(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、前記走行用油圧ポンプと閉回路状に接続されて前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、車体の前部に設けられて上下方向に回動可能な荷役作業機と、前記エンジンにより駆動されて前記荷役作業機に作動油を供給する荷役用油圧ポンプと、前記荷役作業機を操作するための操作装置と、を備えた荷役作業車両において、
前記車体の走行状態を検出する走行状態検出器と、
前記操作装置による前記荷役作業機の操作状態を検出する操作状態検出器と、
前記エンジン、前記走行用油圧ポンプ、及び前記走行用油圧モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記走行状態検出器で検出された走行状態、及び前記操作状態検出器で検出された前記荷役作業機の操作状態に基づいて、前記車体の前進走行中における前記荷役作業機の上げ動作を特定する特定条件を満たすか否かを判定し、
前記特定条件を満たすと判定された場合、前記荷役作業機が非操作状態である前記車体の平地走行時における前記エンジンの最高回転速度よりも大きい所定の値に前記エンジンの最高回転速度を上昇させると共に、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積又は前記走行用油圧モータの押しのけ容積を調整して前記荷役作業機の上げ操作前における前記車体の最高車速よりも小さい所定の値に前記車体の最高車速を制限する
ことを特徴とする荷役作業車両。
エンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機に接続されて前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する電動モータと、車体の前部に設けられて上下方向に回動可能な荷役作業機と、前記エンジンにより駆動されて前記荷役作業機に作動油を供給する荷役用油圧ポンプと、前記荷役作業機を操作するための操作装置と、を備えた荷役作業車両において、
前記車体の走行状態を検出する走行状態検出器と、
前記操作装置による前記荷役作業機の操作状態を検出する操作状態検出器と、
前記エンジン及び前記電動モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記走行状態検出器で検出された走行状態、及び前記操作状態検出器で検出された前記荷役作業機の操作状態に基づいて、前記車体の前進走行中における前記荷役作業機の上げ動作を特定する特定条件を満たすか否かを判定し、
前記特定条件を満たすと判定された場合、前記荷役作業機が非操作状態である前記車体の平地走行時における前記エンジンの最高回転速度よりも大きい所定の値に前記エンジンの最高回転速度を上昇させると共に、前記電動モータの回転数を減少させて前記荷役作業機の上げ操作前における前記車体の最高車速よりも小さい所定の値に前記車体の最高車速を制限する
ことを特徴とする荷役作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係る荷役作業車両の一態様として、ホイールローダについて説明する。まず、本発明の各実施形態に係るホイールローダの全体構成及びその動作について、
図1〜3を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の各実施形態に係るホイールローダ1の外観を示す側面図である。
【0013】
ホイールローダ1は、前フレーム1A及び後フレーム1Bで構成される車体と、車体の前部に設けられた荷役作業機2と、を備えている。ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵するアーティキュレート式の作業車両である。前フレーム1Aと後フレーム1Bとは、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0014】
前フレーム1Aには左右一対の前輪11Aが、後フレーム1Bには左右一対の後輪11Bが、それぞれ設けられている。なお、
図1では、左右一対の前輪11A及び後輪11Bのうち、左側の前輪11A及び後輪11Bのみを示している。
【0015】
また、後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、エンジンやコントローラ、油圧ポンプ等の各機器を内部に収容する機械室13と、車体が傾倒しないように荷役作業機2とのバランスを保つためのカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前部に、カウンタウェイト14は後部に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0016】
荷役作業機2は、前フレーム1Aに取り付けられたリフトアーム21と、伸縮することによりリフトアーム21を前フレーム1Aに対して上下方向に回動させる一対のリフトアームシリンダ22と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット23と、伸縮することによりバケット23をリフトアーム21に対して上下方向に回動させるバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、一対のリフトアームシリンダ22やバケットシリンダ24へ圧油を導く複数の配管(不図示)と、を有している。なお、
図1では、一対のリフトアームシリンダ22のうち、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみを破線で示している。
【0017】
リフトアーム21は、各リフトアームシリンダ22のロッド220が伸びることにより上方向に回動し、各ロッド220が縮むことにより下方向に回動する。バケット23は、バケットシリンダ24のロッド240が伸びることによりチルト(リフトアーム21に対して上方向に回動)し、ロッド240が縮むことによりダンプ(リフトアーム21に対して下方向に回動)する。
【0018】
このホイールローダ1は、例えば露天掘り鉱山等において、土砂や鉱物等を掘削してダンプトラック等へ積み込む荷役作業を行うための荷役作業車両である。次に、ホイールローダ1が掘削作業及び積み込み作業を行う際の方法の1つであるVシェープローディングについて、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0019】
図2は、ホイールローダ1によるVシェープローディングについて説明する説明図である。
図3は、ホイールローダ1のライズラン操作を説明する説明図である。
【0020】
まず、ホイールローダ1は、掘削対象である地山100Aに向かって前進し(
図2に示す矢印X1)、バケット23を地山100Aに突入させた状態でチルトさせることにより掘削作業を行う。掘削作業が終わると、ホイールローダ1は、掘削した土砂や鉱物等の荷をバケット23に積んだ状態で元の場所に一旦後退する(
図2に示す矢印X2)。
【0021】
続いて、ホイールローダ1は、バケット23内の荷の積込先であるダンプトラック100Bに向かって前進し(
図2に示す矢印Y1)、ダンプトラック100Bの手前で停止する。
図2では、ダンプトラック100Bの手前で停止している状態のホイールローダ1を破線で示している。
【0022】
ホイールローダ1がダンプトラック100Bに向かって前進する際には、
図3に示すように、オペレータは、アクセルペダルをいっぱいまで踏み込んでフルアクセルにすると共に、リフトアーム操作レバーを操作してリフトアーム21を上方向に上昇させる(
図3に示す右側の状態)。続いて、オペレータは、フルアクセルの状態のままリフトアーム21をさらに上方向に上昇させる(
図3に示す中央の状態)。そして、オペレータは、ブレーキを作動させてホイールローダ1がダンプトラック100Bの手前で停止するように減速させ、バケット操作レバーを操作してバケット23をダンプさせてバケット23内の荷をダンプトラック100Bに積み込む(
図3に示す左側の状態)。
図3に示すこの一連の操作を「ライズラン操作」という。
【0023】
ホイールローダ1は、ダンプトラック100Bへの積み込み作業が終わると、バケット23内に荷が積まれていない状態で元の場所に後退する(
図2に示す矢印Y2)。このように、ホイールローダ1は、地山100Aとダンプトラック100Bとの間でV字形状に往復走行し、掘削作業及び積み込み作業を行う。
【0024】
次に、ホイールローダ1の駆動システムについて、実施形態ごとに説明する。
【0025】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムについて、
図4〜15を参照して説明する。
【0026】
(走行駆動システムについて)
まず、ホイールローダ1の走行駆動システムについて、
図4〜7を参照して説明する。
【0027】
図4は、本実施形態に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。
図5は、アクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
図6(a)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の押し退け容積との関係を示すグラフ、
図6(b)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の入力トルクとの関係を示すグラフ、
図6(c)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の吐出流量との関係を示すグラフである。
図7は、速度段ごとの車速と牽引力との関係を示すグラフである。
【0028】
本実施形態に係るホイールローダ1は、閉回路の油圧回路を有したHST式走行駆動装置を備え、このHST式走行駆動装置は、
図4に示すように、エンジン3と、エンジン3により駆動される走行用油圧ポンプとしてのHSTポンプ41と、HSTポンプ41を制御するための圧油を補給するHSTチャージポンプ41Aと、一対の管路400A,400Bを介してHSTポンプ41と閉回路状に接続された走行用油圧モータとしてのHSTモータ42と、エンジン3やHSTポンプ41及びHSTモータ42等の各機器を制御するコントローラ5と、を有して構成されている。
【0029】
HSTポンプ41は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧ポンプである。傾転角は、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってポンプ用レギュレータ410により調整される。
【0030】
HSTモータ42は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧モータであり、エンジン3の駆動力を車輪(前輪11A及び後輪11B)に伝達する。傾転角は、HSTポンプ41の場合と同様に、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってモータ用レギュレータ420により調整される。
【0031】
HST式走行駆動装置では、まず、運転室12内に設けられたアクセルペダル61をオペレータが踏み込むとエンジン3が回転し、エンジン3の駆動力によりHSTポンプ41が駆動する。そして、HSTポンプ41から吐出した圧油によりHSTモータ42が回転し、HSTモータ42からの出力トルクがアクスル15を介して前輪11A及び後輪11Bに伝達されることにより、ホイールローダ1が走行する。
【0032】
具体的には、アクセルペダル61の踏込量がアクセルペダル61に取り付けられた踏込量センサ610で検出され、検出された踏込量がコントローラ5に入力される。そして、入力された踏込量に応じた目標エンジン回転速度が指令信号としてコントローラ5からエンジン3に対して出力される。エンジン3は、この目標エンジン回転速度にしたがって回転数が制御される。エンジン3の回転速度は、
図4に示すように、エンジン3の出力軸に設けられたエンジン回転速度センサ71で検出する。
【0033】
図5に示すように、アクセルペダル61の踏込量と目標エンジン回転速度とは比例関係にあり、アクセルペダル61の踏込量が大きくなると目標エンジン回転速度は速くなる。そして、アクセルペダル61の踏込量がS2になった時に目標エンジン回転速度が最高回転速度Nmax1となる。このエンジン3の最高回転速度Nmax1は、荷役作業機2(リフトアーム21)が操作されていない状態(非操作状態)でホイールローダ1が平地を走行している場合に設定された値であり、エンジン3の燃費効率が良好となる設定値である。
【0034】
したがって、ホイールローダ1では、荷役作業機2が非操作状態で平地を走行している場合は、エンジン3の最高回転速度(以下、「エンジン最高回転速度」とする)をNmax1に制限して荷役作業機2側へのロス馬力を減らして走行時の燃費を向上させている。なお、以下の説明では、「荷役作業機2が非操作状態である車体の平地走行時におけるエンジン最高回転速度Nmax1」を単に「平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1」とする。
【0035】
図5において、アクセルペダル61の踏込量0〜S1の範囲(例えば0%〜20あるいは30%の範囲)は、アクセルペダル61の踏込量にかかわらず、目標エンジン回転速度が所定の最低回転速度Nminで一定となる不感帯として設定されている。なお、この不感帯の範囲は、任意に設定変更可能である。
【0036】
次に、エンジン3とHSTポンプ41との関係は、
図6(a)〜(c)に示す通りである。
【0037】
図6(a)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の押し退け容積Qとは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて(N1<N2)、押し退け容積は0から所定の値Qcまで大きくなる。エンジン回転速度がN2以上では、HSTポンプ41の押し退け容積は、エンジン回転速度にかかわらず所定の値Qcで一定となる。
【0038】
HSTポンプ41の入力トルクは、押し退け容積に吐出圧力を積算したもの(入力トルク=押し退け容積×吐出圧力)である。
図6(b)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の入力トルクTとは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて、入力トルクは0から所定の値Tcまで大きくなる。エンジン回転速度がN2以上では、HSTポンプ41の入力トルクは、エンジン回転速度にかかわらず所定の値Tcで一定となる。
【0039】
図6(c)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、HSTポンプ41の吐出流量qとエンジン3の回転速度Nとは二次の比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて、HSTポンプ41の吐出流量は0からq1まで増加する。エンジン回転速度がN2以上では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の吐出流量qとは一次の比例関係にある。
【0040】
したがって、エンジン3の回転速度Nが速くなるとHSTポンプ41の吐出流量qが増え、HSTポンプ41からHSTモータ42に流入する圧油の流量が増えるため、HSTモータ42の回転数が増大し、車速が速くなる。車速は、HSTモータ42の回転速度としてモータ回転速度センサ72で検出する(
図4参照)。
【0041】
このように、HST式走行駆動装置では、HSTポンプ41の吐出流量を連続的に増減させることにより車速を制御(変速)するため、ホイールローダ1は滑らかな発進、及び衝撃の少ない停止が可能となる。なお、車速を制御する際には、必ずしもHSTポンプ41の吐出流量を調整する必要はなく、HSTモータ42の押し退け容積を調整してもよい。
【0042】
ホイールローダ1の進行方向、すなわち前進又は後進の選択は、運転室12に設けられた前後進切換スイッチ62(
図4参照)によって行う。具体的には、オペレータが前後進切換スイッチ62で前進の位置に切り換えると、前進を示す前後進切換信号がコントローラ5に入力され、コントローラ5は、HSTポンプ41から吐出された圧油によって車体が前進方向となるように、ポンプ傾転を前進側にさせる指令信号をHSTポンプ41に対して出力する。そして、HSTポンプ41から吐出された圧油がHSTモータ42に導かれ、HSTモータ42が前進に対応する方向に回転して車体が前進する。車体の後進についても、同様の仕組みによって切り換わる。
【0043】
本実施形態では、最高車速を
図7に示すような1〜4速度段に設定可能な速度段スイッチ63(
図4参照)が設けられている。
図7に示すように、1速度段では最高車速がV1に、2速度段では最高車速がV2に、3速度段では最高車速がV3に、4速度段では最高車速がV4に、それぞれ設定されている。なお、V1、V2、V3及びV4の間の大小関係は、V1<V2<V3<V4である。
図7では、速度段ごとの最高車速と牽引力との関係を示しており、最高車速がV1では牽引力はF1に、最高車速がV2では牽引力はF2に、最高車速がV3では牽引力はF3に、最高車速がV4では牽引力は0に、それぞれ設定される。F1、F2、及びF3の間の大小関係は、F1>F2>F3である。
【0044】
また、1〜4速度段のうち、1速度段及び2速度段が「低速度段」に、3速度段及び4速度段が「中〜高速度段」に、それぞれ相当する。「低速度段」は、積込作業においてホイールローダ1が荷の積込先であるダンプトラック100Bに向かって走行する場合(
図2に示す矢印Y1)に選択され、このときの最高車速は例えば9〜15km/時に設定されている。
【0045】
(荷役作業機2の駆動システムについて)
次に、荷役作業機2の駆動システムについて、
図4及び
図8を参照して説明する。
【0046】
図8は、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量とスプールの開口面積との関係を示すグラフである。
【0047】
図4に示すように、ホイールローダ1は、エンジン3により駆動され、荷役作業機2に作動油を供給する荷役用油圧ポンプ43と、当該作動油を貯蔵する作動油タンク44と、リフトアーム21を操作するためのリフトアーム操作レバー210と、バケット23を操作するためのバケット操作レバー230と、リフトアームシリンダ22及びバケットシリンダ24のそれぞれと荷役用油圧ポンプ43との間に設けられて荷役用油圧ポンプ43からリフトアームシリンダ22及びバケットシリンダ24にそれぞれ供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブ64と、を備える。
【0048】
荷役用油圧ポンプ43は、本実施形態では、固定式の油圧ポンプが用いられ、第1管路401によりコントロールバルブ64に接続されている。荷役用油圧ポンプ43からの吐出圧は第1管路401上に設けられた吐出圧センサ73で検出され、検出された吐出圧に係る信号がコントローラ5に入力される。吐出圧センサ73は、荷役用油圧ポンプ43の吐出圧を検出する吐出圧検出器の一態様である。
【0049】
リフトアーム操作レバー210及びバケット操作レバー230はいずれも、荷役作業機2を操作するための操作装置の一態様であり、運転室12(
図1参照)内に設けられている。例えば、オペレータがリフトアーム操作レバー210を操作すると、その操作量に比例したパイロット圧が操作信号として生成される。
【0050】
図4に示すように、生成されたパイロット圧は、コントロールバルブ64の一対の受圧室に接続された一対のパイロット管路64L,64Rに導かれて、コントロールバルブ64に作用する。これにより、コントロールバルブ64内のスプールが当該パイロット圧に応じてストロークし、作動油が流れる方向及び流量が決まる。コントロールバルブ64は、第2管路402によりリフトアームシリンダ22のボトム室に接続され、第3管路403によりリフトアームシリンダ22のロッド室に接続されている。
【0051】
荷役用油圧ポンプ43から吐出された作動油は、第1管路401に導かれ、コントロールバルブ64を介して第2管路402又は第3管路403に導かれる。作動油が第2管路402に導かれると、リフトアームシリンダ22のボトム室に流入し、これによりリフトアームシリンダ22のロッド220が伸長してリフトアーム21が上昇する。一方、作動油が第3管路403に導かれると、リフトアームシリンダ22のロッド室に流入し、リフトアームシリンダ22のロッド220が縮んでリフトアーム21が下降する。
【0052】
なお、本実施形態では、リフトアーム操作レバー210及びバケット操作レバー230はそれぞれ油圧式レバーであるが、電気式レバーを用いてもよく、この場合には、操作量に応じた電流値が操作信号として生成される。
【0053】
図4に示すように、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量は、リフトアーム操作レバー210に取り付けられた操作量センサ74により検出される。また、パイロット圧は、リフトアーム21の上げ操作に対応したパイロット管路(
図4ではパイロット管路64R)上に設けられたパイロット圧センサ75により検出される。操作量センサ74は、操作装置であるリフトアーム操作レバー210の操作量を検出する操作量検出器の一態様であり、パイロット圧センサ75は、操作装置であるリフトアーム操作レバー210からの操作信号を検出する操作信号検出器の一態様である。
【0054】
図8に示すように、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量とコントロールバルブ64のスプールの開口面積とは比例関係にあり、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量が増えるとスプールの開口面積も大きくなる。したがって、リフトアーム21を上げる方向にリフトアーム操作レバー210を大きく操作すると、リフトアームシリンダ22のボトム室へ流入する作動油量が多くなり、ロッド220が速く伸長する。すなわち、リフトアーム操作レバー210の操作量が増大するにつれて、リフトアーム21の動作速度が速くなる。
【0055】
図8において、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量0〜10%の範囲は、リフトアーム操作レバー210を操作してもスプールは開口せず開口面積が0%となる不感帯として設定されている。また、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量85〜100%の範囲では、スプールの開口面積は100%で一定となっており、フルレバー操作状態が維持されている。なお、これらの設定範囲は、任意に変更可能である。
【0056】
ここで、荷役用油圧ポンプ43の吐出圧、リフトアーム操作レバー210の操作量、及びパイロット圧はそれぞれリフトアーム21の操作状態を示す指標であり、吐出圧センサ73、操作量センサ74、及びパイロット圧センサ75はいずれも、リフトアーム操作レバー210によるリフトアーム21の操作状態を検出する操作状態検出器の一態様である。
【0057】
リフトアーム21の操作状態を精度よく検出するためには、吐出圧センサ73、操作量センサ74、及びパイロット圧センサ75のそれぞれで検出された値を全て用いることが望ましいが、操作状態検出器としては、吐出圧センサ73、操作量センサ74、及びパイロット圧センサ75のうちの少なくともいずれかを用いればよい。
【0058】
バケット23の操作についても、リフトアーム21の操作と同様に、バケット操作レバー230の操作量に応じて生成されたパイロット圧がコントロールバルブ64に作用することによってコントロールバルブ64のスプールの開口面積が制御され、バケットシリンダ24へ流出入する作動油量が調整される。なお、
図4では図示を省略しているが、バケット23の操作状態を検出するためのセンサ等についても、油圧回路の各管路上に設けられている。
【0059】
(コントローラ5の構成)
次に、コントローラ5の構成について、
図9を参照して説明する。
【0060】
図9は、コントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0061】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、及び出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、前後進切換スイッチ62や速度段スイッチ63といった各種の操作装置、及び吐出圧センサ73や踏込量センサ610といった各種のセンサ等が入力I/Fに接続され、エンジン3やHSTモータ42のモータ用レギュレータ420等が出力I/Fに接続されている。
【0062】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された演算プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された演算プログラムを実行することにより、演算プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0063】
なお、本実施形態では、コントローラ5の構成をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより説明しているが、これに限らず、ホイールローダ1の側で実行される演算プログラムの機能を実現する集積回路を用いて構成してもよい。
【0064】
図9に示すように、コントローラ5は、データ取得部51と、判定部52と、演算部53と、記憶部54と、指令部55と、を含む。
【0065】
データ取得部51は、前後進切換スイッチ62から出力された前進あるいは後進の前後進切換信号、踏込量センサ610で検出されたアクセルペダル61の踏込量、吐出圧センサ73で検出された荷役用油圧ポンプ43の吐出圧、及び速度段スイッチ63から出力された速度段信号に関するデータをそれぞれ取得する。
【0066】
判定部52は、データ取得部51で取得された前後進切換信号及びアクセルペダル61の踏込量に基づいて、ホイールローダ1が前進走行中であるか否かを判定すると共に、データ取得部51で取得された吐出圧に基づいて、リフトアーム21の上げ操作が行われているか否かを判定する。以下、ホイールローダ1の前進走行中におけるリフトアーム21の上方向への動作を特定するための条件を「特定条件」とし、この「特定条件」を満たす場合とは、前述したライズラン操作を行っている場合である。
【0067】
ここで、前後進切換スイッチ62及び踏込量センサ610はそれぞれ、ホイールローダ1の車体の走行状態を検出する走行状態検出器の一態様である。なお、本実施形態では、前後進切換スイッチ62から出力された前進を示す前後進切換信号、及び踏込量センサ610で検出されたアクセルペダル61の踏込量によって車体の前進走行を判定しているが、これに限らず、例えば、プロペラシャフトの回転方向から車体の進行方向が前進または後進のいずれかであるかを検出する等、車体に搭載された他の走行状態検出器で検出された走行状態を踏まえて総合的に車体の前進走行を判定してもよい。
【0068】
また、本実施形態では、吐出圧センサ73で検出された吐出圧によってリフトアーム操作レバー210によるリフトアーム21の上げ操作を判定しているが、これに限らず、操作量センサ74で検出されたリフトアーム操作レバー210の操作量やパイロット圧センサ75で検出されたパイロット圧を用いてもよい。
【0069】
判定部52は、本実施形態では、データ取得部51で取得された速度段信号に基づいて、速度段スイッチ63で低速度段が選択されているか否かを判定すると共に、データ取得部51で取得された吐出圧に基づいて、リフトアーム21の上げ操作が停止されたか否かを判定する。なお、「リフトアーム21の上げ操作が停止された状態」とは、オペレータがリフトアーム操作レバー210を中立位置に戻した状態である。
【0070】
演算部53は、第1演算部53Aと、第2演算部53Bと、を含む。第1演算部53Aは、判定部52で特定条件を満たす(ライズラン操作中)と判定された場合に、平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1よりも大きい値Nmax2を演算する(Nmax2>Nmax1)。第2演算部53Bは、判定部52で特定条件を満たす(ライズラン操作中)と判定された場合に、リフトアーム21の上げ操作前におけるHSTモータ42の最小押し退け容積Qmin1よりも大きい値Qmin2を演算する(Qmin2>Qmin1)。
【0071】
記憶部54は、ホイールローダ1の走行判定やリフトアーム21の上げ操作判定等のホイールローダ1の動作に関する判定を行う際の閾値をそれぞれ記憶している。また、記憶部54は、平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1及びリフトアーム21の上げ操作前におけるHSTモータ42の最小押し退け容積Qmin1をそれぞれ記憶している。
【0072】
指令部55は、第1指令部55Aと、第2指令部55Bと、を含む。第1指令部55Aは、第1演算部53Aで演算された値Nmax2に基づく指令信号をエンジン3に対して出力する。第2指令部55Bは、第2演算部53Bで演算された値Qmin2に基づく指令信号をモータ用レギュレータ420に対して出力する。
【0073】
(コントローラ5内での処理)
次に、コントローラ5内で実行される具体的な処理の流れについて、
図10を参照して説明する。
【0074】
図10は、コントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0075】
まず、データ取得部51は、前後進切換スイッチ62から出力された前後進切換信号、踏込量センサ610から出力されたアクセルペダル61の踏込量、及び吐出圧センサ73から出力された荷役用油圧ポンプ43の吐出圧をそれぞれ取得する(ステップS501)。
【0076】
次に、判定部52は、ステップS501において取得した前後進切換信号、及びアクセルペダル61の踏込量に基づいて、ホイールローダ1が前進走行をしているか否かを判定する(ステップS502)。
【0077】
ステップS502において前進走行中であると判定された場合(ステップS502/YES)、データ取得部51は、速度段スイッチ63から出力された速度段信号を取得する(ステップS503)。続いて、判定部52は、ステップS503で取得した速度段信号に基づいて、速度段が低速度段であるか否かを判定する(ステップS504)。
【0078】
ステップS504において速度段が低速度段であると判定された場合(ステップS504/YES)、判定部52は、ステップS501で取得した吐出圧に基づいて、リフトアーム21の上げ操作が行われているか否かを判定する(ステップS505)。
【0079】
ステップS505においてリフトアーム21の上げ操作が行われていると判定された場合(ステップS505/YES)、第1演算部53Aは、平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1に所定の上昇分Nupを加えた値Nmax2(=Nmax1+Nup)を演算し(ステップS506)、第2演算部53Bは、HSTモータ42の最小押しのけ容積Qmin1に所定の増大分Qupを加えた値Qmin2(=Qmin1+Qup)を演算する(ステップS507)。
【0080】
次に、第1指令部55Aは、ステップS506で演算された値Nmax2に基づく指令信号をエンジン3に対して出力し(ステップS508)、第2指令部55Bは、ステップS507で演算された値Qmin2に基づく指令信号をモータ用レギュレータ420に対して出力する(ステップS509)。
【0081】
これにより、エンジン最高回転速度は、荷役作業機2が非操作状態で車体が平地を走行する際に設定された値であるNmax1から、Nmax1よりも大きい値であるNmax2に設定変更される。また、HSTモータ42の最小押し退け容積は、荷役作業機2の上げ操作前に設定された値であるQmin1から、Qmin1よりも大きい値であるQmin2に設定変更される。
【0082】
なお、本実施形態では、ステップS504において速度段が低速度段でないと判定された場合(ステップS504/NO)、ステップS503に戻り、速度段が低速度段になるまで先の処理に進まない。これは、ライズラン操作を行うにあたっては低速度段(特に、
図7における2速度段)が適しており、低速度段が選択されている場合に限ってエンジン最高回転速度の上昇及び車速の制限を行うことが望ましいからである。
【0083】
次に、データ取得部51は、吐出圧センサ73から出力された荷役用油圧ポンプ43の吐出圧を再度取得する(ステップS510)。続いて、判定部52は、ステップS510で取得した吐出圧に基づいて、リフトアーム21の上げ操作が停止されたか否かを判定する(ステップS511)。
【0084】
ステップS511においてリフトアーム21の上げ操作が停止されたと判定された場合(ステップS511/YES)、第1指令部55Aは、Nmax2に上昇させたエンジン最高回転速度を平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1に戻す指令信号をエンジン3に対して出力し(ステップS512)、第2指令部55Bは、Qmin2に増大させたHSTモータ42の最小押しのけ容積をリフトアーム21の上げ操作前におけるHSTモータ42の最小押しのけ容積Qmin1に戻す指令信号をモータ用レギュレータ420に対して出力し(ステップS513)、コントローラ5における処理が終了する。
【0085】
なお、ステップS511においてリフトアーム21の上げ操作が停止されたと判定されなかった場合、すなわち継続してリフトアーム21の上げ操作が行われている場合(ステップS511/NO)はステップS510に戻る。
【0086】
また、ステップS502において前進走行中でない(停車中又は後進走行中である)と判定された場合(ステップS502/NO)、及びステップS505においてリフトアーム21の上げ操作を行っていないと判定された場合(ステップS505/NO)はいずれも、特定条件を満たさないため、コントローラ5における処理が終了する。すなわち、「特定条件を満たす場合」とは、ステップS502においてYESであり、かつステップS505においてYESとなる場合である。
【0087】
本実施形態では、特定条件を満たすか否かを判定する際に、吐出圧センサ73で検出された荷役用油圧ポンプ43の吐出圧を用いてリフトアーム21の上げ操作の有無を判定しているため、例えばリフトアームシリンダ22のボトム圧を用いた場合と比べて、リフトアーム21の上げ操作の誤判定を低減することができる。リフトアーム21の上げ操作を行っていない状態、すなわちリフトアーム操作レバー210が中立位置であっても、リフトアームシリンダ22のボトム室側にはバケット23の重量及び積荷の重量を保持する圧力が作用するが、これに対し、荷役用油圧ポンプ43の吐出圧を検出することで、リフトアーム21の上げ操作時であることを確実に判定することができるからである。
【0088】
(コントローラ5による制御に伴う作用について)
次に、コントローラ5による制御に伴う作用について、
図11〜15を参照して説明する。
【0089】
図11(a)は荷役用油圧ポンプ43の吐出圧とエンジン最高回転速度の上昇分との関係を示すグラフであり、
図11(b)は荷役用油圧ポンプ43の吐出圧とHSTモータ42の最小押し退け容積の増大分との関係を示すグラフである。
図12は、コントローラ5による制御が実行された場合におけるアクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
図13は、コントローラ5による制御が実行された場合における走行負荷圧力とHSTモータ42の最小押し退け容積との関係を示すグラフである。
図14は、コントローラ5による制御が実行された場合における車速と牽引力との関係を示すグラフである。
【0090】
図11(a)に示すように、吐出圧センサ73で検出された吐出圧がリフトアーム21の上げ操作開始に係る圧力(例えば、リリーフ圧に対して10%程度)となった場合、すなわち判定部52においてリフトアーム21の上げ操作が行われたと判定されると(
図10に示すステップS505/YES)、エンジン最高回転速度の上昇分が所定の値Nupまで一気に大きくなり、その後、吐出圧の増大に関係なく所定の値Nupで一定となる。
【0091】
図12に示すように、ホイールローダ1がライズラン操作を開始した場合には、エンジン最高回転速度が、平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1(
図12において一点鎖線で示す)からNmax2へ一気に上昇する。これにより、荷役用油圧ポンプ43の吐出流量が一気に増大し、リフトアーム21を上方向に素早く動作させることができる。なお、最高回転速度Nmax2のときのアクセルペダル61の踏込量は、平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1に対応する踏込量S2よりも大きいS3となる(S3>S2)。
【0092】
また、
図11(b)に示すように、判定部52においてリフトアーム21の上げ操作が行われたと判定されると(
図10に示すステップS505/YES)、HSTモータ42の最小押し退け容積の増大分が所定の値Qupまで一気に大きくなり、その後、吐出圧の増大に関係なく所定の値Qupで一定となる。
【0093】
図13に示すように、ホイールローダ1がライズラン操作を開始した場合には、HSTモータ42の最小押し退け容積が、リフトアーム21の上げ操作前の最小押し退け容積Qmin1(
図13において一点鎖線で示す)からQmin2へ一気に増大する。これにより、
図14に示すように、ホイールローダ1の最高車速が、リフトアーム21の上げ操作前における最高車速Vmax1(
図14において一点鎖線で示す)からVmax1よりも小さい値Vmax2に制限(減速)される。なお、
図14に示す車速と牽引力との関係は、速度段が低速度段の場合におけるものである。
【0094】
このように、リフトアーム21を上方向に短時間で素早く動作させ、かつ車速に制限をかける(車速を減速させる)ことにより、コントローラ5による当該制御を行わない場合と比べて、ホイールローダ1からダンプトラック100Bまでの走行距離(
図2において実線で示したホイールローダ1から破線で示したホイールローダ1までの距離)を短くすることが可能となり、例えば作業現場が狭く限られた走行距離しか確保できないような場合であっても積込作業を行うことができる。
【0095】
なお、リフトアーム21を上方向に短時間で素早く動作させることにより、リフトアーム21の上げ動作速度に対して車速に制限をかけるだけの制御と比べてVシェープローディングにおける作業のサイクルタイムが短縮されるので、作業効率が向上すると共に、荷役作業中においてもホイールローダ1の燃費の低減を図ることができる。
【0096】
なお、本実施形態では、HSTモータ42の最小押し退け容積を増大させることにより車速を制限させていたが、これに限らず、HSTポンプ41の最大押し退け容積を減少させることにより車速を制限してもよい。
【0097】
次に、コントローラ5による制御を実行した場合の各機器の一連の動作について、
図15を用いて説明する。
【0098】
図15は、コントローラ5による制御に伴う各機器の動作について説明する図である。
【0099】
まず、オペレータがアクセルペダル61を踏み込むと(踏込開始)、エンジン3の回転速度が上昇して車速が最高車速Vmax1に向かって徐々に速くなっていく。なお、このとき、エンジン最高回転速度はNmax1に、HSTモータ42の最小押し退け容積はQmin1に、それぞれ制限されている。
【0100】
次に、オペレータがリフトアーム操作レバー210を上げる方向に操作すると(上げ操作開始)、コントローラ5の制御により、エンジン最高回転速度がNmax1からNmax2に一気に上昇すると共に、HSTモータ42の最小押し退け容積がQmin1からQmin2に一気に増大する。これにより、荷役用油圧ポンプ43の吐出流量が所定の吐出流量に一気に増大してリフトアーム21の上げ動作速度が時間に比例して速くなると共に、最高車速がVmax1からVmax2に制限(減速)される。
【0101】
そして、オペレータがリフトアーム操作レバー210を中立位置に戻してリフトアーム21の上げ操作を止めると(上げ操作停止)、コントローラ5の制御により、エンジン最高回転速度がNmax2からNmax1に下げ戻されると共に、HSTモータ42の最小押し退け容積がQmin2からQmin1に戻される。これにより、荷役用油圧ポンプ43の吐出流量がリフトアーム21の上げ操作前の吐出流量まで減少してリフトアーム21は上方向に上がりきった状態で動作が停止すると共に、最高車速がVmax2からVmax1に戻る。
【0102】
このように、本実施形態では、オペレータがリフトアーム21の上げ操作を止めると、直ちにエンジン最高回転速度を平地走行時のエンジン最高回転速度Nmax1に戻すと共に、最高車速をリフトアーム21の操作前の最高車速Vmax1に戻し、コントローラ5によるエンジン最高回転速度の上昇及び車速の制限を解除している。
【0103】
仮に、オペレータがリフトアーム21の上げ操作を止めた際にコントローラ5によるエンジン最高回転速度の上昇及び車速の制限を継続すると、エンジン最高回転速度がNmax1よりも大きいNmax2の状態でエンジン3が回転することになり、車速が一瞬高くなってしまう。しかしながら、本実施形態のように、オペレータがリフトアーム21の上げ操作を止めた際にコントローラ5による制限を直ちに解除することにより、車速が一瞬高くなってしまうといった問題を回避することができる。
【0104】
(変形例)
次に、本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1の変形例について
図16を参照して説明する。
図16において、第1実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0105】
図16は、変形例に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。
【0106】
本変形例に係るホイールローダ1は、HMT式の走行駆動システムによって車体の走行が制御されている。HMT式走行駆動装置は、HSTポンプ41及びHSTモータ42が一対の管路400A,400Bを介して閉回路状に接続されたHST4と、機械伝動部80と、を備えており、エンジン3の駆動力が遊星歯車機構81を経由してHST4及び機械伝動部80へパラレルに伝達される。
【0107】
遊星歯車機構81は、入力軸82に固定されたサンギア811と、サンギア811の外周に歯合された複数のプラネタリギア812と、複数のプラネタリギア812をそれぞれ軸支する遊星キャリア813と、複数のプラネタリギア812の外周に歯合されたリングギア814と、リングギア814の外周に歯合されたポンプ入力ギア815と、を有している。
【0108】
エンジン3の出力トルクは、前進用油圧クラッチ83A、後進用油圧クラッチ83B、及びクラッチシャフト83Cを有するクラッチ装置83を経由して入力軸82に伝達され、入力軸82から遊星歯車機構81に伝達される。
【0109】
ここで、遊星歯車機構81の遊星キャリア813は出力軸84に固定されており、これにより、エンジン3の駆動力が機械伝動部80に伝達される。機械伝動部80に伝達されたエンジン3の駆動力は、出力軸84に接続されたプロペラシャフト85を介してアクスル15に伝達され、これにより前輪11A及び後輪11Bが駆動される。
【0110】
また、遊星歯車機構81のポンプ入力ギア815はHSTポンプ41の回転軸に固定されており、エンジン3の駆動力がHST4にも伝達される。HSTモータ42の回転軸には、モータ出力ギア86が固定されており、モータ出力ギア86は、出力軸84のギア840に歯合している。したがって、HST4に伝達されたエンジン3の駆動力についても、出力軸84に接続されたプロペラシャフト85を介してアクスル15に伝達され、これにより、前輪11A及び後輪11Bが駆動される。
【0111】
このように、HST4と機械伝動部80とを組み合わせて変速機を構成することにより、第1実施形態で説明したHST式の走行駆動システムよりも伝達効率を高めることができる。なお、
図16では、遊星歯車機構81からの出力をHST4へ入力する入力分割型のHMT式走行駆動システムを示しているが、これに限らず、HST4からの出力を遊星歯車機構81に入力する出力分割型のHMT式走行駆動システムであってもよい。
【0112】
本変形例においても、第1実施形態と同様に、コントローラ5は、特定条件を満たす場合に、エンジン最高回転速度をNmax1からNmax2へ一気に上昇させてリフトアーム21を上方向に素早く動作させると共に、HSTモータ42の最小押し退け容積をQmin1からQmin2へ一気に増大させて車速を制限する。これにより、第1実施形態で記載した作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0113】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るホイールローダ1について、
図17を参照して説明する。
図17において、第1実施形態及び変形例に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0114】
図17は、第2実施形態に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。
【0115】
本実施形態に係るホイールローダ1は、EMT式の走行駆動システムによって車体の走行が制御されている。EMT式走行駆動装置では、前述したHMT式走行駆動装置において、HSTポンプ41に代えて発電機91が、HSTモータ42に代えて電動モータ92が、それぞれ設けられている。
【0116】
本実施形態では、コントローラ5は、特定条件を満たす場合に、電動モータ92の回転数を所定の回転数まで一気に減少させて車速を制限する。なお、電動モータ92の回転数は、電動モータ92への電流値又は電圧値を変化させることにより調整する。
【0117】
具体的には、
図10に示すステップS507に相当するステップにおいて、第2演算部53Bは、電動モータ92の回転数がリフトアーム21の上げ操作前における回転数N1よりも所定の減少分Ndownだけ少ない回転数N2(=N1−Ndown)となるように、電動モータ92への電流値又は電圧値を演算する。
【0118】
すなわち、コントローラ5は、荷役用油圧ポンプ43の吐出圧と電動モータ92の回転数の減少分との間に
図11(b)に示す関係と同様の関係が成立するように、電動モータ92の回転数を制限する。これにより、第1実施形態で記載した作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明した。なお、本発明は上記した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な他の変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態及び変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0120】
例えば、上記各実施形態及び変形例では、荷役作業車両の一態様としてホイールローダについて説明したが、これに限らず、例えばフォークリフト等の荷役作業機を備える作業車両であれば本発明を適用することが可能である。
【0121】
また、上記各実施形態及び変形例では、荷役用油圧ポンプ43は固定容量型の油圧ポンプを用いたが、これに限らず、可変容量型の油圧ポンプを用いても良い。