランジ33cとを有する。
【0184】
反応管ヘッド33の下端フランジ33aと反応管32の上端フランジ32bとは、軸線Z回りの複数箇所でこれらの間に図示しないガスケット(第6シール部)を挟んだ状態で締結ボルト33dによって締結されている。
【0185】
水性ガス出口ノズル34は、反応管32の下端部32cに取り付けられる略筒状の部材である。水性ガス出口ノズル34は、反応管32の内部で炭化物の熱分解反応により生成された水性ガス、炭化物の未反応分、及び灰分等の残渣を、水性ガス供給路102を介して減温器40へ導く。
【0186】
燃焼ガス供給部35は、本体部31の上方に設けられると共に燃焼ガス流路200aから導かれる燃焼ガスを燃焼ガス流路30aへ供給する開口部である。燃焼ガス排出部36は、本体部31の下方に設けられると共に燃焼ガス流路30aから燃焼ガス流路200bへ燃焼ガスを排出する開口部である。燃焼ガス供給部35から燃焼ガス流路30aへ供給される燃焼ガスは、センターパイプ32aの外周面32dを加熱しながらセンターパイプ32aの上端側から下端側に向けて流通し、燃焼ガス排出部36から排出される。
【0187】
グランドパッキン37は、本体部31の上板31dから燃焼ガス流路30a内の燃焼ガスが外部へ流出することを遮断する部材である。グランドパッキン37は、本体部31の上板31dの下面と接するように設けられると共に反応管32の外周面32dと接触する内周面37dを有する平面視円環状の部材である。
【0188】
グランドパッキン37は、セラミックボード37aとセラミックボード37bとセラミックファイバ一37cとを互いに密着させた状態で構成されている。比較的容易に変形可能な繊維状の素材であるセラミックファイバー37cを用いることにより、断熱材31b及び耐熱材31cと接触する部分におけるシール性を高めている。
【0189】
グランドパッキン38は、本体部31の底面31eから燃焼ガス流路30a内の燃焼ガスが外部へ流出することを、遮断する部材である。グランドパッキン38は、本体部31の底板31eの上面と接するように設けられると共に反応管32の外周面32dと接触する内周面38dを有する平面視円環状の部材である。
【0190】
グランドパッキン38は、セラミックボード38aとセラミックボード38bとセラミックファイバー38cとを互いに密着させた状態で構成されている。比較的容易に変形可能な繊維状の素材であるセラミックファイバ一38cを用いることにより、断熱材31b及び耐熱材31cと接触する部分におけるシール性を高めている。
【0191】
グランドパッキン39は、
図12に示すように、反応管32の下端部32cと水性ガス出口ノズル34との取付位置において、取付位置からの水性ガスの流出を遮断する部材である。グランドパッキン39は、反応管32の外周面32d及び水性ガス出ロノズル34の外周面34aのそれぞれと接触する内周面39dを有する平面視円環形状の部材となっている。
【0192】
図12に示すように、グランドパッキン39は、円環状のパッキン部材39aと、円環状のパッキン部材39bと、パッキン押さえ部材39cとを有する。パッキン押さえ部材39cを底板31eに締結ボルトで締結することにより、パッキン部材39a及びパッキン部材39bが軸線Z方向に収縮すると共に軸線Zに直交する径方向に膨張する。グランドパッキン39が径方向に膨張することにより、グランドパッキン39の内周面39dが反応管32の外周面32d及び水性ガス出口ノズル34の外周面34aのそれぞれと接触してシール領域を形成する。
【0193】
次に、
図13を用いて、本実施形態の熱分解炉30、減温器40、サイクロン50、蒸気発生器80、蒸気過熱器81、及びその周辺の機器について詳細に説明する。
図13に示すように、炭化物供給路101は、スクリューコンベア101aと、クリンカ除去装置101bと、ベルトコンベア101cと、磁選機101dと、スクリューコンベア101eと、スクリューコンベア101fとを有する。
【0194】
スクリューコンベア101aは、炭化炉20から排出された炭化物を運搬する装置である。スクリューコンベア101aは、直線状に延びる筒体の内部にスクリューを収容したものである。スクリューコンベア101aは、モータの駆動力によってスクリューを筒体の内部で回転させることにより、炭化物を筒体の延びる方向に沿って運搬する。
【0195】
クリンカ除去装置101bは、スクリューコンベア101aから排出される炭化物から一定以上の粒径のクリンカをネット等により除去する装置である。クリンカが除去された炭化物はベルトコンベア101cによって磁選機101dまで運搬される。磁選機101dは、炭化物に含まれる釘等の鉄製の屑を磁石により除去する装置である。鉄製の屑が除去された炭化物は、スクリューコンベア101eへ供給される。
【0196】
スクリューコンベア101e及びスクリューコンベア101fは、それぞれ炭化物を運搬する装置である。スクリューコンベア101fは、炭化物を熱分解炉30が有する窒素置換器30bへ供給する。なお、スクリューコンベア101e及びスクリューコンベア101fの構造は、スクリューコンベア101aと同様であるので説明を省略する。
【0197】
スクリューコンベア101eとスクリューコンベア101fとで熱分解炉30の上方まで炭化物を運搬しているのは、炭化物を熱分解炉30の上方から供給し、炭化物の自重によって熱分解炉30の反応管32中に炭化物を通過させるためである。炭化物の自重によって熱分解炉30の反応管32を通過させることにより、反応管32の上端から下端までの全領域を、熱分解反応を促進する領域として利用することができる。また、炭化物の自重によって反応管32中に炭化物を通過させるため、炭化物を移動させるための特段の動力を必要としない。
【0198】
なお、スクリューコンベア101eとスクリューコンベア101fとの2段階で炭化物を運搬しているのは、各スクリューコンベアがスクリューを回転させるのに必要とする動力を少なくして駆動力の大きな高価なモータを必要としないようにするためである。
【0199】
窒素置換器30bは、熱分解炉30を構成する機器であり、炭化物と共にスクリューコンベア101fから供給される空気に含まれる酸素を不活性な窒素ガスと置換するための装置である。窒素置換器30bは、スクリューコンベア101fと連結される上方と反応管ヘッド33と連結される下方のそれぞれに配置され、制御装置90によって開閉状態が制御される電動式の制御弁(例えば、ボール弁)を有する。
【0200】
制御装置90は、上方の制御弁を開状態とし下方の制御弁を閉状態とすることで窒素置換器30bの内部に炭化物を供給する。制御装置90は、窒素置換器30bの内部に供給される炭化物が一定量に達した場合、スクリューコンベア101fによる炭化物の運搬を停止させると共に、窒素置換器30bの上方の制御弁を閉状態とする。
【0201】
窒素置換器30bには、空気分離装置等の窒素ガスを生成する装置から窒素ガスが常時供給されるようになっている。そのため、窒素置換器30bの上方及び下方の制御弁を閉状態として一定時間が経過すると、炭化物と共に窒素置換器30bの内部に供給された空気が外部に排出されて内部が窒素ガスで置換された状態となる。
【0202】
制御装置90は、窒素置換器30bの内部が窒素ガスで置換された状態となった後に、窒素置換器30bの下方の制御弁を開状態に切り替えて窒素置換器30bから反応管ヘッド33へ炭化物を供給する。制御装置90は、窒素置換器30bから反応管ヘッド33へ炭化物を供給した後、窒素置換器30bの下方の制御弁を閉状態とする。また、制御装置90は、その後に窒素置換器30bの上方の制御弁を開状態として窒素置換器30bの内部に新たな炭化物を供給する。
【0203】
制御装置90は、以上のように窒素置換器30bの上方及び下方の制御弁の開閉を制御することにより、反応管ヘッド33へ炭化物と共に供給される気体を窒素ガスとしている。この窒素ガスは、反応管32で生成される水性ガスと反応しない不活性ガスである。そのため、炭化物と共に酸索を含む空気が反応管32へ供給され、酸素と水性ガスとが反応して水性ガスの収率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0204】
チャー回収装置41は、窒素置換器41aとチャー回収部41bとを有する。窒素置換器41aは、炭化物の未反応分と共に減温器40から供給される水性ガスを不活性な窒素ガスと置換するための装置である。チャー回収部41bは、炭化物の未反応分を回収して図示しない供給経路から窒素置換器30bへ供給する装置である。窒素置換器41aは、減温器40と連結される上方とチャー回収部41bと連結される下方のそれぞれに配置され、制御装置90によって開閉状態が制御される電動式の制御弁(例えば、ボール弁)を有する。
【0205】
制御装置90は、上方の制御弁を開状態とし下方の制御弁を閉状態とすることで窒素置換器41aの内部に炭化物の未反応分を供給する。制御装置90は、窒素置換器41aの内部に供給される炭化物の未反応分が一定量に達した場合、窒素置換器41aの上方の制御弁を閉状態とする。
【0206】
窒素置換器41aには、空気分離装置等の窒素ガスを生成する装置から窒素ガスが常時供給されるようになっている。そのため、窒素置換器41aの上方及び下方の制御弁を閉状態として一定時間が経過すると、炭化物の未反応分と共に窒素置換器41aの内部に供給された水性ガスが外部に排出されて内部が窒素ガスで置換された状態となる。なお、窒素置換器41aから排出される水性ガスは、フレアースタック71に供給されるようになっている。
【0207】
制御装置90は、窒素置換器41aの内部が窒素ガスで置換された状態となった後に、窒素置換器41aの下方の制御弁を開状態に切り替えて窒素置換器41aからチャー回収部41bへ炭化物の未反応分を供給する。制御装置90は、窒素置換器41aからチャー回収部41bへ炭化物の未反応分を供給した後、窒素置換器41aの下方の制御弁を閉状態とする。また、制御装置90は、その後に窒素置換器41aの上方の制御弁を開状態として窒素置換器41aの内部に新たな炭化物の未反応分を供給する。
【0208】
制御装置90は、以上のように窒素置換器41aの上方及び下方の制御弁の開閉を制御することにより、チャー回収部41bへ炭化物の未反応分と共に供給される水性ガスがチャー回収部41bへ供給されるのを防止している。
【0209】
残渣回収装置51は、窒素置換器51aと残渣回収部51bとを有する。窒素置換器51aは、残渣と共にサイクロン50から供給される水性ガスを不活性な窒素ガスと置換するための装置である。残渣回収部51bは、窒素置換器51aから排出される残渣を回収する装置である。
【0210】
窒素置換器51aは、サイクロン50と連結される上方と残渣回収部51bと連結される下方のそれぞれに配置され、制御装置90によって開閉状態が制御される電動式の制御弁(例えば、ボール弁)を有する。窒素置換器51aには、空気分離装置等の窒素ガスを生成する装置から窒素ガスが常時供給されるようになっている。
【0211】
なお、制御装置90は、窒素置換器41aの制御弁を制御するのと同様に窒素置換器51aの制御弁を制御し、水性ガスが残渣回収部51bへ供給されるのを防止するものである。制御装置90が窒素置換器51aの制御弁を制御する方法は、制御装置90が窒素置換器41aの制御弁を制御する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0212】
蒸気発生器80は、蒸気発生部80aと蒸気循環タンク80bとを有する。蒸気発生部80aは、燃焼ガスと熱交換する水を内部に流通させる伝熱管(図示略)と、伝熱管を覆うように形成される筒体に設けられると共に水を内部に流通させるジャケット(図示略)とを有する。伝熱管とジャケットには、それぞれ蒸気循環タンク80bから水が供給されるようになっている。
【0213】
蒸気循環タンク80bは、水供給装置82から水が供給されると共に水を蒸気発生部80aの伝熱管及びジャケットに供給する。ジャケットで熱された温水と、伝熱管が燃焼ガスによって加熱されて生成した蒸気とは、それぞれ蒸気循環タンク80bに回収される。蒸気循環タンク80bは、蒸気発生部80aの伝熱管から供給された蒸気(飽和蒸気)を、蒸気過熱器81へ供給する。
【0214】
次に、
図14を用いて、本実施形態の乾燥機10について詳細に説明する。乾燥機10は、ロータリキルンと呼ばれる方式の乾燥機であり、燃焼ガス導入部10bと、回転体10cと、排出部10dとを有する。燃焼ガス導入部10bは、燃焼ガス流路200dから供給される燃焼ガスを乾燥機10の内部へ導入すると共に導入した燃焼ガスを回転体10cの内部へ導くものである。
【0215】
回転体10cは、軸線Wに沿って延びる方向に形成される円筒状の部材であり駆動モータによって回転動力を与えられることにより軸線W回りに回転する。また、回転体10cの内部には、原料供給路11aから有機廃棄物が供給される。回転体10cの内部に供給された有機廃棄物は、燃焼ガス導入部10bから導かれる燃焼ガスによって乾燥されながら排出部10dに向けて導かれる。有機廃棄物は、回転体10cの回転によって撹拌されながら燃焼ガスによって直接的に加熱され、回転体10cの一端から他端まで燃焼ガスの流れによって搬送される。
【0216】
排出部10dは、回転体10cによって搬送されながら乾燥した有機廃棄物を回収して原料供給路10aへ供給する。原料供給路10aへ供給された有機廃棄物は、ホッパ12を介して炭化炉20へ供給される。また、排出部10dは、燃焼ガス導入部10bから回転体10cの内部を通過して導かれた燃焼ガスを燃焼ガス流路200eへ供給する。燃焼ガス流路200eへ供給された燃焼ガスは、排ガス冷却洗浄装置13へ供給される。
【0217】
以上、説明した本発明の一実施形態が奏する作用及び効果について、それぞれ説明する。
【0218】
はじめに、本発明の炭化炉について説明する。本発明の一実施形態の炭化炉20においては、本体部21の内周面21dと円筒部22の外周面22aとの間に形成される間隙20aに有機廃棄物投入部23から有機廃棄物が投入され、1次空気供給部25から間隙20aに供給される1次燃焼用空気によって有機廃棄物が部分燃焼する。炭化炉20の通常運転状態において、本体部21と円筒部22との間の間隙20aは、軸線Xに沿った下方から上方に至るまで有機廃棄物投入部23から投入される有機廃棄物が堆積している。
【0219】
間隙20aの上層側は1次燃焼用空気によって有機廃棄物が部分燃焼する1次燃焼領域R2となっている。1次燃焼領域R2においては、有機廃棄物が1次燃焼用空気によって部分燃焼し、炭化物を多く含む固形分と可燃性ガスを含む燃焼ガスとが生成される。一方、間隙20aの下層側の有機廃葉物は上層側の有機廃棄物によって閉塞されており、炭化物を多く含む固形分が精錬及び冷却される炭化物精錬・冷却領域R1となっている。炭化物精錬・冷却領域R1においては、炭化物を多く含む固形分が、酸素濃度が低い状態で更に炭化されながら精錬され、間隙20aの下端に近付くに従って徐々に消火される。これにより、間隙20aの下端から排出される炭化物が冷却される。
【0220】
更に、本発明の一実施形態の炭化炉20は、間隙20aに向けて有機廃棄物を部分燃焼させる1次燃焼用空気を供給する1次空気供給部25とは別に、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる2次燃焼用空気を本体部21の内部の2次燃焼領域R4へ供給する2次空気供給部26を備えると共に、2次空気供給部26が供給する2次燃焼用空気の供給量は、炭化炉制御部29によって温度センサ28aが検出する温度に応じて制御されるシステムとなっている。
【0221】
しかし、従来、1)有機廃棄物の部分燃焼により生成する可燃性ガスに含まれる、冷却に伴って凝固して高い粘性を示す液体(「タール」ともいう)となる高分子炭化水素の問題、2)有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の冷却が不十分で、炭化物搬送機構の損傷や排出された炭化物と空気との接触による発火の問題、及び、3)有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の炭化効率の問題、があった。
【0222】
高分子炭化水素の問題は、次のような要因で発生する。2次燃焼用空気の量が2次燃焼領域R4の燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを完全燃焼させる量に対して過剰に多くなり、可燃性ガスの燃焼に用いられない余剰空気が2次燃焼領域R4に多量に供給される場合、2次燃焼ファン26aが送風する空気(大気)の温度は2次燃焼領域R4の雰囲気温度よりも低いため、多量の余剰空気によって2次燃焼領域R4の雰囲気温度が低下してしまう。
その結果、2次燃焼領域R4における可燃性ガスの燃焼効率が悪化し、可燃性ガスを多く含んだままの燃焼ガスが燃焼ガス排出部27から排出されてしまうこととなる。このような可燃性ガスには、凝固してタールとなる成分である高分子炭化水素が含まれているため、可燃性ガスに多量に含まれるタールが凝固して、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に損傷を与えるという問題が生じる。
【0223】
そこで、本発明の一実施形態の炭化炉20は、炭化炉制御部29が、温度センサ28aが検出する燃焼ガスの温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1よりも低いと判定した場合、2次燃焼領域R4に供給される余剰空気量を減少させるために、2次燃焼ファン26aの送風量を減少させることを特徴としている。これにより、2次燃焼領域R4の雰囲気温度が低下せずに維持され、燃焼ガスに凝固してタールとなる成分が多量に含まれないように可燃性ガスを燃焼させ、炭化炉20及びその下流側に設置される機器に与える損傷を抑制することができるという効果がある。
【0224】
逆に、燃焼ガスの温度Tgが高くなり過ぎると、炭化炉20及び燃焼ガス流路200aを耐熱性に優れた高価な材料を必要となるという問題が生じる。
【0225】
そこで、炭化炉制御部29が、温度センサ28aが検出する燃焼ガスの温度Tgが第1燃焼ガス温度Tg1より高いと判定した場合、第2燃焼ガス温度Tg2以下となるように2次空気供給部26が供給する2次燃焼用空気の供給量を増加するように制御する。この結果で、燃焼ガス排出部27から排出される燃焼ガスの温度Tgが第2燃焼ガス温度Tg2以下となるため、炭化炉20及び炭化炉20から熱分解炉30まで燃焼ガスを導く燃焼ガス流路200aが必要とする耐熱温度を第2燃焼ガス温度Tg2以下とすることができる。よって、炭化炉20及び燃焼ガス流路200aを耐熱温度が比較的低い安価な材料で製造することができるようになるという効果がある。
【0226】
上記燃焼ガスの温度Tgについては、第1燃焼ガス温度Tg1が900℃であり、第2燃焼ガス温度Tg2が1300℃であるように、炭化炉制御部29が2次燃焼用空気の供給量を制御することが好ましい。更に、第1燃焼ガス温度Tg1が1000℃であり、第2燃焼ガス温度Tg2が1200℃であるように、炭化炉制御部29が2次燃焼用空気の供給量を制御することがより好ましい。その結果、凝固してタールとなる高分子炭化水素がより多量に含まれないように炭化炉20内の2次燃焼領域R4で可燃性ガスを燃焼させ、かつ炭化炉20及び炭化炉20から熱分解炉30まで燃焼ガスを導く燃焼ガス流路200aが必要とする耐熱温度をより低くすることができる。
【0227】
炭化物の温度の問題は、次のような要因で生じる。投入部23から間隙20aへの有機廃棄物の投入が停止される場合、間隙20aに堆積する有機廃棄物の量が徐々に少なくなり、炭化物を消火させる炭化物精錬・冷却領域R1が徐々に狭くなる。この場合、ターンテーブル24aの回転速度を一定のままで維持すると、1次燃焼領域R2で炭化されて高温となった炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1で十分に冷却されないため、炭化物が十分に冷却されない状態で間隙20aの下端から排出されてしまうという問題が生じる。
【0228】
そこで、本発明の一実施形態の炭化炉20においては、炭化炉制御部29が、温度センサ28bが検出する炭化物の温度に応じて炭化物排出部24が外部へ排出する炭化物の排出量を制御することを特徴としている。より具体的には、炭化炉制御部29が、温度センサ28bが検出する炭化物の温度が第1炭化物温度Tc1より低い場合は、第1回転速度Rs1でターンテーブル24aを回転させるよう駆動モータ24bを制御し、温度センサ28bが検出する炭化物の温度が第1炭化物温度Tc1以上である場合は、第1回転速度Rs1より低い第2回転速度Rs2でターンテーブル24aを回転させるよう駆動モータ24bを制御することである。
【0229】
炭化炉制御部29が、温度センサ28bが検出する炭化物の温度が第1炭化物温度Tc1以上である場合に、ターンテーブル24aを回転させる回転速度を低下させることにより、単位時間あたりに間隙20aの下端から炭化物排出口24cへ導かれる炭化物の量が減少する。その結果、1次燃焼領域R2で炭化されて高温となった炭化物が間隙20aの下方で滞留する時間が長くなり、炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1で十分に冷却され、適切に冷却された状態で炭化物が間隙20aの下端より排出されるようになるという効果が発現する。
【0230】
従って、本発明の一実施形態によれば、有機廃棄物が燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出させる炭化炉20を提供することができる。例えば、有機廃棄物の投入が停止される場合であっても、排出される炭化物の温度を適切に低下させることができる。その上、温度が適切に低下した炭化物を炭化炉から排出することが可能となるため、排出された炭化物が空気に触れることで再度発火してしまうという問題を解消することができる。
【0231】
同様の問題は、本発明の別の一実施形態によっても解決することができる。その解決手段は、本発明の一実施形態の炭化炉20において、炭化炉制御部29が、レベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量Aoに応じて炭化物排出部24が外部へ排出する炭化物の排出量を制御することである。より具体的には、炭化炉制御部29が、レベルセンサ28dが検出する炭化物の堆積量が第1堆積量Ao1以上である場合は第1回転速度Rs1でターンテーブル24aを回転させるよう駆動モータ24eを制御し、レベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下である場合は第1回転速度Rs1より低い第2回転速度Rs2でターンテーブル24aを回転させるよう駆動モータ24eを制御する手段である。
【0232】
炭化炉制御部29が、レベルセンサ28dが検出する有機廃棄物の堆積量Aoが第1堆積量Ao1以下である場合、ターンテーブル24aを回転させる回転速度を低下させることにより、単位時間あたりに間隙20aの下端から炭化物排出口24cへ導かれる炭化物の量が減少する。その結果、1次燃焼領域R2で炭化されて高温となった炭化物が間隙20aの下方で滞留する時間が長くなり、炭化物が炭化物精錬・冷却領域R1で十分に冷却され、適切に冷却された状態で炭化物が間隙20aの下端から排出されるようになるという効果が発現する。
【0233】
このように、有機廃棄物の部分燃焼により生成する炭化物の冷却が不十分で、炭化物搬送機構の損傷や排出された炭化物と空気との接触による発火の問題は、上記いずれか一方の手段で解決することができるが、両者を併用することによって、より安定した炭化物の温度制御が可能となる。
【0234】
次いで、有機廃棄物の炭化効率の問題について説明する。有機廃棄物の炭化効率は、1次燃焼領域R2へ供給する1次燃焼用空気として外部の空気(大気)を用いる場合、外部の空気は1次燃焼領域R2の雰囲気温度に比べて低いため、外部の空気によって1次燃焼領域R2の雰囲気温度が低下するということに起因している。
【0235】
そこで、本発明の一実施形態の炭化炉20は、1次燃焼ファン25aにより送風された空気を放熱フィン25eによって加熱し、加熱された空気を空気供給口25cから間隙20aへ供給するようにしたことを特徴としている。間隙20aへ供給される空気が放熱フィン25eによって加熱されるため、間隙20aへ供給される空気を加熱しない場合に比べ、1次燃焼領域R2の雰囲気温度が低下することを抑制することができる。従って、本発明の一実施形態によれば、有機廃棄物の燃焼用空気として外部の空気を供給しつつ有機廃葉物の炭化効率を向上させることが可能な炭化炉20を提供することができる。
【0236】
更に、上記炭化効率の解決手段に、次のような種々の解決手段を少なくとも一つ以上組込むことが好ましい。
【0237】
第一に、本発明の一実施形態の炭化炉20の1次空気供給部25に、間隙20aの外周側に配置されると共に本体部21の外周面21eとの間に軸線X回りに延びる閉空間25dを形成するカバー部25bを有することが好ましい。この閉空間25dを設けることによって、1次燃焼ファン25aにより外部から導入された空気が、閉空間25d内部で加熱されると共に、閉空間25d内部の放熱フィン25eによっても加熱されるため、空気を効率良く十分に加熱して空気供給口25cから間隙20aへ供給することができるという効果がある。
【0238】
第二に、本発明の一実施形態の炭化炉20の1次空気供給部25の放熱フィン25eを、本体部21の外周面21eを介して間隙20aの雰囲気温度を伝熱する伝熱部材とすることが好ましい。これによって、閉空間25dを加熱するための専用の加熱源を用いることなく、炭化炉20の間際20aの雰囲気温度を利用して1次燃焼ファン25aが外部から導入した空気を加熱することができるという効果が生じる。
【0239】
第三に、本発明の一実施形態の炭化炉20の1次空気供給部25の放熱フィン25eを、空気供給口25cよりも下方に配置することを特徴としている。空気供給口25cは間隙20aに向けて空気を供給するものであるため、空気供給口25cの下方における本体部21の外周面21eは間隙20aの雰囲気温度が伝熱される領域となっており、放熱フィン25eにも、本体部21の外周面21eを介して間隙20aの雰囲気温度が伝熱される。従って、放熱フィン25eによって1次燃焼ファン25aが外部から導入した空気を効率良く加熱して空気供給口25cから間隙20aへ供給することができる効果がある。
【0240】
第四に、本発明の一実施形態の炭化炉20の1次空気供給部25の1次燃焼ファン25aは、間隙20aの下方の外周側に位置する本体部21の外周面21eに向けて外部から導入した空気を送風するようにしていることを特徴としている。間隙20aの下方は、有機廃棄物の燃焼により生成される炭化物を多く含む固形分が精錬および冷却される炭化物精錬・冷却領域R1となっているため、間隙20aの下方は、比較的低い温度に維持されることが望ましい。本一実施形態によれば、間隙20aの下方の外周側に位置する本体部21の外周面21eが、1次燃焼ファン25aが送風する空気によって冷却されるので、間隙20aの下方は、比較的低い温度に維持することができる効果がある。
【0241】
第五に、本発明の一実施形態の炭化炉20は、空気供給口25cが配置される位置における本体部21の内周面21dから外周面21eまでの距難D1よりも、放熱フィン25eが配置される位置における本体部21eの内周面21dから外周面21eまでの距離D2の方が短くなっていることを特徴としている。そのため、間隙20aの雰囲気は、放熱フィン25eが配置される位置においてより熱が伝達されやすくなっている。よって、間隙20aの雰囲気は、より効率良く放熱フィン25eから熱が伝達され、1次燃焼ファン25aが外部から導入した空気をより高い温度に加熱することができる。
【0242】
第六に、本発明の一実施形態の炭化炉20の放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eに接触するとともに外周面21eに沿って軸線X回りに延びる環状に形成され、軸線Xに沿った複数箇所に設けられていることを特徴としている。軸線Xに沿って複数箇所に設けられた隣接する放熱フィン25eによって本体部21の外周面21eに沿って延びる複数の空気流路が形成されるため、この空気流路を流通する空気を効率良く加熱する効果が生じる。
【0243】
更に、放熱フィン25eは、本体部21の外周面21eに接触するとともに外周面21eに沿って軸線X回りに下方から上方へ向けて旋回する螺旋状の流路を形成するものであることがより好ましい。螺旋状の流路を形成することにより、1次燃焼ファン25aにより送風された空気は、外周面21eに沿って軸線X回りに下方から上方へ向けて旋回しながら空気供給口25cへ導かれるため、空気の流通が円滑に行われると共に、放熱フィン25eによって形成される空気流路を流通する空気を加熱する効果が向上する。
【0244】
次いで、本発明の熱分解炉について説明する。従来、外筒と内筒との間の空隙に供給される炭化炉で生成された燃焼ガス及び熱分解炉で生成する水性ガスの外部への流出の問題、並びに、水性ガスの収率の問題があった。
【0245】
まず、燃焼ガスの流出に関して説明する。本発明の一実施形態の熱分解炉30においては、反応管へツド32から反応管32の内部へ供給される炭化物とガス化剤である過熱蒸気が、燃焼ガス流路30aを流通する高温の燃焼ガス(加熱用ガス)によって熱されることにより熱分解反応が行われ、水性ガスが生成される。その際、反応管32の外周面32dは、燃焼ガス流路30aを流通する高温の燃焼ガスによって熱されて熱膨張し、軸線Zに沿った長さが長くなる。反応管32は軸線Zに沿って配置されているため、熱膨張があっても反応管32の下端部32cは本体部31の底板31eに対して固定された状態が維持されるとすると、反応管32の熱膨張により、反応管32の上端フランジ32bの軸線Zに沿った位置が上方へ移動する可能性がある。
【0246】
そこで、本発明の一実施形態の熱分解炉30は、本体部31の上板31dの下方に上板31dと接するように設けられるグランドパッキン37を備えていることを特徴としている。グランドパッキン37は、反応管32の外周面32dと接触する内周面37dを有する平面視円環状の部材である。反応管32が熱膨張すると、反応管32の外周面32dとグランドバッキン37の内周面37dとが摺動するが、反応管32の外周面32dとグランドパッキン37の内周面37dとが接触してシール領域が形成された状態が維持される。また、グランドバッキン37は上板31dと接するように設けられているため、グランドパッキン37と上板31dとの間にもシール領域が形成された状態が維持される。
【0247】
従って、本発明の一実施形態によれば、本体部31との間に流通する燃焼ガスによって熱分解反応が内部で行われる反応管32が熱膨張する場合に、本体部31の上板31dと反応管32の外周面32dとの隙間から燃焼ガスが外部へ流出することを抑制することができる効果が生じる。
【0248】
また、本発明の一実施形態の熱分解炉30は、反応管32の下端部32cが本体部31の底面31eから下方へ突出しているので、上記反応管32の上端部と同様の現象が生じる可能性がある。そこで、本発明の一実施形態の熱分解炉30は、本体部31の底板31eの上方に底板31eと接するように設けられると共に、反応管32の外周面32dと接触する内周面38dを有するグランドパッキン38を備えていることを特徴としている。グランドパッキン38は、反応管32の外周面32dと接触する内周面38dを有する平面視円環状の部材である。反応管32は加熱されるが、温度分布があり、下端部32c側では熱膨張による延びが比較的少ないため、反応管32の外周面32dとグランドパッキン38の内周面38dとが接触してシール領域が形成された状態が維持される。また、グランドパッキン38は底板31eと接するように設けられているため、グランドパッキン38と底板31eとの間にもシール領域が形成された状態が維持される。
【0249】
従って、本発明の一実施形態によれば、本体部31との間に流通する燃焼ガスによって熱分解反応が内部で行われる反応管32が熱膨張する場合に、本体部31の底板31eと反応管32の外周面32dとの隙間から燃焼ガスが外部へ流出することを抑制することができる効果が生じる。
【0250】
本発明の一実施形態の熱分解炉30は、その他においても、燃焼ガス流路30aを流通する高温の燃焼ガスによって生じる反応管32の熱膨張によって燃焼ガスが流出する可能性がある締結部にその対策が講じられている。その締結部は、上板31dと上端フランジ部31gとが締結される位置、及び、底板31eと下端フランジ31iとが締結される位置である。
【0251】
すなわち、本発明の一実施形態の熱分解炉30においては、本体部31の側面31fの上端に設けられた上端フランジ31gと上板31dとが、それらの間にガスケットを挟んだ状態で、軸線Z回りの複数箇所が締結ボルト31hによって締結されていることを特徴とする。また、本体部31の側面31fの下端に設けられた下端フランジ31iと底板31eとが、それらの間にガスケットを挟んだ状態で、軸線Z回りの複数箇所が締結ボルト31jによって締結されていることを特徴とする。その結果、上板31dと上端フランジ部31gとが締結される位置、及び、底板31eと下端フランジ31iとが締結される位置において、燃焼ガス流路30aを流通する燃焼ガスが外部へ流出することを抑制することができる効果を奏する。
【0252】
同様に、反応管32の熱膨張が原因で、水性ガスが流出する可能性が生じる反応管32の取付位置がある。水性ガス出口ノズル34及び反応管ヘッド33との取付位置である。
【0253】
本発明の一実施形態の熱分解炉30においては、反応管32の下端部32cには、反応管32の内部で炭化物の熱分解反応により生成された水性ガスを外部へ導く水性ガス出口ノズル34が取り付けられているが、その取付位置から生じる水性ガスの流出を遮断するグランドパッキン39が設けられていることを特徴としている。グランドパッキン39は、反応管32の外周面32aおよび水性ガス出口ノズル34の外周面34aのそれぞれと接触する内周面39dを有する平面視円環形状である。従って、本発明の一実施形態によれば、反応管32の下端部32cと水性ガス出口ノズル34の取付位置から反応管32の内部で生成された水性ガスが外部へ流出することを抑制することができる効果を奏する。
【0254】
また、本発明の一実施形態の熱分解炉30においては、反応管32には上端フランジ32bが設けられており、反応管ヘッド33の下端部には下端フランジ33aが設けられているが、反応管32の上端フランジ部32bと反応管ヘッド33の下端フランジ部33aとが、それらの間にガスケットを挟んだ状態で、軸線Z回りの複数箇所で締結ボルト33dによって締結されていることを特徴とする。その結果、反応管ヘッド33の下端フランジ33aと反応管32の上端フランジ32bとが締結される位置において、反応管32の内部で生成された水性ガスが外部へ流出することを抑制することができる効果を奏する。
【0255】
次に、水性ガスの収率の問題に関して説明する。本発明の一実施形態の熱分解炉30は、反応管ヘッド32から反応管32の内部へ供給される炭化物とガス化剤である過熱蒸気が、反応管32の上端から下端に向けて移動するため、反応管32の上端から下端に向けた全ての領域が燃焼ガス流路30aを流通する高温の燃焼ガスによって熱されることにより熱分解反応が行われ、水性ガスが生成される。この炭化物と過熱蒸気との熱分解反応は吸熱反応であるため、反応管32の上端側で反応管32の内部の雰囲気温度が低下しやすい傾向にあり、反応管32の内部の雰囲気温度が低下してしまう現象があり、熱分解反応が促進されず水性ガスの収率が悪化してしまう可能性がある。
【0256】
そこで、本発明の一実施形態の熱分解炉30においては、まず、燃焼ガス流路30aへ燃焼ガスを供給する燃焼ガス供給部35を本体部31の上方に設け、燃焼ガス流路30aから燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出部36を本体部31の下方に設けることを特徴としている。その結果、内部の雰囲気温度が低下しやすい反応管32の上端側から高温の燃焼ガスが供給されるため、反応管32の上端側に温度が低下してしまう領域が発生することを抑制することができるので、反応管32の内部の雰囲気温度が低下して水性ガスの収率が悪化してしまう不具合を抑制することができる。
【0257】
また、本発明の一実施形態の熱分解炉30においては、反応管32は、軸線Zに沿って延びる円筒状に形成されるセンターパイプ32aと、その内部に収容されるとともに上端から供給される炭化物を上端から段階的に下端部32cまで導くことで炭化物および過熱蒸気(ガス化剤)の熱分解反応を促進させる熱分解促進機構を有していることを特徴としている。熱分解促進機構は、具体的には、複数の第1傾斜板32fと複数の第2傾斜板32gとこれらを保持する複数本の保持棒32hとからなる機構である。
【0258】
第1傾斜板32fは、炭化物を反応管32の内周面32eの一端部から他端部に設けられた第1開口部32iへ導くように傾斜した第1傾斜面を有している。一方、第2傾斜板32gは、第1開口部32iから下方へ落下した炭化物を反応管32の内周面32eの他端部から一端部に設けられた第2開口部32jへ導くように傾斜した第2傾斜面を有している。
【0259】
第1傾斜板32fと第2傾斜板32gとは複数の保持棒32hによって軸線Zに沿って交互に配置されるように保持されている。そのため、炭化物は、反応管32の上端から第1傾斜面に落下してから第1開口部32iへ導かれて下方に落下し、第2傾斜面に落下してから第2開口部32jへ導かれて更に下方に落下するというという段階的な移動を繰り返す。これにより、炭化物が反応管32の内部に滞留する時間が長くなり(例えば、10秒〜15秒)、それに伴って熱分解反応が促進されて水性ガスの収率が向上するという効果を奏する。
【0260】
間接的な効果を奏するものではあるが、複数の第1傾斜板32fと複数の第2傾斜板32gとこれらを保持する複数本の保持構32hとからなる上記熱解促進機構は、センターパイプ32aから着脱可能となっていることが好ましい。具体的には、反応管32に上端フランジ32bと反応管ヘッド33の下端フランジ33aとを締結ボルト33dで締結する構造とすることである。この締結ボルト33dを外すことによって、センターパイプ32aから熱分解促進機構を容易に取り外すことができるため、熱分解促進機構を構成する複数の第1傾斜板32fと複数の第2傾斜板32gとこれらを保持する複数本の保持棒32hとを容易に洗浄することができる。このような洗浄を効果的に行うことによって、水性ガスの収率を向上させる効果を奏する。
【0261】
更に、本発明の一実施形態の熱分解炉30は、その外部に、熱分解炉30の水性ガス出口ノズル34から排出される未反応の炭化物(チャー)を回収して熱分解炉30の反応管ヘッド33へ再び供給するチャー回収装置41を備えることを特徴としている。チャー回収装置41が回収した未反応の炭化物を再び反応管ヘッド33へ供給することによって、水性ガスの収率を更に向上させることができる。
【0262】
最後に、水性ガス生成システム、水素ガス生成システム、及び、発電システムについて説明する。
【0263】
従来の水性ガス生成システムは、炭化物のガス化剤として用いる過熱蒸気を生成する熱源や有機廃棄物を乾燥させる熱源として専用の熱源を用いるため、システム全体の熱効率が低いという問題があった。
【0264】
そこで、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100は、次のように構成されていることを特徴としている。炭化炉20は、有機廃棄物を部分燃焼させて炭化物と燃焼ガスとを生成し、炭化物を熱分解炉30の反応管ヘッド33へ供給する。反応管ヘッド33に供給された炭化物は、同じく反応管ヘッド33に供給される過熱蒸気とともに反応管32のセンターパイプ32aの上端側からセンターパイプ32a内に供給される。一方、炭化炉20から燃焼ガス流路200aへ排出された燃焼ガスは、高温を維持したまま熱分解炉30の燃焼ガス供給口35へ供給される。燃焼ガス供給口35から燃焼ガス流路30aへ供給された燃焼ガスは、反応管32のセンターパイプ32aの上端側を加熱しながら下方へ導かれセンターパイプ32aの下端側の燃焼ガス排出口36から燃焼ガス流路200bへ排出される。反応管32の内部は燃焼ガスによって高温状態が維持されるため、その内部で炭化物と過熱蒸気との熱分解反応が促進される。
【0265】
このように、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100によれば、炭化炉20で生成された燃焼ガスが他の熱媒体との熱交換をすることなく温度を維持したまま熱分解炉30に供給される。そのため、他の熱媒体との熱交換により温度が低下した燃焼ガスを熱分解炉30に供給する場合に比べ、熱分解反応を促進させて水性ガスの収率を向上させることができる。
【0266】
また、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100は、熱分解炉30における熱分解反応の促進に用いられた燃焼ガスが、その後に蒸気過熱器81の熱源として用いられ、更にその後に蒸気発生器80の熱源として用いられることを特徴としている。蒸気過熱器81とは、蒸気発生器80で発生した飽和水蒸気を等圧のまま加熱することで飽和温度以上の過熱蒸気を生成するものであり、蒸気発生器80とは、液体である水を加熱して飽和水蒸気を生成するものである。そのため、蒸気過熱器81は蒸気発生器80よりも高温の熱源を必要とするので、燃焼ガスを蒸気過熱器81の後に蒸気発生器80へ供給することにより、液体である水から水蒸気を生成した上でそれを加熱して過熱蒸気を生成して熱分解炉30へガス化剤として供給することができる。従って、蒸気過熱器90で適切な温度まで上昇した過熱蒸気を生成することにより、熱分解炉30内で過熱蒸気の温度が熱分解反応(吸熱反応)により低下しても水蒸気が熱分解炉30内で凝縮しないようにすることができる効果がある。
【0267】
このように、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100によれば、熱分解炉30における熱分解反応の促進に用いられた燃焼ガスが、水から過熱蒸気を生成するための熱源としても利用される。そのため、過熱蒸気を生成する熱源として専用の熱源を用いる場合に比べ、水性ガス生成システム100全体の熱効率を向上させることができる。
【0268】
更に、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100は、蒸気発生器80で水蒸気を発生させるための熱源として用いられた燃焼ガスは、その後に燃焼ガス流路200dによって乾燥機10に供給されることを特徴としている。乾燥機10に供給される燃焼ガスは、蒸気過熱器81および蒸気発生器80の熱源として用いられて温度が低下しているものの、木質バイオマス等の有機廃棄物が含む永分を低下させるのには十分な温度となっている。そのため、有機廃棄物を乾燥させる熱源として専用の熱源を用いる場合に比べ、水性ガス生成システム100全体の熱効率を向上させることができる。
【0269】
より更に好ましいことに、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100は、炭化炉20から排出された燃焼ガスは、熱分解炉30、蒸気過熱器81、蒸気発生器81、及び、乾燥機10の熱源として用いられた後、排ガス冷却洗浄装置13へ供給されることを特徴としている。排ガス冷却洗浄装置l3は、燃焼ガスを大気中に排出するために燃焼ガスの温度を低下させる必要があるが、排ガス冷却洗浄装置13へ供給される燃焼ガスの温度は、有機廃棄物を乾燥させる熱源として利用され、十分に低下した状態となっている。そのため、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100によれば、排ガス冷却洗浄装置13が低下させるべき温度幅を小さくして、排ガス冷却洗浄装置13を比較的安価に製造することができる。
【0270】
以上のように、本発明の一実施形態の水性ガス生成システム100によれば、炭化物のガス化剤として用いる過熱蒸気を生成する専用の熱源を用いずに熱効率を向上させるとともに熱分解炉30における熱分解反応を促進させることが可能な水性ガス生成システム100を提供することができる。それと共に、燃焼ガスは、有機廃棄物を乾燥させる熱源として利用され、水性ガス生成システム100全体の熱効率を向上させることができる上、排ガス冷却洗浄装置13を比較的安価に製造することができる効果もある。
【0271】
上記本発明の一実施形態である水性ガス生成システム100に、同じく、本発明の一実施形態として示した、燃焼効率が高く、燃焼した炭化物の温度が適切に低下した炭化物を排出する、炭化効率の高い炭化炉、並びに、本発明の一実施形態として示した、加熱用ガスの外部流出が抑制され、熱分解反応が進行する熱分解炉とを適用することによって、より純度が高い水性ガスを、より効率的に生成することが可能な水性ガス生成システムを提供することができる。
【0272】
このような本発明の一実施形態である水性ガス生成システム100は、純度が高い水性ガスが、効率的に生成されることができるため、生産性に優れた水素ガス生成システムを構築することができる。従来の水性ガスから水素ガスを生成するシステムにおいては、水性ガスの純度が低いため、不純物を除去したり、水素濃度を高める設備が水素ガス生成システムに必要とされた(例えば、非特許文献2)。しかし、本発明の一実施形態である水素ガス生成システムは、本発明の一実施形態である水性ガス生成システム100と、不純物を吸着する一般的な水素精製装置73と、を備えたものであり、水素ガスを効率的に生成することができる。
【0273】
同様に、本発明の一実施形態である水性ガス生成システム100は、純度が高く、組成比が一定した水性ガスが、効率的に生成されることができるため、生産性に優れた発電システムを構築することができる。従来の水性ガスから発電するシステムにおいては、水性ガスの純度が低いため、燃焼効率が悪く、不純物を除去する場合もあった。しかし、本発明の一実施形態である発電システムは、本発明の一実施形態である水性ガス生成システム100と、水性ガスを燃焼させることにより動作する一般的な発電設備72と、を備えたものであり、電気を効率的に生成することができる。
【0274】
〔他の実施形態〕
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。