(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラが前記超伝導接続部の電流を周期的に制御するように構成され、それにより、電流サイクルの第1の部分中、前記超伝導接続部の前記電流が第2の閾値レベル未満にとどまりながら第1の閾値レベルを超過して、前記第1の伝導性状態で前記超伝導接続部が常伝導状態になることなく前記超伝導接続部を磁束フローレジームに維持し、かつそれにより、前記電流サイクルの第2の部分中、前記超伝導接続部の前記電流が前記第1の閾値レベル未満であり、前記第2の伝導性状態で前記磁束フローレジームを回避し、前記超伝導接続部の抵抗が前記第1の伝導性状態で磁束フロー抵抗を含み、かつ前記第2の伝導性状態で実質的にゼロである、請求項1または2に記載の超伝導回路。
前記コントローラが、前記電流サイクルの波形を制御する電流コントローラを含み、それにより、前記電流波形の全サイクルにわたって前記電流波形のdc成分が実質的にゼロである、請求項3に記載の超伝導回路。
前記充電ループおよび前記負荷ループの一方または両方が、前記超伝導接続部に電気的に接続された超伝導ループ素子を含み、それにより、前記超伝導接続部が前記超伝導ループ素子をブリッジし、前記超伝導接続部のいずれかの端部と、前記超伝導ループ素子との間の接合が有限抵抗を有し、それにより、前記電流波形のゼロではないdc成分が実質的にゼロに減衰される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の超伝導回路。
一次および二次巻線を有する変圧器を含み、前記充電ループが前記変圧器の前記二次巻線を形成し、前記コントローラが、前記変圧器の前記一次巻線の電流を制御する制御電流発生器を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の超伝導回路。
前記制御するステップが、前記超伝導接続部の電流を周期的に制御するステップを含み、それにより、電流サイクルの第1の部分中、前記超伝導接続部の前記電流が第2の閾値レベル未満にとどまりながら第1の閾値レベルを超過して、前記第1の伝導性状態で前記超伝導接続部が常伝導状態になることなく前記超伝導接続部を磁束フローレジームに維持し、かつそれにより、前記電流サイクルの第2の部分中、前記超伝導接続部の前記電流が前記第1の閾値レベル未満であり、前記第2の伝導性状態で前記磁束フローレジームを回避し、前記超伝導接続部の抵抗が前記第1の伝導性状態で磁束フロー抵抗を含み、かつ前記第2の伝導性状態で実質的にゼロである、請求項11または12に記載の方法。
前記第1の伝導性状態が、前記第2の伝導性状態よりも大きい電気抵抗またはインピーダンスを有する抵抗性状態を含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の回路または方法。
前記充電ループおよび前記超伝導負荷ループが連続的な超伝導ループを含み、前記超伝導ブリッジが前記連続的な超伝導ループにわたって接続され、前記超伝導ブリッジおよび前記連続的な超伝導ループが、異なるそれぞれの材料および/または構造の超伝導体を含む、請求項17〜21のいずれか一項に記載の磁束ポンプまたは方法。
前記が、ブリッジ切り替え磁場を前記ブリッジの前記切り替え可能な部分に印加するステップと、前記交流磁場成分と共時的に前記ブリッジ切り替え磁場を変調して、前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記ブリッジの前記部分を切り替えるステップとをさらに含む、請求項24または25に記載の方法。
前記ブリッジの前記切り替え可能な部分の前記低インピーダンスまたは伝導性状態が前記ブリッジの前記切り替え可能な部分の超伝導状態である、請求項24〜27のいずれか一項に記載の方法。
ブリッジ切り替え磁場を前記ブリッジの前記切り替え可能な部分に印加し、かつ前記交流磁場成分と共時的に前記ブリッジ切り替え磁場を変調して、前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記ブリッジの前記部分を切り替えるブリッジ磁場発生器をさらに含む、請求項29に記載の超伝導磁束ポンプ。
前記ブリッジの前記切り替え可能な部分の前記第1の状態が前記ブリッジの前記切り替え可能な部分の超伝導状態である、請求項29〜31のいずれか一項に記載の超伝導磁束ポンプ。
前記負荷ループの磁場からエネルギーを抽出するシステムであって、前記充電ループの磁束を変化させて、それにより、前記負荷ループの前記磁場に蓄積された前記エネルギーによって電力供給された前記充電ループに交流起電力を誘導するために、異なる抵抗またはインピーダンスの超伝導状態間または超伝導状態と非超伝導状態との間で前記ブリッジまたは超伝導接続部を切り替える切り替え機構を含むシステムをさらに含む、請求項24又は29に記載の方法、磁束ポンプ、デバイスまたは回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、認識され得るように、超伝導磁束ポンプをさらに改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の第1の態様によれば、磁束をポンピングして超伝導体の磁化を変化させる方法であって、超伝導回路であって、第1および第2の充電ループ接続部を有する第1の充電ループと、前記第1および第2の充電ループ接続部にそれぞれ結合された第1および第2の負荷ループ接続部を有する第2の負荷ループと、前記第1および第2の負荷ループ接続部にわたって結合されたブリッジとを含み、前記ブリッジの少なくとも部分が第1の低インピーダンスまたは伝導性状態と第2の高インピーダンスまたは抵抗性状態との間で切り替え可能である、超伝導回路を形成するステップと、交流磁場成分であって、前記充電ループにおいて第1の電流方向に電流が誘導される第1の時間間隔中、第1の磁場成分方向を有し、かつ前記充電ループにおいて第2の逆の電流方向に電流が誘導される第2の時間間隔中、第2磁場成分方向を有する前記交流磁場成分を有する磁場を前記充電ループに印加するステップと、前記交流磁場成分と共時的に前記ブリッジを制御するステップであって、それにより、前記第1の時間間隔中、前記ブリッジが前記高インピーダンスまたは抵抗性状態にあり、および前記誘導された電流が前記負荷ループを通って流れ、かつ前記第2の時間間隔中、前記ブリッジが前記低インピーダンスまたは伝導性状態にあり、および前記誘導された電流が前記伝導性ブリッジを通って流れる、ステップとを含む方法が提供される。
【0007】
本方法の実施形態は、製造が簡単かつ単純であり、従来の磁束ポンプ/方法よりも容易に実践的なデバイスに組み込まれる。
【0008】
いくつかの好適な実施形態では、第2の時間間隔中、負荷ループからのさらなる電流が、充電ループからの誘導された電流と同じ方向に伝導性ブリッジを通って流れる。すなわち、実施形態では、ブリッジは、acサイクルのフライバック位相が後に続くacサイクルの磁束ポンプ位相を有効にするように作用し、このフライバック位相では、ブリッジが充電ループおよび負荷ループの両方から電流を流す(これにより、負荷ループがacサイクルの第2の位相によって放電されないようにする)。
【0009】
動作するために、2つの異なる伝導性状態間、より具体的には、ブリッジが概して伝導性である(または比較的低インピーダンスを有する)第2の状態と、ブリッジ(またはその一部分)が概して抵抗性である(または比較的高インピーダンスを有する)第1の状態との間で単にブリッジを切り替えるのみでよい。それにもかかわらず、いくつかの好適な実施形態では、システムは、ブリッジがその第2の伝導性状態において実質的に超伝導である場合に最も良く機能する。
【0010】
いくつかの好適な実施形態では、ブリッジは、磁場を印加することにより、より具体的には、高振幅と低振幅との間で変調されるac磁場を印加することにより、伝導性状態(実施形態ではオンおよびオフ)間で切り替えられ、ブリッジの抵抗またはインピーダンスを切り替える。
【0011】
したがって、好適な実施形態では、ブリッジは、超伝導体、特にHTSを含み、ブリッジは、本方法の動作全体にわたって超伝導にとどまる。(これは、印加されたac磁場を用いる本発明の後述する態様および実施形態にも該当する)。ac磁場を用いて、たとえ超伝導体が超伝導のままであったとしても、印加磁場が印加磁場と相互作用して電流の流れに抵抗するブリッジの動的抵抗の状態を誘導することにより、これが実現される。典型的には、これは、(材料に依存する)閾値磁場(より具体的には、電流の流れ方向に垂直な磁場成分)が印加され、抵抗がac周波数に(実質的に直線的に)依存する場合に生じる。動的抵抗は、超伝導体(ブリッジ)の電流密度ならびに超伝導体構造および幾何形状によって影響を受ける場合もある。任意の特定の材料および幾何形状が与えられる場合、印加されるac磁場の選択は、特定の実装形態に特有の当業者にとって日常的な測定および実験の問題である。
【0012】
当業者にはわかるように、超伝導体は概して損失がないと考えられているが、これはDCにおいてのみ当てはまり(ただし、正確に言えば、DCであっても当てはまらない)、AC電流では、超伝導体は、磁束の変化が電流と相互作用して磁化損失をもたらす磁束フローレジームで動作する。したがって、本発明の実施形態では、ブリッジは、超伝導(通常、常伝導状態に駆動されない)のままであることができるが、超伝導体の実効抵抗は、特に(AC)磁場を印加することによって変化する。したがって、実施形態では、ブリッジの第1および第2の状態は、それぞれブリッジの超伝導状態を含み、これは、後述する下記のシステムの態様および実施形態にも該当する。
【0013】
関連する一態様では、本発明は、超伝導回路であって、第1および第2の充電ループ接続部を有する第1の充電ループと、前記第1および第2の充電ループ接続部にそれぞれ結合された第1および第2の負荷ループ接続部を有する第2の負荷ループと、前記第1および第2の負荷ループ接続部にわたって結合されたブリッジとを含み、前記ブリッジの少なくとも部分が第1の低インピーダンスまたは伝導性状態と第2の高インピーダンスまたは抵抗性状態との間で切り替え可能である、超伝導回路と、交流磁場成分であって、前記充電ループにおいて第1の電流方向に電流が誘導される第1の時間間隔中、第1の磁場成分方向を有し、かつ前記充電ループにおいて第2の逆の電流方向に電流が誘導される第2の時間間隔中、第2の磁場成分方向を有する前記交流磁場成分を有する磁場を前記充電ループに印加する磁場発生器と、前記交流磁場成分と共時的に前記ブリッジを制御するブリッジコントローラであって、それにより、前記第1の時間間隔中、前記ブリッジが前記第2の状態にあり、および前記誘導された電流が前記負荷ループを通って流れ、かつ前記第2の時間間隔中、前記ブリッジが前記第1の状態にあり、および前記誘導された電流が前記伝導性ブリッジを通って流れる、ブリッジコントローラとを含む超伝導磁束ポンプを提供する。
【0014】
前述したように、本明細書に記載された態様/実施形態のすべてにおいて、ブリッジ(または以下で呼ぶように超伝導接続部)は、それが伝導性状態/抵抗性状態のいずれにあっても、超伝導のままである超伝導ブリッジ/接続部であることが好ましい。1つの手法では、前述したように、超伝導体が超伝導のままであるが、ac磁場が印加され、それにより超伝導体が動的抵抗を示す。
【0015】
別の手法では、超伝導体は、超伝導のままであるが、(超伝導体および/または超伝導体にわたる電圧/電場を通る電流を制御することによって)磁束フローレジームで動作するように制御される。広義には、磁束フローレジームは、磁束渦が超伝導体に浸透するレジームである(超伝導体は、第2種超伝導体であり得、または好適な実施形態ではHTS超伝導体であり得る)。巨視的な輸送電流密度は、磁束線を電流の流れに垂直に動かす傾向があるが、欠陥および粒界のような渦のピン止め個所は、この動きを阻止する傾向がある。単純化して言えば、磁束渦の動きは、磁束フロー抵抗率として現れるエネルギー散逸を生じる。磁束フロー臨界電流(超伝導体の「従来の」臨界電流と混同しないようにされたい)よりも大きい電流が超伝導体を流れると、磁束フローレジームにアクセスする。磁束フロー臨界電流での磁束フローレジームへの移行は、磁場(不可逆性磁場)と関連しており、また、関連する「不可逆曲線」は、温度に伴うこの磁場の変化を図示し、かつ(上部臨界磁場および下部臨界磁場と異なり)温度の上昇につれて減少する凹面であることを特徴的とする。
【0016】
本発明のいくつかの好適な態様および実施形態は、上記のデバイスおよび方法の動作中、この磁束フロー抵抗率を活用する。この手法とHTSの使用との間には特定の相乗作用がある。なぜなら、HTSとしての超伝導ブリッジ/接続部は、通常、磁束のピン止めがそこで生じ得る多数の粒界を有するからである。加えて、磁束フロー抵抗率は、これらの領域で遭遇する可能性がある局所電場が高いため、HTS内の粒界でエネルギーを散逸させる支配的なメカニズムである。
【0017】
この手法は、以下の本発明の態様/実施形態において用いられることが好ましい。
【0018】
したがって、本発明の関連する一態様では、充電ループと、超伝導体を含む負荷ループと、前記充電ループの一部でありかつ同時に前記負荷ループの一部である超伝導接続部と、第1の伝導性状態と第2の伝導性状態との間で前記接続部の状態を制御するコントローラとを含む超伝導回路であって、前記接続部の抵抗が前記第1の伝導性状態において前記第2の伝導性状態におけるよりも高く、それにより、前記超伝導回路が、前記接続部が前記第1の伝導性状態にあるときに前記充電ループと前記負荷ループとの間に磁束フローを誘導するように構成され、かつ前記接続部が前記第2の伝導性状態にあるときに前記充電ループと前記負荷ループとの間で磁束フローを阻止するように構成される、超伝導回路が提供される。
【0019】
好適な実施形態では、超伝導接続部は、第1および第2の伝導性状態の両方において超伝導である(かつそれ以外のときには常に超伝導にとどまる)。いくつかの好適な実施形態では、コントローラは、充電ループに結合している変圧器によって接続部の状態を制御する。より具体的には、実施形態では、充電ループは変圧器二次側を含む。次に、充電ループの電流は、変圧器一次側の電流(または電圧)を制御することによって制御することができる。したがって、実施形態では、コントローラは、好ましくは、変圧器一次側用の(所定の)駆動波形を生成して、超伝導接続部ブリッジを通る電流(または電圧)を制御し、接続部/ブリッジを(常に)超伝導状態に維持しながら磁束フローレジームへおよび磁束フローレジームから接続部/ブリッジを切り替えるように構成された(または構成可能な)電流ドライバまたは電圧ドライバを含むことがある。
【0020】
広義には、コントローラ/制御するステップは、回路を制御し、それにより、接続部/ブリッジの正味電流は、接続部/ブリッジの超伝導を維持しながら、回路の動作のサイクル(2つの状態間の)における1つまたは複数の点で接続部/ブリッジに磁束フローを誘導するのに十分である。広義には、実施形態では、コントローラ/制御するステップは、回路、より具体的には充電ループの電流(i
p)を制御することができ、これにより、ブリッジ電圧がサイクルのポンピング位相中にほぼ一定になる。
【0021】
当業者にはわかるように、特定の電流(または電圧)波形は、使用される材料の詳細、回路の幾何形状などに依存することになる。いくつかの好適な実施形態では、充電ループは、超伝導ループ、例えばHTSループであるが、これは必須ではない。変圧器一次回路は、通常、超伝導ではない。
【0022】
上記で概説したように、本発明者らは、充電ループの一部でありかつ同時に負荷ループの一部である超伝導接続部(ブリッジ)の伝導性状態を制御することにより、接続部が異なる伝導性を有する(少なくとも)2つの状態間で接続部の伝導性状態を切り替えることにより、負荷ループの超伝導体の磁化を増減させる(または動的に変化させる)ことが実現可能であることを認識した。
【0023】
第1の伝導性状態(すなわち高抵抗状態)の接続部の両端点間の抵抗は有限であることに留意されたい。換言すれば、接続部は、充電ループの一部でありかつ同時に負荷ループの一部でもあるスイッチとして作用することができる。これにより、接続部は、開スイッチ(無限抵抗)または閉スイッチのいずれかである一般的なスイッチと区別することができる。対照的に、本明細書に記載された実施形態では、接続部は、充電ループの一部でありかつ同時に負荷ループの一部である。すなわち、接続部は、充電ループを完結すると同時に負荷ループも同様に完結し、接続部の抵抗は、第1および第2の伝導性状態の両方において有限(かつ別々)とすることができる。
【0024】
本明細書全体にわたって、抵抗という記載は、インピーダンス、例えば接続部のインピーダンスも指すと理解され得ることに留意されたい。
【0025】
上記で概説したように、接続部の抵抗を変化させることにより、すなわち、第1の伝導性状態と第2の伝導性状態との間で接続部の伝導性状態を制御することにより、負荷ループの超伝導体の磁化を制御することができる。これを実現することにより、第1および第2の伝導性状態の両方が有限の抵抗を有することができる。あるいは、接続部は第1の伝導性状態で有限の抵抗を有するが、第2の伝導性状態は超伝導状態とすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、接続部(ブリッジ)は、超伝導状態と、外部磁場によって磁束フローが誘導されて接続部(ブリッジ)の抵抗を増大させる状態との間で切り替えられ得る。磁束フロー自体が(さらなる)抵抗率をもたらす場合がある。これにより、超伝導接続部(ブリッジ)が常伝導状態にならない場合がある。
【0027】
いくつかの実施形態では、接続部(ブリッジ)は、全体にわたって公称抵抗率を有する場合があり、磁束フローの発生中に追加の抵抗率が存在する場合がある。
【0028】
したがって、いくつかの実施形態では、接続部(ブリッジ)は、例えば、切り替え超伝導体、切り替え抵抗、または可変インダクタンスもしくはキャパシタンスなどの可変インピーダンスとすることができるが、これらに限定されない。
【0029】
したがって、超伝導回路の好適な一実施形態では、第2の伝導性状態は超伝導状態である。
【0030】
さらに下記で説明するように、接続部の状態は、例えば、印加磁場を介して制御することができる。これにより、接続部に印加された磁場を除去することにより、超伝導状態を得ることができる。コントローラは、第1の伝導性状態と第2の伝導性状態との間で接続部の状態を制御するために、具体的には、例えば、前述したような磁場発生器、ac磁場発生器を含む場合がある。
【0031】
いくつかの実施形態では、超伝導接続部は、フェライト材などの磁性材料に隣接して超伝導体を含む。これにより、実施形態では、超伝導接続部が磁場の影響を受けやすくなる。フェライトにより、周波数が非常に高い(例えば、周波数が0.1、1または10MHzを超える)磁場が使用し易くなる。このいくつかの実施形態および本発明の前述した態様または後述する態様では、超伝導体(ブリッジ)は、フェライト磁心および/またはフェライトオーバー層を有する場合がある。加えてまたは代わりに、BSCCOのような磁場の影響を特に受けやすい超伝導体を使用してもよい。
【0032】
第1の時間間隔中に充電ループと負荷ループとの間に磁束フローを誘導し、第2の時間間隔中に充電ループと負荷ループとの間で磁束フローを阻止すること等が好ましい場合がある。これにより、例えば、ある一定の時間間隔で充電ループと負荷ループとの間に磁束フローを受け入れかつ磁束フローを阻止するサイクルを繰り返すことにより、超伝導体を1T、2T、5Tまたはそれを超えて充電することが可能になる。
【0033】
したがって、超伝導回路の好適な一実施形態では、磁場発生器はAC磁場発生器である。
【0034】
この実施形態では、充電ループの電流が周期関数によって誘導され、したがって半サイクル間でその方向が反転し得ることが理解されるであろう。接続部が依然として抵抗性であれば、電流は、接続部を迂回して、再び負荷ループから流出することがある。その結果、第1のサイクル後に負荷ループの電流が増加しないことがある。しかしながら、充電ループ電流が符号を変えたときに接続部が再び超伝導になる(または抵抗が低くなる)ことを可能にすることにより、接続部は負荷ループを短絡させることができる。これにより、負荷ループを迂回することができ、負荷ループの電流が充電ループ電流の分だけ減少させないことが可能である。
【0035】
さらなる好適な一実施形態では、超伝導回路は、変化する磁束を充電ループにおいて誘導する第2の磁場発生器をさらに含む。第2の磁場発生器は、例えば、変圧器、電磁石または可動永久磁石とすることができる。
【0036】
超伝導回路の好適な一実施形態では、第1の伝導性状態と第2の伝導性状態との間で接続部の状態を制御する第2の磁場発生器およびコントローラは、単一の磁場発生器ユニットに一体化している。これにより、超伝導回路設計を単純化することができる。
【0037】
超伝導回路のさらなる好適な一実施形態では、充電ループ、負荷ループ、および超伝導接続部の2つ以上が、単一の超伝導部材に一体化している。これにより、例えば、磁束を超伝導部材の第1の側に誘導し、磁場、例えば振動磁場を超伝導部材の中間区域に印加し、その後、電流を、超伝導部材の中間区域から見て第1の側の反対側である超伝導部材の第2の側に誘導することができる。この実施形態により、超伝導回路の単純な設計が可能になり、またこの実施形態を用いて、例えば、超伝導部材の1つの側で1T、2T、5Tまたはそれを超える磁化を得ることができる。
【0038】
本発明の関連する一態様では、超伝導体の磁化を制御する方法であって、充電ループと、超伝導体を含む負荷ループと、前記充電ループの一部でありかつ同時に前記負荷ループの一部である超伝導接続部とを提供するステップと、第1の伝導性状態と第2の伝導性状態との間で前記接続部の状態を制御するステップであって、前記接続部の抵抗が前記第1の伝導性状態において前記第2の伝導性状態におけるよりも高い、ステップとを含み、前記接続部が前記第1の伝導性状態にあるときに前記充電ループと前記負荷ループとの間に磁束フローが誘導され、かつ前記接続部が前記第2の伝導性状態にあるときに前記充電ループと前記負荷ループとの間に磁束フローが阻止され、および前記超伝導体の前記磁化が前記充電ループと前記負荷ループとの間の前記磁束フローを制御することによって制御される、方法が提供される。
【0039】
上記で概説したように、概して、接続部(ブリッジ)は、第1および第2の状態の両方において超伝導である。
【0040】
実施形態では、本方法/コントローラは、電流サイクルの第1の部分中、超伝導接続部の電流が第2の閾値レベル未満にとどまりながら第1の閾値レベルを超過するように、超伝導接続部の電流を周期的に制御するように構成されている。したがって、本方法/コントローラは、第1の伝導性状態で超伝導接続部が常伝導状態になることなく超伝導接続部を磁束フローレジームに維持する。電流サイクルの第2の部分中、超伝導接続部の電流が第1の閾値レベル未満であり、第2の伝導性状態で磁束フローレジームを回避する。したがって、超伝導接続部の抵抗は、第1の伝導性状態で磁束フロー抵抗を含み、かつ前記第2の伝導性状態で実質的にゼロである。
【0041】
電流波形のdc成分が実質的にゼロであるように制御されることが好ましい。これは、超伝導接続部に電気的に接続された超伝導ループ素子から充電ループおよび/または負荷ループを製造し、その結果、超伝導接続部が超伝導ループ素子をブリッジして、充電ループおよび/または負荷ループを形成することによって容易になる場合がある。このとき、超伝導接続部の一方の端と、超伝導ループ素子との間の接合部の有限抵抗が、前記電流波形のゼロでないdc成分のすべてを実質的にゼロに減衰させるのに役立つ。
【0042】
実施形態では、本方法/システムは、充電ループが変圧器の二次巻線を形成する変圧器を使用する。このとき、変圧器の一次巻線の電流は、充電ループの電流波形を制御するように制御することができる。
【0043】
充電ループ電流が充電ループに誘導されるのと実質的に同じ周波数で、接続部の動的伝導性をオンおよびオフに切り替える(または変える)ことが好ましい場合がある。
【0044】
したがって、本方法の好適な一実施形態では、接続部の状態の制御は、接続部に印加された磁場の周波数を制御するステップと、接続部の磁束フロー臨界電流、特に背景磁場を制御することによって制御するステップと、接続部の長さを制御するステップと、前記磁場が印加される接続部の一部および/または磁束フロー臨界電流が制御される接続部の一部を制御するステップとの1つまたは複数により、接続部の伝導性を動的に制御するステップを含む。磁束フローレジーム内でこれを維持するように接続部を制御する必要がない場合、システムは、接続部の温度を制御することさえ可能である。本方法の実施形態を用いて接続部の伝導性を動的に制御することにより、第1の伝導性状態と第2の伝導性状態との間で接続部の状態を制御することができる。
【0045】
ここで、磁束フローレジームにアクセスするかどうかを決定する磁束フロー臨界電流と、超伝導体が常伝導状態に駆動される電流である「常伝導」臨界電流(単に臨界電流とのみ呼ばれる場合が多い)とを区別することが重要である。
【0046】
原則として、制御可能な超伝導状態ブリッジは、上述した磁束ポンピングシステムとは独立して用いることができる。
【0047】
したがって、さらなる一態様では、本発明は、第1および第2の電気的接続部と、前記第1および第2の電気的接続部にわたって結合されたブリッジと、第1の超伝導状態と第2の抵抗性状態との間で切り替え可能な前記ブリッジの少なくとも部分にac磁場を印加するac磁場発生器と、前記ac磁場を変調して、前記超伝導状態と前記抵抗性状態との間で前記ブリッジの前記部分を切り替える磁場変調器とを含む超伝導切り替えデバイスを提供する。
【0048】
本発明は、超伝導体、特に高温超伝導体の磁化を変化させる方法であって、充電ループおよび超伝導負荷ループであって、各ループの一部を含む超伝導ブリッジを共有する充電ループおよび負荷ループを含む超伝導回路を提供するステップと、前記充電ループで循環する交流(ac)電流を制御するステップであって、それにより、前記ac電流のサイクルの第1の部分中、超伝導ブリッジが超伝導にとどまりながら磁束フローレジームに駆動され、かつ前記サイクルの残り部分中、超伝導ブリッジが実質的にゼロの抵抗を有する超伝導であり、それにより、それぞれの前記サイクル中、正味磁束が前記ブリッジにわたって前記負荷ループへ流れる、ステップとを含む方法をさらに提供する。
【0049】
充電ループのac電流は、非対称な正および負のピークと、実質的にゼロの平均値とを有することが好ましい。
【0050】
関連する一態様では、本発明は、充電ループおよび超伝導負荷ループであって、各ループの一部を含む超伝導ブリッジを共有する充電ループおよび超伝導負荷ループを含む超伝導回路と、前記充電ループで循環する前記ac電流を制御するコントローラであって、それにより、交流(ac)電流のサイクルの第1の部分中、超伝導ブリッジが超伝導にとどまりながら磁束フローレジームへ駆動され、かつ前記サイクルの残り部分中、超伝導ブリッジが実質的にゼロの抵抗を有する超伝導であり、それにより、それぞれの前記サイクル中、正味磁束が前記ブリッジにわたって前記負荷ループへ流れる、コントローラとを含む磁束ポンプをさらに提供する。
【0051】
本発明のさらなる関連する一態様では、上述したような方法、磁束ポンプ、デバイスまたは回路は、超伝導エネルギー蓄積および抽出デバイス/システムとして用いることができる。このようなデバイス/方法は、上述したような超伝導ブリッジまたは接続部、および上述したような切り替えシステム(例えば、コントローラ)を用いて、(例えば、磁束フローレジームへのおよび磁束フローレジームからの)抵抗またはインピーダンスの異なる超伝導状態間で超伝導ブリッジまたは超伝導接続部を制御して、(負荷ループの)磁場に蓄積されたエネルギーを抽出する。超伝導状態ブリッジまたは超伝導接続部は、このプロセス中、超伝導にとどまることが好ましいが、本技法の実施形態は、代わりに超伝導状態と非超伝導状態との間でブリッジまたは接続部を切り替えることができる。いずれの場合にも、(例えば、変圧器誘導によって)充電ループに充電電流が駆動されないと、負荷ループから超伝導ブリッジ/接続部にわたって充電ループへ磁束が流出することになる。その手順は、充電ループの電流を変化させるブリッジにわたって磁束フローを誘導する。変化する磁束、dΦ/dtは、充電ループに起電力(emf)を誘導する。すなわち、2つの状態間でブリッジ/接続部を切り替えることにより、充電ループにac起電力が生じ、負荷ループの磁場に蓄積されたエネルギーによって電力供給されたac電力出力をもたらす。
【0052】
前述した技法のいずれも、異なる状態間で超伝導ブリッジ/接続部を切り替えるために用いることができる。ac電力は、様々な方法、例えば、前述したような充電ループに結合している変圧器によって抽出/利用することができる。同じ変圧器を用いて、充電ループの磁場にエネルギーを蓄積すること、および蓄積されたエネルギーをac電力出力の形態でループから抽出することがいずれも可能である。
【0053】
ここで、添付の図面を参照して、例としてのみ、本発明のこれらの態様および他の態様をさらに説明する。なお、図面では、同様の数字がすべての図面を通して同様の部分を表す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
上記で概説したように、本明細書に記載の装置および方法の実施形態を用いて、特に磁束を蓄積または縮小する超伝導回路を用いて磁場を生成することができる。実施形態を用いて、高磁場、例えば1T、2T、5T以上の範囲の磁場を生成し易くすることができる。超伝導体を用いて磁場を「蓄積」することができる。超伝導体にとって磁気モーメントおよび磁化が同義であることが理解されるであろう。
【0056】
本明細書に記載の実施形態は、超伝導体を磁化もしく消磁するのに用いてもよく、または超伝導体の磁化を動的に変化させるために用いてもよい。
【0057】
永久電流モードで動作する高T
c超伝導(HTS)磁石は、超伝導体の磁束クリープおよび接合抵抗により電流減衰を受ける。磁束ポンプは、超伝導回路に直流電流を注入して、電流リードによる熱損失なしに電流減衰を補償することが可能である。本明細書に記載の実施形態は、HTSコイルでの磁束ポンピングに特に適している。以下の説明では、数理モデルおよび実験的検証が提供される。
【0058】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、超伝導体に垂直磁場が印加されるとトリガされる磁束フローを活用することができる。
【0059】
超伝導体にJcを上回る輸送電流または不可逆曲線を上回る磁場が印加されると、磁束フローが生じる場合がある。あるいは、印加磁場と輸送電流との組み合わせにより磁束フローが生じる場合がある。磁束フロー領域では、超伝導体は依然として超伝導であると見なすことができる。しかしながら、磁束の動きは、損失と、したがって暗黙的抵抗とにつながる場合がある。この抵抗は、本明細書に記載の実施形態で活用することができる。
【0060】
直流電流が流れている第2種超伝導体またはHTS超伝導体に、電流方向に対して垂直な成分を有するac電流磁場が印加されると、輸送損失が生じる。超伝導体は超伝導にとどまっているが、これは動的抵抗と考えることができる。超伝導テープの動的抵抗は、以下の式を用いて計算することができる(高磁場の場合、動的抵抗は、流れている電流の大きさに実質的に左右されない)。
【数1】
式中、aはテープ幅の半分であり、lは磁場が印加されたテープの長さであり、fは磁場の周波数であり、I
c0はテープの(常伝導)臨界電流であり、B
aは印加磁場の大きさであり、cは磁場−臨界電流間の関係を表す因数である。ビーンモデル(Bean’s model)に関して、cは0である。
【0061】
磁束フローが生じると、超伝導体は抵抗を得る。これは、オーム抵抗自体でないが、電流または磁界がサイクルされるとき、各サイクルで磁化にヒステリシス損失があるために生じる等価抵抗である。したがって、式1からわかるように、損失と、したがって等価抵抗とは、1秒当たりのサイクル数または抵抗の関数である。
【0062】
図1は、本明細書に記載の実施形態による磁束ポンプ機構を用いる超伝導回路100の概略図を示す。
【0063】
この例では、AC磁場が磁場発生器108(例えば、電磁石)を介してHTSテープに印加され、それにより、磁束が抵抗性ブリッジ106を通って負荷ループ104に流れる。
【0064】
用いられる原理は、磁束フローが存在するとき、充電ループ102に誘導された電流Ipがブリッジ106を迂回して負荷ループ104(
図1a)に直接流れることができるというものである。Φは、充電ループ102に注入された磁束の瞬時値を表示する。
【0065】
しかしながら、充電ループ102の電流は周期関数によって誘導されることがあるため、後のある時点で電流Ipの向きが逆転する場合がある。ブリッジ106が依然として抵抗性であれば、電流は、負荷ループ104からブリッジ106を再び迂回して流れることになり、正味の効果は、第1のサイクル後に負荷ループ電流ILが増加しないということになる。Ipが符号を変えたとき(
図1b)、ブリッジ106が再び超伝導になることを可能にすることで、ブリッジ106が負荷ループ104を短絡し、負荷ループ104がこのとき迂回されるため、ILがIp分だけ減少することがなくなる。AC磁場が除去されると、負荷ループ104はHTSテープ106によって短絡される。
【0066】
印加ブリッジ磁場がAC磁場であるのに対して、負荷ループの電流ILは、全体にわたって同じ方向に流れたままであるため、充電電流Ipは、
図1aと
図1bとでその方向が逆転している。ブリッジは電流経路を交互に変えられるようになっているため、これが可能である。
【0067】
したがって、スイッチとして機能するブリッジは、充電回路のためのフライバックループを提供することができる。ブリッジが抵抗性(またはブリッジが伝導性である第1の状態)である間、電流は充電ループから負荷ループに流れる。ブリッジが超伝導(またはブリッジが伝導性である第2の状態であって、これによりブリッジの抵抗が第2の状態で小さくなっている状態)である間、充電ループの電流を負荷ループに影響を及ぼさずに低減することができる。
【0068】
充電ループの電流が負荷ループの電流よりも大きい場合、電流が負荷ループに流れる。超伝導ブリッジの存在は、電流が負荷ループの電流よりも小さいとき、充電電流が負荷電流よりも大きいときに得られた利得を帳消しにする逆転が観察されないことを意味する。
【0069】
したがって、ILは、連続的なサイクルごとに増加させることができ、磁束ポンピングを実現することができる。
【0070】
上記で概説したように、好適な実施形態では、デバイスは、超伝導体の追加区域によって短絡される超伝導体のループを含む超伝導回路100を使用し、これにより、2つのループ、すなわち充電ループ102および負荷ループ104が生じる(
図1の例示的な構成を参照されたい)。
図1に示された回路の表現は、最も単純なレベルのものである。複数の充電ループおよび/または複数の負荷ループが使用可能であることが理解されるであろう。加えて、超伝導体の短絡区域106は、例えば、テープ、薄膜もしくは厚膜、電線または他の任意のタイプの超伝導体とすることができるが、これらに限定するものではない。
【0071】
充電ループに変化する磁束を誘導する方法が必要となる場合がある。これは変圧器、電磁石または移動永久磁石から可能であろう。当然のことながら、多くの他の方法が当業者に想到されるであろう。
【0072】
加えて、磁束フローをトリガするために、変化する磁束を超伝導体の短絡区域(またはブリッジ106)に印加する方法が必要となる場合がある。これを行うことが可能な多数の方法が当業者に知られている。
【0073】
超伝導ループおよびブリッジループは、すべて単一の超伝導体から形成することができる。磁束が左側半分(これは、この場合、
図1の充電ループ102に対応する)に誘導される矩形の超伝導テープを考えてみると、振動磁場は、超伝導体の中間区域(これは、この場合、
図1のブリッジ106に対応する)に印加され、このとき、
図1の負荷ループ104に対応する右側半分に電流を誘導することができる。当然のことながら、多くの他の変形例が当業者に想到されるであろう。
【0074】
いくつかの実施形態では、2つの別個の供給源(1つは充電ループ102用の電流源、およびもう1つはブリッジ106用の磁束源)が存在するのではなく、単一の供給源が使用可能である場合がある。
【0075】
実施形態では、2つの別個の供給源がそこに存在することが有利である。1つは駆動電流を供給するためのもの、および1つは磁束フローを誘導するためのものである。なぜなら、充電速度が2つの供給源の相対的な位相、周波数および大きさの関数になるからである。動的抵抗および入力電流を別個に変えることが有利な場合もある。動的抵抗は、輸送電流および印加磁場の両方に依存し、負荷ループ104の電流が増大するにつれて、動的抵抗を動的に制御するために、ブリッジ106に印加される磁場を変化させることが有利になる。
【0076】
上記の式1からわかるように、動的抵抗は、周波数fの関数であり、また振動磁場の振幅Baであり、また(常伝導)臨界電流の関数である。(常伝導)臨界電流は、背景磁場にも依存する。したがって、追加の制御または変調を用いてブリッジ106に磁場B
aを印加することが有利な場合がある。この追加の制御または変調は、背景磁場(したがって、式(1)の(常伝導)臨界電流)を制御すること、および振動磁場の振幅B
aを制御することのいずれかまたは両方により行うことができる。このように、磁場B
aは、高周波数磁場をもたらし、動的抵抗は、振幅B
aを変化させることおよび/または背景磁場の値を変化させることによって制御することができる。
【0077】
システムの効率は、動的抵抗の相対的な大きさと、システムのインダクタンスと、システムの任意の接合部の抵抗との関数とすることができる。
【0078】
以下に、システムの挙動を説明する分析モデルおよび実験結果を示す。
【0079】
システムの特性は、(例えば、ブリッジの加温/冷却により、または背景磁場106の印加により、その変調周波数またはその(常伝導)臨界電流を変化させることによって)、動的抵抗、およびブリッジ106がオンである期間とオフである期間との相対的比率を調節することにより、動作中に効率を変えることができるようなものである。
【0080】
動的抵抗は、磁場発生器108による磁場発生器のブリッジ106の長さの関数とすることもできるため、その値は、異なる長さのブリッジ106を有すること、またはブリッジ磁場を印加するブリッジ106を増減させることのいずれかにより変えることができる。例えば、ブリッジ作動磁石であれば2つの区域にすることも可能であろう。
【0081】
上述したシステムは、単一のスイッチを用いて磁束ポンピングを実現する。本明細書に記載の実施形態を第2のスイッチと並行して用いて、磁束ポンピングを実現することができる。
【0082】
分析モデル
図1を参照して、ポンプの動作を以下の通り説明することができる。ここで用いられる記号は、次の通りである。
i
p:充電ループ電流
I
p:i
pの平均値
B
a:ブリッジに印加された磁場
T:i
pの期間
R
L:負荷ループの磁束フロー抵抗率(なお、負荷ループ抵抗という語句は、本明細書全体にわたって同様の意味で用いられる場合がある)
R
dyn:ブリッジの動的抵抗
i
L:負荷電流
p:B
aが印加されている時間Tの割合。
【0083】
B
aが印加されると、ブリッジ106で磁束フローがトリガされる。この間に負荷に注入された磁束は以下の通りである。
△Φ
on=(I
p−i
L)R
dynpT−i
LR
LpT (2)
【0084】
B
aを取り除くと、負荷は、超伝導ブリッジ106によって短絡される(
図1(b))。超伝導ループから流れる磁束は以下の通りである。
△Φ
off=−i
LR
L(1−p)T (3)
【0085】
したがって、それぞれのi
pサイクル中、超伝導負荷の正味磁束増加は以下のように表現することができる。
△Φ=△Φ
on+△Φ
off=I
pR
dynpT−i
LT(R
dynp+R
L) (4)
【0086】
負荷を充電するプロセス全体と比較して、Tが非常に短時間であることを考慮して、i
pサイクルにおけるi
Lの変動は無視されている。したがって、式(4)は、以下のような微分方程式の形式で記述することができる。
【数2】
式中、Lは負荷インダクタンスである。
【0087】
式(5)の解は以下の通りである。
【数3】
【0088】
式(6)によれば、最終的な負荷電流は、充電回路の電流Ipに比例する。したがって、負荷コイルの磁化は、充電ループ102に誘導された電流の大きさの関数である。それはまた、ブリッジ106に印加された磁場の相対的な位相、動的抵抗、およびBaが印加されている期間の割合の関数でもある。
【0089】
本方法は、Baの値ではなく動的抵抗に依存する。このため、Baを完全に取り除かなくても、Baを調整して動的抵抗も調整するようにすれば十分な場合がある。これらのパラメータを適宜変えることにより、デバイスを用いてコイルの出力電流と、したがって生じる磁場とを変えることができる。
【0090】
したがって、装置は、充電ループ102の電流Ipおよび超伝導ブリッジ106に印加される磁場Baを制御する制御システムを含むことが好ましい。
【0091】
実施形態では、3つの部分からなる超伝導磁束ポンプ装置が提供され、この装置は、超伝導体を含む第1の部分と、超伝導体の磁化を変化させる充電部および/または放電部であって、少なくとも磁場の変化の発生源を含む充電部/放電部を含む第2の部分とを含む。第3の部分は、上述した超伝導体の充電に用いられる駆動電流を提供する。
【0092】
超伝導体は,好ましくはYBCO(イットリウムバリウム銅酸化物)など、いわゆる銅酸化物超伝導体のような高温(T
c)超伝導体を含むことが好ましい。しかしながら、本明細書に記載の方法およびデバイスは、すべての超伝導体、低温超伝導体および高温超伝導体のいずれにも適用される。
【0093】
実験的検証
図2は、本明細書に記載の超伝導回路の実施形態による実験的システムの概略図を示す。
【0094】
この例では、
図2に描かれているように、負荷ループ104は、両端部がはんだで接合された、Superpower製6mm幅YBCOテープ202から巻回されたダブルパンケーキコイルであった。コイルインダクタンスおよび(常伝導)臨界電流は、77Kにおいてそれぞれ0.388mHおよび81Aと測定された。接合抵抗は1.2×10
−7Ωと測定された。充電ループ102は、長さ1mの別の同一タイプのYBCOテープによって形成され、このテープの両端部を負荷ループの超伝導体の一部にはんだで接合した。比率200:2の変圧器212を用いて充電ループ102にi
pを誘導した。1mmの空隙を有する断面が、35×12mmの鉄心を有する36mHの電磁石108によってB
aが生成された。2つの電流ループによって共有されているテープ106は、1mmの空隙の中心に置くことでテープ106の広い表面に垂直にB
aが印加されるようにした。磁場が印加された有効面積は、35×6mm
2であった。YBCOテープは、(10
−4V/m判定基準で)77Kにおいて空隙での(常伝導)臨界電流測定値が123Aであった。Kepco製電源208aによって変圧器212に電力を供給した。別のKepco製電源208bによって電磁石108に電力を供給した。電源はいずれも電流モードで作動した。2個のKepco製電源208a、208bを制御する信号がLabviewソフトウェアによって生成され、NI−USB6002DAQカード210によって出力された。充電ループ電流i
pは、ホール効果(Hall effect)開ループ電流センサ206によって測定した。負荷電流i
Lは、コイルの中心に固定されたホールセンサ(Hall sensor)204によって測定した。印加磁場B
aは、界磁を供給する電流を測定することによりモニタリングした。超伝導システムは、液体窒素(77K)中で作動した。
【0095】
図3は、充電ループ電流i
p、印加磁場B
a、および負荷ループ電流i
Lの、本例では充電の最初の3サイクル中の波形を示す。
【0096】
i
pは、本例では、大きさが約90Aであり、周波数が2Hzであった。B
aは、周波数が20Hzで、0.65Tの大きさであった。各i
pサイクルにおいて、B
aを0.05秒間印加した。
図3から、ブリッジ超伝導体にB
aを印加するたびに負荷ループ104の電流が増加したことが明らかである。
図3の結果は、電流を流しているHTSテープのAC磁場トリガ磁束フローにより、磁束ポンピングが実現可能であることを根本的に証明した。ブリッジ超伝導体の輸送電流i
Bは、2HzのAC成分を有していたが、B
aの継続時間中、極性が変化しなかったことにより、磁束フローは単方向であった。
【0097】
図4は、充電プロセス全体中の電流の波形を示す。それぞれのi
pサイクル中に外部磁場を経験する平均輸送電流はI
B=I
p−i
Lである。
【0098】
充電プロセス中、I
pの値は、この例では74Aのままであった。負荷電流i
Lは、この例では、i
L=57.5(1−e
−t/24)で良好にあてはめることができ、これは式(6)で予測されたものと同じ形式を有する。式(6)に従って計算すると、R
dynは0.131mΩであり、またR
Lは3.73μΩである。また、20Hz、0.65Tの印加磁場でのDC輸送電流下のR
dynの値も測定したところ、測定値は0.106mΩであった。磁束ポンプのR
dynの値は、DC輸送電流条件におけるよりもわずかに大きい。これは、B
aが一時的なものであることにより、
図3の中央部に示されるように、実際の周波数が20Hz〜30Hzになったためである。ビーンモデルを用いて計算したR
dynの値は0.044mΩであり、それは、ブリッジ超伝導体の磁場臨界電流依存性が原因で0.106mΩの半分未満である。
【0099】
しかしながら、R
Lの値は、1.2×10
−7Ωの接合抵抗よりもはるかに大きい。この現象を理解するために、△Φ
onおよび△Φ
offが式2および式3に従って負荷電流波形から抽出される。
【0100】
図5aは、平均的なブリッジ電流と比較した、各i
pサイクルにおいて負荷に注入され、負荷で消費された磁束である。
【0101】
図5(a)に示されるように、各i
pサイクルにおいて、△Φ
onはI
Bにほぼ比例し、それは、R
dynが充電プロセス中に一定であることを示す。R
dynがR
Lよりもはるかに大きいため、その値は、およそ△Φ
on/I
BpT=0.129mΩによって計算することができ、それは式(6)によって計算された値0.131mΩに近い。−△Φ
offは、初めは非常に小さい値にとどまっていたが、i
pサイクルが50回を超えると急速に増加した。各i
pサイクルにおけるR
Lは、−△Φ
offおよびi
Lを用いて式(3)によって計算される。
図5bは、サイクル回数に対する負荷ループ抵抗の瞬時値を示す。
図5(b)に示されるように、i
pサイクルが50回を超えると、50回目のi
pサイクル後にi
Lが35Aを超過したため、R
Lが0.4μΩから安定した値約4μΩまで急激に増加した。
【0102】
上記で概説したように、第2種超伝導体またはHTS超伝導体のような超伝導体は、電流が流れているときに同時に磁場が印加されると抵抗を示すことになる。
【0103】
本明細書に記載の実施形態は、3つの部分、すなわち電流変圧器と、超伝導コイルと、ブリッジとを含む変圧器超伝導磁束ポンプとして用いることができる。
【0104】
図6は、本明細書に記載の実施形態による変圧器超伝導磁束ポンプの概略図を示す。
【0105】
本例では、電流変圧器の一次側は、巻き数が約200回の銅線で構成されている。一次側は、AC電流源によって励起される。電流変圧器の二次側は、超伝導テープであり、このテープは、数回巻かれている(1回の巻回数で十分な場合もある)。
図6に示されるように、二次側の両端部は、負荷コイルのテープの一部にはんだで接合されている。超伝導負荷は、閉ループコイルであり、両端部がはんだで接合された超伝導テープで構成されている。2つのはんだ接合個所間のテープは、超伝導ブリッジとして機能する。このブリッジに制御可能な磁場が印加される。
【0106】
以下の表は、本例において用いられる実験的システムのパラメータを示す。
【0108】
二次コイルに通電し、ブリッジを動作させる時間系列を制御することが重要である。ブリッジに磁場が印加されないとき、ブリッジは超伝導である。AC磁場がブリッジテープの表面に垂直に印加されると、ブリッジは抵抗を示す。そのため、二次コイルの電流がブリッジに流れており、同時に、ブリッジが抵抗を示せばブリッジにわたって電圧が生じることになり、これにより超伝導負荷を通電することになる。二次側のAC電流がプラスである(またはより厳密に言えば、ある正の値よりも大きい)ときにブリッジがオンであり(抵抗を示し)、そうでないときにオフである(超伝導である)ように、ブリッジを制御すれば、ブリッジにわたって疑似DC電圧成分が得られることで、最終的に閉じた負荷コイルに磁束(電流)をポンピングすることになる。
【0109】
図7は、本例において
図6に示されているシステムを動作させるために用いられる磁場および電流の時間系列を示す。
【0110】
本例では、一次電流と二次電流とは同期している。ブリッジ磁場は、本例では、一次電流の符号がプラスであり、ゼロを上回っている間隔中、一次電流の周波数と比較してより高周波数で印加されている。
図7の最下部に示されているブリッジ電圧は、ブリッジ磁場が印加されている期間中、ゼロを超えて一定している。平均ブリッジ電圧は
図7の最下部に示されている。
【0111】
図8は、
図7に示されている例示的なシーケンスを用いて制御され、測定されるような二次電流および印加ブリッジ磁場の波形を示す。
【0112】
実験において制御可能な変数には、例えば、二次電流の大きさ、二次電流の周波数、ブリッジ磁場の大きさ、ブリッジ磁場の周波数、ブリッジ磁場の継続時間、および二次電流とブリッジ磁場との間の相対的な位相が含まれる。これらのパラメータを変えることにより、最適化されたポンピング性能を実現することができる。
【0113】
図9は、負荷ループ電流に及ぼすブリッジ磁場の強度の影響を示し、ブリッジに印加された様々な磁場について、時間に対してグラフ化されている。
【0114】
本例では、ブリッジ磁場周波数は20Hzに設定され、二次電流周波数は2Hz、二次電流の大きさはおよそ140A、ブリッジ磁場の継続時間は二次電流波形の周期の10%であり、かつ二次電流と同相である。ブリッジ磁場の強度は0.29T〜0.66Tで変動する。
【0115】
得られた負荷ループ電流は、時間が経過するにつれて増加し、測定が行われた最初の200秒〜250秒の期間中、ブリッジに印加された磁場が大きいほど大きくなっていることがわかる。ブリッジに印加された磁場0.66Tについて、ほぼ60Aの負荷ループ電流が得られる。
【0116】
ブリッジに印加された磁場に応じて、これらの例では、およそ100秒〜200秒の期間を過ぎると負荷ループ電流は横ばいになる。
【0117】
図10は、負荷ループ電流に及ぼすブリッジ磁場周波数の影響を示し、様々なブリッジ磁場周波数について、時間に対してグラフ化されている。
【0118】
本例では、二次電流周波数は2Hz、二次電流の大きさはおよそ140A、ブリッジ磁場継続時間は二次電流波形の周期の10%である。ブリッジ磁場の強度は0.66Tである。ブリッジ磁場周波数は、本例では、10Hz〜40Hzで変動する。
【0119】
図からわかるように、負荷ループ電流は、時間が経過するにつれて増加し、測定が行われた最初の150秒〜250秒の期間中、ブリッジ磁場周波数が大きくなるほど増加している。ブリッジ磁場周波数40Hzについて、本例では、最初のほぼ100秒の時間間隔中、負荷ループ電流はほぼ60Aまで増加した。
【0120】
図11は、負荷ループ電流に及ぼす二次電流の大きさの影響を示し、様々な二次電流について、時間に対してグラフ化されている。
【0121】
本例では、ブリッジ磁場周波数は40Hzに設定され、また二次電流周波数は2Hzである。ブリッジ磁場の継続時間は二次電流波形の周期の10%であり、かつ二次電流と同相である。ブリッジ磁場の強度は0.49Tである。二次電流の大きさは、本例では、103A〜154Aで変動する。
【0122】
図からわかるように、ポンプ速度は二次電流の大きさに比例しているが、負荷ループ電流は二次電流の大きさに比例していない。これは、二次電流によりブリッジに損失が生じ、これが負荷電流の減衰をもたらしているからである。
【0123】
図12は、負荷ループ電流に及ぼす二次電流周波数の影響を示し、様々な二次電流周波数について、時間に対してグラフ化されている。
【0124】
本例では、ブリッジ磁場周波数は80Hzに設定され、また磁場の強さは0.25Tである。ブリッジ磁場の継続時間は二次電流波形の周期の10%であり、かつ二次電流と同相である。二次電流の大きさは137Aである。二次電流周波数は、本例では、2Hz〜8Hzで変動する。
【0125】
図からわかるように、負荷ループ電流は、時間が経過するにつれて増加し、測定が行われた最初のおよそ150秒の期間中、二次電流周波数が小さくなるほど増加している。
【0126】
二次電流によって引き起こされたAC損失がブリッジに生じている。本例では、8Hzの二次電流周波数に対して80Hzのブリッジ磁場周波数を用いているため、振動を得るために二次電流および磁場を同相に保つことは、低周波数、例えば2Hzの二次電流周波数の場合よりもさらに困難である。
【0127】
これらの例では、継続時間が二次電流波形の周期の10%であるブリッジ磁場は、継続時間が二次電流波形の周期の20%のリッジ磁場よりもポンピング性能が優れていることがわかった。ポンピング性能は、二次電流の波形自体によってさらに決まる場合がある。これらの例では、印加ブリッジ磁場および二次電流が(
図8に示されているような)同相であるとき、磁束のポンピング性能が向上した。
【0128】
計算
以下の計算は
図13に関する。この図は、本明細書に記載の実施形態による磁束ポンプの等価回路を簡略化して概略図を示す。
【0129】
ブリッジがオン状態であるときに損失がなく、かつ電流変圧器が十分に強力であり(ブリッジがオンであるときおよびブリッジがオフであるときに二次電流が一次電流に比例し)、かつ等価ブリッジ抵抗R
effに平均二次電流Iが印加されると仮定すると、以下の通りである。
【数4】
【0130】
式(7)から、時定数はL
coilに比例し、R
effに反比例する。また、最終的な負荷電流は、(Iが(常伝導)臨界電流を超過していなければ)Iに近似している。
【数5】
式中、Sはブリッジの面積であり、fはブリッジ磁場周波数であり、B
aはブリッジ磁場の強さであり、また、Pはブリッジがオンのときの継続時間である。標準的な値S=2.4*10
−4、f=30、I
c0=180、(B
a+B
a2/B
0)=3、p=0.1の場合、Rは1.6*10
−5オームと計算される。
【0131】
I=100Aと仮定すると、当初、ポンピング速度は2.4*10
−3/L
coilA/sである。1mHのコイルでは、ポンピング速度は約2.4A/sである。
【0132】
ブリッジの面積、磁場の強さ、磁場周波数、および/または印加磁場の継続時間を増やすことにより、性能を向上させることができる。
【0133】
ブリッジ抵抗は、ポンピング速度および最終的な負荷電流にとって重要であることが示された。抵抗値が大きいほど高速のポンピング速度を実現し得る。以下の要因が抵抗値に影響を及ぼす場合がある。それらは、印加磁場の強度、周波数、および印加磁場の継続時間である。
【0134】
二次電流の大きさは、磁束ポンピングでも重要な役割を果たす場合がある。必ずしも二次電流が大きい方が良いとは限らない。その理由は、二次電流が大き過ぎるために、ブリッジにかなりの損失が生じる場合があり、これにより負荷電流の減衰が起こり得るからである。
【0135】
相対的な低周波(およそ1Hz未満)が原因で電流変圧器が飽和していない限り、二次電流周波数がポンピング性能に及ぼす影響は軽微である。
【0136】
二次電流および印加磁場の電流ノイズが大き過ぎると、ブリッジに大きいAC損失を生じる場合があり、これは最小限に抑えなければならない。
【0137】
超伝導体
好適な超伝導体は、高温超伝導体、例えばYBCOのような銅酸化物などであるが、これは薄膜、厚膜、テープ、電線としてまたはバルク材料として調製することができる。銅酸化物は、T
c(臨界温度)が比較的高く、高磁場を捕捉することができるが、原則として、任意の第2種超伝導体を用いてもよい。本明細書で用いられる場合、高温超伝導体は、超伝導転移温度T
cが30K(BCS理論によって認められた理論的最大値)を超える超伝導体、好ましくは77K以上の超伝導体とすることができる。
【0138】
イットリウムが、例えばガドリニウムまたはルビジウムのような他の希土類に置き換えられているYBCOの変形物がある(これらは一般にReBCOと呼ばれる)。他の候補としては、2212もしくは2223のいずれかの形式のBSCCO、または非常に安価でありながら、T
cが低い(30ケルビン台半ば)という長所がある二ホウ化マグネシウム(MgB2)でもよい。使用できる材料が他にもいろいろあり、例えばランタニド、または水銀もしくはタリウム系化合物であるが、これらに限定されない。
【0139】
有機超伝導体として記述することが可能な多数の材料も存在する。これらには、例えば、いずれも例えばKappa−BEDT−TTF
2X、lambda−BETS
2Xおよび黒鉛層間化合物などの準1次元および準2次元材料であるBechgaard塩およびFabre塩、ならびに例えばアルカリドープされたフラーレン(fullerene)などの3次元材料が含まれる。
【0140】
銅酸化物の候補のリストは、Hott,Roland;Kleiner,Reinhold;Wolf,Thomasらの“Superconducting materials−a topical overview”(2004−08−10)oai:arXiv.org:cond−mat/0408212に見出すことができる。それらは、高温超伝導ファミリー、例えばBi−HTS(Bi−m
2(n−1)n,BSCCO);T1−HTS(T1−m
2(n−1)n,TBCCO);Hg−HTS(Hg−m
2(n−1)n,HBCCO);Au−HTS(Au−m
2(n−1)n);123−HTS(RE−123,RBCO);Cu−HTS(Cu−m
2(n−1)n);Ru−HTS(Ru−1212);B−HTS(B−m
2(n−1)n);214−HTS(LSCO“0202”);(電子ドープされたHTS PCCO NCCO);(“02(n−1)n”);無限層HTS(電子ドープされたI.L.)を含む。
【実施例】
【0141】
ここで、E−J曲線の磁束フロー領域に駆動されるHTS、例えばHTS被覆導体(HTS CC)を用いることが(必須ではないが)好ましいシステムの実施形態のいくつかのさらなる例について説明する。
【0142】
図14aを参照する。様々な磁場が、超伝導分岐abを含むループに印加されている。ループを循環する交流電流i(t)が磁場によって誘導されている。磁場は、ループの抵抗およびインダクタンスならびに印加磁場の変化速度を考慮に入れて、i(t)のDC成分がゼロである間、i(t)が非対称であるように変えることができる。(後述する変圧器による駆動の場合、これは、単に電流波形が非対称である一次側を駆動するのみである)。分岐abのV−I曲線および循環電流i(t)の波形は、
図14bでともにグラフ化されている。i(t)の負のピーク値は分岐abの磁束フロー臨界電流よりも小さい。したがって、電圧は分岐abにわたって誘導されない。しかしながら、正の半サイクルでは、そのピーク値は、分岐の磁束フロー臨界電流を超過する。正のピーク前後の短期間で超伝導体はこのように磁束フロー領域に駆動される。したがって、それぞれのサイクル中に正味磁束が分岐abにわたって流れており、分岐abにわたるdc電圧はゼロではない。超伝導負荷インダクタが分岐abに接続されているのであれば、徐々に充電されることになる。
【0143】
図2に戻って参照すると、前述したように、ac磁場を印加することに加えてまたは印加することに代えて、超伝導接続部(ブリッジ)を磁束フローレジームに駆動することができる。このように、超伝導接続部(ブリッジ)は、超伝導にとどまりながら(すなわち、絶対に常伝導になることなく)、実質的にゼロの抵抗状態と抵抗性状態との間で制御することができる。したがって、例示的な一実施形態では、(
図2に示されているような)対称形の駆動波形を用いるのではなく、非対称形の駆動波形を用いて、変圧器の二次巻線に非対称形の電流を生成することができる。
【0144】
これは、磁束ポンプシステムの等価回路を示す
図15に概略的に描かれており、図では、R
jは接合抵抗を表示し、R
Bはブリッジ超伝導体の磁束フロー抵抗を表示する。また、R
Lは、(接合抵抗損失および他の損失を含む)負荷ループの等価抵抗であり、Lは、負荷インダクタンスである。ブリッジインダクタンスは、小さ過ぎるために考慮に入れない。したがって、ここで、R
Bの源は、高T
c超伝導体内の磁束フローである。磁束フロー方向も回路に示されている。接合抵抗R
jは、二次巻線のあらゆる直流電流成分を減衰させるのに重要である(そうでない場合、変圧器の鉄心が飽和する可能性がある)。1つの実験では、合計接合抵抗はR
j=10μΩであると推定された。好適な実施形態では、ブリッジの電流容量は二次/負荷巻線よりも小さい。二次電流i
2(先にi
pとも呼ばれていた)がブリッジの磁束フロー臨界電流を超過すると、磁束がブリッジを介して負荷(L)へ流れる。
【0145】
図16を参照すると、これは、1つの好適なブリッジ構造1600の一例の横断面(左側の図)および縦断面(右側の図)を示す。本例の構造は、フェライト磁心1604上に巻回されたHTS被覆導体のコイル、例えば、超伝導テープを含む。任意選択的に、同軸のフェライトシリンダが磁心およびテープを包囲し、フェライト磁心とフェライトシリンダとの間に、HTS導体への表面に対して垂直に放射状に延びる磁場が存在するようにしてもよい。
【0146】
実験的システムの一例では、100:1変圧器を用いて二次巻線に大規模な交流電流を誘導した。二次巻線は、合計臨界電流が360Aの並列YBCOテープで作られたものである。二次巻線の両端部が別のYBCOテープを介してはんだで接合され、ブリッジを形成した。ブリッジの長さは10cmであり、ブリッジの臨界電流は180Aであった。ブリッジは、YBCOのダブルパンケーキ負荷コイルを短絡するためにも用いられた。コイルのインダクタンスは0.388mHであった。また、コイルの臨界電流は81Aであった。(これらの臨界電流値は、E
0=10
−4V/mの基準で77kの温度において測定された)。超伝導システム全体を液体窒素(LN
2)に浸漬した。
【0147】
KEPCO製BOP 2020電力増幅器により、変圧器の一次巻線に電力を供給した。KEPCOは、LabVIEWからプログラム可能な出力アナログ信号を有するNI−USB 6002データ収集カードによって制御された。KEPCOは、出力電流が入力信号に比例する電流モードで作動した。このように、いかなる所望の一次電流でも生成することができる。一次電流i
1は、0.5オームの抵抗器を介して測定され、二次電流i
2は、開ループホール効果電流センサによってモニタリングされ、負荷電流i
Lは、負荷コイルの中心に固定された事前に較正されたホールセンサによって測定された。アナログ信号は、すべて400HzのサンプリングレートでNI−USB 6002カードによってサンプリングされた。負荷電流データは、5つの連続したサンプルごとに平均化することによりフィルタリングされた。
【0148】
一次電流の設定および充電の詳細
1つの実験では、一次電流i
1として交流三角波信号を用いた。i
1が正である期間中、i
1は、一定の割合でピーク値I
1ppまで増加し、その後、同じ割合でゼロまで減少する。i
1が負である期間中、i
1は、負のピーク値−I
1npまで減少し、その後、同じ割合でゼロまで再び増加する。負の期間の長さに対して正の期間の長さがI
1pp/I
1npに反比例することにより、i
1のdc成分がゼロに等しくなる。すなわち、以下の通りである。
【数6】
【0149】
制御可能なパラメータには、電流の正のピーク値I
1pp、負のピーク−I
1np、および電流の周波数fが含まれる。
図17は、同じピーク値を有するが、周波数が異なる(f=0.5Hzおよびf=2Hz)2つの一次電流波形を示す。
【0150】
図18は、ブリッジ電流i
Bの波形および負荷電流i
Lの波形の詳細を示す。磁束フロー臨界電流i
cは破線で表示されている。i
Bの正のピーク電流は約250Aであり、i
Bの負のピーク値はおよそ100Aである。ブリッジ超伝導体i
cの磁束フロー臨界電流は、180Aであり、正のピーク値と負のピーク値との中間である。
図18からわかるように、ブリッジ電流がi
cを超過する周期ごとに、負荷電流が約3A分だけ増加している。i
Bサイクルの残りの期間中、負荷電流はほとんど安定した状態のままである。ブリッジにわたる平均電圧は、以下のように表現することができる。
【数7】
式中、T
ffは、ブリッジ超伝導体が各電流サイクルの磁束フロー領域にある継続時間(
図18では約0.1秒)を表し、△i
Lは各サイクルの電流増加を表示し、電流増加は3Aであると推定される。Lは負荷のインダクタンスであり、この実験では0.388mHであった。
【0151】
上記値から、電圧Vは11.64mVであると推定され、このとき、電界は1.16mV/cmであると計算される。この電界は、同じ電流を流す並列の銅層の電界よりもはるかに小さく、したがって超伝導体が常伝導状態からかけ離れていることがわかる。
【0152】
様々な大きさの一次電流下における負荷電流
理想的な変圧器では、二次電流i
2は一次電流i
1に常に比例する。しかしながら、現実の変圧器では、負荷インピーダンスが高い場合、出力電圧は、二次電流が一次電流に追従することができないと限界に達する場合がある。ブリッジ抵抗は、元来、一次電流に依存するため、本節では、一次電流の大きさが負荷電流に及ぼす影響について考察する。
【0153】
一次電流I
1ppの正のピークが低過ぎてブリッジ電圧が限界に達しない場合、二次電流は100:1の比率で一次電流に比例する。
図19は、充電プロセス中の充電曲線、より詳細にはブリッジ電流i
Bの波形および負荷電流i
Lを示す。一次電流が低いことで、ブリッジ電流i
Bが、負荷電流が増加するにつれて減少するようになっている。負荷電流は、コイルの臨界電流に到達せず、ブリッジ電流の正のピーク値がブリッジの磁束フロー臨界電流にほぼ等しいレベルで安定する。
【0154】
充電プロセスの開始時、負荷電流i
Lがゼロであるため、二次電流i
2はブリッジ電流i
Bに等しい。i
Lが増加するにつれて、i
Bは徐々に反対方向に偏っていく。この場合、ブリッジdc電圧は、負荷電流の増加につれて低下する。したがって、負荷電流は、一次回路の充電曲線に類似した曲線を有する。I
1ppが低過ぎてブリッジを磁束フロー領域に駆動することができないと、負荷電流は負荷コイルの臨界電流よりも低い値で飽和する傾向がある。
【0155】
対照的に、一次電流レベルが高過ぎると、ブリッジ電圧は限界に達する。これは、各サイクルのブリッジdc電圧がほぼ一定のままであることを意味する。この場合、
図20に示されるように、ブリッジ電流の正のピーク値は、全充電プロセス中、実質的に一定のままである。より詳細には、
図20は、充電プロセス中のブリッジ電流i
Bの波形および負荷電流i
Lを示す。一次電流が高いことで、充電プロセス中、ブリッジ電圧が変圧器の容量によって制限されるようになっている。負荷電流曲線は、負荷コイルの臨界電流に達するまでほぼ直線である。それぞれのサイクル中に負荷電流が同じ割合で増加し、したがって、負荷電流は、負荷コイルの電流、本例では81Aに達するまでほぼ直線である。一次電流が高いか低いかにかかわらず、ブリッジ電流の負のピーク値(絶対値)は、負荷電流の増加につれて増加することに留意されたい。本例では、負荷コイル臨界電流は81Aであり、また、ブリッジの磁束フロー臨界電流は180Aであった。ブリッジ電流の負のピーク値が180Aを超過しないようにするために、二次電流の負のピーク値は、99A未満でなければならない。
図20は、負荷電流が臨界値に達している場合を示し、図では、ブリッジ電流の負のピーク値はブリッジの磁束フロー臨界電流に達している。
【0156】
図21は、様々な大きさ(一次電流I
1ppの正のピーク値)の一次電流下における負荷電流曲線を示す。すべての場合で一次電流I
1npの負のピーク値は1Aに設定された。一次電流の周波数は0.5Hzであった。
【0157】
様々な周波数の一次電流下における負荷電流
ここで、充電性能の周波数依存性について検討する。各測定中、一次電流の形状は固定されていた。一次電流の周波数は0.5Hz〜16Hzで変動した。一次電流の波形は
図17に示されており、図ではI
1np=1A、I
1pp=3.3Aである。
【0158】
図22は、様々な周波数の一次電流についての負荷電流曲線を示すが、この図から、負荷電流はすべて負荷コイルの臨界電流あたりで飽和しているが、飽和するまでの時間が若干異なっていることがわかる。充電が最も速いのは0.5Hzの波形であり、その次に1Hzの場合が続き、他の曲線はほぼ重なり合っている。理論上、ブリッジ超伝導体のv−i関係が電流周波数に依存しない場合、曲線はすべて重なり合うはずである。これは、一次電流の波形が周波数を除いて同じであるため、それは、負荷への磁束フローの量が同じ期間中に同じはずであることを意味する。しかしながら、実際には、ブリッジ超伝導体のv−i関係は温度に依存する。時間周期P中の磁束フローは、以下のように表すことができる。
【数8】
式中、Φは負荷への磁束フローであり、v(i,T)は、ブリッジ電流iおよび温度Tに依存する瞬間ブリッジ電圧を表示し、時間周期Pは、2秒の倍数(周期が0.5Hzの信号)である。それぞれのacサイクル中、超伝導体が磁束フロー領域にあるとき、周波数の低い方が連続時間が長くなり、したがってブリッジに熱が蓄積して、温度上昇を引き起こし易いことが理解できる(これは、ブリッジ超伝導体が77Kでブリッジのac電流のピーク値と同じ大きさのdc電流を流すことができないためである)。温度上昇は、磁束フローを促進し、v−i曲線をシフトさせる。したがって、周波数が低いほど、Φについての上記式の積分値が大きくなり、磁束のポンピングが速くなる。
【0159】
これまで説明した磁束ポンプの実施形態は、磁束ポンピングを実現するために単一の変圧器のみを必要とする。極低温システムの外部に変圧器の一次巻線および鉄心を配置することは難しくないため、このようにして損失を大幅に低減することができる。磁束ポンプの実施形態は、大型磁石の電流を高速でポンピングするのに特に適している。この磁束ポンプのポンピング速度の主な制限は、変圧器の容量である。
【0160】
それにもかかわらず、ブリッジ超伝導体のV−I曲線が急であるために、ブリッジ電流の少量のノイズがブリッジ電圧に大きい誤差を誘発し、磁場安定性に影響を及ぼす可能性があるため、ブリッジ電圧を効果的に制御することが困難な場合がある。この問題に対処するために、磁束フロー抵抗および(印加されたac磁場によって誘導された)動的抵抗の両方の組み合わせに基づいて磁束ポンプを動作させることができる。より具体的には、このようなアプローチの実施形態では、超伝導ブリッジ/接続部の制御は、負荷電流/磁場の最初の上昇中、(電流を制御してブリッジ/接続部を磁束フローレジームへ駆動する)磁束フロー抵抗を用いることができ、次に動的抵抗(印加磁場)によって超伝導ブリッジ/接続部を制御して、このように実現された(最終的な)磁場を調整/安定化することができる。
【0161】
簡単に言えば、HTS磁束ポンプについて説明してきた。それは、いくつかの実施形態では、1個のHTS(例えば、YBCO)被覆導体(ブリッジ)によって短絡された超伝導二次巻線を有する変圧器を含む。変圧器は、正のピーク値が負のピーク値よりもはるかに大きい高二次電流を生成する。それぞれのサイクル中、二次電流の正のピーク付近でブリッジ超伝導体は(超伝導)磁束フロー領域に駆動される。サイクルの残りの間、ブリッジは、実質的にゼロの抵抗を有する。次に、磁束が負荷に蓄積される。その性能は、一次電流の大きさに依存し、電流周波数にそれほど依存しない。したがって、負荷電流は臨界値まで容易に充電することができる。
【0162】
したがって、これまで説明してきたシステムのいくつかの実施形態は、高T
c超伝導体をE−J曲線の磁束フロー領域に駆動することにより、HTS磁束ポンプを提供する。磁束ポンプの実施形態は、HTS(例えば、YBCO)被覆導体ブリッジによって短絡された超伝導二次巻線を有する変圧器を含む。正のピーク値が負のピーク値よりも(はるかに)大きい、(比較的大きい)交流電流が二次巻線に誘導される。電流は、その正のピーク値付近でのみ、磁束フロー領域にブリッジ超伝導体を駆動する結果、磁束ポンピングが生じる。
【0163】
上述したシステムのいくつかの好適な実施形態は、全体にわたって(すなわち変圧器の二次側で)、HTSを使用する。しかしながら、変圧器ループは、超伝導である必要はなく、原則として、ブリッジは、MOSFETまたはGAN FETのような切り替え可能な電子デバイスを用いることも可能であろう。HTSが変圧器ループに好適であるが、第2種超伝導体を用いることも可能であろう。当業者であればわかるように、負荷ループ、すなわち充電された超伝導コイルは、任意の種類の超伝導体とすることが可能である。
【0164】
当然のことながら、当業者には多くの他の有効な代替形態が想到されるであろう。本発明は、説明された実施形態に限定されず、また当業者に明らかであり、かつ本明細書に添付された特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある修正形態を包含することを理解されたい。