(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825220
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】人工芝
(51)【国際特許分類】
E01C 13/08 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
E01C13/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-74084(P2016-74084)
(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2017-186746(P2017-186746A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100195305
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 恵
(72)【発明者】
【氏名】田村 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】羽嶋 宏治
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 孝志
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−002783(JP,A)
【文献】
特開2013−049285(JP,A)
【文献】
特開平07−125097(JP,A)
【文献】
特開平07−324304(JP,A)
【文献】
実開昭59−089102(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0040073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に設置される人工芝であって、
表面及び裏面を有し、熱可塑性エラストマーから構成される(ただし、不織布の表面に熱可塑性エラストマーを塗布したものを除く)基材と、
前記基材の前記表面上に起立する芝葉を模した多数のパイルと、
前記基材の前記裏面に形成され、前記基材及び前記パイルと固定されるバッキング層と、
前記バッキング層の裏面と前記設置面との間に設置されるクッション層と
を備え、
前記バッキング層と前記クッション層とは、部分的に固定されている、
人工芝。
【請求項2】
設置面上に設置される人工芝であって、
表面及び裏面を有し、熱可塑性エラストマーから構成される(ただし、不織布の表面に熱可塑性エラストマーを塗布したものを除く)基材と、
前記基材の前記表面上に起立する芝葉を模した多数のパイルと、
前記基材の前記裏面と前記設置面との間に設置されるクッション層と
を備え、
前記基材の前記裏面と前記クッション層とは、部分的に固定されている、
人工芝。
【請求項3】
前記基材は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーから構成される、
請求項1又は2に記載の人工芝。
【請求項4】
前記パイルは、プラスチック製である、
請求項1から3のいずれかに記載の人工芝。
【請求項5】
前記クッション層は、発泡材料又はエラストマーから構成される、
請求項1から4のいずれかに記載の人工芝。
【請求項6】
前記クッション層の厚みは、3mm以上かつ10mm以下である、
請求項1から5のいずれかに記載の人工芝。
【請求項7】
前記基材は、フィルム状に成形されている、
請求項1から6のいずれかに記載の人工芝。
【請求項8】
前記基材は、網目状に成形されている、
請求項1から6のいずれかに記載の人工芝。
【請求項9】
前記基材と、前記パイルとは、一体的に形成されている、
請求項2から8のいずれかに記載の人工芝。
【請求項10】
請求項2から9のいずれかに記載の人工芝の製造方法であって、
前記基材及び前記パイルの一方である第1部位を成形するステップと、
前記第1部位に対し、インサート成形により、前記基材及び前記パイルの他方である第2部位を一体成形するステップと
を含む、人工芝の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、基材上に起立する芝葉を模した多数のパイルとを有する人工芝及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サッカー場やラグビー場、野球場等の様々な運動競技施設において、人工芝が普及している。人工芝は、通常、フィルム状の基材に適切な間隔で芝葉を模したプラスチック製の糸が縫い込まれることで製造され、芝葉側を上にして基材をアスファルト等の設置面の上に敷き広げられることにより施工される。基材の材料としては、従来、ポリプロピレン等の硬質樹脂が使用されてきた。
【0003】
しかしながら、硬質樹脂を基材とした人工芝は、上下方向の変形に対して硬く、人工芝上でプレーするプレイヤーにとって快適とならないことがある。そのため、特許文献1に示されるように、基材とその下の設置面との間に発泡材料等からなるクッション層が設置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−68002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基材が硬質樹脂からなり、その引張弾性率が高いと、基材の下にクッション層を設置したとしても、基材がクッション層の変形に十分に追従できない。その結果、クッション材のクッション性が十分に活かされず、そればかりか、基材に強い負荷がかかると、基材の破れが発生し易くなる。
【0006】
本発明は、耐久性の高い人工芝及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係る人工芝は、設置面上に設置される人工芝であって、表面及び裏面を有する基材と、前記基材の前記表面上に起立する芝葉を模した多数のパイルとを備える。前記基材は、エラストマー又は軟質樹脂から構成される。
【0008】
本発明の第2観点に係る人工芝は、第1観点に係る人工芝であって、前記基材は、エラストマーから構成される。
【0009】
本発明の第3観点に係る人工芝は、第2観点に係る人工芝であって、前記基材は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーから構成される。
【0010】
本発明の第4観点に係る人工芝は、第1観点から第3観点のいずれかに係る人工芝であって、前記パイルは、プラスチック製である。
【0011】
本発明の第5観点に係る人工芝は、第1観点から第4観点のいずれかに係る人工芝であって、前記基材の前記裏面と前記設置面との間に設置されるクッション層をさらに備える。
【0012】
本発明の第6観点に係る人工芝は、第5観点に係る人工芝であって、前記クッション層は、発泡材料又はエラストマーから構成される。
【0013】
本発明の第7観点に係る人工芝は、第5観点又は第6観点に係る人工芝であって、前記クッション層の厚みは、3mm以上かつ10mm以下である。
【0014】
本発明の第8観点に係る人工芝は、第1観点から第7観点のいずれかに係る人工芝であって、前記基材は、フィルム状に成形されている。
【0015】
本発明の第9観点に係る人工芝は、第1観点から第7観点のいずれかに係る人工芝であって、前記基材は、網目状に成形されている。
【0016】
本発明の第10観点に係る人工芝は、第1観点から第9観点のいずれかに係る人工芝であって、前記基材と、前記パイルとは、一体的に形成されている。
【0017】
本発明の第11観点に係る人工芝の製造方法は、第1観点から第10観点のいずれかに係る人工芝の製造方法であって、以下のステップを含む。
(1)前記基材及び前記パイルの一方である第1部位を成形するステップ。
(2)前記第1部位に対し、インサート成形により、前記基材及び前記パイルの他方である第2部位を一体成形するステップ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、人工芝及びその製造方法が提供される。ここでの人工芝は、基材と、基材上に起立する芝葉を模した多数のパイルとを有し、基材は、エラストマー又は軟質樹脂から構成される。従って、かかる人工芝がクッション層を介して設置面上に設置された場合において、基材は、外力を受けた際にクッション層の変形に十分に追従することができる。また、仮にクッション層が設置されない場合においても、基材は、弾性変形により外力を吸収することができる。その結果、基材の破れが発生しにくく、人工芝の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る人工芝の側方断面図。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る人工芝の側方断面図。
【
図4A】第2実施形態に係る基材の成形工程を示す側方断面図。
【
図4B】第2実施形態に係る基材の成形工程を示す平面図。
【
図4C】第2実施形態に係るパイルの成形工程を示す側方断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る人工芝及びその製造方法について説明する。
【0021】
<1.第1実施形態>
以下、第1実施形態に係る人工芝1の構成について説明する。人工芝1は、サッカー場やラグビー場、野球場等の各種運動競技施設において、
図1に示すように、アスファルト面や地面等の設置面6上に設置される。人工芝1は、基材2と、基材2の表面2a上に起立する芝葉を模した多数のパイル3とを有する。本実施形態では、基材2は、フィルム状に形成されており、パイル3は、基材2上に所定の間隔をあけて植設されている。なお、本明細書においてフィルム状というときには、例えば、合成樹脂材料をTダイ法により成形することで得られるフィルムの形状のように、薄く、概ね一定の厚みを有し、視認可能な程度の大きさの空隙が形成されていない又は殆ど形成されていないフィルムの形状を意味するものとする。
【0022】
基材2の裏面2b側には、パイル3が抜け落ちるのを防止するためバッキング剤が塗布され、バッキング層4が形成されている。バッキング層4は、典型的にはSBRラテックスのような、比較的柔らかい材料から構成され、弾性を有し、本実施形態では、ポリエチレンとSBRラテックスの混合体から構成される。なお、バッキング層4は、省略することもできる。
【0023】
基材2は、エラストマーから構成される。本実施形態では、基材2は、熱可塑性エラストマー、特に熱可塑性ポリウレタンエラストマーから構成される。しかしながら、基材2として、熱硬化性エラストマーを使用することもできる。また、基材2として、プラストマーと呼ばれる、比較的柔らかい樹脂(軟質樹脂)を使用することもできる。すなわち、基材2は、従来のポリプロピレンやポリエチレン等の硬質樹脂から構成される基材と比較して、柔らかく、弾性に優れる。すなわち、基材2は、弾性率が低く、外力を受けて変形しやすく、伸び易い。基材2の厚みW1は、本実施形態では、W1=100μmである。しかしながら、厚みW1は、これ以上にも、これ以下にも設定することができ、好ましくは、50μm≦W1<1000μmであり、より好ましくは、100μm≦W1≦500μmである。一方で、W1≧1mmとすることもできる。
【0024】
パイル3は、芝葉の外観を実現することができる限り、その形態及び材質は特に限定されず、典型的にはプラスチック(樹脂)製であり、本実施形態では、ポリエチレン製である。しかしながら、別の好ましい例としては、パイル3は、ポリプロピレン等の他の熱可塑性樹脂から構成することができる。また、パイル3は、以上のような材料を一軸延伸加工した扁平なフィラメント糸から形成することができる。本実施形態では、パイル3は、タフティングマシンを用いて、パイル3となるプラスチック糸をフィルム状の基材2に対しタフティングすることにより、基材2に縫い込まれている。基材2の表面2aからパイル3の先端までの長さW2も、特に限定されないが、20mm≦W2<50mm程度と比較的短くすることもできるし(一般にショートパイルと呼ばれる)、50mm≦W2≦70mm程度と比較的長くすることもできる(一般にロングパイルと呼ばれる)。なお、パイル3は、自重等により多少湾曲して傾斜するが、W2は、パイル3を直線状に起立させたときの基材2の表面2aからの長さである。
【0025】
以上の基材2と、パイル3と、バッキング層4とは、互いに固定されており、1枚のカーペット状である。この意味で、以下、基材2と、パイル3と、バッキング層4とからなる部位を、カーペット部品と呼ぶことがある。
【0026】
また、本実施形態では、基材2の表面2a上においてパイル3間には、充填材5が充填される。この充填材5は、プレイヤーがプレー中に怪我をしないようにするためのクッション材としての役割を果たす他、芝葉としてのパイル3を保護することもできる。また、競技に使用されるボールの弾み具合を調整したり、選手の走り易さをコントロールすることも可能であり、人工芝1上での競技のプレー性能を向上させることもできる。なお、このような充填材5は、省略することも可能であるが、パイル3がロングパイルと呼ばれる比較的高さのあるパイルである場合に、特に好ましく使用される。
【0027】
充填材5としては、弾性充填材及び硬質充填材の少なくとも一方を用いることができる。弾性充填材としては、例えば、廃タイヤの破砕品などからなるゴムチップを用いることができる。硬質充填材としては、例えば、砂を用いることができる。
【0028】
また、設置面6と基材2の裏面2bとの間、より正確には、設置面6とバッキング層4の裏面との間には、クッション層7が形成される。クッション層7も、充填材5と同じく、プレイヤーがプレー中に怪我をしないようにするためのクッション材としての役割を果たす他、競技に使用されるボールの弾み具合を調整したり、選手の走り易さをコントロールすることが可能であり、人工芝1上での競技のプレー性能を向上させることができる。
【0029】
クッション層7は、以上のような役割を実現することができる限り、その形態及び材質は特に限定されず、典型的には、発泡材料からなり、本実施形態では、発泡ポリエチレン製である。別の好ましい例としては、クッション層7は、エラストマーから構成することができ、熱硬化性エラストマーであっても、熱可塑性エラストマーであってもよい。本実施形態では、クッション層7は、シート状である。外力が加えられていない状態におけるクッション層7の厚みW3は、好ましくは、3mm≦W3≦10mmである。或いは、12mm≦W3≦45mmのように比較的厚く設定することも好ましく、さらに好ましくは、20mm≦W3≦25mmである。
【0030】
基材2、バッキング層4及びパイル3を含むカーペット部品は、バッキング層4を下にして、クッション層7の上に敷かれる。カーペット部品は、その自重により、クッション層7上で殆ど移動不能となる。従って、カーペット部品とクッション層7とは固定する必要はないが、両者をより強固に固定すべく、両者の境界に接着剤8を塗布することもできる(
図1参照)。このとき、施工性の観点からは、接着剤8は、クッション層7の上面全体ないしバッキング層4の下面全体に塗布せずに、部分的に塗布することが好ましい。また、接着剤を部分的に塗布することは、接着剤の層が人工芝1のクッション性を低下させることのない点でも優れている。カーペット部品とクッション層7との固定は、ホッチキス止め、ピン止め等により行うこともできる。
【0031】
上述したように、基材2及びバッキング層4が柔らかい材料から構成される場合、人工芝1上でプレーするプレイヤーの激しい運動を受けときでも、基材2及びバッキング層4を含むカーペット部品は、クッション層7の変形に十分に追従することができる。その結果、クッション層7のクッション性が十分に発揮され、人工芝1全体でのクッション性が向上し、プレイヤーに快適な競技場所を提供することができる。また、このクッション性により、プレイヤーの運動によりカーペット部品に大きな外力がかかったとしても、当該外力がカーペット部品及びクッション層7の収縮により吸収される。また、仮にクッション層7が設置されない場合においても、カーペット部品は、弾性変形により外力を吸収することができる。その結果、基材2の破れが発生しにくく、人工芝1の耐久性が向上する。
【0032】
<2.第2実施形態>
以下、第2実施形態に係る人工芝101について説明する。
図2に示すように、第2実施形態に係る人工芝101は、第1実施形態に係る人工芝1と多くの部分で共通し、主たる相違点は、基材2に代わる基材102の構成にある。従って、以下では、簡単のため、主として第1実施形態との相違点について述べ、第1実施形態と同様の要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
図2は、本実施形態に係る人工芝101の側方断面図であり、
図3は、基材102の部分的な平面図である。同図に示すように、基材102は、網目状であり、本実施形態では、特に格子状である。すなわち、基材102は、視認可能な程度のサイズの多数の空隙を有しており、これにより、材質だけでなく、構造の面からも、上下方向の外力に対して変形し易く、伸び易く構成されている。なお、基材102の素材に関しては、第1実施形態と同様である。
【0034】
芝葉を模したパイル3は、本実施形態でも、基材102の表面102a上に起立している。より具体的には、基材102の格子の各交差点から、多数本のパイル3が起立している。格子のサイズは、適宜設定することができるが、本実施形態では、10mm×10mmである。また、格子を構成する直線部分の断面は円形であり、その直径φ=1mmである。よって、基材102の厚さW1=1mmである。
【0035】
以上のような格子状の基材102の場合、第1実施形態のように、タフティングによりプラスチック糸を基材102に縫い込むことは困難である。そのため、本実施形態では、基材102とパイル3とを含むカーペット部品は、以下の方法で製造される。なお、本実施形態では、基材102の裏面102b側において、バッキング層4は形成されない。
【0036】
まず、基材102が、射出成形により成形される。
図4A及び
図4Bは、基材102の成形工程を示している。同図に示すように、本工程では、一対の金型10a,10bが使用され、これらが対面させられたときに、内部に格子形状の空洞S1が形成される。そして、空洞S1内と外部とを連通するゲート12を介して、射出機から加熱溶融された基材102の材料を空洞S1内に射出する。このとき、材料には、適当な射出圧が加えられる。以上の結果、空洞S1内に基材102の材料が押し込まれ、充填される。その後、金型10a,10bを冷却して材料を固化し、空洞S1の形状の基材102が形成される。なお、平面視である
図4Bでは、本来ゲート12は視認できないが、参考としてゲート12の位置が一点鎖線で示されている。その後、金型10a,10bを開くことで、基材102が分離される。
【0037】
続いて、芝葉を模したパイル3を成形する。パイル3は、インサート成形により、基材102の表面102aに一体成形される。
図4Cは、パイル3の成形工程を示している。同図に示すように、本工程では、金型10a,10bに代えて、金型10c,10dが使用される。金型10d内には、金型10aに形成されていた空洞(空洞S1の約半分)と同様の空洞が形成されており、金型10c内にも、金型10bに形成されていた空洞(空洞S1の約半分)と同様の空洞が形成されている。また、金型10c内には、芝葉の形状の空洞S2も形成されており、金型10d内には、この空洞S2にパイル3の材料を流し込むためのゲート13も形成されている。そして、金型10cと金型10dとを対面させる。このとき、一対の金型10c,10dにより形成される空洞S1と同様の空洞S3内に、基材102をインサートとして閉じ込める。なお、金型10cと金型10dとが対面した状態において、金型10c内の空洞S2は、基材102の各格子の交差点に対応する位置に配置される。同様に、金型10cと金型10dとが対面した状態において、金型10d内のゲート13も、基材102の各格子の交差点に対応する位置に配置される。そして、空洞S3内、ひいては空洞S2内と外部とを連通するゲート13を介して、射出機から加熱溶融されたパイル3の材料を空洞S2内に射出する。なお、空洞S2内にパイル3の材料を流し込むことができるように、空洞S3は、空洞S2の根元部分において僅かに空洞S1よりも大きくなるように構成されている。そのため、基材102が配置される空洞S3内には、空洞S2の根元部分において僅かに隙間が空いており、当該隙間を介して、パイル3の材料が空洞S2内に流れ込む。このとき、基材102の表面全体に硬質のパイル3の材料が付着してしまうと、最終的な基材102の柔軟性が妨げられ得る。そのため、パイル3の材料を導入するゲート13は、空洞S2の根元部分にのみ形成され、その後、ゲート13を介して導入されたパイル3の材料は、空洞S2の根本部分の隙間を通って空洞S2に導入される。また、このとき、材料には、適当な射出圧が加えられる。以上の結果、空洞S2内に基材102の材料が押し込まれ、充填される。その後、金型10c,10dを冷却して材料を固化することで、空洞S2の形状のパイル3が基材102と一体成形される。そして、金型10c,10dを開くことで、基材102とパイル3とを含むカーペット部品が分離される。
【0038】
<3.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0039】
<3−1>
第2実施形態では、基材102を成形した後、これをインサートとしてカーペット部品がインサート成形されたが、逆に、パイルを先に成形した後、これをインサートとしてカーペット部品をインサート成形してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。まず、それぞれ以下の方法で、比較例に係る人工芝のサンプル片と、実施例1〜3に係る人工芝のサンプル片を作製した。
【0041】
<比較例>
基材として、ポリプロピレン製の平織布(全体のサイズ70mm×70mm)を作製した。その後、当該基材に対し、6本撚りにしたポリエチレン製ヤーン(1850デシテックス)を、タフティングマシンを用いて縫い込んだ。縫い込みは、横20mm、縦5mmの間隔で行った。芝葉の長さ(基材表面からパイルの先端までの長さ)は、50mmとした。クッション層としては、シュミッツ社製の厚さ20mmの発泡ポリエチレンシート(Pro Play20)を使用した。充填材としては、タイヤの平均粒径2mmの破砕チップと砂とを1:2の比率で混ぜたものを用意し、当該充填材をパイル間に層全体の厚みが20mmとなるように投入した。このとき、破砕チップの層と砂の層とが交互に繰り返し現れるように充填した。
【0042】
<実施例1>
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(以下、TPUという)製で、フィルム状の基材(全体のサイズ70mm×70mm)を作製した。具体的には、TPU(BASF社製のエラストラン(登録商標)1180A)を、Tダイを取り付けたφ20単軸押出機(東洋精機製作所製のラボプラストミル)及び冷却ロールを用いて、厚み100μmのフィルムに成形した。その後、当該フィルムを基材として、比較例1と同様に、ポリエチレン製ヤーンをタフティングマシンを用いて縫い込んだ。クッション層及び充填材も比較例1と同様とした。
【0043】
<実施例2>
TPU(BASF社製のエラストラン(登録商標)1180A)製で、網状の基材(全体のサイズ70mm×70mm)を作製した。具体的には、第2実施形態と同様の方法により、射出成型機(住友重機械工業製、50t)を用いて、TPUを、格子サイズ10mm×10mmで格子の太さφ1mmの格子状に成形した。
【0044】
基材へのパイルの植え付けは、第2実施形態と同様の方法により、射出成形機(住友重機械工業製、50t)を用いたインサート成形にて実施した。具体的には、先に作成した基材を、当該基材の格子の交差点に芝葉用の空洞の根元が来るように設計された金型内に仕込み、その後、パイルの材料のポリエチレン(日本ポリエチレン社製、UJ370)を金型内に注入した。芝葉は、一株当たり6本、厚み1mmで幅1mmの三角断面形状とした。また、芝葉の長さ(基材表面からパイルの先端までの長さ)は、50mmとした。
【0045】
クッション層及び充填材は、比較例1と同様とした。ただし、以上の方法にて作成されたカーペット部品と同様の平面形状を有するクッション層の上面において、その周辺全体に幅10mmで接着剤を塗布し、クッション層とカーペット部品とを固定した。これにより、カーペット部品の基材の外側から2本ずつの格子の線がクッション層に対し固定された。
【0046】
<実施例3>
表1の成分を表1の配合割合でロールを用いて混練したゴムを材料とする、網状の基材(全体のサイズ70mm×70mm)を作製した。具体的には、当該ゴム材料を、格子サイズ10mm×10mmで格子の太さφ1mmの網状(網サイズ70mm×70mm)の空洞を有する金型に流し込み、プレス成型にて網状の基材を成形した。なお、下表1中のphrは、ゴム重量100に対する各種配合剤の重量部を意味している。
【表1】
【0047】
基材へのパイルの植え付けは、実施例2と同様に行った。クッション層及び充填材も実施例2と同様とした。接着剤を用いたクッション層とカーペット部品との固定も、実施例2と同様に行った。
【0048】
<評価試験>
比較例及び実施例1〜3に係る人工芝のサンプル片に対し負荷試験を実施し、当該試験後に基材に破れが発生したかどうかを評価した。負荷試験は、
図5に示す試験機を用いて、以下の要領で行った。まず、人工芝のサンプル片は内寸70mm×70mm(縦×横)の正方形の金属製の箱の中に設置した。そして、金属(SUS)製の直径φ30mmの円盤形状の圧子を取り付けたインテスコ社製の万能試験機を用いて、上下方向の変位制御10mm(初期位置は圧子を下げて、荷重が増えずに0を保てる下限に設定)の条件下で、繰り返し10000万回、サンプル片を圧縮した。以上の評価試験の結果、以下の結果が得られた。
【表2】
【0049】
以上の結果より、硬質樹脂製の基材を用いた比較例では、基材の破れが確認されたのに対し、エラストマー製の基材を用いた実施例1〜3においてはいずれも、基材の破れが確認されなかった。すなわち、基材をエラストマーのような柔らかい材料から構成することの優位性が確認された。
【符号の説明】
【0050】
1,101 人工芝
2,102 基材
2a,102a 表面
2b,102b 裏面
3 パイル
5 充填材
6 設置面
7 クッション層