【文献】
Journal of Investigative Dermatology,2008年,Vol.128,p.2013-2023
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態を図示し説明したが、こうした実施形態はあくまで例として与えられたものであることが当業者には明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、及び代用を思いつくであろう。本発明を実施するにあたって本明細書で述べた実施形態には、様々な代替例が採用され得る点が理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は発明の範囲を規定することを目的としたものであり、特許請求の範囲に含まれる方法及び構造並びにそれらの均等物を、これによって網羅することを目的としたものである。
【0020】
癌治療のための有効な療法を開発し、提供する必要性が引き続き存在する。癌治療のための組み合わせ組成物及び併用療法が本明細書に記載される。本明細書に記載の組成物及び療法は、ベンゾピラン誘導体(例えば、Trilexium(商標)及びTrx−1のような置換ジアリールクロマン誘導体並びにスーパーベンゾピラン)及び解糖阻害剤を含む。また、癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法、癌治療を必要とする個体において癌を治療する方法、並びに化学療法剤及び/又は放射線治療に対する癌細胞の感受性を増加させる(又は特定の化学療法に対して個体を増感する)方法も本明細書において提供される。
【0021】
特定の定義
別途注記のない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって理解されるようなその通常の意味を与えられるべきである。
【0022】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、単独で又は組み合わせて、1〜約10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、任意により置換されていてもよい直鎖又は任意により置換されていてもよい分枝鎖飽和炭化水素モノラジカルを指す。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−アミル及びヘキシル、並びにより長いアルキル基、例えば、ヘプチル、オクチル等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に現れるときはいつでも、「C
1〜C
6アルキル」又は「C
1〜6アルキル」等の数値範囲は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、又は6個の炭素原子からなり得ることを意味するが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の出現をも包含する。
【0023】
本明細書で使用される「C
1〜C
3アルキル」及び「C
1〜C
6アルキル」という用語は、それぞれ、1個の水素原子を除去することにより、1〜3個、1〜6個、及び1〜12個の炭素原子を含む炭化水素部分から誘導された飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基を指す。C
1〜C
3アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、及びイソプロピルが挙げられる。C
1〜C
6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、及びn−ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、1個の水素原子を除去することによって3〜20個の炭素原子を含む単環式又は二環式の飽和炭素環式化合物から誘導される一価の基を指す。
【0025】
用語「C
3〜C
6シクロアルキル」は、1個の水素原子を除去することによって単環式又は二環式の飽和炭素環式化合物から誘導される一価の基を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
【0026】
アルキル基又はシクロアルキル基は、任意により、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C
1〜4アルコキシカルボニル、C
1〜4アルキルアミノカルボニル、ジ−(C
1〜4アルキル)−アミノカルボニル、ヒドロキシル、C
1〜4アルコキシ、ホルミルオキシ、C
1〜4アルキルカルボニルオキシ、C
1〜4アルキルチオ、C
3〜6シクロアルキル、又はフェニルのうちの1つ以上により置換されていてもよい。
【0027】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、単独で又は組み合わせて、−O−脂肪族基及び−O−カルボシクリル基を含むアルキルエーテル基、即ち、−O−アルキルを指し、アルキル基、脂肪族基、及びカルボシクリル基は、任意により置換されていてもよく、用語「アルキル」、「脂肪族」、及び「カルボシクリル」は本明細書で定義されている通りである。アルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される用語「C
1〜C
3アルコキシ」、「C
1〜C
6アルコキシ」は、先に定義したように、酸素原子を介して親分子部分に結合したC
1〜C
3アルキル基及びC
1〜C
6アルキル基を指す。C
1〜C
6アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、ネオペントキシ、及びn−ヘキソキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択される原子を指す。
【0030】
用語「ハロアルキル」は、水素の1個以上、例えば、1、2、3、4、又は5個がハロ原子で置換されている「アルキル」を含む。ハロアルキルは、直鎖又は分枝鎖「アルキル」単位であってよい。非限定的な例としては、−CH
2F、−CHF
2、−CF
3、−CH
2CH
2F、−CH
2CHF
2、−CH
2CF
3、−CF
2CH
2F、−CF
2CHF
2、−CF
2CF
3、−CH
2Cl、−CHCl
2、−CCl
3、−CH
2Br、−CHBr
2、及びCBr
3が挙げられる。
【0031】
用語「フルオロアルキル」は、水素の1個以上、例えば、1、2、3、4、又は5個がフルオロで置換された「アルキル」を含む。フルオロアルキルは直鎖又は分枝鎖の「アルキル」単位であってもよい。好ましいフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル及びペンタフルオロエチルが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される配合物、組成物、又は成分に関する用語「許容される」は、治療される被検体の全般的な健康に永続的な有害な影響を及ぼさないことを意味する。
【0033】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される」は、化合物の生物学的活性又は特性を無効にせず、比較的非毒性の塩、担体、又は希釈剤を含むが、これらに限定されない物質を指し、即ち、望ましくない生物学的作用を引き起こさずに、またそれが含まれる組成物の成分のいずれかと有害なように相互作用することなく、物質を個体に投与することができる。
【0034】
用語「薬学的に許容される塩」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずにヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比に見合う塩を指す。例えば、S.M.Bergeらは薬学的に許容される塩をJ.Pharmaceutical Sciences、66:1〜19(1977年)に詳細に記載しており、これは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる。塩は、本明細書に記載の化合物の最終的な単離及び精製の間にインサイチュ(in situ)で、又は遊離塩基官能基を適切な有機酸と別々に反応させることによって別々に調製される。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸、又は有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、若しくはマロン酸を用いて、又はイオン交換のような他の文書化された方法論を使用することによって形成されたアミノ基の塩である。その他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。更なる薬学的に許容される塩としては、適切な場合には、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩のような対イオンを用いて形成される非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0035】
塩への言及は、その溶媒付加形態又は結晶形態、特に溶媒和物又は多形体を含むことが理解されるべきである。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量の溶媒を含み、水、エタノール等の薬学的に許容される溶媒による結晶化のプロセス中に形成されることが多い。溶媒が水である場合には水和物が形成され、又は溶媒がアルコールである場合にはアルコラートが形成される。多形体は、化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配列を含む。多形体は、通常、異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学的及び電気的特性、安定性、並びに溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、及び貯蔵温度のような様々な要因により、単結晶形態が支配し得る。
【0036】
本明細書で使用される用語「シクロデキストリン」は、環形成において少なくとも6〜8個の糖分子からなる環状炭化水素を指す。環の外側部分は水溶性基を含み、環の中心には、小さな分子を収容することができる比較的非極性の空洞がある。
【0037】
本明細書で使用する用語「投与する(administer、administering)」、「投与」等は、化合物又は組成物の所望の生物学的作用部位への送達を可能にするために使用され得る方法を指す。これらの方法としては、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、又は注入等)、局所及び直腸投与が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、本明細書に記載の化合物及び方法と共に使用することができる投与技術に精通している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物及び組成物は、経口投与される。
【0038】
本明細書中で使用される用語「共投薬」等は、選択された治療薬の単一の患者への投与を包含することを意味し、これらの治療薬が同一若しくは異なる投与経路により、又は同時若しくは異なる時点で投与される治療計画を含むことを意図する。
【0039】
本明細書で使用される用語「有効量」は、治療される疾患又は状態の症状の1つ以上をある程度緩和する十分な量の投与される薬剤又は化合物を指す。その結果は、疾患の兆候、症状、又は原因の軽減及び/若しくは緩和、又は生物系の任意の他の所望の改変であり得る。任意の個々の症例における適切な「有効」量は、用量漸増研究等の技術を用いて決定することができる。
【0040】
本明細書で使用される用語「薬学的組み合わせ」は、2つ以上の活性成分の混合又は組み合わせから得られる生成物を意味し、活性成分の固定された組み合わせ及び固定されていない組み合わせの両方を含む。用語「固定された組み合わせ」は、活性成分、例えば、本明細書に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩及び併用剤は、両方とも、単一の実体又は投与量の形態で患者に同時に投与されることを意味する。用語「固定されていない組み合わせ」は、有効成分、例えば、本明細書に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩及び併用剤は、特定の介在期限なしで別個の実体として、同時に、共に、又は連続して患者に投与され、このような投与は、患者の体における2つの化合物の有効レベルを提供する。後者はまた、カクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与にも当てはまる。
【0041】
用語「患者」、「被検体」又は「個体」は同じ意味で用いられる。本明細書中で使用される場合、それらは、障害を患う個体等を指し、哺乳動物及び非哺乳動物を包含する。これらの用語はいずれも、個体が医療専門家のケア及び/又は監督下にあることを必要としない。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、例えば、チンパンジー、並びに他の類人猿及びサル種;家畜、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;飼育動物、例えば、ウサギ、イヌ、及びネコ;げっ歯類等の実験動物、例えば、ラット、マウス、及びモルモット等が挙げられるが、これらに限定されない哺乳類クラスの任意のメンバーである。非哺乳動物の例としては、鳥類、魚類等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される方法及び組成物のいくつかの実施形態では、個体は哺乳動物である。好ましい実施形態において、個体はヒトである。
【0042】
本明細書中で使用される用語「治療する(treat、treating)」又は「治療」は、疾患若しくは状態又はその1つ以上の症状を緩和、軽減又は改善すること、追加の症状を予防すること、症状の代謝原因を改善又は予防すること、疾患又は状態を抑制すること、例えば、疾患又は状態の進行を止めること、疾患又は状態を軽減すること、疾患又は状態の退行を引き起こすこと、疾患又は状態によって引き起こされる状態を軽減すること、あるいは疾患又は状態の症状を止めることを含み、予防を含むことを意図している。この用語は、治療的利益及び/又は予防的利益を達成することを更に含む。治療的利益とは、治療される基礎障害の根絶又は改善を意味する。また、個体が依然として基礎障害に罹患しているにも関わらず、個体において改善が観察されるように、基礎障害に関連する生理学的症状の1つ以上の根絶又は改善によって治療的利益が達成される。予防的利益に関しては、組成物は、特定の疾患を発症するリスクのある個体に、又はこの疾患の診断がなされていないにもかかわらず疾患の生理学的症状の1つ以上を報告する個体に投与される。
【0043】
用語「予防する」又は「予防」は、疾患又は障害を獲得するリスクの低減(即ち、疾患に曝露されるか又は罹患しやすい可能性があるが、まだ疾患の症状を経験も示してもいない被検体において疾患の臨床症状の少なくとも1つが発症しないようにする)を意味する。
【0044】
本明細書で使用される用語「担体」は、化合物の細胞又は組織への取り込みを促進する比較的非毒性の化合物又は薬剤を指す。
【0045】
酸化的リン酸化阻害剤又は解糖阻害剤の投与量は、絶対的又は相対的な用語で表すことができる。例えば、酸化的リン酸化阻害剤又は解糖阻害剤のいずれかの投与量は、患者に投与される酸化リン酸化阻害剤若しくは解糖阻害剤又はその薬学的に許容される塩の特定のミリグラム数(mg)として表すことができる。相対的には、本明細書における酸化的リン酸化阻害剤又は解糖阻害剤の投与量は、「mg/kg」として表すことができ、これは、患者の体重1kgにつき患者に投与される酸化リン酸化阻害剤若しくは解糖阻害剤又はその薬学的に許容される塩のミリグラム数を表す。投与量はまた、患者の推定表面積の平方メートル当たりで投与される活性成分の質量を示す、mg/m
2で表すこともできる。
【0046】
ベンゾピラン誘導体化合物
本発明のいくつかの実施形態は、ベンゾピラン誘導体について記述する。いくつかの実施形態では、ベンゾピラン誘導体は、置換ジアリールクロマン誘導体、スーパーベンゾピラン、又はこれらの組み合わせである。
【0047】
いくつかの実施形態では、ベンゾピラン誘導体は式(I)の構造又はその薬学的に許容される塩を有する。
【化6】
式中、
R
1は、水素、ヒドロキシ、ハロ、NR
14R
15、C
3〜6シクロアルキル、C
1〜6アルコキシ、C
1〜6ハロアルキル、C
2〜6アルケニル、COOR
12、COR
13、(O)
nC
1〜4アルキレンNR
14R
15、又は1個以上のヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、若しくはNR
14R
15基によって任意により置換されていてもよいC
1〜6アルキルであり;
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、及びR
10は、独立して、水素、ヒドロキシ、ハロ、NR
14R
15、C
3〜6シクロアルキル、C
1〜6アルコキシ、C
1〜6ハロアルキル、C
2〜6アルケニル、COOR
12、COR
13、又は1個以上のヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、若しくはNR
14R
15基によって任意により置換されていてもよいC
1〜6アルキルであり;
R7は、水素、ヒドロキシ、ハロ、NR
14R
15、C
3〜6シクロアルキル、C
1〜6アルコキシ、C
2〜6アルケニル、C
1〜6ハロアルキル、又は1個以上のヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、若しくはNR
14R
15基によって任意により置換されていてもよいC
1〜6アルキルであり;
線
【化7】
及びR
2は一緒に二重結合を表すか、又は線
【化8】
は単結合を表し、並びにR
11は、水素、ヒドロキシ、NR
14R
15、C
1〜3アルコキシ、C
1〜3フルオロアルキル、ハロ、又は1個以上のヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、若しくはNR
14R
15基で任意により置換されていてもよいC
1〜3アルキルであり;
R
11及びR
12は、独立して、水素、C
1〜6アルキル、C
3〜6シクロアルキル、又はトリアルキルシリルであり;
R
13は、水素、C
1〜6アルキル、C
3〜6シクロアルキル、又はNR
14R
15であり;
nは0又は1を表し;
R
14及びR
15は、一緒になって、5員又は6員の複素環式芳香族又は複素環式を表す場合、独立して、水素又はC
1〜6アルキル又はNR
14R
15を表す。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態は、式(II)の構造を有するベンゾピラン誘導体又はその薬学的に許容される塩について記述する。
【化9】
式中、
R
1は、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、又はハロであり;
R
2は、ヒドロキシ又はアルコキシであり;
R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、又はアルキルであり;
R
7は、アルキル又は水素であり;
R
9は、ヒドロキシ又はアルコキシである。
【0049】
いくつかの実施形態では、R
1はヒドロキシ又はアルコキシである。いくつかの実施形態では、R
1はヒドロキシである。他の実施形態では、R
1はC
1〜C
6アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
1はC
1〜C
3アルコキシである。他の実施形態では、R
1はC
1〜C
2アルコキシである。特定の実施形態では、R
1はメトキシである。特定の実施形態では、R
1はエトキシである。特定の実施形態では、R
1はプロポキシである。特定の実施形態では、R
1はイソプロポキシである。特定の実施形態では、R
1はブトキシである。特定の実施形態では、R
1はイソブトキシである。特定の実施形態では、R
1はsec−ブトキシである。特定の実施形態では、R
1はtert−ブトキシである。特定の実施形態では、R
1はペンチルオキシである。特定の実施形態では、R
1はヘキシルオキシである。更なる又は代替の実施形態では、R
1はフルオロである。他の実施形態では、R
1はクロロである。他の実施形態では、R
1はヨードである。他の実施形態では、R
1はブロモである。他の実施形態では、R
1はハロアルキルである。他の実施形態では、R
1はハロC
1〜6アルキルである。他の実施形態では、R
1はハロC
1〜3アルキルである。他の実施形態では、R
1はハロC
1〜2アルキルである。特定の実施形態では、R
1はモノフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
1はジフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
1はトリフルオロメチルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、R
2はヒドロキシである。いくつかの実施形態では、R
2はC
1〜C
6アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
2はC
1〜C
3アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
2はC
1〜C
2アルコキシである。特定の実施形態では、R
2はメトキシである。特定の実施形態では、R
2はエトキシである。特定の実施形態では、R
2はプロポキシである。特定の実施形態では、R
2はイソプロポキシである。特定の実施形態では、R
2はブトキシである。特定の実施形態では、R
2はイソブトキシである。特定の実施形態では、R
2はsec−ブトキシである。特定の実施形態では、R
2はtert−ブトキシである。特定の実施形態では、R
2はペンチルオキシである。特定の実施形態では、R
2はヘキシルオキシである。
【0051】
いくつかの実施形態では、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素、アルコキシ、又はアルキルである。いくつかの実施形態では、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素又はアルキルである。他の実施形態では、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して水素である。
【0052】
いくつかの実施形態では、R
3は水素である。いくつかの実施形態では、R
3はC
1〜C
6アルキルである。他の実施形態では、R
3はC
1〜C
3アルキルである。他の実施形態では、R
3はC
1〜C
2アルキルである。特定の実施形態では、R
3はメチルである。特定の実施形態では、R
3はエチルである。特定の実施形態では、R
3はプロピルである。特定の実施形態では、R
3はイソプロピルである。特定の実施形態では、R
3はブチルである。特定の実施形態では、R
3はイソブチルである。特定の実施形態では、R
3はsec−ブチルである。特定の実施形態では、R
3はtert−ブチルである。特定の実施形態では、R
3はペンチルである。特定の実施形態では、R
3はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
3はC
1〜C
6アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
3はC
1〜C
3アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
3はC
1〜C
2アルコキシである。特定の実施形態では、R
3はメトキシである。特定の実施形態では、R
3はエトキシである。特定の実施形態では、R
3はプロポキシである。更なる又は代替の実施形態では、R
3はフルオロである。他の実施形態では、R
3はクロロである。他の実施形態では、R
3はヨードである。他の実施形態では、R
3はブロモである。他の実施形態では、R
3はハロアルキルである。他の実施形態では、R
3はハロC
1〜6アルキルである。他の実施形態では、R
3はハロC
1〜3アルキルである。他の実施形態では、R
3はハロC
1〜2アルキルである。特定の実施形態では、R
3はモノフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
3はジフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
3はトリフルオロメチルである。
【0053】
いくつかの実施形態では、R
4は水素である。いくつかの実施形態では、R
4はC
1〜C
6アルキルである。他の実施形態では、R
4はC
1〜C
3アルキルである。他の実施形態では、R
4はC
1〜C
2アルキルである。特定の実施形態では、R
4はメチルである。特定の実施形態では、R
4はエチルである。特定の実施形態では、R
4はプロピルである。特定の実施形態では、R
4はイソプロピルである。特定の実施形態では、R
4はブチルである。特定の実施形態では、R
4はイソブチルである。特定の実施形態では、R
4はsec−ブチルである。特定の実施形態では、R
4はtert−ブチルである。特定の実施形態では、R
4はペンチルである。特定の実施形態では、R
4はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
4はC
1〜C
6アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
4はC
1〜C
3アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
4はC
1〜C
2アルコキシである。特定の実施形態では、R
4はメトキシである。特定の実施形態では、R
4はエトキシである。特定の実施形態では、R
4はプロポキシである。更なる又は代替の実施形態では、R
4はフルオロである。他の実施形態では、R
4はクロロである。他の実施形態では、R
4はヨードである。他の実施形態では、R
4はブロモである。他の実施形態では、R
4はハロアルキルである。他の実施形態では、R
4はハロC
1〜6アルキルである。他の実施形態では、R
4はハロC
1〜3アルキルである。他の実施形態では、R
4はハロC
1〜2アルキルである。特定の実施形態では、R
4はモノフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
4はジフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
4はトリフルオロメチルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、R
5は水素である。いくつかの実施形態では、R
5はC
1〜C
6アルキルである。他の実施形態では、R
5はC
1〜C
3アルキルである。他の実施形態では、R
5はC
1〜C
2アルキルである。特定の実施形態では、R
5はメチルである。特定の実施形態では、R
5はエチルである。特定の実施形態では、R
5はプロピルである。特定の実施形態では、R
5はイソプロピルである。特定の実施形態では、R
5はブチルである。特定の実施形態では、R
5はイソブチルである。特定の実施形態では、R
5はsec−ブチルである。特定の実施形態では、R
5はtert−ブチルである。特定の実施形態では、R
5はペンチルである。特定の実施形態では、R
5はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
5はC
1〜C
6アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
5はC
1〜C
3アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
5はC
1〜C
2アルコキシである。特定の実施形態では、R
5はメトキシである。特定の実施形態では、R
5はメトキシである。特定の実施形態では、R
5はプロポキシである。更なる又は代替の実施形態では、R
5はフルオロである。他の実施形態では、R
5はクロロである。他の実施形態では、R
5はヨードである。他の実施形態では、R
5はブロモである。他の実施形態では、R
5はハロアルキルである。他の実施形態では、R
5はハロC
1〜6アルキルである。他の実施形態では、R
5はハロC
1〜3アルキルである。他の実施形態では、R
5はハロC
1〜2アルキルである。特定の実施形態では、R
5はモノフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
5はジフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
5はトリフルオロメチルである。
【0055】
いくつかの実施形態では、R
6は水素である。いくつかの実施形態では、R
6はC
1〜C
6アルキルである。他の実施形態では、R
6はC
1〜C
3アルキルである。他の実施形態では、R
6はC
1〜C
2アルキルである。特定の実施形態では、R
6はメチルである。特定の実施形態では、R
6はエチルである。特定の実施形態では、R
6はプロピルである。特定の実施形態では、R
6はイソプロピルである。特定の実施形態では、R
6はブチルである。特定の実施形態では、R
6はイソブチルである。特定の実施形態では、R
6はsec−ブチルである。特定の実施形態では、R
6はtert−ブチルである。特定の実施形態では、R
6はペンチルである。特定の実施形態では、R
6はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
6はC
1〜C
6アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
6はC
1〜C
3アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
6はC
1〜C
2アルコキシである。特定の実施形態では、R
6はメトキシである。特定の実施形態では、R
6はエトキシである。特定の実施形態では、R
6はプロポキシである。更なる又は代替の実施形態では、R
6はフルオロである。他の実施形態では、R
6はクロロである。他の実施形態では、R
6はヨードである。他の実施形態では、R
6はブロモである。他の実施形態では、R
6はハロアルキルである。他の実施形態では、R
6はハロC
1〜6アルキルである。他の実施形態では、R
6はハロC
1〜3アルキルである。他の実施形態では、R
6はハロC
1〜2アルキルである。特定の実施形態では、R
6はモノフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
6はジフルオロメチルである。特定の実施形態では、R
6はトリフルオロメチルである。
【0056】
いくつかの実施形態では、R
7はC
1〜C
6アルキルである。他の実施形態では、R
7はC
1〜C
3アルキルである。他の実施形態では、R
7はC
1〜C
2アルキルである。特定の実施形態では、R
7はメチルである。特定の実施形態では、R
7はエチルである。特定の実施形態では、R
7はプロピルである。特定の実施形態では、R
7はイソプロピルである。代替実施形態では、R
7は水素である。いくつかの実施形態では、R
7はメチル又は水素である。
【0057】
いくつかの実施形態では、R
9はヒドロキシである。いくつかの実施形態では、R
9はC
1〜C
6アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
9はC
1〜C
3アルコキシである。更なる又は追加の実施形態では、R
9はC
1〜C
2アルコキシである。特定の実施形態では、R
9はメトキシである。特定の実施形態では、R
9はエトキシである。特定の実施形態では、R
9はプロポキシである。特定の実施形態では、R
9はイソプロポキシである。特定の実施形態では、R
9はブトキシである。特定の実施形態では、R
9はイソブトキシである。特定の実施形態では、R
9はsec−ブトキシである。特定の実施形態では、R
9はtert−ブトキシである。特定の実施形態では、R
9はペンチルオキシである。特定の実施形態では、R
9はヘキシルオキシである。
【0058】
ある種の実施形態では、R
1はヒドロキシ又はアルコキシであり;R
2はヒドロキシ又はアルコキシであり;R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアルキルであり;R
7は、アルキル又は水素であり;R
9は、ヒドロキシ又はアルコキシである。
【0059】
ある種の実施形態では、R
1はヒドロキシ又はアルコキシであり;R
2はヒドロキシ又はアルコキシであり;R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素であり;R
7はアルキル又は水素であり;R
9はヒドロキシである。
【0060】
いくつかの実施形態では、R
1はヒドロキシ又はメトキシであり;R
2はヒドロキシ又はメトキシであり;R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、メチルであり;R
7はメチル又は水素であり;R
9はヒドロキシ又はメトキシである。
【0061】
いくつかの実施形態では、R
1はヒドロキシ又はメトキシであり;R
2はヒドロキシ又はメトキシであり;R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素であり;R
7はメチル又は水素であり;R
9はヒドロキシである。
【0062】
いくつかの実施形態では、一般式(II)の化合物は、以下に示すように分布した置換基R
1、R
3、及びR
4を有する:
【化10】
【0063】
いくつかの実施形態では、一般式(II)の化合物は、以下に示すように分布した置換基R
2、R
5、及びR
6を有する:
【化11】
【0064】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、式(III−a)又は(III−b)の構造を有する式(II)の化合物について記述する。
【化12】
【0065】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、式(IV)の構造を有する式(II)の化合物について記述する。
【化13】
【0066】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、式(IV−a)又は(IV−b)の構造を有する式(IV)の化合物について記述する。
【化14】
【0067】
いくつかの実施形態では、一般式(IV)の化合物は、以下に示すように分布した置換基R
3及びR
4を有する。
【化15】
【0068】
実施形態のいずれか及び全てについて、置換基は、列挙された選択肢のサブセットから選択される。
【0069】
種々の変数について上述された基の任意の組み合わせが、本明細書において企図される。本明細書を通して、当業者はそれらの基及び置換基を選択し、安定した部分及び化合物を提供することができる。
【0070】
例示的な化合物としては、以下の化合物又はそれらの塩若しくは誘導体が挙げられる。
【化16】
【0071】
例示的な化合物としては、以下の化合物が挙げられる:
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(化合物1);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(化合物2);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(化合物3);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−フルオロフェニル)クロマン−7−オール(化合物4);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物5);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物6);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物7);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物8);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物9);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−フルオロフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物10);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物11);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物12);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物13);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−8−メチルクロマン(化合物14);
3−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−8−メチルクロマン−7−オール(化合物15);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルクロマン−7−オール(化合物16);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物17);
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(化合物18);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−p−トリルクロマン−7−オール(化合物19);
3−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシクロマン(化合物20);
4−(4−ヒドロキシ−2,6−ジメトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物21);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物22);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−アシル−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物23);
3−(3−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物24);
3−(4−ブロモフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物25);
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物26);
4−(3−アミノフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物27);及び
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フェノキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物28)。
【0072】
本発明のある種の実施形態による化合物において、複素環上のアリール置換基は、互いに対してシス又はトランスであり得ることは、当業者には明らかであろう。本発明のある種の実施形態では、これらの置換基はシスである。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態による化合物は、2つのキラル中心を含む。本発明は、全てのエナンチオマー及びジアステレオマー、並びに任意の割合のそれらの混合物を含む。本発明は、単離されたエナンチオマー又は対のエナンチオマーにも及ぶ。本明細書の化合物(ベンゾピラン誘導体及び上記化合物を製造するための試薬が挙げられるが、これらに限定されない)のいくつかは、不斉炭素原子を有し、従って、エナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。ジアステレオマー混合物は、それらの物理化学的差異に基づいて、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化等の方法によって、個々のジアステレオマーに分離することができる。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、アルコール)との反応、ジアステレオマーの分離、及び個々のジアステレオマーの対応する純粋なエナンチオマーへの変換(例えば、加水分解)によってエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換することによって分離することができる。ジアステレオマー、エナンチオマー、及びそれらの混合物を含む全てのこのような異性体は、本明細書に記載の組成物の一部として考えられる。
【0074】
いくつかの実施形態による化合物は、ラセミ混合物である。他の実施形態では、本明細書に記載の任意の化合物は、光学的に純粋な形態(例えば、光学活性(+)及び(−)、(R)−及び(S)−、d−及びl−、又は(D)及び(L)−異性体)である。ある種の好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物はd−異性体である。従って、いくつかの実施形態では、エナンチオマー過剰で式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の構造を有する光学活性d−異性体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物のd−異性体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、95%、又は99.9%のエナンチオマー過剰率で提供される。他の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物のd−異性体は、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%超のエナンチオマー過剰率で提供される。特定の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物は95%超のエナンチオマー過剰率を有する。
【0075】
式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の特定の光学活性化合物(即ち、エナンチオマー)としては、以下が挙げられる。
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(d−1);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(d−2);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(d−3);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−フルオロフェニル)クロマン−7−オール(d−4);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−5);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−6);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−7);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−8);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−9);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−フルオロフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−10);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(d−11);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(d−12);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−13);
d−シス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−8−メチルクロマン(d−14);
d−シス−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−8−メチルクロマン−7−オール(d−15);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルクロマン−7−オール(d−16);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(d−17);
d−シス−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(d−18);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−p−トリルクロマン−7−オール(d−19);
d−シス−3−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシクロマン(d−20);
d−シス−4−(4−ヒドロキシ−2,6−ジメトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(d−21);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(d−22);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−アシル−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(d−23);
d−シス−3−(3−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(d−24);
d−シス−3−(4−ブロモフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(d−25);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(d−26);
d−シス−4−(3−アミノフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(d−27);
d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フェノキシフェニル)クロマン−7−オール(d−28);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(l−1);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(l−2);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)クロマン−7−オール(l−3);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−フルオロフェニル)クロマン−7−オール(l−4);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−5);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−6);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−7);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−8);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−9);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシ−3−フルオロフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−10);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(l−11);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(l−12);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−13);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−8−メチルクロマン(l−14);
l−シス−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−8−メチルクロマン−7−オール(l−15);
l−シス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルクロマン−7−オール(l−16);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(l−17);
l−シス−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール(l−18);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−p−トリルクロマン−7−オール(l−19);
l−シス−3−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシクロマン(l−20);
l−シス−4−(4−ヒドロキシ−2,6−ジメトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(l−21);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(l−22);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−アシル−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(l−23);
l−シス−3−(3−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(l−24);
l−シス−3−(4−ブロモフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(l−25);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(l−26);
l−シス−4−(3−アミノフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(l−27);
l−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−フェノキシフェニル)クロマン−7−オール(l−28)。
【0076】
特定の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物は、d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オールである。他の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物は、d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オールである。
【0077】
ある種の実施形態では、式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物は、d−異性体である。従って、いくつかの実施形態では、エナンチオマー過剰で式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の構造を有する光学活性d−異性体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、d−異性体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、95.5%、又は99.9%のエナンチオマー過剰率で提供される。他の実施形態では、d−異性体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、95.5%、又は99.9%超のエナンチオマー過剰率で提供される。特定の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物は95%超のエナンチオマー過剰率を有する。特定の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物は98%超のエナンチオマー過剰率を有する。特定の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物は99%超のエナンチオマー過剰率を有する。特定の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物は99.9%超のエナンチオマー過剰率を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、ベンゾピラン誘導体はスーパーベンゾピランである。いくつかの実施形態では、ベンゾピラン誘導体は、「Trilexium」(商標)(TRXE−009)、「Cantrixil」(商標)(TRXE−002、Trx−1)、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ベンゾピラン誘導体は、「Trilexium」(商標)である。いくつかの実施形態では、ベンゾピラン誘導体は「Cantrixil」(商標)である。
【0079】
追加の又は更なる実施形態では、本明細書に記載の化合物は、プロドラッグの形態で使用される。追加の又は更なる実施形態では、本明細書に記載の化合物は、所望の治療効果を含む所望の効果を生じるために使用される代謝産物を生成する必要がある生物に投与すると代謝される。
【0080】
本明細書に記載される任意の化合物は、スキーム1及び2に示される例示的合成に従って合成され得る。例えば、化合物6及び7は、4’−ビス−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−8−メチルジヒドロダイゼインから合成される。4’−ビス−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−8−メチルジヒドロダイゼインを、無水THF中の4−メトキシ−3−メチルフェニルマグネシウムブロミドで処理する。反応混合物を湿潤エーテル(50:50のH
2O/Et
2O)で処理する。得られた混合物をEt
2Oで抽出する。有機層を水、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮する。得られた残渣をpTsOH及びエタノールで処理する。反応混合物を3時間加熱還流する。反応混合物を減圧下で濃縮し、次いで水(0℃)に注ぐ。混合物をEtOAcで抽出し、次いで有機層を水(3回)、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮して3−アルケン中間体を得る。中間体をPd触媒及びエタノールで処理する。反応混合物を低圧で3時間水素化する。反応物をセライトで濾過し、濾液を濃縮して15mLの容量にする。得られた溶液を水に加える。混合物をEt
2O(3回)で抽出し、有機層を合わせ、水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残渣を再結晶により精製し、化合物7を得る。
【0082】
化合物7を窒素でパージしたフラスコに移す。酢酸中の臭化水素(33重量%)を反応混合物に滴下添加する。混合物を130℃で7時間加熱還流する。反応混合物を氷浴に入れ、pHを6に調整する。反応混合物をEtOAcで抽出し、有機層を水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物6を得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物をプロドラッグとして調製する。「プロドラッグ」は、インビボ(in vivo)で親薬物に変換される薬剤を指す。プロドラッグは、状況によっては、親薬物よりも投与が容易であるため、しばしば有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であるが、親薬物はそうではない。更に又は代替的に、プロドラッグは、親薬物よりも医薬組成物における改善された溶解性も有する。いくつかの実施形態では、プロドラッグの設計は、有効水溶性を増加させる。限定するものではないが、プロドラッグの例は、エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、代謝的に加水分解されて活性実体を提供する、本明細書に記載の化合物である。プロドラッグの更なる例は、ペプチドが代謝されて活性部分を現す酸性基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)である。ある種の実施形態では、インビボ投与の際に、プロドラッグは、化合物の生物学的、薬学的、又は治療的に活性な形態に化学的に変換される。ある種の実施形態では、プロドラッグは、化合物の生物学的、薬学的、又は治療的に活性な形態に、1つ以上のステップ又はプロセスによって酵素的に代謝される。
【0085】
本明細書に記載の化合物のプロドラッグとしては、エステル、エーテル、カーボネート、チオカーボネート、N−アシル誘導体、N−アシルオキシアルキル誘導体、第三級アミンの第四級誘導体、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基、アミノ酸抱合体、リン酸エステル、及びスルホン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれているDesign of Prodrugs,Bundgaard,A.Ed.,Elseview,1985年、及びMethod in Enzymology,Widder,K.ら,Ed.;Academic,1985年,vol.42,p.309〜396;Bundgaard,H.“Design and Application of Prodrugs” in A Textbook of Drug Design and Development,Krosgaard−Larsen and H.Bundgaard,Ed.,1991年,Chapter 5,p.113〜191;及びBundgaard,H.,Advanced Drug Delivery Review,1992年,8,1〜38を参照のこと。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物中のヒドロキシル基は、プロドラッグを形成するために使用され、ヒドロキシル基がアシルオキシアルキルエステル、アルコキシカルボニルオキシアルキルエステル、アルキルエステル、アリールエステル、リン酸エステル、糖エステル、エーテル等に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された化合物中のヒドロキシル基はプロドラッグであり、その後ヒドロキシルはインビボで代謝されてカルボン酸基を提供する。いくつかの実施形態では、カルボキシル基は、エステル又はアミド(即ち、プロドラッグ)を提供するために使用され、その後、インビボで代謝されてカルボン酸基を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、アルキルエステルプロドラッグとして調製される。
【0086】
プロドラッグがインビボで代謝されて本明細書において規定されるような本明細書に記載の化合物を生成する、本明細書に記載の化合物のプロドラッグ形態は、特許請求の範囲の範囲内に含まれる。場合によっては、本明細書に記載の化合物のいくつかは、別の誘導体又は活性化合物のプロドラッグである。
【0087】
追加の又は更なる実施形態では、本明細書に記載の化合物は、所望の治療効果を含む所望の効果を生じるために使用される代謝産物を産生する必要がある生物に投与すると代謝される。
【0088】
本明細書に開示される化合物の「代謝産物」は、化合物が代謝される際に形成されるその化合物の誘導体である。用語「活性代謝産物」は、化合物が代謝される際に形成される化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。本明細書で使用される用語「代謝された」は、生物によって特定の物質が変化するプロセス(加水分解反応及び酵素によって触媒される反応を含むが、これらに限定されない)を合わせたものを指す。従って、酵素は、化合物に対して特異的な構造変化を生じ得る。例えば、シトクロムP450は種々の酸化還元反応を触媒するが、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、活性グルクロン酸分子の芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、及び遊離スルフヒドリル基への転移を触媒する。本明細書中に開示される化合物の代謝産物は、任意により、宿主への化合物の投与及び宿主からの組織サンプルの分析によって、又は化合物のインビトロ(in vitro)での肝細胞とのインキュベーション及び得られた化合物の分析によって同定される。
【0089】
解糖阻害剤
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、細胞内の解糖経路の少なくとも1つの段階を阻害することができる解糖阻害剤について記述する。いくつかの実施形態では、解糖阻害剤はヘキソキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、ヘキソキナーゼ阻害剤は、2−デオキシグルコース、6−フルオログルコース、6−チオグルコース、2−フルオロデオキシグルコース、3−ブロモピルベート、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、ヘキソキナーゼ阻害剤は、2−デオキシグルコース、2−フルオロデオキシグルコース、3−ブロモピルベート、又はその薬学的に許容される塩である。ある種の実施形態では、解糖阻害剤は、2−デオキシ−D−グルコースの同族体、類似体、及び/又は誘導体である。2−デオキシグルコース誘導体の非限定的な例としては、2−デオキシ−D−グルコース、2−デオキシ−L−グルコース;2−ブロモ−D−グルコース、2−フルオロ−D−グルコース、2−ヨード−D−グルコース、6−フルオロ−D−グルコース、6−チオ−D−グルコース、7−グルコシルフルオリド、3−フルオロ−D−グルコース、4−フルオロ−D−グルコース、2−デオキシ−D−グルコースの1−O−プロピルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの1−O−トリデシルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの1−O−ペンタデシルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの3−O−プロピルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの3−O−トリデシルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの3−O−ペンタデシルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの4−O−プロピルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの4−O−トリデシルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの4−O−ペンタデシルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの6−O−プロピルエステル、2−デオキシ−D−グルコースの6−O−トリデシルエステルが挙げられ、6−O−グリコール分解阻害剤は3−ハロピルベートである。ある種の実施形態では、3−ハロピルベートは、3−フルオロピルベート、3−クロロピルベート、3−ブロモピルベート、又は3−ヨードピルベートである。
【0090】
いくつかの実施形態では、解糖阻害剤は乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤である。ある種の実施形態では、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤は、オキサメート又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、解糖阻害剤は、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、ヨードアセテート又はその薬学的に許容される塩)である。
【0091】
いくつかの実施形態では、解糖阻害剤はグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤である。場合によっては、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤は紅藻ブロモフェノールである。
【0092】
いくつかの実施形態では、解糖阻害剤は血管新生阻害剤である。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤はマルチチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤としては、内皮特異的受容体チロシンキナーゼ(Tie−2)、上皮成長因子(受容体)(EGF(R))、インスリン様成長因子(受容体)(IGF−(R))、線維芽細胞成長因子(受容体)(FDF(R))、血小板由来成長因子(受容体)(PDGF(R))、肝細胞成長因子(受容体)(HGF(R))、又は血管内皮成長因子(VEGF)若しくはVEGF受容体(VEGFR)を標的とする(例えば阻害する)薬剤;並びに、トロンボスポンジン類似体、マトリックスメタロプロテイナーゼ(例えば、MMP−2又はMMP−9)阻害剤、サリドマイド又はサリドマイド類似体、インテグリン、アンギオスタチン、エンドスタチン、血管破壊剤、プロテインキナーゼC(PKC)阻害剤等が挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は、血管内皮成長因子(VEGF)又はVEGF受容体(VEGFR)を標的とする(例えば、阻害する)薬剤である。VEGF/VEGFRを標的とする(例えば、阻害する)薬剤は、VEGF又はVEGFRファミリー(VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3)の1つ以上のメンバーを標的とする(例えば、阻害する)化合物に関し、任意の血管内皮成長因子(VEGF)リガンド(例えば、リガンド抗体又は可溶性受容体)及び任意のVEGF受容体(VEGFR)の阻害剤(例えば、VEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、VEGFRアンタゴニスト、又は受容体抗体)が挙げられる。小分子VEGFR阻害剤の例としては、ソラフェニブ(ネクサバール、Raf、PDGFR、Flt3、Kit、及びRETRの阻害剤でもある)、スニチニブ(スーテント、Kit、Flt3、及びPDGFRの阻害剤でもある)、パゾパニブ(GW−786034、Kit及びPDGFRの阻害剤でもある)、セジラニブ(レセンチン、AZD−2171)、アキシチニブ(AG−013736、PDGFR及びKitの阻害剤でもある)、バンデタニブ(ザクチマ、ZD−6474、EGFR及びRetの阻害剤でもある)、バタラニブ(PDGFR及びKitの阻害剤でもある)、モテサニブ(AMG−706、PDGFR及びKitの阻害剤でもある)、ブリバニブ(FGFR阻害剤でもある)、リニファニブ(ABT−869、PDGFR、Flt3、及びKitの阻害剤でもある)、チボザニブ(KRN−951、PDGFR、Kit、及びMAPの阻害剤でもある)、BMS−690514(EGFR及びHER−2の阻害剤でもある)、E−7080(Kit及びKdrの阻害剤でもある)、レゴラフェニブ(BAY−73−4506、Tekの阻害剤でもある)、フォレチニブ(XL−880、Flt3、Kit、及びMetの阻害剤でもある)、テラチニブ(BAY−57−9352)、MGCD−265(c−MET、Tie2、及びRonの阻害剤でもある)、ドビチニブ(PDGFR、Flt3、Kit、及びFGFRの阻害剤でもある)、ニンテダニブ(FGFR及びPDGFRの阻害剤でもある)、XL−184(カボザンチニブ、Met、Flt3、Ret、Tek、及びKitの阻害剤でもある)が挙げられるが、これらに限定されない。VEGF(R)を阻害する生物学的実体の例としては、ベバシズマブ(アバスチン)等の抗VEGFリガンド抗体;アフリベルセプト(VEGFトラップ)等の可溶性受容体;ラムシルマブ(IMC−1121b)又はIMC−18F1等の抗VEGF受容体抗体;CT−322又はCDP−791等のVEGFRアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
PDGFRを標的とする(例えば、阻害する)薬剤は、PDGFRファミリーの1つ以上のメンバーを標的とする(例えば、阻害する)化合物に関し、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)ファミリーチロシンキナーゼの阻害剤(単一キナーゼ阻害剤又はマルチキナーゼ阻害剤のいずれかとして)並びに抗PDGFR抗体が挙げられる。小分子PDGFR阻害剤の例としては、ニンテダニブ(VEGFR及びFGFRの阻害剤でもある)、アキシチニブ(VEGFR及びKitの阻害剤でもある)、ドビチニブ(VEGFR、Flt3、Kit、及びFGFRの阻害剤でもある)、スニチニブ(VEGFR、Flt3、及びKitの阻害剤でもある)、モテサニブ(VEGFR及びKitの阻害剤でもある)、パゾパニブ(VEGFR及びKitの阻害剤でもある)、ニロチニブ(Abl及びKitの阻害剤でもある)、タンヅチニブ(Flt3及びKitの阻害剤でもある)、バタラニブ(VEGFR及びKitの阻害剤でもある)、チボザニブ(KRN−951、VEGFR、Kit、及びMAPの阻害剤でもある)、AC−220(Flt3及びKitの阻害剤でもある)、TSU−68(FGFR及びVEGFRの阻害剤でもある)、KRN−633(VEGFR、Kit、及びFlt3の阻害剤でもある)、リニフィニブ(Flt3、Kit、及びVEGFRの阻害剤でもある)、ソラフェニブ(ネクサバール、Raf、VEGFR、Flt3、Kit、及びRETRの阻害剤でもある)、イマチニブ(グリベック、Abl及びKitの阻害剤でもある)が挙げられるが、これらに限定されない。抗PDGFR抗体の例としてはIMC−3G3が挙げられる。
【0095】
FGFRを標的とする薬剤は、FGFRファミリーの1つ以上のメンバーを標的とする化合物に関し、線維芽細胞増殖因子受容体ファミリーチロシンキナーゼの阻害剤(単一キナーゼ阻害剤又はマルチキナーゼ阻害剤のいずれかとして)が挙げられる。小分子FGFR阻害剤の例としては、ニンテダニブ(VEGFR及びPDGFRの阻害剤でもある)、ドビチニブ(VEGFR、Flt3、Kit、及びPDGFRの阻害剤でもある)、KW−2449(Flt3及びAblの阻害剤でもある)、ブリバニブ(VEGFR阻害剤でもある)、TSU−68(PDGFR及びVEGFRの阻害剤でもある)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
EGFRを標的とする(例えば、阻害する)薬剤は、上皮成長因子受容体ファミリー(erbB1、erbB2、erbB3、erbB4)の1つ以上のメンバーを標的とする(例えば阻害する)化合物に関し、上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーキナーゼ(単一キナーゼ阻害剤又はマルチキナーゼ阻害剤のいずれかとして)の1つ以上のメンバーの阻害剤及び上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーの1つ以上のメンバーに結合する抗体が挙げられる。小分子上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤の例としては、エルロチニブ(タルセバ)、ゲフィチニブ(イレッサ)、アファチニブ、ラパチニブ(タイケルブ)、バンデタニブ(ザクチマ、VEGFR、及びRETRの阻害剤でもある)、BMS−690514(VEGFRの阻害剤でもある)、ネラチニブ(HKI−272)、バルリチニブ、AZD−8931、AC−480、AEE−788(VEGFRの阻害剤でもある)が挙げられるが、これらに限定されない。上皮成長因子受容体(EGFR)に対する抗体の例としては、抗ErbB1抗体であるセツキシマブ、パニツムマブ、又はニモツズマブ、抗ErbB2抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(オムニタルグ)、又はエルツマキソマブ、及び抗EGFR抗体であるザルツムマブが挙げられる。
【0097】
IGF(R)阻害剤は、インスリン様成長因子(IGF)ファミリー(例えば、IGF1及び/又はIGF2)、特にチロシンキナーゼのIGFRファミリー、例えば、IGFR−1の1つ以上のメンバーを標的とする薬剤(単一キナーゼ阻害剤又はマルチキナーゼ阻害剤のいずれかとして)及び/又はインスリン受容体経路を標的とする薬剤であり、IGFRチロシンキナーゼ阻害剤OSI−906(リンシチニブ)及び1−{4−[(5−シクロプロピル−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]ピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−2−イル}−N−(6−フルオロ−3−ピリジニル)−2−メチル−L−プロリンアミド(BMS−754807)、並びに抗IGF(R)抗体であるフィジツムマブ、シクスツムマブ、ダロツズマブ、ガニツマブ、及びロバツムマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
HGF(R)阻害剤は、肝細胞成長因子(HGF)ファミリー、特にチロシンキナーゼのHGFRファミリーの1つ以上のメンバーを標的とする薬剤(単一キナーゼ阻害剤又はマルチキナーゼ阻害剤のいずれかとして)であり、HGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるカボザンチニブ(XL−184、VEGFR、Flt3、Ret、Tek、及びKitの阻害剤でもある)、クリゾチニブ(Alkの阻害剤でもある)、フォレチニブ(Flt3、Kit、及びVEGFRの阻害剤でもある)、及びチバチニブ、並びに抗HGF(R)抗体であるフィクラツズマブ及びオナルツズマブを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0099】
いくつかの実施形態では、血管破壊剤としては、5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸(DMXAA、バジメザン)、コンブレタスタチンA4リン酸(ジブレスタット)、又はコンブレタスタチンA4類似体、例えば、オムブラブリン(AVE−8062)が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、血管新生阻害剤はニンテダニブ(BIBF1120、バルガテフ)、ベバシズマブ(アバスチン)、エベロリムス(アフィニトール)、テムシロリムス(トーリセル)、レナリドマイド(レブリミド)、パゾパニブ(ヴォトリエント)、ラムシルマブ(サイラムザ)、ソラフェニブ(ネクサバール)、スニチニブ(スーテント)、サリドマイド(サロミド)、バンデタニブ(カプレルサ)、セジラニブ(レセンチン)、アキシチニブ(インライタ)、モテサニブ、バタラニブ、ドビチニブ、ブリバニブ、リニファニブ、チボザニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ(スチバーガ)、フォレチニブ、テラチニブ、カボザンチニブ(コメトリク)、ニロチニブ(タシグナ)、タンヅチニブ、イマチニブ(グリベック)、BMS−690514、キザルチニブ(AC220)、オランチニブ、オララツマブ、エルロチニブ(タルセバ)、ゲフィチニブ(イレッサ)、アファチニブ(ジロトリフ)、ラパチニブ(タイケルブ)、バルリチニブ、AEE−788、トラスツズマブ(ハーセプチン)、セツキシマブ(アービタックス)、パニツムマブ(ベクチビックス)、ニモツズマブ、ペルツズマブ(オムニタルグ)、エルツマキソマブ、又はザルツムマブである。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤はニンテダニブ(BIBF1120)、エベロリムス(アフィニトール)、テムシロリムス(トーリセル)、パゾパニブ(ヴォトリエント)、アキシチニブ(インライタ)、ベバシズマブ(アバスチン)、ソラフェニブ(ネクサバール)、スニチニブ(スーテント)、サリドマイド(サロミド)、ドビチニブ、レゴラフェニブ(スチバーガ)、又はイマチニブ(グリベック)である。ある種の実施形態では、血管新生阻害剤は、ドビチニブ、レゴラフェニブ(スチバーガ)、又はニンテダニブ(BIBF1120)である。ある種の実施形態では、血管新生阻害剤は、ドビチニブ又はニンテダニブ(BIBF1120)である。ある種の実施形態では、血管新生阻害剤は、ドビチニブである。ある種の実施形態では、血管新生阻害剤は、ニンテダニブ(BIBF1120)である。
【0100】
方法
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法について記述する。更に、他の実施形態では、癌治療を必要とする個体において癌を治療する方法も本明細書に記載される。特定の実施形態では、この方法は、癌又は癌細胞を酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤と接触させることを含む。ある種の実施形態では、癌又は癌細胞は、個体に存在する。特定の実施形態では、個体は癌治療を必要とする。
【0101】
他の実施形態では、細胞増殖の調節不全に関連する疾患又は障害を治療する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は癌である。他の実施形態では、個体における癌治療に対する感受性を増加、誘発、又は回復させる方法が本明細書に提供される。本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、化学療法抵抗性癌を治療する方法について記述する。特定の実施形態では、この方法は、癌又は癌細胞を酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤と接触させることを含む。ある種の実施形態では、癌又は癌細胞は、個体に存在する。特定の実施形態では、個体は癌治療を必要とする。
【0102】
いくつかの実施形態では、癌又は癌細胞は、化学療法剤、抗癌剤、又は放射線治療に対する感受性を失っている。いくつかの実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤の組み合わせは、増強された効果を有する。他の実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)、解糖阻害剤、及び更なる抗癌剤の組み合わせは、増強された効果を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を化学増感し、併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を死滅させるのに必要な抗癌剤の量を低下させる。他の実施形態では、本明細書に記載の併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を化学増感し、併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を化学療法抵抗性から化学療法感受性の状態に変換する。更なる又は追加の実施形態では、本明細書に記載の併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を放射線増感し、併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を死滅させるのに必要なガンマ線照射量を低下させる。他の実施形態では、本明細書に記載の併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を放射線増感し、併用療法及び/又は組成物は、癌細胞を放射線抵抗性から放射線感受性の状態に変換する。
【0103】
いくつかの実施形態では、癌は薬物抵抗性又は化学療法抵抗性である。いくつかの実施形態では、癌は多剤抵抗性である。本明細書中で使用される場合、「薬物抵抗性癌」は、従来の一般的に知られている癌治療に抵抗性の癌である。従来の癌治療の例としては、メトトレキサート、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パミドロネート二ナトリウム、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、トレミフェン、レトロゾール、トラスツズマブ、メゲストロール、タモキシフェン、パクリタキセル、ドセタキセル、カペシタビン、酢酸ゴセレリン等の薬剤によるが癌治療が挙げられる。いくつかの実施形態では、癌は、ニンテダニブに対して抵抗性である。「多剤抵抗性癌」は、複数のタイプ又はクラスの癌薬剤に抵抗性を示す癌であり、即ち、癌は、第1の作用機序を有する第1の薬物及び第2の作用機序を有する第2の薬物に抵抗性を示すことができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤を個体に投与することを含む、個体における癌を治療する方法であって、化学療法、放射線治療、又は癌治療に伴う副作用が低減又は最小化される方法が本明細書で提供される。場合によっては、本明細書に記載の併用療法及び/又は組成物は、非癌性細胞に化学的保護及び/又は放射線防護特性を提供する。更なる又は追加の実施形態では、より少ない量の酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)、解糖阻害剤、又は更なる抗癌剤は、化学療法に伴う任意の望ましくない副作用を低減又は最小化する。化学療法、放射線治療、又は癌治療に伴う副作用の非限定的な例としては、疲労、貧血、食欲の変化、出血の問題、下痢、便秘、脱毛、嘔気、嘔吐、疼痛、末梢神経障害、腫脹、皮膚及び爪の変化、尿及び膀胱の変化、並びに嚥下困難が挙げられる。
【0105】
また、いくつかの実施形態では、個体における癌細胞を死滅させる方法であって、癌細胞は、エネルギーのためにATPを嫌気的に産生する癌細胞及び好気的にATPを産生する癌細胞を含み、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤を個体に投与することを含む方法が本明細書に記載される。
【0106】
場合によっては、癌細胞、例えば腫瘍の内核は、酸素化が不十分であり、結果として、生存のために嫌気的代謝に依存する。場合によっては、癌細胞は、エネルギーのために嫌気的にATPを産生するために、解糖経路の段階を使用する。場合によっては、これらの腫瘍細胞は、外側の増殖している好気性細胞よりもゆっくりと分裂し、その結果、急速に分裂する細胞を標的とする標準的な化学療法剤に対してより抵抗性を示す。場合によっては、嫌気性腫瘍細胞は好気性代謝(例えば、酸化的リン酸化)を標的とする化学療法剤に対して抵抗性である。場合によっては、嫌気的に増殖する細胞は多剤抵抗性(MDR)の形態を示す。
【0107】
場合によっては、癌細胞はグルコースを高率で代謝して高レベルのATPを合成し、増強された解糖を示す。解糖経路が阻害される場合においては、癌細胞は脱出機構を発達させ、ATPを合成するためにミトコンドリア酸化的リン酸化に切り替える。場合によっては、癌細胞は、主要なエネルギー源としてミトコンドリア代謝に依存するようになる。
【0108】
いくつかの実施形態では、併用療法及び/又は組成物は、(酸化的リン酸化の阻害剤を用いて)嫌気性腫瘍細胞及び好気性腫瘍細胞を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、併用療法及び/又は組成物は、相乗的な抗腫瘍活性を提供する。場合によっては、酸化的リン酸化を阻害して好気性腫瘍細胞を嫌気性細胞に変換することにより、癌細胞を解糖阻害剤に対して超増感する。場合によっては、解糖を阻害して嫌気的腫瘍細胞を好気性細胞に変換することにより、癌細胞を酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)に対して超増感する。
【0109】
酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤の投与時間は制限されない。いくつかの実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤は、個体に同時に投与される。他の実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)及び解糖阻害剤は、時間をずらして投与される。ある種の実施形態では、個体は、まず解糖阻害剤、続いて酸化的リン酸化阻害剤で治療される。ある種の実施形態では、個体は、まず酸化的リン酸化阻害剤、続いて解糖阻害剤で治療される。
【0110】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、被検体の癌又は腫瘍を治療する方法であって、本方法は、i)被検体を解糖阻害剤で治療すること;ii)被検体に陽電子放出断層撮影(PET)スキャン(又は解糖阻害剤による抗癌又は抗腫瘍治療の有効性を評価するのに適した他のイメージング処置)を行うこと;及びiii)ステップiiにおけるPETスキャン(又は他のイメージング)試験処置の結果が陽性である場合(即ち、癌又は腫瘍が応答性である場合)、被検体を解糖阻害剤及び酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)で治療することを含む方法について記述する。場合によっては、ステップiiのPETスキャン(又は他のイメージング処置)の結果が陰性である場合(即ち、腫瘍又は癌が解糖阻害剤に不応答性である場合)、解糖阻害剤による治療が継続され、PETスキャン(又は他のイメージング処置)は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月後に再び行われ、その時点でステップiiにおけるPETスキャン(又は他のイメージング)試験処置の結果が陽性である場合(即ち、癌又は腫瘍が応答性である場合)、被検体を解糖阻害剤及び酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)で治療する。
【0111】
いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌、乳癌、転移性乳癌、転移性HER2陰性乳癌、大腸癌、直腸癌、転移性結腸直腸癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、肝臓癌、白血病、肺癌(小細胞及び非小細胞の両方)、扁平非小細胞肺癌、非扁平非小細胞肺癌、黒色腫、ルイス肺癌、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、精巣癌、前立腺癌、甲状腺癌、肉腫(骨肉腫を含む)、食道癌、胃癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、膠芽腫、及び脳の癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、非限定的な例として、ヒト乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、又は子宮頸癌から選択される。ある種の特定の実施形態では、癌は、ヒト乳癌又は卵巣癌である。
【0112】
被検体又は個体における腫瘍細胞は、任意のタイプの癌の一部であり得る。癌のいくつかの例としては、胆管癌;膀胱癌;膠芽腫及び髄芽腫を含む脳腫瘍;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;大腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;急性リンパ性白血病及び骨髄性白血病を含む血液学的新生物;多発性骨髄腫;AIDS関連の白血病及び成人T細胞白血病リンパ腫;ボーエン病及びパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌;肺癌;ホジキン病及びリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮細胞癌を含む口腔癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞、及び間充織細胞から生じるものを含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、及び骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞癌、及び扁平上皮癌を含む皮膚癌;セミノーマ、非セミノーマ、奇形腫、絨毛癌等の胚腫瘍を含む精巣癌;間質性腫瘍及び胚細胞腫瘍;甲状腺癌及び髄様癌を含む甲状腺癌;並びに腺癌及びウィルムス腫瘍を含む腎臓癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ユーイング肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫等を含む骨癌、聴神経腫、神経芽腫、神経膠腫、及び他の脳腫瘍を含む脳及びCNS腫瘍、脊髄腫瘍、管腺癌、転移性乳管癌を含む乳癌、大腸癌、進行結腸直腸腺癌、大腸癌、副腎皮質癌、膵臓癌、下垂体癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、胸腺癌、多発性内分泌腺腫を含む内分泌癌、胃癌、食道癌、小腸癌、肝臓癌、肝外胆管癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胆嚢癌を含む胃腸癌、睾丸癌、陰茎癌、前立腺癌を含む泌尿生殖器癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣癌、子宮癌/子宮内膜癌、外陰癌、妊娠性絨毛癌、ファローピウス管癌、子宮肉腫を含む婦人科癌、口腔癌、口唇癌、唾液腺癌、喉頭癌、下咽頭癌、中咽頭癌、鼻腔癌、副鼻腔癌を含む頭頸部癌、小児白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、急性前骨髄球性白血病、形質細胞性白血病、赤白血病、骨髄腫を含む白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性症候群、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、ワルデンストレームマクログロブリン血を含む血液学的疾患、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌、肺扁平上皮癌、ルイス肺癌、中皮腫を含む肺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含むリンパ腫、網膜芽腫、眼内黒色腫を含む眼癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、扁平上皮細胞癌、メルケル細胞癌を含む皮膚癌、小児軟部組織肉腫、成人軟部組織肉腫、カポジ肉腫等の軟部組織肉腫、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、膀胱癌、尿道癌、及び移行上皮癌を含む泌尿器系癌が挙げられるがこれらに限定されない様々な癌の治療に有用である。
【0114】
いくつかの実施形態では、癌は血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、血栓溶解性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患、難治性貧血、前白血病症候群、リンパ性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は未分化白血病である。いくつかの特定の実施形態では、癌は骨髄異形成症候群(MDS)又は急性骨髄性白血病(AML)である。非ホジキンリンパ腫の非限定的な例としては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)が挙げられる。
【0115】
本明細書に記載の方法によって治療することができる他の例示的な癌としては、白血病、例えば、赤白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、急性T細胞白血病、並びにリンパ腫、例えば、B細胞リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
追加の薬剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかは、個体又は患者に癌治療を行うことを更に含む。ある種の実施形態では、癌治療は、非限定的な例として、少なくとも1つの抗癌剤(例えば、化学療法剤)、放射線治療、又は外科手術である。いくつかの実施形態では、(1)有効量の本明細書に記載の化合物の投与と、(2)(i)有効量の更なる抗癌剤の投与、(ii)有効量のホルモン療法剤の投与、及び(iii)非薬物療法からなる群から選択される1〜3つの治療との組み合わせにより、癌をより効果的に予防及び/又は治療する。
【0117】
併用療法/組成物及び併用抗癌剤の投与時間は制限されない。いくつかの実施形態では、併用療法/組成物及び併用抗癌剤は、同時に個体に投与される。他の実施形態では、併用療法/組成物及び併用抗癌剤は、時間をずらして投与される。
【0118】
抗癌剤としては、化学療法剤、免疫療法剤、細胞成長因子、及びその受容体の作用を阻害する医薬等が挙げられるが、これらに限定されない。任意により使用される化学療法剤には、非限定的な例として、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、又はドキソルビシンがある。更に、化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、植物由来の抗癌剤等が挙げられる。
【0119】
アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸ナトリウムエストラムスチン、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロマイド、トレオスルファン、トロホスファアミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
代謝拮抗剤としては、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、塩酸アンシタビン、5−FU薬物(例えば、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール等)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、ホリナートカルシウム、レボホリナートカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドクスウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
抗癌抗生物質としては、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミトラマイシン、サルコマイシン、カルジノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
植物由来の抗癌剤としては、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
免疫療法剤としては、ピシバニール、クレスチン、シゾフラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)、レバミゾール、ポリサッカリドK、プロコダゾール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
細胞成長因子又は細胞成長因子受容体の作用を阻害する医薬中の細胞成長因子の非限定的な例としては、細胞増殖を促進する任意の物質が挙げられ、これらは、通常、(1)EGF(上皮成長因子)又はこれと実質的に同じ活性を有する物質[例えば、EGF、ヘレグリン等]、(2)インスリン又はこれと実質的に同じ活性を有する物質[例えば、インスリン、IGF(インスリン様成長因子)−1、IGF−2等]、(3)FGF(線維芽細胞成長因子)又はこれと実質的に同じ活性を有する物質[例えば、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(ケラチノサイト成長因子)、FGF−10等]、(4)他の細胞成長因子[例えば、CSF(コロニー刺激因子)、EPO(エリスロポエチン)、IL−2(インターロイキン2)、NGF(神経成長因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、TGFβ(トランスホーミング成長因子β)、HGF(肝細胞成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)等]等を含む、受容体に結合することにより低濃度でその活性を示すことができる20,000以下の分子量を有するペプチドである。
【0125】
細胞成長因子受容体としては、EGF受容体、ヘレグリン受容体(HER2)、インスリン受容体、IGF受容体、FGF受容体−1、又はFGF受容体−2等を含む、上記の細胞成長因子に結合することができる任意の受容体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
細胞成長因子の作用を阻害する医薬としては、HER2抗体(例えば、トラスツズマブ)、メシル酸イマチニブ、ZD1839、又はEGFR抗体(例えば、セツキシマブ)、VEGFに対する抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGFR抗体、VEGFR阻害剤、及びEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
上記の薬物に加えて、他の抗癌剤としては、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン−コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン−ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン等)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ソブゾキサン等)、分化誘導剤(例えば、レチノイド、ビタミンD等)、α−ブロッカー(例えば、塩酸タムスロシン、ナフトピジル、ウラピジル、アルフゾシン、テラゾシン、プラゾシン、シロドシン等)、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト(例えばアトラセンタン等)、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ等)、Hsp90阻害剤(例えば、17−AAG等)、スピロノラクトン、ミノキシジル、11α−ヒドロキシプロゲステロン、骨吸収阻害/転移抑制剤(例えば、ゾレドロン酸、アレンドロン酸、パミドロン酸、エチドロン酸、イバンドロン酸、クロドロン酸)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
ホルモン療法剤の非限定的な例としては、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、ジエノゲスト、アソプリスニル、アリルエストレノール、ゲストリノン、ノメゲストロール、タデナン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン剤(例えば、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン等)、ER抑制薬(例えば、フルベストラント等)、ヒト閉経期尿性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチミド、LH−RHアゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害剤(例えば、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン等)、抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド等)、5αリダクターゼ阻害剤(例えば、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド等)、副腎皮質ホルモン薬(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン等)、アンドロゲン合成阻害剤(例えば、アビラテロン等)、並びにレチノイド及びレチノイド代謝を遅延させる薬物(例えば、リアロゾール等)等並びにLH−RHアゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン)が挙げられる。
【0129】
非薬物療法は、外科手術、放射線治療、遺伝子治療、温熱療法、寒冷療法、レーザ焼灼等、及びそれらの任意の組み合わせにより例示される。
【0130】
配合物
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、1つ以上の薬学的担体、賦形剤、助剤、結合剤、及び/又は希釈剤を更に含む、医薬組成物について記述する。医薬組成物は、活性化合物の薬学的に使用される製剤への加工を容易にする1つ以上の薬学的に許容される不活性成分を用いて、従来の方法で配合される。適切な配合は、選択された投与経路に依存する。本明細書に記載の医薬組成物の概要は、例えば、このような開示について本明細書に参照により組み込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995年);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975年;Liberman,H.A.及びLachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980年;並びにPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams&Wilkins 1999年)に見出される。
【0131】
本明細書に記載される任意の組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解度向上剤、並びに他の薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、及びシクロデキストリンを任意により含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ラクトース、デキストロース、マンニトール、pH緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、等張化剤、又はそれらの組み合わせのうち1つ以上を更に含む。任意により使用される薬学的に許容される担体の例としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、局所麻酔薬、懸濁剤及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、又はキレート剤、並びに他の薬学的に許容される物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、その薬学的に許容される塩として存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、このような薬学的に許容される塩を投与することによって疾患を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、医薬組成物としてそのような薬学的に許容される塩を投与することによって疾患を治療する方法を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、酸性又は塩基性基を有し、従って、複数の無機又は有機塩基並びに無機及び有機酸のいずれかと反応して薬学的に許容される塩を形成する。いくつかの実施形態では、これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離及び精製の間にインサイチュで、又はその遊離形態の精製化合物を適切な酸又は塩基と個別に反応させ、こうして形成された塩を単離することにより、調製する。
【0134】
薬学的に許容される塩の例としては、本明細書に記載の化合物と、鉱物、有機酸、又は無機塩基との反応により調製された塩が挙げられ、当該塩としては、酢酸塩、アクリル酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、ブロミド、酪酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプロン酸塩、カプリン酸塩、クロロ安息香酸塩、クロリド、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、デカン酸塩、ジグルコン酸塩、二水素リン酸塩、二ニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオエート、ヒドロキシ安息香酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨージド、イソ酪酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、一水素リン酸塩、1−ナフタレンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロ硫酸塩、ピロリン酸塩、プロピオル酸塩、フタル酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、プロパンスルホン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、及びキシレンスルホン酸塩が挙げられる。
【0135】
更に、本明細書中に記載される化合物は、いくつかの実施形態では、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸等の無機酸;並びに酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、Q−トルエンスルホン酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、アリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、及びムコン酸等の有機酸が挙げられるがこれらに限定されない薬学的に許容される無機又は有機酸と遊離塩基形態の化合物を反応させることによって形成される薬学的に許容される塩として調製される。いくつかの実施形態では、シュウ酸等の他の酸は、それ自体が薬学的に許容されるものではないが、本発明の化合物及びそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得るための中間体として有用な塩の調製に用いられる。
【0136】
いくつかの実施形態では、遊離酸基を含む本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩等の適切な塩基と、アンモニア又は薬学的に許容される有機第一級、第二級、若しくは第三級アミンと反応する。代表的なアルカリ又はアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ナトリウム、N
+(C
1〜4アルキル)
4等が挙げられる。
【0137】
塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等が挙げられる。本明細書に記載の化合物は、それらが含有する任意の塩基性窒素含有基の四級化も含むことが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、水溶性又は油溶性又は分散性の生成物は、このような四級化によって得られる。本明細書に記載の化合物は、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンで置換された場合に、又は有機塩基と配位結合した場合に形成される薬学的に許容される塩として調製することができる。塩基付加塩は、遊離酸形態の本明細書に記載の化合物を、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等の有機塩基及び水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられるが、これらに限定されない薬学的に許容される無機又は有機塩基と反応させることによって調製される。更に、開示された化合物の塩形態は、出発物質又は中間体の塩を用いて調製することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と組み合わせて、医薬組成物中で投与される。本明細書に記載の化合物及び組成物の投与は、作用部位への化合物の送達を可能にする任意の方法によって行うことができる。これらの方法としては、これらに限定されないが、経腸経路(経口、胃又は十二指腸栄養管、肛門坐剤及び直腸浣腸を含む)、非経口経路(動脈内、心臓内、皮内、十二指腸内、髄内、筋肉内、骨内、腹腔内、髄腔内、血管内、静脈内、硝子体内、硬膜外、及び皮下を含む注射又は注入)、吸入、経皮、経粘膜、舌下、口腔、及び局所(経皮、真皮、浣腸、点眼剤、点耳剤、鼻腔内、膣内を含む)投与による送達が挙げられるが、最も適切な経路は、例えば、レシピエントの状態及び障害に依存し得る。ほんの一例として、本明細書に記載の化合物は、例えば、外科手術中の局所注入、クリーム若しくは軟膏のような局所適用、注射、カテーテル、又はインプラントによって、治療を必要とする領域に局所的に投与することができる。投与は、罹患した組織又は器官の部位に直接注射することによっても行うことができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、経口投与に適した医薬組成物は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ、若しくは錠剤等の別個の単位として;粉末若しくは顆粒として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルションとして提供される。いくつかの実施形態では、活性成分は、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提供される。
【0140】
経口で使用することができる医薬組成物としては、錠剤、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル(push−fit capsule)、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトール等の可塑剤でできた軟質密封カプセルが挙げられる。錠剤は、任意により1つ以上の副成分を用いて、圧縮又は成形により製造され得る。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒のような流動性形態の活性成分を、任意により、結合剤、不活性希釈剤、又は潤滑剤、表面活性剤、若しくは分散剤と混合して、適当な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液状希釈剤を用いて湿らせた粉末化合物の混合物を、適切な機械で成形することにより製造され得る。いくつかの実施形態では、錠剤はコーティング又は分割(score)され、その中の活性成分の徐放又は制御放出を提供するように配合される。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含有する。これらの賦形剤は、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えば、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、又はアカシア、及び潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであってよい。錠剤は、コーティングされていなくても、又は薬物の味を隠すか、若しくは胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させ、それにより長い期間にわたって持続作用を提供するために、公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性の味覚遮蔽物質、又はエチルセルロース又は酢酸酪酸セルロース等の時間遅延物質を適宜使用することができる。経口使用のための配合物はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水溶性担体、例えば、ポリエチレングリコール、若しくは油媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして提供できる。
【0141】
経口投与のための全ての配合物は、そのような投与に適した投与量でなければならない。プッシュフィットカプセルは、活性成分を、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、並びに任意により安定剤との混合体で含有することができる。軟カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール等の適切な液体に溶解又は懸濁されてもよい。いくつかの実施形態では、安定剤が添加される。糖衣錠コアには適切なコーティングが施される。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒又は溶媒混合物を任意で含み得る濃縮糖液を使用することができる。識別のため、又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注射、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために配合される。注射用の配合物は、単位剤形、例えば、アンプル又は複数用量容器中に、防腐剤を添加して提供することができる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態をとることができ、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤のような調合剤を含み得る。組成物は、1回用量又は複数用量の容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、粉末形態で、又は使用直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水若しくは発熱性物質除去蒸留水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0143】
非経口投与のための医薬組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び配合物を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る活性化合物の水性及び非水性(油性)滅菌注射溶液;並びに沈殿防止剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストラン等の、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意により、懸濁液はまた、化合物の溶解度を高めて高濃度の溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含有してもよい。
【0144】
医薬組成物は、デポー製剤として配合することもできる。そのような長時間作用性配合物は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射によって投与することができる。従って、例えば、化合物は、適切なポリマー若しくは疎水性物質(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と、又は難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として配合され得る。
【0145】
口腔又は舌下投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤、トローチ、香錠、又はゲルの形態をとることができる。そのような組成物は、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカントのような風味ベースの活性成分を含むことができる。
【0146】
医薬組成物はまた、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、又は他のグリセリド等の従来の坐薬基剤を含有する坐薬又は停留浣腸のような直腸用組成物に配合されてもよい。
【0147】
医薬組成物は、局所的に、即ち、非全身投与によって投与することができる。これは、化合物が血流に著しく入り込まないように、本発明の化合物の表皮又は口腔への外用並びにこのような化合物の耳、目、及び鼻への滴下を含む。対照的に、全身投与は、経口、静脈内、腹腔内、及び筋肉内投与を意味する。
【0148】
局所投与に適した医薬組成物としては、ゲル、塗布薬、ローション、クリーム、軟膏、又はペースト等の炎症部位への皮膚浸透に適した液体又は半液体製剤、及び眼、耳、又は鼻への投与に適した滴剤が挙げられる。活性成分は、局所投与のために、配合物の0.001%〜10%w/w、例えば1重量%〜2重量%を構成し得る。
【0149】
吸入による投与のための医薬組成物は、注入器、ネブライザ、加圧パック、又はエアゾールスプレーを送達する他の便利な手段から便利に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガス等の適切な噴射剤を含むことができる。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計量された量を送達するための弁を設けることによって決定され得る。あるいは、吸入又は注入による投与のために、薬学的製剤は、乾燥粉末組成物の形態、例えば、化合物と乳糖又はデンプン等の適切な粉末基剤との粉末混合物の形態をとり得る。粉末組成物は、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン、又はブリスターパック等の単位剤形で提供され得、そこから粉末が吸入器又は注入器の助けを借りて投与され得る。
【0150】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合体で活性物質を含有する。このような賦形剤は、沈殿防止剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアラビアゴムであり;分散剤又は湿潤剤は、天然リン脂質、例えば、レシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドとポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート等の脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、又はエチレンオキシドとポリエチレンソルビタンモノオレエート等の脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物であってよい。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤、例えば、エチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1つ以上の着色剤、1つ以上の香料添加剤、及び1つ以上の甘味剤、例えば、スクロース、サッカリン、又はアスパルテームを含み得る。
【0151】
適切な薬学的担体としては、不活性希釈剤又は充填剤、水、及び種々の有機溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、矯味剤、結合剤、賦形剤等の追加の成分を含有する。従って、経口投与のためには、種々の賦形剤、例えば、クエン酸を含有する錠剤を、種々の崩壊剤、例えば、デンプン、アルギン酸、及びある種の複合ケイ酸塩と、また、結合剤、例えば、スクロース、ゼラチン、及びアカシアと共に用いる。更に、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクは、しばしば打錠目的で有用である。他の実施形態では、同様のタイプの固体組成物が、軟及び硬充填ゼラチンカプセルに用いられる。従って、好ましい物質としては、ラクトース又は乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液又はエリキシル剤が経口投与のために望ましいある種の実施形態では、その中の活性化合物は、種々の甘味剤又は香料添加剤、着色剤又は染料と、また、必要に応じて乳化剤又は沈殿防止剤と、希釈剤、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、又はそれらの組み合わせと一緒に混合される。
【0152】
いくつかの実施形態では、油性懸濁液は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはヤシ油中、又は液体パラフィン等の鉱油中に活性成分を懸濁することによって配合される。ある種の実施形態では、油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコールを含有する。更なる又は追加の実施形態では、上記のような甘味剤及び香料添加剤を添加して味のよい経口製剤を提供する。他の実施形態では、これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソール又はα−トコフェロール等の酸化防止剤の添加によって保存される。
【0153】
水を添加することによって水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、沈殿防止剤、及び1つ以上の防腐剤との混合体で活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び沈殿防止剤は、既に上述したものによって例示される。いくつかの実施形態では、更なる賦形剤、例えば、甘味剤、香料添加剤、及び着色剤もまた存在する。更なる又は追加の実施形態では、これらの組成物は、アスコルビン酸等の酸化防止剤の添加によって保存される。
【0154】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態である。いくつかの実施形態では、油性相は植物油、例えば、オリーブ油若しくはラッカセイ油、又は鉱油、例えば、流動パラフィン、又はこれらの混合物である。適切な乳化剤としては、天然リン脂質、例えば、大豆レシチン、並びに脂肪酸及びヘキシトール無水物、例えば、モノオレイン酸ソルビタンから誘導されるエステル又は部分エステル、並びに部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。更なる又は追加の実施形態では、エマルジョンは、甘味剤、香料添加剤、防腐剤、及び酸化防止剤を含有する。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、滅菌注射用水溶液の形態である。使用される許容されるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液、リン酸緩衝食塩水、U.S.P.及び等張食塩水、エタノール、並びに1,3−ブタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
更に、滅菌不揮発性油は、任意により、溶媒又は懸濁媒として使用される。この目的のために、合成モノ又はジグリセリド等の任意の無刺激性の不揮発性油を任意により使用する。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリド、又はリポソームが挙げられ、あるいは他の微粒子系を使用して、血液成分又は1つ以上の器官に対する薬剤を標的とすることができる。いくつかの実施形態では、滅菌注射用製剤は、活性成分が油性相に溶解している滅菌注射用水中油型マイクロエマルジョンである。ある種の実施形態では、活性成分は、まず、大豆油とレシチンとの混合物に溶解される。次いで、油剤を水及びグリセロール混合物に導入し、マイクロエマルジョンを形成するように処理する。更なる又は追加の実施形態では、注射用溶液又はマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射によって個体の血流に導入される。あるいは、いくつかの実施形態では、本発明の化合物の一定の血中濃度を維持するように溶液又はマイクロエマルジョンを投与することが有利である。そのような一定の濃度を維持するために、連続静脈内送達装置が利用される。そのような装置の例は、Deltec CADD−PLUS(商標)モデル5400静脈内ポンプである。
【0157】
他の実施形態では、医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与のための滅菌注射用水性又は油性懸濁液の形態である。更なる又は追加の実施形態では、この懸濁液は、上記の適切な分散剤又は湿潤剤及び沈殿防止剤を用いて配合される。いくつかの実施形態では、滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の、例えば1,3−ブタンジオール溶液としての滅菌注射用溶液又は懸濁液である。更に、滅菌性不揮発性油は従来、溶媒又は懸濁媒体として使用される。この目的のために、いくつかの実施形態では、合成モノ又はジグリセリド等の任意の無刺激性の不揮発性油を任意により使用する。更に、オレイン酸等の脂肪酸は、注射剤の調製での使用が見出されている。
【0158】
ある種の実施形態では、医薬組成物は、薬物の直腸投与のための坐薬の形態で投与される。これらの組成物は、活性成分を、常温で固体であるが直腸温度で液体である適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製され、従って、直腸内で溶解して薬物を放出する。そのような物質としては、カカオバター、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物又は組成物は、小胞、例えば、リポソームに送達される。更なる又は代替の実施形態では、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物は制御放出系で送達されるか、又は制御放出系を治療標的の近傍に配置することができる。一実施形態では、ポンプが使用される。
【0160】
局所使用のために、活性薬剤を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液、又は懸濁液等が使用される。本明細書で使用される場合、局所適用としては口内洗浄剤及びうがい薬が挙げられる。
【0161】
ある種の実施形態では、医薬組成物は、適切な経鼻ビヒクル及び送達装置の局所使用によって、又は経皮皮膚パッチを用いて経皮経路によって経鼻形態で投与される。経皮送達系の形態で投与するためには、用量投与は、投薬計画を通して断続的ではなく連続的なものとなる。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、シクロデキストリンを更に含む。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、約0.001%〜約50%の範囲の濃度(w/v)を有する。他の実施形態では、シクロデキストリンは、約2%〜約48%の範囲の濃度(w/v)を有する。他の実施形態では、シクロデキストリンは、約4%〜約45%の範囲の濃度(w/v)を有する。他の実施形態では、シクロデキストリンは、約10%〜約43%の範囲の濃度(w/v)を有する。他の実施形態では、シクロデキストリンは、約15%〜約40%の範囲の濃度(w/v)を有する。他の実施形態では、シクロデキストリンは、約20%〜約38%の範囲の濃度(w/v)を有する。他の実施形態では、シクロデキストリンは、約22%〜約37%の範囲の濃度(w/v)を有する。他の実施形態では、シクロデキストリンは、約25%〜約35%の範囲の濃度(w/v)を有する。好ましい実施形態では、シクロデキストリンは、約28%〜約32%の範囲の濃度(w/v)を有する。
【0163】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、シクロデキストリンを更に含む組成物を提供し、シクロデキストリンは、シクロデキストリン誘導体がSBE7−β−CD(「Captisol」(登録商標))である場合、約15%、18%、20%、22%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、又は38%の濃度(w/v)を有する。一実施形態では、シクロデキストリンは、シクロデキストリン誘導体がSBE7−β−CD(「Captisol」(登録商標))である場合、約30%の濃度(w/v)を有する。別の実施形態では、溶解度向上剤は、シクロデキストリン誘導体がSBE7−β−CD(「Captisol」(登録商標))である場合、約29.4%の濃度(w/v)を有する。
【0164】
本明細書に記載される静脈内組成物における使用に適した更なるシクロデキストリン誘導体は、当技術分野において公知であり、例えば、それぞれがその開示について本明細書中に参照により組み込まれる米国特許第5,134,127号及び同第5,376,645号に記載される。更に、適切なシクロデキストリン誘導体の例を以下に記載する。
【0165】
本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのある種の実施形態に有用な適切なシクロデキストリン及び誘導体としては、例えば、それぞれがそのような開示について本明細書中に参照により組み込まれる、Challaら、AAPS PharmSciTech 6(2):E329〜E357(2005年)、米国特許第5,134,127号、同第5,376,645号、同第5,874,418号に記載されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのある種の実施形態での使用に適したシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、SAE−CD誘導体(例えば、SBE−α−CD、SBE−β−CD、SBE1−β−CD、SBE4−β−CD、SBE7−β−CD(「Captisol」(登録商標))、及びSBE−γ−CD)(Cydex、Inc.、Lenexa、KS)、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル(2−及び3−ヒドロキシプロピルを含む)、及びジヒドロキシプロピルエーテル、それらの対応する混合エーテル、並びにα−、β−、及びγ−シクロデキストリンのメチルヒドロキシエチルエーテル、エチルヒドロキシエチルエーテル、及びエチルヒドロキシプロピルエーテル等のメチル又はエチル基との更なる混合エーテル;1個以上の糖残基を含有し得るα−、β−、及びγ−シクロデキストリンのマルトシル、グルコシル、及びマルトトリオシル誘導体、例えば、グルコシル又はジグルコシル、マルトシル又はジマルトシル、並びにそれらの種々の混合物、例えば、マルトシル及びジマルトシル誘導体の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に用いるための特定のシクロデキストリン誘導体としては、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、ジヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、グルコシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、ジグルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−γ−シクロデキストリン、マルトトリオシル−β−シクロデキストリン、マルトトリオシル−γ−シクロデキストリン、ジマルトシル−β−シクロデキストリン、ジエチル−β−シクロデキストリン、グルコシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、ジグルコシル−β−シクロデキストリン、トリ−O−メチル−β−シクロデキストリン、トリ−O−エチル−β−シクロデキストリン、トリ−O−ブチリル−β−シクロデキストリン、トリ−O−バレリル−β−シクロデキストリン、及びジ−O−ヘキサノイル−β−シクロデキストリン、並びにメチル−β−シクロデキストリン、並びにそれらの混合物、例えば、マルトシル−β−シクロデキストリン/ジマルトシル−β−シクロデキストリンが挙げられる。このようなシクロデキストリンを調製するために、例えば、その開示について本明細書中に参照により組み込まれる米国特許第5,024,998号に記載されている手順を含む任意の適切な手順を利用することができる。本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのある種の実施形態での使用に適した他のシクロデキストリンとしては、カルボキシアルキルチオエーテル誘導体、例えば、ORGANON(AKZO−NOBEL)によるORG26054及びORG25969、EASTMANによるヒドロキシブテニルエーテル誘導体、スルホアルキルヒドロキシアルキルエーテル誘導体、スルホアルキルアルキルエーテル誘導体、並びにそれぞれがそのような開示について本明細書中に参照により具体的に組み込まれる、米国特許出願公開第2002/0128468号、同第2004/0106575号、同第2004/0109888号、及び同第2004/0063663号、又は米国特許第6,610,671号、同第6,479,467号、同第6,660,804号、又は同第6,509,323号に記載されているような他の誘導体が挙げられる。
【0166】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、Research Diagnostics Inc.(ニュージャージー州フランダース)から得ることができる。例示的なヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン製品としては、「Encapsin」(登録商標)(置換度約4)及び「Molecusol」(登録商標)(置換度約8)が挙げられるが、他の置換度を含む実施形態も利用可能であり、本発明の範囲内である。
【0167】
ジメチルシクロデキストリンは、FLUKA Chemie(Buchs、スイス)又はWacker(アイオワ州)から入手可能である。本発明における使用に適した他の誘導体化シクロデキストリンとしては、水溶性誘導体化シクロデキストリンが挙げられる。例示的な水溶性誘導体化シクロデキストリンとしては、カルボキシル化誘導体;硫酸化誘導体;アルキル化誘導体;ヒドロキシアルキル化誘導体;メチル化誘導体;及びカルボキシ−β−シクロデキストリン、例えば、スクシニル−β−シクロデキストリン(SCD)が挙げられる。これらの物質は全て、当該技術分野で公知の方法に従って製造することができ、且つ/又は市販されている。適切な誘導体化シクロデキストリンは、Modified Cyclodextrins:Scaffolds and Templates for Supramolecular Chemistry(Eds.Christopher J.Easton、Stephen F.Lincoln、Imperial College Press、London、UK、1999年)及びNew Trends in Cyclodextrins and Derivatives(Ed.Dominique Duchene、Editions de Sante、Paris、France、1991年)に開示されている。
【0168】
投薬及び治療計画
一実施形態では、本明細書に記載の阻害剤及び薬剤又はその薬学的に許容される塩は、疾患又は状態の治療のための医薬の調製に使用される。このような治療を必要とする個体において本明細書に記載の疾患又は状態のいずれかを治療する方法は、本明細書に記載の医薬組成物を当該個体に投与することを含む。
【0169】
ある種の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与される。ある種の治療用途では、組成物は、すでに疾患又は状態に罹患している患者に、疾患又は状態の症状の少なくとも1つを治癒又は少なくとも部分的に止めるのに十分な量で投与される。この使用に有効な量は、疾患又は状態の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態、体重、並びに薬物に対する応答、並びに治療する医師の判断に依存する。治療有効量は、用量漸増及び/又は用量決定臨床試験を含むが、これらに限定されない方法によって任意により決定される。
【0170】
予防的用途において、本明細書に記載の化合物を含有する組成物は、特定の疾患、障害、又は状態に影響を受けるか、そうでなければリスクがある患者に投与される。そのような量は、「予防的有効量又は用量」と定義される。この使用において、正確な量は、患者の健康状態、体重等にも依存する。患者に使用する場合、この使用のための有効量は、疾患、障害、又は状態の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態、並びに薬物に対する応答、並びに治療する医師の判断に依存する。一態様では、予防的治療は、疾患又は状態の症状の再発を防止するために、治療する疾患の少なくとも1つの症状を以前に経験しており、現在緩解中である哺乳動物に、本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0171】
患者の状態が改善されないある種の実施形態では、医師の裁量により、化合物の投与は、慢性的に、即ち、長期間、例えば、患者の疾患又は状態の症状を改善、又は制御若しくは限定するために患者の寿命を通して行われる。
【0172】
患者の状態が改善するある種の実施形態では、投与される薬物の用量は、一時的に減少されるか、又は一定の時間(即ち、「休薬期間」)の間、一時的に停止される。特定の実施形態では、休薬期間の長さは、1日〜1年、単なる例として1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、又は365日等である。休薬期間中の用量減少は、10〜100%、単なる例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、及び100%等である。
【0173】
患者の状態の改善が生じたら、必要に応じて維持用量を投与する。続いて、特定の実施形態では、投与量若しくは投与頻度又はその両方が、症状に応じて、改善された疾患、障害、又は状態が保持されるレベルまで低減される。しかし、ある種の実施形態では、患者は、症状の再発時に長期間にわたる間欠的治療を必要とする。
【0174】
このような量に対応する所与の薬剤の量は、特定の化合物、疾患状態、及びその重症度、治療を必要とする被検体又は宿主の同一性(例えば、体重、性別)等の因子に応じて変化するが、それにもかかわらず、例えば、投与される特定の薬剤、投与経路、治療される状態、及び治療される被検体又は宿主を含む、患者を取り巻く特定の状況に応じて決定される。
【0175】
活性薬剤に適切な1日の投与量は、約0.1mg〜約3000mgであり、1日4回まで又は徐放形態が挙げられるがこれらに限定されない分割した用量で都合よく投与される。経口投与に適した単位剤形としては、約0.1〜1000mgの活性成分、約0.1〜500mgの活性成分、約1〜250mgの活性成分、約1〜約100mgの活性成分、約1〜約75mgの活性成分、約1〜約50mgの活性成分、約1〜約30mgの活性成分、約1〜約20mgの活性成分、又は約1〜約10mgの活性成分が挙げられる。そのような投与量は、使用される化合物の活性、投与様式、個体の必要条件、治療される疾患又は状態の重症度、及び医師の判断に限定されない複数の変数に応じて任意に変更される。一実施形態では、所望の用量は、単回用量で、又は同時に若しくは適切な間隔で、例えば1日2回、3回、4回、又はそれ以上のサブ用量として投与される分割用量で都合よく提供される。
【0176】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩に適した投与量は、体重1kg当たり約0.01〜約50mgである。いくつかの実施形態では、剤形中の薬剤の投与量又は活性量(amount of active)は、個々の治療計画に関する複数の変数に基づいて、本明細書に示される範囲よりも少ないか又は多い。種々の実施形態では、単位投与量は、使用される化合物の活性、治療される疾患又は状態、投与様式、個々の被検体の必要条件、治療される疾患又は状態の重症度、及び医者の判断を含むが、これらに限定されない複数の変数に応じて変更される。
【0177】
いくつかの実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)又はその薬学的に許容される塩の投与量は、約5mg/kg〜約30mg/kg、例えば、約25mg/kg、約20mg/kg、約15mg/kg、又は約10mg/kgである。場合によっては、酸化的リン酸化阻害剤の投与量は、酸化的リン酸化阻害剤が解糖阻害剤と組み合わせて有効なレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、低減された投与量は、約0.5mg/kg〜約10mg/kg、例えば、約9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、又は1mg/kgである。ある種の実施形態では、低減された投与量は、約5mg/kgである。いくつかの実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤の投与頻度は、酸化的リン酸化阻害剤の投与量の低減とは独立して、又はそれと併せて低減される。
【0178】
いくつかの実施形態では、ソラフェニブ(ネクサバール)の投与量は、1日2回400mgである。いくつかの実施形態では、スニチニブ(スーテント)の投与量は、1日50mgを4週間、その後2週間は休薬期間である。いくつかの実施形態では、パゾパニブの投与量は1日800mgである。いくつかの実施形態では、アキシチニブの投与量は1日2回5mgである。場合によっては、アキシチニブの維持量は、1日2回2〜10mgである。いくつかの実施形態では、レゴラフェニブの投与量は、28日間のサイクルごとに21日間、1日1回160mgである。いくつかの実施形態では、カボザンチニブの投与量は1日1回140mgである。いくつかの実施形態では、テムシロリムスの投与量は、1週間に1回30〜60分にわたる25mgの静脈内注入である。いくつかの実施形態では、エベロリムスの投与量は1日当たり10mgである。いくつかの実施形態では、エルロチニブの投与量は1日当たり150mgである。いくつかの実施形態では、ニンテダニブの投与量は150mgである。いくつかの実施形態では、ニンテダニブの投与量は1日2回150mgである。いくつかの実施形態では、ドビチニブの投与量は、28日間のサイクルで5日間は約500mg/kg、2日間は休薬期間である。いくつかの実施形態では、ドビチニブの投与量は、28日間のサイクルで5日間は約250mg/kg、2日間は休薬期間である。いくつかの実施形態では、ドビチニブの投与量は、28日間のサイクルで5日間は約400mg/kg、2日間は休薬期間である。
【0179】
前述の態様のいずれかにおいて、本明細書に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量が、(a)個体に全身投与される;及び/又は(b)個体に経口投与される;及び/又は(c)個体に静脈内投与される;及び/又は(d)個体への注射によって投与される;及び/又は(e)個体に局所投与される;及び/又は(f)個体に非全身的又は局所的に投与される、更なる実施形態がある。
【0180】
前述の態様のいずれかにおいて、(i)化合物が単回投与のように連続的又は断続的に投与される;(ii)複数回の投与の間隔は6時間毎である;(iii)化合物は8時間毎に個体に投与される;(iv)化合物は12時間毎に個体に投与される;(v)化合物は24時間毎に個体に投与される、更なる実施形態を含む、有効量の化合物の複数回の投与を含む更なる実施形態がある。更なる又は代替の実施形態では、本方法は、化合物の投与が一時的に中止されるか、又は投与される化合物の用量が一時的に低減される休薬期間を含み、休薬期間が終わると、化合物の投薬が再開される。一実施形態では、休薬期間の期間は1日から1年まで変動する。
【0181】
いくつかの実施形態では、酸化的リン酸化阻害剤(例えば、ベンゾピラン誘導体)又はその薬学的に許容される塩は被検体に週3回投与され、解糖阻害剤は被検体に週5日(例えば、月曜日から金曜日まで)投与される。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形である。単位剤形では、配合物は、適切な量の1つ以上の有効成分を含有する単位用量に分割される。いくつかの実施形態では、単位投与量は、個別の量の配合物を含むパッケージの形態である。非限定的な例は、パッケージ化された錠剤又はカプセル、及びバイアル又はアンプルに入った粉末である。いくつかの実施形態では、水性懸濁組成物は、単回用量の再密封できない容器に入れられる。あるいは、複数用量の再密封できる容器が使用され、その場合、典型的には組成物中に防腐剤を含む。単なる例として、非経口注射のための配合物は、アンプルが挙げられるが、これに限定されない単位剤形で、又は防腐剤が添加された複数用量容器で提供される。
【0183】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載される解糖阻害剤を含む医薬組成物と組み合わせて使用するための、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)の化合物又はそのエナンチオマーを含む医薬組成物を提供する。
【0184】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)の化合物又はそのエナンチオマー及び本明細書に記載される解糖阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0185】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載の(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)の化合物又はそのエナンチオマーを含む医薬組成物と組み合わせて使用するための解糖阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0186】
いくつかの好ましい実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載される解糖阻害剤を含む医薬組成物と組み合わせて使用するための式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物を含む医薬組成物を含む。いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載される解糖阻害剤を含む医薬組成物と組み合わせて使用するためのd−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オールを含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、解糖阻害剤は、本明細書に記載されるように、ヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤である。
【0187】
いくつかの好ましい実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物及び解糖阻害剤を含む医薬組成物を含む。いくつかの好ましい実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のように、d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オール及び解糖阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、解糖阻害剤は、本明細書に記載されるように、ヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤である。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は、ニンテダニブ(BIBF1120)である。
【0188】
いくつかの好ましい実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載される式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物を含む医薬組成物と組み合わせて使用するための本明細書に記載されるヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤を含む医薬組成物を含む。いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オールを含む医薬組成物と組み合わせて使用するための本明細書に記載されるヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤を含む医薬組成物が提供される。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%以上のエナンチオマー過剰率の本明細書に記載される式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物のd−異性体を含む医薬組成物と組み合わせて使用するためのヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤を含む医薬組成物が提供される。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%以上のエナンチオマー過剰率のd−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オールを含む医薬組成物と組み合わせるためのヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、解糖阻害剤は、ニンテダニブ(BIBF1120)である。
【0189】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載される解糖阻害剤を含む医薬組成物と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)の化合物又はそのエナンチオマーの使用を提供する。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は、ニンテダニブ(BIBF1120)である。
【0190】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療に使用するための医薬を製造するための、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)の化合物又はそのエナンチオマー及び解糖阻害剤の使用を提供する。
【0191】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)、若しくは(IV)の化合物又はそのエナンチオマーを含む医薬組成物と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、解糖阻害剤の使用を提供する。
【0192】
いくつかの好ましい実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載される解糖阻害剤を含む医薬組成物と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物の使用を含む。医薬は、d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オールを含む。いくつかの実施形態では、解糖阻害剤は、本明細書に記載されるように、ヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤である。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は、ニンテダニブ(BIBF1120)である。
【0193】
いくつかの好ましい実施形態は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、本明細書に記載される式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物を含む医薬組成物と組み合わせて使用するための医薬の製造における、本明細書に記載されるヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤の使用を含む。いくつかの好ましい実施形態では、医薬は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、d−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オールを含む医薬組成物と組み合わせて使用するためのものである。ある種の実施形態では、医薬は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%以上のエナンチオマー過剰率の本明細書に記載される式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物のd−異性体を含む医薬組成物と組み合わせて使用するためのヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤を含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるヘキソキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、又は血管新生阻害剤を含む医薬は、本明細書に記載されるように、細胞増殖の調節異常と関係した疾患又は障害の治療のために、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%以上のエナンチオマー過剰率のd−シス−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−8−メチルクロマン−7−オールを含む医薬組成物と組み合わせて使用するためのものである。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は、ニンテダニブ(BIBF1120)である。
【実施例】
【0194】
以下の実施例は、説明の目的でのみ提供され、本明細書に提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
【0195】
材料及び方法
マウスモデル:PyMT[FVB/NTg(MMTV−PyVT)634Mul/J]マウスをW.Muller(McMaster University、オンタリオ、カナダ)から入手した。C57BL/6JOlaHsdは、CNIO Animal House(マドリッド、スペイン)から入手した。4〜6週齢のメス無胸腺ヌードマウス(Hsd:Athymic Nude−Foxn1nu)をCharles River Laboratories(スペイン)から購入した。Pulm24 PDXは親切にもManuel Hidalgo博士から提供された。腫瘍を、Athymic Nude−Foxn1nuの腰部に皮下移植し、マウス間で継代を行って実験動物コホートを得た。
【0196】
動物の治療:治療の割り当ては、コンピュータ生成乱数(www.randomization.com)を用いてランダムに割り当てた。腫瘍の測定を行っている研究者は治療の割り当てを知らされなかった。治療は、7週齢(T0)で異なる薬物を用いて開始した。動物は、臨床現場のように、連続的なスケジュールで治療した。治療中に起こる適応変化は、時間経過T0、T1(治療の第1週)、及びTendに沿ってモニターした。試験された有効性パラメーターは、ビヒクルで治療した動物が安楽死終点(Tend)に達した時点での腫瘍増殖阻害(TGI)であった。
【0197】
月曜日から金曜日の強制経口投与によって、ニンテダニブ(BIBF)を85mg/kg/日で、レゴラフェニブ(Rego)を10mg/kg/日でそれぞれ投与した。化合物5(ME)を週に3回、50mg/kgを腹腔内投与した。ドビチニブ(Dovi)を、pH2.5の水中で新しく調製し、月曜日から金曜日まで40mg/kg/日を強制経口投与によって投与した。
【0198】
腫瘍測定及び治療組み合わせ効果:腫瘍寸法を、キャリパーを用いて週に1回測定した。腫瘍体積は、式V=(D×d2)/2mm3を用いて計算し、式中、Dは最長直径であり、dは最短直径であり、全ての測定値はミリメートル単位である。乳腺で発生した全ての腫瘍を各動物で測定した。TGIを計算するために、TGI=[1−(TF/T0)A/(TF/T0)V]×100の式を用い、式中、TFは分析された時点、T0は初期時点、Aは対応する薬物であり、Vはビヒクルである。
【0199】
治療組み合わせの場合、拮抗作用、相加効果、又は相乗効果の閾値は、TA=Fa+Fb(1−Fa)で計算され、式中、Faは第1の薬物についての所定の時点における相対的TGI(0〜1)値であり、Fbは、第2の薬物についての同じ時点における相対的なTGI値である。相加閾値の±15%以内の変動は、相加薬物の相互作用の結果であると考えられ、予測される相加効果の85%未満を発揮する組み合わせは、無作用(且つ70%未満の拮抗性)であるとみなされ、予測される効果の閾値の115%超を発揮する組み合わせは相乗的であるとみなされる。
【0200】
実施例1;乳癌マウスモデル
乳癌の遺伝子操作されたマウスモデルとして使用されるFVB−PyMTマウスを、ニンテダニブによる腫瘍細胞増殖が最初に出現した時点で治療した(
図1)。ほぼ犠牲サイズ(10週間)に達すると、動物コホートは2つに分割され、一方のコホートはニンテダニブ及び化合物5(BIBF−BIBF+ME)が投与され、他方のコホートは継続してニンテダニブ(BIBF−BIBF)のみが投与された。ニンテダニブへの慢性的な曝露は、腫瘍増殖の初期遅延にもかかわらず腫瘍細胞抵抗をもたらし、獲得抵抗性が、主に解糖代謝からほとんどミトコンドリア代謝に切り替わることによって特徴付けられることを示唆した。ニンテダニブ+化合物5で治療した動物は、持続的な腫瘍退縮を経験した。
【0201】
実施例2;乳癌マウスモデル(ニンテダニブ+化合物5)
FVB−PyMTマウスを、ビヒクル、ニンテダニブ(BIBF1120)、化合物5(ME)、又はニンテダニブ+化合物5(BIBF+ME)の組み合わせを用いて、腫瘍細胞増殖が最初に出現した時点で治療した。ニンテダニブ+化合物5の組み合わせで治療した動物は、持続的な腫瘍成長阻害を経験した(
図2)。
【0202】
実施例3;乳癌マウスモデル(ドビチニブ+化合物5)
FVB−PyMTマウス(乳癌モデル)を、ビヒクル、ドビチニブ(Dovi)、化合物5(ME)、又はドビチニブ+化合物5(Dovi+ME)の組み合わせを用いて、腫瘍細胞増殖が最初に出現した時点で治療した。ドビチニブ+化合物5の組み合わせで治療した動物は、持続的な腫瘍成長阻害を経験した(
図3)。
【0203】
実施例4;乳癌マウスモデル(レゴラフェニブ+化合物5)
FVB−PyMTマウス(乳癌モデル)を、ビヒクル、レゴラフェニブ(Rego)、化合物5(ME)、又はレゴラフェニブ+化合物5(Rego+ME)の組み合わせを用いて、腫瘍細胞増殖が最初に出現した時点で治療した。単独療法としてのレゴラフェニブは有効性に欠けていた。レゴラフェニブ+化合物5の組み合わせで治療した動物は、持続的な腫瘍成長阻害を経験した(
図4)。
【0204】
実施例5;肺癌マウスモデル
マウス異種移植モデル(Pulm024)を非小細胞肺癌モデルとして使用した。Pulm024は、肺癌患者由来の異種移植(PDX)である。このPDXは肺腺癌であり、KRASの突然変異体、EGFRの野生型であり、これは肺癌の最も頻度の高い変異型を表す。腫瘍増殖阻害分析は、ニンテダニブ単独で腫瘍増殖を遅延させることができたが、ニンテダニブ(BIBF)及び化合物5(ME)の組み合わせは腫瘍増殖を完全に阻止することを示した(
図5)。
【0205】
実施例6;肺癌マウスモデル
マウス異種移植モデル(ECB1)を肺扁平上皮癌モデルとして使用した。腫瘍増殖阻害分析は、ビヒクル、ニンテダニブ、及び化合物5の単剤治療、並びにニンテダニブ及び化合物5の併用治療の後に行った。腫瘍増殖阻害分析は、ニンテダニブ及び化合物5の併用治療が腫瘍増殖を顕著に遅延させることを示した(
図6)。
【0206】
実施例7;卵巣癌のための併用治療
卵巣癌のための併用治療の安全性及び/又は有効性のヒト臨床試験
【0207】
目的:化合物5及びニンテダニブの投与の安全性及び薬物動態を比較すること。
【0208】
試験デザイン:この試験は、卵巣癌患者における第I相の、単一施設、非盲検、無作為化用量漸増試験、その後、第II相試験である。患者は、試験開始前に化合物5に曝露してはならない。患者は、試験の開始から2週間以内に癌の治療を受けてはならない。治療には、化学療法、造血因子、及びモノクローナル抗体等の生物療法の使用が含まれる。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0209】
第I相:患者には、化合物5(10mg/kg)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に静脈内投与した。化合物5の用量は、以下に概説される評価に基づいて毒性のために保持又は変更してもよい。患者は、1〜28日目にニンテダニブ(150mg)を経口(PO)で1日2回(BID)投与される。疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ28日毎にクールを繰り返す。化合物5及びニンテダニブの最大耐量(MTD)が決定されるまで、3〜6人の患者のコホートには、化合物5及びニンテダニブの漸増用量が投与される。MTDは、患者3人のうち2人又は6人のうち2人が用量制限毒性を経験する前の用量として定義される。用量制限毒性は、国立癌研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン3.0(2006年8月9日)によって設定された定義及び基準に従って決定される。
【0210】
第II相:患者は、第I相で決定されたMTDで、第I相のように化合物5及びニンテダニブを投与される。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0211】
実施例8;小細胞肺癌の併用治療
小細胞肺癌のための併用治療の安全性及び/又は有効性のヒト臨床試験
【0212】
目的:化合物5及びニンテダニブの投与の安全性及び薬物動態を比較すること。
【0213】
試験デザイン:この試験は、小細胞肺癌患者における第I相の、単一施設、非盲検、無作為化用量漸増試験、その後、第II相試験である。患者は、試験開始前に化合物5に曝露してはならない。患者は、ニンテダニブを除いて、試験の開始から2週間以内に癌の治療を受けてはならない。治療には、化学療法、造血因子、及びモノクローナル抗体等の生物療法の使用が含まれる。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0214】
第I相:患者には、化合物5(10mg/kg)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に静脈内投与した。化合物5の用量は、以下に概説される評価に基づいて毒性のために保持又は変更してもよい。患者は、1〜28日目にニンテダニブ(150mg)を経口(PO)で1日2回(BID)投与される。疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ28日毎にクールを繰り返す。化合物5及びニンテダニブの最大耐量(MTD)が決定されるまで、3〜6人の患者のコホートには、化合物5及びニンテダニブの漸増用量が投与される。MTDは、患者3人のうち2人又は6人のうち2人が用量制限毒性を経験する前の用量として定義される。用量制限毒性は、国立癌研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン3.0(2006年8月9日)によって設定された定義及び基準に従って決定される。
【0215】
第II相:患者は、第I相で決定されたMTDで、第I相のように化合物5及びニンテダニブを投与される。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0216】
実施例9;乳癌のための併用治療
乳癌の治療のための化合物5及びニンテダニブの安全性及び有効性のヒト臨床試験
【0217】
試験デザイン:この試験は、乳癌患者における第II相試験である。患者は、試験の開始から2週間以内に癌の治療を受けてはならない。治療には、化学療法、造血因子、及びモノクローナル抗体等の生物療法の使用が含まれる。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0218】
第II相:患者には、化合物5(10mg/kg)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に静脈内投与した。患者は、1〜28日目にニンテダニブ(150mg)を経口(PO)で1日2回(BID)投与される。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0219】
採血:連続血液が化合物5の投与前後の直接血管穿刺により採取される。血清濃度の決定のための静脈血サンプル(5mL)は、投薬の約10分前、並びにおよそ投薬後1日目、8日目、15日目、及び22日目に採取する。各血清サンプルは2つのアリコートに分割する。全ての血清サンプルは−20℃で保管する。血清サンプルはドライアイス上で輸送する。
【0220】
薬物動態:患者は、治療開始前、並びに1、8、15、及び22日目に薬物動態評価のために血漿/血清サンプル採取を受ける。薬物動態パラメーターは、BIOAVLソフトウェアの最新版を使用して、Digital Equipment Corporation VAX 8600コンピューターシステムでモデル依存法により計算する。薬物動態パラメーター、即ち、ピーク血清濃度(C
max);血清濃度ピークまでの時間(t
max);線形台形公式を使用して計算した0時点から最後の採血時間までの血中濃度−時間曲線下面積(AUC)(AUC
0〜72);及び排泄速度定数から計算される最終排泄相の半減期(t
1/2)が決定される。排泄速度定数は、対数線形血中濃度−時間プロットの終末線形領域における連続データ点の線形解析により概算される。薬物動態パラメーターの平均、標準偏差(SD)、及び変動係数(CV)は、各治療について計算される。パラメーター平均の比(保存配合物/非保存配合物)を計算する。
【0221】
併用療法に対する患者の応答:患者の応答は、X線、CTスキャン、MRIによるイメージングを介して評価され、イメージングは、試験の開始前及び第1のサイクルの終了時に行われ、更なるイメージングは4週間毎又は後のサイクルの終了時に行われる。イメージング様式は、癌の種類及び実現可能性/利用可能性に基づいて選択され、同じイメージング様式が、同様の癌の種類に対して、各患者の試験クール中利用される。応答速度は、RECIST基準を用いて決定される(Therasseら,J.Natl.Cancer Inst.2000年2月2日;92(3):205〜16;http://ctep.cancer.gov/forms/TherasseRECISTJNCI.pdf)。患者はまた、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、及びIHCによる前駆細胞癌表現型及びクローン性増殖の変化を評価するために、またFISHによる細胞遺伝学的変化について、癌/腫瘍生検を受ける。試験治療の完了後、患者を4週間、定期的に追跡する。
【0222】
実施例10;卵巣癌のための併用治療
卵巣肺癌のための併用治療の安全性及び/又は有効性のヒト臨床試験
【0223】
目的:「Trilexium」(商標)及びニンテダニブの投与の安全性及び薬物動態を比較すること。
【0224】
試験デザイン:この試験は、小細胞肺癌患者における第I相の、単一施設、非盲検、無作為化用量漸増試験、その後、第II相試験である。患者は、試験開始前に「Trilexium」(商標)に曝露してはならない。患者は、ニンテダニブを除いて、試験の開始から2週間以内に癌の治療を受けてはならない。治療には、化学療法、造血因子、及びモノクローナル抗体等の生物療法の使用が含まれる。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0225】
第I相:患者は、「Trilexium」(商標)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目にその腹腔に腹腔内注射を受ける。「Trilexium」(商標)の用量は、以下に概説される評価に基づいて毒性のために保持又は変更してもよい。患者は、1〜28日目にニンテダニブ(150mg)を経口(PO)で1日2回(BID)投与される。疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ28日毎にクールを繰り返す。「Trilexium」(商標)及びニンテダニブの最大耐量(MTD)が決定されるまで、3〜6人の患者のコホートには、「Trilexium」(商標)及びニンテダニブの漸増用量が投与される。MTDは、患者3人のうち2人又は6人のうち2人が用量制限毒性を経験する前の用量として定義される。用量制限毒性は、国立癌研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン3.0(2006年8月9日)によって設定された定義及び基準に従って決定される。
【0226】
第II相:患者は、第I相で決定されたMTDで、第I相のように「Trilexium」(商標)及びニンテダニブを投与される。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0227】
本発明の好ましい実施形態を図示し説明したが、こうした実施形態はあくまで例として与えられたものであることは当業者には明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、及び代用を思いつくであろう。本発明を実施するにあたって本明細書で述べた本発明の実施形態には、様々な代替例が採用され得る点が理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は発明の範囲を規定することを目的としたものであり、特許請求の範囲に含まれる方法及び構造並びにそれらの均等物を、これによって網羅することを目的としたものである。
【0228】
実施例11;腎細胞癌のための併用治療
腎細胞癌の治療のための化合物5及びソラフェニブ(ネクサバール)の安全性及び有効性のヒト臨床試験
【0229】
試験デザイン:この試験は、腎細胞癌患者における第II相試験である。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0230】
第II相:患者には、化合物5(10mg/kg)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に静脈内投与した。患者は、1〜28日目に400mgのソラフェニブ(2つの200mg錠剤)を経口(PO)で1日2回(BID)、食事の1時間前又は2時間後に投与される。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0231】
実施例12;肝癌のための併用治療
肝癌の治療のための化合物5及びソラフェニブ(ネクサバール)の安全性及び有効性のヒト臨床試験
【0232】
試験デザイン:この試験は、肝癌患者における第II相試験である。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0233】
第II相:患者には、化合物5(10mg/kg)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に静脈内投与した。患者は、1〜28日目に400mgのソラフェニブ(2つの200mg錠剤)を経口(PO)で1日2回(BID)、食事の1時間前又は2時間後に投与される。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0234】
実施例13;卵巣癌のための併用治療
卵巣癌のための併用治療の安全性及び/又は有効性のヒト臨床試験
【0235】
目的:化合物5及びドビチニブの投与の安全性及び薬物動態を比較すること。
【0236】
試験デザイン:この試験は、卵巣癌患者における第I相の、単一施設、非盲検、無作為化用量漸増試験、その後、第II相試験である。患者は、試験開始前に化合物5に曝露してはならない。患者は、試験の開始から2週間以内に癌の治療を受けてはならない。治療には、化学療法、造血因子、及びモノクローナル抗体等の生物療法の使用が含まれる。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0237】
第I相:患者には、化合物5(10mg/kg)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に静脈内投与した。化合物5の用量は、以下に概説される評価に基づいて毒性のために保持又は変更してもよい。患者は、28日サイクルにおいて、5日間はドビチニブ(500mg/kg)を経口(PO)投与され、2日間は休薬する。疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ28日毎にクールを繰り返す。化合物5及びドビチニブの最大耐量(MTD)が決定されるまで、3〜6人の患者のコホートには、化合物5及びドビチニブの漸増用量が投与される。MTDは、患者3人のうち2人又は6人のうち2人が用量制限毒性を経験する前の用量として定義される。用量制限毒性は、国立癌研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン3.0(2006年8月9日)によって設定された定義及び基準に従って決定される。
【0238】
第II相:患者は、第I相で決定されたMTDで、第I相のように化合物5及びドビチニブを投与される。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0239】
実施例14;乳癌のための併用治療
乳癌の治療のための化合物5及びドビチニブの安全性及び有効性のヒト臨床試験
【0240】
試験デザイン:この試験は、乳癌患者における第II相試験である。患者は、試験の開始から2週間以内に癌の治療を受けてはならない。治療には、化学療法、造血因子、及びモノクローナル抗体等の生物療法の使用が含まれる。患者は、以前の治療に関連する全ての毒性(グレード0又は1)から回復していなければならない。全ての被検体は安全性について評価され、薬物動態解析のための全ての採血は予定通りに行われる。全ての試験は、施設倫理委員会の承認及び患者の同意を得て行われる。
【0241】
第II相:患者には、化合物5(10mg/kg)を各28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に静脈内投与した。患者は、28日サイクルにおいて、5日間はドビチニブ(500mg/kg)を経口(PO)投与され、2日間は休薬する。治療は、疾患の進行又は許容不可能な毒性がなければ、2〜6クールを4週間毎に繰り返す。試験治療が2クール完了した後、完全又は部分的な応答を達成する患者は、更に4クールを受ける場合がある。6クールの試験治療の完了後に2ヶ月超安定した疾患を維持している患者は、疾患の進行時に元の適格基準を満たしていれば、更に6クールを受ける場合がある。
【0242】
採血:連続血液が化合物5の投与前後の直接血管穿刺により採取される。血清濃度の決定のための静脈血サンプル(5mL)は、投薬の約10分前及びおよそ投薬後1日目、8日目、15日目、及び22日目に採取する。各血清サンプルは2つのアリコートに分割する。全ての血清サンプルは−20℃で保管する。血清サンプルはドライアイス上で輸送する。
【0243】
薬物動態:患者は、治療開始前並びに1、8、15、及び22日目に薬物動態評価のために血漿/血清サンプル採取を受ける。薬物動態パラメーターは、BIOAVLソフトウェアの最新版を使用して、Digital Equipment Corporation VAX 8600コンピューターシステムでモデル依存法により計算する。薬物動態パラメーター、即ち、ピーク血清濃度(C
max);血清濃度ピークまでの時間(t
max);線形台形公式を使用して計算した0時点から最後の採血時間までの血中濃度−時間曲線下面積(AUC)(AUC
0〜72);及び排泄速度定数から計算される最終排泄相の半減期(t
1/2)が決定される。排泄速度定数は、対数線形血中濃度−時間プロットの終末線形領域における連続データ点の線形解析により概算される。薬物動態パラメーターの平均、標準偏差(SD)、及び変動係数(CV)は、各治療について計算される。パラメーター平均の比(保存配合物/非保存配合物)を計算する。
【0244】
併用療法に対する患者の応答:患者の応答は、X線、CTスキャン、MRIによるイメージングを介して評価され、イメージングは、試験の開始前及び第1のサイクルの終了時に又は後続のサイクルの終わりに行われ、更なるイメージングは4週間毎又は後のサイクルの終了時に行われる。イメージング様式は、癌の種類及び実現可能性/利用可能性に基づいて選択され、同じイメージング様式が、同様の癌の種類に対して、各患者の試験経過にわたって利用される。応答速度は、RECIST基準を用いて決定される(Therasseら,J.Natl.Cancer Inst.2000年2月2日;92(3):205〜16;http://ctep.cancer.gov/forms/TherasseRECISTJNCI.pdf)。患者はまた、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、及びIHCによる前駆細胞癌表現型及びクローン性増殖の変化を評価するために、またFISHによる細胞遺伝学的変化について、癌/腫瘍生検を受ける。試験治療の完了後、患者を4週間、定期的に追跡する。