(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824858
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】パッチテスト用保護具およびこれを用いたパッチテスト方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
A61F13/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-199225(P2017-199225)
(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2018-64937(P2018-64937A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-203721(P2016-203721)
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516311571
【氏名又は名称】山田 鐘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】山田 鐘徳
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−049652(JP,A)
【文献】
特表平09−506803(JP,A)
【文献】
米国特許第04399816(US,A)
【文献】
米国特許第05086763(US,A)
【文献】
特開平06−238008(JP,A)
【文献】
特開2002−224159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00−13/14
A61F 15/00−17/00
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆するプラスチック製の被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、
前記開口部を閉塞可能な蓋部であり、複数の通気孔が形成されたプラスチック製の板に通気防水性フィルタを重ねた蓋部と、
前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部と
を含むパッチテスト用保護具。
【請求項2】
前記蓋部は開閉可能である請求項1記載のパッチテスト用保護具。
【請求項3】
前記蓋部の少なくとも一部が通気性を有する請求項1または2に記載のパッチテスト用保護具。
【請求項4】
前記蓋部は、水が浸入しない程度の微小な通気孔を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のパッチテスト用保護具。
【請求項5】
前記被覆部または前記蓋部の一方または両方の少なくとも一部が透明である請求項1から4のいずれか1項に記載のパッチテスト用保護具。
【請求項6】
皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、前記開口部を閉塞可能な蓋部と、前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むパッチテスト用保護具を前記貼着部により前記皮膚上のテスト部位に貼着すること、
前記被覆部の開口部を通じて前記皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと、
前記被覆部の開口部を前記蓋部により閉塞すること
を含むパッチテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチテスト用保護具およびこれを用いたパッチテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容室においてパーマ(パーマネント・ウエーブ)やヘアカラー等をする際、薬物過敏症の試験、いわゆるパッチテストを行うことが義務付けられている。パッチテストでは、試験液を皮膚上に垂らし、衣服等につかないように注意して30分程度放置して乾かした後、1回目の観察を行い、異常がなければ余分な試験液を軽く拭き取って、そのまま丸2日間程度触れないようにし、その後、2回目の観察を行う(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、テスト者が実生活の中で、このパッチテストを実施する間、テスト部位に触れないようにすることは難しい。
【0003】
なお、傷口などの患部に塗布された薬を外界から保護するものとしては、例えば特許文献1に記載の患部塗布薬保護帯が知られている。この患部塗布薬保護帯は、凹型伏覆材を支持帯に固着したものであり、塗布薬上に凹型伏覆材の空間部を傘様に伏せて被せた後、支持帯を周辺の皮膚に貼着することで、塗布薬が外界から保護されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−57921号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“皮膚アレルギー試験(パッチテスト)の手順”,[online],日本ヘアカラー工業会,[平成28年10月7日検索],インターネット<URL:http://www.jhcia.org/advice/advice_patch/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の患部塗布薬保護帯は、傷口などの患部に塗布された薬を外界から保護するものであり、薬物過敏症の試験を行うテスト部位を保護するものではないが、仮にこの患部塗布薬保護帯を用いてテスト部位を保護しようとした場合、テスト部位に試験液を垂らした上で、凹型伏覆材を上から伏せて被せていくことになる。しかしながら、このとき、試験液を垂らしたテスト部位が伏せて被せようとする凹型伏覆材の陰に隠れるようになるため、凹型伏覆材が試験液を垂らしたテスト部位の中心に位置するように上から伏せて被せることは難しい。
【0007】
そこで、本発明においては、試験液を垂らしたテスト部位を中心にして保護することが可能なパッチテスト用保護具およびこれを用いたパッチテスト方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパッチテスト用保護具は、皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、開口部を閉塞可能な蓋部と、被覆部を皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、上記本発明のパッチテスト用保護具を用いたパッチテスト方法は、上記本発明のパッチテスト用保護具を貼着部により皮膚上のテスト部位に貼着すること、被覆部の開口部を通じて皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと、被覆部の開口部を蓋部により閉塞することを特徴とする。
【0010】
本発明のパッチテスト用保護具は、被覆部の中心部に開口部を有するため、皮膚上に試験液を垂らす前に、貼着部により皮膚上のテスト部位に貼着した後、被覆部の開口部を通じてテスト部位の中心位置に試験液を正確に垂らすことが可能である。そして、試験液を垂らした後は、被覆部の開口部を蓋部により閉塞することで、試験液を垂らしたテスト部位を中心にして保護することが可能となる。
【0011】
ここで、蓋部は開閉可能であることが望ましい。これにより、テスト部位の観察は蓋部を開いて行うことが可能となり、観察後は蓋部を閉じることでテスト部位を保護することが可能となる。あるいは、被覆部または蓋部の一部または両方の一部を透明とすることで、テスト部位の観察を、被覆部または蓋部の透明な部分を通じて外部から行うことも可能となる。
【0012】
また、蓋部の少なくとも一部は通気性を有することが望ましい。これにより、テスト部位が酸欠状態となることを防止することができ、またテスト部位が蒸れることを防止することができる。
【0013】
蓋部は、水が浸入しない程度の微小な通気孔を有することが望ましい。これにより、水がかかっても通気孔を通じて水が浸入することを防止しつつ、テスト部位が酸欠状態となることを防止することができ、またテスト部位が蒸れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパッチテスト用保護具によれば、試験液を垂らしたテスト部位を中心にして保護することが可能となる。
また、蓋部を開閉可能、あるいは被覆部または蓋部の一部または両方の一部を透明とすることで、テスト部位を外部から観察することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態におけるパッチテスト用保護具の蓋部を開いた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1のパッチテスト用保護具の蓋部を閉じた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1のパッチテスト用保護具の分解斜視図である。
【
図4】パッチテスト用保護具の別の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】パッチテスト用保護具の別の実施形態を示す平面図である。
【
図6】本発明のさらに別の実施の形態におけるパッチテスト用保護具の蓋部を開いた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図7の蓋部を開いた状態におけるIX−IX断面図である。
【
図10】
図7の蓋部を閉じた状態におけるIX−IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態におけるパッチテスト用保護具の蓋部を開いた状態を示す斜視図、
図2は
図1のパッチテスト用保護具の蓋部を閉じた状態を示す斜視図、
図3は
図1のパッチテスト用保護具の分解斜視図である。
【0017】
図1〜
図3に示すように、本発明の実施の形態におけるパッチテスト用保護具1は、皮膚上に貼着可能な貼着部2と、中心部に開口部3Aを有し、貼着部2上に固着された被覆部3と、被覆部3の開口部3Aを閉塞可能な蓋部4とから構成される。
【0018】
貼着部2は、被覆部3を皮膚上に貼着可能にするものである。貼着部2は、例えば、ウレタンフィルム等のシート状物の裏面(皮膚に貼着される面)に、粘着剤を設けたものとすることができる。また、貼着部2の中心部には、この貼着部2が皮膚上に貼着された際に、皮膚上のテスト部位を被覆部3内に露出させるための開口部2Aが形成されている。
【0019】
被覆部3は、上部に前述の開口部3Aが、下部に皮膚上のテスト部位に臨む開口部3Bが、それぞれ形成されたリング状である。被覆部3は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂などの透明なプラスチック製とすることができる。被覆部3は、貼着部2の開口部2Aの周縁部に固着され、皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆するものである。
【0020】
蓋部4は、被覆部3の上部の開口部3Aを閉塞するためのものである。蓋部4は、例えば、複数の通気孔4A−1が形成されたPET樹脂等の透明なプラスチック製の板4Aに通気防水性フィルタ4Bを重ねたものとすることができる。通気防水性フィルタ4Bは、水を通さず、空気を通し、湿気を送り出すフィルタである。なお、蓋部4は開閉可能なものとすることが望ましいが、後述するように開口部3Aを通じて試験液を垂らして一旦閉じた後は開かない構造としても良い。
【0021】
上記構成のパッチテスト用保護具1は、まず、貼着部2により皮膚上のテスト部位に貼着する。次に、被覆部3の開口部3A,3Bを通じて皮膚上のテスト部位に試験液を垂らす。そして、被覆部3の開口部3Aを蓋部4により閉塞する。
【0022】
このように、本実施形態におけるパッチテスト用保護具1は、被覆部3の中心部に開口部3Aを有するため、皮膚上に試験液を垂らす前に、貼着部2により皮膚上のテスト部位に貼着した後、被覆部3の開口部3Aを通じてテスト部位の中心位置に試験液を正確に垂らすことが可能である。そして、試験液を垂らした後は、被覆部3の開口部3Aを蓋部4により閉塞することで、試験液を垂らしたテスト部位を中心にして保護することが可能である。
【0023】
なお、テスト部位の観察は、被覆部3の透明な部分を通じて外部から行うことが可能である。また、本実施形態における蓋部4は、通気孔4A−1が形成された板4Aに通気防水性フィルタ4Bを重ねたものであるため、通気性および透湿性に優れており、テスト部位が蒸れることを防止することができる。さらに、水を通さないため、日常生活において濡れることを極度に心配する必要もない。
【0024】
なお、本実施形態においては、被覆部3のみが透明であり、蓋部4は透明な板4Aに通気防水性フィルタ4Bを重ねたものである。通気防水性フィルタ4Bも透明であることが望ましいが、半透明や不透明であっても透明な被覆部3からテスト部位の観察を行うことが可能である。蓋部4は、微多孔質フィルム、通気性フィルムや透湿性フィルムなどにより構成することも可能である。また、被覆部3または蓋部4の一方または両方の少なくとも一部が透明であれば、テスト部位の観察を外部から行うことが可能であり、パッチテストの目的を達成することが可能である。
【0025】
また、本実施形態におけるパッチテスト用保護具1では、被覆部3が平面視で略円状であるが、
図4に示すように平面視で略矩形状の貼着部5、被覆部6および蓋部7から構成されるパッチテスト用保護具1Aとすることも可能である。さらに、
図5の(a)〜(e)に示すように、テスト部位に合わせて適宜形状を変更することも可能である。
【0026】
次に、本発明のパッチテスト用保護具のさらに別の実施形態について、
図6〜
図10を参照して説明する。
図6は本発明のさらに別の実施の形態におけるパッチテスト用保護具の蓋部を開いた状態を示す斜視図、
図7は平面図、
図8は正面図、
図9は
図7の蓋部を開いた状態におけるIX−IX断面図、
図10は
図7の蓋部を閉じた状態におけるIX−IX断面図である。
【0027】
図6〜
図10に示すように、パッチテスト用保護具10は、前述の貼着部2と同様の貼着部11と、貼着部11上に接着固定された保護具本体12とから構成される。なお、
図7〜
図10においては貼着部11の図示を省略している。
【0028】
保護具本体12は、中心部に開口部13Aを有する被覆部13と、被覆部13の開口部13Aを閉塞可能な蓋部14とから構成される。保護具本体12は、PP(ポリプロピレン)樹脂か、もしくはPP樹脂以上の柔軟性を持つプラスチック素材により、被覆部13と蓋部14とが一体に射出成型される。
【0029】
被覆部13は、上部に前述の開口部13Aが、下部に皮膚上のテスト部位に臨む開口部13Bがそれぞれ形成されたリング状である。なお、貼着部11にも開口部13Bと同程度の、好ましくは開口部13Bと同一形状の開口部(図示せず。)が形成されており、皮膚上のテスト部位が被覆部13内に露出する。開口部13A,13Bは同心円形状であり、下部の開口部13Bの径B2は上部の開口部13Aの径B1よりも大きくなっている。また、被覆部13の底周縁部には、貼着部11との接着固定面積を確保するため、所定の幅B3の円環状の鍔部13Cが設けられている。
【0030】
蓋部14は、接続片15によって被覆部13と接続されている。蓋部14は、接続片15を折り曲げるようにして被覆部13の開口部13A上に重ね合わせ、開口部13A内に押し込むことで、開口部13Aを閉塞可能となっている。また、蓋部14には、通気が可能であり、かつ、水が浸入しない程度の微小な通気孔16A,16Bが複数設けられている。通気孔16Aは蓋部14によって開口部13Aを閉塞した際に開口部13Aの内側に臨む位置に形成されている。通気孔16Bは開口部13Aの境界部分に臨む位置に形成されている。
【0031】
上記構成のパッチテスト用保護具10では、前述のパッチテスト用保護具1と同様、まず、貼着部11により皮膚上のテスト部位に貼着し、被覆部13の開口部13A,13Bを通じて皮膚上のテスト部位に試験液を垂らす。このとき、上部の開口部13Aは下部の開口部13Bよりも内側にあり、開口部13Aの径B1は下部の開口部13Bの径B2よりも小さくなっているため、垂らした試験液が下部の開口部13Bの縁から鍔部13Cおよび貼着部11と皮膚との間に入り込みにくくなっている。
【0032】
その後、接続片15を折り曲げるようにして蓋部14を被覆部13の開口部13A上に重ね合わせ、開口部13Aに押し込んで、蓋部14により開口部13Aを閉塞する。これにより、試験液を垂らしたテスト部位を中心にして保護することが可能である。なお、このパッチテスト用保護具10では、蓋部14を繰り返し開閉することが可能となっており、テスト部位の観察は蓋部14を開いて行う。
【0033】
また、このパッチテスト用保護具10では、蓋部14に通気孔16A,16Bが形成されているので、この通気孔16A,16Bにより通気性が確保されており、テスト部位が酸欠状態となることを防止することができ、またテスト部位が蒸れることが防止される。また、通気孔16A,16Bは水が浸入しない程度の微小なものであるため、パッチテスト用保護具10に水がかかっても通気孔16A,16Bを通じて水が浸入せず、防水性も確保されている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のパッチテスト用保護具およびこれを用いたパッチテスト方法は、美容室、理容室や個人等においてパーマ(パーマネント・ウエーブ)やヘアカラー等をする際の薬物過敏症の試験、いわゆるパッチテスト用の保護具およびパッチテスト方法として有用である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,10 パッチテスト用保護具
2,5,11 貼着部
3,6,13 被覆部
3A,3B,13A,13B 開口部
4,7,14 蓋部
12 保護具本体