(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1〜
図5を参照して、第1実施形態に係るスピーカーについて説明する。
以下の説明(第2実施形態の説明を含む。)において、スピーカー1の中心軸Cを沿う方向を基準方向として「0度」と規定する。中心軸Cとのなす角が−45度よりも大きく+45度よりも小さい範囲の各方向を「前方向」という。中心軸Cとのなす角が−90度よりも大きく−45度以下の範囲の各方向、及び45度以上90度未満の範囲の各方向を「斜め横方向」という。中心軸Cとのなす角が90度及び−90度の方向を「真横方向」という(
図1参照)。「横方向」は、「真横方向」及び「斜め横方向」の総称であって、中心軸Cとのなす角が−90度以上−45度以下の範囲の各方向、及び45度以上90度以下の範囲の各方向を示す。
【0016】
スピーカーとして、天井10から吊り下げられ、または天井10に埋め込まれるタイプのものがある。この種のスピーカーは、広指向角を有することが好ましい。例えば、宴会場、ホール、展示会場のような大きい部屋の天井10、市場や駅舎のような開放空間を有する施設の天井10、床からの高さが低い天井10等にスピーカーが設置される場合、スピーカーの前方向だけ(真下)でなく横方向にも十分な音圧で音が伝播することが好ましい。しかし、高音ほど指向性が高い。このため、従来構造のスピーカー1x(
図2参照)では、スピーカー1xの横方向において高音(本実施形態では、「2kHz以上の音」と定義する。)が聞き難いことがある。本実施形態に係るスピーカー1は、スピーカー1の横方向における高音の聞き難さを改善する。
【0017】
本実施形態に係るスピーカー1は、高音域ドライバ2と、導波板9とを備える。
高音域ドライバ2は、少なくとも高音域の音を発生する振動板3を備える。振動板3はドーム形状に構成される。振動板3は、駆動ユニット4により駆動される。駆動ユニット4は、振動板3に取り付けられるコイル5と、コイル5を取り囲むヨーク6と、コイル5に挿通するプレート7と、ヨーク6とプレート7との間に介在する磁石8とを備える。コイル5には、音を発生させるための電気信号が入力される。振動板3は、音を伝播させる方向である前方向とは反対方向すなわち後方向に向く。
【0018】
導波板9は、高音域ドライバ2の振動板3に対向するように配置される。高音域ドライバ2の振動面は、導波板9に対向する。導波板9の導波面9aは、前方向に向く。
導波板9は、剛性を有する。導波板9は、難振動性(音により振動し難い性質)と高反射性を有する。導波板9は、硬質樹脂、金属、木材、セラミックスまたはこれらの複合材等で構成される。
【0019】
導波板9は、振動板3よりも大きい。ここでは、導波板9の大きさは、導波板9の中心軸C1に垂直な投射面に投射された導波板9の投射像の面積として定義される。振動板3の大きさは、振動板3の中心軸C2に垂直な投射面に投射される振動板3の投射像の面積として定義される。さらに、好ましくは、導波板9の中心軸C1に沿う方向から見たときに、導波板9の外周(投射像の外形線)が、振動板3の外周(投射像の外形線)の外側に配置される。
【0020】
具体的には、導波板9は、概略円形に構成される。導波板9は、導波板9の中心軸C1と振動板3の中心軸C2とが一致するように配置される。この中心軸C1,C2は、スピーカー1の中心軸Cと一致する。導波板9の直径(投射像の直径)は、振動板3の直径(投射像の直径)よりも大きい。より好ましくは、導波板9の直径は、振動板3の直径の2倍以上である。これにより、振動板3から発生する音の一部を有効に横方向に誘導できる。振動板3から発生する音の一部は、導波板9に反射して、スピーカー1の前方に伝播する。
【0021】
振動板3の中央領域と導波板9の対向領域との間の距離(以下、「離間距離」)は、10kHzの波長の1/8(約4mm)以下であることが好ましい。これにより、導波板9で反射する音と、導波板9で反射せず横方向に直接的に伝播する音とが重なり、横方向に直接的に伝播する音の音圧が増強される(
図5、後述参照。)。
好ましくは、振動板3の中央領域と導波板9の対向領域との間の距離は、10kHzの波長の1/16(約2mm)以下である。
ここで、振動板3の中央領域とは、振動板3の中心を含む領域を示す。本実施形態では、中央領域は振動板3の頂点を含む微小領域である。導波板9の対向領域とは、振動板3の中央領域に対向する領域を示す。
【0022】
図2〜
図5を参照して、従来のスピーカー1x及び参考の従来のスピーカー1yと比較しつつ、スピーカー1の作用を説明する。
図2は、従来のスピーカー1xの高音の指向角を示す模式図である。従来のスピーカー1xは、振動板が下方に向くように天井10に取り付けられる。
図2に示されるように、従来のスピーカー1xの指向角は狭い。このため、スピーカー1xの真下(前方向)から離れるに従って、高音が聞き取り難くなって音の明瞭性が低下する。なお、ここでは、明瞭性が低いとは、可聴領域の帯域で低域の音圧に対する高域の音圧の比率が低下している状態を示す。
【0023】
一般的には、スピーカーの真下(前方向)での音の明瞭性が確保されていても、スピーカーの真下から外れたところでは音の明瞭性が著しく低下しているケースが多い。このことは、音を聞き難くなる領域の割合が大きいことを意味する。これは、横方向に放射される高音域の音圧が不足しているためで、音量の増大では改善できない。
【0024】
図3を参照して、高音の指向性を拡大するための参考のスピーカー1yについて説明する。この参考のスピーカー1yでは、音の伝播方向が天井10に向くようにスピーカー1yが取り付けられる。反射による横方向の高音の音圧の増加が期待できる。しかし、この場合、スピーカー1yと天井10との距離が離れ過ぎて、十分に高い周波数帯域においては直接音と反射音とを効率よく加算合成できないため、横方向での高音域の音圧の良好な補填(横方向における高音域の音圧の不足の補填)には及ばない。
【0025】
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係るスピーカー1について説明する。
図4に示されるように、横方向において良好に、高音のエネルギーを確保できる角度範囲が広がる。
この原理について、
図5を参照して説明する。
【0026】
スピーカー1は、導波板9が天井10と面一になるように配置され、かつ振動板3が天井10側に向くように、天井10に設置される。
上述のように、スピーカー1において、振動板3と導波板9とが対向する。導波板9は、振動板3よりも大きい。これにより、振動板3から出る音の一部は、導波板9で反射して前方向に伝播し、他の一部の音は、導波板9で反射して横方向に伝播し、さらに他の一部の音は、直接的に横方向に伝播し、さらに他の一部の音は、導波板9及び振動板3との間の隙間空間SAを通って横方向に伝播する。
【0027】
また、振動板3と導波板9とは、上述のように接近させている。例えば、振動板3の中央領域と導波板9の対向領域との間の距離(「離間距離」)が、10kHzの波長の1/8(約4mm)以下とされる。このような構成により、導波板9で反射して横方向に伝播する反射音と、導波板9に向かわずに直接的に横方向に伝播する直接音との位相差が小さくなる。位相差が小さくなるように上記離間距離が設定されているため、導波板9に向かわずに直接的に横方向に伝播する直接音の一部は、導波板9で反射して横方向に伝播する反射音と重なり合うことで増幅され、横方向に伝播する音の音圧が増強される。また、導波板9に反射する音の一部は、スピーカー1の前方向に伝播する。このようにして、十分に高い周波数帯域まで、横方向での高音の音圧の増加が確保できる。
【0028】
なお、上記離間距離を「10kHzの波長の1/8(約4mm)以下」にするという条件は、10kHzの音について、導波板9で反射する音と、導波板9で反射せず横方向に直接的に伝播する音との位相差を、厳密に波長の1/8以下にするというものではなく、位相差を音の波長よりも小さくするという作用を齎すものである。この点について次に説明する。導波板9で反射する音の伝播経路は様々であるため、導波板9で反射する反射音と、導波板9で反射せず横方向に直接的に伝播する直接音との位相差が1/8よりも大きくなる場合もある。例えば、
図5に示される音の伝播では、導波板9で反射する音と、導波板9で反射せず横方向に直接的に伝播する音との伝播経路の距離差は、上記離間距離の数倍であるため、この場合の位相差は、波長の1/8よりも大きい。このように上記条件は、位相差を規定するものではない。一方、離間距離を「10kHzの波長の1/8(約4mm)以下」まで小さくすると、離間距離を小さくせずに単に導波板9と振動板3とを向かい合わせた場合とは明らかに異なる効果すなわち横方向の音の増強効果が顕著に得られる。具体的には、
図3で示した参考のスピーカー1yとは明らかに異なる、横方向の音の増強効果が得られる。この増強効果は、導波板9で反射する音と、導波板9で反射せず横方向に直接的に伝播する音との位相差が、波長よりも十分に小さいことの効果であると考えられる。このような増強効果が得られるのは、上記条件を満たす場合である。
【0029】
以下、本実施形態に係るスピーカー1の効果を説明する。
(1)スピーカー1は、高音域ドライバ2と、高音域ドライバ2の振動板3に対向するように配置される導波板9とを備える。導波板9は、振動板3よりも大きい。
この構成によれば、高音域ドライバ2から発生する音が導波板9に沿って伝播するため、高音域ドライバ2の中心軸(スピーカー1の中心軸Cと同じ)に交差する横方向の音圧を増強できる。また、導波板9が振動板3よりも大きいため、高音域ドライバ2の背面側(スピーカー1の前方向)にも音が伝播する。このようにして、スピーカー1の前方向に音を伝播させつつ、複数のスピーカーユニットを用いずともスピーカー1の横方向の音圧を増強できる。
【0030】
(2)振動板3の中央領域と、導波板9において中央領域に対向する対向領域との間の距離は、10kHzの波長の1/8以下である。
この構成によれば、振動板3から発生する直接音と導波板9で反射する反射音との位相差が小さく、振動板3から発生する直接音が導波板9で反射する反射音と重なり合うことにより増幅される。このようにして、高音域ドライバ2の中心軸(スピーカー1の中心軸Cと同じ)に交差する横方向において良好に高域特性で音圧を増強できる。
【0031】
<第2実施形態>
図6〜
図17を参照して、第2実施形態に係るスピーカー11について説明する。
本実施形態に係るスピーカー11は、第1実施形態に係るスピーカー1に、低音域ドライバ13に加えたものである(
図9参照)。低音域ドライバ13は、少なくとも、高音域ドライバ12が発生させる音の周波数よりも低周波数の音を発生する。なお、低音域ドライバ13の音域と高音域ドライバ12の音域とは部分的に重なる。
【0032】
以下、スピーカー11の一例として天井埋込型のスピーカーを説明する。
図6及び
図9に示されるように、スピーカー11は、高音域ドライバ12と、低音域ドライバ13と、導波板14と、低音域ドライバ13を収容するキャビネット15とを備える。
【0033】
図7に示されるように、キャビネット15は、箱型に構成される。キャビネット15は、開口部16を有する(
図9参照)。スピーカー11が天井10に取り付けられるとき、キャビネット15は、天井10に設けられた天井孔10bを通り、キャビネット15の開口部16が下に位置する姿勢で、天井裏に設置される。キャビネット15の開口部16は、導波板14で封鎖される。
【0034】
高音域ドライバ12は、少なくとも振動板17を有する。高音域ドライバ12の構造は、第1実施形態に係る高音域ドライバ2に準ずる。ここでは、高音域ドライバ12の内部構造の説明を省略する。高音域ドライバ12は、複数個の支持部19(
図6参照)を介して導波板14に取り付けられる。支持部19は、高音域ドライバ12の側面から径方向に突出する。
【0035】
図9に示されるように、低音域ドライバ13は、キャビネット15内に配置され、導波板14に対して高音域ドライバ12とは反対側に配置される。
低音域ドライバ13は、少なくとも低音域の音を発生するコーン形状の振動板21を備える。低音域ドライバ13の振動面は、導波板14の裏面14tに対向する。振動板21は、駆動ユニット22により駆動される。駆動ユニット22は、振動板21に取り付けられるコイル23と、コイル23を取り囲むプレート24と、コイル23に挿通するヨーク25と、プレート24とヨーク25との間に介在する磁石26とを備える。コイル23には、音を発生させるための電気信号が入力される。
【0036】
導波板14は、キャビネット15の開口部16を封鎖する。スピーカー11が天井10に設置されると、導波板14は、天井孔10bを塞ぐ。また、鉛直方向において、導波板14の導波面14sは、天井10の下面(以下、「天井面10a」)と略同じ高さに配置される。好ましくは、導波面14sと天井面10aとは、出来る限り段差がなく滑らかに連続する面を構成する。
【0037】
導波板14は、高音域ドライバ12と低音域ドライバ13とを支持する。高音域ドライバ12と低音域ドライバ13とは、導波板14を間に挟み、対向するように配置される。高音域ドライバ12の中心軸と低音域ドライバ13の中心軸と導波板14の中心軸とは一致する。これら中心軸は、スピーカー11の中心軸Cと一致する。
【0038】
導波板14は、高音域ドライバ12の振動板17の中央領域が入る凹部14aを有する。凹部14aは、導波板14の導波面14s側に設けられる。凹部14aにおいて、振動板17の中央領域が入る部分は、ドーム形状の振動板17の形状に沿う凹曲面に構成される。振動板17の中央領域と導波板14の凹部14aとの間の距離は、10kHzの波長の1/8以下である。ここで、高音域ドライバ12の振動板17の中央領域とは、振動板17の中心を含む領域を示す。本実施形態では、中央領域は、振動板17の頂点を含み、振動板17の振動面に沿って頂点から振動板17の外周縁までの約1/2までの部分を示す。導波板14の凹部14aは、振動板17の中央領域に対向する対向領域に相当する。
【0039】
導波板14の導波面14sは、上述の凹部14aの凹曲面と、凹部14aの径方向外側にあるリング状の第1平坦面14bと、第1平坦面14bの径方向外側にあるリング状の傾斜面14cと、傾斜面14cの径方向外側にあるリング状の第2平坦面14dとにより区画される。
第1平坦面14b及び第2平坦面14dは、スピーカー11の中心軸Cに垂直な面である。
傾斜面14cは、径方向外側に向かって高音域ドライバ12側に近づくように傾斜する。好ましくは、中心軸Cと傾斜面14cとのなす角は、60度以上90度未満である。傾斜面14cは、中心軸Cに垂直な径方向において、高音域ドライバ12の振動板17よりも外側に配置される。
【0040】
導波板14の裏面14tは、低音域ドライバ13の振動板21及びキャップ27に沿う形状に構成される。具体的には、導波板14の裏面14tは、中央に向かって厚さ方向に漸次高くなっている。また、裏面14tの中央部であって盛り上がった頂上部には、キャップ27が入る凹部14rが設けられる。低音域ドライバ13の振動板21及びキャップ27と導波板14の裏面14tとが接触しないように、両者の間には隙間空間SBが設けられる。
【0041】
また、
図8に示されるように、導波板14には、低音域ドライバ13が発生する音が通る音孔14fまたは切欠きを有する。本実施形態では、導波板14には、音孔14fが設けられている。導波板14に切欠きが設けられる場合、切欠きは、例えば、導波板14の外縁から中心に向かうスリットとして構成される。
【0042】
音孔14fは、中心軸Cを中心とする所定半径の円周に等間隔で配置される。音孔14fは、中心軸Cに垂直な径方向において、高音域ドライバ12の振動板17よりも外側に配置される。この配置により、高音域ドライバ12の中央領域から発生する音がキャビネット15内に進入することが抑制される。
【0043】
図10〜
図17を参照して、スピーカー11の高音域の試験結果を説明する。
図10〜
図17のいずれにも、従来例のスピーカー11xの特性と、本実施形態のスピーカー11の特性とが示されている。
【0044】
図10を参照して、従来例のスピーカー11xの構造を説明する。従来例のスピーカー11xは、キャビネット15x、低音域ドライバ13xと、高音域ドライバ12xとを備える。これら構成部品は、本実施形態の対応部品と同じ構造を有する。また、従来例のスピーカー11xは、導波板14を有しない。高音域ドライバ12xは、低音域ドライバ13xの前に配置され、高音域ドライバ12xの振動板17xは、低音域ドライバ13xと同じ方向を向く。高音域ドライバ12xは、アダプター18xを介してキャビネット15xに支持される。アダプター18xは、キャビネット15xと低音域ドライバ13xとの間の隙間を封鎖する。アダプター18xには、高音域ドライバ12xを支持する支持部19xが設けられている。
【0045】
図11を参照して、スピーカー特性の測定方法を説明する。
無響室にて、スピーカー11を回転させて、スピーカー11の指向特性を計測する。具体的には、一辺が50cmの正方形の平坦な支持板30に、直径20cmの穴を設け、この穴にスピーカー11を固定する。マイク31は、スピーカー11に対向するように配置する。スピーカー11からマイク31までの距離を2mとし、スピーカー11に所定の信号を入力する。本実施形態のスピーカー11と従来例のスピーカー11xとの高音の音圧差を明確にするため、低音域ドライバ13を駆動せず、高音域ドライバ12を駆動する。そして、マイク31で音を検出し、音圧を算出する。
【0046】
図12〜
図15に示される周波数特性グラフは、スピーカー11の中心軸Cに対して所定角度の方向にマイク31を設置して得られたグラフである。所定角度は、スピーカー11の中心軸Cを基準軸として、中心軸Cに対する角度を示す。
【0047】
図16及び
図17の極座標グラフは、次の測定操作及び計算処理により得られたグラフである。
スピーカー11を360度回転し、音圧を測定した。0度〜360度の極座標グラフのデータを、スピーカー11の表側(前方向側)の+90度から−90度までのグラフ(以下、「表側グラフ」)と、スピーカー11の裏側(後方向側)の−90度から+90度までのグラフ(以下、「裏側グラフ」)とに分割する。そして、裏側グラフを、−90度方向の線上の点と+90度方向の線上の点とを結ぶ直線(対称軸)で反転し、裏側グラフの反転グラフを得た。そして、表側グラフと裏側グラフの反転グラフとを合成した。裏側グラフの反転グラフは、実質的に、対称軸で反射する音の音圧のグラフを示す。したがって、上記のように合成された合成グラフは、天井10にスピーカー11を設置したときに得られる指向特性に近似する。
図16及び
図17に示される極座標グラフは、以上のようにして形成した合成グラフである。
【0048】
以下、試験結果内容について説明する。
図12〜
図15は、それぞれ、0度(前方)、30度、60度、90度(真横方向)における音圧の周波数特性グラフである。
図12〜
図15において、実線は、本実施形態に係るスピーカー11の音圧を示し、破線は、従来例のスピーカー11xの音圧を示す。
【0049】
図12に示されるように、0度においては、実施形態に係るスピーカー11は、従来例のスピーカー11xと比較し、2.2kHz〜10kHzの音の音圧が高い。
図13に示されるように、30度においては、実施形態に係るスピーカー11は、従来例のスピーカー11xと比較し、2.2kHz〜7kHzの音の音圧が高い。
図14に示されるように、60度においては、実施形態に係るスピーカー11は、従来例のスピーカー11xと比較し、2.2kHz〜10kHzの音の音圧が高い。
図15に示されるように、90度においては、実施形態に係るスピーカー11は、従来例のスピーカー11xと比較し、4kHz以上の音の音圧が高い。
【0050】
これらの結果から、
図12〜
図14に示されるように、0度〜90度のいずれの方向においても、少なくとも4kHz〜7kHzの音について音の音圧が増強されることが分かる。
図15に示されるように、真横方向においては、特に高い音(4kHz以上の音)が増強されていることが分かる。
【0051】
図16は、4kHzの音について、各角度における音圧を示す極座標グラフである。
図17は、8kHzの音について、各角度における音圧を示す極座標グラフである。
図16及び
図17において、実線は、本実施形態に係るスピーカー11の音圧を示し、破線は、従来例のスピーカー11xの音圧を示す。
【0052】
図16に示されるように、4kHzの音については、実施形態に係るスピーカー11は、従来例のスピーカー11xと比較し、全角度範囲にわたって音圧が高くなっており、特に、角度が0度である方向(前方向)の音の増強が著しい。
図17に示されるように、8kHzの音については、実施形態に係るスピーカー11は、従来例のスピーカー11xと比較し、角度が30度及び−30度付近の方向以外の範囲において、音圧が高くなっている。
以上から、4kHz及び8kHzいずれの音においても、横方向(45度〜90度の範囲)の音の音圧は増強されていることが分かる。
【0053】
図12〜
図17の結果から、本実施形態に係るスピーカー11は、少なくとも4kHz〜7kHzの音について、従来のスピーカー11xに比べて、所定角度(30度付近)を除き全角度範囲において、高い能率を有する。また、本実施形態に係るスピーカー11は、特に高い音(4kHz以上の音)について、従来のスピーカー11xに比べて、真横方向において、高い能率を有する。
【0054】
以下、本実施形態に係るスピーカー11の効果を説明する。
(1)導波板14は、振動板17の中央領域が入る凹部14aを有する。振動板17の中央領域と導波板14の凹部14aとの間の距離は、10kHzの波長の1/8以下である。
この構成によれば、振動板17の中央領域の周辺部が導波板14に接近するため、振動板17の中央領域の周辺部を発生源とする直接音と、導波板14で反射する反射音とが重なり合うので音圧が増強する。振動板17の中央領域の周辺部は、点ではなくリング状の形態を有し、点よりも面積が大きいため、導波板14が平面であることにより振動板17の頂部だけが導波板14に接近した構造よりも、高音域ドライバ12から横方向に伝播する音の音圧を更に増強できる。
【0055】
なお、上記試験結果に示していないが、凹部14aを有するスピーカー11が、凹部14aを有しないスピーカーに比べて横方向の音圧が高くなることは、試験により確かめられている。
【0056】
(2)導波板14は、径方向外側に向かって高音域ドライバ12側に近づくように傾斜する傾斜面14cを有する。
この構成によれば、振動板17の中心軸(スピーカー11の中心軸Cと同軸)に直交する真横方向に伝播する音を、振動板17の中心軸に沿う方向側(スピーカー11の前方)に誘導できる。これにより、スピーカー11の真横方向に伝播する音を斜め横方向(真横方向から高音域ドライバ12側に傾いた斜め方向)に伝播させることができる。
なお、上記試験結果に示していないが、傾斜面14cがあるスピーカー11が、傾斜面14cがないスピーカーに比べて斜め横方向の音圧が高くなることは、試験により確かめられている。
【0057】
(3)スピーカー11は、高音域ドライバ12が発生させる音の周波数よりも低周波数の音を発生する低音域ドライバ13を更に備えることが好ましい。低音域ドライバ13は、上述したように、導波板14に対して高音域ドライバ12とは反対側に配置される。導波板14は、低音域ドライバ13が発生する音が通る音孔14fまたは切欠きを有する。この構成によれば、低音域ドライバ13から発生した低音の照射パターンと高音域ドライバ12から発生した高音の放射パターンとを概ね一致させることができ、横方向に届く低音と高音とのバランスを改善することができる。
【0058】
<その他の実施形態>
各実施形態は、上記の構成に限定されない。以下、各実施形態の変更例を説明する。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、高音域ドライバ2,12、及び低音域ドライバ13の構成は、実施形態に示された例に限定されない。例えば、磁石とプレートとヨークの形態は、適宜、変更され得る。
・上記第1実施形態及び第2実施形態では、導波板9,14は、キャビネット15,15xの開口部を封鎖する1つの部材により構成されているが、導波板9,14は、複数の部材に分割され得る。