(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走行経路設定部は、前記草刈機の人為操作によるティーチング走行軌跡に基づいて、前記ティーチング走行軌跡に平行な複数のライン走行経路を生成する請求項1から7の何れか一項に記載の草刈機自動走行システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば走行対象領域が、例えば圃場の法面等のように、物体検出部が検出可能な物体が存在しない場合がある。このような場合、例えば走行対象領域の周囲に囲枠や反射板等の物体を設置する必要があり、更に走行後にこれらの物体を撤去する場合も考えられ、物体の設置及び撤去に労力を要する。また、同一の法面であっても、法面上の傾斜角度が一様でなかったり、法面上に凹凸があったりする場合、機体の急激な傾き等によって物体検出部が物体を見失う虞がある。
【0005】
上述の実情に鑑みて、本発明の目的は、同一法面において、法面上の傾斜角度が一様でなかったり、法面上に凹凸があったりする場合であっても、物体検出部が精度良く物体を追従可能な草刈機自動走行システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の草刈機自動走行システムは、
法面上に予め設定された走行エリア内を自動草刈走行する草刈機の自動走行システムであって、
法面の最上端に設けられ、検出信号を送信し、前記検出信号に対する反射信号を取得して物体を検出する物体検出部と、
前記草刈機における前記物体検出部の位置する側の側面に設けられ、前記物体検出部により検出される反射部と、
前記物体検出部と前記草刈機との夫々に設けられた通信部と、
前記走行エリアのエリア情報と、前記草刈機の作業履歴情報と、を記憶する記憶部と、
前記草刈機の走行経路を設定する走行経路設定部と、
前記草刈機に指示信号を送信する制御指示部と、
が備えられ、
前記物体検出部は、前記反射部を追従するように構成され、
前記制御指示部は、前記物体検出部が取得した反射信号に基づいて前記草刈機の走行軌跡を算出して前記草刈機の走行軌跡と前記走行経路との誤差を算出し、前記誤差を減少させるように前記指示信号を生成し、
前記草刈機は、前記指示信号によって前記走行経路に沿って自動草刈走行するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、物体検出部が法面の最上端に設けられ、草刈機の側面に反射部が設けられる構成となっている。物体検出部は定点位置に固定され、物体検出部の検出目標物を草刈機とすることができるため、物体検出部が草刈機に設けられる構成と比較して、物体検出部が安定した状態で草刈機の反射部を検出可能となる。このことから、法面上の凹凸等によって草刈機が急激に傾く場合であっても、物体検出部は、法面上の凹凸等の影響を受けることなく草刈機の反射部を検出可能となる。これにより、同一法面において、法面上の傾斜角度が一様でなかったり、法面上に凹凸があったりする場合であっても、物体検出部が精度良く物体を追従可能な草刈機自動走行システムが実現される。
【0008】
本構成において、
前記草刈機に、前記草刈機の傾斜角度を検出する傾斜センサが備えられ、
前記物体検出部に、前記傾斜センサが検出した傾斜角度と一致するように、前記物体検出部の角度調整を行う傾斜補正制御部が備えられていると好適である。
【0009】
草刈機の傾斜センサによって検出される傾斜角度は、法面の傾斜角度に沿う場合が多い、このことから、本構成であれば、物体検出部が、傾斜補正制御部によって法面の傾斜角度に沿って傾斜する。これにより、異なる法面毎に人為操作による物体検出部の傾斜調整作業をする必要が無くなり、物体検出部が、多種多様な法面角度に対応して、草刈機の反射部を追従し易くなる。
【0010】
本構成において、
前記反射部に、横長の反射シートが上下に並ぶ状態で複数備えられ、
夫々の前記反射シートは、互いに長手方向の長さが異なると好適である。
【0011】
本構成であれば、物体検出部が横方向に沿って走査するときに、物体検出部は横長の反射シートの長さを検出可能である。複数の反射シートで夫々長さが異なる構成であるため、物体検出部は、反射シートの長さに基づいて、反射部の上側寄り又は下側寄りの何れを追従しているかを判定可能となる。これにより、物体検出部は反射部の上下中央箇所を追従することが可能となり、法面上の凹凸等によって草刈機が急激に上下に動く場合であっても、物体検出部は反射部を好適に追従できる。
【0012】
本構成において、
夫々の前記反射シートは、機体下側に位置するほど長手方向の長さが長いと好適である。
【0013】
本構成であれば、複数の反射シートのうち、最も上側に位置する反射シートの長さと、最も下側に位置する反射シートの長さと、が最も大きく異なる。このため、物体検出部は、反射部の上側寄り又は下側寄りの何れを追従しているかを判定し易くなり、誤判定の虞を軽減できる。
【0014】
本構成において、
法面の最上端に前記物体検出部を固定する取付治具が設けられ、
前記物体検出部は、前記取付治具に着脱可能なように構成されていると好適である。
【0015】
本構成であれば、法面の最上端に取付治具を固定し、物体検出部は持ち運び可能なように構成できるため、全ての走行エリアに物体検出部を設置固定する必要が無い。このため、全ての走行エリアに物体検出部を設置固定する構成と比較して、草刈機自動走行システムを安価に構築できる。
【0016】
本構成において、
前記記憶部は、前記取付治具に設けられ、
前記物体検出部が前記取付治具に固定された状態で、前記エリア情報及び前記作業履歴情報が、前記記憶部から前記物体検出部に読み出し可能なように構成されていると好適である。
【0017】
本構成であれば、自動草刈走行するための必要な情報が記憶部に記憶され、物体検出部を取付治具に装着するだけで、エリア情報及び作業履歴情報が、物体検出部に読み出し可能なように構成されている。このため、物体検出部は、自動草刈走行するための必要な情報を取得するために、例えば遠隔地の管理コンピュータに接続する必要も無ければ、WAN(Wide Area Network)等に接続する必要も無い。その結果、異なる法面毎に、エリア情報及び作業履歴情報を、物体検出部に容易に読み出すことができる。
【0018】
本構成において、
前記エリア情報及び前記作業履歴情報が、前記物体検出部から前記記憶部に記憶可能なように構成されていると好適である。
【0019】
本構成であれば、自動草刈走行時のエリア情報及び作業履歴情報が更新されたとき、これらの更新された情報が記憶部に記憶されるため、次回の自動草刈走行時に、同一の物体検出部でなくても、最新のエリア情報及び作業履歴情報が読み出し可能となる。また、自動草刈走行時の作業履歴情報に基づいて、次回の自動草刈走行時に角度の変動等を事前に予測できるため、過去の自動草刈走行よりも安定した自動草刈走行が可能となる。
【0020】
本構成において、
前記走行経路設定部は、前記草刈機の人為操作によるティーチング走行軌跡に基づいて、前記ティーチング走行軌跡に平行な複数のライン走行経路を生成すると好適である。
【0021】
本構成によると、ライン走行経路がティーチング走行軌跡に基づいて複数生成される。このため、自動草刈走行の作業対象において、一部の作業対象領域のみの人為操作によって、ライン走行経路が生成され、ライン走行経路に基づく自動走行が可能となる。
【0022】
本構成において、
前記複数のライン走行経路は、前記ティーチング走行軌跡よりも法面の下方側に、平行に並んだ状態で位置すると好適である。
【0023】
物体検出部は法面の上端に設けられることから、本構成であれば、法面の上手側から下手側に向かって順番に自動草刈走行が行われる。このため、物体検出部と草刈機との間は、常に刈取後の地面となり、物体検出部は未刈草に邪魔されることなく好適に草刈機の反射部を追従できる。
【0024】
本構成において、
前記ティーチング走行軌跡及び前記複数のライン走行経路は、前記記憶部に前記作業履歴情報として記憶され、
前記走行経路設定部は、前記作業履歴情報に基づいて前記ティーチング走行軌跡を前記ライン走行経路として再現可能であり、かつ、前記複数のライン走行経路を再現可能であると好適である。
【0025】
本構成であれば、同一の法面における次回の自動草刈走行では、ティーチング走行を行う必要が無く、人為操作の労力を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔草刈機自動走行システムの基本構成〕
本発明による草刈機自動走行システムについて、その実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至
図3に示されているように、本実施形態における草刈機自動走行システムに、物体検出部1と、取付治具2と、草刈機3と、が備えられている。物体検出部1は法面の上端部に設置され、法面を走行する草刈機3の位置を検出するように構成されている。物体検出部1は、取付治具2に取り付けて使用される。物体検出部1に、距離センサ11と、回転制御機構12と、取付部13と、が備えられている。物体検出部1の内部に、例えばマイクロコンピュータに組み込まれた状態で制御ユニットが備えられている。距離センサ11は物体検出部1の上部に設けられている。回転制御機構12は多自由度で回動可能であり、物体検出部1の下部に設けられている。取付部13は回転制御機構12の下端に設けられ、取付治具2に対して物体検出部1を取り付けるための取付箇所である。
【0028】
取付治具2は、例えば法面の最上端に固定される状態で設置される。取付治具2の上端部に物体検出部1の取付部13が着脱自在な状態で係止されることにより、取付治具2に物体検出部1が取り付けられて定点位置に固定される。つまり、物体検出部1は、取付治具2に着脱可能なように構成されている。なお、取付部13の着脱構造や着脱方法は公知の構造や方法を適宜選択可能である。取付治具2に、例えばRFID(Radio Frequency Identifier)タグ等の記憶部21が設けられ、物体検出部1に備えられた制御ユニットとデータの通信によって、草刈機3が草刈走行するためのエリア情報や草刈機3の作業履歴情報等が、記憶部21に記憶される。つまり、エリア情報や作業履歴情報が、物体検出部1から記憶部21に記憶可能なように構成されている。
【0029】
物体検出部1が取付治具2に装着された時、物体検出部1は取付治具2の記憶部21にアクセスし、記憶部21にエリア情報や作業履歴情報が有るかどうかを確認する。記憶部21にエリア情報や作業履歴情報が有れば、例えば物体検出部1に備えられた不図示のRAM(Random Access Memory)に、当該エリア情報や当該作業履歴情報が読み込まれる。また、自動草刈走行時のエリア情報及び作業履歴情報が更新されたとき、これらの更新された情報が、物体検出部1のRAMから記憶部21に記憶される。これにより、次回の自動草刈走行時に、物体検出部1が同一のものでなくても、最新のエリア情報及び作業履歴情報が、当該異なる物体検出部1に読み出し可能となる。
【0030】
草刈機3は、物体検出部1から送信される指示信号Tcに基づいて、法面上に予め設定された走行経路としてのライン走行経路Lに沿って、自動的に未刈草GNを刈り取りながら走行するように構成されている。草刈機3に、走行機体31と、第一車輪32Aと、第二車輪32Bと、草刈装置33と、反射部34と、が備えられている。第一車輪32Aは、走行機体31における長手方向の一端側に左右一対で設けられている。第二車輪32Bは、走行機体31における長手方向の他端側に左右一対で設けられている。草刈装置33は、走行機体31の下部における第一車輪32Aと第二車輪32Bとの間に設けられている。草刈機3の上部に、送信機4(
図4参照)や物体検出部1と通信可能なアンテナ35が立設されている。
【0031】
図示はしないが、走行機体31に、エンジンEの動力を、第一車輪32Aと第二車輪32Bに伝達すると共に、草刈装置33に伝達する伝動機構が備えられている。伝動機構は、第一車輪32A及び第二車輪32Bと、草刈装置33と、に対する動力伝達を断続できるように構成されている。エンジンEの動力が、第一車輪32A及び第二車輪32Bと、草刈装置33と、に伝達されることで、機体を走行させながら草刈作業を行うことができる。第一車輪32Aに第一操向モータ32Cが設けられ、第一車輪32Aは第一操向モータ32Cの駆動力により縦軸芯周りで揺動してステアリング操作自在なように構成されている。また、第二車輪32Bに第二操向モータ32Dが設けられ、第二車輪32Bは第二操向モータ32Dの駆動力により縦軸芯周りで揺動してステアリング操作自在なように構成されている。
図4及び
図5に示されているように、第一車輪32A及び第二車輪32Bは夫々、直進用姿勢、右向き揺動姿勢、並びに、左向き揺動姿勢の夫々に向き変更操作可能である。
【0032】
距離センサ11は、例えば、LRF(Laser Range Finder)やLIDAR(Light Detection and Ranging)であって、例えばレーザー光や超音波や電波のような空中伝搬する信号を検出信号TWとして送信する。検出信号TWが検出対象物に照射されると、検出信号TWは検出対象物の表面で反射する。そして、距離センサ11は、検出対象物の表面で反射した検出信号TWを、反射信号RWとして取得する。つまり、距離センサ11は、距離センサ11の検出用範囲に向けて検出信号TWを送信し、かつ、検出信号TWに対する反射信号RWを取得する。そして、距離センサ11は、検出信号TWを送信してから反射信号RWを取得するまでの時間に基づいて、距離センサ11と検出対象物との距離を算出するように構成されている。距離センサ11が検出信号TWを送信し、かつ、反射信号RWを取得する処理を、以下「走査」と称する。
【0033】
図1に示されているように、距離センサ11は、平面視で、数十メートルに亘る半径の範囲で、例えば270度の走査角度で走査可能なように構成されている。このことから、取付治具2が複数設置される場合、距離センサ11の走査範囲に対応して間隔を空けて設置される。
【0034】
反射部34は、距離センサ11によって照射される検出信号TWを反射する被検知体である。反射部34は、検出信号TWが入斜した方向と同じ方向に反射信号RWを反射するように構成されている。つまり、反射部34は、どの角度から距離センサ11の検出信号TWを受けても、距離センサ11に向けて反射信号RWを反射するように構成されている。このため、反射部34は、草刈機3の左右横側面のうち、距離センサ11の位置する側の側面に設けられ、反射部34と距離センサ11とは常に対向する。この構成によって、反射部34は、他の物体よりも強い強度で反射信号RWを距離センサ11に反射するように構成されている。このため、距離センサ11は、予め設定された強度の閾値よりも強い強度の反射信号RWを検知することによって、反射部34を検出するように構成されている。なお、反射部34は、草刈機3の左右横側面の片側のみならず、両側に設けられていても良い。
【0035】
〔制御構成について〕
図6に示されているように、草刈機3の自動草刈走行は、物体検出部1の制御ユニットと、草刈機3の制御ユニットと、の連係処理に基づいて行われる。物体検出部1の制御ユニットに、通信部15と、走行経路設定部16と、制御指示部17と、が備えられている。通信部15は、取付治具2の記憶部21に対してデータのアクセスを行ったり、草刈機3とデータや信号のやり取りを行ったりするための通信機器である。走行経路設定部16は、草刈機3が自動走行を行うための走行経路としてライン走行経路Lを設定する。制御指示部17は、ライン走行経路Lに沿って草刈機3が走行するように指示信号Tcを出力し、指示信号Tcは通信部15を介して草刈機3に送信される。
【0036】
通信部15に、遠距離通信部15aと近距離通信部15bとが備えられている。遠距離通信部15aは、例えば百メートル程度の範囲で通信可能な通信機器である。また、遠距離通信部15aは、草刈機3に上述した指示信号Tcを送信したり、草刈機3から機体の状態や草刈の進捗状況等を受信したりすることができる。近距離通信部15bは、例えば数十センチメートル程度の範囲で通信可能な通信機器である。物体検出部1が取付治具2に取り付けられた状態で、近距離通信部15bは、記憶部21からエリア情報や作業履歴情報のデータを読み込んだり、記憶部21に対してエリア情報や作業履歴情報の更新データ等を書き込んだりすることができる。
【0037】
草刈機3の制御ユニットに、通信部36と、走行制御部37と、が備えられている。通信部36は、物体検出部1の通信部15とデータや信号のやり取りを行うための通信機器である。また、通信部36は、送信機4とデータや信号のやり取りが可能である。走行制御部37は、物体検出部1の制御指示部17が出力する指示信号Tcに基づいて草刈機3の自動草刈走行を行う。また、走行制御部37は、自動走行モードと手動走行モードとに切替可能なように構成され、自動走行モードでは当該自動草刈走行が行われる。手動走行モードの場合、走行制御部37は、送信機4の人為操作に基づく指示信号が、通信部36を介して走行制御部37に出力され、走行制御部37は、当該指示信号に基づく制御を行う。
【0038】
草刈機3に傾斜センサ38が備えられ、傾斜センサ38で検出される傾斜角度Iが通信部36を介して物体検出部1に送信される。傾斜センサ38は、例えば慣性センサの一例であるIMU(Inertial Measurement Unit)であるが、振り子式やフロート式の傾斜角検出器であったり、ジャイロセンサであったり、加速度センサであったりしても良い。
【0039】
送信機4は、操作者が持ち運びしながら草刈機3を人為操作可能なように構成されている。送信機4は、例えば操作者が手元で操作するプロポーショナル方式のコントローラによる操作であったり、タッチパネル方式の表示画面を有する携帯端末機器による操作であったりしても良い。
【0040】
物体検出部1に備えられた距離センサ11に、信号出力部11aと、信号入力部11bと、デコード部11cと、が備えられている。信号出力部11aは検出信号TWを出力し、検出信号TWが、草刈機3の反射部34で反射信号RWとして反射して、反射信号RWが信号入力部11bで受信される。距離センサ11の走査によって測距データが得られ、デコード部11cは、測距データと走査角度とに基づいて、測距データを草刈機3の位置する座標を示す位置情報Nに変換する。なお、位置情報Nは、二次元の座標であっても良いし、三次元の座標であっても良い。デコード部11cによって変換された位置情報Nは制御指示部17に出力される。制御指示部17は、ライン走行経路Lと、位置情報Nに基づく走行軌跡と、の誤差を減少させるように指示信号Tcを出力する。
【0041】
回転制御機構12を制御する制御モジュールとして、傾斜補正制御部18が物体検出部1に備えられている。後述するが、傾斜補正制御部18は、草刈機3の傾斜角度Iに基づいて補正量αを算出し、回転制御機構12は、補正量αに基づいて回動することで、物体検出部1を傾斜させる。これにより、距離センサ11も連動して傾斜して、法面を走行する草刈機3を好適に追従可能となる。
【0042】
〔走行経路〕
草刈機3が自動草刈走行を行うためのライン走行経路Lは、走行経路設定部16によって予め設定される。
図7に示されているように、法面上で自動走行を行うための走行経路として、直線状のライン走行経路Lが複数設定されている。本実施形態では、法面の上端部に取付治具2が固定された状態で設定され、取付治具2に対して物体検出部1が着脱自在な状態で取り付けられる。この状態で、物体検出部1は、法面の上端部から左右方向に亘って走査が可能なように構成されている。本実施形態では、夫々のライン走行経路Lは、走行経路設定部16によって、以下の手順で生成される。
【0043】
まず、法面の上端縁部に沿って、手動走行モードでティーチング走行が行われる。ティーチング走行は、送信機4を操作者が操作することによる人為操作に基づいて行われる。本実施形態では、始点位置Tsに草刈機3が位置する状態で、操作者が送信機4で始点設定操作を行う。そして、操作者が始点位置Tsから終点位置Tfまで直線形状に沿って草刈機3を走行させ、始点位置Tsに草刈機3が位置する状態で、操作者が送信機4で終点設定操作を行う。これにより、ティーチング処理が実行される。つまり、始点位置Tsにおいて距離センサ11の走査によって取得された位置情報Nと、終点位置Tfにおいて距離センサ11の走査によって取得された位置情報Nと、から始点位置Tsと終点位置Tfとを結ぶティーチング走行軌跡Tが設定される。
【0044】
ティーチング走行中の草刈機3の位置情報Nは、距離センサ11の走査によって、物体検出部1に逐次取得される。このとき、位置情報Nが、物体検出部1のRAM(不図示)に記憶される構成であっても良い。この構成であれば、ティーチング走行の始点位置Tsとティーチング走行の終点位置Tfとに亘る位置情報Nの集合から、草刈機3のティーチング走行軌跡Tが得られる。この構成は、ティーチング走行の走行軌跡が曲線状である場合に、特に有用である。
【0045】
ライン走行経路Lは、ティーチング走行軌跡Tと平行な走行経路として、法面の下手側に向かって等間隔で複数生成される。本実施形態では、法面のティーチング走行軌跡Tよりも下手側に、ティーチング走行軌跡Tに沿うライン走行経路L(1)〜L(10)が、等間隔で生成されている。なお、草刈機3による草刈り作業幅を考慮し、刈残しが生じないように作業幅が少し重なる状態で、夫々のライン走行経路Lは設定される。
【0046】
夫々のライン走行経路L(1)〜L(10)に、始点位置Lsと終点位置Lfとが割り当てられ、始点位置Lsから終点位置Lfに向かう方向が、草刈機3の進行方向となるように、夫々のライン走行経路L(1)〜L(10)は構成されている。また、草刈機3が夫々のライン走行経路L(1)〜L(10)を順番に走行するための順路が設定され、本実施形態では、法面の上手側から下手側に折り返しながら、草刈機3が直線往復走行を繰り返す順路が設定されている。つまり、ライン走行経路L(1)〜L(9)の何れか一つのライン走行経路L(n)における終点位置Lfの法面下手側に、次の順路が割り当てられたライン走行経路L(n+1)の始点位置Lsが隣り合って位置するように、ライン走行経路Lが設定されている。
【0047】
草刈機3は、ライン走行経路Lに沿って草刈りしながら自動走行する。例えば、草刈機3が、一つのライン走行経路L(1)の終点位置Lfに到達すると、草刈機3は、次の順路が割り当てられたライン走行経路L(2)の始点位置Lsに移動する。このとき、例えば、草刈機3の第一車輪32A及び第二車輪32Bが正転と逆転とを繰り返すように、スイッチバック走行が行われると好適である。当該スイッチバック走行であれば、草刈機3の向きが変わらず、反射部34と距離センサ11とが常に対向するため、物体検出部1が草刈機3の反射部34を好適に追従できる。
【0048】
終点位置Lfから次の始点位置Lsへの移動は、自動走行モードによって行われても良いし、手動走行モードによって行われても良い。手動走行モードの場合、草刈機3が次の始点位置Lsに移動した後、手動走行モードから自動走行モードへの切換は、人為操作によって行われても良いし、自動的に行われても良い。
【0049】
草刈機3がライン走行経路L(2)の始点位置Lsに到達し、草刈機3の進行方位がライン走行経路L(2)の進行方向に沿うと、草刈機3は、ライン走行経路L(2)に沿って草刈自動走行する。更に、ライン走行経路L(3),L(4),L(5),L(6),L(7),L(8),L(9),L(10)の順番で、草刈機3の草刈自動走行が行われる。
【0050】
夫々のライン走行経路L(1)〜L(10)が、法面の上手側から下手側に順番に設定される構成である。このため、物体検出部1と草刈機3との間は、常に刈取後の地面となり、距離センサ11は、未刈草GN(
図1参照)に邪魔されることなく草刈機3の反射部34を好適に追従できる。
【0051】
ティーチング走行軌跡Tと夫々のライン走行経路Lとは、記憶部21に作業履歴情報として記憶される。このため、走行経路設定部16は、記憶部21の作業履歴情報に基づいてティーチング走行軌跡Tと夫々のライン走行経路Lとを再現可能なように構成されており、次回の自動草刈走行時にティーチング走行が行われずに自動草刈走行が可能となる。これにより、次回の自動草刈走行時に使用する物体検出部1が同一のものでなくても、ティーチング走行軌跡T及びライン走行経路Lを再現できる。また、制御指示部17は、記憶部21に記憶された過去の作業履歴情報から、草刈機3の傾斜角度Iの変動等を事前に予測可能なように構成されている。例えば、過去に草刈機3が大きく傾斜した個所で、制御指示部17は減速指示を出力する。これにより、過去の自動草刈走行よりも安定した自動草刈走行が可能となる。
【0052】
〔傾斜補正制御〕
本実施形態では、草刈機3は法面の上手側から下手側に順番に自動草刈走行を行うように構成されている。距離センサ11は、法面の上端から左右方向に亘って広範囲に走査する構成であるため、上下方向の走査範囲を大きくすると、距離センサ11による反射部34の検出に時間が掛かり、制御指示部17による指示信号Tcの出力がリアルタイム性を損なう虞がある。この不都合を回避するため、上下方向の走査範囲は、例えば10度程度の狭い走査角度になりがちとなる。このため、草刈機3が、距離センサ11の走査範囲よりも上方又は下方に移動すると、距離センサ11が草刈機3の反射部34を追従できなくなる虞がある。このことから、
図8に示されているように、本実施形態では、法面の傾斜角度Iに対応して距離センサ11を傾斜させるように構成されている。これにより、距離センサ11と反射部34とが好適に対向する。
【0053】
距離センサ11は、傾斜補正制御部18によって傾斜するように構成されている。なお、物体検出部1が全体的に傾斜することによって距離センサ11が傾斜する構成であっても良いし、物体検出部1のうち、距離センサ11のみが傾斜する構成であっても良い。傾斜補正制御部18による距離センサ11の傾斜は、以下の手順で行われる。
【0054】
上述したティーチング走行において、草刈機3に設けられた傾斜センサ38によって、ティーチング走行時における草刈機3の傾斜角度Iが経時的に検出され、草刈機3の通信部36と、物体検出部1の通信部15と、を介して傾斜補正制御部18に送信される。ティーチング走行時における傾斜角度Iの平均値(又は中央値)が法面の基準傾斜角度として用いられ、傾斜補正制御部18は、傾斜角度Iに基づいて補正量αを算出し、回転制御機構12に補正量αを出力する。回転制御機構12は、補正量αに基づいて回動し、距離センサ11は法面の傾斜面と平行に傾斜する。つまり、傾斜補正制御部18は、傾斜センサ38が検出した傾斜角度Iと一致するように、物体検出部1の角度調整を行う。これにより、距離センサ11は、法面の傾斜に対応して、法面の全体的な範囲に亘って走査可能となる。
【0055】
このとき、例えば取付治具2が既に傾いている場合には、物体検出部1も当然に傾くことから、傾斜補正制御部18による補正量αの算出に、物体検出部1の傾きが考慮される。取付治具2の正確な傾き角度が記憶部21に記憶されている場合、傾斜補正制御部18は、記憶部21から読み出された当該傾き角度を考慮して、補正量αを算出する構成であっても良い。また、物体検出部1にIMUが備えられている場合、傾斜補正制御部18は、物体検出部1のIMUによって検出された傾き角度を考慮して補正量αを算出する構成であっても良い。なお、傾斜補正制御部18は、自動草刈走行の開始後においても、必要に応じて傾斜角度Iに基づいて補正量αを算出するように構成されている。
【0056】
自動草刈走行が開始された後、物体検出部1は、草刈機3がライン走行経路Lに沿って自動草刈走行を行うように指示信号Tcを出力し、距離センサ11の走査によって草刈機3の反射部34を追従する。しかし、法面の角度が一様でなく、法面上に凹凸が存在する場合も考えられ、この場合に草刈機3が急激に傾くことによって、物体検出部1が草刈機3を見失う虞がある。このため、草刈機3が急激に傾く場合であっても、物体検出部1が草刈機3をしっかりと追従可能なようにするために、反射部34は下記のように構成されている。
【0057】
図9に示されているように、反射部34に複数の反射シート39が備えられ、反射部34の上端側から順に、横棒状の反射シート39a,39b,39c,39d,39eが、上下に並ぶ状態で備えられている。夫々の反射シート39は、検出信号TWが入斜した方向と同じ方向に反射信号RWを反射するように構成されている。夫々の反射シート39は、草刈機3の前後方向を長手方向として、夫々の反射シート39の長手方向の長さが異なるように構成されている。本実施形態では、反射シート39の長手方向の長さは、下側に位置する反射シート39ほど、長くなるように構成されている。最も上側に位置する反射シート39aの長手方向の長さが、反射シート39の中で最も短く、最も下側に位置する反射シート39eの長手方向の長さが、反射シート39の中で最も長い。
【0058】
図10に示されているように、距離センサ11は、走査角度をΔθずつ変化させながら走査することによって、反射シート39から複数の反射信号RWを取得する。当該複数の反射信号RWと走査角度とに基づいて三角関数等で反射シート39の長手方向の長さの近似値が算出可能である。このため、夫々の反射シート39a,39b,39c,39d,39eにおける長手方向の長さの違いは、デコード部11cによって算出可能なように構成されている。つまり、傾斜補正制御部18は、夫々の反射シート39a,39b,39c,39d,39eを識別可能なように構成されている。
【0059】
複数の反射シート39のうち、最も上側に位置する反射シート39aの長さと、最も下側に位置する反射シート39eの長さと、が最も大きく異なる。このため、傾斜補正制御部18は、反射部34の上側寄り又は下側寄りの何れを追従しているかを判定し易くなり、誤判定の虞を軽減できる。
【0060】
傾斜補正制御部18は、デコード部11cによって算出された反射シート39の長さから、夫々の反射シート39a,39b,39c,39d,39eのうち、どの反射シート39であるかを識別する。本実施形態では、反射シート39cが上下方向の中央に位置するため、反射シート39cの位置する箇所が、上下方向の目標位置となる。反射シート39a又は反射シート39bが識別される場合、距離センサ11の上下方向における走査範囲が草刈機3の上方寄りであることが、傾斜補正制御部18によって判定される。このとき、傾斜補正制御部18は、距離センサ11が、より下向きに傾斜するように回転制御機構12に対して補正量αを出力する。反射シート39d又は反射シート39eが識別される場合、距離センサ11の上下方向における走査範囲が草刈機3の下方寄りであることが、傾斜補正制御部18によって判定される。このとき、傾斜補正制御部18は、距離センサ11が、より上向きに傾斜するように回転制御機構12に対して補正量αを出力する。
【0061】
このように、傾斜補正制御部18は、夫々の反射シート39a,39b,39c,39d,39eにおける長手方向の長さの違いを識別し、上下方向における走査の中心位置が反射シート39cとなるように、補正量αを算出する。これにより、距離センサ11が反射部34の上下方向中心を常に走査可能となり、草刈機3が急激に傾く場合であっても、物体検出部1が草刈機3を好適に追従できる。
【0062】
また、傾斜補正制御部18は、記憶部21に記憶された過去の作業履歴情報から、草刈機3の傾斜角度Iの変動等を事前に予測可能なように構成されている。例えば、傾斜補正制御部18は、過去に反射部34が上下に大きく揺れた箇所で、補正量αをバイアス加算又はバイアス減算する。これにより、物体検出部1が、過去の自動草刈走行よりも好適に反射部34を追従できる。
【0063】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0064】
〔1〕上述した実施形態において、反射部34は、草刈機3の側面に一つ設けられているが、反射部34は、草刈機3の側面に二つ以上設けられる構成であっても良い。例えば、草刈機3の側面の前後端に反射部34が夫々設けられる構成であっても良い。この構成であれば、前後夫々の反射部34の位置座標に基づいて機体の進行方向や旋回方向の特定が可能になる。
【0065】
〔2〕上述した実施形態において、反射部34は、草刈機3の側面に設けられているが、反射部34の前面又は後面に設けられる構成であっても良い。また、反射部34が、前面及び後面と左右両側面とに設けられる構成であっても良い。この構成であれば、草刈機3が何れの方向を向いていても、物体検出部1は草刈機3の反射部34を追従可能になる。
【0066】
〔3〕上述した実施形態において、草刈機3は法面を自動草刈走行するように構成されているが、例えば、草刈機3は法面の下方の平坦状の地面を自動草刈走行する構成であっても良い。
【0067】
〔4〕上述した実施形態において、記憶部21は取付治具2に備えられ、物体検出部1が取付治具2に固定された状態で、物体検出部1は、記憶部21からエリア情報及び作業履歴情報を読み出し可能であるが、上述した実施形態に限定されない。例えば、記憶部21は不図示の管理コンピュータに備えられ、物体検出部1が、WAN等を介してエリア情報及び作業履歴情報を読み出し可能な構成であっても良い。この構成によって、エリア情報の一元管理が容易になる。また、記憶部21は、RFIDタグに限定されず、半導体式記憶装置であったり、磁気式記憶装置であったり、光学式記憶装置であったりしても良い。
【0068】
〔5〕上述した実施形態では、夫々の反射シート39は、機体下側に位置するほど長手方向の長さが長い構成であるが、上述した実施形態に限定されず、例えば、夫々の反射シート39は、機体上側に位置するほど長手方向の長さが長い構成であっても良い。
【0069】
〔6〕上述した実施形態では、夫々のライン走行経路Lは、直線状のティーチング走行軌跡Tに基づいて設定されているが、曲線状のティーチング走行軌跡Tに基づいて設定されても良い。例えば
図11に示されているように、曲線状のティーチング走行軌跡Tに基づいて、ティーチング走行軌跡Tと平行な曲線状のライン走行経路Lが、等間隔に夫々設定される構成であっても良い。
【0070】
〔7〕上述した実施形態では、反射部34は、横長の反射シート39が複数備えられているが、上述した実施形態に限定されない。例えば、
図12に示されているように、反射部34が、草刈機3における物体検出部1の位置する側の側面から突出する状態で、円錐状に形成される構成であっても良い。円錐状の反射部34は、機体水平方向の断面直径が上下方向で異なり、機体下側に位置するほど当該断面直径が大きい。このことから、距離センサ11が機体水平方向に沿って走査したとき、円錐状の反射部34のうち、走査した個所における当該断面直径が検出される構成であって良い。
【0071】
〔8〕上述の実施形態では、草刈機3が草刈りを行いながら自動走行するものとして説明したが、草刈機3に限定されず、芝刈機やモアであっても良い。