特許第6825101号(P6825101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6825101PERC両面受光型太陽電池の製造方法及びその専用装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825101
(24)【登録日】2021年1月15日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】PERC両面受光型太陽電池の製造方法及びその専用装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0216 20140101AFI20210121BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20210121BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20210121BHJP
【FI】
   H01L31/04 240
   H01L31/04 420
   H01L31/06 300
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-525907(P2019-525907)
(86)(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公表番号】特表2020-506529(P2020-506529A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(86)【国際出願番号】CN2017086030
(87)【国際公開番号】WO2018209729
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】201710353392.3
(32)【優先日】2017年5月18日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519166279
【氏名又は名称】広東愛旭科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG AIKO SOLAR ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】517358085
【氏名又は名称】浙江愛旭太陽能科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG AIKO SOLAR ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】方結彬
(72)【発明者】
【氏名】林綱正
(72)【発明者】
【氏名】頼俊文
(72)【発明者】
【氏名】何乃林
(72)【発明者】
【氏名】殷文杰
(72)【発明者】
【氏名】何達能
(72)【発明者】
【氏名】陳剛
【審査官】 小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第206015086(CN,U)
【文献】 中国実用新案第204558431(CN,U)
【文献】 登録実用新案第3190982(JP,U)
【文献】 特表2016−523452(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103904158(CN,A)
【文献】 Thorsten Dullweber et al.,"PERC+: industrial PERC solar cells with rear Al grid enabling bifaciality and reduced Al paste consumption",Progress in Photovoltaics: Research and Applications,2016年,Vol.24,pp.1487-1498
【文献】 Hong Yang et al.,"Industrail technology of passivated emitter and rear cells with silicon oxynitride and silicon nitride as rear passivation for high efficiency BIPV modules",Energy Procedia,2016年,Vol.88,pp.389-393
【文献】 Enyu Wang et al.,"Industrial applications of a novel technology for commercial multicrystalline silicon solar cells",Proceedings of 2015 IEEE 42nd Photovoltaic Specialist Conference (PVSC),2015年,pp.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/02−31/078
H01L31/18−31/20
H01L51/42−51/48
H02S10/00−10/40
H02S30/00−99/00
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面銀バスバーと、アルミニウムグリッド線と、裏面複合膜と、P型シリコンと、N型エミッタと、前面パッシベーション膜と、前面銀電極とを含み、前記裏面複合膜と、P型シリコンと、N型エミッタと、前面パッシベーション膜と、前面銀電極とはこの順に下から上に積層され接合したPERC両面受光型太陽電池の製造方法であって、
P型シリコンであるシリコンウェハーの前面及び裏面にテクスチャ構造を形成する工程(1)と、
N型エミッタを形成するように、シリコンウェハーの前面に拡散処理を施す工程(2)と、
拡散処理時に形成されたりんけい酸ガラスと周辺のPN接合とを除去し、裏面のエッチング深さが3〜6μmになるようにシリコンウェハーの裏面を研磨する工程(3)と、
アニーリング温度:600〜820℃、窒素流量:1〜15L/分、酸素流量:0.1〜6L/分という条件で、シリコンウェハーに対してアニーリング処理を行う工程(4)と、
管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程(5)であって、
TMAのガス流量250〜500sccm、TMAとNOの比1:15〜1:25、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量50〜200sccm、シランと笑気ガスの比1:10〜1:80、アンモニアガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力4000〜6000wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量500〜1000sccm、シランとアンモニアガスの比1:6〜1:15、窒化ケイ素の堆積温度390〜410℃、時間100〜400秒、プラズマ出力10000〜13000wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることと、を含み、
前記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備えており、前記管型PECVD装置において、グラファイトボートによってシリコンウェハーを着脱し、前記グラファイトボートにおいて、係合凹溝部の深さは0.6〜0.8mmであり、係合ベース部の直径は6〜15mmであり、係合キャップ部の斜面の角度は35〜45度であり、係合キャップ部の厚みは1〜1.3mmである工程(5)と、
シリコンウェハーの前面にパッシベーション膜を堆積させる工程(6)と、
レーザー波長532nm、レーザー出力14w以上、レーザースクライブ速度12m/秒以上、周波数500KHz以上という条件で、シリコンウェハーの裏面複合膜にレーザーグルービングする工程(7)と、
シリコンウェハーの裏面に、裏面銀バスバーのペーストを印刷して乾燥させる工程(8)と、
裏面銀バスバーに対して垂直に裏面銀バスバーと接続するように、レーザーグルービング領域にアルミニウムペーストを印刷する工程(9)と、
シリコンウェハーの前面に前面電極ペーストを印刷する工程(10)と、
シリコンウェハーを高温で焼結することにより、裏面銀バスバーとアルミニウムグリッド線と前面銀電極とを形成する工程(11)と、
PERC両面受光型太陽電池の完成品を製造するように、シリコンウェハーに対して、LIDを抑制するためのアニーリング処理を施す工程(12)と、を含有する、ことを特徴とするPERC両面受光型太陽電池の製造方法。
【請求項2】
管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程は、
TMAのガス流量250〜500sccm、TMAとNOの比1:15〜1:25、酸化アルミニウム膜の堆積温度250〜300℃、時間50〜300秒、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量50〜200sccm、シランと笑気ガスの比1:10〜1:80、アンモニアガスの流量0.1〜5slm、酸窒化ケイ素膜の堆積温度350〜410℃、時間50〜200秒、プラズマ出力4000〜6000wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量500〜1000sccm、シランとアンモニアガスの比1:6〜1:15、窒化ケイ素膜の堆積温度390〜410℃、時間100〜400秒、プラズマ出力10000〜13000wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
裏面銀バスバーと、アルミニウムグリッド線と、裏面複合膜と、P型シリコンと、N型エミッタと、前面パッシベーション膜と、前面銀電極とを含み、前記裏面複合膜と、P型シリコンと、N型エミッタと、前面パッシベーション膜と、前面銀電極とはこの順に下から上に積層され接合したPERC両面受光型太陽電池を製造するための専用装置であって、前記専用装置は管型PECVD装置であり、前記管型PECVD装置は、ウエハー載置領域と、炉体と、特殊ガスキャビネットと、真空システムと、制御システムと、グラファイトボートとを備え、前記特殊ガスキャビネットは、シランを導入するための第1のガスラインと、アンモニアガスを導入するための第2のガスラインと、トリメチルアルミニウムを導入するための第3のガスラインと、笑気ガスを導入するための第4のガスラインとを備え、
前記グラファイトボートは、シリコンウェハーの着脱に用いられ、係合軸部と係合キャップ部と係合ベース部とを備える係合部を有し、前記係合軸部は係合ベース部に取り付けられ、前記係合キャップ部は係合軸部と接合し、前記係合軸部と係合キャップ部及び係合ベース部との間に係合凹溝部が形成され、前記係合凹溝部の深さは0.6〜0.8mmであり、係合ベース部の直径は6〜15mmであり、係合キャップ部の斜面の角度は35〜45度であり、係合キャップ部の厚みは1〜1.3mmである、ことを特徴とするPERC両面受光型太陽電池を製造するための専用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、特に管型(tubular)PERC両面受光型太陽電池、管型PERC両面受光型太陽電池の製造方法、及びその専用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコン系太陽電池は、太陽放射エネルギーを効果的に吸収し、光起電力効果によって光エネルギーを電力に変換する装置である。太陽光が半導体のPN接合に照射されると、新たな電子−正孔対が形成され、PN接合の電界により、正孔がN型領域からP型領域へ移動するとともに、電子がP型領域からN型領域へ移動する。そして、回路を連通すると、電流が形成されることになる。
【0003】
従来の結晶シリコン系太陽電池には、基本的に、前面(front)のみに対してパッシベーション処理を施す。すなわち、PECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition、プラズマ促進化学気相堆積)法によって、シリコンウェハーの前面に、窒化ケイ素層を形成させることで、少数キャリアの前面での再結合速度を下げるとともに、結晶シリコン系電池の開放電圧と短絡電流を大幅に引き上げることができ、これにより、結晶シリコン太陽電池の光電変換効率が向上する。
【0004】
結晶シリコン系太陽電池の光電変換効率に対する要求が高まるにつれて、裏面パッシベーション型(Passivated Emitter and Rear Cell、以下PERCという)太陽電池の研究が始まった。現在、裏面にコーティング膜を形成するために板型PECVD(plate PECVD)法を使用するのが主流になり、板型PECVD装置は、それぞれ1枚のコーティング膜が形成される異なるチャンバーで構成されている。そのため、板型PECVD法を使用する場合、装置が決まると、複合膜の層数も決まるので、複合膜の組み合わせを柔軟に調整することができず、裏面の膜の不動態化処理(パッシベーション処理)の効果を最適化することができず、それにより電池の光電変換効率が制限される欠点がある。同時に、板型PECVD法においては、間接プラズマ法が使用されるため、膜のパッシベーション処理の効果は望ましくない。また、板型PECVD法には、稼働時間(uptime)が短く、メンテナンス時間が長いという欠点もあるため、生産性と生産量に支障が生じる。
【0005】
本発明では、管型PECVD技術を使用することで、シリコンウェハーの裏面に複合膜を堆積させて、高効率のPERC両面受光型太陽電池を製造する。管型PECVD技術においては、直接プラズマ法が使用されるので、複合膜の組み合わせや構成を柔軟に調整することができ、膜のパッシベーション処理の効果が良好になり、PERC太陽電池の光電転換効率を大幅に向上させることができる。また、管型PECVD技術を使用する場合、優れたパッシベーション性能と生産プロセスの柔軟性が得られることにより、酸化アルミニウム膜の厚さを低減し、TMA(トリメチルアルミニウム)の消費量を減らすことができ、同時に、メンテナンスが容易になり、稼働時間が長くなる。以上の各方面からわかるように、板型PECVD技術と比較すると、管型PECVD技術は、高性能PERC電池の製造にかけて、顕著な総合的コスト上の優位性を持つ。
【0006】
しかしながら、管型PECVD技術には、オーバーフローコーティングと掻き傷が互いに制約するという課題があるため、外観上及びEL検査上の歩留まりが低く、上記技術による大規模な量産に影響を与える。
【0007】
管型PECVDコーティング装置は、シリコンウェハーをグラファイトボートに挿入し、次にグラファイトボートを石英チューブに供給することによってコーティング膜を堆積させるものである。シリコンウェハーは、一方の面がグラファイトボートの壁と接触するとともに、他方の面に膜が堆積されるように、グラファイトボートにおける3つの係合部によってグラファイトボートの壁に固定される。コーティング膜の均一性を確保するためには、シリコンウェハーをグラファイトボートの壁に密着させる必要があるため、係合凹溝部の幅が0.25mm程度と狭く設定される。管型PECVD法によるコーティングには、以下2つの欠点が存在する。1つは、挿入工程において、シリコンウェハーとグラファイトボートの壁との摩擦により、グラファイトボートの壁側の面に掻き傷が生じる。もう1つは、堆積工程において、シリコンウェハーとグラファイトボートの壁との間に隙間が存在し、特に係合部周辺の隙間が大きいため、処理用蒸気はシリコンウェハーの反対側の面までに拡散して堆積して膜が形成される(すなわち、オーバーフローコーティングが施される)。係合部でオーバーフローコーティング現象がより深刻である。
【0008】
管型PECVD技術によって従来の太陽電池の前面にコーティング膜を形成する場合、掻き傷とオーバーフローコーティングは完成品である電池に悪影響を与えることがない。その原因として、次のようなものが考えられる。第一に、シリコンウェハーの裏面にPN接合とコーティング膜がないため、掻き傷は電池の電気的性能やEL検査上の歩留まりに影響を与えることがない。第二に、通常の電池において、裏面にコーティング膜を形成せず、オーバーフローコーティングによる裏面の縁における膜の厚さは薄くて目立たないため、外観上の歩留まりに影響を与えることがない。
【0009】
しかしながら、管型PECVD技術によってPERC電池の裏面の膜を形成する場合、掻き傷とオーバーフローコーティングによって、完成品である電池の良品率に大きな影響を与える。その原因として、次のようなものが考えられる。第一に、裏面の膜を堆積させる時、オーバーフローコーティングにより前面の縁までコーティング膜が形成されることがある。PERC電池は、両面にコーティング膜が形成されるものであるので、正面の縁でのコーティング膜が厚くて正面の縁にボート歯形跡や色収差が生じるため、外観上の歩留まりに影響を与える。第二に、シリコンウェハーをグラファイトボートに挿入する工程において、シリコンウェハーの前面はグラファイトボートの壁に接触することがあり、これにより、前面のPN接合に傷がつき、EL検査に掻き傷がみられ、電池の電気的性能に影響を及ばす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、両面で太陽光を吸収することができ、光電転換効率が向上するとともに、外観上及びEL検査上の歩留まりが高く、掻き傷とオーバーフローコーティングの問題を解決できる管型PERC両面受光型太陽電池を提供することである。
【0011】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、生産プロセスが簡単で、大規模な量産に適し、現在の生産ラインと優れた互換性を有し、製造された電池の外観上及びEL検査上の歩留まりが高く、掻き傷とオーバーフローコーティングの問題を解決できる上記管型PERC両面受光型太陽電池を製造するための製造方法を提供することである。
【0012】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、装置の構造がシンプルで、コストが削減され、生産量が大きく、良品率が高く、製造された電池の外観上及びEL検査上の歩留まりが高く、掻き傷とオーバーフローコーティングの問題を解決できる上記管型PERC両面受光型太陽電池の専用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、管型PERC両面受光型太陽電池を提供する。上記管型PERC両面受光型太陽電池は、裏面銀バスバー(busbar)と、アルミニウムグリッド線(gridline)と、裏面複合膜と、P型シリコンと、N型エミッタと、前面パッシベーション膜と、前面銀電極とを含み、前記裏面複合膜と、P型シリコンと、N型エミッタと、前面パッシベーション膜と、前面銀電極とはこの順に下から上に積層され接合しており、前記裏面複合膜は、酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に堆積させたものであり、前記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備えており、前記4つのガスラインは、前記酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜を形成するように、単独または組み合わせて使用され、ガス流量比を調整することにより、組成比及び屈折率の異なる酸窒化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜を得ることができ、前記管型PECVD装置において、前記シリコンウェハーはグラファイトボートによって着脱され、グラファイトボートの係合凹溝部の深さは0.5〜1mmであり、
前記裏面複合膜には、レーザーグルービングによって30〜500の平行に配置されたレーザーグルービング領域が形成され、各レーザーグルービング領域内には少なくとも1組のレーザーグルービング部が配置され、前記アルミニウムグリッド線は、レーザーグルービング領域を介してP型シリコンに連結され、且つ、裏面銀バスバーに対して垂直に裏面銀バスバーと接続する。

上記技術案の改善案として、前記グラファイトボートにおいて、係合凹溝部の深さは0.6〜0.8mmであり、係合ベース部の直径は6〜15mmであり、係合キャップ部の斜面の角度は35〜45度であり、係合キャップ部の厚みは1〜1.3mmである。
【0014】
上記技術案の改善案として、電池の裏面には、3〜5個の係合マークが形成されている。
【0015】
上記技術案の改善案として、前記裏面複合膜の最下層は酸化アルミニウム膜であり、最上層は二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つからなる。
【0016】
上記技術案の改善案として、前記裏面複合膜の最下層は二酸化ケイ素膜であり、下から第2層は酸化アルミニウム膜であり、最上層は二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つからなる。
【0017】
上記技術案の改善案として、前記酸化アルミニウム膜の厚さは5〜15nmであり、前記窒化ケイ素膜の厚さは50〜150nmであり、前記酸窒化ケイ素膜の厚さは5〜20nmであり、前記二酸化ケイ素膜の厚さは1〜10nmである。

それに対応して、本発明は、管型PERC両面受光型太陽電池の製造方法であって、
P型シリコンであるシリコンウェハーの前面及び裏面にテクスチャ構造を形成する工程(1)と、
N型エミッタを形成するように、シリコンウェハーの前面に拡散処理を施す工程(2)と、
拡散処理時に形成されたりんけい酸ガラスと周辺のPN接合とを除去し、裏面のエッチング深さは3〜6μmになるようにシリコンウェハーの裏面を研磨する工程(3)と、
アニーリング温度:600〜820℃、窒素流量:1〜15L/分、酸素流量:0.1〜6L/分という条件で、シリコンウェハーに対してアニーリング処理を行う工程(4)と、
管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程(5)であって、
TMAのガス流量250〜500sccm、TMAとNOの比1:15〜1:25、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量50〜200sccm、シランと笑気ガスの比1:10〜1:80、アンモニアガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力4000〜6000wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量500〜1000sccm、シランとアンモニアガスの比1:6〜1:15、窒化ケイ素の堆積温度390〜410℃、時間100〜400秒、プラズマ出力10000〜13000wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることと、を含み、
前記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備えており、前記管型PECVD装置において、グラファイトボートによってシリコンウェハーを着脱し、前記グラファイトボートの係合凹溝部の深さは0.5〜1mmである工程(5)と、
シリコンウェハーの前面にパッシベーション膜を堆積させる工程(6)と、
レーザー波長532nm、レーザー出力14w以上、レーザースクライブ速度12m/秒以上、周波数500KHz以上という条件で、シリコンウェハーの裏面複合膜にレーザーグルービングする工程(7)と、
シリコンウェハーの裏面に、裏面銀バスバーのペーストを印刷して乾燥させる工程(8)と、
裏面銀バスバーに対して垂直に裏面銀バスバーと接続するように、レーザーグルービング領域にアルミニウムペーストを印刷する工程(9)と、
シリコンウェハーの前面に前面電極ペーストを印刷する工程(10)と、
シリコンウェハーを高温で焼結することにより、裏面銀バスバーとアルミニウムグリッド線と前面銀電極とを形成する工程(11)と、
管型PERC両面受光型太陽電池の完成品を製造するように、シリコンウェハーに対して、LIDを抑制するためのアニーリング処理を施す工程(12)とを含有する製造方法を提供する。
【0018】
上記技術案の改善案として、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程は、
TMAのガス流量250〜500sccm、TMAとNOの比1:15〜1:25、酸化アルミニウム膜の堆積温度250〜300℃、時間50〜300秒、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量50〜200sccm、シランと笑気ガスの比1:10〜1:80、アンモニアガスの流量0.1〜5slm、酸窒化ケイ素膜の堆積温度350〜410℃、時間50〜200秒、プラズマ出力4000〜6000wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量500〜1000sccm、シランとアンモニアガスの比1:6〜1:15、窒化ケイ素膜の堆積温度390〜410℃、時間100〜400秒、プラズマ出力10000〜13000wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることとを含む。
【0019】
それに対応して、本発明は、管型PERC両面受光型太陽電池を製造するための専用装置を提供する。前記専用装置は管型PECVD装置であり、前記管型PECVD装置は、ウエハー載置領域と、炉体と、特殊ガスキャビネットと、真空システムと、制御システムと、グラファイトボートとを備え、前記特殊ガスキャビネットは、シランを導入するための第1のガスラインと、アンモニアガスを導入するための第2のガスラインと、トリメチルアルミニウムを導入するための第3のガスラインと、笑気ガスを導入するための第4のガスラインとを備え、
前記グラファイトボートは、シリコンウェハーの着脱に用いられ、係合軸部と係合キャップ部と係合ベース部とを備える係合部を有し、前記係合軸部は係合ベース部に取り付けられ、前記係合キャップ部は前記係合軸と接合し、前記係合軸部と係合キャップ部及び係合ベース部との間に係合凹溝部が形成され、係合凹溝部の深さは0.5〜1mmである。
【0020】
上記技術案の改善案として、前記係合凹溝部の深さは0.6〜0.8mmであり、係合ベース部の直径は6〜15mmであり、係合キャップ部の斜面の角度は35〜45度であり、係合キャップ部の厚みは1〜1.3mmである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施は、以下の有益な効果が得られる。
【0022】
まず、本発明の管型PERC両面受光型太陽電池は、電池の裏面に複数のアルミニウムグリッド線が平行に配置され、上記アルミニウムグリッド線は、従来の片面受光型太陽電池における全アルミニウム裏面電界の代わりに裏面光吸収機能を果たすことだけではなく、電子を伝導するための裏面銀電極におけるフィンガー構造としても使用される。本発明の管型PERC両面受光型太陽電池を製造する場合、銀ペーストとアルミニウムペーストの使用量を節約し、製造コストを削減することができ、且つ、両面で光エネルギーを吸収することができ、太陽電池の応用範囲を著しく拡大するとともに、光電変換効率を改善する。
【0023】
次に、本発明は、上記のアルミニウムグリッド線が設けられたPERC両面受光型太陽電池に合わせるするために、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させ、前記裏面複合膜は、酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に堆積されたものである。管型PECVD装置では、プラズマを直接にシリコンウェハーの表面に衝突させる直接プラズマ法を使用することにより、膜に対するパッシベーション処理の効果が著しくなる。前記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備え、前記酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜を形成するように、上記4つのガスラインを単独または組み合わせて使用する。シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを使用し、異なるガスの組み合わせ、異なるガス流量比、及び異なる堆積時間を採用することにより、異なる膜を形成することができる。また、窒化ケイ素膜または酸窒化ケイ素膜について、ガス流量比を調整することによって、異なる組成比や屈折率を有する窒化ケイ素膜または酸窒化ケイ素膜を得ることができる。本発明では、複合膜の組み合わせ順序、厚さ及び膜の組成を柔軟に調整することができるので、製造プロセスについて柔軟性と制御性を両立することができ、コストが削減され、かつ生産量が大きくなる。さらに、裏面複合膜を裏面のアルミニウムグリッド線に適応させて最適なパッシベーション効果を生み出すように裏面複合膜を最適化することで、PERC電池の光電変換効率を大幅に向上させることができる。
【0024】
そして、本発明は、係合軸部の直径及び係合ベース部の直径を調整することによって、係合凹溝部の内側の深さを減少させ、それにより、係合部におけるシリコンウェハーと係合ベース部との間の隙間を減少させ、さらに、ガス流がシリコンウェハーの裏面まで達してオーバーフローコーティングすることを減少させることで、電池前面の縁のボート歯形跡の割合を大幅に減少させる。また、係合キャップ部の斜面の角度及び係合キャップ部の厚さを適宜に増加させることにより、自動挿入機構を調整することで、シリコンウェハーが挿入されるときにシリコンウェハーとグラファイトボートの壁との間の距離をわずかに増加させ、掻き傷の割合を減少させるとともに、シリコンウェハーが滑り落ちるときにグラファイトボートの壁との衝撃力を低減させ、シリコンウェハーの破損率を下げることができる。
【0025】
さらに、窒化ケイ素が裏面複合膜の最上層に位置するため、堆積時間が増加するにつれて、シリコンウェハーの表面の膜が次第に厚くなり、シリコンウェハーが曲がり、シラン及びアンモニアガスがより容易に電池の前面の縁にオーバーフローコーティングされる。本発明において、窒化ケイ素の堆積温度が390〜410℃に、時間が100〜400秒間に設定されており、窒化ケイ素の堆積時間を短縮し堆積温度を下げることによって、シリコンウェハーの曲率を減少させ、オーバーフローコーティングの割合を減少させることができる。窒化ケイ素の堆積温度領域(temperature window)は、390〜410℃で非常に狭く、オーバーフローコーティングを最小限にすることができる。しかし、堆積温度が390℃より低いと、オーバーフローコーティングの割合が増えていく。
【0026】
同時に、大規模生産のニーズを満たし、窒化ケイ素の堆積時間の短縮による悪影響を克服するために、本発明おいては、レーザー出力を14w以上に、レーザースクライブ速度を12m/s以上に、周波数を500KHz以上に設定する。これにより、裏面複合膜の単位面積当たりのレーザーエネルギー吸収量を高くし、レーザーで複合膜にグルービングすることができ、続いて印刷されたアルミニウムペーストがレーザーグルービング領域を介して基板シリコンと接触することを確保できる。
【0027】
以上のことから分かるように、本発明の管型PERC両面受光型太陽電池は、両面で太陽光を吸収することができ、光電転換効率が向上するとともに、外観上及びEL検査上の歩留まりが高く、掻き傷とオーバーフローコーティングの問題も解決できる。同時に、本発明は、上記電池を製造するための方法及び専用装置を提供する。上記方法は、製造プロセスがシンプルで、大規模な量産に適用することができ、かつ従来の製造ラインとの良好な適合性を有する。上記専用装置は、構造がシンプルで、コストが削減され、生産量が大きくなり、良品率も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は本発明の管型PERC両面受光型太陽電池の断面図である。
図2図2図1に示された管型PERC両面受光型太陽電池の裏面構造を示す図である。
図3図3図1に示された裏面複合膜の第1実施形態を示す図である。
図4図4図1に示された裏面複合膜の第2実施形態を示す図である。
図5図5図1に示された裏面複合膜の第3実施形態を示す図である。
図6図6図1に示された裏面複合膜の第4実施形態を示す図である。
図7図7図1に示された裏面複合膜の第5実施形態を示す図である。
図8図8図1に示された裏面複合膜の第6実施形態を示す図である。
図9図9は本発明の管型PERC両面受光型太陽電池の専用装置を示す図である。
図10図10図9に示されたグラファイトボートを示す図である。
図11図11図10に示されたグラファイトボートの係合部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、添付の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【0030】
従来の片面型の太陽電池は、電池の裏面にシリコンウエハーの裏面全体を覆う全面アルミニウム裏面電界(Back Surface Field)が設けられている。全面アルミニウム裏面電界は、開放電圧Voc及び短絡電流Jscを向上させ、少数キャリアを表面から遠ざけ、少数キャリアの再結合速度を低減させることで、電池全体の効率を改善するように機能する。しかしながら、全面アルミニウム裏面電界は不透明であるため、全面アルミニウム裏面電界を有する太陽電池の裏面は光エネルギーを吸収することができず、前面のみで光エネルギーを吸収し、電池の総合的な光電変換効率を大幅に向上させることは困難である。
【0031】
上記課題について、図1に示すように、本発明は、裏面銀バスバー1と、アルミニウムグリッド線2と、裏面複合膜3と、P型シリコン5と、N型エミッタ6と、前面パッシベーション膜7と、前面銀電極8とを含み、前記裏面複合膜3と、P型シリコン5と、N型エミッタ6と、前面パッシベーション膜7と、前面銀電極8とはこの順に下から上に積層され接合している管型PERC両面受光型太陽電池を提供する。
上記裏面複合膜3には、レーザーグルービングによって30〜500組の平行に配置されたレーザーグルービング領域が形成され、各レーザーグルービング領域内には少なくとも1組のレーザーグルービング部9が配置されており、上記アルミニウムグリッド線2は、レーザーグルービング領域を介して、P型シリコン5に連結され、かつ、裏面銀バスバー1に対して垂直に裏面銀バスバー1と接続する。
【0032】
本発明の従来の片面型のPERC太陽電池に対する改善として、全面アルミニウム裏面電界の代わりに、複数のアルミニウムグリッド線2を設け、さらに、レーザーグルービング技術によって裏面複合膜3にレーザーグルービング領域を形成し、アルミニウムグリッド線2は、P型シリコン5と局所的に接触するように、平行に配置されたレーザーグルービング領域8に印刷される。密集して平行に配置されたアルミニウムグリッド線2は、開放電圧Voc及び短絡電流Jscを向上させるとともに、少数キャリアの再結合速度を低減させ、電池の光電変換効率を改善するので、従来の片面型の電池における全面アルミニウム裏面電界の代わりに使用されることができる。さらに、アルミニウムグリッド線2は、シリコンウエハーの裏面全体を完全に覆うものではないため、太陽光は、各アルミニウムグリッド線2の隙間を介して、シリコンウエハーに照射されることができ、シリコンウエハーの裏面による光エネルギーの吸収が可能となり、電池の光電変換効率が大幅に向上することが可能となる。
【0033】
好ましくは、上記アルミニウムグリッド線2の数がレーザーグルービング領域の数に対応するように設定され、30〜500本であり、より好ましくは、80〜220本である。
【0034】
シリコンウエハーの裏面は、図2に示されている。ここで、アルミニウムグリッド線2は、連続的な直線型グリッドである裏面銀バスバー1に対して垂直に裏面銀バスバー1と接続する。裏面複合膜3には、レーザーグルービング領域が設けられているため、アルミニウムペーストを印刷してアルミニウムグリッド線2を形成する際に、アルミニウムペーストがレーザーグルービング領域に充填され、これにより、アルミニウムグリッド線2がP型シリコン5と局所接触することになる。その結果、電子をアルミニウムグリッド線2に伝達することができ、そしてアルミニウムグリッド線2での電子がアルミニウムグリッド線2と交差する裏面銀バスバー1に集められる。以上のことから分かるように、本発明のアルミニウムグリッド線2は、開放電圧Voc及び短絡電流Jscを向上させるとともに、少数キャリアの再結合速度を低減させ、電子を伝達する役割を果たすため、従来の片面受光型太陽電池における全アルミニウム裏面電界及び裏面銀電極中のフィンガー(finger)構造の代わりに使用されることができる。この場合、銀ペーストとアルミニウムペーストの使用量が低減され、製造コストが低下するだけでなく、両面での光エネルギーの吸収を実現し、太陽電池の応用範囲を大幅に拡大し、光電変換効率を改善する。
【0035】
本発明に係る裏面銀バスバー1の構造は、図2に示すような連続的な直線型グリッドの構造であるが、セグメント化された非連続な構造であってもよい。また、セグメント化された非連続な構造であって、各隣接するセグメントが接続ラインによって接続されてもよい。上記裏面銀バスバー1の幅は0.5〜5mmであり、数は2〜8本である。
【0036】
なお、レーザーグルービング領域ごとに2組又はそれ以上のレーザーグルービング部9が配置された場合、各組のレーザーグルービング部9は互いに平行に配置され、かつ隣接する2組のレーザーグルービング部9の間の間隔は5〜480μmである。
【0037】
各組のレーザーグルービング部9は、少なくとも1つのレーザーグルービング部9を含み、上記レーザーグルービング部9のパターンは、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、十字形、又は星形に形成されている。
【0038】
本発明に係るレーザーグルービング領域の幅は、10〜500μmであり、レーザーグルービング領域の下に位置するアルミニウムグリッド線2の幅は、レーザーグルービング領域の幅よりも長く、30〜550μmである。上述アルミニウムグリッド線2を500μmなどの大きめな値とし、レーザーグルービング領域の幅を40μmなどの小さめな値とする場合、同一のアルミニウムグリッド線2上に複数組のレーザーグルービング領域を並べて配置することができ、アルミニウムグリッド線2とP型シリコン5との十分な接触面積を確保できる。
【0039】
なお、上記レーザーグルービング領域内に配置されたレーザーグルービング部は、アルミニウムグリッド線に対して平行であってもよく、垂直であってもよい。
【0040】
本発明は、上記のアルミニウムグリッド線が設けられたPERC両面受光型太陽電池に合わせるために、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる。管型PECVD装置では、プラズマを直接にシリコンウェハーの表面に衝突させる直接プラズマ法を使用することにより、膜に対するパッシベーション処理の効果が著しくなる。図3〜8に示すように、上記裏面複合膜3は、酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に堆積されたものである。上記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備えており、上記4つのガスラインを単独または組み合わせて使用することによって、上記酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜を形成する。ガス流量比を調整することによって、異なる組成比や屈折率を有する酸窒化ケイ素膜または窒化ケイ素膜を得ることができる。また、上記酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜の形成順序や厚さは調整可能であり、上記酸窒化ケイ素膜と窒化ケイ素膜の組成及び屈折率も調整可能である。
【0041】
上記シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを使用し、異なるガスの組み合わせ、異なるガス流量比、及び異なる堆積時間を採用することにより、異なる膜は形成される。また、窒化ケイ素膜または酸窒化ケイ素膜について、ガス流量比を調整することによって、異なる組成比や屈折率を有する窒化ケイ素膜または酸窒化ケイ素膜を得ることができる。本発明の製造プロセスは、複合膜の組み合わせ順序、厚さ及び膜の組成を柔軟に調整することができるので、柔軟性と制御性を両立することができ、コストが削減され、かつ生産量が大きくなる。さらに、裏面複合膜を裏面のアルミニウムグリッド線に適応させて最適なパッシベーション効果を生み出すように裏面複合膜を最適化することで、PERC電池の光電変換効率を大幅に向上させることができる。
【0042】
上記管型PECVD装置において、グラファイトボートによってシリコンウェハーを着脱する。グラファイトボートの係合凹溝部の深さは0.5〜1mmである。上記グラファイトボートの係合凹溝部の深さは0.6〜0.8mmであり、係合ベース部の直径は6〜15mmであり、係合キャップ部の斜面の角度は35〜45度であり、係合キャップ部の厚みは1〜1.3mmであることが好ましい。上記グラファイトボートの係合凹溝部の深さは0.7〜0.8mmであり、係合ベース部の直径は8〜12mmであり、係合キャップ部の斜面の角度は35〜45度であり、係合キャップ部の厚みは1〜1.2mmであることがより好ましい。
【0043】
管型PECVD技術で裏面の膜を堆積させる場合、掻き傷とオーバーフローコーティングは対立するものである。自動挿入機構を調整することによって、シリコンウェハーがグラファイトボートの壁に接触せずに、グラファイトボートと一定の距離を保った状態で、係合凹溝部に挿入することかできる。それによって、シリコンウェハーとグラファイトボートの壁との摩擦が避けられる。しかし、シリコンウェハーとグラファイトボートとの距離が大きすぎる場合、掻き傷の割合が減少するが、シリコンウェハーをボートの壁に付着させることが困難となるため、オーバーフローコーティングの割合は増加する。また、上記距離が大きすぎる場合、シリコンウェハーが係合凹溝部に挿入されずに脱落する恐れがある。一方、シリコンウェハーとグラファイトボートとの間の距離が小さすぎる場合、シリコンウェハーがグラファイトボートにより強く密着するため、オーバーフローコーティングの割合が減少するが、掻き傷の割合が増加する。
【0044】
電池の前面の縁におけるボート歯形跡は、PECVD技術による裏面コーティングの場合の係合部に対応するものであり、ガス流が係合部から電池の前面まで達してオーバーフローコーティングしたものである。係合ベース部の厚さが、グラファイトボートの厚さよりもわずかに小さいため、係合部におけるシリコンウェハーと係合ベース部との間には隙間があり、裏面にコーティング膜を形成するとき、係合軸部の下方の両側からガス流が入り込み、シリコンウェハーの前面の縁に膜を堆積する。すなわち、半円形のボート歯形跡が形成される。
【0045】
本発明は、係合軸部の直径及び係合ベース部の直径を調整することによって係合凹溝部の内側の深さを減少させ、これにより、係合部におけるシリコンウェハーと係合ベース部との間の隙間を減少させ、さらに、ガス流がシリコンウェハーの裏面まで達してオーバーフローコーティングすることを減少させることで、電池の前面の縁のボート歯形跡の割合を大幅に低減させる。
【0046】
自動挿入機構を調整することにより、シリコンウェハーをグラファイトボート内の所定の位置に挿入すると、吸盤が真空状態を解除し、シリコンウェハーが係合キャップ部の斜面に落下する。そして、重力により、シリコンウェハーが斜面から滑り落ちてグラファイトボートの壁に密着する。このような非接触型挿入方式が使用されるのは、シリコンウェハーの掻き傷の割合を減少するためである。
【0047】
本発明は、係合キャップ部の斜面の角度及び係合キャップ部の厚さを適宜に増加させることにより、自動挿入機構を調整することで、シリコンウェハーが挿入されるときにシリコンウェハーとグラファイトボートの壁との間の距離をわずかに増加させ、掻き傷の割合を減少させることができる。また、係合キャップ部の斜面の角度を増加させることにより、シリコンウェハーが滑り落ちるときにグラファイトボートの壁との衝撃力を低減させ、シリコンウェハーの破損率を下げることができる。
【0048】
上記管型PECVD装置において、グラファイトボートによってシリコンウェハーを着脱し、電池の裏面には、係合マークが形成されている。電池の裏面には、3〜5個の係合マークが形成されている。
【0049】
上記裏面複合膜3としては、様々な実施形態を有する。図3〜5に示すように、上記裏面複合膜の最下層は酸化アルミニウム膜であり、最上層は二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つにより形成される。
【0050】
図3に示す裏面複合膜の第1実施形態において、上記裏面複合膜3は、最下層31が酸化アルミニウム膜であり、最上層32が酸窒化ケイ素膜と窒化ケイ素膜からなる。
【0051】
図4に示す裏面複合膜の第2実施形態において、上記裏面複合膜は、最下層31が酸化アルミニウム膜であり、最上層が窒化ケイ素膜からなる。
【0052】
図5に示す裏面複合膜の第3実施形態において、上記裏面複合膜は、最下層31が酸化アルミニウム膜であり、最上層32が、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜A、酸窒化ケイ素膜B、及び窒化ケイ素膜からなる。
【0053】
図6〜8に示すように、上記裏面複合膜は、最下層31が二酸化ケイ素膜であり、下から第2層32が酸化アルミニウム膜であり、最上層33が二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つからなる。
【0054】
図6に示す裏面複合膜の第4実施形態において、上記裏面複合膜は、最下層31が二酸化ケイ素膜であり、下から第2層32は酸化アルミニウム膜であり、最上層33が窒化ケイ素膜からなる。
【0055】
図7に示す裏面複合膜の第5実施形態において、上記裏面複合膜は、最下層31が二酸化ケイ素膜であり、下から第2層32は酸化アルミニウム膜であり、最上層33が、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜A、酸窒化ケイ素膜B、及び窒化ケイ素膜からなる。
【0056】
図8に示す裏面複合膜の第6実施形態において、上記裏面複合膜は、最下層31が二酸化ケイ素膜であり、下から第2層32は酸化アルミニウム膜でありり、最上層33が、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、窒化ケイ素膜A、及び窒化ケイ素膜Bからなる。
【0057】
具体的には、上記酸化アルミニウム膜の厚さは5〜15nmであり、上記窒化ケイ素膜の厚さは50〜150nmであり、上記酸窒化ケイ素膜の厚さは5〜20nmであり、上記二酸化ケイ素膜の厚さは1〜10nmである。上記酸化アルミニウム膜、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜及び二酸化ケイ素膜の実際の厚さについて、実際の要求に応じて調整することができ、その実施形態は本発明の実施形態に限定されない。
【0058】
そのため、本発明の管型PERC両面受光型太陽電池は、両面で太陽光を吸収することができ、光電転換効率が向上するとともに、外観上及びEL検査上の歩留まりを高くし、掻き傷とオーバーフローコーティングの課題も解決できる。
【0059】
なお、外観及び電気的性能を検査するためのEL(Electroluminescence、電界発光)検査によって、結晶シリコン系太陽電池及びモジュールの潜在的な欠陥を検出することができる。EL検査において、電池に破片、クラック、グリッド破損、掻き傷、焼結欠陥、黒いシミ、電池シートの混合、電池シート抵抗の不均一などの不具合が存在するかどうかを効果的に検出できる。
【0060】
それに対応して、本発明は、管型PERC両面受光型太陽電池の製造方法を提供する。上記の製造方法は、以下の12の工程を含む。
【0061】
(1)P型シリコンであるシリコンウェハーの前面及び裏面にテクスチャ構造を形成する工程。
【0062】
ここで、ウェットエッチング技術またはドライエッチング技術を用いて、テクスチャリング装置によってシリコンウェハーの前面にテクスチャ構造を形成する。
【0063】
(2)N型エミッタを形成するように、シリコンウェハーの前面に拡散処理を施す工程。
【0064】
本発明の製造方法で採用される拡散処理は、N型エミッタをP型シリコンの上方に形成するように、シリコンウェハーを熱拡散炉に入れて拡散処理を施す。拡散処理時に、温度を800℃〜900℃の範囲内に制御し、目標シート抵抗を70〜100Ω/□にする。
【0065】
管型PERC電池について、裏面のP型シリコンは、アルミニウムペーストと完全に接触しておらず、レーザーグルービングの領域のみでアルミニウムペーストと接触しているので、直列抵抗が大きくなる。管型PERC電池の性能を向上させるために、本発明は、シート抵抗(70〜100Ω/□)のより低いものを採用することにより、直列抵抗を低減させるとともに、光電変換効率を向上させることができる。
【0066】
拡散処理時に、シリコンウェハーの前面及び裏面にりんけい酸ガラス層が形成される。このりんけい酸ガラス層は、以下のように形成される。拡散処理中には、POClとOが反応して生成されたPがシリコンウェハーの前面に堆積し、そして、PがSiと反応してSiO及びリン原子を生成することにより、シリコンウェハーの前面にりんけい酸ガラス(PSG)と呼ばれるりん含有SiO層が形成される。上記りんけい酸ガラス層は、拡散処理時にシリコンウェハーにおける不純物を捕捉することができ、太陽電池の不純物含有量をさらに低減することができる。
【0067】
(3)拡散処理時に形成されたりんけい酸ガラスと周辺のPN接合とを除去し、裏面のエッチング深さが3〜6μmになるようにシリコンウェハーの裏面を研磨する工程。
【0068】
本発明では、拡散処理されたシリコンウェハーを、体積比が1:5〜1:8であるHF(質量分率40%〜50%)とHNO(質量分率60%〜70%)との混合溶液の酸洗槽中に5〜30秒間浸漬することにより、りんけい酸ガラスと周辺のPN接合を取り除く。りんけい酸ガラス層の存在により、PECVDの色収差やSixNyの脱落が起こりやすく、且つ、りんけい酸ガラス層にはリンやシリコンウエハからの不純物が多量に含まれているため、りんけい酸ガラス層を除去する必要がある。
【0069】
通常の電池のエッチング深さが2μmほどであるが、本発明では、裏面のエッチング深さは3〜6μmに設定される。管型PERC電池のエッチング深さを深めれば、裏面の反射率を向上させて、電池の短絡電流と光電変換効率を向上させることができる。
【0070】
(4)アニーリング温度:600〜820℃、窒素流量:1〜15L/分、酸素流量:0.1〜6L/分という条件で、シリコンウェハーに対してアニーリング処理を行う工程。上記アニーリング工程により、シリコンウェハーの前面のドーピング濃度分布を改善し、ドーピングによる表面の欠陥を減らすことができる。
【0071】
(5)管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程であって、
TMAのガス流量250〜500sccm、TMAとNOの比1:15〜1:25、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量50〜200sccm、シランと笑気ガスの比1:10〜1:80、アンモニアガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力4000〜6000wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量500〜1000sccm、シランとアンモニアガスの比1:6〜1:15、窒化ケイ素の堆積温度390〜410℃、時間100〜400秒、プラズマ出力10000〜13000wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることとを含み、
上記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備えており、上記管型PECVD装置において、グラファイトボートによってシリコンウェハーを着脱し、上記グラファイトボートの係合凹溝部の深さは0.5〜1mmである工程。
【0072】
上記工程の好ましい実施形態として、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程であって、
TMAのガス流量250〜500sccm、TMAとNOの比1:15〜1:25、酸化アルミニウム膜の堆積温度250〜300℃、時間50〜300秒、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量50〜200sccm、シランと笑気ガスの比1:10〜1:80、アンモニアガスの流量0.1〜5slm、酸窒化ケイ素膜の堆積温度350〜410℃、時間50〜200秒、プラズマ出力4000〜6000wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量500〜1000sccm、シランとアンモニアガスの比1:6〜1:15、窒化ケイ素膜の堆積温度390〜410℃、時間100〜400秒、プラズマ出力10000〜13000wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスの流量0.1〜5slm、プラズマ出力2000〜5000wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることとを含む工程が採用される。
【0073】
上記工程のより好ましい実施形態として、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程であって、
TMAのガス流量350〜450sccm、TMAとNOの比1:18〜1:22、酸化アルミニウム膜の堆積温度270〜290℃、時間100〜200秒、プラズマ出力3000〜4000wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量80〜150sccm、シランと笑気ガスの比1:20〜1:40、アンモニアガスの流量1〜4slm、酸窒化ケイ素膜の堆積温度380〜410℃、時間100〜200秒、プラズマ出力4500〜5500wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量600〜800sccm、シランとアンモニアガスの比1:6〜1:10、窒化ケイ素膜の堆積温度395〜405℃、時間350〜450秒、プラズマ出力11000〜12000wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスのガス流量1〜4slm、プラズマ出力3000〜4000wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることとを含む工程が採用される。
【0074】
上記工程の最も好ましい実施形態として、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させる工程であって、
TMAのガス流量400sccm、TMAとNOの比1:18、酸化アルミニウム膜の堆積温度280℃、時間140秒、プラズマ出力3500wという条件で、TMAとNOによって酸化アルミニウム膜を堆積させることと、
シランのガス流量130sccm、シランと笑気ガスの比1:32、アンモニアガスの流量0.5slm、酸窒化ケイ素膜の堆積温度420℃、時間120秒、プラズマ出力5000wという条件で、シラン、アンモニアガス及び笑気ガスによって酸窒化ケイ素膜を堆積させることと、
シランのガス流量780sccm、シランとアンモニアガスの比1:8.7、窒化ケイ素膜の堆積温度400℃、時間350秒、プラズマ出力11500wという条件で、シラン及びアンモニアガスによって窒化ケイ素膜を堆積させることと、
笑気ガスの流量2slm、プラズマ出力3500wという条件で、笑気ガスによって二酸化ケイ素膜を堆積させることとを含む工程が採用される。
【0075】
出願人は、オーバーフローコーティングが主として窒化ケイ素の堆積段階で起こることを見出した。窒化ケイ素は裏面複合膜の最上層に位置するので、堆積時間が増加するにつれて、シリコンウェハーの表面の膜が次第に厚くなり、シリコンウェハーが曲がり、シラン及びアンモニアガスがより容易に電池の前面の縁にオーバーフローコーティングされる。窒化ケイ素の堆積時間を短縮し堆積温度を下げることによって、シリコンウェーハの曲率を減少させ、オーバーフローコーティングの割合を減少させることができる。さらなる実験によると、窒化ケイ素の堆積温度領域が390〜410度と非常に狭く、そして温度がさらに低下すると、オーバーフローコーティングの割合が増加することが分かる。
【0076】
酸化アルミニウム膜を堆積する場合、プラズマ出力は2000〜5000wに設定され、酸窒化ケイ素膜を堆積する場合、プラズマ出力は4000〜6000wに設定され、窒化ケイ素膜を堆積する場合、プラズマ出力は10000〜13000wに設定され、そして、二酸化ケイ素膜を堆積する場合、プラズマ出力は2000〜5000wに設定される。異なる膜に対して、好ましい堆積速度をそれぞれ確保することにより、堆積の均一性を改善することができる。
【0077】
さらに、上記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備えており、上記管型PECVD装置において、グラファイトボートによってシリコンウェハーを着脱し、上記グラファイトボートの係合凹溝部の深さは0.5〜1mmである。グラファイトボートの具体的な構造は上述と同じであるため、ここでは説明を割愛する。
【0078】
(6)シリコンウェハーの前面にパッシベーション膜を堆積させる工程。上記パッシベーション膜は窒化ケイ素膜であることが好ましい。
【0079】
(7)シリコンウェハーの裏面複合膜にレーザーグルービングする工程。
【0080】
レーザー波長532nm、レーザー出力14w以上、レーザースクライブ速度12m/秒以上、周波数500KHz以上という条件で、レーザーグルービング技術により、シリコンウェハーの裏面複合膜にP型シリコンの下面までの溝深さを有するように溝切りを行う。
【0081】
レーザー波長が532nmであり、レーザー出力が14〜20wであり、レーザースクライブ速度が12〜20m/sであり、周波数が500KHz以上であることが好ましい。
【0082】
窒化ケイ素の堆積時間が短くなり、窒化ケイ素膜の厚さが薄くなることにつれて、裏面複合膜の水素による不活性化の効果に影響が与えられ、電池の光電変換効率が低下するため、窒化ケイ素の堆積時間は短すぎてはならない。また、窒化ケイ素膜の厚さが薄いほど、レーザーに対する吸収率が低くなる。さらに、大規模生産のニーズを満たすために、レーザースクライブ速度を12m/s以上に、レーザー出力を14w以上に設定しなければならない。即ち、レーザーの出力と周波数は一定の条件に満たす必要がある。これにより、裏面複合膜の単位面積当たりのレーザーエネルギー吸収量を高くし、レーザーで複合膜にグルービングすることができ、続いて印刷されたアルミニウムペーストがレーザーグルービング領域を介して基板シリコンと接触することを確保できる。
【0083】
(8)上記シリコンウェハーの裏面に、裏面銀バスバーのペーストを印刷して乾燥させる工程。
【0084】
裏面銀バスバーのパターンに基づいて、裏面銀バスバーのペーストを印刷する。上記裏面銀バスバーは、パターンが連続的な直線型グリッドであっても良く、セグメント化された非連続な構造であってもよく、またはセグメント化された非連続な構造であって、各隣接するセグメントが接続ラインによって接続された構造であってもよい。
【0085】
(9)裏面銀バスバーに対して垂直に裏面銀バスバーと接続するように、レーザーグルービング領域にアルミニウムペーストを印刷する工程。
【0086】
(10)シリコンウェハーの前面に前面銀電極ペーストを印刷する工程。
【0087】
(11)シリコンウェハーを高温で焼結することにより、裏面銀バスバーとアルミニウムグリッド線と前面銀電極とを形成する工程。
【0088】
(12)管型PERC両面受光型太陽電池の完成品を製造するように、シリコンウェハーに対して、LIDを抑制するためのアニーリング処理を施す工程。
【0089】
上記製造方法は、製造プロセスがシンプルで、柔軟性と制御性を両立することができ、複合膜の組み合わせ順序、厚さ及び膜の組成を柔軟に調整することができるため、低コストで生産量が大きくなり、かつ現在の製造ラインとの良好な適合性を有する。上記製造方法により作製される管型PERC両面受光型太陽電池は、両面で太陽光を吸収することができ、光電転換効率、外観の歩留まり及びEL検査上の歩留まりが高く、掻き傷とオーバーフローコーティングの問題を解決できる。
【0090】
図9に示すように、本発明には、さらに、管型PERC両面受光型太陽電池の専用装置が開示されている。上記専用装置は管型PECVD装置であり、上記管型PECVD装置は、ウエハー載置領域1と、炉体2と、特殊ガスキャビネット3と、真空システム4と、制御システム5と、グラファイトボート6とを備え、上記特殊ガスキャビネット3は、シランを導入するための第1のガスラインと、アンモニアガスを導入するための第2のガスラインと、トリメチルアルミニウムを導入するための第3のガスラインと、笑気ガスを導入するための第4のガスラインとを備える。第1のガスライン、第2のガスライン、第3のガスライン、及び第4のガスラインは、特殊ガスキャビネット3の内部に配置されている(未図示)。
【0091】
図10及び図11に示すように、グラファイトボート6は、シリコンウェハーの着脱に用いられ、上記グラファイトボート6は係合部60を含み、係合部60は、係合軸部61と、係合キャップ部62と、係合ベース部63とを含む。上記係合軸部61は係合ベース部63に取り付けられ、上記係合キャップ部62は係合軸部61と接合する。上記係合軸部61と係合キャップ部62及び係合ベース部63との間に係合凹溝部64が形成され、上記係合凹溝部64の深さは0.5〜1mmである。
【0092】
図11に示すように、上記係合凹溝部64の深さをhに設定すると、hは0.6〜0.8mmであることが好ましい。また、係合ベース部63の直径をDに設定すると、Dは6〜15mmであることが好ましい。また、係合キャップ部62の斜面角度をαに設定すると、αは35〜45度であることが好ましい。また、係合キャップ部62の厚さをaに設定すると、aは1〜1.3mmであることが好ましい。
【0093】
また、上記係合凹溝部64の深さhは0.7mmであり、係合ベース部63の直径Dは9mmであり、係合キャップ部62の斜面角度αは40度であり、係合キャップ部62の厚さaは1.2mmであることがより好ましい。
【0094】
なお、上記係合凹溝部64の深さhとは、係合凹溝部の内側の深さを意味し、主に係合軸部61と係合ベース部63がなす夾角側の深さを指す。係合凹溝部の深さh=(係合ベース部の直径−係合軸部の直径)/2。係合キャップ部62の斜面角度αとは、係合キャップ部の斜面と垂直方向との間の角度を指す。
【0095】
従来の係合凹溝部の深さhは1.75mmであり、係合ベース部の直径Dは9mmであり、係合キャップ部の斜面角度αは30度であり、係合キャップ部の厚さaは1mmである。従来の係合凹溝部の深さが大きいであるため、係合部でのシリコンウェハーと係合ベース部との間の隙間が大きすぎて、シリコンウェハーの裏面までにオーバーフローコーティングされたガスが多くなり、その結果、電池の前面の縁におけるボート歯形跡の割合が高くなる。また、係合キャップ部の角度が小さく、厚さが薄いため、自動挿入機構の調整余地が小さくなり、掻き傷の割合を効果的に低減することはできない。
【0096】
管型PECVD技術で裏面の膜を堆積させる場合、掻き傷とオーバーフローコーティングは対立するものである。自動挿入機構を調整することによって、シリコンウェハーがグラファイトボートの壁に接触せずに、グラファイトボートと一定の距離を保った状態で、シリコンウェハーを係合凹溝部に挿入する。これにより、シリコンウェハーとグラファイトボートの壁との摩擦が避けられる。しかし、シリコンウェハーとグラファイトボートとの距離が大きすぎる場合、掻き傷の割合が減少するが、シリコンウェハーをボートの壁に付着させることが困難となるため、オーバーフローコーティングの割合は増加する。また、上記距離が大きすぎる場合、シリコンウェハーは係合凹溝部に挿入されずに脱落する恐れがある。一方、シリコンウェハーとグラファイトボートとの間の距離が小さすぎる場合、シリコンウェハーがグラファイトボートにより強く密着するため、オーバーフローコーティングの割合が減少するが、掻き傷の割合は増加する。
【0097】
電池の前面の縁におけるボート歯形跡は、PECVD技術による裏面コーティングの場合の係合部に対応するものであり、ガス流が係合部から電池の前面まで達してオーバーフローコーティングしたものである。係合ベース部の厚さが、グラファイトボートの厚さよりもわずかに小さいため、係合部におけるシリコンウェハーと係合ベース部との間には隙間があり、裏面にコーティング膜を形成する場合、係合軸部の下方の両側からガス流が入り込み、シリコンウェハーの前面の縁に膜を堆積する。すなわち、半円形のボート歯形跡が形成される。
【0098】
本発明は、係合ベース部の直径D及び係合軸部の直径を調整することによって係合凹溝部の内側の深さhを減少させ、それにより、係合部におけるシリコンウェハーと係合ベース部との間の隙間を減少させ、さらに、ガス流がシリコンウェハーの裏面まで達してオーバーフローコーティングすることを減少させることで、前面の縁のボート歯形跡の割合を大幅に低減させる。
【0099】
自動挿入機構を調整することにより、シリコンウェハーをグラファイトボート内の所定の位置に挿入すると、吸盤が真空状態を解除し、シリコンウェハーが係合キャップ部の斜面に落下する。そして、重力により、シリコンウェハーが斜面から滑り落ちてグラファイトボートの壁に密着する。このような非接触型挿入方式が使用されるのは、シリコンウェハーの掻き傷の割合を減少するためである。
【0100】
本発明は、係合キャップ部の斜面の角度α及び係合キャップ部の厚さを適宜に増加させることにより、自動挿入機構を調整することによって、シリコンウェハーが挿入されるときにシリコンウェハーとグラファイトボートの壁との間の距離をわずかに増加させ、掻き傷の割合を減少させることができる。また、係合キャップ部の斜面の角度を増加させることにより、シリコンウェハーが滑り落ちるときにグラファイトボートの壁との衝撃力を低減させ、シリコンウェハーの破損率を下げる。
【0101】
なお、従来技術では、オーバーフローコーティングへの対応としては、通常、事後の修復が採用される。例えば、中国特許出願第201510945459.3号の明細書に開示されているPERC型結晶シリコン系太陽電池の製造におけるアルカリによる研磨方法においては、前面にPECVD法を利用して窒化ケイ素膜を形成した後、ベルト駆動法を用いるエッチング加工によって、オーバーフローコーティングにより裏面及び縁に形成された窒化ケイ素を除去する。これにより、従来の前面の膜がオーバーフローコーティングされることに起因して裏面でのパッシベーション効果が薄くなってしまうという課題を解決できる。しかし、本発明の管型PERC電池の場合では、裏面のコーティング膜がPN接合が設けられた前面にまでオーバーフローコーティングされているため、上記のようなアルカリによる研磨方法を採用すれば、前面のPN接合が破壊されてしまう。ここで、本発明は、コーティング工程及びコーティング膜の構造を調整することによって、製造中のオーバーフローコーティングの発生を回避することができ、そのため、オーバーフローコーティングの問題が本質的に解決される。本発明では、追加の工程は不要で、加工プロセスが単純化され、コストが節約される。本発明は、コストに敏感な太陽光発電産業にとって重要な意義がある。さらに、本発明によれば、掻き傷の問題も解決される。
【0102】
従って、本発明の実施は、以下の有益な効果が得られる。
【0103】
まず、本発明の管型PERC両面受光型太陽電池は、電池の裏面に複数のアルミニウムグリッド線が平行に配置され、上記アルミニウムグリッド線は、従来の片面受光型太陽電池における全アルミニウム裏面電界の代わりに裏面光吸収機能を果たすことだけではなく、電子を伝導するための裏面銀電極におけるフィンガー構造としても使用される。本発明の管型PERC両面受光型太陽電池を製造する場合、銀ペーストとアルミニウムペーストの使用量を節約し、製造コストを下げることができ、かつ、両面で光エネルギーを吸収することができ、太陽電池の応用範囲を著しく拡大するとともに、光電変換効率を改善する。
【0104】
次に、本発明は、上記のアルミニウムグリッド線が設けられたPERC両面受光型太陽電池に合わせるために、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に裏面複合膜を堆積させ、上記裏面複合膜は、酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、管型PECVD装置によってシリコンウェハーの裏面に堆積されたものである。管型PECVD装置では、プラズマを直接にシリコンウェハーの表面に衝突させる直接プラズマ法を使用することにより、膜に対するパッシベーション処理の効果が著しくなる。上記管型PECVD装置は、シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを備えており、上記4つのガスラインを単独または組み合わせて使用することによって、上記酸化アルミニウム膜、二酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、及び窒化ケイ素膜を形成する。シラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、及び笑気ガスをそれぞれ搬送する4つのガスラインを使用し、異なるガスの組み合わせ、異なるガス流量比、及び異なる堆積時間を採用することにより、異なる膜を形成することができる。また、窒化ケイ素膜または酸窒化ケイ素膜について、ガス流量比を調整することによって、異なる組成比や屈折率を有する窒化ケイ素膜または酸窒化ケイ素膜を得ることができる。本発明では、複合膜の組み合わせ順序、厚さ及び膜の組成を柔軟に調整することができるので、製造プロセスについて柔軟性と制御性を両立することができ、コストが削減され、かつ生産量が大きくなる。さらに、裏面複合膜を裏面のアルミニウムグリッド線に適応させて最適なパッシベーション効果を生み出すように裏面複合膜を最適化することで、PERC電池の光電変換効率を大幅に向上させることができる。
【0105】
そして、本発明は、係合軸部の直径及び係合ベース部の直径を調整することによって、係合凹溝部の内側の深さを減少させ、それにより、係合部におけるシリコンウェハーと係合ベース部との間の隙間を減少させ、さらに、ガス流がシリコンウェハーの裏面まで達してオーバーフローコーティングすることを減少させることで、電池前面の縁のボート歯形跡の割合を大幅に減少させる。また、係合キャップ部の斜面の角度及び係合キャップ部の厚さを適宜に増加させることにより、自動挿入機構を調整することで、シリコンウェハーが挿入されるときにシリコンウェハーとグラファイトボートの壁との間の距離をわずかに増加させ、掻き傷の割合を減少させるとともに、シリコンウェハーが滑り落ちるときにグラファイトボートの壁との衝撃力を低減させ、シリコンウェハーの破損率を下げることができる。
【0106】
さらに、窒化ケイ素が裏面複合膜の最上層に位置するため、堆積時間が増加するにつれて、シリコンウェハーの表面の膜が次第に厚くなり、シリコンウェハーが曲がり、シラン及びアンモニアガスがより容易に電池の前面の縁にオーバーフローコーティングされる。
本発明において、窒化ケイ素の堆積温度が390〜410℃に、時間が100〜400秒間に設定されており、窒化ケイ素の堆積時間を短縮し堆積温度を下げることによって、シリコンウェーハの曲率を減少させ、オーバーフローコーティングの割合を減少させることができる。窒化ケイ素の堆積温度領域は、390〜410℃と非常に狭く、オーバーフローコーティングを最小限に抑えることができる。しかし、堆積温度が390℃より低いと、オーバーフローコーティングの割合が増加する。
【0107】
同時に、大規模生産のニーズを満たし、窒化ケイ素の堆積時間の短縮による悪影響を克服するために、本発明においては、レーザー出力を14w以上に、レーザースクライブ速度を12m/s以上に、周波数を500KHz以上に設定する。これにより、裏面複合膜の単位面積当たりのレーザーエネルギー吸収量を高くし、レーザーで複合膜にグルービングすることができ、続いて印刷されたアルミニウムペーストがレーザーグルービング領域を介して基板シリコンと接触することを確保できる。
【0108】
以上のことから分かるように、本発明の管型PERC両面受光型太陽電池は、両面で太陽光を吸収することができ、光電転換効率、外観上及びEL検査上の歩留まりが高く、掻き傷とオーバーフローコーティングの問題を解決することができる。同時に、本発明は、上記電池を製造するための方法及び専用装置を提供する。上記方法は、製造プロセスがシンプルで、大規模な量産に適用することができ、かつ従来の製造ラインとの良好な適合性を有する。上記専用装置は、構造がシンプルで、コストが削減され、生産量が大きくなり、良品率も高くなる。
【0109】
なお、上記実施例は、本発明を実施するための形態を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。好ましい実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者なら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更及び均等な置換を行うことができることを理解されたい。
図1
図2
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図4
図5
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図10
図11