(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記収容室内の温度を所定温度範囲内とするように前記送風部の駆動を制御する第1制御モードと、前記対象物の温度を所定温度範囲内とするように前記送風部の駆動を制御する第2制御モードと、を有する請求項1または2に記載の収容庫。
前記制御部は、前記対象物の温度が前記所定温度範囲外の場合には、前記第2制御モードで前記送風部の駆動を制御し、前記対象物の温度が前記所定範囲内の場合には、前記第1制御モードで前記送風部の駆動を制御する請求項3に記載の収容庫。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、収容室内の温度や対象物の温度を高精度に調整することのできる収容庫および温度制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0008】
(1) 対象物を収容する収容室と、
収容室内の空気の温度を調整する温度調整部と、
前記温度調整部により温度調整された空気を送風する送風部と、
前記収容室内の温度を検知する室内温度検知部と、
前記収容室内に配置された前記対象物の温度を検知する対象物温度検知部と、
前記室内温度検知部および前記対象物温度検知部の少なくとも一方の検知結果に基づいて、前記送風部の駆動を制御する制御部と、を有することを特徴とする収容庫。
【0009】
(2) 前記対象物の前記収容室内での位置を検知する対象物位置検知部を有する上記(1)に記載の収容庫。
【0010】
(3) 前記送風部は、第1送風部と、第2送風部と、を有し、
前記第2送風部から送風される空気によって、前記第1送風部から送風される空気の流れを変化させることができる上記(1)または(2)に記載の収容庫。
【0011】
(4) 前記送風部の姿勢を変化させる姿勢変化機構を有している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の収容庫。
【0012】
(5) 前記姿勢変化機構は、互いに交差する第1軸および第2軸の各軸まわりに前記送風部を揺動させる上記(4)に記載の収容庫。
【0013】
(6) 前記制御部は、前記収容室内の温度を所定温度範囲内とするように前記送風部の駆動を制御する第1制御モードと、前記対象物の温度を所定温度範囲内とするように前記送風部の駆動を制御する第2制御モードと、を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の収容庫。
【0014】
(7) 前記制御部は、前記対象物の温度が前記所定温度範囲外の場合には、前記第2制御モードで前記送風部の駆動を制御し、前記対象物の温度が前記所定範囲内の場合には、前記第1制御モードで前記送風部の駆動を制御する上記(6)に記載の収容庫。
【0015】
(8) 前記第2制御モードでは、前記送風部から前記対象物に向けての送風量が前記第1制御モードよりも多い上記(6)または(7)に記載の収容庫。
【0016】
(9) 前記室内温度検知部を複数有し、
前記第1制御モードでは、複数の前記室内温度検知部で検知された温度の差が小さくなるように前記送風部の駆動を制御する上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の収容庫。
【0017】
(10) 前記送風部を複数有し、
前記制御部は、前記複数の送風部を協働で駆動する上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の収容庫。
【0018】
(11) 前記第2制御モードでは、前記複数の送風部のうちの少なくとも1つの送風部は、前記対象物に向けて送風し、他の少なくとも1つの送風部は、前記対象物に向けて送風する前記送風部に向けて送風する上記(10)に記載の収容庫。
【0019】
(12) 前記送風部に設けられ、前記送風部から前記対象物までの距離を計測する距離計測部を有する上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の収容庫。
【0020】
(13) 前記収容庫内の空気を吸引するダクトを有し、
前記ダクトには、前記空気の流れる方向に沿って複数の開口が設けられ、
前記流れる方向の上流側に位置する前記開口の開口面積が、下流側に位置する前記開口の開口面積よりも大きい上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の収容庫。
【0021】
(14) 前記温度調整部により温度調整された空気を誘導する誘導路と、
前記誘導路に配置され、前記誘導路内を流れる前記空気を前記収容室に導く開口と、を有し、
前記送風部は、前記開口を開閉するシャッター部を有している請求項1に記載の収容庫。
【0022】
(15) 前記開口が開放された開状態の際に、前記シャッター部の少なくとも一部が前記誘導路内に突出するように起立する上記(14)に記載の収容庫。
【0023】
(16) 前記起立した部分の高さおよび傾きの少なくとも一方を変化させることができる上記(15)に記載の収容庫。
【0024】
(17) 前記起立した部分は、前記開口に対して前記誘導路内の前記空気の流れ方向の前方側または後方側に位置している上記(15)または(16)に記載の収容庫。
【0025】
(18) 前記収容室内に電場を発生させる電場発生部を有している上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の収容庫。
【0026】
(19) 前記電場発生部は、前記電場を断続的に発生させる上記(18)に記載の収容庫。
【0027】
(20) 対象物を収容する収容室内の空気の温度を調整する温度調整部と、
前記温度調整部により温度調整された空気を送風する送風部と、
前記収容室内の温度を検知する室内温度検知部および前記収容室内に配置された前記対象物の温度を検知する対象物温度検知部の少なくとも一方と、
前記室内温度検知部および前記対象物温度検知部の少なくとも一方の検知結果に基づいて、前記送風部の駆動を制御する制御部と、を有することを特徴とする温度制御システム。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、収容室の温度に加えて、収容室内に収容された対象物の温度を検知することができるため、より確実に、対象物を所定温度範囲内で保存することが可能となる。特に、対象物の温度が高い(低い)場合には、まず、対象物を優先的に冷却(加熱)し、対象物の温度が十分に下がった(高まった)ところで、収容室内の温度を所定温度範囲内に維持することによって、対象物を迅速に冷却(または加熱)することができ、上記効果がより顕著となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の収容庫は、例えば、食品の加工工場や保管庫等の屋内に設置される固定型収容庫として用いることもできるし、船舶、飛行機、列車、自動車等の移動体に積まれる移動型収容庫(例えば、コンテナ)として用いることもできるが、特に、後者の移動型収容庫として用いるのが適している(例えば
図1に示す自動車10)。移動型収容庫は、その温度調整機能が外部環境(気温、天気、日陰/日向)等に非常に大きく作用されてしまうため、例えば、気温が高い夏場や、赤道付近を通過する際などに、収容庫内を所定の温度範囲に保つことが非常に困難であった。また、庫内に積まれた荷物の量や配置によっては冷風/温風の循環が妨げられ、庫内全体を均一に温度調整することが困難であった。これに対して、本発明の収容庫によれば、外部環境や収容庫内の状況にほとんど影響されることなく、収容庫内を所定の温度範囲に保つことができる。この点で、本発明の収容庫は、移動型収容庫に特に適していると言える。
【0031】
本発明の収容庫に収容される対象物としては特に限定されず、例えば、食品、生花(種子、球根等も含む)、苗木、樹木、医薬品(薬剤、血液等)等が挙げられる。また、対象物としては、人間、犬、猫、牛、豚、馬等の動物(生体、死体を問わない)であってもよい。また、食品としては、特に限定されず、例えば、魚、海老、イカ、タコ、なまこ、貝類等の魚介類およびこれらの切り身等の加工食品、イチゴ、リンゴ、みかん、梨等の果物、キャベツ、レタス、キュウリ、トマト等の野菜、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の食肉などの生鮮食品や、小麦粉、米粉、蕎麦粉等の穀物の粉から作られた麺などを挙げることができる。なお、以下では、果物と野菜とを合わせて青果とも言う。
【0032】
以下、本発明の収容庫および温度調整システムの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、収容庫に収容される対象物が食品であり、さらに食品を冷却保存する場合について代表して説明する。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る収容庫を示す図である。
図2は、
図1に示す収容庫の縦断面図である。
図3は、
図1に示す収容庫の横断面図である。
図4は、
図1に示す収容庫が有する送風部の構成を説明する図である。
図5は、
図1に示す収容庫が有するダクトの構成を説明する図である。
図6は、
図1に示す収容庫が有する制御部を説明するブロック図である。
図7は、
図6に示す制御部の制御の一例を説明するための斜視図である。
図8は、
図6に示す制御部の制御の一例を説明するための上面図である。
図9は、
図6に示す制御部の制御の一例を説明するための側面図である。なお、以下の説明では、
図1中の上側を「上」、下側を「下」とも言いう。また、各図の対応を取り易くするために、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)を図示している。
【0034】
図1に示す自動車10は、荷台に配置された収容庫1を有している。収容庫1は、
図2に示すように、例えばアルミニウム、ステンレス鋼等で構成された外壁21および内壁22と、外壁21と内壁22の間に充填された断熱材23とを有する本体2を有している。ただし、本体2の構成(材質や形状)は、これに限定されない。また、本体2には図示しない扉が配置されており、この扉を開閉することで、本体2内へ食品を収容したり、本体2内の食品を取り出したりすることができる。扉の設置場所としては特に限定されず、例えば、本体2の側壁に設けられていてもよいし、天井に設けられていてもよいし、床に設けられていてもよい。また、扉の構成としては、食品の出し入れができれば特に限定されず、例えば、ヒンジ扉、スライド扉、シャッター扉等を用いることができる。
【0035】
また、本体2内の天井には箱状の天板26が配置されており、本体2内が天板26の内側の空間と外側の空間とに仕切られている。そして、天板26の内側の空間が後述する温度調整部3からの空気を誘導する誘導路S1として機能し、外側の空間が食品を収容(保管)する収容室S2として機能する。なお、誘導路S1と収容室S2とを仕切ることができれば天板26の構成としては特に限定されない。また、収容室S2の容量としては、特に限定されないが、例えば、150m
3〜1000m
3程度の比較的大きな容量とするのが適している。
【0036】
また、収容庫1は、本体2の外側に配置された機械室Rを有しており、この機械室R内には収容室S2内の温度を調整するための温度調整部3が設けられている。温度調整部3としては、収容室S2内の温度を降温・昇温することができれば特に限定されず、例えば、公知のヒートポンプを用いることができる。
【0037】
また、機械室Rと本体2との境界にある壁には、収容室S2内の空気を温度調整部3に向けて取り込む取り込み口28と、温度調整部3で冷却された空気(以下「冷気」とも言う。)を誘導路S1内へ吹き出す吹き出し口29とが設けられている。また、取り込み口28と吹き出し口29とには、それぞれ、図示しないファンが設けられ、取り込みと吹き出しをスムーズに行うことができるようになっている。
【0038】
また、天板26には複数の送風部4が設けられている。送風部4は、ファンで構成されており、温度調整部3から吹き出し口29を介して誘導路S1内へ供給された冷気を収容室S2に送り出す機能を有している。ただし、送風部4の構成としては、冷気を収容室S2に送り出すことができれば、ファンに限定されず、例えば、噴射ノズル等を用いてもよい。また、本実施形態では採用していないが、温度調整部3が吹き出した冷気が各送風部4に均等に導かれるように、誘導路S1内に、温度調整部3の吹き出し口29と各送風部4とを結ぶ複数のダクトを配置してもよい。
【0039】
一方、本体2の床には、収容室S2内の空気を取り込み、温度調整部3へ導くダクト6が設けられている。ダクト6を設けることで、
図1中の矢印で示すように、収容室S2内の空気を循環させることができ、収容室S2を効率的に冷却することができる。
【0040】
次に、送風部4について詳細に説明する。
図3に示すように、天板26に設けられた複数の送風部4には、第1送風部41と、第2送風部42とが含まれている。なお、
図3では、説明の便宜上、第1送風部41を円形で図示し、第2送風部42を四角形で図示している。
【0041】
図4に示すように、第1送風部41は、収容室S2の床面に向け、すなわちほぼ鉛直方向(収容庫1の高さ方向)下側に向けて冷気C1を送り出すように構成されたファンである。一方、第2送風部42は、ほぼ水平方向(前記高さ方向に直交する方向)に向けて冷気C2を送り出すように構成されたファン(例えば遠心ファン)である。
【0042】
第2送風部42は、第1送風部41よりも下方に位置しており、第1送風部41から送風された冷気C1に、第2送風部42から送風された冷気C2がぶつかるようになっている。これにより、収容室S2内での冷気の送風ムラが低減され、収容室S2内をより均一に冷却することができる。また、反対に、冷気C2によって第1送風部41から送風される冷気C1を所定の箇所に導くことができ、前記所定の箇所を優先的(集中的)に冷却することもできる。ここで、第2送風部42は、第1送風部41から送風される冷気C1に向けて冷気C2を送風するだけではなくて、所定の条件下では、第1送風部41から送風される冷気C1を吸引するように駆動してもよい。また、第2送風部42は、例えば、一般的な送風機にも用いられているような「首振り機構」を有しており、送風方向が変化可能となっていてもよい。これにより、前述したような所定の箇所を優先的に冷却することがより容易となる。
【0043】
また、
図3に示すように、第1送風部41および第2送風部42は、それぞれ、鉛直方向から見た平面視にて、収容室S2の全域に広がってほぼ均一に配置されている。第1送風部41および第2送風部42の配置としては特に限定されないが、本実施形態では、第1送風部41を行列状に配置し、これらの間に第2送風部42を配置している。本実施形態では、第1送風部41が8つ配置され、第2送風部42が3つ配置されているが、第1、第2送風部41、42の数としてはこれに限定されず、収容室S2の広さ、第1、第2送風部41、42のパワー、コスト等を考慮して、適宜設定することができる。
【0044】
また、第1送風部41の配設密度としては、特に限定されず、第1送風部41の大きさやパワーによっても異なるが、例えば、平面視にて、250cm
2〜1m
2/個程度であるのが好ましい。また、第1送風部41によって送り出される冷気の流速としては、特に限定されないが、例えば、第1送風部41の直下にて0.01〜2.0m/秒程度であるのが好ましく、0.1〜0.5m/秒程度であるのがより好ましい。流速をこの程度とすることにより、収容室S2を充分に冷却することができると共に、冷気の流れを穏やかとすることができる。また、第1送風部41の最大風量としては、特に限定されないが、例えば、4.0m
3/min〜5.0m
3/min程度であることが好ましい。このような風量とすることで、理論上、第1送風部41の5m以上先までの空気の移動が可能となり、より効果的に、冷気を収容室S2内の全体にムラなく送風することができる。また、第1送風部41の最大静圧としては、特に限定されないが、1Pa以上であることが好ましい。第2送風部42についてもこれと同様である。
【0045】
次に、ダクト6について詳細に説明する。ダクト6は、
図5に示すように、収容室S2の両側に1本ずつ(計2本)設けられている。各ダクト6の一端部は閉じられており、反対側の他端部は、1本にまとめられて取り込み口28に接続されている。また、各ダクト6の床に沿って配置されている部分の側壁には複数の開口61が形成されており、これら開口61から収容室S2内の空気をダクト6内に導くことができる。
【0046】
特に、本実施形態のように、ダクト6の側壁に開口61を設けることで、開口61がほぼ水平方向(鉛直方向に対して傾斜した方向)を向くため、収容室S2の天井から床まで降りてきた冷気(すなわち、収容室S2を冷却する用に十分に供された冷気)をダクト6内に導くことができる。言い換えれば、収容室S2を冷却するのにまだ十分に利用できる冷気の吸引を低減することができる。そのため、収容室S2を効率的に冷却することができる。ただし、開口61の向きは、特に限定されず、水平方向および鉛直方向に対して傾いていてもよいし、鉛直方向を向いていてもよい。
【0047】
また、複数の開口61は、ダクト6の延在方向(冷気の流れる方向)に沿って配置されており、前記一端部側(冷気の流れの上流側)の開口61の開口面積が、前記他端部側(冷気の流れの下流側)の開口61の開口面積よりも大きくなっている。特に、本実施形態では、複数の開口61は、前記一端部側(冷気の流れの上流側)から前記他端部(冷気の流れの下流側)に向けて、開口面積が漸減している。これにより、全ての開口61から冷気をムラなくダクト6内に導くことができ、収容室S2内に冷気をムラなく循環させることができる。
【0048】
なお、複数の開口61の配設ピッチとしては特に限定されず、収容室S2の大きさおよび形状によっても異なるが、例えば、500mm〜1000mm程度であるのが好ましい。また、開口61の開口形状(面積)としては特に限定されず、収容室S2の大きさおよび形状によっても異なるが、例えば、縦×横:30mm×30mm〜100mm×100mm程度の正方形とすることができる。
【0049】
以上、ダクト6について説明したが、ダクト6の構成としては、収容室S2内の空気を温度調整部3に導くことができれば特に限定されない。
【0050】
また、
図2に示すように、収容室S2には、収容室S2内の温度を検知するための複数の温度センサー51(室内温度検知部)が設けられている。これら温度センサー51によって、収容室S2内の異なる複数箇所の温度を検知し、収容室S2の温度差(収容室S2内の最も高い温度と最も低い温度の差)ΔTを検知することができる。
【0051】
複数の温度センサー51の配置は、特に限定されないが、収容室S2の全域に広がって配置されているのが好ましい。なお、本実施形態では、温度センサー51を収容室S2の左右の側壁に分けて配置し、かつ、高さ方向にずらして配置している。冷気は、鉛直方向下側へ沈むため、収容室S2の高さ方向で温度差が生じ易いため、温度センサー51を高さ方向に並べて配置することで、温度差ΔTをより正確に検知することができる。このような温度センサー51としては、温度を検知することができれば特に限定されず、例えば、熱電対やサーミスタを用いることができる。
【0052】
また、
図2に示すように、収容室S2には、収容室S2内に保管された食品の温度を検知するための複数の食品温度センサー52(対象物温度検知部)が設けられている。前述した温度センサー51では、その近傍の温度を検知することができるが、離れて配置された食品の温度までは検知することが難しい。そこで、収容庫1では、温度センサー51に加えて食品温度センサー52を配置し、収容室S2内の温度に加えて、収容室S2内の食品の温度を検知するようになっている。このような食品温度センサー52を設けることで、より高精度な温度調整を行うことができる。
【0053】
なお、食品の温度とは、例えば、食品自体の温度(例えば、食品の表面温度、中心部温度)であってもよいし、食品がダンボール箱等の梱包箱で梱包されている場合には、梱包箱の表面温度であってもよい。なお、温度センサー51によって食品の位置や状態を検知することができる場合には、温度センサー51が対象物温度検知部を兼ねてもよく、この場合は、食品温度センサー52を省略してもよい。
【0054】
食品温度センサー52としては、食品の温度を検知することができれば特に限定されないが、例えば、赤外線アレイセンサーを用いることができる。なお、赤外線アレイセンサーとは、例えば、サーモパイルをアレイ状に複数配置した素子であり、温度を面で捉えることができるセンサーである。食品温度センサー52として赤外線アレイセンサーを用いることで、食品温度センサー52によって食品の位置を検知することができる。このように、収容室S2内での食品の位置を検知することにより、例えば、後述するように、特定の食品に向けて冷気を送風することが可能となり、必要時に、特定の食品を優先的に冷却することができる。
【0055】
なお、上述のように、本実施形態では、食品温度センサー52が対象物位置検知部を兼ねているが、対象物位置検知部としては、収容室S2内の食品の位置を検知することができればよく、食品温度センサー52と別体で設けられていてもよい。この場合、対象物位置検知としては、例えば、カメラ等の撮像装置を用いた画像認識技術を利用することができる。
【0056】
また、収容庫1は、
図6に示すように、温度センサー51および食品温度センサー52の検知結果に基づいて、温度調整部3の駆動を制御し、かつ、各送風部4(第1、第2送風部41、42)の駆動を独立して制御する制御部7を有している。
【0057】
制御部7は、食品の種類等に応じて設定される温度範囲(所定温度範囲)T1に基づいて、収容室S2内の温度を温度範囲T1内とするように温度調整部3および各送風部4の駆動を制御する第1制御モードと、収容室S2内の食品を温度範囲T1内とするように温度調整部3および各送風部4の駆動を制御する第2制御モードとを有している。
【0058】
第1制御モードは、全ての温度センサー51の温度が温度範囲T1内となり、かつ、全ての温度センサー51の温度差がなるべく小さくなるように、各温度センサー51の検知結果をフィードバックしながら温度調整部3の駆動(冷気の温度調整、風量等)を制御すると共に、各送風部4の駆動(送風部4の向き、風量等)を制御するモードである。このような第1制御モードによれば、比較的簡単な制御で、より確実に、収容室S2内を温度範囲T1内に維持することができ、収容室S2内の食品を温度範囲T1内で保管することができる。
【0059】
なお、例えば、
図7に示すように、収容室S2を複数(本実施形態では18)のブロック(領域)Bに仮想的に分割し、各ブロックBの温度が温度範囲T1となり、かつ、各ブロックBの温度差がなるべく小さくなるように、温度調整部3および各送風部4の駆動を制御してもよい。
【0060】
また、温度範囲T1(収容室S2内の温度)としては、特に限定されないが、食品の凍結温度をTf(℃)としたとき、Tf−2.0℃〜Tf+2.0℃とすることが好ましく、Tf−1.0℃〜Tf+1.0℃とすることがより好ましい。ただし、食品が青果の場合には、低温障害が発生する場合もあるため、温度範囲T1をTf−2.0℃〜Tf+15.0℃とするのが好ましい。ここで、食品に含まれる水分は、何らかの溶質が溶け込んだ溶液であるから凝固点降下を起こしている。そのため、一般的な食品の凍結温度は、−5℃〜0℃程度となっている。したがって、これら食品の場合には、温度範囲T1を−6.0℃〜15.0℃程度、好ましくは−3℃〜0℃程度とすればよい。これにより、食品の味の劣化をより効果的に防止することができるとともに、食品の鮮度をより長期にわたって保つことができる。
【0061】
第2制御モードは、温度範囲T1よりも高い温度(温度範囲T1外の温度)の食品を検知した場合に選択されるモードである。第2制御モードでは、温度範囲T1よりも高い温度の食品を優先的に冷却し、より迅速にその食品を温度範囲T1内となるように、食品温度センサー52の検知結果をフィードバックしながら温度調整部3の駆動を制御すると共に、各送風部4の駆動を制御する。このような第2制御モードによれば、食品をより短い時間で冷却することができ、食品の傷みを低減することができる。
【0062】
このような第2制御モードは、送風部4から食品に向けて送風される冷気の量(送風量)が第1制御モードよりも多く、その分、食品を第1制御モードよりも迅速に(短い時間で)冷却することができる。例えば、温度範囲T1よりも高い温度の食品100が
図8および
図9に示すように配置されていた場合、制御部7は、第2送風部42a、42cの出力よりも第2送風部42bの出力を下げる。または、第2送風部42bを逆回転させて冷気を吸引するように駆動させる。すると、第2送風部42で発生する気流の影響を受けて、第1送風部41a〜41dからの冷気C1が食品100に向けて流れ、その結果、食品100が集中的に冷却される。
【0063】
以上、第1、第2制御モードについて説明した。このような第1、第2制御モードは、以下のように組み合わせて使用することができる。
【0064】
例えば、予め温度範囲T1内に維持されている収容室S2内に食品が収容されると、制御部7は、食品温度センサー52からの情報に基づいて、その食品の温度や収容室S2内での位置を検知する。食品の温度が温度範囲T1よりも高いと、食品からの熱によって収容室S2内の温度が上昇したり、温度ムラが生じたりする。また、食品も傷み易い。そのため、食品をなるべく迅速に冷却する必要がある。そこで、食品の温度が温度範囲T1よりも高い場合、制御部7は、まず、第2制御モードで食品を迅速に冷却する。そして、食品の温度が温度範囲T1内となると、制御部7は、第2制御モードから第1制御モードに切り替えて収容室S2内を温度範囲T1内に維持する。すなわち、制御部7は、優先的に食品を冷却することを止め、収容室S2内の温度が温度範囲T1内に維持するように温度調整部3および送風部4の駆動を制御する。このような方法によれば、食品を温度範囲T1内で安定して保管することができる。このように、第1、第2制御モードを適宜組み合わせることで、より高精度な温度調整が可能となる。
【0065】
このような収容庫1によれば、温度範囲T1外の食品を迅速に温度範囲T1内に冷却することができるため、食品の傷みを低減することができる。さらには、収容室S2内の温度差ΔTを小さく抑えることができるため、食品の凍結(凍結による食品の細胞壁の破壊)を防止しつつ、収容室S2の温度をより低温に設定することができる。これにより、食品の鮮度をより長期にわたって維持することができる。なお、温度差ΔTは、小さいほどよく、具体的には、2.0℃以内であるのが好ましく、0.5℃以内であるのがより好ましく、0℃であるのがさらに好ましい。このような数値範囲とすることで、上記効果がより顕著となる。
【0066】
また、
図1に示すように、収容庫1は、位置(現在位置)を検知するための位置検知部9を有している。位置検知部9としては特に限定されず、例えば、GPS(Global Positioning System)等の測位システムを用いることができる。また、
図6に示すように、収容庫1は、記憶装置91を有し、この記憶装置91には、例えば、位置検知部9で検知した位置情報およびその位置での収容室S2内の温度情報を含む位置/温度情報データが記憶されるようなっている。このような位置/温度情報データは、管理履歴データとして用いることができ、搬送中、収容庫1が正常に機能していたか否かを確認することができる。なお、収容庫1は、さらに、インターネット等の通信網Nを介して外部端末と通信する通信装置92を有していてもよい。通信装置92を有していれば、例えば、通信網Nを介して収容庫1を管理する管理端末Xに位置/温度情報データを定期的に送信したり、管理端末Xにて随時、位置/温度情報データを確認したりすることができ、収容庫1を厳重に監視することができる。さらに、収容庫1は、例えば、位置/温度情報データによって異常(例えば、収容室S2の温度が設定温度から大きくずれている等)を発見した場合、遠隔操作によって制御部7を介して収容庫1の各部(温度調整部3、送風部4、電場発生部8等)を制御できるようになっていてもよい。
【0067】
以上、収容庫1について説明したが、例えば、収容庫1は、さらに、収容室S2内の温度設定や監視を行うためのコントローラーを有していてもよい。例えば、このコントローラーには、設定温度を入力するための入力部や、収容室S2内の温度や食品の配置等を表示することのできる表示部等が設けられている。このようなコントローラーを有することで、収容室S2内の状況を簡単に把握することができ、より信頼性の高い収容庫1となる。なお、
図1に示すような自動車10の場合には、例えば、運転手が運転席に座った状態で操作、視認できる位置にコントローラーを取り付けることが好ましい。
【0068】
以上、第1実施形態の収容庫1について説明した。本発明の温度調整システムは、このような収容庫1から本体2(収容室S2)を省略した構成である。このような構成の温度調整システムによれば、例えば、既存のコンテナや保管庫に上記のシステムを導入することができ、既存のコンテナや保管庫の機能性を高めることができる。
【0069】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態に係る収容庫の縦断面図である。
図11は、
図10に示す収容庫の横断面図である。
図12は、
図10に示す収容庫が有する送風部を示す斜視図である。
図13ないし
図16は、それぞれ、制御部の制御の一例を説明するための縦断面図である。
【0070】
以下、第2実施形態の収容庫について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0071】
図10に示す収容庫1は、本体2を有し、本体2の内側が収容室S2となっている。すなわち、本実施形態の収容庫1では、前述した第1実施形態のような誘導路S1が設けられていない。また、収容庫1は、本体2の外側に配置された機械室Rを有しており、この機械室R内には温度調整部3が設けられている。
【0072】
また、収容室S2の天井付近には複数の送風部4が設けられている。また、各送風部4は、姿勢変化機構43を介して天井に固定されており、様々な姿勢に変化できるようになっている。そのため、目的に応じた効率的な冷却が可能となる。このような複数の送風部4は、
図11に示すように、鉛直方向から見た平面視にて、収容室S2のほぼ全域に広がってほぼ均一に配置されている。
【0073】
姿勢変化機構43は、
図12に示すように、収容室S2の天井に固定された固定部431と、固定部431と送風部4とを連結する連結部432とを有している。連結部432は、固定部431に対して鉛直方向に沿う第1軸J1まわりに揺動(回動)可能となっており、送風部4は、連結部432に対して水平方向(第1軸J1と交差する方向)に沿う第2軸J2まわりに揺動可能となっている。また、姿勢変化機構43は、連結部432を固定部431に対して第1軸J1まわりに揺動させる駆動源433と、送風部4を連結部432に対して第2軸J2まわりに揺動させる駆動源434とを有している。これら駆動源433、434は、例えばモーターであり、制御部7によって駆動が制御されている。
【0074】
このような姿勢変化機構43によれば、送風部4の姿勢を3次元的に変化させることができるため、送風部4の送風方向の自由度が高くなり、収容室S2内のより高精度な温度調整が可能となる。ただし、姿勢変化機構43の構成としては、送風部4の姿勢を変化させることができれば、これに限定されず、例えば、第1軸J1および第2軸J2のいずれか一方の軸まわりにのみ揺動可能な構成となっていてもよい。
【0075】
また、送風部4の配設密度としては、特に限定されず、送風部4の大きさやパワーによっても異なるが、例えば、平面視にて、250cm
2〜1m
2/個程度であるのが好ましい。また、送風部4の最大風量としては、特に限定されないが、例えば、4.0m
3/min〜5.0m
3/min程度であることが好ましい。このような風量とすることで、理論上、送風部4の5m以上先までの空気の移動が可能となり、より効果的に、冷気を収容室S2内の全体にムラなく送風することができる。また、送風部4の最大静圧としては、特に限定されないが、1Pa以上であることが好ましい。
【0076】
また、
図12に示すように、送風部4には、食品の温度を検知する食品温度センサー52が設けられている。食品温度センサー52は、前述した第1実施形態と同様の構成に、赤外線アレイセンサーで構成することができる。
【0077】
食品温度センサー52は、送風部4の送風方向の前方(送風部4の正面)に位置する食品の温度を検出できるように配置されている。特に本実施形態では、送風部4の送風軸と食品温度センサー52の検出軸とがほぼ平行となっている。このように、送風部4と同じ方向に向けて食品温度センサー52を配置することで、所定の食品に向けて冷気を送風するために所定の送風部4を前記食品に向ければ、その送風部4に設けられた食品温度センサー52によって前記食品の温度を検知することができる。反対に、所定の食品の温度を検知するために食品温度センサー52を前記食品に向ければ、その食品温度センサー52が配置された送風部4によって前記食品に向けて冷気を送風することができる。このように、食品の温度検知と食品への冷気の送風とが同じ動作で可能となるため、各種制御が簡単となる。
【0078】
また、
図12に示すように、送風部4には、送風部4から食品100までの距離を計測する距離センサー53(距離計測部)が設けられている。距離センサー53としては、距離を計測することができれば特に限定されないが、例えば、音波式の距離センサーやレーザー式の距離センサーを用いることができる。なお、音波式の距離センサーを採用することで、コストを抑えることができる。
【0079】
距離センサー53は、送風部4の送風方向の前方に位置する食品との距離を検出できるように配置されている。特に本実施形態では、送風部4の送風軸と距離センサー53の検出軸とがほぼ平行となっている。このように送風部4と同じ方向に向けて距離センサー53を配置することで、所定の食品に向けて冷気を送風するために所定の送風部4を前記食品に向ければ、その送風部4に設けられた距離センサー53によって前記食品までの距離を検知することができる。このように、食品までの距離の検知と食品への冷気の送風とが同じ動作で可能となるため、各種制御が簡単となる。
【0080】
制御部7は、食品の種類等に応じて設定される温度範囲(所定温度範囲)T1に基づいて、収容室S2内の温度を温度範囲T1内とするように温度調整部3および各送風部4の駆動を制御する第1制御モードと、収容室S2内の食品を温度範囲T1内とするように温度調整部3および各送風部4の駆動を制御する第2制御モードと、収容室S2内の特定の領域を温度範囲T1内とするように温度調整部3および各送風部4の駆動を制御する第3制御モードとを有している。
【0081】
第1制御モードでは、収容室S2内にムラなく冷気を循環させるためや、特定の食品に冷気が当たり続けることを避けるために、少なくとも1つの送風部4を第1軸J1および第2軸J2の少なくとも一方の軸まわりに揺動させてもよい。また、制御部7は、食品温度センサー52等により検知された収容室S2での食品の配置に基づいて各送風部4の適切な姿勢を求め、各送風部4をその結果に対応した姿勢としてもよい。このような方法によれば、第1制御モードをより効果的に実行することができる。
【0082】
第2制御モードでは、特定の食品を優先的に冷却するために、複数の送風部4を協働で駆動することが好ましい。すなわち、複数の送風部4が互いに協力し合って特定の食品を冷却することが好ましい。例えば、
図13に示すように、食品100を集中的に冷却したい場合、食品100の近くに位置する少なくとも2つ以上の送風部4(4a、4b、4c)が食品100に向けて冷気を送風するようにしてもよい。このような方法によれば、複数の送風部4から送風される冷気で食品100を冷却することができるため、食品100をより迅速に冷却することができる。また、例えば、
図14に示すように、食品100を集中的に冷却したい場合には、その直上に位置する(食品100の近傍に位置する)送風部4(4b)が食品100に向けて冷気を送風し、他の少なくとも1つの送風部4(4a、4c、4d)が送風部4bに冷気を送風するようにしてもよい。このような方法によれば、送風部4a、4c、4dによって送風部4bの周囲に冷気を供給することができるため、送風部4bから食品100に向けて冷気を効率的に送風することができる。そのため、食品100をより迅速に冷却することができる。このように、複数の送風部4を協働で駆動することにより、第2制御モードをより効果的に実行することができる。
【0083】
第3制御モードは、収容室S2内の特定の領域を温度範囲T1内とするように温度調整部3の駆動を制御すると共に、各送風部4の駆動を制御するモードである。このような第3制御モードによれば、収容室S2内の特定の領域(一部の領域)の温度を調整すればよいため、例えば、第1制御モードよりも省電力駆動が可能となる。さらには、収容室S2内に、異なる温度範囲内に維持された複数の領域を形成することができる。
【0084】
例えば、
図15に示すように、収容室S2の前方側の領域Sfにのみ食品100が配置されている場合には、少なくとも領域Sfが温度範囲T1に維持されていれば食品100の保管に関して問題が生じない。そのため、このような場合には、領域Sf内の全ての温度センサー51の温度が温度範囲T1となり、かつ、領域Sf内の全ての温度センサー51の温度差がなるべく小さくなるように、温度調整部3および各送風部4の駆動を制御する(例えば、領域Sf内の送風部4のみを駆動する等)。このような制御によれば、省電力駆動が可能となる。
【0085】
また、例えば、
図16に示すように、領域Sfに食品100Aが、領域Srに食品100Bが位置し、さらに、食品100Aの保存に適した温度(領域Sfの温度範囲として設定される温度範囲T1’)と、食品100Bの保存に適した温度(領域Srの温度範囲として設定される温度範囲T1”)とが異なる場合がある。このような場合には、領域Sf内の全ての温度センサー51の温度が温度範囲T1’となり、領域Sr内の全ての温度センサー51の温度が温度範囲T1”となるように、温度調整部3および各送風部4の駆動を制御する。このような制御によれば、品種の異なる食品をそれぞれ適切な温度条件で保管することができる。
【0086】
以上、第1、第2、第3制御モードについて説明した。このような第1、第2、第3制御モードは、前述した第1実施形態と同様に、組み合わせて使用することができる。
【0087】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0088】
<第3実施形態>
図17は、本発明の第3実施形態に係る収容庫の縦断面図である。
図18は、
図17に示す収容庫の横断面図である。
図19は、
図17に示す収容庫が有する送風部を示す斜視図である。
図20ないし
図23は、それぞれ、
図18に示す送風部の駆動を説明する図である。
図24は、送風部が有する駆動機構を示す断面図である。
【0089】
以下、第3実施形態の収容庫について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の収容庫は、送風部の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0090】
図17に示す収容庫1では、天板26に複数の開口261が形成されている。また、複数の開口261は、
図18に示すように、収容庫1の横方向(Y軸方向。平面視で冷気の流れ方向に交差する方向)に延びて延在しており、互いに間隔を空けて縦方向(X軸方向。冷気の流れに沿う方向)に並んで配置されている。これら開口261は、温度調整部3から誘導路S1に供給された冷気を収容室S2に導入するための開口である。そして、これら各開口261に送風部4が配置されている。
【0091】
送風部4は、各開口261上に配置され、開口261を閉じる閉状態と、開口261を開く開状態とに切り替わることのできる複数のシャッター部49と、各シャッター部49を駆動する駆動機構48と、を有している。シャッター部49は、撓み変形することができれば特に限定されず、本実施形態では、
図19に示すように、縦方向に並んで配置されている複数の屈曲可動部491を備え、この屈曲可動部491において厚さ方向に屈曲変形(撓み変形)することができる。このようなシャッター部49は、例えば、以下のようにして駆動する。
【0092】
例えば、
図20に示すように、シャッター部49を閉状態として開口261を閉じることで、開口261から収容室S2への冷気の導入が禁止される。一方、
図21に示すように、シャッター部49を前方(−X軸側。冷気の流れる方向の上流側)に向けてスライドさせ、シャッター部49を開状態として開口261を開放することで、開口261から収容室S2へ冷気が導入される。また、
図22に示すように、シャッター部49を前方へスライドさせると共に、シャッター部49の前方部分49a(シャッター部49の少なくとも一部)を上方にスライドさせ、前方部分49aを1つ前方にある開口261の後方において誘導路S1内に突出するように起立させることで、前方部分49aに沿って冷気が誘導され、1つ前方の開口261から冷気をより効率的に収容室S2内へ導入することができる。
【0093】
なお、
図22では、前方部分49aが前方に倒伏するように傾斜しているため、前方部分49aに誘導された冷気は、斜め後方に向けて収容室S2内に導入される。また、前方部分49aの高さ(誘導路S1内への突出高さ)が低いため、収容室S2内に導かれる冷気の量が少ない。これに対して、
図23では、前方部分49aがほぼ垂直(Z軸方向。誘導路S1内の冷気の流れに対して直交する方向)に起立しているため、1つ前方の開口261から冷気をほぼ真下に向けて収容室S2内に導入することができる。また、前方部分49aの高さが
図22に示す場合と比較して高いため、
図22に示す場合と比較して収容室S2内に導かれる冷気の量が多い。このように、シャッター部49の傾きや高さを変化させることで、収容室S2に導入される冷気の量や方向を変化させることができる。
【0094】
このようなシャッター部49を駆動する駆動機構48は、
図24に示すように、本体2(内壁22)に設けられたガイド481と、ガイド481に沿って縦方向(冷気の流れに沿う方向。X軸方向)に移動可能な第1移動部482と、第1移動部482に配置され、第1移動部482に対して高さ方向(Z軸方向)に移動可能な第2移動部483と、第1、第2移動部482、483を移動させるモーター等の図示しない駆動源と、を有している。
【0095】
そして、第2移動部483にシャッター部49の前端部が接続されている。また、ガイド481は、Y軸方向から見た平面視で開口261と重なるように、開口261と並んで配置された扇状の第1ガイド部481aと、第1ガイド部481aに接続された直線状の第2ガイド部481bとを有している。そして、第2ガイド部481b内では第2移動部483が実質的に縦方向にしか移動できず、第1ガイド部481a内では第2移動部483が縦方向および高さ方向の両方向に移動できるようになっている。
【0096】
そして、例えば、第2移動部483が第2ガイド部481bに沿って移動するように第1移動部482を縦方向に移動させれば、
図20および
図21に示すように開口261を開閉することができる。また、第2移動部483が第1ガイド部481a内にあるときに、第2移動部483を第1移動部482に対して高さ方向に移動させれば、
図22および
図23に示すように、前方部分49aを誘導路S1内へ突出させることができる。ここで、第1ガイド部481aと第2ガイド部481bとの境界部481cが開口261の後端部に対応して位置し、この境界部481cでシャッター部49が屈曲変形するようになっている。そのため、
図22や
図23で示すように、主に、シャッター部49の開口261と重なる部分(前方部分49a)の姿勢だけを変化させることができる。なお、第1、第2移動部482、483の駆動は、制御部7によって制御される。
【0097】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0098】
<第4実施形態>
図25は、本発明の第4実施形態に係る収容庫の送風部を示す縦断面図である。
図26および
図27は、それぞれ、
図25に示す送風部の駆動を説明する図である。
図28および
図29は、
図25に示す送風部の変形例を示す図である。
【0099】
以下、第4実施形態の収容庫について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の収容庫は、送風部の構成が異なること以外は、前述した第3実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0100】
本実施形態の送風部4は、各開口261を開閉することのできる複数のシャッター部49と、各シャッター部49を駆動する駆動機構47と、を有している。なお、シャッター部49の構成は、前述した第3実施形態の構成と同様である。
【0101】
駆動機構47は、
図25に示すように、シャッター部49を案内するガイド部471と、ガイド部471に沿ってシャッター部49を移動させるモーター等の図示しない駆動源とを有している。また、ガイド部471は、開口261の前方に位置し、前方に向かうに連れて上方へ向かって延在する第1ガイド部471aと、第1ガイド部471aの後端部に接続され、開口261の後方まで延在する直線状の第2ガイド部471bと、を有している。また、第1ガイド部471aは、略円弧状に湾曲しており、前方に向かうほど天板26からの離間距離が大きくなると共に、天板26に対する傾きが大きくなっている。
【0102】
図25に示すように、シャッター部49が開口261上に位置するときは開口261がシャッター部49で塞がれて閉状態となる。そして、
図26に示すように、閉状態からシャッター部49が第2ガイド部471bにガイドされて開口261の後方へ移動すると、開口261が開状態となって、開口261を介して誘導路S1を流れる冷気が収容室S2内に導入される。この際、シャッター部49の後方への移動量を制御することで、開口261の開口面積を制御でき、収容室S2内に導入される冷気の量を調整することができる。反対に、
図27に示すように、閉状態からシャッター部49が第1ガイド部471aにガイドされて前方へ向けて移動すると、開口261が開状態となると共に、開口261の前方にて前方部分49aが起立して誘導路S1内に突出する。すると、誘導路S1を流れる冷気が先端部分49aに誘導され、開口261から収容室S2内に導入される。この際、シャッター部59の前方への移動量を制御することで、前方部分49aの傾きや高さを制御することができ、収容室S2内に導入される冷気の量を調整することができる。例えば、閉状態からのシャッター部49の移動距離を短くすれば、傾きおよび高さが小さく抑えられ、開口261から収容室S2への冷気の導入量が少なくなる。反対に、移動距離が長ければ、傾きおよび高さを大きくなり、開口261から収容室S2への冷気の導入量が多くなる。このように、シャッター部49の傾きや高さを変化させることで、収容室S2に導入される冷気の量や方向を変化させることができる。このようなシャッター部49の駆動は、制御部7によって制御することができる。
【0103】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、本実施形態では、第1ガイド部471aが略円弧状をなし、第1ガイド部471aにガイドされる際のシャッター部49の傾きを無段階で制御できるようになっているが、第1ガイド部471aの構成としてはこれに限定されない。例えば、
図28に示すように、第1ガイド部471aが直線状をなしており、移動量によらず前方部分49aの傾きが一定となってもよい。また、
図29に示すように、第1ガイド部471aが傾きの異なる複数の直線状の部分を有しており、前方部分49aの傾きを多段的に変更できるようになっていてもよい。
【0104】
<第5実施形態>
図30は、本発明の第5実施形態に係る収容庫を示す縦断面図である。
【0105】
以下、第5実施形態の収容庫について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の収容庫は、さらに電場発生部を有すること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0106】
図30に示すように、本実施形態の収容庫1は、収容室S2内に電場(振動電場)を形成する電場発生部8を有している。電場発生部8により形成された電場を収容室S2内の食品100に作用させることで、食品100を殺菌処理することができると共に、食品100の熟成を促進させることができる。そのため、鮮度を保ったまま食品100をより長期間保存することができると共に、食品100の旨味を増幅させることができる。
【0107】
このような電場発生部8の構成としては特に限定されないが、本実施形態の電場発生部8は、収容室S2の床面にスペーサー83を介して配置されたプレート81と、プレート81に電圧を印加する電圧印加部82とを有している。プレート81は、食品100を載置する載置台を兼ねており、プレート81上に食品100が積まれる。また、プレート81は、例えばアルミニウム等の導電性材料で構成されており、電場を発生させるための電極として機能する。そして、このようなプレート81は、本体2と絶縁された状態で設置されている。なお、プレート81でダクト6(開口61)からの冷気の吸引が阻害されないように、例えば、プレート81に十分な数の貫通孔(図示せず)を形成しておくことが好ましい。また、電圧印加部82は、機械室Rに配置することができる。
【0108】
また、スペーサー83としては特に限定されないが、衝撃吸収機構(例えば、コイルスプリング、シリンダー、ゲル状の衝撃吸収材等)を備えたものを用いることが好ましい。これにより、自動車10が移動することにより生じる衝撃が食品100に伝わり難くなる。そのため、例えば、食品100が傷み難くなり、食品100の鮮度をより効果的に保つことができる。
【0109】
食品100に作用する電場の強さとしては特に限定されないが、例えば、1000V/m〜10000V/mであることが好ましい。また、電場の周波数(プレート81へ印加する交番電圧の周波数)としては特に限定されないが、5Hz以上であることが好ましく、100Hz〜1000Hz以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果(殺菌効果および熟成効果)がより顕著となる。なお、周波数を調整することで、食品100の熟成の速度を調整することができる。そのため、食品100の種類や搬送にかかる時間(日数)等によって周波数を適宜設定することが好ましい。また、電場は、連続的に発生させてもよいし、断続的に発生させてもよい。電場を断続的に発生させることで、連続的に発生させる場合と比較して熟成効果は低減するものの、殺菌効果が向上する。また、消費電力を下げることもできる。特に、収容室S2内の環境2を20分以内に変化させることで、すなわち、電場発生の周期(n回目に発生した電場が消滅してから、n+1回目の電場が発生するまでの時間)を20分以内とすることで、大腸菌や黄色ブドウ球菌等の各種菌の分裂(増殖)を効果的に防ぐことができ、殺菌効果がより向上する。また、断続的に電場を発生させるときの各回の電場発生時間としては特に限定されないが、例えば、10秒〜10分程度とすることが好ましい。上記下限とすることで、十分な殺菌効果を発揮することができ、上記上限とすることで、収容室S2内の環境を確実に20分以内に変化させることができる。なお、電場を連続的に発生させる場合、20分以内に電場の強度を変化させることで(例えば、10分周期で1000V/mの電場と10000V/mの電場とを切り替えることで)、20分以内に収容室S2内の環境を変化させることでき、上記と同様の殺菌効果を発揮することができる。
【0110】
なお、電場発生部8には感電や火災等を防止するための安全装置が設けられているのが好ましい。安全装置は、例えば、本体2に設置された扉にその開閉を検知するセンサーを設け、このセンサーと連動させて、扉が開かれると電圧印加部82からの電圧印加を停止するように構成されていてもよい。また、安全装置は、収容室S2内の人間の存在を検知する人感センサーを設け、この人感センサーと連動させて、収容室S2内に人間を感知すると電圧印加部82からの電圧印加を停止するように構成されていてもよい。また、安全装置は、例えば、外部から視認できる位置に警告灯を設け、電場発生部8が作動している場合には緑色に点灯し、電場発生部8が異常作動している場合には赤色に点灯し、電場発生部8の作動が停止しており、庫内の安全が確保されている場合には消灯することで、庫内の状態を使用者に報知するように構成されていてもよい。なお、上記の警告灯の光り方は、一例であり、特に限定されない。また、本実施形態のような自動車10の場合には、エアバックECU(自動車10に設けられた加速度センサー等の衝撃検知センサーからの情報に基づいてエアバックを展開するか否かを決定するECU)と連動させ、エアバックECUがエアバックを展開することを決定すると電圧印加部82からの電圧印加を停止するように構成されていてもよい。また、収容庫1の揺れを検知する振動センサーを設け、この振動センサーと連動させて、所定の大きさ以上の揺れを検知すると電圧印加部82からの電圧印加を停止するように構成されていてもよい。
【0111】
このような第5実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0112】
以上、本発明の収容庫および温度調整システムについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、各実施形態を適宜与わせてもよい。
【0113】
なお、前述した実施形態では、対象物を低温で保管する場合について説明したが、反対に、対象物を高温で保管してもよい。この場合には、温度調整部から収容室S2へ熱気を供給すればよい。なお、対象物を高温で保管する場合にも、対象物を低温で保管する場合と同様の制御を行えばよい。すなわち、対象物の温度が所定温度範囲よりも低い場合には、まず、対象物を優先的に昇温し、対象物の温度が十分に高まったところで、収容室内の温度を所定温度範囲内に維持すればよい。
【0114】
また、前述した実施形態では、温度調整部が収容室内を降温・昇温することができる構成(すなわち、冷気と熱気を供給できる構成)となっているが、温度調整部としては、収容室を降温または昇温できればよい。すなわち、対象物を低温で保管する場合に限定して使用するのであれば、少なくとも冷気を供給することができれば十分であり、対象物を高温で保管する場合に限定して使用するのであれば、少なくとも熱気を供給することができれば十分である。
【0115】
また、前述した実施形態では、収容室内が空気で満たされた構成となっているが、収容室内の雰囲気としては空気で満たされている必要はなく、空気以外の気体(例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス)で満たされており、この気体の温度を温度調整部が調整するようになっていてもよい。
【0116】
また、前述した実施形態では、機械室が本体の外側に配置された構成となっているが、機械室の配置としてはこれに限定されず、本体の内側に配置されていてもよい。特に、貨物用のコンテナ等に用いる場合には、コンテナのサイズが定められていることが通常であるため、機械室を本体の内側に配置することが好ましい。