(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体を製造する際に、前記封止材を前記軸方向に押圧して圧縮する封止工程で用いられる封止ピンであって、
前記封止工程において前記筒状体の内部に挿入されて前記封止材を押圧するための先端部と、
前記筒状体への挿入時に前記封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットと、
を備え、
前記スリットは、底面が曲面になっている、
封止ピン。
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体を製造する際に、前記封止材を前記軸方向に押圧して圧縮する封止工程で用いられる封止ピンであって、
前記封止工程において前記筒状体の内部に挿入されて前記封止材を押圧するための先端部と、
前記筒状体への挿入時に前記封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットと、
前記先端部に連なり該先端部よりも大径の第1大径部と、
を備え、
前記先端部と前記第1大径部との段差面のうち、前記先端部から前記第1大径部への立ち上がり部分が曲面になっている、
封止ピン。
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体を製造する際に、前記封止材を前記軸方向に押圧して圧縮する封止工程で用いられる封止ピンであって、
前記封止工程において前記筒状体の内部に挿入されて前記封止材を押圧するための先端部と、
前記筒状体への挿入時に前記封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットと、
を備え、
前記先端部の先端のうち前記スリットに面する角部が面取りされている、
封止ピン。
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体を製造する際に、前記封止材を前記軸方向に押圧して圧縮する封止工程で用いられる封止ピンであって、
前記封止工程において前記筒状体の内部に挿入されて前記封止材を押圧するための先端部と、
前記筒状体への挿入時に前記封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットと、
前記先端部よりも大径の第2大径部と、
を備え、
前記スリットは前記先端部から前記第2大径部まで達する深さを有し、該スリットの底面が前記第2大径部内に位置する、
封止ピン。
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体の製造方法であって、
前記筒状体の内部に前記センサ素子を軸方向に貫通させ、且つ該筒状体の内周面と前記センサ素子との間に前記封止材を配置して封止前組立体とする封止準備工程と、
前記筒状体の内部に前記軸方向に封止ピンの先端部を挿入して前記封止材を押圧することで、該封止材を圧縮して前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止工程と、
を含み、
前記封止ピンは、前記筒状体への挿入時に該封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットを備え、
前記スリットは、底面が曲面になっている、
組立体の製造方法。
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体の製造方法であって、
前記筒状体の内部に前記センサ素子を軸方向に貫通させ、且つ該筒状体の内周面と前記センサ素子との間に前記封止材を配置して封止前組立体とする封止準備工程と、
前記筒状体の内部に前記軸方向に封止ピンの先端部を挿入して前記封止材を押圧することで、該封止材を圧縮して前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止工程と、
を含み、
前記封止ピンは、
前記筒状体への挿入時に該封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットと、
前記先端部に連なり該先端部よりも大径の第1大径部と、
を備え、
前記先端部と前記第1大径部との段差面のうち、前記先端部から前記第1大径部への立ち上がり部分が曲面になっている、
組立体の製造方法。
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体の製造方法であって、
前記筒状体の内部に前記センサ素子を軸方向に貫通させ、且つ該筒状体の内周面と前記センサ素子との間に前記封止材を配置して封止前組立体とする封止準備工程と、
前記筒状体の内部に前記軸方向に封止ピンの先端部を挿入して前記封止材を押圧することで、該封止材を圧縮して前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止工程と、
を含み、
前記封止ピンは、前記筒状体への挿入時に該封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットを備え、
前記先端部の先端のうち前記スリットに面する角部が面取りされている、
組立体の製造方法。
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体の製造方法であって、
前記筒状体の内部に前記センサ素子を軸方向に貫通させ、且つ該筒状体の内周面と前記センサ素子との間に前記封止材を配置して封止前組立体とする封止準備工程と、
前記筒状体の内部に前記軸方向に封止ピンの先端部を挿入して前記封止材を押圧することで、該封止材を圧縮して前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止工程と、
を含み、
前記封止ピンは、
前記筒状体への挿入時に該封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットと、
前記先端部よりも大径の第2大径部と、
を備え、
前記スリットは前記先端部から前記第2大径部まで達する深さを有し、該スリットの底面が前記第2大径部内に位置する、
組立体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筒状体の内部に挿入された圧粉体などの封止材を押圧するために、内筒の内部に封止ピンを挿入してこの封止ピンにより押圧を行うことが考えられる。
図6は、封止ピン90を用いた封止工程の説明図である。例えば、まず、主体金具142と内筒143とを溶接した筒状体の内部に、サポーター144a〜144c,封止材145a,145b,メタルリング146,及びセンサ素子120を挿入する(
図6(a))。そして、上方から軸方向に沿って内筒43の内部に封止ピン90を挿入し、封止ピン90によりメタルリング146を介して封止材145a,145bを押圧して、封止材145a,145bを圧縮する(
図6(b))。封止ピン90の三面図を
図7に示す。
図7(a),(b),(c)は、それぞれ、
図6の封止ピン90を左側,下側,紙面手前側から見た図である。
図7(a),(c)は、封止ピン90の部分断面図である。封止ピン90は、
図6,7に示すように、内筒143に挿入される先端部91と、先端部91より大径の第1大径部93と、第1大径部93より大径の第2大径部94とを備えている。封止ピン90には、先端部91の先端面(
図6及び
図7(a)の下端面)に開口している挿入孔96が形成されている。封止ピン90を内筒143に挿入する際には、この挿入孔96内にセンサ素子120の上側が挿入される。これにより、封止ピン90はセンサ素子120を避けつつメタルリング46を押圧できる。
図6(b)の吹き出しは、圧縮時の封止ピン90の先端部91及び内筒43の軸方向に垂直な部分断面図である。この
図6(b)の吹き出し内の部分断面図からわかるように、挿入孔96は、センサ素子120の板状の形状に合わせて、封止ピン90の軸方向に垂直な断面において長手方向と短手方向とを有する形状をしている。そのため、先端部91は、挿入孔96の開口の短手方向に対向する肉厚部91a,91aと、挿入孔96の開口の長手方向に対向する肉薄部91b,91bと、を有している。また、挿入孔96の側面のうち、
図7(a)の左右方向に対向する側面96b,96bは、第1大径部93の途中から先端部91の先端に向けて、先端部91の先端ほど挿入孔96が大きくなるように傾斜している。
【0005】
しかし、この封止ピン90を用いて封止材145a,145bを押圧する場合、封止ピンが破損しやすいという問題があった。具体的には、先端部91の先端面のうち肉厚部91aと肉薄部91bとの接続部分91c(
図7(b)の吹き出し部分参照)に押圧時の応力が集中しやすく、この接続部分91cが破損しやすいという問題があった。そのため、より破損しにくい封止ピンが望まれていた。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、封止ピンを破損しにくくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の封止ピンは、
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体を製造する際に、前記封止材を前記軸方向に押圧して圧縮する封止工程で用いられる封止ピンであって、
前記封止工程において前記筒状体の内部に挿入されて前記封止材を押圧するための先端部と、
前記筒状体への挿入時に前記封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットと、
を備えたものである。
【0009】
この封止ピンは、封止工程においてセンサ素子を避けるためのスリットが設けられている。このスリットは、例えば
図7に示した封止ピン90の挿入孔96と異なり、先端部の軸方向に垂直な方向に先端部を貫通している。そのため、本発明の封止ピンでは、封止ピン90の肉薄部91bのような部分をなくすことができ、ひいては応力の集中しやすい接続部分91cのような部分をなくすことができる。したがって、本発明の封止ピンは、例えば封止ピン90と比べて封止工程時に破損しにくい。
【0010】
本発明の封止ピンにおいて、前記スリットは、底面が曲面になっていてもよい。例えば底面が平面である場合、スリットの底面と側面との境界に応力が集中しやすくなる場合があるが、底面を曲面とすることでそのような応力集中を抑制できる。したがって、封止ピンがより破損しにくくなる。
【0011】
本発明の封止ピンにおいて、前記先端部に連なり該先端部よりも大径の第1大径部、を備え、前記先端部と前記大径部との段差面のうち、前記先端部から前記大径部への立ち上がり部分が曲面になっていてもよい。こうすれば、例えば段差面が先端部の外周面から垂直に立ち上がるような形状の場合と比較して、立ち上がり部分に応力が集中しにくくなる。したがって、封止ピンがより破損しにくくなる。
【0012】
本発明の封止ピンにおいて、前記先端部の先端のうち前記スリットに面する角部が面取りされていてもよい。こうすれば、先端部の角部が面取りされていない場合と比較して、封止工程でスリット内にセンサ素子が挿入される際の、先端部によるセンサ素子の破損を抑制できる。
【0013】
本発明の封止ピンにおいて、前記先端部よりも大径の第2大径部、を備え、前記スリットは前記先端部から前記第2大径部まで達する深さを有し、該スリットの底面が前記第2大径部内に位置していてもよい。こうすれば、封止ピンのうちスリットの底部付近にかかる応力を受ける部分の径が大きいため、この部分の破損を抑制できる。この場合において、本発明の封止ピンは、上述した第1大径部を有し、前記第2大径部は、該第1大径部よりも径が大きくてもよい。あるいは、前記第2大径部は前記第1大径部を兼ねていてもよい。
【0014】
本発明の組立体の製造方法は、
筒状体と、該筒状体の内部を軸方向に貫通する長尺な板状のセンサ素子と、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止材と、を備えた組立体の製造方法であって、
前記筒状体の内部に前記センサ素子を軸方向に貫通させ、且つ該筒状体の内周面と前記センサ素子との間に前記封止材を配置して封止前組立体とする封止準備工程と、
前記筒状体の内部に前記軸方向に封止ピンの先端部を挿入して前記封止材を押圧することで、該封止材を圧縮して前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間を封止する封止工程と、
を含み、
前記封止ピンは、前記筒状体への挿入時に該封止ピンが前記センサ素子を避けるために設けられ、前記先端部の軸方向に垂直な方向に前記先端部を貫通し且つ幅が前記センサ素子の厚さより大きいスリットを備える、
ものである。
【0015】
この組立体の製造方法では、上述した本発明の封止ピンと同様に、先端部の軸方向に垂直な方向に先端部を貫通するスリットを有する封止ピンを用いるため、封止ピンが封止工程時に破損しにくい。また、これにより、例えば封止工程を連続して行って複数の組立体を製造する際に、封止ピンの交換の頻度を少なくすることができ、効率よく組立体を製造できる。この組立体の製造方法で使用される封止ピンにおいて、上述した本発明の封止ピンの種々の態様を採用してもよい。
【0016】
本発明のガスセンサの製造方法は、上述した本発明の組立体の製造方法で製造された組立体を用いて該組立体を有するガスセンサを製造する工程、を含むものである。そのため、このガスセンサの製造方法は、上述した本発明の組立体の製造方法と同様の効果、例えば封止ピンが封止工程時に破損しにくい効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の製造方法で製造されるガスセンサの一実施形態であるガスセンサ10を示す縦断面図である。
図1では、ガスセンサ10が配管70に取り付けられた様子を示している。
【0019】
図1に示すように、ガスセンサ10は、組立体15と、保護カバー30と、ナット47と、外筒48と、コネクタ50と、リード線55と、ゴム栓57とを備えている。組立体15は、センサ素子20と、素子封止体40とを備えている。ガスセンサ10は、例えば車両の排ガス管などの配管70に取り付けられて、被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO
2等の特定ガスの濃度(特定ガス濃度)を測定するために用いられる。本実施形態では、ガスセンサ10は特定ガス濃度としてNOx濃度を測定するものとした。
【0020】
センサ素子20は、細長な長尺の板状体形状の素子であり、ジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる例えば6枚のセラミックス基板を積層して形成されている。センサ素子20の保護カバー30側の端部(
図1の下端)を先端と表記し、コネクタ50側の端部(
図1の上端)を基端と表記する。センサ素子20のうち、
図1の上下方向の長さをセンサ素子20の長さと称し、
図1の左右方向の長さをセンサ素子20の厚さと称し、
図1の上下左右に垂直な方向をセンサ素子20の幅と称する。センサ素子20の寸法は、長さ>幅>厚さを満たす。このセンサ素子20の基端表面及び裏面には、センサ素子20に電圧を印加したり、センサ素子20が検出するガス成分の濃度に応じて生じる起電力又は電流を取り出したりするための図示しない電極が形成されている。この電極は、センサ素子20内部の電路を介してセンサ素子20の先端内の電極と導通している(図示せず)。センサ素子20は、素子室33内に露出している部分の少なくとも一部を覆う多孔質の保護層を備えていてもよい。
【0021】
素子封止体40は、センサ素子20を封止固定する部材である。素子封止体40は、主体金具42及び内筒43を備えた筒状体41と、サポーター44a〜44cと、封止材45a,45bと、メタルリング46と、を備えている。センサ素子20は素子封止体40の中心軸上に位置しており、素子封止体40を軸方向(
図1の上下方向)に貫通している。
【0022】
主体金具42は、筒状の金属製部材である。主体金具42は、下側が上側よりも内径の小さい肉厚部42aとなっている。主体金具42のうちセンサ素子20の先端と同じ側(
図1の下側)には、保護カバー30が取り付けられている。主体金具42の上端は内筒43の下端と溶接されている。肉厚部42aは主体金具42の上側よりも内径が小さく、これにより肉厚部42aの内周面の一部が段差面である底面42bとなっている。この底面42bはサポーター44aが
図1の下側に飛び出さないようにこれを押さえている。主体金具42の材質としては、例えばCr−Fe系合金(例えばSUS430)などのステンレス鋼が挙げられる。
【0023】
内筒43は、主体金具42よりも厚さの薄い筒状の金属製部材であり、下端にフランジ部43aを有し、上端には先端にいくほど内径が大きくなる拡管部43bを有している。内筒43は、主体金具42のうちセンサ素子20の基端と同じ側(
図1の上側)に取り付けられている。内筒43は、フランジ部43aの下面が主体金具42と溶接されている。内筒43と主体金具42とは同軸に溶接固定されている。また、内筒43には、封止材45bを内筒43の中心軸方向に押圧するための縮径部43cと、メタルリング46を介してサポーター44a〜44c,封止材45a,45bを
図1の下方向に押圧するための縮径部43dとが形成されている。内筒43のうちフランジ部43a,拡管部43b,縮径部43c,43d以外の部分の内径は、主体金具42のうち肉厚部42a以外の内径と略同一である。内筒43の材質としては、例えばCr−Fe系合金(例えばSUS430)などのステンレス鋼が挙げられる。
【0024】
サポーター44a〜44c及び封止材45a,45bは、筒状体41の内周面とセンサ素子20との間に配置されている。サポーター44a〜44cは、例えばアルミナ、ステアタイト、ジルコニア、スピネルなどのセラミックスからなる部材である。サポーター44cの上面は、
図1に示すように、径方向外側ほど
図1の下方向に位置するように傾斜している。換言すると、サポーター44cの上面は、径方向外側ほどメタルリング46から離れるように傾斜している。封止材45a,45bは、例えば粉末を成型した圧粉体である。圧粉体の材質としては、タルクのほか、アルミナ粉末、ボロンナイトライドなどのセラミックス粉末が挙げられ、封止材45a,45bはそれぞれこれらの少なくともいずれかを含んでいてもよい。封止材45aはサポーター44a,44b間に充填され、サポーター44a,44bにより両側(上下)から挟まれて押圧されている。封止材45bはサポーター44b,44c間に充填され、サポーター44b,44cにより両側(上下)から挟まれて押圧されている。サポーター44a〜44c,封止材45a,45bは縮径部43d及びメタルリング46と、主体金具42の肉厚部42aの底面42bと、に挟まれて上下から押圧されている。縮径部43c,43dからの押圧力により、封止材45a,45bが筒状体41とセンサ素子20との間で圧縮されることで、封止材45a,45bは保護カバー30内の素子室33と外筒48内の空間49との間を封止すると共に、センサ素子20を固定している。メタルリング46の材質としては、例えばCr−Ni−Fe系合金(例えばSUS304)などのステンレス鋼が挙げられる。
【0025】
保護カバー30は、
図1に示すように、センサ素子20の先端側(
図1の下端側)を覆う有底筒状の内側保護カバー31と、この内側保護カバー31を覆う有底筒状の外側保護カバー32とを備えている。内側保護カバー31及び外側保護カバー32には、被測定ガスを保護カバー30内に流通させるための複数の孔が形成されている。内側保護カバー31で囲まれた空間として素子室33が形成されており、センサ素子20の先端面(
図1の下端面)はこの素子室33内に配置されている。保護カバー30は、主体金具42に溶接されている。保護カバー30の材質としては、例えばCr−Ni−Fe系合金(SUS301,SUS304、SUS310など)などのステンレス鋼が挙げられる。
【0026】
ナット47は、主体金具42と同軸に主体金具42の外側に固定されている。ナット47の外周面には雄ネジ部が形成されている。この雄ネジ部は、配管70に溶接され内周面に雌ネジ部が設けられた固定用部材71内に挿入されている。これにより、ガスセンサ10のうちセンサ素子20の下端側や保護カバー30の部分が配管70内に突出した状態で、ガスセンサ10が配管70に固定できるようになっている。
【0027】
外筒48は、筒状の金属製部材であり、内筒43と、センサ素子20の上端側と、コネクタ50とを覆っている。外筒48の内側には主体金具42の上部が挿入されている。外筒48の下端は主体金具42と溶接されている。外筒48の上端からは、コネクタ50に接続された複数のリード線55が外部に引き出されている。コネクタ50は、センサ素子20の上端側の表面(
図1の左右の面)に配設された図示しない導通電極に接触して電気的に接続されている。このコネクタ50を介して、リード線55はセンサ素子20の内部の各電極と電気的に導通している。外筒48とリード線55との隙間はゴム栓57によって封止されている。外筒48内の空間49は特定ガス濃度の検出の基準となる基準ガス(例えば大気)で満たされている。空間49にはセンサ素子20の上端側が配置され、外筒48はセンサ素子20の上端側を保護する役目も果たす。
【0028】
次に、こうして構成されたガスセンサ10の製造方法の一例を以下に説明する。まず、ガスセンサ10のうち組立体15の製造方法について説明する。本実施形態の組立体15の製造方法は、
筒状体41の内部にセンサ素子20を軸方向に貫通させ、且つ筒状体41の内周面とセンサ素子20との間に封止材45a,45bを配置して封止前組立体14とする封止準備工程と、
筒状体41の内部に軸方向に封止ピン80の先端部81を挿入して封止材45a,45bを押圧することで、封止材45a,45bを圧縮して筒状体41の内周面とセンサ素子20との間を封止する封止工程と、
を含む。
【0029】
図2は、組立体15の製造プロセスを模式的に示す断面図である。
図3は、封止ピン80の三面図である。
図3(a),(b),(c)は、それぞれ、
図2の封止ピン90を左側,下側,紙面手前側から見た図である。
図4は、
図2(d)のA−A断面図である。まず、封止準備工程について説明する。封止準備工程では、まず、筒状体41を用意する。具体的には、主体金具42及び内筒43を用意して、これらを溶接して筒状体41とする(
図2(a))。主体金具42及び内筒43は、例えば鍛造により製造してもよい。この時点では、内筒43にはフランジ部43a及び拡管部43bは形成されているが、縮径部43c,43dは形成されていない。主体金具42及び内筒43の溶接は、例えば抵抗溶接により溶接する。具体的には、主体金具42の上端と内筒43のフランジ部43aとを、図示しない治具を用いて同軸となるように付き合わせて、接触面に電流を流すことにより主体金具42と内筒43とを抵抗溶接する。これにより、主体金具42と内筒43とが接触面で溶接されて筒状体41となる。
【0030】
続いて、センサ素子20をメタルリング46,サポーター44c,封止材45b,サポーター44b,封止材45a,サポーター44a内にこの順序で貫通させて、これらを内筒43の拡管部43b側から筒状体41の内部に挿入して封止前組立体14とする(
図2(b))。このとき、筒状体41の下側(ここでは主体金具42側)は固定用治具78内に挿入して固定しておく。ここで、センサ素子20は、周知の方法で作製することができる。例えば、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含む未焼成のセラミックスグリーンシートを複数用意し、各々に各電極等の種々のパターンを形成する。そして複数のセラミックグリーンシートを積層・接着した後に切断してセンサ素子20の大きさの未焼成体を切り出し、未焼成体を焼成することでセンサ素子20を得る。メタルリング46,サポーター44a〜44c,封止材45a,45bには、センサ素子20を貫通させるために予め中心軸に沿って孔が開けられた形状としておく。封止前組立体14では、
図2(b)に示すように、センサ素子20が筒状体41の内部を軸方向に貫通している。また、封止前組立体14では、筒状体41の内周面とセンサ素子20との間にサポーター44a〜44c及び封止材45a,45bが配置されている。
【0031】
封止準備工程では、封止前組立体14を製造した後に、筒状体41の中心軸とセンサ素子20の中心軸とがより一致するようにセンサ素子20の位置決めを行ってもよい。例えば、
図2(b)の状態で、図示しない把持具を用いてセンサ素子20の上端を把持して、把持具の位置を調整することでセンサ素子20の左右方向(センサ素子20の厚さ方向)の位置決め及び前後方向(上下及び左右に垂直な方向であり、センサ素子20の幅方向)の位置決めを行ってもよい。また、センサ素子20の上下方向の位置決めを行ってもよい。例えば、図示は省略するが、固定用治具78がセンサ素子20の真下に位置する部分に貫通孔を有しており、その貫通孔内に棒状又は板状の位置決め用治具の挿入及び所定位置での固定が可能であってもよい。そして、その位置決め用治具の上下位置を調整することによって筒状体41に対するセンサ素子20の上下方向の位置を調節してもよい。
【0032】
以上のように封止準備工程を行うと、封止ピン80を用いた封止工程を行う(
図2(c),(d))。ここで、封止工程で用いる封止ピン80について説明する。封止ピン80は、
図3(a)に示すように、先端部81と、先端部81に連なる第1大径部83と、第1大径部83に連なる第2大径部84と、スリット86と、を備えている。先端部81と第1大径部83と第2大径部84とは互いに同軸に位置している。封止ピン80の材質としては、例えば合金工具鋼鋼材(JIS G4404)が挙げられ、その中でも例えばSKD11などのSKD材としてもよい。
【0033】
先端部81は、略円柱形状をしており、より正確には円柱からスリット86部分を除去した形状をしている。そのため、先端部81は、スリット86により2つの部分に分かれている。先端部81は、封止工程において筒状体41の内部に挿入されて封止材45a,45bを押圧する部分である。先端部81の先端(
図3(c)における左端)のうちスリット86に面する角部81b,81bは、面取りされている。本実施形態では、角部81b,81bはC面取りされているが、R面取りであってもよい。先端部81は、第1大径部83に接続される第1段差面82を有している。この第1段差面82は、先端部81から第1大径部83への立ち上がり部分82aが曲面になっている。本実施形態では、立ち上がり部分82aは、封止ピン80の中心軸に沿った断面視での形状が円弧状となるような曲面とした。先端部81のうち第1段差面82以外の部分の外径は、内筒43の内径よりも小さい。
【0034】
第1大径部83は、略円柱形状をしており、先端部81よりも直径が大きい。より正確には、第1大径部83は、円柱からスリット86部分を除去した形状をしており、2つの部分に分かれている。第1大径部83は、内筒43よりも大径とした。
【0035】
第2大径部84は、略円柱形状をしており、縮径部84aと円柱部84cとを有する。円柱部84cは、先端部81及び第1大径部83よりも直径が大きい。縮径部84aは、第1大径部83と円柱部84cとを接続する部分であり、円柱部84cから第1大径部83に向けて直径が小さくなっている。縮径部84aは、円錐台形状をしている。そのため、縮径部84aの外周面である第2段差面84bは、封止ピン80の中心軸に沿った断面視での形状が直線になっている。
【0036】
スリット86は、封止工程における筒状体41への封止ピン80の挿入時に、封止ピン80がセンサ素子20を避けるために設けられている。スリット86は、先端部81の先端面81aから封止ピン80の軸方向に沿って形成されており、スリット86の底面86aは第2大径部84の円柱部84c内に位置している。すなわち、スリット86は先端部81の先端面81aから第2大径部84の円柱部84cまで達する深さを有している。また、スリット86は、先端部81の軸方向に垂直な方向に先端部81を貫通している。すなわち、
図3(a),(b)において、スリット86は先端部81を左右方向に貫通している。本実施形態ではスリット86が第2大径部84まで達する深さを有するため、
図3(a)において、スリット86は第1大径部83及び第2大径部84も左右方向に貫通している。これらにより、スリット86は封止ピン80を
図3(a),(b)における左右方向に貫通しており、封止ピン80のうち先端面81aから底面86aまでの部分は第1部分80aと第2部分80bとに分かれている(
図3(c)参照)。第1,第2部分80a,80bの各々は、スリット86に面する側面86bを備えている。この側面86b,86bは、
図3(b),(c)において上下に対向している。側面86b,86bは、封止ピン80の軸方向に平行な平面である。側面86b,86b間の距離は、センサ素子20の幅より大きい。スリット86は封止ピン80を
図3(a),(b)における左右方向に貫通しているため、封止ピン80はこの左右方向に対向する側面を有さない。スリット86の底面86aは、曲面になっている。より具体的には、底面86aは、半円の円筒の内周面と同じ形状になっている。底面86aの曲面の軸方向は、スリット86の貫通方向(
図3(a),(b)の左右方向)に沿っている。
【0037】
この封止ピン80を用いた封止工程について説明する。まず、封止前組立体14の上方から封止ピン80を下降させて、封止ピン80の先端面81aをメタルリング46に接触させる(
図2(c))。このとき、封止ピン80の側面86b,86bがセンサ素子20の厚さ方向に沿って対向する状態にして、封止ピン80を下降させる。換言すると、スリット86の貫通方向(
図3(a),(b)の左右方向)がセンサ素子20の幅方向と平行な状態にして、封止ピン80を下降させる。これにより、センサ素子20のうちメタルリング46よりも上方に飛び出している部分は封止ピン80のスリット86内に挿入される。したがって、封止ピン80がセンサ素子20を避けつつ、先端面81aをメタルリング46に接触させることができる。
【0038】
次に、封止ピン80をさらに下降させる。これにより、先端部81は内筒43の内部に軸方向に挿入されていき、先端部81はメタルリング46を介して封止材45a,45bを押圧する。そして、この封止ピン80からの押圧力によって封止材45a,45bを圧縮して筒状体41の内周面とセンサ素子20との間を封止する(
図2(d))。これにより、素子封止体40が製造され、封止前組立体14は組立体15となる。
図2(d)及び
図4に示すように、封止ピン80が封止材45a,45bを押圧する際には、センサ素子20がスリット86内に挿入されると共に、先端部81は内筒43内に挿入された状態になる。これにより、封止ピン80がセンサ素子20を避けつつ、先端部81が封止材45a,45bを押圧できるようになっている。
【0039】
ここで、先端部81は外径が小さいほど内筒43に挿入しやすくなり、外径が大きいほど強度が高くなるため、先端部81の外径はこれらを考慮して定めることが好ましい。例えば先端部81の外径と内筒43の内径との差が0.1mm以上2.0mm以下としてもよい。また、側面86b,86b間の距離が大きいほど封止工程時に封止ピン80がセンサ素子20を避けやすくなってセンサ素子20の破損を抑制でき、距離が小さいほど先端部81の強度を高くしやすい。そのため、これらを考慮して側面86b,86b間の距離を定めることが好ましい。例えば側面86b,86b間の距離はセンサ素子20の厚さより1.0mm以上大きくしてもよい。また、側面86b,86b間の距離はセンサ素子20の幅より小さくしてもよい。また、スリット86の深さは、封止工程の完了時すなわち封止ピン80が最も下降した状態(
図2(d))において、センサ素子20の上端と底面86aとが接触しないように定められている。例えば、
図2(d)におけるセンサ素子20の上端と底面86aとの距離が5mm以上15mm以下となるようにスリット86の深さを定めてもよい。
【0040】
封止工程を行うと、内筒43のうち封止材45bの側面に位置する部分とメタルリング46よりも拡管部43b側とをそれぞれ加締めて縮径部43c,43dを形成する(
図2(e))。縮径部43dを形成することによってメタルリング46と主体金具42の底面42bとの間の押圧力が確実に保たれる。また、縮径部43cを形成することによって内筒43内の封止やセンサ素子20の固定がより確実になる。
図2(e)に示すように、封止ピン80を内筒43内に挿入した状態で縮径部43dを形成する場合には、先端部81の外径を縮径部43dの内径よりも小さくしておく。なお、縮径部43c,43dの形成を封止工程に含めてもよい。
【0041】
以上のようにして組立体15を製造すると、組立体15を用いてガスセンサ10を製造する。具体的には、まず、主体金具42に内側保護カバー31及び外側保護カバー32を溶接固定して保護カバー30を形成し、ナット47内に組立体15を挿入して主体金具42にナット47を取り付ける。次に、ゴム栓57内を通したリード線55と、これに接続されたコネクタ50とを用意して、コネクタ50をセンサ素子20の上端側に接続する。その後、リード線55,ゴム栓57,コネクタ50及び組立体15の上側を外筒48内に挿入し、外筒48を主体金具42に溶接固定して、
図1のガスセンサ10を得る。
【0042】
以上のようなガスセンサ10の製造方法において、上述した封止工程を行う際に、封止ピン80には封止材45a,45bの押圧に伴い応力がかかる。このとき、封止ピン80が先端部81の軸方向に垂直な方向に先端部81を貫通するスリット86を有していることで、例えば
図6,7に示した比較例の封止ピン90を用いて封止工程を行う場合と比較して、封止ピン80が破損しにくい。ここで、比較例の封止ピン90では、センサ素子120を避けるためにスリット86ではなく挿入孔96を形成している。この場合、センサ素子120は厚さよりも幅が大きいことから、挿入孔96は、封止ピン90の軸方向に垂直な断面において長手方向(
図6(b)の部分断面図における挿入孔96の上下方向)と短手方向(
図6(b)の部分断面図における挿入孔96の左右方向)とを有する形状をしている。そのため、先端部91は、この短手方向に対向する肉厚部91a,91aと、この長手方向に対向する肉薄部91b,91bと、を有している。このような形状の封止ピン90では、先端部91の先端面のうち肉厚部91aと肉薄部91bとの接続部分91cに押圧時の応力が集中しやすく、この接続部分91cが破損しやすい。これに対して、本実施形態の封止ピン80では、スリット86が先端部81の軸方向に垂直な方向に先端部81を貫通しているため、封止ピン90の肉薄部91bに相当する部分が存在せず、ひいては接続部分91cも存在しない。したがって、封止ピン80は、封止ピン90と比べて封止工程時に破損しにくくなっている。また、封止ピン80が破損しにくいことで、例えば封止工程を連続して行って複数の組立体15を製造する際に、封止ピン80の交換の頻度を少なくすることができ、効率よく組立体15を製造できる。
【0043】
また、本実施形態では、上述したように、サポーター44cの上面が径方向外側ほどメタルリング46から離れるように傾斜している。サポーター44cがこのような形状をしている場合、封止工程において比較例の封止ピン90を用いると、封止ピン90によりメタルリング46は径方向外側の部分ほど
図6(b)の下方に位置するように曲げられる。すなわち、サポーター44cの上面の傾斜に沿うようにメタルリング46が曲げられる。これにより、封止工程時の封止ピン90の先端部91には、挿入孔96の開口を広げるような径方向外側を向く応力がかかる。そのため、接続部分91cにはより応力が集中しやすく、封止ピン90は接続部分91cでより破損しやすい。これに対して、封止工程で封止ピン80を用いる場合、先端部81に径方向外側を向く応力がかかる点は同様だが、そのような応力の集中しやすい接続部分91cが存在しないため、封止ピン80は破損しにくい。このように、サポーター44cの上面が径方向外側ほどメタルリング46から離れるように傾斜している場合には封止ピン90はより破損しやすくなるため、本実施形態の封止ピン80を用いる意義がより高くなる。
【0044】
なお、封止ピン90において挿入孔96を軸方向に垂直な断面が円形になるようにして、肉厚部91aと肉薄部91bとの区別をなくすことで接続部分91cをなくすことも考えられる。しかし、この場合はセンサ素子120の幅に合わせて挿入孔96の内径を定める必要があるため、先端部91全体を薄くする必要が生じて封止ピン90が破損しやすい。そのため、そのような形状の封止ピン90と比べても、本実施形態の封止ピン80は封止工程時に破損しにくい。
【0045】
以上詳述した本実施形態の封止ピン80によれば、スリット86が先端部81の軸方向に垂直な方向に先端部81を貫通しているため、封止工程時に封止ピン80が破損しにくい。
【0046】
また、底面86aが曲面であることで、底面86aの一部に応力が集中するのを抑制でき、封止ピン80がより破損しにくい。例えば底面aが平面である場合、スリット86の底面86aと側面86bとの境界に応力が集中しやすくなる場合があるが、底面86aを曲面とすることでそのような応力集中を抑制でき、封止ピン80が破損しにくい。
【0047】
さらに、先端部81から第1大径部83への立ち上がり部分82aが曲面になっているため、封止ピン80がより破損しにくい。例えば第1段差面82が先端部81の外周面から垂直に立ち上がるような形状の場合(第1段差面82が封止ピン80の軸方向に垂直な場合)と比較して、立ち上がり部分82aに応力が集中しにくくなるため、封止ピン80がより破損しにくい。
【0048】
さらにまた、先端部81の先端のうちスリット86に面する角部81bが面取りされているため、面取りされていない場合と比較して、封止工程でスリット86内にセンサ素子20が挿入される際の、先端部81によるセンサ素子20の破損を抑制できる。
【0049】
そしてまた、スリット86は先端部81から第2大径部84まで達する深さを有し、スリット86の底面86aが第2大径部84内に位置している。そのため、例えばスリット86の深さが先端部81又第1大径部83にしか達していない場合と比べて、封止ピン80のうちスリット86の底部86a付近、より具体的には、スリット86によりに分かれた第1,第2部分80a,80bの根元付近の直径が大きくなる。第1,第2部分80a,80bの根元付近は封止工程時に応力がかかるが、この根元付近の直径が大きいことで、この部分の破損を抑制できる。特に、本実施形態のようにサポーター44cの上面が径方向外側ほどメタルリング46から離れるように傾斜している場合には、上述したように先端部81に径方向外側を向く応力がかかるため、第1,第2部分80a,80bの根元付近に応力がかかりやすい。したがって、底面86aが第2大径部84内に位置するようにして第1,第2部分80a,80bの根元付近の直径を大きくする意義が高い。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、スリット86の底面86aは第2大径部84の円柱部84c内に位置していたが、これに限らず第2大径部84の縮径部84a内に位置していてもよい。また、底面86aは先端部81内又は第2大径部84内に位置していてもよい。ただし、上述したように第1,第2部分80a,80bの根元付近の直径が大きい方が好ましいため、底面86aは第2大径部84内に位置することが好ましい。
【0052】
上述した実施形態では、第2大径部84は第1大径部83よりも大径としたが、これに限らず先端部81よりも大径であればよい。例えば、第1大径部83と第2大径部84とが同じ径であってもよい。この場合、第2大径部84が第1大径部83を兼ねているとみなすことができる。
【0053】
上述した実施形態では、角部81bは面取りされていたが、面取りされていなくてもよい。また、上述した実施形態では、立ち上がり部分82aは曲面としたが、これに限られない。例えば第1段差面82が先端部81の外周面から垂直に立ち上がるような形状をしており、立ち上がり部分82aが平面であってもよい。また、底面86aは曲面としたが、これに限らず例えば平面であってもよい。
【0054】
上述した実施形態では、封止ピン80は第1大径部83及び第2大径部84を備えていたが、これらの少なくとも一方を備えなくてもよい。例えば、封止ピン80全体が先端部81と同じ直径であってもよい。ただし、封止ピン80のうち封止工程で内筒43に挿入される先端部81以外の部分を先端部81よりも大径にすることで封止ピン80の強度が高まるため、封止ピン80は先端部81と先端部81よりも直径の大きい大径部(例えば第1大径部83及び第2大径部84)を備えることが好ましい。
【0055】
上述した実施形態では、側面86b,86bは平面としたが、これに限らず少なくとも一部に曲面を有していてもよい。例えば、
図5に示す変形例の封止ピン80のように、側面86b,86bの一部が曲面であってもよい。この変形例の封止ピン80のスリット86は、
図3のスリット86に、封止ピン80の中心軸と同軸且つ先端部81よりも小径の孔を追加した状態になっている。そのため、この
図5の変形例の封止ピン80では、
図3と異なり先端部81の先端面81aが円弧状となっている。スリット86がこのような形状であっても、上述した実施形態と同様に、スリット86が先端部81の軸方向に垂直な方向に先端部81を貫通していることで、封止工程時に封止ピン80が破損しにくい効果が得られる。
【0056】
上述した実施形態において、スリット86の底面86aの一部に孔が空いていてもよい。例えば、スリット86の底面86aに、封止ピン80の中心軸に沿った孔がさらに形成されていてもよい。この場合、封止工程においてセンサ素子20の上端がこの孔に挿入されるようにしてもよい。この場合は、先端面81aから底面86aまでの距離が、
図2(d)におけるメタルリング46の上面からセンサ素子20の上端までの距離よりも短くても、封止工程において封止ピン80がセンサ素子20を避けることができる。
【0057】
上述した実施形態では、
図1のサポーター44cの上面は、径方向外側ほどメタルリング46から離れるように傾斜していたが、これに限られない。例えば、サポーター44cの上面は筒状体41の軸方向に垂直な平面であってもよい。
【0058】
上述した実施形態では、素子封止体40は3個のサポーター44a〜44cと2個の封止材45a,45bを備えていたが、筒状体41の内側とセンサ素子20との間を封止し且つセンサ素子20を固定できればよく、これらの個数は適宜変更してもよい。例えば、素子封止体40はサポーター44bを備えないものとし、サポーター44aとサポーター44cとの間に1つの封止材を備えていてもよい。また、筒状体41の内側とセンサ素子20との間を封止し且つセンサ素子20を固定できれば、セラミックス部材及び圧粉体以外の部材を用いてもよい。また、上述した実施形態では、筒状体41は主体金具42と内筒43とを溶接した部材としたが、これに限らず筒状体41は主体金具42及び内筒43に相当する部材が一体形成された部材であってもよい。
【0059】
上述した実施形態のガスセンサ10の製造方法において、各部材を取り付ける順序は適宜変更してもよい。例えば、封止準備工程においてナット47を主体金具42に取り付けてもよい。
【実施例】
【0060】
以下には、封止ピン及び組立体を具体的に作製した例を実施例として説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
図3に示した封止ピン80を作製して実施例1とした。封止ピン80の材質はSKD11とし、焼入れ及び焼戻し後の硬度がHRC60〜63になるようにした。封止ピン80は、先端部81の第1段差面82以外の直径が7.4mm、先端部81の軸方向長さが8mm、角部81bの面取りは0.5mmのC面取り(C0.5)とした。立ち上がり部分82aは半径1mmの曲面(R1)とした。第1大径部83は直径が8.97mm、軸方向長さが8.5mmとした。第2大径部84は円柱部84cの直径が14mmとし、第2段差面84bは軸方向に対して45°の傾斜角度とした。スリット86は先端面81aから底面86aの頂点(底面86aのうち
図3(c)の右端)までの軸方向の距離が21.5mmとし、側面86b,86b間の距離が3mmとした。
【0062】
[比較例1]
図7に示した封止ピン90を作製して比較例1とした。封止ピン90の材質はSKD11とし、焼入れ焼戻し後の硬度がHRC57〜59になるようにした。封止ピン90は、先端部91の直径が7.7mm、先端部91の軸方向長さ(先端部91と第1大径部93との段差部分を含まない長さ)が7mm、先端部91と第1大径部93との段差面は軸方向に対して45°の傾斜角度とした。第1大径部93は直径が8.97mmとした。先端部91と第1大径部93との軸方向長さの合計(段差部分を含む)は18.5mmとした。第2大径部94の直径は14mmとし、第1大径部93と第2大径部94との段差面は軸方向に対して45°の傾斜角度とした。挿入孔96のうち先端部91の先端面の開口の寸法は長手方向が7.2mm、短手方向が4.5mmとした。挿入孔96の深さは20mmとした。側面96b,96bは、先端部91の先端から軸方向に10mmまでの部分が傾斜しており、側面96b,96bのうち傾斜していない部分の互いの距離は6.2mmとした。
【0063】
[封止ピンの耐久試験]
実施例1の封止ピン80を用いて、上述した封止準備工程及び封止工程を行って、
図1の組立体15を作製した。主体金具42の材質はSUS430とし、内筒43の材質はSUS430とした。内筒43の内径は9mmとした。メタルリング46の材質はSUS304とした。サポーター44a〜44cはいずれもアルミナからなるセラミックスの焼結体とした。封止材45a,45bはタルク粉末を成形した圧粉体とした。センサ素子20は厚さが1.45mm、幅が4.25mmとした。封止工程では、封止ピン80に5.4±0.42kNの荷重をかけて封止材45a,45bを押圧した。この封止準備工程及び封止工程を繰り返し、破損せず使用できる封止ピン80の使用回数を測定した。同様にして、比較例1の封止ピン90についても封止準備工程及び封止工程を繰り返して、破損せず使用できる使用回数を測定した。
【0064】
上記の耐久試験の結果、封止ピン90は使用回数が約10万回のときに破損した。これに対し、封止ピン80は使用回数が60万回に達しても破損しなかった。また、封止ピン80を用いて製造した組立体15は、筒状体41の内周面とセンサ素子20との間が封止されており、品質に問題ないことも確認された。なお、この確認は、
図1における筒状体41のうちセンサ素子20の上端側と下端側との間でのガスのリーク不良がないことによって確認した。