特許第6824891号(P6824891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センター ナショナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィークの特許一覧 ▶ ユニベルシテ クロードゥ ベルナー −リヨン1の特許一覧 ▶ セペウ リヨン フォルマション コンティニュ エ ルシェルシュ−セペウ リヨン エフセエールの特許一覧

特許6824891鉄系プレ触媒及びα−オレフィン類の重合におけるその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6824891
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】鉄系プレ触媒及びα−オレフィン類の重合におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/70 20060101AFI20210121BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   C08F4/70
   C08F10/00 510
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-546897(P2017-546897)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公表番号】特表2018-507941(P2018-507941A)
(43)【公表日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2016055056
(87)【国際公開番号】WO2016142436
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】1551954
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】513246470
【氏名又は名称】ユニベルシテ クロードゥ ベルナー −リヨン1
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CLAUDE BERNARD−LYON1
(73)【特許権者】
【識別番号】517307049
【氏名又は名称】セペウ リヨン フォルマション コンティニュ エ ルシェルシュ−セペウ リヨン エフセエール
【氏名又は名称原語表記】CPE LYON FORMATION CONTINUE ET RECHERCHE−CPE LYON FCR
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ノルジック, セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】モンテイユ, ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】レノー, ジャン
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭38−1743(JP,B1)
【文献】 特公昭44−2234(JP,B1)
【文献】 特開2000−119327(JP,A)
【文献】 特開2001−247609(JP,A)
【文献】 特開2007−254704(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1580085(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102336850(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60〜4/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−オレフィン類の重合のためのプレ触媒であって、式:Fealc(LA)(LB)で表され、前記式中、
alcMgであり、
Xがハロゲンアニオンであり、
LAがルイス酸であり、
LBがルイス塩基であり、
uが0.001〜10であり、
vが1以上の整数であり、
wが1〜20であり、
yが0〜10であり、
zが0〜10である、プレ触媒。
【請求項2】
前記式中、
uが0.01〜0.5であり、
wが1.01〜3であり、
yが0.1〜1であり、
zが0.05〜0.5であることを特徴とする、請求項1に記載のプレ触媒。
【請求項3】
パウダー状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプレ触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレ触媒を調製するプロセスであって、
少なくとも1つの有機溶媒と、少なくとも1つの鉄塩と、少なくとも1つの無機担体とを含む懸濁液を調製すること、
前記懸濁液を混合すること、
前記溶媒を除去すること、及び
式:Fealc(LA)(LB)で表されるプレ触媒を得ること
からなる、プロセス。
【請求項5】
前記懸濁液を、10℃〜200℃の温度で混合することを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記鉄塩が、FeCl、FeBr、FeI、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記無機担体が、式:Malc表され、式中、
alcMgであり、
n=1又は2であり、
Xがハロゲンであることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
エチレン又はプロペンの重合のためのプロセスであって、
反応器において、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレ触媒を、少なくとも1つの炭化水素溶媒と、少なくとも1つのアルキル化剤と、任意に水素との存在下で溶解させることにより活性化させるステップ、
エチレン又はプロペンを前記反応器に加えるステップ、及び
エチレン又はプロペンを重合するステップ
からなる、プロセス。
【請求項9】
少なくとも1つのα−オレフィンもまた前記反応器に加え、該α−オレフィンの存在下で前記エチレン又はプロペンを共重合し、プロペン共重合の場合は該α−オレフィンがプロペン以外であることを特徴とする、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記α−オレフィンが、式:CH=CHRで表され、式中、Rが不飽和を含まない炭化水素基と、α位置において末端不飽和を有する少なくとも1つの共役又は非共役の不飽和を含む炭化水素基と、芳香族炭化水素基とからなる群より選択されることを特徴とする、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記α−オレフィンが、アクリレート、メタアクリレート、ビニルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ビニルエーテル、及びビニルハライドより選択されることを特徴とする、請求項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記α−オレフィンが、
式:CH=CRで表され、式中、
=H又はCHであり、

C(=O)−O−アルキル、
O−(C=O)−アルキル、
CN、
C(=O)−N−(アルキル)
O−アルキル、及び
ハロゲン
のいずれかであり、前記アルキル基が直鎖状又は分岐鎖状C2n−1基であり、nが1〜100の範囲の整数であるモノマーと、
式:CH=CRで表され、R=R=ハロゲンであるモノマーと
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記直鎖状又は分岐鎖状C2n−1基において、nが1〜10の範囲の整数である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
0.01mol%〜99.99mol%のエチレン又はプロペンと0.01mol%〜99.99mol%のα−オレフィンとの共重合からなることを特徴とする、請求項9〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
90mol%〜99.9mol%のエチレン又はプロペンと0.1mol%〜10mol%のα−オレフィンとの共重合からなることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記アルキル化剤が、
式:[AlR3−pClで表され、式中、p=0、1、又は2であり、nが0でない整数であり、Rが水素原子又はアルキルであるアルミニウムアルキル化剤と、
メチルアルミノキサン(MAO)と、
ZnEtと、
MgBuと、
MgBuOctと
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項8〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄系プレ触媒、その取得方法、及びα−オレフィン類(主として、エチレン及びプロペン)とその他のビニルモノマー(すなわち、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、スチレン系樹脂などの、α−オレフィン、1,3−ジエン、極性ビニルモノマー)との重合又は共重合におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
HDPE及びLLDPE(高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレン)を得るためのα−オレフィン類(すなわち、エチレン及びα−オレフィン)の重合は、均一又は不均一な環境において、以下の触媒、すなわち
チーグラーナッタマルチサイト触媒系であって、特に、チタニウムなどのIV族金属を有する触媒系、
クロム系フィリップスタイプマルチサイト触媒系、又は
メタロセンモノサイト触媒系であって、特に、チタニウム又はジルコニウムなどのIV族金属を有する触媒系
のうちの1つの存在下で行われるのが一般的である。
【0003】
チーグラーナッタ及びフィリップスのようなマルチサイト触媒系を用いることにより、高モル質量において存在する比較的大きなサイズ分布(分散度)を有するポリオレフィン類を製造することができ、比較的簡単に、ポリマーに非常に高い機械的特性(高モル質量)が付与される。したがって、チーグラーナッタ触媒系の選択は、HDPE及びLLDPEポリオレフィン類を合成するための手法である。さらに、チーグラーナッタ及びフィリップス触媒系は、既存の産業プロセス(気相、分散(「スラリー」)など)に完全に適した固体系である。
【0004】
メタロセンモノサイト触媒系を用いることにより、狭いモル質量分布を有し、結晶化傾向が強く潜在的に極めて直鎖状の、制御された構造のポリオレフィン類を製造することができる。しかしながら、これらの系は、準備が比較的煩雑かつ複雑である。鉄についていくつかの均一系が報告されている(ブルックハート及びギブソン触媒は、ビスイミノピリジンリガンドを有する)。これにより、高モル質量及び高分散のポリエチレンの合成が可能になるが、LLDPEの合成に必須のエチレンとα−オレフィン類との共重合は可能にならない。このことが、これらの産業的発展を妨害している。
【0005】
新しい鉄系の触媒系が開発されている。これらの触媒系は、先行技術のチーグラーナッタ及びフィリップスの利点を有し、さらに、比較的狭いモル質量分布を有するポリマーの製造を可能にする。さらに、これらは、豊富で経済的な非毒性金属、すなわち鉄を基礎としている。
【0006】
これらの触媒系のいくつかは、得られるポリオレフィン特性に関して相対的に満足し得るものである。しかしながら、触媒系のコストを低減し、これらの調製、安定性、及び使用の容易さを向上させると共に、得られるポリオレフィン類のモル質量、特に、モル質量分布の分散度(モル質量分布の横幅)を制御することが、依然として必要とされている。
【0007】
それにもかかわらず、先行技術の不均一系では、極性α−オレフィン類の共重合が可能とならない。このような共重合には、均一系パラジウム触媒を用いることが主に報告されているが、大きな工業的規模では利用可能でない(Bas de Bruin et al.Chem.Soc.Rev.2013、42、5809−5832;Nozaki et al.Acc.Chem.Res 2013、46、1438−1449)。
【0008】
出願人らは、チーグラーナッタ及びフィリップスのようなマルチサイト触媒系と同じ利点を有し、Ti及びCr金属それぞれを、豊富で経済的な非毒性金属、すなわち鉄で置換する新規の技術を開発した。
【0009】
さらに、この鉄を中心とする技術により、モノサイト触媒系により必要とされるようなエチレンとα−オレフィン類との共重合も可能になる。この技術により、極性α−オレフィン類の共重合もまた可能になる。これにより、ポリマー鎖の直線性と同様に、ポリオレフィンの分子質量の制御も可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bas de Bruin et al.Chem.Soc.Rev.2013、42、5809−5832
【非特許文献2】Nozaki et al.Acc.Chem.Res 2013、46、1438−1449
【発明の概要】
【0011】
本発明により、エチレン(CH=CH)又はプロペン(CH=CH−CH)、α−オレフィン類(極性及び非極性)、並びに1,3−ジエンなどのモノマーから、不均一鉄系触媒系によるポリマー及びコポリマーの合成が可能になる。
【0012】
本発明の触媒系は、マルチステップ有機合成を必要としない無機リガンドを使用するため、調製が比較的容易である。また得られるポリマーは、既述のとおり、最終的な材料に優れた機械的特性を付与する、比較的制御された構造と高モル質量とを有する。
【0013】
本発明は、その他のビニルモノマー(すなわち、α−オレフィン、1,3−ジエン)とのエチレン重合及びエチレン共重合プロセスにおける、チタニウムなどのIV族金属を使用するチーグラーナッタタイプ触媒、及び、クロムを基礎とするフィリップスタイプ触媒の代替である。本発明は、チタニウム、ジルコニウム、又はクロムなどの金属の代わりに鉄を使用することに基づくものである。
【0014】
出願人らは、先行技術のチーグラーナッタ不均一系触媒に潜在的に対抗する、コスト、耐久性、毒性、及び使用の容易さを有する鉄系プレ触媒を開発した。鉄系化合物の使用は、持続可能な開発のポリシーを順守するというさらなる利点を有する。
【0015】
これらの観点に加えて、鉄の種々の酸化度には、潜在的に、触媒サイクルに一般的に必要とされる複数の中間物との互換性がある。これは特に、鉄の魅力である。
【0016】
このプレ触媒は、鉄前駆体、ルイス酸、及び無機担体から得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
より具体的には、本発明は、α−オレフィン類の重合のためのプレ触媒であって、式:Fealc(LA)(LB)で表され、
alcがアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類であり、
Xがアニオン、好ましくはハロゲンアニオン(より好ましくは、Cl)又は異なるハロゲン化及び/又は非ハロゲン化アニオンの混合物(例えば、SO2−又はPO3−)であり、
LAがルイス酸であり、
LBがルイス塩基であり、
uが0.001〜10、有利には0.01〜0.5の範囲であり、
vが1以上の整数であり、
wが1〜20、有利には1.01〜3の範囲であり、
yが0〜10、有利には0.1〜1の範囲であり、
zが0〜10、有利には0.05〜0.5の範囲である、
プレ触媒に関する。
【0018】
好ましい実施形態によれば、yは0を上回る。他の好ましい実施形態によれば、zは0を上回る。他の好ましい実施形態によれば、y及びzは0を上回る。
【0019】
本発明のプレ触媒では、X型アニオンと組み合わせられるMalcは、固体プレ触媒の無機担体を構成する。
【0020】
前記プレ触媒は(Malc及びXに基づく)無機担体と組み合わせられた鉄を含む。鉄により、α−オレフィン類とその他のビニルモノマーとの重合及び共重合のための触媒を生成することができる。このプレ触媒は、重合反応を許容する活性種よりも安定した種を生成する。
【0021】
ルイス酸(LA)は、電子対を受容し得る1つの原子を有する分子を表す。前記原子は、周期表の主族からのものであり、特に、ホウ素又はアルミニウムである。
【0022】
有利には、ルイス酸(LA)は、SiCl、BCl、AlCl、SnCl、BiCl、ZnCl、CaCl、LiCl、KCl、NaCl、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0023】
ルイス塩基(LB)は、電子対を生成し得る1つの原子を有する分子を表す。前記原子は、周期表の主族からのものであり、特に、酸素、窒素又はリンであることが有利である。
【0024】
最も有利には、ルイス塩基(LB)は、アルコール、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、ジエステル、アミン、ホスフィン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0025】
処理の観点から、もし、ルイス塩基(LB)と無機担体とが事前に組み合わせられていたならば、これらは共に導入されてもよい。例えば、MgCl(THF)又はMgCl(EtOH)[0≦(p;t)≦3]は、無機固体をTHF(テトラヒドロフラン)又はエタノール中に環流にて分散させることにより、調製することができる。これは一般的に、チーグラーナッタ触媒のための効果的な支持体のよい例である。
【0026】
全ての構成要素の存在下において、鉄塩の含浸の間にプレ触媒が合成されている時に、ルイス塩基(LB)を導入することもできる。例えば、THFを、このステップの間に反応溶媒として使用することができる(鉄塩は、多くの場合、THFに可溶である)。プレ触媒が取得された後、残留THF分子はルイス塩基(LB)分子とみなされる。
【0027】
本発明はまた、式:Fealc(LA)(LB)で表されるプレ触媒の調製方法に関し、該調製方法において、
少なくとも1つの有機溶媒と、少なくとも1つの鉄塩と、少なくとも1つの無機担体と、任意で少なくとも1つのルイス塩基LBと、任意で少なくとも1つのルイス酸LAとを含む懸濁液、好ましくはコロイド状懸濁液を調製し、
前記懸濁液を有利には10℃〜200℃の温度で混合し、
前記溶媒を除去し、
式:Fealc(LA)(LB)で表されるプレ触媒を取得する。
【0028】
前記Fealc(LA)(LB)の合成は、水を存在させずに実施されることが好ましい。
【0029】
特定の一実施形態では、懸濁液(好ましくは、コロイド状懸濁液)は、ルイス酸及び/又はルイス塩基も含む。懸濁液は、少なくとも1つのルイス酸を含むことが有利である。
【0030】
この懸濁液は、溶媒以外に、
0.001mol%〜50mol%、有利には0.01mol%〜1mol%の鉄塩と、
10mol%〜99.999mol%、より有利には50mol%〜95mol%の無機担体と、
0mol%〜50mol%、より有利には0.1mol%〜10mol%のルイス酸と
を含む。
【0031】
プレ触媒を調製するために使用される有機溶媒は、塩素化溶媒又は酸素化溶媒であることが有利である。
【0032】
特定の一実施形態では、有機溶媒はルイス塩基であってもよい。
【0033】
有機溶媒は、特に、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0034】
有機溶媒としては、ジクロロメタン又はテトラヒドロフランが特に有利である。
【0035】
鉄塩は、一般的には、鉄が酸化状態+II又は+IIIを有することが有利な化合物である。これは、特に、ハロゲン化鉄(II)又は(III)塩であり得る。
【0036】
鉄塩は、FeCl、FeBr、FeI、FeO、Fe(SO)、及びこれらの組み合わせからなる鉄(II)塩の群より選択されることが有利である。
【0037】
鉄塩は、水和されていてもよいし、されていなくてもよい。しかしながら、水和されていない形態が好ましい。
【0038】
鉄塩は、室温で固体の化合物であることが有利である。これにより、チーグラーナッタプロセスにおいて従来使用されているチタニウム前駆体(TiCl)よりも容易に使用し得る。実際、TiClは、室温で液体である。さらに、鉄塩は、一般的に、通常の産業的な保管条件の下でより高い安定性を示す。TiClは、保管中に加水分解し、塩酸を放出する可能性がある。このことは、安全についての有害な反響を示す。
【0039】
無機担体は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、もしくはマグネシウム塩であることが有利である。
【0040】
無機担体は、特に、式:Malc又はMalcn/2で表されていてもよく、式中、Malcはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、n=1又は2であり、Xはアニオンである。Xは、Clなどのハロゲン、SO2−などの硫酸塩、又はPO3−などのリン酸塩であることが好ましい。
【0041】
無機担体は、MgCl、CaCl、LiCl、NaCl、KCl、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0042】
無機担体は、MgCl又はCaClであることが有利である。
【0043】
無機担体は、使用される有機溶媒において不溶性であることが有利である。一方、鉄塩、及び特にルイス酸及びルイス塩基は、有機溶媒において可溶性であることが有利である。
【0044】
特定の一実施形態によれば、Malc及びXを基礎とする無機担体は、特に、有機溶媒に添加される前にルイス塩基LBと組み合わせられていた場合は、ルイス塩基LBを含むことができる。
【0045】
本発明の範囲内において、少なくとも0.1gの化合物が100mLの有機溶媒に溶解し得る場合、該化合物は可溶性である。
【0046】
プレ触媒は、機械的攪拌によって調製されることが有利である。これらの条件は、鉄と、必要であれば無機担体上のルイス酸及びルイス塩基との含浸を特に簡素化することができる。
【0047】
さらに、プレ触媒は、有機溶媒において環流で調製されることが有利である。
【0048】
既述のとおり、プレ触媒は、10℃〜200℃の温度で調製されることが有利である。温度は20℃〜90℃に含まれることが有利である。
【0049】
したがって、本発明の特定の一実施形態によれば、有機溶媒は、機械的攪拌によって、1時間〜240時間、好ましくは24時間〜120時間にわたって、潜在的に環流下で維持され得る。
【0050】
このステップの開始時に、溶媒は除去される。特に有機溶媒を濾過又は蒸発させることにより、プレ触媒を有機溶媒から分離することができる。
【0051】
その後、プレ触媒は、例えば非極性溶媒、特にアルカン溶媒によって、乾燥前に、例えば真空中で洗浄されることが有利である。
【0052】
鉄系プレ触媒は、固体の形態で、特にパウダーの形態で提供されることが有利である。
【0053】
本発明はまた、少なくとも1つのα−オレフィン(極性又は非極性)又は1つの1,3−ジエンとのエチレン重合プロセス又はエチレン共重合プロセスにおけるこの鉄系プレ触媒の使用に関する。本発明はまた、エチレン、α−オレフィン(極性又は非極性)、又は1つの1,3−ジエンとのプロペンの重合及び共重合に関する。
【0054】
α−オレフィンは式:CH=CHRで表され、式中、Rが水素(エチレン)と、飽和炭化水素基(例えば、CH(プロペン)又は(CHCH(1−ヘキセン))と、α−オレフィンのビニル基と共役していても(又はしていなくても)よい少なくとも1つのC=C二重結合を有する炭化水素基(例えば、CH=CH(ブタジエンなどの1,3−ジエン))と、芳香族炭化水素基(例えば、C(スチレン))とからなる群より選択されることが好ましい。
【0055】
したがって、式:CH=CHRで表されるα−オレフィンは、ジエンと、ブタジエン又はイソプレンなどの共役ジエンと、スチレンと、式中、R=C2n−1であり、nが1〜100、好ましくは1〜10の範囲の整数であるα−オレフィンと、これらの混合物とからなる群より選択されてもよい。
【0056】
このα−オレフィンはまた、極性α−オレフィンであってもよい。
【0057】
極性モノマーは、式:CH=CRで表されるモノマーを含み、式中、R=H又はCHであり、Rは、
C(=O)−O−アルキル[例えば、エチルアクリレート及びブチルアクリレートといった(メタ)アクリレート類]、
O−(C=O)−アルキル[例えば、ビニルアセテートといったビニルエステル類]、
CN[(メタ)アクリロニトリル類]、
C(=O)−N−(アルキル)[(メタ)アクリルアミド類]、
O−アルキル[ビニルエーテル類]、
ハロゲン化物[すなわち、F、Clなどを含むビニルハライド類]
のいずれかであり、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C2n−1基であり、nが1〜100、好ましくは1〜10の範囲の整数である。
【0058】
極性モノマーは、式:CH=CRで表されるモノマーも含み、R=R=ハロゲン化物、例えば、F又はClである。
【0059】
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート類及びメタアクリレート類のモノマーを指す。同じ命名法が、アクリロニトリル類及びアクリルアミド類のモノマーにも適用される。
【0060】
極性モノマーは、1つ又は複数のハロゲン原子を含んでいてもよい。したがって、極性モノマーは、塩素化又はフッ素化モノマーであってもよい。
【0061】
したがって、本発明により、非限定的に、以下のコポリマーのいずれかの調製が可能になる。
エチレン/プロペン
エチレン/プロペン/ジエン(非共役)
エチレン/スチレン
エチレン/α−オレフィン
エチレン/極性モノマー
プロペン/極性モノマー
α−オレフィン/極性モノマー
ジエン/極性モノマー
スチレン/極性モノマー
エチレン/スチレン/極性モノマー
α−オレフィン/ジエン/極性モノマー
エチレン/プロペン/極性モノマー
【0062】
本発明のプレ触媒は、一般的に、重合媒体において触媒系が可溶性ではない不均一プロセス(気相、分散(「スラリー」)など)における、エチレン又はプロペンとその他のビニルモノマー(すなわち、α−オレフィン、1,3−ジエン)との重合又は共重合に使用される。
【0063】
エチレン又はプロペンの重合のためのプロセスは、
反応器において、本発明のプレ触媒を、少なくとも1つの炭化水素溶媒と、少なくとも1つのアルキル化剤と、任意に水素との存在下で溶解させることにより活性化させるステップ、
エチレン又はプロペンを前記反応器に加えるステップ、及び
エチレン又はプロペンを重合するステップ
を含む。
【0064】
エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィン(プロペン及び極性α−オレフィンを含む)及び/又は1,3−ジエンとを共重合するプロセスは、
反応器において、鉄プレ触媒を、少なくとも1つの炭化水素溶媒と、少なくとも1つのアルキル化剤と、任意に水素との存在下で溶解させることにより活性化させるステップ、
エチレン及び少なくとも1つのα−オレフィン(及び/又は1,3−ジエン)を前記反応器に加えるステップ、及び
エチレンとα−オレフィン(及び/又は1,3−ジエン)とを共重合するステップ
を含む。
【0065】
プロペン共重合プロセスも、以下の同じステップで行われる。これは特に、エチレン−プロペン−ジエン(EPDM)ターポリマーの合成にも関連する。
【0066】
したがって、特定の一実施形態によれば、少なくとも1つのα−オレフィンもまた、前記反応器に加えられる。したがって、エチレン又はプロペンは、このα−オレフィンの存在下で共重合される。プロペンの共重合においては、α−オレフィンはプロペン以外のものである。
【0067】
プレ触媒は、
プレ触媒、
アルカンなどの少なくとも1つの炭化水素溶媒、例えばヘプタン、及び
少なくとも1つのアルキル化剤
を含む分散剤の調製により活性化されることが有利である。
【0068】
プレ触媒を活性化するために使用される炭化水素溶媒は、有利にはアルカンである。炭化水素溶媒は、ヘプタン又はメチルシクロヘキサンであってもよい。産業において従来使用されるアルカンの混合物も適用される。
【0069】
プレ触媒を活性化するために使用されるアルキル化剤は、
式:[AlR3−pClで表され、式中、p=01又は2であり、nが0でない整数であり、Rが水素原子又はアルキルであり、例えば、AlMe、AlEt、Al(iBu)、AlEtCl、Al(iBu)H(DIBALH、水素化ジイソブチルアルミニウム)であるアルミニウムアルキル化剤と、
メチルアルミノキサン(MAO)と、
ZnEtと、
MgBu
MgBuOct(BOMAG;ブチルオクチルマグネシウム)と
からなる群より選択されることが有利である。
【0070】
アルキル化剤は、水素化ジイソブチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウムであることが好ましい。
【0071】
さらに、活性化は、圧力下で反応媒体に水素を加えることも含んでいてよい。
【0072】
プレ触媒を活性化した後、重合しようとする1つ又は複数のモノマーを反応器に入れる。
【0073】
例えば、反応器は、エチレン又はプロペンの5〜10バールの圧力下で用いることができ、任意で、水素の0.1〜3バールの圧力下で用いられることが好ましい。α−オレフィン(プロペンが共重合される場合は、プロペン以外)も5〜10バールの圧力で加えられてもよい。
【0074】
重合反応温度は、有利には100℃未満であり、より有利には50℃〜90℃である。
【0075】
重合反応時間は、有利には24時間未満であり、より有利には0.1時間〜3時間である。
【0076】
重合は、通常は、プレ触媒を活性化させるために使用される炭化水素溶媒において起こる。
【0077】
重合は、通常は、オートクレーブ反応器において行われる。
【0078】
エチレン又はプロペンが少なくとも1つのα−オレフィンの存在下で共重合される場合、該α−オレフィンは式:CH=CHRで表される。式中、Rは、不飽和を含まない炭化水素基(例えば、CH(プロペン)又は(CHCH(1−ヘキセン))と、α位置において末端不飽和を有する少なくとも1つの共役又は非共役の不飽和を含む炭化水素基(例えば、ブタジエンなどの1,3−ジエン)と、芳香族炭化水素基(例えば、スチレン)とからなる群より選択されるものであることが好ましい。
【0079】
式:CH=CHRで表されるα−オレフィンを、
ジエン、さらには共役ジエン、特にブタジエン又はイソプレンと、
スチレンと、
=C2n−1であり、nが1〜100、有利には1〜10の整数であるα−オレフィン類と、
これらの混合物と
からなる群の範囲内から選択することができる。
【0080】
特定の一実施形態によれば、共重合プロセスは、
0.01mol%〜99.99mol%、有利には90mol%〜99.9mol%のエチレン又はプロペンと、
0.01mol%〜99.99mol%、有利には0.1mol%〜10mol%のα−オレフィン(極性又は非極性)と
を共重合することを含む。
【0081】
当然、プロペンを共重合する場合は、プロペンとは異なるα−オレフィンが使用される。
【0082】
使用されるプレ触媒の量は、モノマー(エチレン+α−オレフィン又はプロペン+α−オレフィン)の合計重量に対して、有利には0.1重量ppm〜10000重量ppm、より有利には10重量ppm〜1000重量ppmである。
【0083】
本発明のプレ触媒を用いるプロセスにより得られるポリマーを、
特に、非溶媒によりアシストされる任意の析出ステップと、
濾過ステップと、
特に、溶媒と、必要に応じて非溶媒とを蒸発させることによる乾燥ステップと
によって、反応媒体から単離することができる。
【0084】
ポリマーを析出するために使用される非溶媒は、ポリマーを溶解しない溶媒である。非溶媒としては、特にアルコール、例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール等を用いることができる。
【0085】
これらの重合により結果として生じるポリマーは、本発明のプレ触媒における使用に適した固有の化学的及び機械的特性を有する。
【0086】
例えば、プレ触媒の1グラム当たり及び1時間当たり1000グラム程度の量のポリマー(例えば、ポリエチレン)を、少なくとも10バールのα−オレフィン類の存在下において、100℃未満の重合温度で得ることができる。
【0087】
重合プロセスにおいて本発明のプレ触媒を使用することで、複数の利点が提供される。そのうちのいくつかは、以下のとおりである。
・高モル質量直鎖状ポリオレフィン(10000〜10g/mol)を製造することができる可能性がある。
・プレ触媒を調製するために使用されるプレ触媒及び鉄塩は、固体であり、従来のチーグラーナッタ系と比較して、保管中に不活性化(劣化)に曝されることが少ない。従来のチーグラーナッタ系を調製するために使用されるチタニウム塩化物は、腐食液であり、これにより、その保管及び使用が、特に工業規模では困難であるが、本発明のプレ触媒はこれとは異なる。
・本発明の触媒を同じ条件下で使用できることを前提として、産業上、従来のチーグラーナッタ系を置換できる可能性がある。
【0088】
本発明及びその利益は、本発明を限定するためではなく、本発明を説明するための以下の例によって、より明確になる。
【実施例】
【0089】
本発明の3つのプレ触媒P1〜P3(例1〜3、表1)を用意し、エチレン(例4〜18、表2)を重合又は共重合するために使用した。
【0090】
<例1>式:Fe0.32MgCl2.7THF1.1(SiCl0.10で表されるプレ触媒P1の調製
100mL容のシュレンク管に、1gのMgCl(THF)1.5担体を不活性アルゴン雰囲気下で導入する。そのまま不活性アルゴン雰囲気下において、FeClを0.3g加え、その後1MのSiCl溶液20mL及びジクロロメタンを加える。次に、懸濁液を磁力によって室温で72時間攪拌する。72時間後、得られたプレ触媒にヘプタンを加え、上澄みを除去することにより、該プレ触媒を3回洗浄する。次に、プレ触媒を真空下において50℃で1時間乾燥させる。
【0091】
<例2>式:Fe0.42MgCl2.7THF1.2で表されるプレ触媒P2の調製
100mL容のシュレンク管に、1.2gのMgCl(THF)1.5担体を不活性アルゴン雰囲気下で導入する。そのまま不活性アルゴン雰囲気下において、FeClを0.3g加え、その後ジクロロメタン20mLを加える。次に、懸濁液を磁力によって室温で1週間攪拌する。1週間後、得られたプレ触媒にヘプタンを加え、上澄みを除去することにより、該プレ触媒を3回洗浄する。次に、プレ触媒を真空下において室温で1時間乾燥させる。
【0092】
<例3>式:Fe0.49MgCl2.0THF0.26(BCl0.34で表されるプレ触媒P3の調製
100mL容のシュレンク管に、1.1gのMgCl(THF)1.5担体を不活性アルゴン雰囲気下で導入する。そのまま不活性アルゴン雰囲気下において、FeClを0.3g加え、その後、ヘプタンにおいて1MのBCl溶液10mL及びジクロロメタン20mLを加える。次に、懸濁液を磁力によって室温で1週間攪拌する。1週間後、得られたプレ触媒にヘプタンを加え、上澄みを除去することにより、該プレ触媒を3回洗浄する。次に、プレ触媒を真空下において室温で1時間乾燥させる。
【0093】
以下の例4〜18では、ポリマーは、既にビーズ状になっているが、メタノールで析出され得る。
【0094】
<例4>プレ触媒P1からのエチレンの重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液3mLを導入し、次にプレ触媒P1を36mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P1から2.3gのポリエチレンが生成した。
【0095】
<例5>プレ触媒P3からのエチレンの重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次にプレ触媒P3を32mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から4.9gのポリエチレンが生成した。M=112000g/mol、M/M=2.7(SEC、PEキャリブレーション、溶出剤:TCB150℃)であった。
【0096】
<例6>プレ触媒P3からのエチレン/ヘキセンの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次に1−ヘキセン(C12)を10mL加え、その後プレ触媒P3を24mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から2gのコポリマーが生成した。
【0097】
<例7>プレ触媒P3からのエチレン/ブタジエンの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次にブタジエン(C)を10mL加え、その後プレ触媒P3を43mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。30分間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から0.6gのコポリマーが生成した。
【0098】
<例8>プレ触媒P2からのエチレンの重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次にプレ触媒P2を35mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P2から0.1gのポリエチレンが生成した。
【0099】
<例9>プレ触媒P3からのエチレンの重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液1mLを導入し、次にプレ触媒P3を95mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から40gのポリエチレンが生成した。PEの融点:139℃であった。
【0100】
<例10>プレ触媒P3からのエチレンの重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液1mLを導入し、次にプレ触媒P3を93mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器を1バールのエチレンで加圧した後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から45gのポリエチレンが生成した。PEの融点:139.5℃であった。
【0101】
<例11>プレ触媒P3からのエチレン/1−ヘキセンの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液1mLを導入し、次に1−ヘキセン(C12)を10mL加え、その後プレ触媒P3を101mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器を1バールのエチレンで加圧した後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から37gのコポリマーが生成した。コポリマーの融点:136.5℃、1−ヘキセンの組み入れ:〜0.6%(H−NMR及び13C−NMR分析)であった。
【0102】
<例12>プレ触媒P3からのエチレン/スチレンの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液1mLを導入し、次にスチレン(C)を10mL加え、その後プレ触媒P3を97mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器を1バールのエチレンで加圧した後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から23gのコポリマーが生成した。コポリマーの融点:134℃、スチレンの組み入れ:〜0.5%(H−NMR及び13C−NMR分析)であった。
【0103】
<例13(比較例)>プレ触媒PTi(MgCl/THF担体及びTiClから調製される従来のチーグラーナッタチタニウム系触媒、「ACS触媒作用、2013,3,52」参照)からのエチレン/エチルアクリレートの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次に(1Mのトリエチルアルミニウム0.5mLで乾燥した)エチルアクリレート5mLを加え、その後プレ触媒PTiを23mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。その結果、プレ触媒PTiからコポリマーは生成しなかった。
【0104】
<例14>プレ触媒P3からのエチレン/エチルアクリレートの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次に(1Mのトリエチルアルミニウム0.5mLで乾燥した)エチルアクリレート5mLを加え、その後プレ触媒P3を103mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーをメタノールから析出させ、濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から1.3gのコポリマーが生成した。コポリマーの融点:115℃であった。
【0105】
<例15>プレ触媒P3からのエチレン/ブチルアクリレートの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次に(1Mのトリエチルアルミニウム0.5mLで乾燥した)ブチルアクリレート5mLを加え、その後プレ触媒P3を97mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーをメタノールから析出させ、濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から1.5gのコポリマーが生成した。コポリマーの融点:110℃であった。
【0106】
<例16>プレ触媒P3からのエチレン/ビニルアセテートの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次に(1Mのトリエチルアルミニウム0.5mLで乾燥した)ビニルアセテート5mLを加え、その後プレ触媒P3を98mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーをメタノールから析出させ、濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から2gのコポリマーが生成した。コポリマーの融点:122℃、ビニルアセテートの組み入れ:〜1%(H−NMR及び13C−NMR分析、FTIR分析)であった。
【0107】
<例17>プレ触媒P3からのエチレン/ビニルアセテートの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次に(1Mのトリイソブチルアルミニウム0.5mLで乾燥した)ビニルアセテート5mLを加え、その後プレ触媒P3を100mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器を1バールのエチレンで加圧した後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。次に、得られたポリマーをメタノールから析出させ、濾過し、メタノールで洗浄する。その結果、プレ触媒P3から3.5gのコポリマーが生成した。コポリマーの融点:125℃、ビニルアセテートの組み入れ:〜1%(H−NMR及び13C−NMR分析、FTIR分析)であった。
【0108】
<例18(比較例)>プレ触媒PTi(MgCl/THF担体及びTiClから調製される従来のチーグラーナッタチタニウム系触媒、「ACS触媒作用、2013,3,52」参照)からのエチレン/ビニルアセテートの共重合
乾燥ヘプタン300mLを含むフラスコに、ヘプタンにおいて1Mのトリエチルアルミニウム溶液0.5mLを導入し、次に(1Mのトリエチルアルミニウム0.5mLで乾燥した)ビニルアセテート5mLを加え、その後プレ触媒PTiを25mg加える。この溶液を、アルゴン雰囲気下において、1L容のステンレススチールの反応器へ移す。次に、反応器に1バールの水素圧を加えた後、8バール(のエチレン)まで徐々に加圧し、80℃に加熱する。貯蔵器を使用して一定の圧力を維持する。1時間の反応後、反応器を室温まで冷却し、脱気する。その結果、プレ触媒PTiからコポリマーは生成しなかった。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【表3】
【表4】