【文献】
Journal of Biological Chemistry,2006年,vol. 281, no. 37,p. 26914-26921
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)前記DNAリーダー配列が、前記RNAポリヌクレオチドと前記DNAリーダー配列のそれぞれの少なくとも1つの反応性基の間に形成される共有結合によって前記RNAポリヌクレオチドに結合され、(ii)前記DNAリーダー配列が、化学的または酵素的ライゲーションによって前記RNAポリヌクレオチドにライゲーションされ、または、(iii)前記DNAリーダー配列が、前記RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズされる、請求項1または2に記載の方法。
前記1つ以上の特徴が、(i)前記RNAポリヌクレオチドの長さ、(ii)前記RNAポリヌクレオチドの素性、(iii)前記RNAポリヌクレオチドの配列、(iv)前記RNAポリヌクレオチドの二次構造、および(v)前記RNAポリヌクレオチドが修飾されているかどうか、場合により、メチル化による、酸化による、損傷による修飾、1つ以上のタンパク質もしくは類似塩基を用いた標識、または1つ以上の標識、タグもしくはスペーサーを用いた修飾がされているかどうかから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
ステップc)が、前記RNAポリヌクレオチドが膜貫通細孔に対して移動する間に膜貫通細孔を通過する電流を測定するステップであって、前記電流は、前記RNAポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示し、それによって前記RNAポリヌクレオチドを特徴付けるステップを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記DNAヘリカーゼが、ポリヌクレオチド結合ドメインの開口部のサイズを減少させるための修飾を含み、前記開口部を通って、少なくとも1つの立体配座状態で、RNAポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離することができる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記1つ以上のヘリカーゼが、a)Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、XPDヘリカーゼまたはDdaヘリカーゼ;(b)(a)のヘリカーゼのいずれかに由来するヘリカーゼ;または(c)(a)および/または(b)のヘリカーゼのいずれかの組み合わせである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
ヘリカーゼに由来し、前記ポリヌクレオチドに結合するが、ヘリカーゼとして機能しないように修飾されている1つ以上の分子ブレーキをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記膜貫通細孔が、タンパク質細孔であって、場合により溶血素、ロイコシジン、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)ポリンA(MspA)、MspB、MspC、MspD、CsgG、リセニン、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、ナイセリア(Neisseria)自己輸送体リポタンパク質(NalP)およびWZA由来である、または前記膜貫通細孔が固体状態細孔である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
配列表の説明
配列番号1は、MS−B1変異体MspAモノマーをコードするコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を示す。この変異体はシグナル配列を欠損し、以下の変異を含む:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139K。
【0026】
配列番号2は、MspAモノマーのMS−B1変異体の成熟形態のアミノ酸配列を示す。この変異体はシグナル配列を欠損し、以下の変異を含む:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139K。
【0027】
配列番号3は、α−溶血素−E111N/K147N(α-HL-NN; Stoddart et al., PNAS, 2009; 106(19): 7702-7707)の1つのモノマーをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0028】
配列番号4は、α−HL−NNの1つのモノマーのアミノ酸配列を示す。
【0029】
配列番号5〜7は、MspB、CおよびDのアミノ酸配列を示す。
【0030】
配列番号8は、Hel308 Mbuのアミノ酸配列を示す。
【0031】
配列番号9は、Hel308 Csyのアミノ酸配列を示す。
【0032】
配列番号10は、Hel308 Tgaのアミノ酸配列を示す。
【0033】
配列番号11は、Hel308 Mhuのアミノ酸配列を示す。
【0034】
配列番号12は、TraI Ecoのアミノ酸配列を示す。
【0035】
配列番号13は、XPD Mbuのアミノ酸配列を示す。
【0036】
配列番号14は、Dda 1993のアミノ酸配列を示す。
【0037】
配列番号15は、Trwc Cbaのアミノ酸配列を示す。
【0038】
配列番号16は、実施例1において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0039】
配列番号17は、実施例1において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0040】
配列番号18は、実施例1および3において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0041】
配列番号19は、実施例2において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、5’リン酸基を有する。
【0042】
配列番号20は、実施例2において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0043】
配列番号21は、実施例2において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、5’CY3基を有する。
【0044】
配列番号22は、実施例3において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0045】
配列番号23は、実施例3において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、3’アジドN基を有する。
【0046】
配列番号24は、実施例3において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0047】
配列番号25は、実施例3において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、3’アジドN基および5’CY3基を有する。
【0048】
配列番号26は、実施例3および5において使用されるポリヌクレオチド配列のオープンリーディングフレームを示す。この配列は、配列中の最初のGに結合した5’−ヘキシニル基を有する。
【0049】
配列番号27は、実施例4および5において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0050】
配列番号28は、実施例4において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0051】
配列番号29は、実施例4および5において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0052】
配列番号30は、実施例4および6において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0053】
配列番号31は、実施例6において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0054】
配列番号32は、実施例6において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0055】
配列番号33は、ホモポリマー読み取りを説明するために使用される配列を示す。
【0056】
配列番号34は、ホモポリマー読み取りを説明するために使用される配列を示す。
【0057】
配列番号35は、実施例8において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0058】
配列番号36は、実施例8において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0059】
配列番号37は、実施例8において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0060】
配列番号38は、実施例8において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0061】
配列番号39は、実施例8において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0062】
配列番号40は、実施例8において使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0063】
配列番号41は、リセニンモノマーをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0064】
配列番号42は、リセニンモノマーのアミノ酸配列を示す。
【0065】
配列番号43は、大腸菌(Escherchia coli)Str.K−12 substr.MC4100由来の野生型CsgGモノマーをコードするコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を示す。このモノマーは、シグナル配列を欠損している。
【0066】
配列番号44は、大腸菌(Escherchia coli)Str.K−12 substr.MC4100由来の野生型CsgGモノマーの成熟形態のアミノ酸配列を示す。このモノマーは、シグナル配列を欠損している。CsgGについて使用される略称=CsgG−Eco。
【0067】
配列番号45は、ステップII(C)のアミノ酸配列を示す。
【0068】
配列番号46〜64は、明細書に記載されているポリヌクレオチド配列である。
【0069】
配列番号65および66は、実施例において使用されるポリヌクレオチド配列である。
【0070】
発明の詳細な説明
開示された生成物および方法の様々な用途は、当該技術分野における特定のニーズに合わせて調整され得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0071】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、その内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの(a)ポリヌクレオチド」とは2つ以上のポリヌクレオチドを含むことを意味し、「1つの(a)ポリヌクレオチド結合タンパク質」とは2つ以上のこのようなタンパク質を含むことを意味し、「1つの(a)ヘリカーゼ」とは2つの以上のヘリカーゼを含むことを意味し、「1つの(a)モノマー」とは2つ以上のモノマーを意味し、「1つの(a)細孔」とは2つ以上の細孔を含むことを意味するなどである。
【0072】
本明細書に引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、上記または下記のいずれであっても、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
標的RNAポリヌクレオチドの特徴付け
本発明の方法は、標的RNAポリヌクレオチドを特徴付けることを伴う。RNAポリヌクレオチドは膜貫通細孔に送達され、細孔はRNAポリヌクレオチドを特徴付けるために使用される。本発明は、標的リボ核酸(RNA)ポリヌクレオチドが、DNAヘリカーゼ酵素の制御下で膜貫通細孔に対して移動する間に、1つ以上の測定値を得ることによって、標的RNAポリヌクレオチドを特徴付ける方法を提供する。
【0074】
膜貫通細孔は標的ポリヌクレオチドの単一分子を検出することができるため、標的RNAポリヌクレオチドを増幅する必要はない。この方法は、典型的には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写PCR(RT−PCR)を含まない。これは、標的RNAポリヌクレオチドを特徴付けるために必要なワークフローの量を顕著に減少させる。また、PCRによって導入されるいずれものバイアスおよびアーチファクトを回避する。
【0075】
本発明の方法は、RNAポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を決定または測定することに関する場合がある。この方法は、RNAポリヌクレオチドの1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ以上またはそれらを超える特徴を決定または測定することを伴う場合がある。1つ以上の特徴は、好ましくは、(i)RNAポリヌクレオチドの長さまたはサイズ、(ii)RNAポリヌクレオチドの素性、(iii)RNAポリヌクレオチドの配列、(iv)RNAポリヌクレオチドの二次構造、および(v)RNAポリヌクレオチドが修飾されているか否かから選択される。(i)〜(v)の任意の組み合わせは、本発明にしたがって測定され得、例えば、{i}、{ii}、{iii}、{iv}、{v}、{i、ii}、{i、iii}、{i、iv}、{i、v}、{ii、iii}、{ii、iv}、{ii、v}、{iii、iv}、{iii、v}、{iv、v}、{i、ii、iii}、{i、ii、iv}、{i、ii、v}、{i、iii、iv}、{i、iii、v}、{i、iv、v}、{ii、iii、iv}、{ii、iii、v}、{ii、iv、v}、{iii、iv、v}、{i、ii、iii、iv}、{i、ii、iii、v}、{i、ii、iv、v}、{i、iii、iv、v}、{ii、iii、iv、v}または{i、ii、iii、iv、v}が挙げられる。(i)〜(v)の様々な組み合わせが測定され得、上記で列挙された組み合わせのいずれも含む。本発明の方法は、好ましくは、RNAポリヌクレオチドの配列を推定し、または配列決定することを含む。
【0076】
(i)に関して、RNAポリヌクレオチドの長さは、例えば、RNAポリヌクレオチドと細孔の間の相互作用の数、またはRNAポリヌクレオチドと細孔の間の相互作用の持続時間を決定することによって測定されてもよい。
【0077】
(ii)に関して、RNAポリヌクレオチドの素性は、多数の方法で測定することができる。RNAポリヌクレオチドの素性は、RNAポリヌクレオチドの配列の測定と組み合わせて、またはRNAポリヌクレオチドの配列を測定することなしに測定することができる。前者は容易である;RNAポリヌクレオチドを配列決定し、それにより同定する。後者は、いくつかの方法で行うことができる。例えば、RNAポリヌクレオチド中の特定のモチーフの存在は、(RNAポリヌクレオチドの残りの配列を測定することなしに)測定することができる。あるいは、この方法における特定の電気的シグナルおよび/または光学的シグナルの測定は、RNAポリヌクレオチドを特定の供給源に由来するもののとして同定することができる。
【0078】
(iii)に関して、RNAポリヌクレオチドの配列は、先に記載したように決定することができる。適切な配列決定方法、特に電気的測定を用いる配列決定方法は、Stoddart D et al., Proc Natl Acad Sci, 12;106(19):7702-7, Lieberman KR et al, J Am Chem Soc. 2010;132(50):17961-72および国際出願第2000/28312号パンフレットに記載されている。
【0079】
(iv)に関して、二次構造を様々な方法で測定することができる。例えば、この方法は電気的測定を伴う場合、滞留時間の変化または細孔を通じて流れる電流の変化を用いて二次構造を測定することができる。これにより、一本鎖および二本鎖のRNAポリヌクレオチドの領域を区別することが可能になる。
【0080】
(v)に関して、いずれかの修飾の有無を測定することができる。この方法は、好ましくは、ポリヌクレオチドが、メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つ以上のタンパク質または1つ以上の標識、タグまたはスペーサーを用いて修飾されるかどうかを決定することを含む。特定の修飾は、以下に記載される方法を用いて測定することができる細孔との特異的な相互作用をもたらす。例えば、メチルシトシンは、各々のリボヌクレオチドとの相互作用中に細孔を通じて流れる電流に基づいてシトシンと区別することができる。本発明の方法は、単一の試料でさえ、RNAとDNAを区別するために用いることができる:RNAおよびDNAは、RNAおよびDNA配列が同一である場合でさえも平均振幅および範囲の関数として互いに区別することができる。
【0081】
本方法は、細孔が膜内に存在する膜/細孔系の調査に適している任意の装置を使用して行ってもよい。本方法は、膜貫通細孔検知に適している任意の装置を使用して行ってもよい。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバー、およびチャンバーを2つのセクションに分ける遮断壁を備えている。遮断壁は、典型的には、細孔を含有する膜を形成する開口部を有する。あるいは、遮断壁は、細孔が存在する膜を形成する。
【0082】
本方法は、国際出願第PCT/GB08/000562号(国際公開第2008/102120号パンフレット)に記載されている装置を使用して行ってもよい。
【0083】
本方法は、RNAポリヌクレオチドが細孔に対して移動するとき、細孔を通過する電流を測定するステップを伴うことができる。したがって、装置はまた、電位を印加することができ、膜および細孔を横切る電気シグナルを測定することができる電気回路も含んでもよい。本方法をパッチクランプまたは電圧クランプを用いて行ってもよい。本方法は、好ましくは、電圧クランプの使用を伴う。
【0084】
本発明の方法は、RNAポリヌクレオチドが細孔に対して移動するとき、細孔を通過する電流を測定するステップを伴うことができる。ポリヌクレオチドが細孔に対して移動するときに細孔を通過する電流は、標的RNAポリヌクレオチドの配列を決定するために使用される。これは鎖配列決定である。膜貫通タンパク質細孔を通るイオン電流の測定に適した条件は、当該技術分野において公知であり、実施例において開示される。本方法は、典型的には、電圧を膜および細孔を横切って印加して行われる。使用される電圧は、典型的には、+5V〜−5V、例えば、+4V〜−4V、+3V〜−3V、または+2V〜−2Vである。使用される電圧は、典型的には、−600mV〜+600mVまたは−400mV〜+400mVである。使用される電圧は、好ましくは、−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限と+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mVおよび+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲である。使用される電圧は、より好ましくは、100mV〜240mVの範囲、最も好ましくは120mV〜220mVの範囲である。増加した印加電位を使用することによって、細孔による異なるヌクレオチド間の区別を増すことが可能である。
【0085】
本方法は、典型的には、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えば塩化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの、任意の電荷担体の存在下で行われる。電荷担体としては、イオン性液体または有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウムまたは塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを挙げることができる。上記で検討した例示的な装置において、塩は、チャンバー内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)、またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムの混合物が、典型的には使用される。KCl、NaCl、およびフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムの混合物が好ましい。電荷担体は、膜を横切って非対称であってもよい。例えば、電荷担体のタイプおよび/または濃度は、膜の各側で異なってもよい。
【0086】
塩濃度は、飽和時のものであり得る。塩濃度は、3M以下であり得るが、典型的には、0.1〜2.5M、0.3〜1.9M、0.5〜1.8M、0.7〜1.7M、0.9〜1.6M、または1M〜1.4Mである。塩濃度は、好ましくは、150mM〜1Mである。本方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、または少なくとも3.0Mの塩濃度を用いて行われる。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比をもたらし、リボヌクレオチドの存在を示す電流を、正常電流変動のバックグラウンドに対して同定することを可能にする。
【0087】
本方法は、典型的には、緩衝液の存在下で行われる。上記で検討した例示的な装置において、緩衝液は、チャンバー内の水溶液中に存在する。任意の緩衝液を本発明の方法において使用することができる。典型的には、緩衝液はリン酸緩衝液である。他の適切な緩衝液は、HEPESおよびTris−HCl緩衝液である。本方法は、4.0〜12.0、4.5〜10.0、5.0〜9.0、5.5〜8.8、6.0〜8.7、または7.0〜8.8、または7.5〜8.5のpHで行われる。使用されるpHは、好ましくは約7.5である。
【0088】
本方法は、0℃〜100℃、15℃〜95℃、16℃〜90℃、17℃〜85℃、18℃〜80℃、19℃〜70℃、または20℃〜60℃で行われてもよい。本方法は、典型的には室温で行われる。本方法は、場合により、酵素機能を支援する温度、例えば、約37℃で行われる。
【0089】
本方法は、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体および/またはヘリカーゼもしくは構築物の作用を助長する酵素補因子の存在下で行われてもよい。本方法はまた、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体の不存在下で、および酵素補因子の不存在下で実施され得る。遊離ヌクレオチドは、上記で検討した個々のヌクレオチドのいずれか1つ以上であってもよい。遊離ヌクレオチドには、限定されないが、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)が含まれる。遊離ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、好ましくはアデノシン三リン酸(ATP)である。酵素補因子は、ヘリカーゼまたは構築物を機能させる因子である。酵素補因子は、好ましくは二価金属カチオンである。二価金属カチオンは、好ましくは、Mg
2+、Mn
2+、Ca
2+またはCo
2+である。酵素補因子は、最も好ましくはMg
2+である。
【0090】
標的RNA
RNAは、2つ以上のリボヌクレオチドを含む巨大分子である。標的RNAポリヌクレオチドは、真核生物または原核生物のRNAであり得る。標的RNAポリヌクレオチドは、任意のリボヌクレオチドの任意の組み合わせを含んでもよい。リボヌクレオチドは、天然に存在していてもよくまたは人工的であってもよい。標的RNAポリヌクレオチド中の1つ以上のリボヌクレオチドは、酸化またはメチル化され得る。標的RNA中の1つ以上のリボヌクレオチドが損傷を受ける場合がある。例えば、標的RNAは、ウラシル二量体などのピリミジン二量体を含んでもよい。このような二量体は通常、紫外光による損傷に付随し、皮膚黒色腫の主要な原因である。標的RNAポリヌクレオチド中の1つ以上のリボヌクレオチドを、例えば標識またはタグにより修飾してもよい。適切な標識は、以下に記述する。標的は、1つ以上のスペーサーを含んでもよい。
【0091】
リボヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、リボース糖および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基は、典型的には複素環式である。核酸塩基としては、限定されないが、プリンおよびピリミジン、より具体的にはアデニン、グアニン、チミン、ウラシルおよびシトシンが挙げられる。ヌクレオチドは、典型的には、モノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェートを含有する。リン酸は、ヌクレオチドの5’側または3’側に結合することができる。
【0092】
リボヌクレオチドとしては、限定されないが、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、シチジン一リン酸(CMP)、5−メチルシチジン一リン酸、5−メチルシチジン二リン酸、5−ヒドロキシメチルシチジン二リン酸、および5−ヒドロキシメチルシチジン三リン酸が挙げられる。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMPおよびUMPから選択される。
【0093】
リボヌクレオチドは無塩基であってもよい(すなわち、核酸塩基を欠損している)。リボヌクレオチドはまた、核酸塩基および糖を欠損していてもよい(すなわち、C3スペーサーである)。
【0094】
標的RNAポリヌクレオチド中のリボヌクレオチドは、任意の様式で互いに結合され得る。リボヌクレオチドは、典型的には、核酸におけるようにそれらの糖およびリン酸基によって結合される。リボヌクレオチドは、ピリミジン二量体の場合のようにそれらの核酸塩基を介して連結され得る。
【0095】
RNAは非常に多様な分子である。標的RNAポリヌクレオチドは、任意の天然に存在するまたは合成リボヌクレオチドであってもよく、例えば、例えば、RNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、異種核RNA(hnRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、トランスファーメッセンジャーRNA(tmRNA)、マイクロRNA(miRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、シグナル認識粒子(SRP RNA)、SmY RNA、低分子カザール体特異的RNA(scaRNA)、ガイドRNA(gRNA)、スプライスされたリーダー(SL RNA)、アンチセンスRNA(asRNA)、ロング非コードRNA(lncRNA)、PiWi相互作用RNA(piRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランス作用性siRNA(tasiRNA)、反復関連siRNA(rasiRNA)、Y RNA、ウイルスRNAまたは染色体RNAが挙げられ、これらの全ては、適切な場合には、一本鎖、二本鎖または三本鎖であり得る。
【0096】
標的RNAポリヌクレオチドは、好ましくはメッセンジャーRNA(mRNA)である。標的mRNAは、代替スプライス改変体であり得る。mRNAおよび/または代替mRNAスプライス改変体の変化した量(またはレベル)は、疾患または状態に関連し得る。
【0097】
あるいは、標的RNAポリヌクレオチドは、マイクロRNA(またはmiRNA)である。低濃度で検出することが困難な一群のRNAは、マイクロリボ核酸(マイクロRNAまたはmiRNA)である。miRNAは、高度に安定したRNAオリゴマーであり、転写後にタンパク質生成を制御することができる。それらは2つのメカニズムのうちの1つによって作用する。植物において、miRNAは、主に、メッセンジャーRNAの切断を指示することによって作用することが示されているが、動物において、miRNAによる遺伝子制御は、典型的には、翻訳を妨げるメッセンジャーRNAの3’UTRへのmiRNAのハイブリダイゼーションを伴う(Lee et al., Cell 75, 843-54 (1993); Wightman et al., Cell 75, 855-62 (1993);およびEsquela-Kerscher et al., Cancer 6, 259-69 (2006))。miRNAは、多くの場合、不完全な相補性でそれらの標的に結合する。それらは、200個程度またはそれを超える遺伝子標的にそれぞれ結合し、全ヒト遺伝子の3分の1を超えて制御すると予測されている(Lewis et al., Cell 120, 15-20 (2005))。
【0098】
本発明における使用に適したmiRNAは、当該技術分野において周知である。例えば、適切なmiRNAは、公的に利用可能なデータベースに保存されている(Jiang Q., Wang Y., Hao Y., Juan L., Teng M., Zhang X., Li M., Wang G., Liu Y., (2009) miR2Disease: a manually curated database for microRNA deregulation in human disease. Nucleic Acids Res.)。特定のマイクロRNAの発現レベルは、腫瘍において変化することが知られ、様々な腫瘍タイプに特徴的なマイクロRNA発現パターンを与える(Rosenfeld, N. et al., Nature Biotechnology 26, 462-9 (2008))。さらに、miRNAプロファイルは、メッセンジャーRNAプロファイルよりも正確に腫瘍発生の段階を明らかにすることができることが示されている(Lu et al., Nature 435, 834-8 (2005) およびBarshack et al., The International Journal of Biochemistry & Cell Biology 42, 1355-62 (2010))。これらの知見は、miRNAの高い安定性、ならびに血清および血漿中の循環miRNAを検出する能力(Wang et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 394, 184-8 (2010); Gilad et al., PloS One 3, e3148 (2008); およびKeller et al., Nature Methods 8, 841-3 (2011))は、癌のバイオマーカーとしてのマイクロRNAの潜在的使用にかなりの関心を集めている。治療が効果的であるためには、癌を正確に分類し、別に治療する必要があるが、多くの異なるタイプの癌が形態学的特徴を共有するという事実によって、分類の手段としての腫瘍形態評価の有効性は損なわれる。miRNAは、潜在的に、より信頼性が高く、侵襲性の低いソリューションを提供する。
【0099】
疾患または状態を診断または予後診断するためのmRNAおよびmiRNAの使用については、以下でより詳細に検討する。
【0100】
任意の数のRNAを調べることができる。例えば、本発明の方法は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、50個、100個またはそれらを超えるRNA分子の存在、非存在または1つ以上の特徴を決定することに関するものであり得る。
【0101】
ポリヌクレオチドは、天然に存在してもよくまたは人工的であってもよい。例えば、この方法は、2つ以上の製造されたオリゴヌクレオチドの配列を確認するために使用することができる。これらの方法は、典型的には、インビトロで行われる。
【0102】
標的RNAポリヌクレオチドは、任意の長さであってもよい。例えば、RNAポリヌクレオチドは、長さが少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも400個、または少なくとも500個のリボヌクレオチドであり得る。標的RNAは、長さが1000個以上のリボヌクレオチド、5000個以上のリボヌクレオチドまたは100000個以上のリボヌクレオチドであってもよい。標的RNAの全体または一部のみは、この方法を用いて特徴付けることができる。配列決定しようとしているRNAの一部は、好ましくは、標的分子の全てを含むが、例えば、分子全体より少なくてもよく、例えば、4塩基から1kbの間、例えば、4から100塩基である。
【0103】
標的RNAポリヌクレオチドは、典型的には、任意の適切な試料中に存在するまたはそれに由来する。本発明は、典型的には、標的RNAポリヌクレオチドを含有することが知られているまたは含有することが疑われる試料において実施される。あるいは、本発明は、試料中に存在することが知られているまたは期待される1つ以上の標的RNAの同定を確認するために試料について実施することができる。
【0104】
試料は生物学的試料であってもよい。本発明は、任意の生物または微生物から得られたまたはそれから抽出された試料について、インビトロで実施することができる。生物または微生物は、典型的には、古細菌、原核生物または真核生物であり、典型的には、5つの界:植物界、動物界、菌界、モネラ界および原生生物界のうちの1つに属する。標的RNAポリヌクレオチドは、真核細胞に由来してもよく、または真核細胞の転写機構を用いてウイルスに由来してもよい。本発明は、任意のウイルスから得られたまたはそれから抽出された試料についてインビトロで実施することができる。
【0105】
試料は、好ましくは流体試料である。試料は、典型的には患者の体液を含む。試料は、尿、リンパ、唾液、粘液または羊水であってよいが、好ましくは血液、血漿または血清である。典型的には、試料は、ヒト由来であるが、ウマ、ウシ、ヒツジもしくはブタなどの商業的に飼育された動物などの別の哺乳動物由来であってもよく、またはネコもしくはイヌなどのペットであってもよい。あるいは、植物起源の試料は、典型的には、穀物、マメ科植物、果物または野菜からなどの商業的作物、例えば、コムギ、オオムギ、オートムギ、キャノーラ、トウモロコシ、ダイズ、イネ、バナナ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、ブドウ、タバコ、豆、レンズ豆、サトウキビ、ココアまたは綿から得られる。
【0106】
試料は、非生物学的試料であってもよい。非生物学的試料は、好ましくは流体試料である。非生物学的試料の例には、手術用液体、飲料水、海水または河川水などの水、および実験室試験用の試薬が含まれる。
【0107】
試料は、典型的には、例えば、遠心分離によって、または望ましくない分子もしくは赤血球など細胞を濾過する膜を通過させることによって、アッセイされる前に処理される。試料は、採取直後に測定することができる。試料はまた、典型的には、アッセイ前に、好ましくは−70℃以下で保存することができる。標的RNAポリヌクレオチドは、典型的には、本発明の方法において使用される前に試料から抽出される。RNA抽出キットは、例えば、New England Biolabs(登録商標)およびInvitrogen(登録商標)から市販されている。
【0108】
標的RNAの修飾
RNAポリヌクレオチドへの修飾は、DNAヘリカーゼの結合を促進するおよび/または修飾されたRNAポリヌクレオチドへのDNAヘリカーゼの結合を増加させる効果を引き起こすもしくはその効果を有する任意の修飾であり得る。本明細書で使用される用語「結合」とは、DNAヘリカーゼおよび基質ポリヌクレオチドが任意の所与の時間に結合される親和性または確率を意味する。生化学的には、この親和性の増加は、「オンレート(on rate)」もしくは結合速度の増加、または「オフレート(off rate)」もしくは解離の減少、または「オンレート」の増加と「オフレート」の減少の両方によって引き起こされ得る。
【0109】
RNAポリヌクレオチドの修飾は、修飾されたRNAに対するDNAヘリカーゼの親和性を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%増加させ得る。最も好ましくは、RNAポリヌクレオチドの修飾は、DNAヘリカーゼの親和性を95%以上増加させる。修飾されたRNAの促進されたDNAヘリカーゼ結合は、DNAヘリカーゼが、修飾されていないまたは非修飾のRNAポリヌクレオチドと比較して、修飾されたRNAポリヌクレオチドにより容易に結合する状況として定義される。修飾されたRNAポリヌクレオチドへのDNAヘリカーゼ結合の増加は、修飾されていないまたは非修飾のRNAポリヌクレオチド、すなわち、本発明の修飾方法に従って修飾されていないRNA、について観察されるDNAヘリカーゼ結合の量またはレベルよりも大きいまたはそれより多いDNAヘリカーゼ結合の量またはレベルとして定義される。標的RNAポリヌクレオチドへのDNAヘリカーゼ結合のレベルは、知られている日常的な方法および当業者に日常的な方法を用いて容易に試験することができる。
【0110】
標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチド、例えば、ポリヌクレオチド領域または配列または構築物を含むように修飾される。非RNAポリヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドはRNAではない。したがって、非RNAポリヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはRNAヌクレオチドを含んでもよいが、非RNAヌクレオチドまたは配列、すなわちRNAではないヌクレオチドまたは配列も含んでいなければならない。標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはRNAヌクレオチドを含んでもよくまたは含まなくてもよい)への標的RNAの付加または結合によって修飾されて、本発明の構築物を形成する。RNAポリヌクレオチドへの非RNAポリヌクレオチドの付加または結合とは、DNAヘリカーゼと修飾されたRNA構築物の間の相互作用が、すなわち、結合された非RNAポリヌクレオチドなしに、DNAヘリカーゼと修飾されていない形態のRNAポリヌクレオチドの間で生じる相互作用と比較して増加することを意味する。さらにまたはあるいは、RNAポリヌクレオチドへの非RNAポリヌクレオチドの付加または結合は、修飾されたRNA構築物に対するDNAヘリカーゼの特異性が、すなわち、結合した非修飾RNAポリヌクレオチドになしに、非修飾形態のRNAポリヌクレオチドに対するDNAヘリカーゼの特異性と比較して増加することを意味する。さらにまたはあるいは、RNAポリヌクレオチドへの非RNAポリヌクレオチドの付加または結合は、修飾されたRNA構築物へのDNAヘリカーゼ結合は促進され、および/または修飾されたRNA構築物へのDNAヘリカーゼは、すなわち、結合した非修飾RNAポリヌクレオチドになしに、DNAヘリカーゼと非修飾形態のRNAポリヌクレオチドの間で生じる結合と比較して増加することを意味する。さらにまたはあるいは、RNAポリヌクレオチドへの非RNAポリヌクレオチドの付加または結合は、DNAヘリカーゼが修飾されたRNA構築物により効率的またはより強く結合し、すなわち、結合した非修飾RNAポリヌクレオチドになしに、DNAヘリカーゼと非修飾形態のRNAポリヌクレオチドの間で生じる結合と比較して、修飾された構築物から解離する可能性がより低いことを意味する。好ましくは、RNAポリヌクレオチドの修飾は、RNAポリヌクレオチドからDNAヘリカーゼの解離を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%減少させる。最も好ましくは、RNAポリヌクレオチドの修飾は、RNAポリヌクレオチドからのDNAヘリカーゼの解離を95%減少させる。
【0111】
非RNAポリヌクレオチド
標的RNAポリヌクレオチド配列は、非RNAポリヌクレオチドを含むように修飾される。標的RNAは、非RNAポリヌクレオチドに結合される。標的RNAは、好ましくは、非RNAポリヌクレオチドに共有結合する。非RNAポリヌクレオチドは、リボヌクレオチドではない、すなわちRNA由来ではない少なくとも1つのヌクレオチドを含まなければならない。非RNAポリヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはRNAをさらに含んでもよいが、少なくとも1つの非RNAヌクレオチド、すなわちRNAではないヌクレオチドも含む(comprise)または含む(include)必要がある。典型的には、RNAを含む非RNAポリヌクレオチドは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個または19個などの20個未満のRNAヌクレオチドを含む。したがって、非RNAポリヌクレオチドは、例えば、RNA、およびDNAまたはDNA類似体などの別のポリヌクレオチドを含む「ハイブリッド」ポリヌクレオチドであってもよい。非RNAはまた、DNAスペーサーなどを含み得る。当業者は、本発明の修飾されたRNA構築物を作製するために適切であると記載された結合方法のいずれも、非RNAポリヌクレオチドの作製に等しく適切であり、ここで、2つ以上のタイプの核酸配列を組み合わせることができることを認識する。
【0112】
好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはリーダー配列を含む。リーダー配列は優先的に細孔内に入り込む。
【0113】
好ましくは、標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAリーダー配列のRNAへの結合によって修飾される。リーダー配列は、本発明の特徴付け方法を促進する。リーダー配列は、優先的に細孔に入り込むように設計され、それにより、細孔を通るポリヌクレオチドの移動を促進する。リーダー配列はまた、以下に検討するように、標的RNAポリヌクレオチドを1つ以上のアンカーに連結するために使用され得る。リーダー配列は、標的RNAポリヌクレオチドに連結されてもよい。
【0114】
リーダー配列は、典型的にはポリマー領域を含む。ポリマー領域は、好ましくは負に帯電している。ポリマーは、好ましくは、DNA、修飾ポリヌクレオチド(無塩基DNAなど)、PNA、LNA、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリペプチドなどのポリヌクレオチドである。リーダー配列は、好ましくは一本鎖ポリヌクレオチドを含む。
【0115】
一本鎖リーダー配列は、DNAの一本鎖、iSpC3、ポリdT部分またはポリdC部分を含んでもよい。リーダー配列は、好ましくは1つ以上のスペーサーを含む。リーダー配列は、好ましくは、以下に定義されるYアダプターの一部である。
【0116】
リーダー配列は、任意の長さであってもよいが、典型的には、長さは10〜200ヌクレオチドである。本発明の一実施形態において、非RNAリーダー配列はiSpC3を含む。最も好ましくは、非RNAリーダー配列は、長さが約40ヌクレオチドであるiSpC3またはCおよびAの反復配列(例えば、4×(9Cおよび1A))である。リーダーの長さは、典型的には、この方法において使用される膜貫通細孔に依存する。
【0117】
好ましくは、非RNAポリヌクレオチドは、DNAヘリカーゼが結合することができる領域(DNAヘリカーゼ結合部位)またはDNAアダプターを含む。標的RNAポリヌクレオチドは、膜貫通細孔を通る標的RNAの移動を制御するDNAヘリカーゼのDNA結合部位を含むように修飾することができる。本明細書で使用されるとき、用語「DNAヘリカーゼ結合部位」は、1つ以上のDNAヘリカーゼがそれに結合することを可能にするのに十分なサイズ/長さのDNAまたはDNA類似体配列を含む。結合部位の長さは、それに結合するべきヘリカーゼの数に依存する。DNAヘリカーゼが結合することができる領域は、好ましくは、DNA、修飾されたポリヌクレオチド(例えば、無塩基DNA)、PNA、LNA、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリヌクレオチドである。好ましくは、DNAヘリカーゼ結合部位は、一本鎖のハイブリダイズされない領域である。領域は、リーダー配列に対応し得る。あるいは、領域は、リーダー配列と区別されてもよい。DNAヘリカーゼは、以下により詳細に検討するように、細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を制御するのを助けることができる。
【0118】
好ましくは、1つ以上のヘリカーゼが移動される反対の末端で、DNA結合部位に隣接してまたは近接して位置し得るブロッキング部位またはブロッキング分子を有する非RNAポリヌクレオチドがさらに提供される。ブロッキング分子は、ヘリカーゼの後方移動を防ぎ、それが構築物から滑り落ちるのを防ぐ。
【0119】
標的RNA配列に結合するための非RNAポリヌクレオチド構築物は、好ましくは以下を含む:部分(i)好ましくは細孔による標的ポリヌクレオチドの捕捉を提供する5つ以上の荷電単位のポリマー;および/または(ii)長さが約20個のヌクレオチドのブロッキング鎖ハイブリダイゼーション部位;および/または(iii)1つ以上の非RNAヌクレオチド、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、30個、40個もしくは50個の非RNAヌクレオチドのDNAヘリカーゼ部位;および/または(iv)参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/135838号パンフレットに記載されているSp18などの1つ以上の単位、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個もしくはそれらを超える単位の失速(stalling)化学;および/または部分(v)長さが約30ヌクレオチドのテザーハイブリダイゼーション部位;および/または部分(vi)RNAポリヌクレオチドへの非RNAポリヌクレオチドのライゲーションを促進する配列。したがって、標的RNA配列への結合のための非RNAポリヌクレオチドの全長は、約50〜200ヌクレオチドを含み得る。
【0120】
例えば、一実施形態において、非RNAポリヌクレオチドは、(i)5つ以上の荷電単位のポリマー;(ii)長さが約20ヌクレオチドのブロッキング鎖ハイブリダイゼーション部位;(iii)1つ以上の非RNAヌクレオチド、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、30個、40個、もしくは50個のヌクレオチドのDNAヘリカーゼ結合部位;(iv)参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/135838号パンフレットに記載されているSp18などの1つ以上の単位、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個もしくはそれらを超える単位の失速化学;(v)長さが約30ヌクレオチドのテザーハイブリダイゼーション部位;および/または(vi)上記のセクションにおいて記載されるように、非RNAポリヌクレオチドのRNAポリヌクレオチドへのライゲーションを促進にする配列、のうちの少なくても1つを含み得る。
【0121】
(i)〜(vi)の各々について、以下により詳細に検討される。
【0122】
部分(i)
非RNAポリヌクレオチドの部分(i)は、好ましくは、正味の負電荷を有するポリマーである。ポリマーは、リーダー配列に関して上記で検討されたもののいずれかであり得る。好ましくは、ポリマーは、核酸塩基を欠損しているまたはヌクレオシドを欠損している。ポリマーは、以下に検討するスペーサーのいずれかであり得る。これらの基準を満たす配列の代表例は、以下の通りである。
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号16)
CCCCCCCCCACCCCCCCCCACCCCCCCCCACCCCCCCCCA(配列番号46)
6666666666666666666666666666666666666666
7777777777777777777777777777777777777777
8888888888888888888888888888888888888888
ここで、6=1,2−デオキシヌクレオチド一リン酸
ここで、7=n−プロピレンリン酸(スペーサー3群)
ここで、8=PEG3リン酸(スペーサー9群)
【0123】
部分(ii)
非RNAポリヌクレオチドの部分(ii)は、ブロッキング鎖のハイブリダイゼーションを可能にする任意のポリヌクレオチド配列であり、PNA、GNA、TNA、BNA、LNAもしくはモルホリノなどのDNAもしくはRNAまたは類似体を含み得る。これらの基準を満たす配列の代表例は、以下の通りである。
ACTCGCAGATCATTACGATC(配列番号47)
rArCrUrCrGrCrArGrArUrCrArUrUrArCrGArUrC(配列番号48)
配列番号47の配列を有するPNA
配列番号47の配列を有するBNA
CGATTGACTAAGCTATACGC(配列番号49)
rCrGrArUrUrGrArCrUrArArGrCrUrArUrArCrGrC(配列番号50)
配列番号49の配列を有するPNA
配列番号49の配列を有するBNA
【0124】
部分(iii)
非RNAポリヌクレオチドの部分(iii)は、使用する特定のDNAヘリカーゼの結合を可能にするのに十分な長さのものでなければならず、PNA、GNA、TNA、BNA、LNAまたはモルホリノなどの類似体を含む非RNAヌクレオチドから構成されるべきである。本発明の好ましい実施形態において、部分(iii)はDNAである。これらの基準を満たす配列の代表例は、以下の通りである。
TTTTTTTTTT(配列番号51)
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号52)
CCCCCCCCCA(配列番号31)
CCCCCCCCCACCCCCCCCCA(配列番号53)
XXXXXXXXX(ここで、Xは、独立してA、T、GまたはCから選択される)
【0125】
部分(iv)
非RNAポリヌクレオチドの部分(iv)は、細孔の力を伴わずにDNAヘリカーゼのATP媒介移行を妨げるまたは遅延させるべきである。これらの基準を満たす配列の代表例は、以下の通りである。
rArArArArArArArArArA(配列番号54)
rUrCrCrArUrArCrGrArA(配列番号55)
9999
ここで、9=PEG6リン酸(スペーサー9(iSp9)群)
【0126】
部分(v)
非RNAポリヌクレオチドの部分(v)は、安定なハイブリッドを形成するのに十分に高いTMを有するテザリングオリゴのハイブリダイゼーションを可能にするべきである。これらの基準を満たす配列の代表例は、以下の通りである。
AACTACTAGGATCATCGATGTATCTGCTCA(配列番号56)
AGCTTAACATACGATACTCTTAGCTAACCA(配列番号57)
rArArCrUrArCrUrArGrGrArUrCrArUrCrGrArUrGrUrArUrCrUrGrCrUrCrA(配列番号58)
rArGrCrUrUrArArCrArUrArCrGrArUrArCrUrCrUrUrArGrCrUrArArCrCrA(配列番号57)
配列番号56の配列を有するPNA
配列番号57の配列を有するPNA
【0127】
部分(vi)
非RNAポリヌクレオチドの部分(vi)は、非RNAポリヌクレオチドのRNAポリヌクレオチドへのライゲーションを促進する必要がある。これらの基準を満たす配列の代表例は、以下の通りである:
ACTCTGAACC(配列番号60)
ACTCTrGrArArCrC(配列番号61)
GCACAATGAT(配列番号62)
GCACArArTrGrArT(配列番号63)
【0128】
本発明に従って、(i)〜(vi)の任意の組み合わせを行うことができる:好ましくは、非RNAポリヌクレオチドは、{i}、{ii}、{iv}、{v}、{i,ii}、{i,iv}、{i,v}、{ii,iv}、{ii,v}、{iv,v}、{i,ii,iv}、{i,ii,v}、{i,iv,v}、{ii,iv,v}、{i,ii,iv,v}と組み合わせた(iii)および(iv)を含む。
【0129】
部分(i)〜(vi)の各々について上記で与えられた異なる代表例のいずれかは、交換可能に使用され、標的RNA配列への結合のための非RNAポリヌクレオチドを形成することができる。
【0130】
非RNAポリヌクレオチドのいつくかの異なる代表例は以下の通りである。
【0131】
構築物1:(40×SpC3)(ACTCGCAGATCATTACGATC)(10×dT)(4×Sp18)(AACTACTAGGATCATCGATGTATCTGCTCA)(ACTCTGAACC)
すなわち(40×SpC3)(配列番号47)(配列番号51)(4×Sp18)(配列番号56)(配列番号60)
【0132】
構築物2:(40×SpC3)(ACTCGCAGATCATTACGATC)(20×dT)(4×Sp18)(AACTACTAGGATCATCGATGTATCTGCTCA)(ACTCTGAACC)
すなわち(40×SpC3)(配列番号47)(配列番号52)(4×Sp18)(配列番号56)(配列番号60)
【0133】
構築物3:(40×rU)(ACTCGCAGATCATTACGATC)(10×dT)(4×Sp18)(AACTACTAGGATCATCGATGTATCTGCTCA)(ACTCTGAACC)
すなわち(40×rU)(配列番号47)(配列番号51)(4×Sp18)(配列番号56)(配列番号60)
【0134】
構築物4:(40×SpC3)(ACTCGCAGATCATTACGATC)(10×dT)(4×Sp18)(AACTACTAGGATCATCGATGTATCTGCTCA)(ACTCTrGrArArCrC)
すなわち(40×SpC3)(配列番号47)(配列番号51)(4×Sp18)(配列番号56)(配列番号61)
【0135】
構築物5:(40×SpC3)(ACTCGCAGATCATTACGATC)(10×dT)(rArArArCrUrArCrGrCrU)(AACTACTAGGATCATCGATGTATCTGCTCA)(ACTCTGAACC)
すなわち(40×SpC3)(配列番号47)(配列番号51)(配列番号64)(配列番号56)(配列番号60)
【0136】
構築物6:(40×SpC3)(ACTCGCAGATCATTACGATC)(10×dT)(4×Sp18)(AGCTTAACATACGATACTCTTAGCTAACCA)(ACTCTGAACC)
すなわち(40×SpC3)(配列番号47)(配列番号51)(4×Sp18)(配列番号57)(配列番号60)
【0137】
構築物7:(40×SpC3)(配列番号47の配列を有するPNA)(10×dT)(4×Sp18)(AACTACTAGGATCATCGATGTATCTGCTCA)(ACTCTGAACC)
すなわち(40×SpC3)(配列番号47の配列を有するPNA)(配列番号51)(4×Sp18)(配列番号56)(配列番号60)
【0138】
結合
標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチドに結合し、および/または非RNAポリヌクレオチドは、標的RNAポリヌクレオチドに結合して、修飾されたRNAポリヌクレオチドを形成する。非RNAポリヌクレオチドがリボヌクレオチドまたはRNA配列を含む場合、非RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチド内に含まれるリボヌクレオチドまたはRNA配列を介して標的RNAポリヌクレオチドに結合され得る。
【0139】
本方法は、ステップ(a)において、修飾されたRNAポリヌクレオチドおよびDNAヘリカーゼ酵素を用意するステップを含む。本方法は、ステップ(a)の前に、RNAポリヌクレオチドを非RNAポリヌクレオチドに結合させるステップ、および/または非RNAポリヌクレオチドをRNAポリヌクレオチドに結合させて、修飾されたRNAポリヌクレオチドを形成するステップをさらに含み得る。
【0140】
標的RNAポリヌクレオチドおよび非RNAポリヌクレオチド(DNAまたはDNA類似体であり得る)は、当該技術分野において公知の任意の方法(単数または複数)を用いて、任意の様式で互いに結合させることができる。好ましくは、標的RNAポリヌクレオチドおよび非RNAポリヌクレオチドは、以下に記載される1つ以上の様々な方法を用いて結合される。標的RNAポリヌクレオチドは、例えば共有結合によって、非RNAポリヌクレオチドに化学的に結合され得る。標的RNAポリヌクレオチドは、化学的または酵素的ライゲーションによって非RNAポリヌクレオチドに結合され得る。標的RNAポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションおよび/または合成方法によって非RNAポリヌクレオチドに結合され得る。RNAポリヌクレオチドは、トポイソメラーゼを用いて非RNAポリヌクレオチドに結合され得る。RNAポリヌクレオチドは、1つより多い、例えば2つまたは3つの点で、非RNAポリヌクレオチドに結合され得る。結合の方法は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを声得る超える様々な結合方法を伴うことができる。以下に記載される結合方法の任意の組合せが、本発明に従って使用され得る。
【0141】
RNAポリヌクレオチドおよび非RNAポリヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはRNAを含んでもよくまたは含まなくてもよい)は、別々に生成され、次に一緒に結合され得る。2つの成分は、任意の配置において結合することができる。例えば、それらは、それらの末端(すなわち、5’または3’末端)を介して結合され得る。適切な配置には、限定されないが、RNAポリヌクレオチドの5’末端が非RNAポリヌクレオチドの3’末端に結合されることを含み、その逆も含まれる。あるいは、2つの成分は、それらの配列内のヌクレオチドを介して結合され得る。
【0142】
ポリヌクレオチドは、それらの天然に存在するヌクレオチドを介して結合され得る。天然に存在するヌクレオチドは、結合を送信するために修飾されてもよい。例えば、天然に存在する核酸は、例えば、mRNAキャップのためのトリメチルグアノシン合成酵素によって修飾され得る。他の適切な修飾は、当該技術分野において公知である。修飾は、置換によって導入することができる。RNAポリヌクレオチドは、リンカー分子を介して非RNAポリヌクレオチドに結合することができる。RNAポリヌクレオチドは、1つ以上、例えば2つまたは3つのリンカーを用いて非RNAポリヌクレオチドに結合され得る。リンカーは、必要とされる距離を横切って伸びる任意の分子を含むことができる。リンカーは、1つの炭素(ホスゲン型リンカー)から多数のオングストロームまでの長さが変化し得る。リンカーとしての使用に適した直鎖状分子の例は、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリペプチド、多糖類、デオキシリボ核酸(DNA)、ペプチド核酸(PNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、飽和および不飽和炭化水素、ポリアミドである。これらのリンカーは、不活性であってもよくまたは反応性であってもよい。特に、それらは、規定された位置で化学的に切断可能であり得、またはフルオロフォアもしくはリガンドで修飾されてもよい。リンカーは、好ましくは、ジチオスレイトール(DTT)に耐性である。好ましい可撓性ペプチドリンカーは、2〜20個、例えば、4個、6個、8個、10個または16個のセリンおよび/またはグリシンアミノ酸のストレッチである。より好ましい可撓性リンカーは、(SG)
1、(SG)
2、(SG)
3、(SG)
4、(SG)
5、(SG)
8、(SG)
10、(SG)
15または(SG)
20を含み、ここで、Sはセリンであり、Gはグリシンである。好ましい剛性リンカーは、2〜30個、例えば、4個、6個、8個、16個または24個のプロリンアミノ酸のストレッチである。より好ましい剛性リンカーは(P)
12を含み、ここで、Pはプロリンである。
【0143】
RNAポリヌクレオチドは、1つ以上の化学的架橋剤または1つ以上のペプチドリンカーを用いて非RNAポリヌクレオチドに結合され得る。適切な化学的架橋剤は、当該技術分野において周知である。適切な化学的架橋剤には、限定されないが、以下の官能基を含むものが挙げられる:マレイミド、活性エステル、スクシンイミド、アジド、アルキン(例えば、ジベンゾシクロオクチオール(DIBOまたはDBCO)、ジフルオロシクロアルキンおよび直鎖状アルキン)、ホスフィン(例えば、痕跡なし(traceless)および非痕跡なしのシュタウディンガーライゲーション)、ハロアセチル(例えば、ヨードアセトアミド)、ホスゲン型試薬、塩化スルホニル試薬、イソチオシアネート、ハロゲン化アシル、ヒドラジン、ジスルフィド、ビニルスルホン、アジリジンおよび光反応性試薬(例えば、アリールアジド、ジアジリジン)。
【0144】
RNAポリヌクレオチドと非RNAポリヌクレオチドの間の反応は、システイン/マレイミドなどのように自発的であり得、またはアジドと直鎖状アルキンを連結するためのCu(I)などのように外部試薬を必要とする場合がある。
【0145】
好ましい架橋剤には、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 3−(ピリジン−2−イルジスルファニル)プロパノエート、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)ブタノエート、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 8−(ピリジン−2−イルジスルファニル)オクタノアート、ジマレイミドPEG 1k、ジマレイミドPEG 3.4k、ジマレイミドPEG 5k、ジマレイミドPEG 10k、ビス(マレイミド)エタン(BMOE)、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)、1,4−ビス−マレイミドブタン(BMB)、1,4−ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、BM[PEO]2(1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール)、BM[PEO]3(1,11−ビス−マレイミドトリエチレングリコール)、トリス[2−マレイミドエチル]アミン(TMEA)、DTMEジチオビスマレイミドエタン、ビス−マレイミドPEG3、ビス−マレイミドPEG11、DBCO−マレイミド、DBCO−PEG4−マレイミド、DBCO−PEG4−NH2、DBCO−PEG4−NHS、DBCO−NHS、DBCO−PEG−DBCO 2.8kDa、DBCO−PEG−DBCO 4.0kDa、DBCO−15原子−DBCO、DBCO−26原子−DBCO、DBCO−35原子−DBCO、DBCO−PEG4−S−S−PEG3−ビオチン、DBCO−S−S−PEG3−ビオチンおよびDBCO−S−S−PEG11−ビオチンが含まれる。最も好ましい架橋剤は、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびマレイミド−PEG(2kDa)−マレイミド(α、ω−ビス−マレイミド ポリ(エチレングリコール))である。
【0146】
リンカーは標識されてもよい。適切な標識には、限定されないが、蛍光分子(例えば、Cy3またはAlexaFluor(登録商標)555)、放射性同位体、例えば、
125I、
35S、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチド、およびリガンド、例えばビオチンが含まれる。このような標識は、リンカーの量を定量化することを可能にする。標識はまた、ビオチンなどの切断可能な精製タグ、または識別方法で現れる特定の配列であってもよい。
【0147】
RNAポリヌクレオチドまたは非RNAポリヌクレオチドのそれらへの架橋は、膨大なRNAポリヌクレオチドおよび/または非RNAポリヌクレオチド中にリンカーの濃度を維持することによって防止することができる。あるいは、2つのリンカーが使用される「ロックおよびキー」配置を使用することができる。各リンカーの一方の末端だけが一緒に反応して、より長いリンカーを形成し、リンカーの他方の末端は、各々、構築物の異なる部分(すなわち、RNAポリヌクレオチドまたは非RNAポリヌクレオチド)と反応する。
【0148】
RNAポリヌクレオチドの非RNAポリヌクレオチドへの結合は、永久的であってもよく、安定であってもよい(すなわち、RNAポリヌクレオチドは、本発明の方法において非RNAポリヌクレオチドから脱離されない)。好ましい永久または安定な結合は、共有結合である。
【0149】
あるいは、結合は一過性であり、すなわち、RNAポリヌクレオチドは非RNAポリヌクレオチドから脱離することができる。本明細書に記載される方法のいずれかは、非RNAポリヌクレオチドを標的RNAに結合させるために等しく適しており、また、上記されるように、2つ以上の種類の核酸、例えばDNAおよびRNA、のハイブリッドであってもよい、非RNAポリヌクレオチド自体を構築するのにも等しく適していることは、当業者に理解される。
【0150】
クリック化学
標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチドに共有結合することができる。非RNAポリヌクレオチドは、予め結合したDNAヘリカーゼ酵素を含んでもよくまたは含まなくてもよい。好ましい実施形態において、RNAポリヌクレオチドと非RNAポリヌクレオチド、例えばDNAリーダー配列の間の共有結合は、銅不含クリック化学または銅触媒クリック化学を用いて作製することができる。クリック化学は、多様な構成要素間の共有結合を形成するための望ましい特性と範囲のために、これらの用途に使用されている。例えば、それは速く、クリーンであって、有毒ではなく、無害な副産物だけを生成する。クリック化学は、Kolbら(2001年)が最初に導入した用語であり、小規模利用と大規模利用の両方において確実に作用する、強力であり、選択的なモジュラー構成要素のセットを記述している(Kolb HC, Finn, MG, Sharpless KB, Click chemistry: diverse chemical function from a few good reactions, Angew. Chem. Int. Ed. 40 (2001) 2004-2021)。彼らは、以下のようにクリック化学の厳しい基準のセットを定義している:「反応は、モジュラーであって、範囲が広く、非常に高い収率が得られ、非クロマトグラフィー法で除去することができる無害な副産物だけを生成し、立体特異的でなければならない(しかし、必ずしもエナンチオ選択的である必要はない)。要求されるプロセス特徴には、単純な反応条件(理想的には、プロセスは酸素および水に対して無反応性でなければならない)、容易に入手可能な出発物質および試薬、溶媒の不使用、または良溶媒(水など)であり、または容易に除去される溶媒の使用、および簡単な生成物分離が挙げられる。必要であれば、精製は、結晶化または蒸留などの非クロマトグラフィー法によるものでなければならず、生成物は、生理学的条件下で安定でなければならない」。
【0151】
クリック化学の適切な例には、限定されないが、以下が含まれる:
(a)アジドが、例えばシクロオクタン環に、歪みを受けているアルキンと反応する、1,3双極性環化付加反応の銅不含改変体;
(b)一方のリンカー上の酸素求核剤と他方のエポキシドまたはアジリジン反応性部分との反応;および
(c)アルキン部分をアリールホスフィンで置換することができ、アジドとの特異的反応をもたらして、アミド結合を与えるシュタウディンガーライゲーション。
【0152】
好ましくは、クリック化学反応は、アルキンとアジドの間のCu(I)触媒1,3双極性環化付加反応である。好ましい実施形態において、第一の基はアジド基であり、第二の基はアルキン基である。核酸塩基は、好ましい位置にアジド基およびアルキン基を組み込んで既に合成されている(例えば、Kocalka P, El-Sagheer AH, Brown T, Rapid and efficient DNA strand cross-linking by click chemistry, Chembiochem. 2008. 9(8):1280-5)。アルキン基は、Berry Associates(Michigan,USA)から市販されており、アジド基はATDBioまたはIDT bioによって合成されている。
【0153】
リンカーの核酸酸領域内のヌクレオチドが共有結合を形成することができる基を含むように修飾されている場合、修飾されたヌクレオチドは、好ましくは、連結を達成するために1つのヌクレオチドにより互いにオフセットされる。これは、Tom Brown(Kocalka et al. (2008) ChemBiochem 9 8 1280-1285)の刊行物に続く。
【0154】
RNA転写物が形成されると、クリック反応性塩基が標的RNAポリヌクレオチドに付加され得る。あるいは、クリック基は、(キャップされたmRNAについて)ハイパーメチラーゼ酵素によって標的RNAポリヌクレオチドに付加され得る。
【0155】
好ましくは、反応性基は、アジドおよびヘキシニル基、例えば、3アジドNおよび5’−ヘキシニル−Gである。好ましくは、アジド基は、好ましくはDNAである非RNAポリヌクレオチド(およびリボヌクレオチドもしくはRNA配列を含んでもよくまたは含まなくてもよい)に結合され、ヘキシニル基は標的RNAポリヌクレオチドに結合される。
【0156】
実施例3および5は、非RNAポリヌクレオチド(例えばDNAを含む)を標的RNAポリヌクレオチドに接続するためのクリック反応の使用を示す。さらに、実施例5は、2次元(2D)RNA−cDNA構築物を得るための架橋部分の使用を記載する。
図15に示される実施例5の構築物は、架橋部分を含まない実施例3の構築物(
図10に示される1D構築物)と比較することができる。
【0157】
ライゲーション
標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチド(このRNAポリヌクレオチドはリボヌクレオチドまたはRNA配列を含んでもよくまたは含まなくてもよい)にライゲーションされ得る。ライゲーションは、最も一般的には、酵素の作用を介したまたは化学的手段による、2つの核酸断片の結合である。RNAおよびDNAの断片の末端は、一方のRNAまたはDNA末端の3’−ヒドロキシルと他方の5’−ホスホリルの間のホスホジエステル結合の形成によって一緒に接続される。補因子は、一般的には反応に関与し、これは、通常、ATPまたはNAD
+である。RNAまたは非RNAポリヌクレオチドのスプリント、例えば、DNA、PNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)またはロックド核酸(LNA)は、ライゲーション反応において使用され、スプリントとのハイブリダイゼーションによって互いに隣接してRNAポリヌクレオチドおよび非RNAポリヌクレオチドを保持することによりライゲーションを促進することができる。RNAポリヌクレオチドに結合される非RNAポリヌクレオチドは、予め結合したDNAヘリカーゼ酵素を含んでもよくまたは含まなくてもよい。
【0158】
非RNAポリヌクレオチドは、RNAポリヌクレオチドのいずれかの末端、すなわち5’または3’末端にライゲーションされ得る。非RNAポリヌクレオチドは、標的RNAポリヌクレオチドの両端にライゲーションされ得る。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドは、標的RNAポリヌクレオチドの5’末端にライゲーションされる。非RNAポリヌクレオチドは、当該技術分野において公知である任意の方法を用いてRNAポリヌクレオチドにライゲーションされ得る。1つ以上の非RNAポリヌクレオチドは、リガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、TaqDNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼ、9
oN DNAリガーゼ、T4ポリメラーゼI、T4ポリメラーゼ2、熱安定性5’App DNA/RNAリガーゼ、スプリントR、circリガーゼ、T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2を用いてライゲーションされ得る。1つ以上の非RNAポリヌクレオチドは、ATPの不存在下で、またはATPの代わりにγ−S−ATP(ATPγS)を用いて、RNAポリヌクレオチド(またはその反対)にライゲーションされ得る。
【0159】
本方法は、好ましくは、方法条件からリガーゼを除くことをさらに含む。
【0160】
実施例2は、T4 DNAリガーゼを用いたRNAポリヌクレオチドのDNAへのライゲーションを示す。
【0161】
合成法
オリゴヌクレオチドまたはプライマーを用いて、標的RNAポリヌクレオチドの任意の領域にハイブリダイズさせ、DNA合成の出発点として作用させることができる。オリゴヌクレオチドまたはプライマーは、予め結合したDNAヘリカーゼ酵素を含んでもよくまたは含まなくてもよい。
【0162】
真核生物のRNAは、典型的には、ポリAテール、すなわち、連続したアデノシン一リン酸のストレッチを含む。ポリAテールは、典型的にはRNAの3’末端にある。ポリAポリメラーゼまたはターミナルトランスフェラーゼ酵素は、必要に応じて、原核生物のRNA鎖の3’末端にポリ(dA)テールを付加するために利用することができる。プライマーは、標的RNAのポリAテールにハイブリダイズされ、合成のための出発点として使用され得る。プライマーは、好ましくは、ポリT領域、すなわち、チミンに基づくヌクレオチドのみを含有する含む領域、またはポリU領域、すなわち、ウラシルに基づくヌクレオチドのみを含有する領域を含む。ポリU領域は、UMPまたはdUMPを含有し得る。ポリU領域は、任意の長さ、例えば、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個またはそれらを超える長さであり得る。
【0163】
本発明の一実施形態において、非RNAポリヌクレオチドは、ポリ(dA)領域でRNA鎖にハイブリダイズするリーダー配列を有するDNAプライマーを含む。1つ以上のDNAヘリカーゼ酵素は、RNA鎖にハイブリダイズされるべきDNAプライマーに予め結合されてもよい。あるいは、RNAにハイブリダイズされるべきDNAプライマーは、予め結合したDNAヘリカーゼ酵素を含有するまたは含まない。DNAプライマーからのRNA鎖の逆転写を生じさせることができ、次に、DNAヘアピンなどの架橋部分を二本鎖DNA/RNAにライゲーションすることができる。このような架橋部分、例えばヘアピンループアダプターは、本発明の任意の二本鎖標的RNAポリヌクレオチド(RNA/RNAもしくはRNA/DNA)または修飾された構築物に付加することができる。架橋部分は、一本鎖への連結によって、鋳型鎖と相補鎖の両方の連続した配列決定を可能にする。好ましくは、リーダー配列を含有するアダプター(例えば、Yアダプター)がRNAの一端に結合され、架橋部分アダプターが他端に結合される。リーダー配列は、ナノ細孔に優先的に入り込み、2つの鎖(RNA/RNAまたはRNA/DNAであってもよい)を連結する架橋部分は、ポリヌクレオチドが開くため、両鎖を特徴付けることができ、両鎖(架橋部分を介して連結される)を、細孔を通して移動させることができる。これは、二本鎖ポリヌクレオチドから得られる情報量を倍増させるため、有利である。さらに、2つの鎖の配列は相補的であるため、2つの鎖からの情報は、情報科学的に組み合わせることができる。このメカニズムは、信頼性の高い観測を提供するプルーフリーディング能力を提供する。
【0164】
あるいは、以下でより詳細に検討するように、架橋部分は、相補体の合成前に標的RNAポリヌクレオチドに付加され、相補体合成のためのプライマーとして使用することができる。
【0165】
本発明の一実施形態において、二本鎖RNAポリヌクレオチドの鎖またはRNA/DNA二重鎖(例えば、RNAおよびcDNA)の鎖は、架橋部分を用いて連結される。次に、本発明による標的RNAポリヌクレオチドを特徴付けるための方法は、好ましくは、(i)RNAポリヌクレオチドが非RNAポリヌクレオチドを含むように修飾された標的RNAポリヌクレオチドを含む連結構築物と、(ii)標的RNAが細孔を通り移動するように膜貫通細孔を有するDNAヘリカーゼ酵素とを接触させることを含む。この方法は、好ましくは、標的RNAが細孔に対して移動する間に1つ以上の測定値を得るステップであって、測定値は、相補的ポリヌクレオチド(RNAまたはcDNA)および標的RNAの1つ以上の特徴を示し、それにより標的二本鎖ポリヌクレオチドを特徴付けるステップを含む。
【0166】
標的dsRNAまたはRNA/DNA二重鎖の両鎖をこのように連結して調べることにより、特徴付けの効率および正確さが増加する。
【0167】
架橋部分は、標的dsRNAポリヌクレオチドまたはRNA/DNA二重鎖の2つの鎖を連結することができる。架橋部分は、典型的には、標的dsRNAポリヌクレオチドまたはRNA/DNA二重鎖の2つの鎖を共有結合する。架橋部分が膜貫通細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を妨害しないという条件で、架橋部分は、標的部分のdsRNAポリヌクレオチドまたはRNA/DNA二重鎖の2つの鎖を連結することができるいずれのものであり得る。
【0168】
架橋部分は、当該技術分野において公知である任意の適切な手段によって標的ポリヌクレオチドに連結され得る。架橋部分は、別々に合成され、RNA標的ポリヌクレオチドに化学的に結合されるまたは酵素的に連結され得る。あるいは、架橋部分は、標的ポリヌクレオチドのプロセシングにおいて生成され得る。
【0169】
架橋部分は、標的ポリヌクレオチドの一端またはその近くで標的ポリヌクレオチドに連結される。架橋部分は、好ましくは、標的ポリヌクレオチドの末端の10ヌクレオチド以内で標的ポリヌクレオチドに連結される
【0170】
適切な架橋部分としては、限定されないが、ポリマーリンカー、化学リンカー、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが挙げられる。好ましくは、架橋部分は、DNA、RNA、修飾DNA(無塩基DNAなど)、RNA、PNA、LNAまたはPEGを含む。架橋部分は、より好ましくはDNAまたはRNAである。
【0171】
架橋部分は、最も好ましくは、ヘアピンループまたはヘアピンループアダプターである。適切なヘアピンアダプターは、当該技術分野において公知である方法を用いて設計することができる。ヘアピンループは任意の長さであってよい。ヘアピンループは、典型的には、長さが110個以下のヌクレオチド、例えば、100個以下のヌクレオチド、90個以下のヌクレオチド、80個以下のヌクレオチド、70個以下のヌクレオチド、60個以下のヌクレオチド、50個以下のヌクレオチド、40個以下のヌクレオチド、30個以下のヌクレオチド、20個以下のヌクレオチド、または10個以下のヌクレオチドである。ヘアピンループは、好ましくは、長さが約1〜110個、2〜100個、5〜80個または6〜50個のヌクレオチドである。ループがアダプターの異なる選択安定性に関与する場合、より長い長さのヘアピンループ、例えば50〜110個のヌクレオチドが好ましい。同様に、ループが選択可能な結合に関与しない場合、より短い長さのヘアピンループ、例えば1〜5個のヌクレオチドが好ましい。
【0172】
ヘアピンアダプターは、標的ポリヌクレオチドのいずれかの末端、すなわち5’末端または3’末端にライゲーションすることができる。ヘアピンアダプターは、当該技術分野において公知の任意の方法を用いてライゲーションされ得る。ヘアピンアダプターは、リガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼおよび9
oN DNAリガーゼを用いてライゲーションすることができる。
【0173】
相補的ポリヌクレオチド(RNAまたはcDNA)および標的RNAは、連結された構築物が本発明に従って細孔と接触する後または前に分離されてもよい。それらは、細孔を通るポリヌクレオチド移動がポリヌクレオチド結合タンパク質、例えば、ヘリカーゼまたは分子ブレーキによって制御されるため、分離され得る。
【0174】
相補的ポリヌクレオチド(RNAまたはcDNA)および標的RNAは、当該技術分野において公知である任意の方法を用いて分離され得る。例えば、それらは、ポリヌクレオチド結合タンパク質によって、または脱ハイブリダイゼーションを促進する条件(脱ハイブリダイゼーションを促進する条件の例には、限定されないが、高温、高pH、および水素結合または塩基対を破壊し得る薬剤、例えばホルムアミドおよび尿素の添加が含まれる)を用いて分離することができる。
【0175】
ヘアピンアダプターは、好ましくは選択可能な結合部分を含む。これにより、連結された構築物を精製または単離することが可能になる。選択可能な結合部分は、その結合特性に基づいて選択され得る部分である。したがって、選択可能な結合部分は、好ましくは、表面に特異的に結合する部分である。選択可能な結合部分は、本発明において使用される任意の他の部分よりもはるかに大きな程度で表面に結合する場合、表面に特異的に結合する。好ましい実施形態において、この部分は、本発明において使用される他の部分が結合していない表面に結合する。
【0176】
適切な選択的な結合部分は、当該技術分野において公知である。好ましい選択的な結合部分としては、限定されないが、ビオチン、ポリヌクレオチド配列、抗体、FabおよびScSvなどの抗体断片、抗原、ポリヌクレオチド結合タンパク質、ポリヒスチジンテールおよびGSTタグが挙げられる。最も好ましい選択的な結合部分は、ビオチンおよび選択可能なポリヌクレオチド配列である。ビオチンは、アビジンで被覆された表面に特異的に結合する。選択可能なポリヌクレオチド配列は、ホモログ配列で被覆された表面に特異的に結合する(すなわち、ハイブリッドする)。あるいは、選択可能なポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド結合タンパク質で被覆された表面に特異的に結合する。
【0177】
ヘアピンアダプターおよび/または選択可能な結合部分は、切断され、ニックを入れられ、開裂されまたは加水分解され得る領域を含み得る。このような領域は、相補的なポリヌクレオチドおよび/または標的RNAが、それが精製または単離後に結合される表面から除去されることを可能にするように設計することができる。適切な領域は、当該技術分野において公知である。適切な領域には、限定されないが、RNA領域、デスチオビオチンおよびストレプトアビジンを含む領域、ジスルフィド結合および光開裂可能領域が含まれる。
【0178】
連結構築物は、好ましくは、ヘアピンループまたはヘアピンループアダプターなどの架橋部分と反対側の末端でリーダー配列を含む。
【0179】
本発明の一実施形態において、ヘアピン形成オリゴヌクレオチドなどの架橋部分は、標的RNA鎖に結合される。架橋部分の結合前に、標的RNA鎖は、非RNAポリヌクレオチドを含むように修飾されていてもよい。例えば、標的RNA鎖は、化学結合を用いて、例えば共有結合によって、クリック化学、化学的もしくは酵素的ライゲーションを用いて、ハイブリダイゼーションおよび/または合成法によって非RNAポリヌクレオチドに結合されていてもよい。RNAポリヌクレオチドは、トポイソメラーゼを用いて非RNAポリヌクレオチドに結合されていてもよい。あるいは、非RNAポリヌクレオチドを含むようにRNA鎖を修飾する前に、架橋部分は、標的RNA鎖に結合されてもよい。同様に、ヘアピン形成オリゴヌクレオチドなどの架橋部分は、本明細書に記載されている結合方法のいずれかによって標的RNA鎖に結合され得る。好ましくは、架橋部分は、ライゲーションによって標的RNA鎖に結合される。上述した任意の適切なリガーゼは、標的RNA鎖に架橋部分をライゲーションさせるために使用されてもよく、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼ、9
oN DNAリガーゼ、T4ポリメラーゼI、T4ポリメラーゼ2、熱安定性5’App DNA/RNAリガーゼ、スプリントR、circリガーゼ、T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2が挙げられる。
【0180】
好ましくは、架橋部分は、標的RNA鎖の3’または5’末端に結合され、最も好ましくは、架橋部分は、標的RNA鎖の3’末端に結合される。ヘアピン形成オリゴヌクレオチドなどの架橋部分からの逆転写は、ヘアピンによって接続されるRNA−cDNA構築物の形成をもたらす。この実施形態において、架橋部分は、逆転写のためのプライマーとして作用する:ヘアピン形成オリゴヌクレオチドなどの架橋部分はそれ自体、逆転写のためのプライマーとして使用されて、RNA−cDNA構築物を生成し、2D読み取りを可能にする。好ましくは、逆転写は、架橋部分の3’末端で開始される。架橋部分上のポリTオーバーハングは、RNAのポリAテールにハイブリダイズする。RNAのポリAテールは、典型的には、長さが50〜300ヌクレオチドである。好ましくは、架橋部分のポリTオーバーハングは、100個未満のヌクレオチドを含み、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、または99個のヌクレオチドである。好ましくは、ポリTオーバーハングは、架橋部分の3’末端上にある。本発明のこの実施形態において、架橋部分が標的RNA(標的RNAが、非RNAポリヌクレオチド;好ましくはDNAポリヌクレオチドを含むようにすでに修飾されているまたはこれから修飾される)に結合している場合、架橋部分は逆転写のためのプライマーとして機能する、DNA/RNA/cDNA構築物が作製される(実施例5および
図15を参照されたい)。この構築物は、標的RNAとその相補的DNA配列(逆転写によって形成される)の両方が、架橋部分の存在のために膜貫通細孔によって配列決定され得る2D読み取りを可能にする。この方法は、単一の二本鎖標的ポリヌクレオチド構築物から得られる情報量を倍増するため有利である。さらに、相補的(cDNA)鎖の配列は、必然的に鋳型RNA鎖の配列とオルソゴナルであるため、2つの鎖からの情報を情報科学的に組み合わせることができる。したがって、このメカニズムは、信頼性の高い観測を提供するオルソゴナルなプルーフリーディング能力を提供する。
【0181】
さらに、本発明の方法の他の主要な利点は以下の通りである:
1)読み逃したヌクレオチドの担保:この方法は、いずれかのヌクレオチドまたはヌクレオチド群が読み逃される問題(例えば、細孔をすり抜けるRNA鎖などの移動問題に起因する)を実質的に最小にする。これは、1つの鎖において欠落している可能性があるいずれもの状態が、その相補領域から得られるオルソゴナル情報によって担保される可能性があるためである。
2)問題のある配列モチーフの担保:配列モチーフに困難なものは、相補鎖中のオルソゴナルおよび反対の情報によって担保される。相補鎖は異なる配列を有するので、同じ配列依存性の問題を有しないからである。例えば、これは、電流のわずかな変化しか生じない、または同様の電流レベルを有する配列モチーフに関連し、すなわち、ナノ細孔を通り移動したときに同じ電流ブロックを生じさせる連続したベースモチーフに関連し、したがって、電流のステップ変化はないものとしては観測されない。1つの配列モチーフからの任意の同様の電流レベルは、相補鎖におけるそのオルソゴナル配列から得られる、全く異なる電流レベルによって担保される。
【0182】
上記で検討した利点に加えて、二本鎖ポリヌクレオチドの両鎖を読み取るという概念を利用して、更なる利点を提供することができる多数の特別な場合がある:
1.エピジェネティックな情報
エピジェネティックな情報(5−メチルシトシンまたは5−ヒドロキシメンチルシトシンヌクレオチドなど)または天然のRNA鎖内の損傷した塩基を同定できることは、広範囲の用途において望ましい。本発明の方法を使用すると、この情報は化学的処理または増幅なしで得られ、両方とも誤差を導入する可能性がある。ナノ細孔配列決定中に、ヌクレオチドがナノ細孔を通過する際に、電流レベルの変化が測定される。電流レベルは、単一のヌクレオチドというよりはむしろ、いくつかの塩基によって指示される。修飾されたヌクレオチドがナノ細孔を通過するとき、それはいくつかの連続したレベルに影響を及ぼす:これは、本発明者らはその検出において有する信頼性を増加させる(
図18を参照されたい)。
【0183】
ナノ細孔配列決定はまた、単一分子配列決定技術であり、したがって、増幅を必要としないで行うことができる。ナノ細孔は、標準的な4つのRNAヌクレオチドに対する修飾を検出することができることが示されている。ポリヌクレオチドの両鎖を読み取ることは、修飾された塩基が別の塩基と同様に作用する(同様の電流シグナルを生成する)状況において、RNA修飾の検出に有用であり得る。例えば、メチルシトシン(mC)がウラシルと同様に作用する場合、mCをUに割り当てることに関連した誤差がある。鋳型鎖においては、塩基がmCまたはUと呼ばれる可能性がある。しかしながら、相補鎖において、対応する塩基は高い確率でGとして現れ得る。したがって、相補鎖を「プルーフリーディング」することにより、鋳型鎖中の塩基は、UというよりはむしろmCであった可能性が高い。
【0184】
鋳型および相補鎖の読み取りは、増幅および複製を必要とせずに行うことができる。しかしながら、増幅または複製は、エピジェネティックな情報の検出を支援ために、試料調製の一部として加えられてもよい。
【0185】
標的RNAポリヌクレオチドを含む連結鎖は、配列決定が実施される前の任意の段階で、必要に応じて何度でも分離され、複製され得る。例えば、上述される第一のRNA/cDNAポリヌクレオチド構築物の2つの連結鎖を分離した後、得られた一本鎖ポリヌクレオチドに対する相補鎖を生成して、別の二本鎖ポリヌクレオチドを形成することができる。次に、この二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖は、架橋部分を用いて連結されて、第二の構築物を形成することができる。これは、本明細書において「DUO」法と呼ぶことができる。その後、この構築物を本発明において使用することができる。このような実施形態において、得られた構築物中の二本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖は、架橋部分によって連結された元の標的二本鎖ポリヌクレオチド(第一の構築物中)の両鎖を含む。元の標的二本鎖ポリヌクレオチドまたは相補鎖の配列を推定または決定することができる。この複製プロセスは、必要に応じて何度でも繰り返すことができ、標的ポリヌクレオチドが効果的に複数回読み取られるため、追加のプルーフリーディングを提供する。
【0186】
ヌクレオチド鎖を構築することができ、ここで、以下の情報が、以下:鋳型RNA(元の)、相補性cDNA(元の)、−架橋部分−、鋳型RNA(相補体)、相補性cDNA(相補体)の順番で、細孔を通じて読み取られる。
【0187】
このスキームにおいて、メチル化された塩基に関する情報が4回得られる。エピジェネティックな塩基が元の鋳型鎖(この場合は、mC)にある場合、以下の情報:鋳型(元の)−mC、相補性(元の)−G、鋳型(相補体)−C、および相補性(相補体)−Gが高い確率で得られる。元の鋳型の読み取りおよび複製された鋳型の読み取りは異なる結果を与えるが、両方の相補性の読み取りは、同じ塩基判定(base call)が得られることは明らかである。この情報は、元の鋳型鎖中のエピジェネティックな塩基の位置を示すために使用することができる。
【0188】
2.ホモポリマー読み取り
ホモポリマー読み取りは、単一分子ナノ細孔配列決定に対して問題であり得る。ホモポリマー領域が細孔の読み取り部分より長い場合、ホモポリマー部分の長さを決定することは困難である。
【0189】
ホモポリマー読み取りの問題を克服するために、cDNA鎖は、元のdTTP、dGTP、dATP、dCTPと組み合わせて、異なる/修飾塩基を付加して合成することができる。これは、イノシン(I)などの天然の塩基類似体であり得る。塩基は、正しい天然の塩基と比較して組み込む機会がランダムであり、挿入率は、三リン酸種の濃度を変えることによって制御することができる。
【0190】
代替塩基の付加を通じて、ホモポリマー領域の逆相補体に別の塩基が挿入される可能性がある。この結果は、ホモポリマーの走行が、ナノ細孔の読み取りセクションによって読み取られ得る点までの長さが減少されることである。例えば、AAAAAAAAAAAA(配列番号33)のホモポリマー基は、代替塩基のランダムな挿入を有し、TTTITTIITTTI(配列番号34)(ここで、Iはイノシンである)を与え得る。
【0191】
ホモポリマーストレッチは、個々のヌクレオチドまたはヌクレオチド群が推定または決定されることを可能にするために減少される。鋳型鎖は、天然のRNA鎖であり、相補性/cDNA鎖は、天然の塩基と塩基類似体の混合物を含有する。鋳型からのデータと相補的な読み取りの組み合わせを用いて、元のRNA部分におけるホモポリマー走行の長さを推定することができる。
【0192】
トポイソメラーゼ
トポイソメラーゼは、一本鎖または二本鎖DNAのいずれかに結合し、DNAのリン酸骨格を切断する。この中間切断は、DNAを解きほぐしまたは巻き戻すことを可能にし、これらのプロセスの最後に、DNA骨格を再び封鎖する。適切なトポイソメラーゼ結合戦略を
図6および7に示す。
【0193】
他の方法
RNA標的ポリヌクレオチドを非RNAポリヌクレオチドに結合させる別の方法は、反対配向に7メチルグアノシンキャップを付加することによって修飾される真核生物のRNAの5’末端を利用することを含む。したがって、真核生物のRNAの5’末端は、逆塩基を含有するまたは含み、すなわち、RNA鎖の5’末端で、個々の塩基は5’末端とは反対に3’末端を有しない。標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはRNA配列を含んでもよくまたは含まなくてもよい)にライゲーションすることができ、これはまた、
図12に示されように逆方向に走るように逆塩基を有する領域を有する。ここで、非RNAポリヌクレオチドはDNAである。あるいは、非RNAポリヌクレオチドは、一方の末端で逆塩基を有するRNA部分を有してもよい。逆RNA塩基のこの部分は、ライゲーションによって真核生物のRNAの5’末端の逆塩基に結合することができる。
【0194】
非RNAポリヌクレオチドは、予め結合したDNAヘリカーゼ酵素を含んでもよくまたは含まなくてもよい。
【0195】
真核生物のRNA
真核生物において、核内で生成された一次RNA転写物は、翻訳機構をプログラムするためにそれが使用される細胞質への輸送前に、いくつかの方法でプロセシングされる。第一に、三リン酸結合によって転写物の5’末端に連結された7−メチルグアノシン残基からなるキャップは、転写(キャッピング)中に付加される。キャッピングは、5’−5’三リン酸結合を伴う。キャップは翻訳機構によって認識され、ヌクレアーゼによる分解からRNA鎖の成長を保護する。次に、アデノシン残基のストレッチが3’末端で付加される(ポリアデニル化)。これらのポリAテールは、150〜200残基の長さである。これらの修飾後、RNAスプライシングは、介在配列(すなわち、イントロン)を除去する。
【0196】
本発明の一実施形態において、5’キャップを適所に残し、少なくとも1つの化学的反応基を標的RNAポリヌクレオチドの5’末端に付加する。a)化学反応がRNAまたはDNA構造に損傷を与えず、およびb)生成される反応性連結が、DNAヘリカーゼ酵素がそれに沿って移動できないまたはそれを通過できないほどに大きくない、限りにおいて、化学的結合の任意の方法を本発明の方法に使用することができる。少なくとも1つの反応性基は、ハイパーメチラーゼ酵素を用いて標的RNAポリヌクレオチドに付加され得る。本発明の一実施形態において、RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基はクリック反応性基であるが、これは必須ではない。RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基は、代替的には、チオールなどの任意の適切な反応性基であってもよい。少なくとも1つの反応性基は、非RNAポリヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはRNA配列を含んでもよくまたは含まなくてもよい)の末端に結合される。好ましくは、少なくとも1つの反応性基は、非RNAポリヌクレオチドの3’末端に結合される。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはDNA鎖である。非RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基は、ハイパーメチラーゼ酵素を用いて付加されてもよい。本発明の一実施形態において、非RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基はクリック反応性基であるが、これは必須ではない。次に、RNAポリヌクレオチドおよび非RNAポリヌクレオチドのそれぞれにある1つ以上の反応性基は、適切な条件下で接触されて、共有結合を形成する。ATPγSおよび酵素を用いて、チオホスフェートをDNAに付加し、次に、マレイミドが結合したRNAに結合させることができる。
【0197】
本発明の別の実施形態において、7−メチルグアノシンキャップを除去し、好ましくはタバコ酸ピロホスファターゼを用いてデキャッピングされたRNA鎖を形成する。次に、デキャッピングされた標的RNAポリヌクレオチドは、非RNAポリヌクレオチドに結合されたRNAポリヌクレオチドの鎖を生成するために、多数の異なる方法で処理することができる。一実施形態において、少なくとも1つの反応性基は、デキャッピングされたRNAポリヌクレオチドの5’末端に付加することができる。少なくとも1つの反応性基は、ハイパーメチラーゼ酵素を用いてRNAポリヌクレオチドに付加され得る。本発明の一実施形態において、RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基はクリック反応性基であるが、これは必須ではない。RNAポリヌクレオチドに付加される反応性基は、代替的に、チオールなどの任意の適切な反応性基であってもよい。少なくとも1つの反応基はまた、非RNAポリヌクレオチドの末端に結合される。好ましくは、少なくとも1つの反応性基は、非RNAポリヌクレオチドの3’末端に結合される。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはDNA鎖である。非RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基は、ハイパーメチラーゼ酵素を用いて付加され得る。本発明の一実施形態において、非RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基はクリック反応性基であるが、これは必須ではない。次に、RNAポリヌクレオチドおよび非RNAポリヌクレオチドのそれぞれにおける1つ以上の反応性基は、適切な条件下で接触させて、共有結合を形成させる。
【0198】
あるいは、非RNAポリヌクレオチドの鎖は、リガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、TaqDNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼ、9
oN DNAリガーゼ、T4ポリメラーゼI、T4ポリメラーゼ2、熱安定性5’App DNA/RNAリガーゼ、スプリントR、circリガーゼ、T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2を用いて、標的RNAポリヌクレオチドに直接ライゲーションされ得る。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはDNA鎖である。本発明の一実施形態において、1つ以上の酵素は、RNAにライゲーションされるべき非RNAポリヌクレオチドに予め結合させてもよい。非RNAポリヌクレオチド上に酵素を予め装填することは、試料調製プロセスをスピードアップさせ、使用されるチューブがより少なくなることを意味する。あるいは、RNAポリヌクレオチドにライゲーションされるべき非RNAポリヌクレオチドは、予め結合した酵素を含有せずおよび含まない。
【0199】
本発明の別の実施形態において、非RNAポリヌクレオチドは、RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズする、リーダー配列を有するDNAプライマーである。1つ以上の酵素は、RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズされるべきDNAプライマーに予め結合され得る。あるいは、RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズされるべきDNAプライマーは、予め結合した酵素を含有しないおよび含まない。DNAプライマーからのRNAポリヌクレオチドの逆転写は、使用される逆転写酵素に依存して、1〜3個のCの3’オーバーハングをもたらす。次に、DNAヘアピンは二本鎖DNA/RNAにライゲーションすることができる。ハイブリダイゼーションを可能にする条件は、当該技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: a laboratory manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press;およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Ausubel et al., Eds., Greene Publishing and Wiley-lnterscience, New York (1995))。ハイブリダイゼーションは、37℃で低ストリンジェンシー条件下で、例えば、30〜35%ホルムアミド、1MのNaClおよび1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝液の存在下で37℃にて行われ、続いて1×(0.1650MのNa
+)から2×(0.33MのNa
+)SSC(標準のクエン酸ナトリウム)における50℃での洗浄により行われ得る。ハイブリダイゼーションは、中程度のストリンジェンシー条件下で、例えば、40〜45%ホルムアミド、1MのNaClおよび1%SDSの緩衝液の存在下で37℃にて行われ、続いて0.5×(0.0825MのNa
+)から1×(0.1650MのNa
+)SSCにおける55℃での洗浄により行われ得る。ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェンシー条件下で、例えば、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDSの緩衝液の存在下で37℃にて行われ、続いて0.1×(0.0165MのNa
+)SSCで60℃での洗浄により行われ得る。特に、条件は、好ましくは、10mMのTris−HCl、50mMのNaCl、pH7中の10μMオリゴマーであり、98℃に加熱し、その後、18℃まで毎分2℃で冷却する。
【0200】
真核生物のRNAは、典型的には、ポリAテール、すなわち、連続したアデノシン一リン酸のストレッチを含む。ポリAテールは、典型的には、RNAの3’末端にある。このような実施形態において、プライマーは、標的RNAのポリAテールにハイブリダイズすることができる。プライマーは、好ましくはポリU領域、すなわち、ウラシルに基づくヌクレオチドのみを含有する領域を含む。ポリU領域は、UMPまたはdUMPを含有し得る。ポリU領域は、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個またはそれらを超えるなどの任意の長さであってもよい。あるいは、プライマーはポリT領域を含む。ポリT領域は、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個またはそれらを超えるなどの任意の長さであってもよい。真核生物のRNA鎖をDNA鎖に結合させる方法を
図1に示す。
【0201】
本発明の代替の態様において、非RNAポリヌクレオチドは、トポイソメラーゼベースの戦略(参照により本明細書に組み込まれるCheng and Shuman, 2000, Nucleic Acids Research, Vol. 28, No. 9 1893-1898)を用いて標的RNAポリヌクレオチドに結合させることができる。DNAトポイソメラーゼは、二重鎖DNAに結合し、特定の標的部位で一本鎖のホスホジエステル骨格を切断する。二重鎖DNAの他方の鎖は、対応する位置で配列中にニックまたは切断を含む。トポイソメラーゼがDNAの上側の鎖に結合し、切断すると、それはdsDNAに結合した状態となる。dsDNAに結合されるトポイソメラーゼは、次に、遊離5’ヒドロキシルを有するRNAとインキュベートした場合に、5’OH末端化されたRNA鎖にDNA鎖を転移して、タンデムDNA−RNAコポリマーを形成することができる。標的RNAは遊離5’ヒドロキシルを有しなければならない:真核生物のRNAは、遊離5’ヒドロキシルを有するRNAを生成するために脱カップリングされる必要があるが、マイクロRNAは遊離5’ヒドロキシル基を有する(
図6を参照されたい)。
【0202】
代替のトポイソメラーゼベースの戦略において、dsDNAは、RNAにハイブリダイズし、RNA結合を支援するために、DNAの一本鎖領域を用いてRNA鎖に結合する(参照により本明細書に組み込まれるSekiguchi et al., 1997, The Journal of Biological Chemistry, Vol 272, No. 25, 15721-15728)。トポイソメラーゼは、特定の標的配列でdsDNAに結合する。DNAの下側の鎖にはニックがない。トポイソメラーゼが結合すると、それはDNAの上側の鎖のみを切断し、dsDNA/ssDNAハイブリッドに結合した状態となる。次に、dsDNAに結合されるトポイソメラーゼは、遊離5’ヒドロキシルを有するRNAとともにインキュベートされ、RNAをdsDNAに接続させる。ssDNA領域は、相補性RNA配列をDNAへの結合点に結合させるのを支援する(
図7を参照されたい)。
【0203】
RNAポリヌクレオチドを非RNAポリヌクレオチドに結合させる別の方法は、逆配向に走る7−メチルグアノシンキャップの付加によって修飾された真核生物のRNAの5’末端を利用することを含む。したがって、真核生物のRNAの5’末端は、逆転されたグアニン塩基を含有するまたは含み、すなわち、それはRNA鎖の5’末端にあるが、個々の塩基は5’末端とは反対に3’末端を有しない。標的RNAは、それが反対方向に走るように逆塩基を有する領域も有するDNA(またはRNA)配列にライゲーションすることができる(
図12を参照されたい)。
【0204】
原核生物RNA
ポリAポリメラーゼ酵素を利用して、RNAポリヌクレオチドの3’末端にポリ(dA)テールを付加することができる。本発明の一実施形態において、非RNAポリヌクレオチドは、RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズするリーダー配列を有するDNAプライマーである。リーダー配列を有するDNAプライマーは、ポリ(dA)領域にハイブリダイズすることができる。1つ以上の酵素は、RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズされるべきDNAプライマーに予め結合されてもよい。あるいは、RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズされるべきDNAプライマーは、予め結合された酵素を含有しないおよび含まない。DNAプライマーからのRNAポリヌクレオチドの逆転写は、使用される逆転写酵素に依存して1〜3つCの3’オーバーハングをもたらす(スーパースクリプトII(MMLV)については3〜4つ)(p1192 Biotechniques Vol 29 No 6 (200を参照されたい)。次に、DNAヘアピンは、二本鎖DNA/RNAにライゲーションすることができる。
【0205】
本発明の代替の実施形態において、ポリ(dA)領域はRNAポリヌクレオチドに付加されず、原核生物のRNAポリヌクレオチドは反応ステップにおいて直接使用される。反応性基は、RNAポリヌクレオチドの5’または3’末端に付加され得る。好ましくは、少なくとも1つの反応性基は、RNAポリヌクレオチドの5’末端に付加される。RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基はクリック反応性基であってもよいが、これは必須ではない。RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基は、代替的には、チオールなどの任意の適切な反応性基であってもよい。また、少なくとも1つの反応基は、非RNAポリヌクレオチドの末端に結合される。好ましくは、少なくとも1つの反応性基は、非RNAポリヌクレオチドの3’末端に結合される。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはDNA鎖を含む。非RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基は、ハイパーメチラーゼ酵素を用いて付加され得る。本発明の一実施形態において、非RNAポリヌクレオチドに付加される少なくとも1つの反応性基はクリック反応性基であるが、これは必須ではない。次に、RNAおよび非RNAポリヌクレオチドのそれぞれにおける1つ以上の反応性基を適切な条件下で接触させて、共有結合を形成させる。
【0206】
本発明の代替の実施形態において、非RNAポリヌクレオチド鎖は、リガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、TaqDNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼ、9
oN DNAリガーゼ、T4ポリメラーゼI、T4ポリメラーゼ2、熱安定性5’App DNA/RNAリガーゼ、スプリントR、circリガーゼ、T4 RNAリガーゼ1およびT4 RNAリガーゼ2を用いて、標的RNAポリヌクレオチドに直接ライゲーションされ得る。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはDNA鎖を含む。本発明の一実施形態において、1つ以上の酵素は、RNAポリヌクレオチドにライゲーションされるべき非RNAポリヌクレオチドに予め結合させてもよい。あるいは、RNAポリヌクレオチドにライゲーションされるべき非RNAポリヌクレオチドは、予め結合された酵素を含有しないおよび含まない。原核生物のRNAポリヌクレオチドを非RNA(例えば、DNA)ポリヌクレオチドに結合させる方法を
図2に示す。
【0207】
本発明の代替の態様において、非RNAポリヌクレオチドは、トポイソメラーゼベースの戦略(参照により本明細書に組み込まれるCheng and Shuman, 2000, Nucleic Acids Research, Vol. 28, No. 9 1893-1898)を用いて標的RNAポリヌクレオチドに結合させることができる。DNAトポイソメラーゼは、二重鎖DNAに結合し、特定の標的部位で一本鎖のホスホジエステル骨格を切断する。二重鎖DNAの他方の鎖は、対応する位置で配列中にニックまたは切断を含む。トポイソメラーゼがDNAの上側の鎖に結合し、切断すると、それはdsDNAに結合した状態となる。dsDNAに結合されるトポイソメラーゼは、次に、遊離5’ヒドロキシルを有するRNAとインキュベートした場合に、5’OH末端化されたRNA鎖にDNA鎖を転移して、タンデムDNA−RNAコポリマーを形成することができる。標的RNAは遊離5’ヒドロキシルを有しなければならない。代替のトポイソメラーゼベースの戦略において、dsDNAは、RNAにハイブリダイズし、RNA結合を支援するために、DNAの一本鎖領域を用いてRNA鎖に結合する(参照により本明細書に組み込まれるSekiguchi et al., 1997, The Journal of Biological Chemistry, Vol 272, No. 25, 15721-15728)。トポイソメラーゼは、特定の標的配列でdsDNAに結合する。DNAの下側の鎖にはニックがない。トポイソメラーゼが結合すると、それはDNAの上側の鎖のみを切断し、dsDNA/ssDNAハイブリッドに結合した状態となる。次に、dsDNAに結合されるトポイソメラーゼは、遊離5’ヒドロキシルを有するRNAとともにインキュベートされ、RNAをdsDNAに接続させる。ssDNA領域は、相補性RNA配列をDNAへの結合点に結合させるのを支援する(
図7を参照されたい)。
【0208】
増幅なし
標的RNAポリヌクレオチドは、典型的には、本発明の方法において増幅されない。本方法は、典型的には、標的RNAの複数コピーを作製することを含まない。
【0209】
本方法は、好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写PCR(RT−PCR)を含まない。
【0210】
上記で検討したように、本発明の一実施形態において、RNAポリヌクレオチドは、DNAプライマーおよび逆転写酵素を用いて生成されたDNA相補体を含む。架橋部分を用いたRNA鎖とDNA鎖の連結は、2D読み取りを可能にする。
【0211】
本発明の別の実施形態において、ヘアピン形成オリゴヌクレオチドはそれ自体で、逆転写のためのプライマーとして使用され、RNA−cDNA構築物を生成し、二次元読み取り(すなわち、RNAおよびcDNA鎖)を可能にする。
【0212】
DNAヘリカーゼ(単数または複数)および分子ブレーキ(単数または複数)
DNAヘリカーゼは、細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を制御するために使用される。DNAヘリカーゼ酵素は、標的RNAポリヌクレオチドに結合し、細孔を通るその移動を制御することができる限り、酵素活性を示す必要はない。例えば、酵素は、その酵素活性を除去するために修飾されてもよく、または酵素として作用することを防止する条件下で使用されてもよい。
【0213】
ヘリカーゼは、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、例えば、TraIヘリカーゼまたはTrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼまたはDdaヘリカーゼあってもよく、またはそれ由来であってもよい。DNAヘリカーゼは、Hel308 Mbu(配列番号8)、Hel308 Csy(配列番号9)、Hel308 Tga(配列番号10)、Hel308 Mhu(配列番号11)、TraI Eco(配列番号12)、XPD Mbu(配列番号13)、Dda 1993(配列番号14)またはその改変体由来であってもよい。
【0214】
ヘリカーゼは、国際出願番号第PCT/GB2012/052579号(国際公開第2013/057495号パンフレットとして公開されている)、同第PCT/GB2012/053274号(同第2013/098562号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2012/053273号(同第2013/098561号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2013/051925号(同第2014/013260号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2013/051924号(同第2014/013259号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2013/051928号(同第2014/013262号パンフレットとして公開されている)および同第PCT/GB2014/052736号に開示されているDNAヘリカーゼ、修飾されたDNAヘリカーゼまたはDNAヘリカーゼ構築物のいずれかであり得る。
【0215】
ヘリカーゼは、細孔に関して2つの様式で作用することができる。第一に、本方法は、好ましくは、DNAヘリカーゼが、印加電圧に起因する場を有する細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を制御するように、DNAヘリカーゼを使用して実施される。この様式において、RNAポリヌクレオチドの5’末端は最初に細孔に捕捉され、酵素は、RNAポリヌクレオチドが、最終的に膜のトランス側まで移行するまで、場を有する細孔を通過するように、RNAポリヌクレオチドの細孔への移動を制御する。あるいは、本方法は、好ましくは、DNAヘリカーゼ酵素が、適用電圧に起因する場に逆らって、細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を制御するように実施される。この様式において、RNAポリヌクレオチドの3’末端は、最初に細孔内に捕捉され、酵素は、RNAポリヌクレオチドが、膜のシス側に戻って最終的には放出されるまで印加場に対して細孔から引き出されるように、細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0216】
DNAヘリカーゼは、好ましくは、配列番号15(Trwc Cba)に示される配列もしくはその改変体、配列番号8に示される配列(Hel308 Mbu)もしくはその改変体、または配列番号14に示される配列(Dda)もしくはその改変体を含む。改変体は、膜貫通細孔について以下に検討するやり方のいずれかにおいて、天然配列と異なってもよい。配列番号14の好ましい改変体は、(a)E94CおよびA360C、または(b)E94C、A360C、C109AおよびC136A、ならびに場合により(ΔM1)G1(すなわち、M1の欠失およびその後のG1の付加)を含む。
【0217】
任意の数のRNAが、本発明に従って使用されてもよい。例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれらを超えるヘリカーゼを使用することができる。いくつかの実施形態において、様々な数のヘリカーゼを使用することができる。本発明の一実施形態において、DNAヘリカーゼは、非RNAポリヌクレオチドに予め結合される。
【0218】
本発明の方法は、好ましくは、ポリヌクレオチドを2つ以上のヘリカーゼと接触させることを含む。2つ以上のヘリカーゼは、典型的には同じヘリカーゼである。2つ以上のヘリカーゼは異なるヘリカーゼであってもよい。
【0219】
2つ以上のヘリカーゼは、上記のヘリカーゼの任意の組み合わせであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、2つ以上のDdaヘリカーゼであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、1つ以上のDdaヘリカーゼおよび1つ以上のTrwCヘリカーゼであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、同じヘリカーゼの異なる改変体であってもよい。
【0220】
2つ以上のヘリカーゼは、好ましくは互いに結合される。2つ以上のヘリカーゼは、より好ましくは互いに共有結合される。ヘリカーゼは、任意の順番で、任意の方法を用いて結合させてもよい。本発明において使用するための好ましいヘリカーゼは、国際出願番号第PCT/GB2013/051924号(国際公開第2014/013259号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2013/051924号(同第2014/013259号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2013/051928号(同第2014/013262号パンフレットとして公開されている)および同第PCT/GB2014/052736号に記載されている。
【0221】
配列番号8、9、10、11、12、13、14または15の改変体は、配列番号8、9、10、11、12、13、14または15とは異なるアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持する酵素である。これは、当該技術分野にいて公知である任意の方法を用いて測定することができる。例えば、改変体は、ポリヌクレオチドと接触させることができ、ポリヌクレオチドに結合し、それに沿って移動するその能力を測定することができる。改変体は、ポリヌクレオチドの結合を促進し、ならびに/または高塩濃度および/もしくは室温でのその活性を促進する修飾を含んでもよい。改変体は、ポリヌクレオチドに結合する(すなわち、ポリヌクレオチド結合活性を保持する)が、ヘリカーゼとして機能しない(すなわち、移動を促進するために必要なすべての成分、例えば、ATPおよびMg
2+とともに提供される場合、ポリヌクレオチドに沿って移動しない)ように修飾される。このような修飾は、当該技術分野において公知である。例えば、ヘリカーゼにおけるMg
2+結合ドメインの修飾は、典型的には、ヘリカーゼとして機能しない改変体をもたらす。これらの種類の改変体は、分子ブレーキとして作用し得る(下記を参照されたい)。
【0222】
配列番号8、9、10、11、12、13、14または15のアミノ酸配列の全長にわたって、改変体は、好ましくは、アミノ酸類似性または同一性に基づいて、その配列と少なくとも50%相同である。より好ましくは、改変体ポリペプチドは、配列の全長で配列番号8、9、10、11、12、13、14または15のアミノ酸配列に対するアミノ酸類似性または同一性に基づいて、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%相同であり得、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であり得る。200個以上、例えば、230個、250個、270個、280個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個もしくは1000個またはそれらを超える連続したアミノ酸のストレッチに対して少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90%もしくは95%のアミノ酸類似性または同一性があり得る(「高い相同性(hard homology)」)。相同性は、上記されるように決定される。改変体は、上記の配列番号2および4を参照して、上記で検討したやり型のいずれかにおいて野生型配列と異なってもよい。酵素は、細孔に共有結合してもよい。任意の方法を用いて、酵素を細孔に共有結合させることができる。
【0223】
好ましい実施形態において、本方法は、
(a)非RNAポリヌクレオチドを含み、それへのDNAヘリカーゼ結合を増加させるように修飾されているRNAポリヌクレオチドを1つ以上のDNAヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキとともに用意するステップ;
(b)RNAポリヌクレオチドを膜貫通細孔に接触させ、1つ以上のDNAヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキが1つにまとまり、細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動をともに制御するように、細孔を横切って電位を印加するステップ;
(c)RNAポリヌクレオチドが細孔に対して移動する間、RNAポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す1つ以上の測定値を得、それによりRNAポリヌクレオチドを特徴付けるステップ
を含む。
【0224】
このタイプの方法は、英国特許出願第1406151.9号明細書に詳細に検討されている。好ましい分子ブレーキは、TrwC Cba−Q594A(突然変異Q594Aを有する配列番号15)である。この改変体は、ヘリカーゼとして機能しない(すなわち、ポリヌクレオチドに結合するが、移動を促進するために必要なすべての成分、例えば、ATPおよびMg
2+とともに提供される場合、それらに沿って移動しない)。
【0225】
1つ以上のヘリカーゼは、上記で検討したもののいずれかであり得る。1つ以上の分子ブレーキは、RNAポリヌクレオチドに結合し、細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を遅らせる任意の化合物または分子であってもよい。1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、RNAポリヌクレオチドに結合する1つ以上の化合物を含む。1つ以上の化合物は、好ましくは1つ以上の大環状化合物である。適切な大環状化合物には、限定されないが、シクロデキストリン、カリックスアレーン、環状ペプチド、クラウンエーテル、ククルビツリル、ピララレン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせが含まれる。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev, A. V., and Schneider, H-J. (1994) J. Am. Chem. Soc. 116, 6081-6088に開示されているもののいずれかであり得る。この薬剤は、より好ましくは、ヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキストリン(am
7−βCD)、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン(am
1−βCD)またはヘプタキス−(6−デオキシ−6−グアニジノ)−シクロデキストリン(gu
7−βCD)である。
【0226】
1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、1つ以上の一本鎖結合タンパク質(SSB)ではない。1つ以上の分子ブレーキは、より好ましくは、正味の負電荷を有さないカルボキシ末端(C末端)領域を含む一本鎖結合タンパク質(SSB)ではなく、および(ii)C末端領域の正味の負電荷を減少させる、C末端領域の1つ以上の修飾を含む修飾されたSSBではない。1つ以上の分子ブレーキは、最も好ましくは、国際出願番号第PCT/GB2013/051924号(国際公開第2014/013259号パンフレットとして公開されている)に開示されたSSBのいずれでもない。
【0227】
1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、1つ以上のポリヌクレオチド結合タンパク質である。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、RNAポリヌクレオチドに結合し、細孔を通るその動きを制御することができる任意のタンパク質であってもよい。タンパク質がポリヌクレオチドに結合するか否かを決定することは、当該技術分野においては造作ない。このタンパク質は、典型的には、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性と相互作用し、修飾する。このタンパク質は、ポリヌクレオチドを切断して、ジヌクレオチドまたはトリヌクレオチドなどのヌクレオチドの個々のヌクレオチドまたはより短い鎖を形成することによってポリヌクレオチドを修飾することができる。部分は、ポリヌクレオチドを配向させるまたは特定の位置に移動させ、すなわちその移動を制御することによって、ポリヌクレオチドを修飾することができる。
【0228】
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチド処理酵素由来である。1つ以上の分子ブレーキは、上記で検討したポリヌクレオチド処理酵素のいずれかに由来してもよい。分子ブレーキとして作用するPhi29ポリメラーゼ(配列番号8)の修飾バージョンは、米国特許第5,576,204号明細書に開示されている。1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、ヘリカーゼに由来する。
【0229】
ヘリカーゼ由来の任意の数の分子ブレーキを使用することができる。例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれらを超えるヘリカーゼを分子ブレーキとして使用することができる。2つ以上のヘリカーゼが分子ブレーキとして使用される場合、2つ以上のヘリカーゼは、典型的には同じヘリカーゼである。2つ以上のヘリカーゼは、異なるヘリカーゼであってもよい。
【0230】
2つ以上のヘリカーゼは、上述したヘリカーゼの任意の組み合わせであり得る。2つ以上のヘリカーゼは、2つ以上のDdaヘリカーゼであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、1つ以上のDdaヘリカーゼおよび1つ以上のTrwCヘリカーゼであり得る。2つ以上のヘリカーゼは、同じヘリカーゼの異なる改変体であってもよい。
【0231】
2つ以上のヘリカーゼは、好ましくは互いに結合される。2つ以上のヘリカーゼは、より好ましくは互いに共有結合される。ヘリカーゼは、任意の順番で、任意の方法を用いて結合させてもよい。ヘリカーゼ由来の1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、少なくとも1つの立体配座状態で、ポリヌクレオチドがヘリカーゼから離れることができる、ポリヌクレオチド結合ドメインの開口のサイズを減少させるように修飾される。これは、国際公開第2014/013260号パンフレットに開示されている。
【0232】
本発明において使用するための好ましいヘリカーゼ構築物は、国際出願番号第PCT/GB2013/051925号(国際公開第2014/013260号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2013/051924号(同第2014/013259号パンフレットとして公開されている)および同第PCT/GB2013/051928号(同第2014/013262号パンフレットとして公開されている);および2013年10月18日に出願された英国特許出願第1318464.3号明細書に記載されている。
【0233】
1つ以上のヘリカーゼが活性様式で使用される場合(すなわち、1つ以上のヘリカーゼが、移動を促進するために必要なすべての成分、例えば、ATPおよびMg
2+とともに提供される場合)、1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、(a)不活性様式で使用され(すなわち、移動を促進するために必要なすべての成分の不存在下で使用されるまたは能動移動をすることができない)、(b)1つ以上の分子ブレーキが1つ以上のヘリカーゼに対して反対方向に移動する活性様式で使用され、または(c)1つ以上の分子ブレーキが1つ以上のヘリカーゼと同じ方向に移動し、1つ以上のヘリカーゼよりもゆっくりと移動する活性様式で使用される。
【0234】
1つ以上のヘリカーゼが不活性様式で使用される場合(すなわち、1つ以上のヘリカーゼが、移動を促進するために必要なすべての成分、例えば、ATPおよびMg
2+とともに提供されないまたは能動移動をすることができない場合)、1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、(a)不活性様式で使用され(すなわち、移動を促進するために必要なすべての成分の不存在下で使用されるまたは能動移動をすることができない)、または(b)1つ以上の分子ブレーキが、ポリヌクレオチドが細孔に通るのと同じ方向でポリヌクレオチドに沿って移動する活性様式で使用される。
【0235】
1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキは、それらが一緒にされ、両方が細孔を通るRNAの移動を制御するように、任意の位置でRNAに結合されてもよい。1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキは、少なくとも1ヌクレオチド離れ、例えば、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも5000ヌクレオチド、少なくとも10,000以上、少なくとも50,000ヌクレオチドまたはそれを超えて離れている。この方法が、一方の末端にYアダプターおよび他端にヘアピンループアダプターを備えた二本鎖RNAポリヌクレオチドを特徴付けることに関する場合、1つ以上のヘリカーゼは、好ましくは、Yアダプターに結合され、1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、ヘアピンループアダプターに結合される。この実施形態において、1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、それらがRNAポリヌクレオチドに結合するが、ヘリカーゼとして機能しないように修飾される1つ以上のヘリカーゼである。Yアダプターに結合される1つ以上のDNAヘリカーゼは、以下により詳細に検討するように、好ましくはスペーサーで失速される。ヘアピンループアダプターに結合された1つ以上の分子ブレーキは、好ましくはスペーサーで失速されない。1つ以上のDNAヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、1つ以上のDNAヘリカーゼがヘアピンループに到達するときに一緒にされる。1つ以上のDNAヘリカーゼは、Yアダプターがポリヌクレオチドに結合される前にまたはYアダプターがポリヌクレオチドに結合された後に、Yアダプターに結合され得る。1つ以上の分子ブレーキは、ヘアピンループアダプターがポリヌクレオチドに結合される前に、またはヘアピンループアダプターがポリヌクレオチドに結合された後に、ヘアピンループアダプターに結合されてもよい。
【0236】
1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキは、好ましくは、互いに結合されない。1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキは、より好ましくは、互いに共有結合されない。1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキは、国際出願番号第PCT/GB2013/051925号(国際公開第2014/013260号パンフレットとして公開されている);同第PCT/GB2013/051924号(同第2014/013259号パンフレットとして公開されている)および同第PCT/GB2013/051928号(同第2014/013262号パンフレットとして公開されている);および2013年10月18日に出願された英国特許出願第1318464.3号明細書に記載され、好ましくは結合されない。
【0237】
スペーサー(単数または複数)
1つ以上のスペーサーを本発明の構築物に含めることができる。RNAポリヌクレオチドの一部が細孔に入り、印加電位から生じる場に沿って細孔を通り移動する間、RNAポリヌクレオチドが細孔を通り移動するにつれ、1つ以上のヘリカーゼは細孔により、スペーサーを通過するように移動される。これは、RNAポリヌクレオチド(1つ以上のスペーサーを含む)が細孔を通って移動し、1つ以上のヘリカーゼが細孔の上部に留まるためである。1つ以上のDNAヘリカーゼは、国際出願第PCT/GB2014/050175号(国際公開第2014/135838号パンフレットとして公開されている)に検討されているように、1つ以上のスペーサーで失速することがある。その国際出願に開示されている1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上のスペーサーの任意の構成を本発明に使用することができる。
【0238】
1つ以上のスペーサーは、標的RNAポリヌクレオチドの一部であり得、例えば、それ/それらはポリヌクレオチド配列に干渉する。1つ以上のスペーサーは、好ましくは、標的RNAにハイブリダイズした、スピードバンプなどの1つ以上の遮断分子の一部ではない。1つ以上のスペーサーは、非RNAポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチド)の一部であり得、例えば、それ/それらはポリヌクレオチド配列に干渉する。1つ以上のスペーサーは、RNAポリヌクレオチドの一部であってもよい。1つ以上のスペーサーは、標的RNAポリヌクレオチドおよび/または非RNAポリヌクレオチドに結合させ得る。1つ以上のスペーサーを末端に配置してもよく、あるいはRNAポリヌクレオチドもしくは非RNAポリヌクレオチドおよび/または1つ以上のスペーサーをRNAポリヌクレオチドまたは非RNAポリヌクレオチド内に配置してもよい。
【0239】
1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれらを超えるスペーサーなどの任意の数のスペーサーが標的RNAポリヌクレオチドまたは非RNAポリヌクレオチドに存在してもよい。好ましくは、本発明の構築物に2つ、4つまたは6つのスペーサーが存在する。リーダー配列のスペーサーおよびヘアピンループのスペーサーなどの構築物の異なる領域に1つ以上のスペーサーが存在してもよい。
【0240】
1つ以上のスペーサーの各々は、1つ以上のヘリカーゼが能動的な様式でさえ克服することができないエネルギー障壁を提供する。1つ以上のスペーサーは、ヘリカーゼのけん引を低下させることによって(例えば、標的RNAポリヌクレオチドもしくは非RNAポリヌクレオチド中のヌクレオチドから塩基を除去することによって)、または1つ以上のヘリカーゼの移動を物理的に遮断することによって(例えば、嵩高い化学基を使用して)、1つ以上のヘリカーゼを失速させてもよい。
【0241】
1つ以上のスペーサーは、1つ以上のヘリカーゼを失速させる任意の分子または分子の組み合わせを含み得る。1つ以上のスペーサーは、1つ以上のヘリカーゼが標的RNAポリヌクレオチドに沿って移動することを防止する任意の分子または分子の組み合わせを含み得る。1つ以上のヘリカーゼが、膜貫通細孔および印加電位の不存在下、1つ以上のスペーサーで失速されるか否かを決定することは直接的である。例えば、スペーサーを通過して移動するヘリカーゼの能力は、PAGEによって測定することができる。
【0242】
1つ以上のスペーサーは、典型的には、ポリマーなどの直線状分子を含む。1つ以上のスペーサーは、典型的には、標的RNAポリヌクレオチドまたは非RNAポリヌクレオチドとは異なる構造を有する。例えば、1つ以上のスペーサーは、典型的にRNAではない。特に、1つ以上のスペーサーは、好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド側鎖を有する合成ポリマーを含む。1つ以上のスペーサーは、ポリヌクレオチドと反対方向に1つ以上のヌクレオチドを含み得る。例えば、ポリヌクレオチドが5’から3’方向である場合、1つ以上のスペーサーは、3’から5’方向に1つ以上のヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドは、上記で検討したもののいずれかであってもよい。
【0243】
1つ以上のスペーサーは、好ましくは、1つ以上のニトロインドールを含み、例えば、1つ以上の5−ニトロインドール、1つ以上のイノシン、1つ以上のアクリジン、1つ以上の2−アミノプリン、1つ以上の2,6−ジアミノプリン、1つ以上の5−ブロモ−デオキシウリジン、1つ以上の逆方向チミジン(逆方向dT)、1つ以上の逆方向ジデオキシ−チミジン(ddT)、1つ以上のジデオキシ−シチジン(ddC)、1つ以上の5−メチルシチジン、1つ以上の5−ヒドロキシメチルシチジン、1つ以上の2’−O−メチルRNA塩基、1つ以上のイソ−デオキシシチジン(Iso−dC)、1つ以上のイソ−デオキシグアノシン(Iso−dG)、1つ以上のiSpC3基(すなわち、糖および塩基を欠損しているヌクレオチド)、1つ以上の光切断可能な(PC)基、1つ以上のヘキサンジオール基、1つ以上のスペーサー9(iSp9)基、1つ以上のスペーサー18(iSp18)基、ポリマーまたは1つ以上のチオール連結が挙げられる。1つ以上のスペーサーは、これらの基のいずれかの組み合わせを含んでもよい。これらの基の多くは、IDT(登録商標)(Integrated DNA Technologies(登録商標))から市販されている。
【0244】
1つ以上のスペーサーは、任意の数のこれらの基を含有することができる。例えば、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、5−ブロモ−デオキシウリジン、逆方向dT、ddT、ddC、5−メチルシチジン、5−ヒドロキシメチルシチジン、2’−O−メチルRNA塩基、イソ−dC、イソ−dGs、iSpC3基、PC基、ヘキサンジオール基およびチオール連結について、1つ以上のスペーサーは、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれを超えて含む。1つ以上のスペーサーは、好ましくは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはそれらを超えるiSp9基を含む。1つ以上のスペーサーは、好ましくは、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つまたはそれらを超えるiSp18基を含む。最も好ましいスペーサーは、4つのiSpC3基である。
【0245】
ポリマーは、好ましくはポリペプチドまたはポリエチレングリコール(PEG)である。ポリペプチドは、好ましくは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれらを超えるアミノ酸を含む。PEGは、好ましくは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれらを超えるモノマー単位を含む。
【0246】
1つ以上のスペーサーは、好ましくは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれらを超える無塩基ヌクレオチドなどの1つ以上の無塩基ヌクレオチド(すなわち、核酸塩基を欠くヌクレオチド)を含む。核酸塩基は、無塩基ヌクレオチド中の−H(idSp)または−OHによって置換することができる。無塩基スペーサーは、核酸塩基を1つ以上の隣接するヌクレオチドから除去することによって標的ポリヌクレオチドに挿入することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、3−メチルアデニン、7−メチルグアニン、1,N6−エテノアデニンイノシンまたはヒポキサンチンを含むように修飾することができ、核酸塩基は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(hAAG)を用いてこれらのヌクレオチドから除去することができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、ウラシルを含むように修飾することができ、ヌクレオ塩基は、ウラシル−DNAグリコシラーゼ(UDG)で除去することができる。一実施形態において、1つ以上のスペーサーは、無塩基ヌクレオチドを含まない。
【0247】
1つ以上のDNAヘリカーゼは、各直鎖分子スペーサーによって(すなわち、その前に)、または各直鎖分子スペーサー上で失速され得る。直線状分子スペーサーを使用する場合、1つ以上のヘリカーゼを通過して移動されるべき各スペーサーの末端に隣接するポリヌクレオチドの二本鎖領域を有する構築物が、好ましくは提供される。二本鎖領域は、典型的には、隣接するスペーサー上の1つ以上のヘリカーゼを失速させるのに役立つ。この方法が約100mM以下の塩濃度で実施される場合、二本鎖領域(単数または複数)の存在が特に好ましい。各二本鎖領域は、典型的に、長さが少なくとも10ヌクレオチド、例えばm少なくとも12ヌクレオチドである。本発明に用いられる標的ポリヌクレオチドが一本鎖である場合、より短いポリヌクレオチドをスペーサーに隣接する領域にハイブリダイズさせることにより二本鎖領域を形成することができる。より短いポリヌクレオチドは、典型的には、標的ポリヌクレオチドと同じヌクレオチドから形成されるが、異なるヌクレオチドから形成されてもよい。例えば、より短いポリヌクレオチドは、LNAから形成され得る。
【0248】
直線状分子スペーサーが使用される場合、好ましくは、1つ以上のヘリカーゼが通過して移動されるべき末端と反対側の各スペーサーの末端で遮断分子を有する構築物が提供される。これは、1つ以上のヘリカーゼが各スペーサー上で失速した状態であることを確実にするのに役立ち得る。また、1つ以上のヘリカーゼが溶液中に分散する場合において、それ/それらを構築物上に保持するのに役立つ。遮断分子は、1つ以上のヘリカーゼを物理的に失速させる、以下に検討する化学基のいずれかであってもよい。遮断分子は、ポリヌクレオチドの二本鎖領域であってもよい。
【0249】
1つ以上のスペーサーは、好ましくは、1つ以上のヘリカーゼを物理的に失速させる1つ以上の化学基を含む。1つ以上の化学基は、好ましくは、1つ以上のペンダント化学基である。1つ以上の化学基は、標的ポリヌクレオチド中の1つ以上の核酸塩基に結合され得る。1つ以上の化学基は、標的ポリヌクレオチド骨格に結合され得る。2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれらを超えるなどの任意の数のこれらの化学基が存在してもよい。適切な基には、限定されないが、フルオロフォア、ストレプトアビジンおよび/またはビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニンおよび/または抗ジゴキシゲニン、ならびにジベンジルシクロオクチン基が含まれる。
【0250】
標的ポリヌクレオチド中の異なるスペーサーは、異なる失速分子を含み得る。例えば、1つのスペーサーは、上記で検討した直線状分子の1つを含むことができ、別のスペーサーは、1つ以上のヘリカーゼを物理的に失速させる1つ以上の化学基を含むことができる。スペーサーは、上記で検討した直線状分子のいずれか、ならびに物理的に1つ以上のヘリカーゼを失速させる1つ以上の化学基、例えば、1つ以上の脱塩基剤およびフルオロフォアを含んでもよい。
【0251】
適切なスペーサーは、標的ポリヌクレオチドのタイプ、および本発明の方法が実施される条件に応じて設計することができる。ほとんどのヘリカーゼはDNAに結合し、それに沿って移動するため、DNAでないいずれのものを使って失速させてもよい。適切な分子は、上記で検討されている。
【0252】
本発明の方法は、好ましくは、遊離ヌクレオチドの存在下および/またはヘリカーゼ補因子の存在下で実施される。これについては以下に詳細に検討する。膜貫通細孔および印加電位がない場合、1つ以上のスペーサーは、好ましくは、遊離ヌクレオチドおよび/またはヘリカーゼ補因子の存在下で、1つ以上のヘリカーゼを失速させることができる。
【0253】
本発明の方法が、以下に検討するように遊離ヌクレオチドおよびヘリカーゼ補因子の存在下で(より多くのヘリカーゼのうちの1つが活性様式であるように)実施される場合、1つ以上のより長いスペーサーは、典型的には、1つ以上のヘリカーゼが膜貫通細孔と接触して、電位が印加される前に、標的ポリヌクレオチド上で失速されることを確認するために使用される。1つ以上のより短いスペーサーは、遊離ヌクレオチドおよびヘリカーゼ補因子の非存在下で(1つ以上のヘリカーゼが不活性様式であるように)使用することができる。
【0254】
また、塩濃度は、1つ以上のスペーサーが1つ以上のヘリカーゼを失速させる能力に影響を及ぼす。膜貫通細孔および印加電位がない場合、1つ以上のスペーサーは、好ましくは、約100mM以下の塩濃度で1つ以上のヘリカーゼを失速させることができる。本発明の方法に使用される塩濃度が高いほど、典型的に使用される1つ以上のスペーサーは短くなり、その逆も同様である。
【0255】
特徴の好ましい組み合わせを以下の表1に示す。
【0257】
本方法は、スペーサーを通過して2つ以上のヘリカーゼを移動させることに関するものであってもよい。このような場合、スペーサーの長さは、典型的には、細孔および適用電位の不存在下で、スペーサーを通過して、後続のヘリカーゼが先頭のヘリカーゼを押すことを防止するために増加される。本方法が1つ以上のスペーサーを通過して2つ以上のヘリカーゼを移動させることに関するものである場合、上記で検討されたスペーサーの長さは、少なくとも1.5倍、例えば、2倍、2.5倍または3倍に増やすことができる。例えば、本方法が1つ以上のスペーサーを通過して2つ以上のヘリカーゼを移動させることに関するものである場合、上記の表4の第3列にあるスペーサーの長さは、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍に増やすことができる。
【0258】
膜貫通細孔
膜貫通細孔は、ある程度まで膜を横切る構造である。それは、印加電位によって駆動された水和イオンが膜を横切ってまたは膜内に流れることを可能にする。膜貫通細孔は、典型的には、膜全体を横切り、そのため、水和イオンが膜の一方側から膜の他方側に流れることができる。しかしながら、膜貫通細孔は膜を交差する必要はない。それは一方の端で閉じていてもよい。例えば、細孔は、水和イオンが膜に沿って流入するまたは膜内流入する膜のウェル、ギャップ、チャネル、トレンチまたはスリットであってもよい。
【0259】
任意の膜貫通細孔を本発明に使用することができる。細孔は、生物学的または人工的であってもよい。適切な細孔としては、限定されないが、タンパク質細孔、ポリヌクレオチド細孔および固体細孔が挙げられる。細孔は、DNA折り紙細孔であってもよい(Langecker et al., Science, 2012; 338: 932-936)。
【0260】
膜貫通細孔は、好ましくは膜貫通タンパク質細孔である。膜貫通タンパク質細孔は、分析物などの水和イオンが膜の一方側から膜の他方側に流れることを可能にするポリペプチドまたはポリペプチドの集合体である。本発明において、膜貫通タンパク質細孔は、印加電位によって、水和イオンを膜の一方側から他方側に駆動されることを可能にする細孔を形成することができる。膜貫通タンパク質細孔は、好ましくは、ヌクレオチドなどの分析物が脂質二重層などの膜の一方側から他方側に流れることを可能にする。膜貫通タンパク質細孔は、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドまたは核酸が細孔を通り移動することを可能にする。
【0261】
膜貫通タンパク質細孔は、モノマーまたはオリゴマーであってもよい。細孔は、好ましくは、6、7、8または9サブユニットなどのいくつかの反復サブユニットで構成されている。細孔は、好ましくは、六量体、七重体、八量体または九量体の細孔である。
【0262】
膜貫通タンパク質細孔は、典型的には、イオンが流れることができるバレルまたはチャネルを含む。細孔のサブユニットは、典型的には、中心軸を取り囲み、膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通α−ヘリックスバンドルもしくはチャネルに鎖を与える。
【0263】
膜貫通タンパク質細孔のバレルまたはチャネルは、典型的には、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸のような分析物との相互作用を促進するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、好ましくは、バレルまたはチャネルの狭窄部の近くに位置する。膜貫通タンパク質細孔は、典型的には、アルギニン、リシンもしくはヒスチジンなどの1つ以上の正に荷電したアミノ酸、またはチロシンもしくはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、典型的には、細孔とヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸の間の相互作用を促進する。
【0264】
本発明に従って使用される膜貫通タンパク質細孔は、βバレル細孔またはα−ヘリックスバンドル細孔に由来し得る。βバレル細孔は、β鎖から形成されるバレルまたはチャンネルを含む。適切なβバレル細孔には、限定されないが、α−ヘモリシンなどのβ−毒素、炭疽菌毒素およびロイコシジン、ならびにマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)ポリン(Msp)、例えば、MspA、MspB、MspCもしくはMspD、CsgG、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびナイセリアオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)などの細菌の外膜タンパク質/ポリンが含まれる。α−ヘリックスバンドル細孔は、α−ヘリックスから形成されるバレルまたはチャンネルを含む。適切なα−ヘリックスバンドル細孔には、限定されないが、WZAおよびClyA毒素などの内膜タンパク質およびα外膜タンパク質が含まれる。膜貫通細孔は、Mspまたはα−ヘモリシン(α−HL)に由来し得る。
【0265】
膜貫通タンパク質細孔は、好ましくはMspに由来し、好ましくはMspAに由来する。このような細孔は、オリゴマーであり、典型的には、Mspに由来する7個、8個、9個または10個のモノマーを含む。細孔は、同一のモノマーを含むMspに由来するホモオリゴマー細孔であり得る。あるいは、細孔は、他と異なる少なくとも1つのモノマーを含むMspに由来するヘテロオリゴマー細孔であり得る。好ましくは、細孔は、MspAまたはその類似体もしくはパラログに由来する。
【0266】
Mspに由来するモノマーは、配列番号2またはその改変体に示される配列を含む。配列番号2は、MspAモノマーのMS−(B1)8変異体である。それは、以下の突然変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139Kを含む。配列番号2の改変体は、配列番号2と異なるアミノ酸配列を有し、細孔を形成するその能力を保持しているポリペプチドである。細孔を形成する改変体の能力は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いてアッセイすることができる。例えば、改変体を他の適切なサブユニットとともに両親媒性層に挿入することができ、オリゴマー化して細孔を形成するその能力を測定することができる。サブユニットを両親媒性層などの膜に挿入する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、サブユニットは、脂質二重層に拡散し、結合により脂質二重層に挿入され、機能状態に集合するように、脂質二重層を含有する溶液中に精製された形態で懸濁させることができる。あるいは、サブユニットは、M.A. Holden, H. Bayley. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 6502-6503および国際出願第PCT/GB2006/001057号(国際公開第2006/100484号パンフレットとして公開されている)に記載されている「ピックアンドプレイス」法を用いて膜に直接挿入することができる。
【0267】
配列番号2のアミノ酸配列の全長にわたって、改変体は、好ましくは、アミノ酸の類似性または同一性に基づいて、その配列と少なくとも50%相同である。より好ましくは、改変体は、全配列にわたって配列番号2のアミノ酸配列とアミノ酸の類似性または同一性に基づいて、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であり得る。一続きの100個以上、例えば、125個、150個、175個もしくは200個またはそれらを超える連続したアミノ酸にわたって少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸の類似性または同一性(「高い相同性」)が存在し得る。
【0268】
当該技術分野における標準的な方法を用いて、相同性を決定することができる。例えば、UWGCGパッケージは、例えば、そのデフォルト設定で用いられる、相同性を計算するために用いることができるBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S.F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されるように、相同性を計算するためにまたは配列を整列させるために(等価残基または対応する配列を同定することなど(典型的には、それらのデフォルト設定で))用いることができる。BLAST解析を実施するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に入手できる。
【0269】
類似性は、ペアワイズ同一性を用いて、またはBLOSUM62などのスコアリングマトリックスを適用し、同等の同一性に変換することによって測定することができる。それらは進化した変化というよりはむしろ機能的なものであるため、相同性を決定する場合に、意図的に突然変異させた位置がマスクされる。類似性は、タンパク質配列の包括的データベース上の、例えばPSIBLASTを用いた位置特異的スコアリングマトリックスの適用によってより感度良く決定され得る。進化的時間尺度(例えば、電荷)にわたる置換の頻度というよりはむしろ、アミノ酸の化学−物理的特性を反映する異なるスコアリングマトリックスを使用することができる。
【0270】
配列番号2は、MspAモノマーのMS−(B1)8変異体である。改変体は、MspAと比較してMspB、CまたはDモノマーにおける突然変異のいずれかを含み得る。MspB、CまたはDの成熟形態は、配列番号5〜7に示される。特に、改変体は、MspBに存在する以下の置換:A138Pの置換を含み得る。改変体は、MspCに存在する以下の置換:A96G、N102EおよびA138Pの置換の1つ以上を含み得る。改変体は、MspDに存在する以下の変異:G1、L2V、E5Q、L8V、D13G、W21A、D22E、K47T、I49H、I68V、D91G、A96Q、N102D、S103T、V104I、S136KおよびG141Aの欠失の1つ以上を含み得る。改変体は、MspB、CまたはDの変異および置換の1つ以上の組合せを含み得る。改変体は、好ましくは、変異L88Nを含む。配列番号2の改変体は、MS−(B1)8の変異のすべてに加えて変異L88Nを有し、それはMS−(B2)8と呼ばれる。本発明において使用される細孔は、好ましくは、MS−(B2)8である。さらに好ましい改変体は、変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを含む。配列番号2の改変体は、MS−(B1)8のすべての変異に加えて変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有し、MS−(B2C)8と呼ばれる。本発明において使用される細孔は、好ましくはMS−(B2)8またはMS−(B2C)8である。
【0271】
Msp由来のモノマーは、当該技術分野において公知である標準的な方法を用いて生成することができる。Msp由来のモノマーは、合成的にまたは組換え手段によって作製されてもよい。例えば、細孔は、インビトロ翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。細孔を生成するのに適した方法は、国際出願第PCT/GB09/001690号(国際公開第2010/004273号パンフレットとして公開されている)、同第PCT/GB09/001679号(同第2010/004265号パンフレットとして公開されている)または同第PCT/GB10/000133号(同第2010/086603号パンフレット)において検討されている。細孔を膜に挿入する方法もまたその中で検討されている。
【0272】
膜貫通タンパク質細孔はまた、好ましくは、α−ヘモリジン(α−HL)由来である。野生型α−HL細孔は、7個の同一モノマーまたはサブユニットから形成される(すなわち七量体である)。α−ヘモリジン−NNの1個のモノマーまたはサブユニットの配列は配列番号4に示されている。膜貫通タンパク質細孔は、好ましくは、配列番号4に示される配列またはその改変体をそれぞれ含む7個のモノマーを含む。配列番号4のアミノ酸1、7〜21、31〜34、45〜51、63〜66、72、92〜97、104〜111、124〜136、149〜153、160〜164、173〜206、210〜213、217、218、223〜228、236〜242、262〜265、272〜274、287〜290および294は、ループ領域を形成する。配列番号4の残基113および147は、α−HLのバレルまたはチャネルの狭窄の一部を形成する。
【0273】
このような実施形態において、配列番号4に示される配列またはその改変体をそれぞれ含む7個のタンパク質またはモノマーを含む細孔は、好ましくは、本発明の方法において用いられる。7個のタンパク質は、同一であってもよく(ホモ七量体)または異なってもよい(ヘテロ七量体)。
【0274】
改変体は、ヘリカーゼまたは構築物への共有結合または相互作用を促進する修飾を含み得る。改変体は、好ましくは、ヘリカーゼまたは構築物への結合を促進する1つ以上の反応性システイン残基を含む。例えば、改変体は、配列番号4の位置8、9、17、18、19、44、45、50、51、237、239および287ならびに/またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端の1つ以上でシステインを含み得る。好ましい改変体は、配列番号4の位置8、9、17、237、239および287の残基のシステインによる置換を含む(A8C、T9C、N17C、K237C、S239CまたはE287C)。改変体は、好ましくは、国際出願第PCT/GB09/001690号(国際公開第2010/004273号パンフレットとして公開されている)、同第PCT/GB09/001679号(同第2010/004265号パンフレットとして公開されている)、または同第PCT/GB10/000133号(同第2010/086603号パンフレットとして公開されている)に記載されている改変体のいずれか1つである。
【0275】
改変体はまた、ヌクレオチドとの任意の相互作用を促進する修飾を含み得る。
【0276】
改変体は、生物、例えば、細菌ブドウ球菌(Staphylococcus)によって天然で発現される天然に存在する改変体であってよい。あるいは、改変体は、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌によってインビトロでまたは組換え的に発現されてもよい。改変体はまた、組換え技術によって生成される天然に存在しない改変体を含む。配列番号4のアミノ酸配列の全長にわたって、改変体は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも50%相同である。より好ましくは、改変体ポリペプチドは、配列全体にわたって配列番号4のアミノ酸配列に対するアミノ酸同一性に基づいて、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であってもよい。少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が200個以上の、例えば230個、250個、270個もしくは280個またはそれらを超える、一連の連続したアミノ酸にわたって存在する場合がある(「高い相同性」)。相同性は上記で検討した通りに決定され得る。
【0277】
アミノ酸置換は、上記で考察したものに加えて、配列番号4のアミノ酸配列に作出され得、例えば、最大1、2、3、4、5、10、20または30置換である。保存的置換が作出されてもよい。
【0278】
配列番号4のアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸残基は、上述したポリペプチドから追加的に欠失され得る。最大1、2、3、4、5、10、20または30残基またはそれらを超える残基が欠失され得る。
【0279】
改変体は、配列番号4の断片を含み得る。このような断片は細孔形成活性を保持する。断片は、長さが少なくとも50、100、200または250アミノ酸であってよい。断片は、好ましくは、配列番号4の細孔形成ドメインを好ましくは含む。断片は、典型的には、配列番号4の残基119、121、135、113および139を含む。
【0280】
1つ以上のアミノ酸は、上述したポリペプチドに代替的にまたは追加的に付加され得る。伸長は、配列番号4のアミノ酸配列またはその改変体もしくは断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に与えることができる。伸長は極めて短くてもよく、例えば、長さが1〜10アミノ酸であってもよい。あるいは、伸長はより長くてもよく、例えば、最大50または100アミノ酸であってもよい。担体タンパク質は、細孔または改変体に融合されてもよい。
【0281】
上記で検討した通り、配列番号4の改変体は、配列番号4のものから変更され、細孔を形成するその能力を保持しているアミノ酸配列を有するサブユニットである。改変体は、典型的には、細孔形成に関与する配列番号4の領域を含有する。β−バレルを含有するα−HLの細孔形成能力は、各サブユニットのβシートによって与えられる。配列番号4の改変体は、典型的には、β鎖を形成する配列番号4の領域を含む。β鎖を形成する配列番号4のアミノ酸は、上記で検討されている。1つ以上の修飾は、得られる改変体が細孔を形成する能力を保持する限り、β鎖を形成する配列番号4の領域に作出され得る。配列番号4のβ鎖領域に作出され得る特定の修飾は、上記で検討されている。
【0282】
配列番号4の改変体は、好ましくは、置換、付加または欠失などの1つ以上の修飾をα−ヘリックスおよび/またはループ領域内に含む。α−ヘリックスおよびループを形成するアミノ酸は、上記で検討されている。
【0283】
改変体は、上記で検討した通り、その同定または精製を支援するように修飾されてもよい。
【0284】
α−HL由来の細孔は、Msp由来の細孔に関連して上記で検討した通りに作出され得る。
【0285】
膜
任意の膜が本発明に従って用いられ得る。好適な膜は、当該技術分野において周知である。膜は、好ましくは両親媒性層である。両親媒性層は、少なくとも1つの親水性部分と少なくとも1つの親油性部分または疎水性部分の両方を有する、リン脂質などの両親媒性分子から形成される層である。両親媒性分子は、合成または天然に存在するものであってよい。天然に存在しない両親媒性物質、および単層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野において公知であり、例えば、ブロックコポリマーが挙げられる(Gonzalez-Perez et al., Langmuir, 2009, 25, 10447-10450)。ブロックコポリマーは、1本のポリマー鎖を作出するように2つ以上のモノマーサブユニットtが共に重合されるポリマー材料である。ブロックコポリマーは、典型的には、各モノマーサブユニットによって寄与される特性を有する。しかしながら、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが保有しない独特の特性を有する場合がある。ブロックコポリマーは、モノマーサブユニットの1つが疎水性(すなわち親油性)であるが、他のサブユニット(単数または複数)が水性媒体中で親水性であるように操作され得る。この場合において、ブロックコポリマーは、両親媒特性を保有する場合があり、生物学的膜を模倣する構造を形成する場合がある。ブロックコポリマーは、ジブロック(2個のモノマーサブユニットからなる)であってもよいが、両親媒性物質として振る舞う、さらに、より複雑な配置を形成するように2つを超えるモノマーサブユニットから構築されてもよい。コポリマーは、トリブロック、テトラブロックまたはペンタブロックコポリマーであってもよい。
【0286】
両親媒性層は、単層または二重層であってよい。両親媒性層は、典型的には、平面脂質二重層または支持された二重層である。
【0287】
両親媒性層は、典型的には脂質二重層である。脂質二重層は、細胞膜のモデルであり、様々な実験研究のための優れたプラットホームとして役立つ。例えば、脂質二重層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のインビトロでの調査のために用いられ得る。あるいは、脂質二重層は、様々な物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして用いられ得る。脂質二重層は、任意の脂質二重層であってよい。好適な脂質二重層は、限定されないが、平面状脂質二重層、支持された二重層またはリポソームを含む。脂質二重層は、好ましくは平面状脂質二重層である。好適な脂質二重層は、国際出願第PCT/GB08/000563号(国際公開第2008/102121号パンフレットとして公開されている)、同第PCT/GB08/004127号(同第2009/077734号パンフレットとして公開されている)、および同第PCT/GB2006/001057号(同第2006/100484号パンフレットとして公開されている)に開示されている。
【0288】
脂質二重層を形成するための方法は、当該技術分野において公知である。好適な方法は、実施例に開示される。脂質二重層は、一般的には、脂質単層が水性溶液/空気界面上に置かれ、その界面に垂直である開口部の両側を越えて運ばれる、モンタルおよびミューラーの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 1972;69:3561-3566)によって形成される。
【0289】
モンタルおよびミューラーの方法は、それがタンパク質細孔挿入のために適している良質な脂質二重層を形成する対費用効果が高くて、比較的簡単な方法であることから一般的である。二重層形成の他の一般的方法は、チップ−ディッピング、ペインティング二重層およびリポソーム二重層のパッチクランピングを含む。
【0290】
好ましい実施形態において、脂質二重層は、国際出願第PCT/GB08/004127号(国際公開第2009/077734号パンフレットとして公開されている)に記載の通り形成される。
【0291】
別の好ましい実施形態において、膜は、固体状態層である。固体状態層は、生物由来ではない。換言すると、固体状態層は、生物または細胞などの生物学的環境由来でなくまたはそれから単離されず、生物学的に入手可能な構造の合成的に製造されたバージョンでもない。固体状態層は、限定されないが、ミクロ電子材料、Si
3N
4、Al
2O
3およびSiOなどの絶縁材料、ポリアミドなどの有機および無機ポリマー、Teflon(登録商標)などのプラスチック、または2成分添加の硬化シリコンゴムなどのエラストマー、ならびにガラスを含む、有機材料と無機材料の両方から形成され得る。固体状態層は、グラフェンなどの単原子層、またはほんの数原子の厚さである層から形成され得る。好適なグラフェン層は、国際出願第PCT/US2008/010637号(国際公開第2009/035647号パンフレットとして公開されている)に開示されている。
【0292】
この方法は、典型的には、(i)細孔を含む人工の両親媒性層、(ii)細孔を含む単離された天然に存在する脂質二重層、または(iii)細孔が挿入された細胞を用いて実施される。この方法は、典型的には、人工脂質二重層などの人工両親媒性層を用いて実施される。層は、他の膜貫通および/または膜内タンパク質、ならびに細孔に加えて他の分子を含んでもよい。適切な装置および条件を以下に検討する。本発明の方法は、典型的にはインビトロで実施される。
【0293】
カップリング
標的RNAポリヌクレオチドは、好ましくは、膜貫通細孔を含む膜にカップリングされる。これは、任意の公知の方法を用いて行うことができる。本方法は、標的RNAポリヌクレオチドを膜貫通細孔を含む膜にカップリングさせることを含み得る。RNAポリヌクレオチドは、好ましくは、1つ以上のアンカーを用いて膜にカップリングされる。RNAポリヌクレオチドは、任意の公知の方法を用いて膜にカップリングさせてもよい。
【0294】
各アンカーは、RNAポリヌクレオチドにカップリングする(または結合する)基、および膜にカップリングする(または結合する)基を含む。各アンカーは、RNAポリヌクレオチドおよび/または膜に共有的にカップリング(または結合)することができる。Yアダプターおよび/またはヘアピンループアダプターが使用される場合、RNAは、好ましくは、アダプター(単数または複数)を用いて膜にカップリングされる。
【0295】
RNAポリヌクレオチドは、2つ、3つ、4つまたはそれらを超えるアンカーなどの任意の数のアンカーを用いて膜にカップリングされてもよい。例えば、RNAポリヌクレオチドは、各々が、RNAポリヌクレオチドと膜の両方に別々にカップリング(または結合する)2つのアンカーを用いて膜にカップリングされ得る。
【0296】
1つ以上のアンカーは、上記で検討した1つ以上のDNAヘリカーゼおよび/または1つ以上の分子ブレーキを含んでもよい。
【0297】
膜が脂質二重層などの両親媒性層である場合(詳細については上記で検討されている)、RNAは、好ましくは、膜に存在するポリペプチドまたは膜に存在する疎水性アンカーを介して膜にカップリングされる。疎水性アンカーは、好ましくは、脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブまたはアミノ酸である。
【0298】
RNAポリヌクレオチドは、膜に直接カップリングされてもよい。RNAポリヌクレオチドは、国際出願第PCT/GB2012/051191号(国際公開第2012/164270号パンフレットとして公開されている)に開示されている方法のいずれかを用いて膜にカップリングさせることができる。RNAポリヌクレオチドは、好ましくは、リンカーを介して膜にカップリングされる。好ましいリンカーとしては、限定されないが、ポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリペプチドなどのポリマーが挙げられる。RNAが膜に直接カップリングされている場合、膜と細孔および/またはポリヌクレオチド結合タンパク質の間の距離に起因して、特徴付けの実施がRNAの終端まで続けることができないため、いくつかのデータは失われる。リンカーが使用される場合、RNAは完了のために処理され得る。リンカーが使用される場合、リンカーは任意の位置でRNAに結合され得る。リンカーは、典型的には、テールポリマーとしてRNAに結合される。
【0299】
カップリングは、安定していてもよくまたは一時的であってもよい。特定の用途については、カップリングの一時的な特性が好ましい。安定なカップリング分子が、RNAの5’末端または3’末端のいずれかに直接結合された場合、膜と細孔および/またはポリヌクレオチド結合タンパク質の間の距離に起因して、相補的なポリヌクレオチドの終端まで特徴付けの実施を続けることができないため、いくつかのデータは失われる。カップリングが一時的である場合、カップリングされた末端がランダムに膜を含まなくなると、RNAポリヌクレオチドは完了のために処理され得る。膜と安定または一時的な連結を形成する化学基は、以下でより詳細に検討される。RNAポリヌクレオチドは、コレステロールまたは脂肪アシル鎖を用いて脂質二重層などの両親媒性層に一時的にカップリングされてもよい。ヘキサデカン酸などの、長さが6〜30個の炭素原子を有する脂肪アシル鎖を使用してもよい。
【0300】
合成脂質二重層へのポリヌクレオチドのカップリングは、以前は様々な異なるテザリング戦略によって行われてきた。これらを以下の表2に要約する。
【0302】
合成ポリヌクレオチドは、チオール、コレステロール、脂質およびビオチン基などの適切なアンカー基の付加に対して容易に適合する合成反応において修飾されたホスホラミダイトを用いて官能化することができる。これらの様々な結合化学は、ポリヌクレオチドへの結合のために一連の選択肢を与える。各々の異なる修飾基は、ポリヌクレオチドをわずかに異なる方法でカップリングし、カップリングは、常に永久的であるとは限らず、そのため、膜に対してポリヌクレオチドの様々な滞留時間を与える。一過性のカップリングの利点は、上記で検討されている。
【0303】
RNAポリヌクレオチドのカップリングはまた、反応性基をRNAポリヌクレオチドに付加することができるという条件で、多数の他の手段によって達成することができる。
【0304】
あるいは、反応性基は、既に膜にカップリングしているものと相補的なRNAポリヌクレオチド中の短い領域であると考えられ、そのため、ハイブリダイゼーションを介して、結合が達成され得る。この領域は、RNAポリヌクレオチドの一部であり得て、またはそれにライゲーションされ得る。ssDNAの短い小片のライゲーションは、T4 RNAリガーゼIを用いて報告されている(Troutt, A. B., M. G. McHeyzer-Williams, et al. (1992). "Ligation-anchored PCR: a simple amplification technique with single-sided specificity." Proc Natl Acad Sci U S A 89(20): 9823-5)。
【0305】
最も好ましくは、RNAは、RNAポリヌクレオチドまたはそれに結合した非RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズするコレステロールタグ化されたポリヌクレオチドを用いて膜にカップリングされる。
【0306】
疾患もしくは状態の診断または予後診断
mRNAは、好ましくは、疾患もしくは状態を診断または予後診断するために本発明において使用される。いくつかの疾患または状態は、mRNAの変化した量(またはレベル)と関連付けられる。mRNAは、正常または野生型mRNAであってもよく、すなわち選択的にスプライスされていなくてもよい。mRNAの量(またはレベル)は、疾患および状態のない患者における量(またはレベル)と比較して、疾患もしくは状態で増加または減少させることができる。このような疾患または状態は、本発明の方法を用いて、患者由来の試料中のmRNAの量を決定することによって診断または予後診断され得る。
【0307】
多数の遺伝的疾患または状態は、mRNAスプライシング欠損などの選択的mRNAスプライシングを引き起こす突然変異によって引き起こされる。多数の疾患または状態は、明白な突然変異に起因しない別のmRNAスプライシングに関連する。選択的スプライシングの有無は、本発明の方法を用いて患者からの試料中に選択的スプライシングされたmRNAの存在または不存在を決定することによって同定することができる。いくつかの例において、選択的mRNAスプライシングは、細胞の正常な機能であり得る。このような場合、正常な量(すなわち、疾患および状態のない患者における量)と比較して、選択的にスプライスされたmRNAの量(またはレベル)の増加または減少を用いて、疾患もしくは状態を診断または予後診断することができる。
【0308】
本発明は、患者におけるメッセンジャーRNA(mRNA)の変化した量および/または選択的スプライシングに関連する疾患または状態を診断または予後診断する方法を提供する。本発明は、患者がメッセンジャーRNA(mRNA)の変化した量および/または選択的スプライシングに関連する疾患または状態を有するまたは発症する危険性があるか否かを決定するための方法を提供する。各々の場合において、本方法は、本発明の方法を用いて、患者由来の試料中のmRNAの量および/または素性を決定することを含む。疾患または状態は、以下に検討されるもののいずれかであってもよい。疾患または状態は、好ましくは、嚢胞性線維症、家族性自律神経障害、前頭側頭葉性痴呆、筋萎縮性側索硬化症、ハッチンソン・ギルフォード・プロゲリア症候群、中鎖アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)欠損症、筋緊張性ジストロフィー、プラダー・ウィリ症候群、脊髄性筋萎縮症、タウオパチー、高コレステロール血症または癌である。これらの疾患、それらの原因および可能な治療法は、Tazi et al. (Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease, Volume 1792, Issue 1, January 2009, Pages 14-26)において検討されている。
【0309】
患者由来の試料中のmRNAの変化した(すなわち増加または減少した)量(またはレベル)の存在は、典型的には、疾患または状態を診断または予後診断し、すなわち、患者が疾患もしくは状態を有するまたはその発症の危険性があることを示す。患者由来の試料中のmRNAの変化した(すなわち増加または減少した)量(またはレベル)の不存在は、典型的には、患者が疾患もしくは状態ではないまたは発症する危険性がないことを示す。mRNAの量は、上記で検討したように決定することができる。
【0310】
患者由来の試料中に選択的スプライスされたmRNAの存在は、典型的には、疾患または状態を診断または予後診断し、すなわち、患者が疾患または状態を有するまたはそれを発症する危険性があることを示す。患者由来の試料中に選択的スプライシングされたmRNAの不存在は、典型的には、患者は疾患もしくは状態がないまたはそれを発症する危険性がないことを示す。選択的スプライシングされたmRNAの存在または不存在は、上記で検討されたに試料中のRNAを同定することによって決定することができる。
【0311】
患者由来の試料中の選択的にスプライシングされたmRNAの量(もしくはレベル)の増加または減少は、典型的には、疾患または状態を診断または予後診断し、すなわち、患者が疾患もしくは状態を有するまたはそれを発症する危険性があることを示す。患者由来の試料中の選択的にスプライシングされたmRNAの量の変化(疾患および状態がない患者の量またはレベルと比較して)は、典型的には、患者が疾患もしくは状態を有しないおよびそれを発症する危険性がないことを示す。選択的にスプライシングされたmRNAの量は、上記で検討したように決定することができる。
【0312】
miRNAは、好ましくは、疾患もしくは状態を診断または予後診断するために本発明において使用される。本発明は、miRNAに関連する疾患または状態を診断または予後診断する方法を提供する。本発明は、患者がmiRNAに関連付けられる疾患もしくは状態を有するまたはそれを発症する危険性があるかどうかを決定する方法を提供する。この方法は、本発明の方法を用いて患者由来の試料中のmiRNAの存在または不存在を決定することを含む。疾患または状態は、以下に検討されるもののいずれかであり得る。
【0313】
患者由来の試料中のmiRNAの存在は、典型的には、患者が疾患もしくは状態を有するまたはそれを発症する危険性があることを示す。患者由来の試料中のmiRNAの不存在は、典型的には、患者が疾患もしくは状態を有しないまたはそれを発症する危険性がないことを示す。miRNAの存在または不存在は、上記で検討したように試料中の任意のmiRNAを同定することによって決定することができる。
【0314】
疾患または状態は、好ましくは、癌、冠状動脈性心疾患、心臓血管疾患または敗血症である。疾患または状態は、より好ましくは、腹部大動脈瘤、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性心筋梗塞、急性前骨髄球性白血病(APL)、腺腫、副腎皮質癌、アルコール性肝疾患、アルツハイマー病、未分化甲状腺癌腫(ATC)、不安障害、喘息、星状細胞腫、アトピー性皮膚炎、自閉症スペクトル障害(ASD)、B細胞慢性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、バーキットリンパ腫、心肥大、心筋症、心血管疾患、小脳神経変性、子宮頸癌、胆管癌、真性胸腺腫、絨毛癌腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、結腸癌腫、結腸直腸癌、先天性心疾患、冠状動脈疾患、カウデン症候群、皮膚筋炎(DM)、糖尿病性腎症、下痢の主な過敏性腸症候群、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、拡張型心筋症、ダウン症候群(DS)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、子宮内膜癌、子宮内膜性子宮内膜腺癌、子宮内膜症、上皮性卵巣癌、食道癌、食道扁平上皮癌、本態性血小板血症(ET)、顔面肩甲上腕筋肉ジストロフィー(FSHD)、濾胞性リンパ腫(FL)、濾胞性甲状腺癌腫(FTC)、前頭側頭型痴呆、胃癌(gastric cancer)(胃癌(stomach cancer))、膠芽細胞腫、多形性グリア芽腫(GBM)、神経膠腫、糸球体疾患、糸球体硬化症、過誤麻痺、HBV関連の肝硬変、HCV感染、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、難聴、心臓病、心不全、B型肝炎、C型肝炎、肝細胞癌腫(HCC)、ヒラール胆管癌、ホジキンリンパ腫、ホモ接合性鎌状赤血球症(HbSS)、ハンチントン病(HD)、高血圧、下咽頭癌、封入体筋炎(IBM)、インスリノーマ、肝臓内胆管癌(ICC)、腎臓癌、腎臓病、喉頭がん、後期不眠症(睡眠病)、肺の平滑筋腫、白血病、四肢筋ジストロフィー2A型(LGMD2A)、脂肪腫、肺腺癌腫、肺癌、リンパ増殖性疾患、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫(MM)、マントル細胞リンパ腫(MCL)髄芽細胞腫、メラノーマ、髄膜腫、代謝性疾患、ミヨシミオパチー(MM)、多発性骨髄腫(MM)、多発性硬化症、MYC再編成リンパ腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、心筋梗塞、心筋傷害、筋腫、鼻咽頭癌(NPC)、ネマリンミオパチー(NM)、腎炎、神経芽細胞腫(NB)、好中球減少症、ニーマン・ピック・タイプC(NPC)病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肥満、口腔癌肉腫卵巣癌(OC)、膵臓癌、膵管腺癌(PDAC)、膵臓新生物、パニック病、乳頭状甲状腺癌(PTC)、パーキンソン病、PFV−1感染、咽頭疾患、下垂体腺腫、多発性嚢胞腎疾患、多嚢胞性肝疾患、真性赤血球増加症(PV)、多発性筋炎(PM)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性骨髄線維症、プリオン病、前立腺癌、乾癬性関節炎、乾癬、肺高血圧症、再発性卵巣癌、腎細胞癌、腎細胞癌、網膜色素変性(RP)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、リウマチ性心疾患および心房細動、関節リウマチ、肉腫、統合失調症、敗血症、漿液性卵巣癌、セザリー症候群、皮膚疾患、小細胞肺癌、脊髄小脳失調、扁平上皮癌、T細胞白血病、奇形癌、精巣胚細胞腫瘍、サラセミア、甲状腺癌、舌扁平上皮癌腫、トウレット症候群、2型糖尿病、子宮平滑筋腫(ULM)、ブドウ状黒色腫、血管疾患、水疱性口内炎またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)である。
【0315】
患者は、上記で検討した哺乳動物のいずれかであってもよい。患者は、好ましくはヒトである。患者は個体である。
【0316】
試料は、上記で検討されたもののいずれかであってもよい。試料は、典型的には、任意の組織または体液由来である。試料は、典型的には、患者の体液および/または細胞を含み、例えば、口腔スワブなどのスワブを用いて得ることができる。試料は、血液、尿、唾液、皮膚、頬の細胞もしくは毛根の試料であってもよく、またはそれらに由来してもよい。標的RNAは、典型的には、本発明の方法において使用される前に、試料から抽出される。
【0317】
本方法は、患者における疾患または状態の診断、すなわち、患者が疾患または状態を有するか否かを決定することに関する。患者は症状があってもよい。
【0318】
本方法は、患者における疾患または状態を予後診断すること、すなわち、患者が疾患または状態を発症する可能性があるのか否かを決定することに関する。患者は症状がなくてもよい。患者は、疾患または状態に対する遺伝的素因を有してもよい。患者は、疾患または状態の一人以上の家族(単数または複数)を有してもよい。
【0319】
RNAポリヌクレオチドの移動を改善する方法
本発明はまた、DNAヘリカーゼ酵素によってその動きが制御されるとき、膜貫通孔に関して標的RNAポリヌクレオチドを移動させる方法であって、
a)(i)RNAが非RNAポリヌクレオチドを含むように修飾されているRNAポリヌクレオチド、および(ii)DNAヘリカーゼ酵素を用意するステップ;
b)a)において用意されたRNAポリヌクレオチドおよびDNAヘリカーゼ酵素を膜貫通細孔と接触させて、DNAヘリカーゼが膜貫通細孔に対してRNAポリヌクレオチドの移動を制御するステップ
を含む方法を提供する。
【0320】
RNAポリヌクレオチドの修飾は、それに結合するDNAヘリカーゼの増加をもたらす。修飾されたRNAポリヌクレオチドに結合するDNAヘリカーゼの増加は、修飾されていないまたは非修飾のRNAポリヌクレオチド、すなわち本発明の修飾方法に従って修飾されていないRNA、について観察されるDNAヘリカーゼ結合の量またはレベルよりも大きく、またはそれより多いDNAヘリカーゼ結合の量またはレベルとして定義される。DNAヘリカーゼの標的RNAポリヌクレオチドへの結合のレベルは、当業者に公知であり、慣習的である方法を用いて容易に試験することができる。
【0321】
好ましくは、DNAヘリカーゼ酵素は、非RNAポリヌクレオチドに予め結合される。また、上述される実施形態のいずれもこの方法に適用する。例えば、一実施形態において、非RNAポリヌクレオチドは、(i)5個以上の荷電単位のポリマー;(ii)長さが約20ヌクレオチドのブロッキング鎖ハイブリダイゼーション部位;(iii)1つ以上の非RNAヌクレオチド、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、30個、40個、または50個のヌクレオチドのDNA−ヘリカーゼ結合部位;(iv)参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/135838号パンフレットに記載されているSp18などの1個以上の単位、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上の単位の失速化学;(v)長さが約30ヌクレオチドのテザーハイブリダイゼーション部位;および/または(vi)前のセクションで説明したように、非RNAポリヌクレオチドのRNAポリヌクレオチドへのライゲーションを促進する配列、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0322】
実施例は、ナノ細孔を通るDNA/RNA鎖の移動を制御するためのDNAヘリカーゼの使用をさらに示す。したがって、一実施形態において、細孔を通じて配列決定されるRNAの能力または効率を増加させるための方法が本明細書に提供される。
【0323】
本発明の構築物を生成する方法
構築物を生成する方法は、標的RNAポリヌクレオチドを非RNAポリヌクレオチドに結合させることを含む。非RNAポリヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドはリボヌクレオチドではなく、すなわちRNA由来ではない。したがって、非RNAポリヌクレオチドは、少なくとも1つのリボヌクレオチド(またはRNAヌクレオチド)を含み得るが、非RNAヌクレオチドまたは配列、すなわちRNAではないヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列を追加的に含まなければならない(comprise)または含まなければならない(include)。非RNAポリヌクレオチドは、上述される実施形態のいずれかを含んでもよい。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドは、DNAヘリカーゼ結合部位またはDNAアダプターを含む。より好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはリーダー配列を含む。
【0324】
上記で検討したように、結合の部位および結合方法が選択される。好ましくは、結合方法は、化学的結合、共有結合、酵素的結合、ハイブリダイゼーション、合成法、またはトポイソメラーゼの使用から選択することができる。RNAポリヌクレオチドは、1つより多い、例えば2つまたは3つの点で非RNAポリヌクレオチドに結合されてもよい。結合の方法は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれらを超える異なる結合方法を含むことができる。上述される結合方法の任意の組み合わせは、本発明に従って使用することができる。
【0325】
本方法は、構築物が、DNAヘリカーゼの制御下で、ナノ細孔を通り、制御された形で移動することができるか否かを決定することをさらに含んでもよい。これを試験するためのアッセイは、当業者に公知である。ナノ細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動が制御され得る場合、本発明の構築物が生成されている。RNAポリヌクレオチドの移動が制御できない場合、本発明の構築物は生成されていない。
【0326】
本発明の一実施形態において、標的RNAポリヌクレオチドを非RNAポリヌクレオチドに結合させることを含む、構築物を生成する方法は、接触ステップ(b)の前に行う。別の実施形態において、非修飾形態のRNAよりも高い効率で細孔を通じて配列決定され得る修飾されたRNAを生成する方法が本明細書に提供される。
【0327】
本発明の修飾方法
本発明は、配列決定ためなどの特徴付けのために標的RNAポリヌクレオチドを修飾する方法を提供する。修飾されたRNAポリヌクレオチドは、本発明に従って特徴付けられまたは配列決定される。これは、上記でより詳細に検討されている。
【0328】
この方法は、記載された方法の1つ以上を用いた、1つ以上の修飾されたRNAポリヌクレオチドの形成を伴う。1つ以上の修飾されたポリヌクレオチドは、特に鎖配列決定を使用して、非修飾ポリヌクレオチドよりも特徴付けが容易である。
【0329】
本発明の生成物/構築物
本発明はまた、本発明の修飾方法を用いて修飾されたRNAポリヌクレオチドを提供する。標的RNAポリヌクレオチドは、RNAポリヌクレオチドを非RNAポリヌクレオチドに結合させることにより修飾されて、本発明の構築物を形成する。標的RNAの改変は、すなわち、結合された非RNAポリヌクレオチドを伴わずに、DNAヘリカーゼと非修飾形態のRNAポリヌクレオチドの間に生じる相互作用と比較すると、DNAヘリカーゼと修飾されたRNA構築物の間の相互作用の増加を必然的にもたらす。追加的にまたは代替的に、非RNAポリヌクレオチドのRNAポリヌクレオチドへの付加または結合は、すなわち、結合された非RNAポリヌクレオチドを伴わずに、非修飾形態のRNAポリヌクレオチドに対するDNAヘリカーゼの特異性と比較すると、修飾されたRNA構築物に対するDNAヘリカーゼの特異性が増加することを意味する。追加的にまたは代替的に、すなわち、結合された非RNAポリヌクレオチドを伴わずに、DNAヘリカーゼと非修飾形態のRNAポリヌクレオチドの間に生じる結合と比較して、非RNAポリヌクレオチドのRNAポリヌクレオチドへの付加または結合は促進され、および/または修飾されたRNA構築物に結合するDNAヘリカーゼが増加することを意味する。追加的にまたは代替的に、非RNAポリヌクレオチドのRNAポリヌクレオチドの付加または結合は、すなわち、結合された非RNAポリヌクレオチドを伴わずに、ヘリカーゼと非修飾形態のRNAポリヌクレオチドの間に生じる結合と比較して、修飾されたRNA構築物により効率的にまたはより強力に結合し、修飾された構築物から離れる可能性がより小さいことを意味する。
【0330】
非RNAポリヌクレオチドは、RNAではない任意のポリヌクレオチドであり得る。非RNAポリヌクレオチドは、少なくとも1つのリボヌクレオチドを含んでもよいが、また、非RNAヌクレオチドまたは配列、すなわちRNAではないヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列を追加的に含む必要がある。上記で検討したように、結合部位および結合方法が選択される。非RNAポリヌクレオチドは、予め結合されたDNAヘリカーゼを含んでもよくまたは含まなくてもよい。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドは、DNAヘリカーゼが結合することができる領域(DNAヘリカーゼ結合部位)、またはDNAアダプターを含む。より好ましくは、DNAヘリカーゼ結合部位またはDNAアダプターは、優先的にナノ細孔に入り込むリーダー配列を含む。リーダー配列はまた、上記で検討したように標的RNAを1つ以上のアンカーに連結するために使用され得る。リーダー配列は、標的RNAポリヌクレオチドに連結されてもよい。
【0331】
本発明の構築物は、好ましくは、DNAヘリカーゼを使用してMspAナノ細孔を通して移行させ得るDNA/RNAハイブリッド鎖である。
【0332】
構築物は、ポリヌクレオチド鎖上のバーコード部分をさらに含み得る。ポリヌクレオチドのバーコードは当該技術分野において周知である(Kozarewa, I. et al., (2011), Methods Mol. Biol. 733, p279-298)。バーコードは、特定の公知の様式で細孔を流れる電流に影響を及ぼすポリヌクレオチドの特定の配列である。バーコード部分は、分析物の明白な同定を可能にする。好ましくは、バーコード部分は、リーダー配列とDNAヘリカーゼ結合部位の間に位置される。
【0333】
アンカー、例えばDNAアンカーは、上述されるRNAポリヌクレオチドまたは非RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる。DNAアンカーは、スペーサーおよびコレステロールをさらに含むことができる。
【0334】
RNAポリヌクレオチドは、ポリ(U)ポリメラーゼを用いてさらに伸長させることができる。これは、RNAの全長が読み取られるのを確実にする。
【0335】
修飾されたRNAポリヌクレオチドは、本発明のどの修飾方法(単数または複数)が使用されるかに依存して種々の形態になり得る。可能な形態には、限定されないが、以下の1つ以上が含まれる:
−例えば、クリック化学を用いて、非RNAポリヌクレオチドに化学的に結合されたRNAポリヌクレオチド
−非RNAポリヌクレオチドにライゲーションされたRNAポリヌクレオチド
−架橋部分を有するまたは有しない非RNAリーダー配列にハイブリダイズしたRNAポリヌクレオチド
−架橋部分を有するかまたは有しないcDNA配列にハイブリダイズしたRNAポリヌクレオチド
−トポイソメラーゼを用いて非RNAポリヌクレオチドに結合されたRNAポリヌクレオチド
−非RNAポリヌクレオチドの残りと反対方向に動くように、逆塩基を含む領域を有する非RNAポリヌクレオチドにライゲーションされたRNAポリヌクレオチド。好ましくは、非RNAポリヌクレオチドはDNAポリヌクレオチドである。
【0336】
キット
本発明はまた、標的RNAポリヌクレオチドを特徴付けるためのキットを提供する。このキットは、特徴付けのために任意の標的RNAポリヌクレオチドに結合するように適合されている非RNAポリヌクレオチドを含む。
【0337】
好ましくは、特徴付けのために任意の標的RNAポリヌクレオチドに結合するように適合されている非RNAポリヌクレオチドは、結合した反応基、例えばクリック反応基を有する。結合した反応基を有する非RNAポリヌクレオチドは、最終的には、選択された任意の標的RNAポリヌクレオチドと反応して共有結合を形成するために、エンドユーザーによって使用され得る。好ましくは、標的RNAポリヌクレオチドはまた、結合した反応基、例えば、非RNAポリヌクレオチドに結合した反応基と反応して共有結合を形成するクリック反応基を有する。
【0338】
あるいは、特徴付けのために任意の標的RNAポリヌクレオチドに結合するように適合されている非RNAポリヌクレオチドは、リガーゼとともに提供され、または選択された標的RNAポリヌクレオチドの任意の領域にハイブリダイズさせるためにエンドユーザーによって使用され得、cDNA合成の開始点として作用するオリゴヌクレオチドまたはプライマーである。
【0339】
あるいは、特徴付けのために任意の標的RNAポリヌクレオチドに結合するように適合されている非RNAポリヌクレオチドは、特定のDNAポリヌクレオチドに結合したトポイソメラーゼを含む。トポイソメラーゼを結合させたDNAは、最終的には、非RNA(DNA)ポリヌクレオチドを、選択された任意の標的RNAポリヌクレオチドに結合させるために、エンドユーザーによって使用され得る。エンドユーザーは、遊離5’ヒドロキシルを有するRNAとともに、トポイソメラーゼを結合させたDNAをインキュベートすることができる。次に、トポイソメラーゼは、RNAをDNAに接続させる。
【0340】
あるいは、特徴付けのために任意の標的RNAポリヌクレオチドに結合するように適合されている非RNAポリヌクレオチドは、逆塩基を有する領域(例えば、逆塩基のDNA領域)を含む。この逆転領域は、逆配向に動く7−メチルグアノシンキャップの付加によって修飾された真核生物のRNAの5’末端に結合することができる。
【0341】
本発明の方法を参照して上記で検討した実施形態のいずれも、キットに等しく適用される。本キットは、非RNAポリヌクレオチドに予め結合され得るDNAヘリカーゼ結合タンパク質をさらに含み得る。キットは、脂質二重層などの両親媒性層を形成するのに必要とされるリン脂質などの細孔および膜の成分をさらに含むことができる。
【0342】
本発明のキットは、上記の実施形態のいずれかを実施することを可能にする1つ以上の他の試薬または器具を追加的に含んでもよい。このような試薬または器具は、以下の1つ以上を含む:適切な緩衝液(単数もしくは複数)(水溶液)、対象から試料を得るための手段(例えば、容器および針を含む器具)、上記で定義される膜、または電圧もしくはパッチクランプ装置。試薬は、流体試料が試薬を再懸濁するように、乾燥状態でキット中に存在し得る。キットはまた、場合により、本発明の方法においてキットを使用することができるようにするための説明書、またはどの患者が本方法を使用することができるかに関する詳細を含むことができる。キットは、典型的にはヌクレオチドを含む。キットは、好ましくは、dAMP、dTMP、dGMPおよびdCMPを含む。キットは、好ましくは、ポリヌクレオチドを増幅および/または発現する手段を含まない。
【実施例1】
【0344】
この実施例は、1)RNA/DNA鎖のRNA領域を伸長させ、2)アンカーをアニーリングさせ、3)酵素を結合させ、次に4)得られた鎖を電気生理学的実験において試験する、試料調製手法を示す。本実施例は、合成DNA/RNA鎖(RNA鎖に結合させたDNAリーダー、
図3に示される)がMspAナノ細孔を通り移動することを制御するために、DNAヘリカーゼ(T4 Dda−E94C/A360C(突然変異E94C/A360Cを有し、次に(ΔM1)G1を有する配列番号14)を使用することが可能であることを例証した。
【0345】
材料および方法
1.1 ポリ(U)ポリメラーゼを用いたDNA/RNA鎖の3’末端の伸長
以下の表3に列挙される試薬を混合し、37℃で10分間インキュベートした。次に、この混合物は、Agencourt Ampure SPRIビーズを1μLの試料あたり1.8μLのSPRIビーズの比で用いて精製された。この試料を試料1(DNA/RNA2)として示した。
図4は、図中のYと表示された広帯域が、可変的に伸長されたDNA/RNA1に対応しているため、ポリメラーゼ伸長反応が成功したことを示す。
【0346】
【表3】
【0347】
1.2 アンカーアニーリング
以下の表4に列挙された試薬を混合し、65℃でインキュベートし、次に0.1℃/秒の速度で4℃に冷却した。この試料を試料2として示した。
【0348】
【表4】
【0349】
1.3 DNAヘリカーゼを結合させる
試料2(0.28μL)を緩衝液(10mM TRIS pH7.5、50mM NaCl)中のT4Dda−E94C/A360C(0.36μL、3.8μM、突然変異E94C/A360C、続いて(ΔM1)G1を有する配列番号14)とともに室温で1時間インキュベートした。この試料を試料3として示した。
【0350】
1.4 電気生理学
試料3を緩衝液(600mM KCl、50mM HEPES pH8.0、463mMグリセロールの1221μL)に希釈した。MgCl
2(13μL、1M)およびATP(65μL、100mM)を試料3の緩衝液混合物に添加して、総容量1300μLとした。
【0351】
電気的測定は、緩衝液(25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム pH 約8.0)中のブロックコポリマーに挿入された単一のMspAナノ細孔から得られた。ブロックコポリマーに挿入された単一の細孔を達成した後、過剰のMspAナノ細孔を除去するために、緩衝液(2mL、25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム、pH8.0)をシステムに流した。
【0352】
過剰のKCl緩衝液(600mM KCl、50mM HEPES pH 約8、463mMグリセロール)をシステムに流し、このKCl緩衝液を電極緩衝液(25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム、pH8.0)からアガロース架橋により分離した。
【0353】
実験を−120mVで行い、ヘリカーゼによって制御されたDNAの移動をモニターした。
【0354】
結果
試料3(DNA/RNA2の略画を
図3に示す)をナノ細孔システムに添加したときに、ヘリカーゼによって制御されたDNAの移動が観察された。試料3についてのヘリカーゼによって制御されたDNAの移動の例を
図5に示す。合成鎖の種々の領域は、鎖がナノ細孔を通り移行する間に同定された(領域1=ポリ(dT)リーダー(配列番号16)、領域2=iSpC3スペーサー、領域3=RNA配列(配列番号17)および領域4=可変長ポリ(U)RNA)。この実施例は、MspAナノ細孔を通るDNA/RNA鎖の移動(
図3に示される略画)を制御するためにDNAヘリカーゼを使用することが可能であることを示した。ポリ(U)ポリメラーゼ伸長ステップは、RNAの全長が読み取られたことを確認した。
【実施例2】
【0355】
この実施例は、T4 DNAリガーゼを用いたDNA鎖(配列番号21)のRNA鎖(配列番号19)へのライゲーションを示す。
【0356】
材料および方法
2.1 T4 DNAリガーゼを用いたDNA鎖のRNA鎖へのライゲーション
以下の表5に列挙された試薬を混合し、サーモサイクラー上に置いた。サーモサイクラーを以下の表6にあるプログラムに設定した。次に、試料を140Vで60分間泳動させた、10%PAGE TBE−尿素変性BioRad Criterionゲルを用いて分析した。
【0357】
【表5】
【0358】
【表6】
【0359】
結果
TBE−尿素変性ゲルを用いて、CY3 DNA(配列番号21)のRNA(配列番号19)へのライゲーションを分析した。
図8のレーン2〜3は、T4 DNAリガーゼの不存在下でDNAスプリント(配列番号20)の濃度を増加させたライゲーションステップの対照反応を示した。これらの対照反応について、領域AおよびBのバンドは観察されず、これは、これらの条件下ではライゲーション反応が起こらなかったことを示した。レーン5〜8は、T4 DNAリガーゼの存在下でDNAスプリント(配列番号20)の濃度を増加させたライゲーションステップを示した。レーン5〜8の全てについて、ハイブリダイズされたDNAスプリントを含むライゲーションされた基質(A)とハイブリダイズされたDNAスプリントを含まないライゲーションされた基質(B)に対応する領域Aと領域Bの両方にバンドを視認することができた。スプリントの濃度が増加するにつれて、バンドAの強度もまた増加した。2つのさらなる対照反応を行い、レーン9および10に示した。レーン9は、レーン5に示されたのと同じ試料に対応し、これは、ライゲーションステップ後に追加のDNAスプリント(4.5×)を添加してさらに処理された。これは、レーン5と比較した場合、上側のバンド(スプリントをハイブリダイズさせたライゲーション生成物に対応する)の予測された強度の増加、および下側のバンドB(スプリントをハイブリダイズさせていないライゲーション生成物に対応する)の強度の減少を示した。レーン10は、レーン6に示したものと同じ試料に対応し、これは、37℃で30分間、ExoIでさらに処理された。ExoI処理中の加熱により、ライゲーションされた鎖とDNAスプリントの分離が生じた。DNAスプライントは、3’DNA末端を有するため、ExoIによって優先的に消化された。これは、DNAスプライントがExoIによって消化されたため、DNAスプライントにハイブリダイズしたライゲーション生成物に対応する領域Aのバンドの消失をもたらした。領域Bのバンドは、ExoIによる消化後、なおも視認された。これは、DNAがRNAにライゲーションされていない場合、ライゲーションされていないDNAがExoIによって消化され、バンドが領域Bに視認されていないため、ライゲーションステップが成功したことを意味する。したがって、この実施例は、T4 DNAリガーゼを用いてDNAをRNAにライゲーションすることが可能であることを示した。
【実施例3】
【0360】
この実施例は、クリック化学を用いて、DNA鎖をRNA鎖上に化学的に結合させる試料調製手法を示す。これは2つの異なる試料について行われ、その1つは、ゲル電気泳動を用いて化学的結合ステップを確認するために、DNAに結合された蛍光基を有した。次に、蛍光基が結合していないDNA/RNA鎖を電気生理学実験において試験した。この実施例は、銅を介したクリック化学(構築物の略画を
図10に示す)により非RNAポリヌクレオチドに結合されたRNA鎖が、MspAまたはリセニンのナノ細孔を通り移動することを制御するために、DNAヘリカーゼ(T4 Dda−E94C/A360C(突然変異E94C/A360C、続いて(ΔM1)G1を有する配列番号14)を使用することが可能であることを例証した。
【0361】
材料および方法
3A.1 RNA X1へのDNA X1のクリック反応
RNA X1、DNA X1およびスプリントX1(以下の表7に列挙される)を緩衝液(TRIS−NaCl(500mM−2.5M)pH8)中で混合した。DNA X1、RNA X1およびスプリントX1をPCR装置でアニーリングした(55℃に加熱し、4℃に0.1℃/秒で冷却するというプロトコル)。次に、CuSO
4、Tris(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチルアミン)およびアスコルビン酸ナトリウム(Sigma A4034)をDNA X1/RNA X1/スプリントX1混合物に添加し、次に、試料をサーモサイクラー上に置いた。サーモサイクラーを以下の表8にあるプログラムに設定した。その後、試料を1μLの試料あたり1.8μlのSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて精製した。この試料を試料3A(DNA/RNA 3A)として示した。次に、この試料を5%PAGE TBE BioRad Criterionゲル上でおよび以下の3.3に記載されるような電気生理学において分析した。
【0362】
【表7】
【0363】
【表8】
【0364】
3B.1 RNA X1へのDNA X2のクリック反応
RNA X1、DNA X2およびスプリントX1(以下の表9に列挙される)を緩衝液(TRISまたはMOPS(500mM−2.5M)、pH6.8−7)中で混合した。DNA X2、RNA X1およびスプリントX1をPCR装置でアニーリングした(55℃に加熱し、4℃に0.1℃/秒で冷却するというプロトコル)。次に、CuSO
4、Tris(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチルアミン)およびアスコルビン酸ナトリウム(Sigma A4034)をDNA X2/RNA X1/スプリントX1混合物に添加し、次に、試料をサーモサイクラー上に置いた。サーモサイクラーを以下の表10にあるプログラムに設定した。その後、試料を1μLの試料あたり1.8μlのSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて精製した。この試料を試料3B(DNA/RNA 3B)として示した。次に、この試料を5%PAGE TBE BioRad Criterionゲル上で分析した。
【0365】
【表9】
【0366】
【表10】
【0367】
3.3 電気生理学
実施例1に記載されるように、テザーを試料3Aに対してアニーリングした(セクション1.2参照)。試料3A(0.28μl)およびT4 Dda−E94C/A360C(0.36μM、3.8μM、突然変異E94C/A360C、続く(ΔM1)G1を有する配列番号14)を緩衝液(500mM KCl、25mMリン酸カリウム、pH8.0の1221μL)に希釈した。MgCl
2(13μL、1M)およびATP(65μL、100mM)を試料3Aの緩衝液混合物に添加して、総容量1300μLとした。
【0368】
電気的測定は、緩衝液(25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム pH 約8.0)中のブロックコポリマーに挿入された単一のMspAまたはリセニンナノ細孔から得られた。ブロックコポリマーに挿入された単一の細孔を達成した後、過剰のMspAまたはリセニンナノ細孔を除去するために、緩衝液(2mL、25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム、pH8.0)をシステムに流した。
【0369】
試料を添加する前に、過剰の緩衝液(500mM KCl、25mMリン酸カリウム pH8.0)をシステムに流した。続いて、最後に、試料3Aに結合したT4 Dda−E94C/A360Cをナノ細孔システムに添加し、実験を−120mVで行い、ヘリカーゼによって制御されたDNA移動をモニターした。
【0370】
結果
TBE−尿素変性ゲルを用いて、RNA X1へのDNA(DNA X1(その3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合した配列番号22であって、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号23の5’末端と結合し、配列番号23は、3’末端に3アジドNが結合している、配列番号22)またはDNA X2(実施例3B、5’末端に結合したCY3を有し、3’末端に結合した3アジドNを有する配列番号25))のクリック反応を分析した。実施例3Bにおいて使用されたDNAは、結合されたCy3基のためにSYBR染色の前に視認された。
図9のレーン3およびレーン9は、実施例3Bのクリック反応後に生成された試料を示した。レーン3の上部の蛍光バンド(
図9において白いボックスで強調される)は、Cy3標識を有するDNAがmRNAに結合していることを示した(DNAのみの蛍光バンドは矢印3であり、mRNAに結合したDNAは矢印1であった)。レーン2および8は、実施例3A(DNA上に蛍光基なし)におけるクリック反応後に生成された試料を示した。レーン11のバンドは未反応DNA(矢印2)に対応し、mRNAに結合したDNAは矢印1であった。したがって、このゲルは、クリック反応がmRNA(RNA X1)へのDNA(蛍光標識あり(X1)または蛍光標識なし(X2))の接続に成功したことを示した。
【0371】
試料3A(DNA/RNA 3Aの略画を
図10に示す)をナノ細孔システムに添加したときに、ヘリカーゼによって制御されたRNAの移動が観察された。MspAを通る、ヘリカーゼによって制御されたRNA移動の例を
図11(領域2、3および4)に示し、リセニン変異体を通る移動を
図21に示す。
図11の鎖の種々の領域は、鎖がナノ細孔を通り移行する間に同定された。まとめると、領域2、3および4は、クリック反応によって標的RNAに反応したDNAリーダーを表す(領域2=4つのiSp18スペーサーに接続された配列番号22;領域3=配列番号23;領域4=オープンリーディングフレームを有するホタルルシフェラーゼmRNA、配列番号26、および
*が付された矢印はクリック反応によって形成された連結を強調する)。領域1は、RNA(配列番号23に接続された4つのiSp18スペーサーに接続された配列番号22)と反応させなかったDNAリーダーの別個のナノ細孔移行を示す。同様の特徴が、
図21のリセニン追跡について同定され得る。この実施例は、MspAまたはリセニンナノ細孔を通して、長いmRNA鎖(
図10に示される略画)に非RNAポリヌクレオチド(配列番号23に接続された4つのiSp18スペーサーに接続された配列番号22)を連結させることにより、長いmRNAがナノ細孔を通り移動することを制御するためにDNAヘリカーゼを使用することができることを示した。
【実施例4】
【0372】
この実施例は、T4 DNAリガーゼ、続く、ヘアピン形成オリゴの3’末端からの逆転写を用いて、RNA鎖(配列番号30)の3’末端へのヘアピン形成オリゴ(3Tヘアピン=その5’末端でリン酸基に結合し、その3’末端で4つのiSpC3スペーサーに結合した配列番号29であって、4つのiSpC3スペーサーは反対側の末端で配列番号27の5’末端と結合している、配列番号29、または10Tヘアピン=その5’末端でリン酸基に結合し、その3’末端で4つのiSpC3スペーサーに結合した配列番号29であって、4つのiSpC3スペーサーは反対側の末端で配列番号28の5’末端と結合している、配列番号29)のライゲーションを示す。このライゲーションおよび逆転写は、RNA/cDNA構築物を構成する方法を実証した(
図13を参照されたい)。
【0373】
ヘアピン形成オリゴ(3Tまたは10Tヘアピンのいずれか)の3’末端でのポリTオーバーハングは、mRNAのポリAテールにハイブリダイズし、効率的なDNAによるRNAライゲーションのためのスプリントとして働く。ヘアピンは、その後の逆転写のためのプライマーとして作用することができる。
【0374】
材料および方法
以下の表11に列挙される試薬を混合し、サーモサイクラー上に置いた。サーモサイクラーを以下の表12にあるプログラムに設定した。次に、この混合物は、1μLの試料あたり1.8μLのSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて精製された。精製後、Life TechnologiesスーパースクリプトIIを用いて逆転写を行った:表13の試薬を製造業者のプロトコルに従って混合し、表14にあるプログラムに設定されたサーモサイクラー上に置いた。続いて、試料を140Vで60分間泳動させた、10%PAGE TBE−尿素変性BioRad Criterionゲルを用いて分析した。
【0375】
【表11】
【0376】
【表12】
【0377】
【表13】
【0378】
【表14】
【0379】
結果
TBE尿素変性ゲル(
図14参照)を使用して、3Tおよび10Tヘアピンライゲーションおよび逆転写を分析した。レーン5において、3T−ヘアピンの部分ライゲーションは、RNA鎖バンドの上方シフトの形態で視認された(配列番号30、RNA鎖は
図14のバンドAとして表示される)。逆転写後(レーン6)、RNA/cDNAの二本鎖構築物(
図13に示される)が一本鎖RNA(
図14においてバンドAとして示される配列番号30)よりも早く移動するという事実に起因して、バンドはRNA鎖(配列番号30、
図14におけるバンドA)のレベル下回ってシフトした。レーン7において、10Tヘアピンのライゲーションはほぼ100%の効率で生じ、一本鎖RNA鎖(
図14においてバンドAとして示された配列番号30)のレベルを上回って単一バンドとして視認された。レーン8は、逆転写後、10Tヘアピンによりプライミングされた試料を示し、ここで、ライゲーションされた、逆転写された生成物は、一本鎖RNAバンド(
図14においてバンドAとして示された配列番号30)を下回って下方にシフトした。レーン9(T4 DNAリガーゼを含まない反応混合物)のハイブリダイゼーション対照試料は、一本鎖RNA(
図14においてバンドAとして示された配列番号30)のレベルで視認され、結合された生成物についてのみシフトが観察されたことを示した。
【実施例5】
【0380】
この実施例は、RNA/cDNA構築物が電気生理学実験においてどのように分析されたかを示す。RNA/cDNA構築物を得るために、10Tヘアピン(その5’末端でリン酸基に結合し、その3’末端で4つのiSpC3スペーサーに結合した配列番号29であって、4つのiSpC3スペーサーは反対側の末端で配列番号28の5’末端と結合している、配列番号29)は、ホタルルシフェラーゼmRNA(RNA X1、最も5’のヌクレオチドとして5’−ヘキシニル−Gを有し、3’ポリAテールを有する配列番号26のオープンリーディングフレームを有するmRNA)の3’末端にライゲーションされた。ライゲーション前に、クリック化学を使用して、実施例3に記載されるように、アジドを有するDNA(その3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合した配列番号22であって、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号23の5’末端と結合し、配列番号23は、3’末端に3アジドNが結合している、配列番号22)を5’−ヘキシニル−Gを有するホタルルシフェラーゼmRNA(RNA X1、最も5’のヌクレオチドとして5’−ヘキシニル−Gを有し、3’ポリAテールを有する配列番号26のオープンリーディングフレームを有するmRNA)の5’末端に結合させた。ヘアピンライゲーション後、逆転写を行った。
【0381】
材料および方法
クリック反応
5’−ヘキシニル−Gを有するホタルルシフェラーゼmRNA(最も5’のヌクレオチドとして5’−ヘキシニル−Gを有し、3’ポリAテールを有する配列番号26のオープンリーディングフレームを有するmRNA)のRNAは、実施例3Bのクリック反応に記載されるように、アジドを有するDNA(DNA X1、その3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合した配列番号22であって、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号23の5’末端と結合し、配列番号23は、3’末端に3アジドNが結合している、配列番号22)にライゲーションされた。この試料を試料3Bとして示した。
【0382】
ヘアピンライゲーションおよびRT
次に、実施例4に記載されるように、試料3B(DNA/RNA 3B)を10Tヘアピンにライゲーションし、逆転写した。試薬の体積および量を以下の表15および17に示し、熱サイクル条件を表16および表18に示す。ライゲーション/逆転写後に生成された試料を試料5Bとして示した。試料構築物の略画を
図15に示す。
【0383】
【表15】
【0384】
【表16】
【0385】
【表17】
【0386】
【表18】
【0387】
電気生理学
1に記載されるように、テザーを試料5Bに対してアニーリングした(セクション1.2参照)。試料5B(4μl)およびT4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C(0.36μl、3.8μM、突然変異E94C/C109A/C136A/A360C、続く(ΔM1)G1を有する配列番号14)を緩衝液(500mM KCl、25mMリン酸カリウム、pH8.0の1221μL)に希釈した。MgCl
2(13μL、1M)およびATP(65μL、100mM)を試料5B(DNA/RNA/cDNA 5B)の緩衝液混合物に添加して、総容量1300μLとした。
【0388】
電気的測定は、緩衝液(25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム pH 約8.0)中のブロックコポリマーに挿入された単一のMspAまたはCsgG−Eco−(Y51T/F56Q)−StepII(C)9(突然変異Y51T/F56Qを有する配列番号44、ここで、StepII(C)は配列番号45であり、C末端で結合される)ナノ細孔から得られたブロックコポリマーに挿入された単一の細孔を達成した後、次に、過剰のMspAまたはCsgGナノ細孔を除去するために、緩衝液(2mL、25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム、pH8.0)をシステムに流した。
【0389】
過剰の緩衝液(500mM KCl、25mMのリン酸カリウム、pH8.0)を試料の添加前にシステム内に流した。次に、最後に、試料5B(DNA/RNA/cDNA 5B)に結合したT4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360Cをナノ細孔システムに添加し、実験を−140mVで行い、ヘリカーゼによって制御されたDNA移動をモニターした。
【0390】
結果
試料5Bをナノ細孔システムに添加すると、ヘリカーゼによって制御されたDNA/RNA/cDNA移動が観察された。ヘリカーゼによって制御されたDNA/RNA/cDNAの移動事象の一例をMspAについては
図16(領域1〜5)に、またはCsgGについては
図22に示す。
図16中の鎖の種々の領域は、鎖がナノ細孔を通り移行する間に同定された;領域1は、クリック反応によって標的RNAに反応した非RNAポリヌクレオチドを表す;領域2=ホタルルシフェラーゼmRNA;領域3=mRNAにライゲーションされた10Tヘアピンに存在するiSpC3スペーサー;領域4=mRNAにライゲーションされた10TヘアピンのポリT領域;領域5=mRNAの逆転写によって生成されたcDNA。類似の特徴は、
図22のCsgG追跡において同定することができる。この実施例は、MspAまたはCsgGナノ細孔を通る、鎖DNA/RNA/cDNA(DNA鎖をmRNA鎖にライゲーションし、ヘアピンをそのmRNA鎖にライゲーションし、ヘアピンを用いて、mRNAを逆転写することによって形成される)(
図15に示される略画)の移動を制御するためにDNAヘリカーゼを使用することが可能であることを示した。
【実施例6】
【0391】
この実施例は、非RNAポリヌクレオチドが、ライゲーション前にキャップを除去することによって、5’メチルグアノシンキャップ(いくつかの天然の細胞性mRNAに相同である)を有するRNA鎖にどのように結合され得るかを示す。この場合において、キャップされたRNA鎖(5’から5’への三リン酸結合によって鎖の5’末端にライゲーションされた7−メチルグアノシンキャップを有する配列番号30)を使用し、次に、RNA5’ピロホスホヒドラーゼ(RppH)を用いてデカップリングし、その後、非RNAポリヌクレオチド(配列番号31の5’末端に結合した30SpC3スペーサーであって、配列番号31はその3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合し、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号32の5’末端と結合し、配列番号32は3’末端で4つの5−ニトロインドールに結合し、4つの5−ニトロインドールは反対側の末端でRNA配列CAAGGGと結合している、30SpC3スペーサー)にライゲーションされた。
【0392】
材料および方法
キャップされたRNA鎖(5’から5’への三リン酸結合によって鎖の5’末端に連結された7−メチルグアノシンキャップを有する配列番号30)の5’末端に非RNAポリヌクレオチドをライゲーションするために、デキャッピング酵素としてRppHを用いて、mRNAを最初にデキャッピングした。表19に列挙された試薬を混合し、次に、反応混合物を表20にあるプログラムに設定したサーモサイクラー上に置いた。その後、得られた反応混合物は、1μLの試料あたり1.8μLSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて生成された。続いて、非RNAポリヌクレオチド(配列番号31の5’末端に結合した30SpC3スペーサーであって、配列番号31はその3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合し、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号32の5’末端と結合し、配列番号32は3’末端で4つの5−ニトロインドールに結合し、4つの5−ニトロインドールは反対側の末端でRNA配列CAAGGGと結合している、30SpC3スペーサー)は、表21に列挙された試薬を混合し、表22にあるプログラムに設定されたサーモサイクラー上に混合物を置くことによってRNAにライゲーションされた。次に、試料混合物を140Vで60分間泳動させた、5%PAGE TBE−尿素変性BioRad Criterionゲルを用いて分析した。
【0393】
【表19】
【0394】
【表20】
【0395】
【表21】
【0396】
【表22】
【0397】
結果
TBE−尿素変性ゲル(
図17参照)を使用して、RNA鎖(配列番号30)のデキャッピング、その後の非RNAポリヌクレオチド(配列番号31の5’末端に結合した30SpC3スペーサーであって、配列番号31はその3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合し、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号32の5’末端と結合し、配列番号32は3’末端で4つの5−ニトロインドールに結合し、4つの5−ニトロインドールは反対側の末端でRNA配列CAAGGGと結合している、30SpC3スペーサー)とのライゲーションの成功を分析した。
図17のレーン4は、RNA鎖(配列番号30、レーン2に示され、Aと表示された対照)のレベルより上に観察された追加のバンド(Cと表示される)を示し、これは、非RNAポリヌクレオチド(配列番号31の5’末端に結合した30SpC3スペーサーであって、配列番号31はその3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合し、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号32の5’末端と結合し、配列番号32は3’末端で4つの5−ニトロインドールに結合し、4つの5−ニトロインドールは反対側の末端でRNA配列CAAGGGと結合している、30SpC3スペーサー)の成功したライゲーションが、約40%の効率で生じたことを示した。
【実施例7】
【0398】
この実施例は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から抽出された細胞性mRNAからどのように2D(RNAセンスおよびDNAアンチセンス)ライブラリーを調製して、ナノ細孔を通る、天然サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のmRNA鎖の、DNAヘリカーゼによって制御された移動を可能にするのかを示す。
【0399】
材料および方法
2D(RNAセンスおよびDNAアンチセンス)ライブラリーは、mRNAの3’末端にヘアピンをライゲーションし、mRNAの5’末端をデキャッピングし、逆転写してDNA相補体を作出し、mRNAの5’末端に非RNAポリヌクレオチドをライゲーションさせることによって、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から抽出された細胞性mRNAから調製された。
【0400】
3’ヘアピンをライゲーションする
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のポリA+mRNAをClontechから購入した。mRNAのポリAテールにハイブリダイズするヘアピンは、以下の表23に示される試薬を混合し、下記の表24に示されるプログラムを具備するサーモサイクラーに混合物を入れることによってmRNAにライゲーションされた。次に、1μLの試料あたり1.8μLのSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて混合物を精製し、16μlのNF H
2O中に溶出させた。
【0401】
【表23】
【0402】
【表24】
【0403】
デキャッピング
5’から5’への三リン酸結合を介して5’末端に連結された7−メチルグアノシンキャップを有するRNA鎖(配列番号30)の5’末端に非RNAポリヌクレオチドをライゲーションさせる前に、RNA−5’−ピロホスホヒドロラーゼ(RppH)によってキャップを酵素的に除去した。デキャッピングは、以下の表25の試薬を混合し、以下の表26にあるプログラムに設定されたサーモサイクラーに混合物を入れることによって達成された。次に、得られた反応混合物は、1μLの試料あたり1.8μLのSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて精製され、12μlのNF H
2Oに溶出させた。
【0404】
【表25】
【0405】
【表26】
【0406】
RT
デキャッピング後、Life TechnologiesスーパースクリプトIIを用いて逆転写を行った。以下の表27の試薬を製造業者のプロトコルに従って混合し、表28のプログラムに設定したサーモサイクラー上に置いた。
【0407】
【表27】
【0408】
【表28】
【0409】
次に、この混合物は、1μLの試料あたり1.8μLのSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて精製され、10μlのNF H
2Oに溶出させた。
【0410】
非RNAポリヌクレオチドライゲーション
非RNAポリヌクレオチド(配列番号31の5’末端に結合した30SpC3スペーサーであって、配列番号31はその3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合し、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号32の5’末端と結合し、配列番号32は3’末端で4つの5−ニトロインドールに結合し、4つの5−ニトロインドールは反対側の末端でRNA配列CAAGGGと結合している、30SpC3スペーサー)は、表29に列挙された試薬を混合し、表30にあるプログラムに設定されたサーモサイクラー上に混合物を置くことによって、逆転写されたmRNAにライゲーションされた。非RNAポリヌクレオチドライゲーション後に生成された試料を試料7Aとして示した。
【0411】
5’リーダーを以下によってライゲーションした。
【0412】
【表29】
【0413】
【表30】
【0414】
ヘアピン精製
試料EXは、配列特異的テザーおよびLifetech MyOne C1ストレプトアビジンビーズを介して、リガーゼおよび未反応成分から精製された。
【0415】
試料7Aは、1.25μlの100μMテザーを30μlの試料7Aおよび8.75μlのNF H
2Oと混合し、15分間室温で混合物をインキュベートすることによって、テザー(/5desthiobiotin/TT/iSp18//iSp18//iSp18//iSp18//iSp18//iSp18/(配列番号65)/iSp18//iSp18//iSp18//iSp18//iSp18//iSp18/TT/3 CholTEG/)にハイブリダイズさせた。
【0416】
磁気ラックを使用して、20μlのMyOne C1ストレプトアビジンビーズを200μlの1×結合および洗浄緩衝液(B&W緩衝液)を用いて、製造者によって明記されるように洗浄し、次に40μlの2×B&W緩衝液に再懸濁した。
【0417】
Lifetechにより明記された2×B&W緩衝液
10mM TRIS−HCl pH7.5
1mM EDTA
2M NaCl
【0418】
40μlのテザード試料7Aを40μlのストレプトアビジンビーズに添加し、ローラー上で15分間インキュベートした。次に、この溶液を磁気ラック上に置き、製造者の指示に従って1×B&W緩衝液で2回洗浄した。
【0419】
ビーズにH
2O中の133μMビオチンの15μLを添加し、37℃で10分間加熱することにより、試料をストレプトアビジンビーズから溶出させた。チューブを直ちに磁気ラック上に置き、上清をビーズから除去した。この生成物は精製試料であり、試料7Bとして示された。
【0420】
電気生理学
試料7B(9μl)は、3μlの(1μMテザリングオリゴ(配列番号66/iSp18//iSp18//iSp18//iSp18//iSp18//iSp18/TT/3CholTEG/)、750mM KCl、125mMリン酸カリウム緩衝液 pH7、および5mM EDTA)を混合し、混合物を室温で20分間インキュベートすることによりテザリングオリゴにハイブリダイズした。
【0421】
次に、このテザード試料7Bを2μlの17.4μM T4 Dda(E94C/F98W/C109A/C136A/K194L/A360C(突然変異E94C/F98W/C109A/C136A/K194L/A360C、続いて(ΔM)G1を有する配列番号8))とともに15分間インキュベートした。次に、2.1μlの800μM TMADは、インキュベートされた混合物に添加され、室温で10分間維持された。その後、この試料を緩衝液(500mM KCl、25mMリン酸カリウムpH8.0の282μL)に希釈し、2μlの(70μM ATPおよび75μM MgCl
2)と混合した。
【0422】
電気的測定は、緩衝液(25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム pH 約8.0)中のブロックコポリマーに挿入された単一のMspAナノ細孔から得られた。ブロックコポリマーに挿入された単一の細孔を達成した後、次に、いずれもの過剰のMspAナノ細孔を除去するために、緩衝液(2mL、25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム、pH8.0)をシステムに流した。
【0423】
試料の添加前に、過剰の緩衝液(500mMのKCl、25mMリン酸カリウム、pH8.0)をシステムに流した。次に、最後に、試料3Aに結合したT4 Dda−E94C/A360Cをナノ細孔システムに添加し、実験を−120mVで行い、ヘリカーゼによって制御されたDNA移動をモニターした。
【0424】
結果
図19は、試料7Bを添加した場合の単一のナノ細孔からのイオン電流記録を示す。電気生理学実験は、様々な長さの2D鎖(異なる天然の細胞性mRNA転写物の長さに対応する)を用いて、良好なスループットを示した。
図19はまた、RNAがDNAに対して異なる平均振幅および範囲を有することを実証する。したがって、RNA配列およびDNA配列が同じ場合でさえ、平均振幅および範囲の関数として、RNAおよびDNAを互いに区別することができる。
【実施例8】
【0425】
本実施例は、DNAヘリカーゼ、Hel308Mbu−E284C/S615C(突然変異E284C/S615Cを有する配列番号8)がロードされ、続いて、ヘリカーゼにより制御されてRNAが細孔を通り移動することを促進にするために、DNA含有リーダーがメッセンジャーRNA(mRNA)にどのように結合されるのかを示す。1.9kbのmRNAをTrilink Biotechから購入した。DNA含有リーダーをmRNAの3’末端にライゲーションした。次に、Hel308は、リーダー中のDNA結合部位にロードされ、基質は細孔によって分析された。
【0426】
材料および方法
いくつかのオリゴと予めアニーリングされたDNA含有リーダー(その3’末端で4つのiSp18スペーサーに結合した配列番号35(5’リン酸を有する)であって、4つのiSp18スペーサーは反対側の末端で配列番号36の5’末端と結合し、配列番号36はその5’末端で30個のiSpC3スペーサーに結合している、配列番号35は、配列番号37、38および39(3’コレステロールTEGを有する)とアニーリングされた)は、表31に列挙された試薬と混合し、表32におけるプログラムに設定されたサーモサイクラー上に混合物を置くことによって、mRANにライゲーションされた。
【0427】
【表31】
【0428】
【表32】
【0429】
次に、この混合物は、Agencourt Ampure SPRIビーズを、1μLの試料あたり1.8μLのSPRIビーズの比で精製された。
【0430】
逆転写
スーパースクリプトIIキットを用いて、表33に列記された試薬を混合し、表34のプログラムに設定されたサーモサイクラーに混合物を置くことにより、試料を逆転写した。
【0431】
【表33】
【0432】
【表34】
【0433】
次に、この混合物は、1μLの試料あたり1.8μLのSPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズを用いて精製された。Hel308Mbu−E284C/S615C(突然変異E284C/S615Cを有する配列番号8)は、7kda Zebaカラムを用いて、50mM HEPES pH8、100mM KAcに緩衝液交換した。逆転写されたRNA試料は、等容量の100mM HEPES pH8、200mM KAcと混合し、次に、1:100のモル比でHel308Mbu−E284C/S615Cと混合し、100mM KPhos pH8、100mM NaCl、5mM EDTA、0.1%TWEENに緩衝液交換された。DMFに溶解させた20mM BMOEは、100mM KPhos pH8、100mM NaCl、5mM EDTA、0.1%TWEENに5mMの濃度になるように添加された。この5mMのBMOE溶液は、RNAとHel308の混合物に添加して、最終濃度40μM BMOEとした。この溶液を室温で2時間インキュベートした。次に、溶液を試料1μLあたり1.8μL SPRIビーズの比でAgencourt Ampure SPRIビーズに結合させた。EtOH混合物でSPRIビーズを洗浄する代わりに、20%PEG、2.5M NaCl、50mM Trisの修飾された洗浄緩衝液による一回洗浄を使用した。試料を30μlの500mM KCl、25mMリン酸カリウム、pH8中で溶出させた。これは、試料6として知られた。
【0434】
電気生理学
試料6(4μl)を緩衝液(500mM KCl、25mMリン酸カリウム pH8、2mM ATP、2mM MgCl
2、295μl)と混合した。
【0435】
電気的測定は、緩衝液(25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム、pH 約8.0)中のブロックコポリマーに挿入された単一のMspAナノ細孔から得られた。ブロックコポリマーに挿入された単一の細孔を達成した後、次に、過剰のMspAナノ細孔を除去するために、緩衝液(2mL、25mMリン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェリシアン化カリウム、pH8.0)をシステムに流した。
【0436】
試料6を添加する前に、過剰の緩衝液(500mM KCl、25mMリン酸カリウム pH8.0)をシステムに流した。最後に、試料6を細孔システムに添加し、実験を−140mVで行い、ヘリカーゼによって制御されるDNAの移動をモニターした。
【0437】
結果
この実施例は、DNAヘリカーゼ、Hel308Mbu−E284C/S615C(突然変異E284C/S615Cを有する配列番号8)がロードされることを容易にするためにDNA含有リーダーがどのようにメッセンジャーRNA(mRNA)に結合され、次に、RNAのヘリカーゼ制御の移動がどのように観察されたのかを示す。ヘリカーゼ制御されたRNA移動の例を
図20に示す。
本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.標的RNAポリヌクレオチドを特徴付けるための方法であって、
a)(i)非RNAポリヌクレオチドを含むように修飾されているRNAポリヌクレオチド、および(ii)DNAヘリカーゼ酵素を用意するステップ;
b)a)において用意された前記RNAポリヌクレオチドおよびDNAヘリカーゼ酵素を膜貫通細孔と接触させて、前記DNAヘリカーゼが前記膜貫通細孔を通るRNAポリヌクレオチドの移動を制御するステップ;
c)前記RNAポリヌクレオチドが膜貫通細孔に対して移動する間に1つ以上の測定値を得るステップであって、前記測定値は、前記RNAポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示し、それによって前記標的RNAポリヌクレオチドを特徴付けるステップ
を含む方法。
2.前記非RNAポリヌクレオチドが、DNAヘリカーゼ結合部位またはDNAアダプターを含む、上記1に記載の方法。
3.前記DNAヘリカーゼ結合部位または前記DNAアダプターがリーダー配列を含む、上記2に記載の方法。
4.前記リーダー配列が優先的に前記細孔に入り込む、上記3に記載の方法。
5.前記非RNAポリヌクレオチドが、前記RNAポリヌクレオチドと前記非RNAポリヌクレオチドのそれぞれの少なくとも1つの反応性基の間に形成される共有結合によって前記RNAポリヌクレオチドに結合される、上記1〜4のいずれかに記載の方法。
6.前記非RNAポリヌクレオチドが、化学的または酵素的ライゲーションによって前記RNAポリヌクレオチドにライゲーションされる、上記1〜4のいずれかに記載の方法。
7.前記非RNAポリヌクレオチドが前記RNAポリヌクレオチドにハイブリダイズされる、上記1〜4のいずれかに記載の方法。
8.前記1つ以上の特徴が、(i)前記RNAポリヌクレオチドの長さ、(ii)前記RNAポリヌクレオチドの素性、(iii)前記RNAポリヌクレオチドの配列、(iv)前記RNAポリヌクレオチドの二次構造、および(v)前記RNAポリヌクレオチドが修飾されているかどうか、から選択される、上記1〜7のいずれかに記載の方法。
9.前記RNAポリヌクレオチドの1つ以上の特徴が、電気的測定および/または光学的測定によって測定される、上記1〜8のいずれかに記載の方法。
10.ステップc)が、前記RNAポリヌクレオチドが膜貫通細孔に対して移動する間に膜貫通細孔を通過する電流を測定するステップであって、前記電流は、前記RNAポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示し、それによって前記RNAポリヌクレオチドを特徴付けるステップを含む、上記1〜9のいずれかに記載の方法。
11.前記RNAポリヌクレオチドが、メチル化による、酸化による、損傷による、1つ以上のタンパク質を用いたまたは1つ以上の標識、タグもしくはスペーサーを用いた修飾を含む、上記1〜10のいずれかに記載の方法。
12.前記RNAポリヌクレオチドが、1つ以上のアンカーを用いて前記膜にカップリングされる、上記1〜11のいずれか1項に記載の方法。
13.前記DNAヘリカーゼが、ポリヌクレオチド結合ドメインの開口部のサイズを減少させるための修飾を含み、前記開口部を通って、少なくとも1つの立体配座状態で、RNAポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離することができる、上記1〜12のいずれかに記載の方法。
14.前記移動が、一連の1つ以上のDNAヘリカーゼによって制御される、上記1〜13のいずれかに記載の方法。
15.前記1つ以上のヘリカーゼが、a)Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、XPDヘリカーゼまたはDdaヘリカーゼ;(b)(a)のヘリカーゼのいずれかに由来するヘリカーゼ;ならびに(c)(a)および/または(b)のヘリカーゼのいずれかの組み合わせである、上記1〜14のいずれかに記載の方法。
16.ヘリカーゼに由来し、前記ポリヌクレオチドに結合するが、ヘリカーゼとして機能しないように修飾されている1つ以上の分子ブレーキをさらに含む、上記1〜15のいずれかに記載の方法。
17.前記膜貫通細孔がタンパク質細孔または固体状態細孔である、上記1〜16のいずれかに記載の方法。
18.前記膜貫通タンパク質細孔がタンパク質細孔であり、溶血素、ロイコシジン、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)ポリンA(MspA)、MspB、MspC、MspD、CsgG、リセニン、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、ナイセリア(Neisseria)自己輸送体リポタンパク質(NalP)およびWZA由来である、上記17に記載の方法。
19.移動がDNAヘリカーゼ酵素によって制御されるとき、膜貫通細孔に対して標的RNAポリヌクレオチドを移動させる方法であって、
a)(i)非RNAポリヌクレオチドを含むように修飾されているRNAポリヌクレオチド、および(ii)DNAヘリカーゼ酵素を用意するステップ;
b)a)において用意された前記RNAポリヌクレオチドおよびDNAヘリカーゼ酵素を膜貫通細孔と接触させて、前記DNAヘリカーゼが前記膜貫通細孔に対して前記RNAポリヌクレオチドの移動を制御するステップ
を含む方法。
20.ステップ(b)の前に、前記DNAヘリカーゼ酵素を、前記修飾されたRNAポリヌクレオチドに結合させるステップを含む、上記19に記載の方法。
21.前記RNAポリヌクレオチドが、DNAヘリカーゼ結合部位またはDNAアダプターを含むように修飾されている、上記19または20に記載の方法。
22.前記膜貫通細孔に対する前記RNAポリヌクレオチドのより一貫した移動を提供する、上記19〜21のいずれかに記載の方法。
23.RNAポリヌクレオチドおよびDNAポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、前記DNAポリヌクレオチドがDNAヘリカーゼ結合部位を含むまたはそれだけを含む、ポリヌクレオチド。
24.ナノ細孔に優先的に入り込むリーダー配列をさらに含む、上記23に記載のポリヌクレオチド。
25.ポリヌクレオチド鎖上にバーコード部分をさらに含む、上記23または24に記載のポリヌクレオチド。
26.バーコード部分が、前記リーダー配列と前記DNAヘリカーゼ結合部位の間に位置される、上記25に記載のポリヌクレオチド。
27.RNAポリヌクレオチドとDNAヘリカーゼの組み合わせであって、前記RNAポリヌクレオチドの一部が、非RNAポリヌクレオチドを含み、前記DNAヘリカーゼと相互作用するように修飾されている、組み合わせ。
28.特徴付けのために任意の標的RNAポリヌクレオチドに結合するように適合されている非RNAポリヌクレオチドを含む、標的RNAポリヌクレオチドを特徴付けるためのキット。