特許第6824746号(P6824746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824746
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】抗酸化剤及び抗酸化/UVケア化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20210121BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20210121BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210121BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20210121BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20210121BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20210121BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210121BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20210121BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20210121BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20210121BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61Q19/08
   A61Q19/00
   A61Q1/04
   A61Q1/10
   A61Q1/12
   A61Q17/04
   A61P1/04
   A61P17/18
   A61P43/00 111
   A61K31/716
   A61P39/06
   A23L33/125
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-568374(P2016-568374)
(86)(22)【出願日】2016年1月4日
(86)【国際出願番号】JP2016050042
(87)【国際公開番号】WO2016111265
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-1966(P2015-1966)
(32)【優先日】2015年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古屋敷 隆
(72)【発明者】
【氏名】芦田 均
(72)【発明者】
【氏名】三谷 塁一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 泰淳
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−335628(JP,A)
【文献】 特開2009−227632(JP,A)
【文献】 特開2013−126965(JP,A)
【文献】 特開2007−031315(JP,A)
【文献】 特開2011−256126(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/035848(WO,A1)
【文献】 特開2003−321373(JP,A)
【文献】 特開2002−322078(JP,A)
【文献】 特開平07−102252(JP,A)
【文献】 特開2004−026766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/33−33/44
A61P 1/00−43/00
A23L 33/00−33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)からなる抗酸化剤。
【請求項2】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)からなる活性酸素抑制剤。
【請求項3】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)からなる抗酸化酵素の産生促進剤。
【請求項4】
抗酸化酵素がHO-1である、請求項3に記載の産生促進剤。
【請求項5】
抗酸化酵素がNQO-1である、請求項3に記載の産生促進剤。
【請求項6】
Nrf-2の発現を増加させることで抗酸化酵素の産生を促進する請求項3〜5のいずれか1項に記載の産生促進剤。
【請求項7】
抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤を含む抗酸化化粧料であって、抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤が酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)からなる、抗酸化化粧料(但し、ESG又はRG以外の酸化防止剤を含む化粧料を除く)
【請求項8】
抗酸化酵素の産生促進により抗酸化作用を発現する、請求項7に記載の抗酸化化粧料。
【請求項9】
抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤を含むUVケア化粧料であって、抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤が酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)からなる、UVケア化粧料(但し、紫外線吸収剤を含む化粧料を除く)
【請求項10】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤として含む消化管炎症の予防又は治療剤。
【請求項11】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤として含む抗酸化飲食品。
【請求項12】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を化粧料に配合することにより化粧料に抗酸化作用、活性酸素抑制作用又は抗酸化酵素の産生促進作用を付与する方法(但し、ESG又はRG以外の酸化防止剤を含む化粧料に抗酸化作用、活性酸素抑制作用又は抗酸化酵素の産生促進作用を付与する方法を除く)
【請求項13】
抗酸化酵素の産生促進により抗酸化作用を発現する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を化粧料に配合することにより化粧料にUVケア作用を付与する方法(但し、紫外線吸収剤を含む化粧料にUVケア作用を付与する方法を除く)
【請求項15】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)からなる抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤を配合する工程を含む、抗酸化化粧料の製造方法(但し、ESG又はRG以外の酸化防止剤を含む抗酸化化粧料の製造方法を除く)
【請求項16】
抗酸化酵素の産生促進により抗酸化作用を発現する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)からなる抗酸化剤、活性酸素抑制剤又は抗酸化酵素の産生促進剤を配合する工程を含む、UVケア化粧料の製造方法(但し、紫外線吸収剤を含むUVケア化粧料の製造方法を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化剤、抗酸化化粧料もしくはUVケア化粧料に関する。
また本発明は、活性酸素抑制剤、抗酸化酵素の産生促進剤、消化管炎症の予防又は治療剤に関する。
【0002】
さらに本発明は、抗酸化飲食品及び生体内における抗酸化作用を高めるための使用に関する。
【背景技術】
【0003】
生体の抗酸化能を向上させるには、ビタミン類やポリフェノール類、カロテノイド類など抗酸化作用の高い成分を摂取する方法が一般的である。近年、生体内で産生される抗酸化酵素の産生量を高めることで、生体の抗酸化能を向上させる技術が開発された。その方法としては、西洋タンポポ由来多糖類(非特許文献1)イシクラゲ由来のシトネミン(非特許文献2)を免疫系の細胞に処理する方法やイソフムロン類、または異性化ホップエキスを食べる方法(特許文献1)などが提案されている。天然物は非常に高価であることや、生産ロットによる効果のバラつきが出ることがある(特許文献2〜5)。また、一般的にそれら天然物は光や熱に不安定であり、飲食物に配合して使用する場合には、安定性の面で問題がある。さらに、水溶性が低く、飲料等に使いにくい面もある(特許文献6〜8)。さらには、天然物の抽出物場合は、複数の化合物が混在しており、活性本体が不明確である場合がある(特許文献1)。
【0004】
グリコーゲンは、動物における貯蔵多糖として知られ、多数のグルコースがα-1,4グルコシド結合によって重合した、枝分かれの多い高分子である。グリコーゲンは肝臓と骨格筋で主に合成され、余剰のグルコースを一時的に貯蔵する役割を果たしている。
【0005】
特許文献9は、酵素合成グリコーゲンが血糖値、内臓脂肪、血中コレステロール、中性脂肪など網羅的に改善することを記載する。
【0006】
また、特許文献10は酵素合成グリコーゲンの製造方法を開示する。
【0007】
さらに、特許文献11は、酵素合成グリコーゲンを配合した皮膚外用剤を開示するが、酵素合成グリコーゲンの抗酸化作用についての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/043671
【特許文献2】特開平9-23848
【特許文献3】特開2002-3709798
【特許文献4】特開平8-73350
【特許文献5】特開平1-279827
【特許文献6】特開2007-126455
【特許文献7】特開2007-126455
【特許文献8】特表2013-510076
【特許文献9】特開2013-75917
【特許文献10】WO2006/035848
【特許文献11】特開2009-227632
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Food Chem Toxicol Vol.66 Page.56-64 (2014)
【非特許文献2】Food Chem Toxicol、Vol.69 Page.330-338 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、安価で、かつ安全性、安定性に優れ、活性本体の明らかな抗酸化剤及び化粧料を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、活性酸素抑制剤、抗酸化酵素の産生促進剤、消化管炎症の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、抗酸化作用を有する飲食品、哺乳類などの生体内で抗酸化作用を高めるための使用の発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)が抗酸化作用を有し、腸における炎症の予防又は治療作用を有し、さらに肌における酸化ストレス及びUV(UV-A、UV-B)照射による障害を軽減する抗酸化/UVケア化粧料の成分、抗酸化飲食品の成分として有用であることを見出した。
【0014】
本発明は、以下の抗酸化剤、活性酸素抑制剤、抗酸化酵素の産生促進剤、抗酸化/UVケア化粧料、消化管炎症の予防又は治療剤、抗酸化飲食品及び生体内における抗酸化作用を高めるための使用に関する。
項1. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を含む抗酸化剤。
項2. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を含む活性酸素抑制剤。
項3. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を含む抗酸化酵素の産生促進剤。
項4. 抗酸化酵素がHO-1である、項3に記載の産生促進剤。
項5. 抗酸化酵素がNQO-1である、項3に記載の産生促進剤。
項6. Nrf-2の発現を増加させることで抗酸化酵素の産生を促進する項3〜5のいずれか1項に記載の産生促進剤。
項7. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を含む抗酸化化粧料。
項8. 抗酸化酵素の産生促進により抗酸化作用を発現する、項7に記載の抗酸化化粧料。
項9. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を含むUVケア化粧料。
項10. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を含む消化管炎症の予防又は治療剤。
項11. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)を含む抗酸化飲食品。
項12. 酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)の生体内における抗酸化作用を高めるための使用。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生体の抗酸化能を向上させることにより、腸の炎症や、肌での紫外線もしくは活性酸素による酸化ストレスを軽減することができる。ESG、RGなどによる抗酸化作用、UVケア作用などは抗酸化蛋白質の発現誘導に基づくと考えられ、これらの作用は細胞又は生体において有効に機能する。
【0016】
本発明では、安価で、かつ安全性、安定性に優れ、活性本体の明らかな酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)により、生体内又は肌における抗酸化能力を向上させることができ、酸化ストレスに関与する肌のトラブル、小腸、大腸における炎症を予防又は治療することができる。
【0017】
本発明は、抗酸化作用、活性酸素抑制作用、抗酸化酵素の産生促進作用、消化管炎症の予防作用を有する、医薬組成物、飲食品、製剤などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ESGがデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)により惹起される大腸の萎縮に及ぼす影響(マウス)(A)体重。(B) 大腸の長さ(写真)。(C) 大腸の長さ(グラフ)。
図2】ESGが大腸組織での酸化ストレスの蓄積に及ぼす影響(マウス)。
図3】ESGが大腸組織における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果(マウス)。
図4】ESGおよびRGがマクロファージ細胞(RAW264.7)での活性酸素種(ROS)の蓄積に及ぼす影響。
図5】ESGおよびRGがマクロファージ細胞(RAW264.7)における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果。
図6】ESGおよびRGがマクロファージ細胞(RAW264.7)における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果。(A)RG(Enz)とRGとESGの関係を示す模式図。(B) 酸化作用に関わるタンパク質の発現量をウエスタンブロット法で解析した結果。(C)DCF/DAPIの比。グラフは、veh(vehicle)を基準とした相対値として示す。
図7】天然物由来グリコーゲンが抗酸化タンパク質の発現量とROSの蓄積に及ぼす影響(RAW264.7)。(A)抗酸化作用に関わるタンパク質の発現量をウエスタンブロット法で解析した結果。(B)DCF/DAPIの比として算出した結果。グラフは、veh(vehicle)を基準とした相対値として示す。
図8】ESGおよびRGが表皮細胞(NHEK)における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす影響。
図9】ESG及びRGがNHEKにおけるUVB照射誘導ROS蓄積に与える影響。
図10】ESGがHO-1およびNQO-1ノックダウンNHEKにおけるROSの蓄積に与える影響。
図11】ESGおよびRGがNHEKにおける抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果。(A) ESG (Enz)、RG(Enz)、RG、ESGの関係を示す模式図。(B)ESG (Enz), RG (Enz) を用いてESG、RGと比較検討を行った結果。(C)DCF/DAPIの比として算出した結果。グラフは、UVB(+)を基準とした相対値として示した。
図12】ESGおよびRGがUVB照射誘導caspase-3, -9活性に与える影響(NHEK)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いる酵素合成グリコーゲン(ESG)としては、特許文献10(WO2006/035848)に記載の方法に従って得られるものが挙げられる。すなわち、グリコーゲンを合成する能力を有するブランチングエンザイムを溶液中で基質に作用させてグリコーゲンを生産する工程により製造されるものである。基質は主にα-1,4-グルコシド結合で連結された重合度4以上のα-グルカンであり、澱粉枝切り物、デキストリン枝切り物または酵素合成アミロースが該基質として好ましく使用できる。好ましい酵素合成グリコーゲン(ESG)は、重量平均分子量が100万Da以上であり、ESGに50U/g基質のプルラナーゼを60℃で30分作用させた場合に得られる生成物をMALLS法によって分析した場合の重量平均分子量が50万Da以上であり、かつESGに300U/g基質のα-アミラーゼを37℃で30分作用させた場合に得られる生成物をMALLS法によって分析した場合の重量平均分子量が50万Da以上のものである。
【0020】
酵素合成グリコーゲン(ESG)をαアミラーゼで消化した消化物(RG)は、ESGを摂取した哺乳動物(例えばヒト)の消化管で生じるものを模したものであり、実施例ではESGを400U/gESGのα-アミラーゼで24時間消化した後に、未消化の高分子画分を回収することで作成したRGを使用した。ESGとRGは図6(A)に模式的に示されている。
天然のグリコーゲンは抗酸化蛋白質の発現誘導作用、抗酸化作用、UVケア作用などは認められないので、これらの作用はESG又はRGに特有の作用である。抗酸化酵素としては、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)、NAD(P)Hキノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)が挙げられる。酵素合成グリコーゲン(ESG)又はそのαアミラーゼ消化物(RG)は、HO-1、NQO-1の発現を誘導するとともに、HO-1の発現に関与する転写因子であるNrf2を誘導する。ESG又はRGが抗酸化作用を示す1つのメカニズムは、Nrf2を介したHO-1及びNQO-1 の発現誘導である。
【0021】
抗酸化作用の第2のメカニズムは活性酸素種(ROS)の抑制である。ROSの抑制により脂質の酸化、炎症などが抑制され、ROSによる細胞のダメージは抑制される。
本発明の抗酸化剤、活性酸素抑制剤、抗酸化酵素の産生促進剤、消化管炎症の予防又は治療剤は、経口摂取により生体内で抗酸化等の作用を発現させてもよく、化粧料として肌に適用し、肌においてこれらの作用を発現させてもよい。
【0022】
本明細書において「化粧料」としては、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料やファンデーション、口紅、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料などが挙げられる。化粧料の好ましい用途は抗酸化及びUVケアである。
【0023】
本発明は、ESG及び/又はRGを含む飲食品にも関する。
【0024】
本発明において、ESG又はRGを含む飲食品としては、乳飲料、発酵乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、栄養補助飲料、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、アイスクリーム、ヨーグルト、バター、粉ミルク、パン類、サプリメント、栄養食、流動食などが挙げられる。これらの飲食品は、抗酸化作用、活性酸素抑制作用、抗酸化酵素の産生促進作用、消化管炎症の予防作用などを有することが好ましい。
【0025】
ESG及び/又はRGは動物、特に哺乳類の生体内で抗酸化作用を有する。哺乳類としては、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、イヌ、ネコなどが挙げられ、特にヒトが好ましい。本発明の抗酸化化粧料及びUVケア化粧料には、保湿成分、美白成分、紫外線吸収剤/散乱剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、界面活性剤、酸化防止剤およびその他成分からなる群から選ばれる少なくとも一種を酵素合成グリコーゲンとともに配合することができる。
【0026】
保湿成分としては、アスコルビン酸及びその誘導体、アスコルビン酸以外のビタミン類、ピリドキシンの誘導体、α−トコフェロールの誘導体、パントテン酸誘導体、グルコース、キシリトール、デキストリンなどの糖類及び糖誘導体、D-パンテノールおよびその誘導体、アミノ酸類及びその誘導体、多価アルコール、フェノール及びその誘導体、コラーゲン類、ヒアルロン酸などのムコ多糖類、天然保湿因子、高級アルコール類、低級アルコール類、アルコール、鉱物油、植物性油脂、動物性油脂、ヒドロキシカルボン酸及びその塩、ハイドロキシサリチル酸配糖体、ハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルの配糖体、ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体、カフェイン酸及びその誘導体、植物から抽出したエキス類、生薬エキス類、天然エキス類、胎盤抽出物、油溶性甘草抽出物、海藻抽出物、セラミド類、セラミド類似構造物粗糖抽出物、粗糖抽出物、糖蜜抽出物、菌糸体培養物及びその抽出物、植物発酵エキス類、酵母エキス類、各種菌の発酵エキス類、尿素、ヒノキチオール、イオウ、アゼライン及びその誘導体、ビタミンE−ニコチネートとジイソプロピルアミンジクロロアセテート、深層水、アルカリ単純温泉水、リン酸化糖及びそのミネラル塩などが挙げられ、これらの保湿成分の1種又は2種以上を配合できる。
【0027】
美白成分としては、チロシナーゼ阻害剤、エンドセリン拮抗剤、α-MSH阻害剤、α-アルブチン、アルブチン及びその塩さらにはその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、エラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩、コウジ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、ノルジヒドログアイアレチン酸、テプレノン、アラントイン、アミノエチル化合物、アルキレンジアミンカルボン酸誘導体、ベタイン誘導体、アシルメチルタウリン、ヘデラコサイド、ギムネマサポニン、ビートサポニンγ−ピロン配糖体、ビフェニル化合物、亜硫酸水素ナトリウム、フィブロネクチン、植物抽出液類などが挙げられ、これらの美白成分の1種又は2種以上を配合できる。
【0028】
紫外線吸収剤/散乱剤としては、安息香酸系紫外線吸収剤 パラアミノ安息香酸(以下PABAと略する)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAアミルエステル、N,N−ジメチルPABAオクチルエステル、アントラニル酸系紫外線吸収剤 ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート、サリチル酸系紫外線吸収剤 アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート、桂皮酸系紫外線吸収剤 オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルへキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ4′−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルへキシル−4′−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン、その他の紫外線吸収剤 3−(4′−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4′−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられ、これらの紫外線吸収剤/散乱剤の1種又は2種以上を配合できる。
【0029】
細胞賦活化剤としては、CoQ10、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、サイクリックAMP、サイクリックGMP、フラビンアデニンヌクレオチド、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、キサンチン及びそれらの誘導体、カフェイン、テオフェリンおよびその塩、レチノール及びパルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等のレチノール誘導体、レチナール及びデヒドロレチナール等のレチナール誘導体、カロチンなどのカロチノイド及びビタミンA類、レスベラトロール、レスベラトロール配糖体、チアミンおよびチアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩等のチアミン塩類、リボフラビンおよび酢酸リボフラビンなどのリボフラビン塩類、ピリドキシンおよび塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン塩類、フラビンアデニンヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸およびニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸誘導体、コリン類などのビタミンB類、γ−リノレン酸およびその誘導体、エイコサペンタエン酸及びその誘導体、エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩、グリコール酸、コハク酸、乳酸、サリチル酸などの有機酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、植物抽出エキス類、海藻抽出エキス類などが挙げられ、これらの細胞賦活化剤の1種又は2種以上を配合できる。
【0030】
酸化防止剤としては、レチノール、デヒドロレチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチナール、レチノイン酸、ビタミンA油などのビタミンA類およびそれらの誘導体及びそれらの塩、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、フコキサンチンなどのカロテノイド類及びその誘導体、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサール−5−リン酸エステル、ピリドキサミンなどのビタミンB類、それらの誘導体及びそれらの塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等のビタミンC類、それらの誘導体及びそれらの塩、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、1、2、5−ジヒドロキシ−コレカルシフェロールなどのビタミンD類、それらの誘導体及びそれらの塩、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類、それらの誘導体及びそれらの塩、トロロックス、その誘導体及びそれらの塩、ジヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、α−リポ酸、デヒドロリポ酸、グルタチオン、その誘導体及びそれらの塩、尿酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム等のエリソルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、没食子酸、没食子酸プロピルなどの没食子酸、その誘導体及びそれらの塩、ルチン、α−グリコシル−ルチンなどのルチン、その誘導体及びそれらの塩、トリプトファン、その誘導体及びそれらの塩、ヒスチジン、その誘導体及びそれらの塩、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、N−オクタノイルシステイン、N−アセチルシステインメチルエステル等のシステイン誘導体及びそれらの塩、N、N’−ジアセチルシスチンジメチルエステル、N、N’−ジオクタノイルシスチンジメチルエステル、N、N’−ジオクタノイルホモシスチンジメチルエステルなどのシスチン誘導体及びそれらの塩、カルノシン及びその誘導体及びそれらの塩、ホモカルノシン及びその誘導体及びそれらの塩、アンセリン及びその誘導体及びそれらの塩、カルシニン及びその誘導体及びそれらの塩、ヒスチジン及び/又はトリプトファン及び/又はヒスタミンを含むジペプチド又はトリペプチド誘導体及びそれらの塩、フラバノン、フラボン、アントシアニン、アントシアニジン、フラボノール、クエルセチン、ケルシトリン、ミリセチン、フィセチン、ハマメリタンニン、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのフラボノイド類、タンニン酸、カフェ酸、フェルラ酸、プロトカテク酸、カルコン、オリザノール、カルノソール、セサモール、セサミン、セサモリン、ジンゲロン、クルクミン、テトラヒドロクルクミン、クロバミド、デオキシクロバミド、ショウガオール、カプサイシン、バニリルアミド、エラグ酸、ブロムフェノール、フラボグラシン、メラノイジン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンヌクレオチド、ユビキノン、ユビキノール、マンニトール、ビリルビン、コレステロール、エブセレン、セレノメチオニン、セルロプラスミン、トランスフェリン、ラクトフェリン、アルブミン、ビリルビン、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、メタロチオネイン、O−ホスホノ−ピリドキシリデンローダミン、及び米国特許第5、594、012記載のN−(2−ヒドロキシベンジル)アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、及びN−(4−ピリドキシルメチレン)アミノ酸、並びにその誘導体及びそれらの塩、植物抽出エキス類、海藻抽出エキス類などが挙げられ、これらの酸化防止剤の1種又は2種以上を配合できる。
【0031】
界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどの両親媒性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどの非イオン界面活性剤、レシチンなどの天然界面活性剤などが挙げられ、これらの界面活性剤の1種又は2種以上を配合できる。
【0032】
抗炎症剤としては、酸化亜鉛、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムなどのグリチルリチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、β−グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウムなどのグリチルレチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、トラネキサム酸、コンドロイチン硫酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、各種微生物及び動植物の抽出物などが挙げられ、これらの抗炎症剤の1種又は2種以上を配合できる。
【0033】
その他成分としては、製油などの香料類や顔料、合成色素などの色素類、血行促進剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
【0034】
本明細書において「消化管炎症」としては、活性酸素もしくは酸化ストレスが関与して消化管における炎症が生じもしくは炎症による症状が発現している消化管の疾患が挙げられ、具体的には胃炎、大腸炎、出血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群などが挙げられる。本発明の予防又は治療薬により消化管炎症が治癒されるか、或いは、症状が軽減される。
【0035】
本発明の化粧料における、ESG又はRGの配合量としては、抗酸化作用もしくはUVケア作用を発現する限り特に限定されないが、例えば0.01〜10質量%程度、好ましくは0.05〜5質量%程度である。
【0036】
本発明の飲食品における、ESG又はRGの配合量としては、抗酸化作用を発現する限り特に限定されないが、例えば0.01〜50質量%程度、好ましくは0.05〜20質量%程度である。
【0037】
本発明の生体内における抗酸化作用を高めるための使用の発明において、ESG又はRGの成人1日あたりの摂取量は、0.1〜20g程度、好ましくは1〜10g程度である。 本発明の抗酸化もしくはUVケア化粧料を肌に適用することにより酸化ストレスもしくは紫外線による障害が緩和、軽減される。
【0038】
本発明の消化管炎症の予防又は治療剤の成人1日あたりの投与量は、0.1〜20g程度、好ましくは1〜10g程度であり、1日に1回又は2〜4回に分割して投与することができる。
本発明の消化管炎症の予防剤は、サプリメントを含む飲食品などとして日常的に摂取することで、消化管の炎症を予防ないし軽減することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
【0040】
実施例で使用するESG、RGは、以下のように調製/入手した。また、哺乳動物に経口摂取されたESGの約20質量%がRGに変換されるので(T. Furuyashiki et al. Food Funct., 2011, 2, 183-189)、RGはESGの20質量%に対応する量で投与した。
【0041】
ESGは、特許文献10(WO2006/035848)に記載の方法に従って調製した。RGは、ESGを基質にして、400U/g基質の量でα-アミラーゼを24時間、37℃処理した後に、未消化の高分子画分を精製することで調製した。
【0042】
ESG(Enz)は、ESGを基質にして、十分量のα-アミラーゼおよびイソアミラーゼを2時間、37℃処理した後に、十分量のグルコアミラーゼで24時間、37℃処理することにより完全にグルコースまで分解して調製した。酵素処理後、グルコース量を定量することで完全に分解されていることを確認した。
【0043】
RG(Enz)は、RGを基質にして、ESG(Enz)と同様の処理をすることにより完全にグルコースまで分解して調製した。酵素処理後、グルコース量を定量することで完全に分解されていることを確認した。
実施例1:DSSにより惹起される大腸の萎縮に及ぼす影響(図1)
実験動物は日本SLCよりC57BL/6マウス(6週齢、雌性)を購入し、1週間予備飼育の後、4群(A、B、C、D)に分け、それぞれ以下の操作を行った。
A) 水に溶解したESG(100 mg)を2週間経口投与した。(ESG群)
B) 水に溶解したESG(100 mg)を2週間経口投与した。投与開始1週間後から飲み水を2%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)(分子量36,000-50,000)を含むものに交換し飼育終了まで継続した。(ESG/DSS群)
C) ESGを含まない水を2週間経口投与した。(Cont群)
D) ESGを含まない水を2週間経口投与した。投与開始1週間後から飲み水を2%のDSSを含むものに交換し飼育終了まで継続した。(DSS群)
飼育は「神戸大学六甲台地区動物実験委員会規則」(承認番号:26-05-12)を遵守し、動物実験委員会の承認のもと、計画に従って実施した。室温25±2℃、湿度なりゆきに調節した部屋で、照明時間/日(9:00〜21:00)の条件下で飼育した。体重は毎日計測した(図1(A))。飼育終了時には、麻酔薬投与下で心臓採血後、大腸を摘出し、大腸の長さを測定した(図1(B))。図1(A)、(C)において、異なるアルファベット(a,b)間に有意差(p<0.05)があることを示す(p<0.05)。図1に示す結果より、ESGは大腸の炎症を予防又は治療できることが明らかになった。
【0044】
実施例2:大腸組織での酸化ストレスの蓄積に及ぼす影響(図2)
大腸内の酸化ストレスの指標として、脂質過酸化物量を2-thiobarbituric acidとの反応生成物である2-thiobarbituric acid-reactive substances(TBARS)として測定した。実施例1の実験で回収したマウスの大腸組織(30 mg)をハサミで細かく裁断し、Buffer(20 mM Hepes-NaOH, pH 7.5, containing 0.5% Nonidet P-40, 1 mM EDTA, 1μM butylated hydroxytuluene, 1 mM phenylmethlsulfonyl fluoride, and 10 μg/ml leupeptin)を1 ml加え、ホモジナイザーでホモジナイズした後、20,000×g、4℃で20分間遠心分離し、上清を回収し、全タンパク質画分とした。タンパク質画分(150μg/125μl)を20 % trichloroacetic acid (75 μl)、 0.8 % 2-thiobarbituric acid(50 μl)と混合し、90℃で40分間インキュベートした。室温まで冷却後、TBARSの蛍光強度(励起/吸光:530 nm/590 nm)を測定した。図2のグラフは、コントロール(Cont)を基準とした相対値として示す。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b)間に有意差(p<0.05)がある。ESGがDSSにより誘発された過酸化脂質の増加及び活性酸素を有意に抑制できることが明らかになった。
【0045】
実施例3:大腸組織における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果(図3)
実施例1の実験で回収した大腸組織(30 mg)をハサミで細かく裁断し、Lysis buffer(50 mM Tris-HCl, pH 7.5, containing 150 mM NaCl, 0.5% Nonidet P-40, 10 mM sodium pyrophosphate, 2 mM EDTA, 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride, and 10 μg/ml leupeptin)を1 ml加え、ホモジナイザーでホモジナイズした後、20,000×g、4℃で20分間遠心分離し、上清を回収し、全タンパク質画分とした。回収したタンパク質をWestern blot法に供し、NF-E2 related factor 2(Nrf2)、heme oxygenase-1(HO-1)、β-actinの発現量を評価した。ウエスタンブロット法で得られた各タンパク質のバンド強度を画像解析ソフト(Image J)で数値化し、ハウスキーピング遺伝子であるβ-actinのバンド強度でノーマライズ化した。グラフは、コントロール(Cont)を基準とした相対値として示す。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b,c)間に有意差(p<0.05)がある。ESGがHO-1及びNrf2の発現を有意に増加させることが明らかになった。
【0046】
実施例4:培養細胞での活性酸素種(ROS)の蓄積に及ぼす影響(図4)
大腸上皮には多くのマクロファージ細胞が存在し、酸化ストレスがマクロファージ細胞を刺激することで炎症性サイトカインが分泌される。さらに炎症性サイトカインは、さらに酸化ストレスを生じることで悪循環を促し、大腸炎を誘発するとされる。そこでマクロファージ細胞における酸化ストレスの蓄積に及ぼすESGの効果を検討した。
【0047】
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7細胞)はAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA, USA)から購入し、細胞は、10%のウシ胎児血清を含むDulbecco‘s modified Eagle’s mediumに終濃度が4.5 g/LになるようにD-glucoseを配合した培地(DMEM-HG)で培養した。RAW264.7細胞を培養している培地に、ESGまたはRGを添加し、24時間作用させた。その後、培地を新鮮なDMEM-HG培地に交換し、ROS発生剤である2,2‘-azobis (2-methylpropionamidine) dihydrochloride (AAPH)を終濃度が4 mMになるように培地に添加し細胞を培養した。AAPH添加1時間後にROS検出試薬であるdichlorodihydrofluorescin diacetate (DCF-DA)(20 μM)を培地に添加し、さらに30分間培養した。培養終了後、細胞を洗浄し、核を4’,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)で染色した。DCFとDAPIの蛍光強度はそれぞれ、485 nm/535 nm、355 nm/380 nmで測定し、DCF/DAPIの比として算出した。図4(A)及び図4(B)のグラフは、AAPH(-)を基準とした相対値として示す。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b,c,d,e)間に有意差(p<0.05)がある。図4の結果からRGは濃度依存的にROS量を低減させることが明らかになった。なお、ESGの20質量%は消化管でESGに変換されるので、ESGも同様に濃度依存的にROS量を低減させる。
【0048】
実施例5:マクロファージ細胞における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果(図5)
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7細胞)はAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA, USA)から購入し、細胞は、10%のウシ胎児血清を含むDulbecco‘s modified Eagle’s mediumに終濃度が4.5 g/LになるようにD-glucoseを配合した培地(DMEM-HG)で培養した。
【0049】
(A)RAW264.7細胞を培養している培地に、ESGおよび RGを終濃度が400 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。
【0050】
(B)RAW264.7細胞を培養している培地にRGを終濃度が0-600 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。
【0051】
その後、細胞を回収し、抗酸化作用に関わるタンパク質の発現量をウエスタンブロット法で解析した。 ウエスタンブロット法で得られた各タンパク質のバンド強度を画像解析ソフト(Image J)で数値化し、ハウスキーピング遺伝子であるβ-actinのバンド強度でノーマライズ化した。図5(A)、図5(B)のグラフは、コントロール(Cont)を基準とした相対値として示す。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b,c,d)間に有意差(p<0.05)がある。RGが抗酸化タンパク質(HO-1)とその転写因子であるNrf2の発現を濃度依存的に促進することが明らかになった。また、ESGは、哺乳動物の消化管内で産生されるRGを介して抗酸化タンパク質(HO-1)とその転写因子であるNrf2の発現を濃度依存的に促進する。
【0052】
実施例6:マクロファージ細胞における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果(図6)
RGによる抗酸化タンパク質の発現量の増加が、RGの構造特異的に惹起されるのかを検討する為に、RGをisoamylaseとglucoamylaseによってglucoseにまで消化した産物(RG(Enz)を用いてRGと比較検討を行った(図6(A))。
【0053】
RAW264.7細胞を培養している培地に、ESGまたは RG、RG(Enz)を終濃度が400 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。その後、細胞を回収し、抗酸化作用に関わるタンパク質の発現量をウエスタンブロット法で解析した(図6(B))。
【0054】
RAW264.7細胞を培養している培地に、ESGまたはRG、RG(Enz)を終濃度が400 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。その後、培地を新鮮なDMEM-HG培地に交換し、ROS発生剤である2,2‘-azobis (2-methylpropionamidine) dihydrochloride (AAPH)を終濃度が4 mMになるように培地に添加し細胞を培養した。AAPH添加1時間後にROS検出試薬であるdichlorodihydrofluorescin diacetate (DCF-DA)(20 μM)を培地に添加し、さらに30分間培養した。培養終了後、細胞を洗浄し、核を4’,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)で染色した。DCFとDAPIの蛍光強度はそれぞれ、485 nm/535 nm、355 nm/380 nmで測定し、DCF/DAPIの比として算出した(図6(C))。図6(C)のグラフは、veh(溶媒のみ)を基準とした相対値として示す。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b)間に有意差(p<0.05)がある。図6の結果から、分解が進んだRG(Enz)は効果がなく、抗酸化タンパク質(HO-1)とその転写因子であるNrf2の発現を濃度依存的に促進するのはRGであることが明らかになった。
【0055】
実施例7:抗酸化タンパク質の発現量とROSの蓄積に及ぼす影響(図7)
(A)RAW264.7細胞を培養している培地に6種類の天然物由来のglycogen(oyster/Oys, rabbit/Type III, muscle/Type VII, sweet corn/Phyto, slipper limpet/Type VIII, bovie liver/Type IX)またはRGを終濃度が400 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。その後、細胞を回収し、抗酸化作用に関わるタンパク質の発現量をウエスタンブロット法で解析した(図7(A))。
(B)RAW264.7細胞を培養している培地に、6種類の天然物由来のglycogen(oyster/Oys, rabbit/Type III, muscle/Type VII, sweet corn/Phyto, slipper limpet/Type VIII, bovie liver/Type IX)またはRGを終濃度が400 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。その後、培地を新鮮なDMEM-HG培地に交換し、ROS発生剤である2,2‘-azobis (2-methylpropionamidine) dihydrochloride (AAPH)を終濃度が4 mMになるように培地に添加し細胞を培養した。AAPH添加1時間後にROS検出試薬であるdichlorodihydrofluorescin diacetate (DCF-DA)(20 μM)を培地に添加し、さらに30分間培養した。培養終了後、細胞を洗浄し、核を4’,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)で染色した。DCFとDAPIの蛍光強度はそれぞれ、485 nm/535 nm、355 nm/380 nmで測定し、DCF/DAPIの比として算出した(図7(B))。
図7(A)、(B)のグラフは、vehを基準とした相対値として示す。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b)間に有意差(p<0.05)がある。
【0056】
実施例8:NHEKにおける抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす影響(図8)
正常ヒト表皮角化細胞 (NHEK) は、クラボウ(Osaka, Japan)から購入し、細胞は、37℃、5%CO2存在下でEpiLife(登録商標) Mediumで培養した。
【0057】
培地にESG、RGおよびカキ由来グリコーゲンを終濃度300, 600 μg/mLになるように添加し、24時間作用させた。その後、細胞を回収し、抗酸化作用に関連するタンパク質 (Nrf2, HO-1およびNQO-1) の発現量をウエスタンブロット法により解析した(図8(A))。
【0058】
ウエスタンブロット法で得られた各タンパク質のバンド強度を画像解析ソフト(Image J)を用いて数値化し、βアクチンのバンド強度で標準化した(図8(B)、(C)、(D))。図8のグラフは、UVB-を基準とする相対値で示した。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b,,c)間に有意差(p<0.05)がある。図8の結果から、ESGおよびRG はいずれも濃度依存的にNrf2、HO-1、NQO-1の産生を促進することが明らかになった。
【0059】
実施例9:NHEKにおけるUVB照射誘導ROS蓄積に与える影響(図9)
NHEKを35mm dishに播種し、ESG、RGおよびカキ由来グリコーゲン(OG)を終濃度400, 600 μg/mLになるように添加し、24時間作用させた。UVB照射 (20 mJ/cm2, 302 nm) 後、30分培養し、蛍光基質20 μM DCF-DAを30分間処理した。その後、核をDAPIで染色した。PBSで洗浄後、処理した細胞を超音波破砕し、DCFとDAPIの蛍光強度はそれぞれ、 485nm/535 nm、355 nm/460 nmで測定し、DCF/DAPIの比として算出した(図9)。図9のグラフは、UVB(+)を基準とした相対値として示した。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b,c,d,e,f)間に有意差(p<0.05)がある。図9の結果から、天然グリコーゲン(OG)はROS蓄積を抑える効果はないが、ESG及びRGは濃度依存的にROS蓄積を抑制できることが明らかになった。
【0060】
実施例10:HO-1及びNQO-1ノックダウン細胞におけるROSの蓄積に与える影響(図10)
NHEKを35mm dishに播種し24時間培養した。トランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAXを使用して、HO-1およびNQO-1を標的としたsiRNAを細胞内に導入し、RNA干渉を行った。それぞれのsiRNAおよびRNAiMAXを添加し、48時間作用させた。
【0061】
RNA干渉させた細胞を回収し、標的タンパク質の発現量をウエスタンブロット法で検出した(図10(A))。
【0062】
RNA干渉させた細胞に終濃度 600 μg/mLのESGを24時間作用させた。UVB照射 (20 mJ/cm2, 302 nm) 後、30分培養し、蛍光基質20 μM DCF-DAを30分間処理した。その後、核をDAPIで染色した。PBSで洗浄後、処理した細胞を超音波破砕し、DCFとDAPIの蛍光強度はそれぞれ、 485nm/535 nm、355 nm/460 nmで測定し、DCF/DAPIの比として算出した(図10(B))。図10(B)のグラフは、UVB(+)を基準とした相対値として示した。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b,c,d)間に有意差(p<0.05)がある。図10の結果から、ESGの抗酸化効果は、抗酸化蛋白質であるHO-1、NQO-1の発現誘導を介した効果であることが明らかになった。
【0063】
実施例11:マクロファージ細胞における抗酸化タンパク質の発現量に及ぼす効果(図11)
ESGおよびRGによる抗酸化タンパク質の発現量の増加が、構造特異的に惹起されるのかを検討する為に、RGをisoamylaseとglucoamylaseによってglucoseにまで消化した産物であるESG (Enz), RG (Enz) を用いてRGと比較検討を行った(図11(A))。
【0064】
NHEKを培養している培地に、ESG, RG, ESG(Enz) または RG(Enz)を終濃度が600 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。その後、細胞を回収し、抗酸化作用に関わるタンパク質の発現量をウエスタンブロット法で解析した(図11(B))。
【0065】
NHEKを培養している培地に、ESG, RG, ESG(Enz) または RG(Enz)を終濃度が600 μg/mlになるように添加し、24時間作用させた。UVB照射 (20 mJ/cm2, 302 nm) 後、30分培養し、蛍光基質20 μM DCF-DAを30分間処理した。その後、核をDAPIで染色した。PBSで洗浄後、処理した細胞を超音波破砕し、DCFとDAPIの蛍光強度はそれぞれ、 485nm/535 nm、355 nm/460 nmで測定し、DCF/DAPIの比として算出した(図11(C))。図11(C)のグラフは、UVB(+)を基準とした相対値として示した。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,b,c)間に有意差(p<0.05)がある。抗酸化蛋白質の発現増強効果は、枝分かれ部分を有するESG、RGは有しているが、酵素によりグルコースまで分解されたRG(Enz)、ESG(Enz)は有しないことが明らかになった。
【0066】
実施例12:UVB照射誘導caspase-3, -9活性に与える影響(図12)
NHEKを35mm dishに播種し、ESG、RGおよびOGを終濃度400, 600 μg/mLになるように添加し、24時間作用させた。UVB照射 (20 mJ/cm2, 302 nm) 後、24時間培養し、細胞を回収した。細胞抽出液に蛍光基質Ac-DMQD-7-amino-4-methylcoumarin (AMC, caspase-3), Ac-LEHD-AMC (caspase-9) を終濃度50 μMになるように添加し、1時間37℃で反応させた。AMCの蛍光強度を355 nm/460 nmで測定した(図12)。グラフは、検量線より算出したAMC量で示した。統計解析(ANOVAのTurkey post hoc)の結果、異なるアルファベット(a,ab,b,c,d,e) 間に有意差(p<0.05)がある。図12の結果から、ESG、RGは用量依存的にcaspase-3, -9の量を抑制し、UVB照射によるアポトーシスを抑制できることが明らかになった。
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