特許第6825268号(P6825268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825268
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】タイヤの加硫方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20210121BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20210121BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20210121BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-167971(P2016-167971)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-34362(P2018-34362A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】福澤 真史
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−121848(JP,A)
【文献】 特開2016−055578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカバーが金型内で加硫されてタイヤが得られる加硫方法であって、
上記ローカバーを上記金型に投入する投入工程と、
上記ローカバーがブラダーでシェーピングされるシェーピング工程と、
を備えており、
上記投入工程において、上記ローカバーのビード部にパドルが係止されて、上記ローカバーが上記金型にセットされ、
上記シェーピング工程において、上記ローカバーのビード部に上記パドルが係止された状態で、上記ブラダーが膨張し、上記ブラダーが上記ローカバーに当接した後に、上記パドルが上記ローカバーから外され
上記ブラダーの上方の端をクランプする上クランプリングの外面と上記ブラダーとが交差する位置を上クランプ端とし、上記ブラダーの下方の端をクランプする下クランプの外面と上記ブラダーとが交差する位置を下クランプ端とし、上記ブラダーの下クランプ端から上クランプ端までの高さをHbとし、上記ブラダーの下クランプ端から上記ローカバーの上記ビード部までの高さをHrとし、この高さHbから高さHrを引いた差をHsとし、上記シェーピング工程において、上記パドルが上記ローカバーから外されるときに、上記差Hsが0(mm)以上10(mm)以下である、タイヤの加硫方法。
【請求項2】
上記パドルが上下方向に延びる本体と、この本体の先端から下方に向かって半径方向内側から外側向きに傾斜して延びる先端部とを備えており、
上記本体と上記先端部と屈曲角度が90°以上150°以下である請求項1に記載の加硫方法。
【請求項3】
上記先端部の長さが5(mm)以上10(mm)以下である請求項2に記載の加硫方法。
【請求項4】
上記先端部の厚さが2(mm)以上である請求項2又は3に記載の加硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、加硫工程において、ローカバー(生タイヤ)が加硫されて得られる。加硫工程では、金型のキャビティ面とブラダーとが形成するキャビティで、ローカバーが加硫される。この加硫工程において、ブラダーとローカバーとの間にエアーが残留すると、タイヤ表面にベア等が発生する。この残留エアーはタイヤの外観品質を損なう。
【0003】
特開2016−16642号公報には、ブラダーとローカバーとの密着性を高めた加硫工程が、開示されている。この加硫工程では、金型のビードリングに、ブラダー受面が形成されている。このブラダー受面に段差面が設けられてる。この段差面にエアーの吸引孔が設けられている。この加硫工程では、ブラダーが膨張するときに、ブラダーとローカバーの間の残留エアーは、吸引孔から吸引される。この加硫工程では、ブラダーとローカバーとの間にエアーが残留することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−16642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2016−16642号公報の加硫工程では、段差を設けたビード受面を備える金型を準備する必要がある。この加硫工程では、吸引孔からエアーを吸引する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、簡易に且つ生産性を低下させることなく、残留エアーを低減できるタイヤの加硫方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤの加硫方法は、ローカバーが金型内で加硫されてタイヤが得られる。この加硫方法は、上記ローカバーを上記金型に投入する投入工程と、上記ローカバーがブラダーでシェーピングされるシェーピング工程とを備えている。上記投入工程において、上記ローカバーのビード部にパドルが係止されて、上記ローカバーが上記金型にセットされる。上記シェーピング工程において、上記ローカバーのビード部に上記パドルが係止された状態で、上記ブラダーが膨張する。上記ブラダーが上記ローカバーに当接した後に、上記パドルが上記ローカバーから外される。
【0008】
上記シェーピング工程において、上記ローカバーが上記パドルに係止された状態において、上記ブラダーの下クランプ端から上クランプ端までの高さをHbとし、上記ブラダーの下クランプ端から上記ローカバーの上記ビード部までの高さをHrとする。このときに、好ましくは、この高さHbから高さHrを引いた差Hsは、0(mm)以上10(mm)以下である。
【0009】
好ましくは、上記パドルは、上下方向に延びる本体と、この本体の先端から下方に向かって半径方向内側から外側向きに傾斜して延びる先端部とを備えている。上記本体と上記先端部と屈曲角度は、90(°)以上150(°)以下である。
【0010】
好ましくは、上記先端部の長さは、5(mm)以上10(mm)以下である。
【0011】
好ましくは、上記先端部の厚さは、2(mm)以上である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るタイヤの加硫方法は、従来の金型をそのまま使用できる。この加硫方法は、特別な残留エアーの吸引工程を設けることなく、残留エアーを低減できる。この加硫方法は、簡易に、且つ生産性を低下させることなく、残留エアーを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの加硫方法のための加硫装置が示された概念図である。
図2図2は、図1の加硫装置の部分拡大図である。
図3図3は、図1の加硫装置のローダーが示された概念図である。
図4図4は、図3のローダーのパドルの部分拡大図である。
図5図5(a)は本発明に係るタイヤの加硫方法の説明図であり、図5(b)は本発明に係るタイヤの加硫方法の他の説明図であり、図5(c)は本発明に係るタイヤの加硫方法の更に他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1には、タイヤの加硫装置2と共に、加硫成形されるローカバー4が示されている。この加硫装置2は、金型6と、ブラダー8と、上プレート10と、下プレート12と、トレッドセクター14と、アクチェータ16と、上プラテン盤18と、下プラテン盤20と、昇降台22と、サイド昇降部24と、上クランプリング26と、下クランプリング28と、センターポスト30と、クランプリング昇降部32とを備えている。この加硫装置2は、更に、図3に示されるローダー40と、図示されないプレス台及び制御装置とを備えている。図1の左右方向がローカバー4の半径方向であり、上下方向が加硫装置2の上下方向であって且つローカバー4の軸方向であり、紙面に垂直な方向がローカバー4の周方向である。
【0016】
金型6は、トレッドセグメントとしての多数のセグメント34、上下一対のサイドプレート36、上下一対のビードリング38を備えている。多数のセグメント34は、周方向に並べられて、リング形状にされている。それぞれのサイドプレート36の形状は、リング形状である。それぞれのビードリング28の形状は、リング形状である。上サイドプレート36及び上ビードリング38は、上プレート10に取り付けられている。下サイドプレート36及び下ビードリング38は、下プレート12に取り付けられている。この多数のセグメント24と、一対のサイドプレート36と、一対のビードリング38とが、金型6のキャビティ面を形成する。
【0017】
ブラダー8は、加熱及び加圧のための媒体が充填されて膨張可能にされ、また、その媒体が排出されて収縮可能にされている。図1には、膨張したブラダー8が示されている。このブラダー8は、ローカバー4の内面4aに当接している。このブラダー8は、ローカバー4の形状に沿って膨張している。
【0018】
上プレート10は、サイド昇降部24によって、昇降台22に対して上下方向に移動可能に支持されている。上サイドプレート36は、上プレート10に取り付けられているので、上サイドプレート26は上下方向に移動可能にされている。下プレート12は、下サイドプレート36が取り付けられている。
【0019】
上プラテン盤18に、アクチェータ16が取り付けられている。上プラテン盤18は、昇降台22に取り付けられている。下プラテン盤20に、下プレート12が取り付けられている。この下プラテン盤20は、図示されないプレス台に固定されている。上プラテン盤18は、図示されないプレス台によって、上下方向に移動可能にされている。
【0020】
図2に示される様に、上クランプリング26は、ブラダー8の上方の端をクランプしている。図2の点P1は、上クランプ端を表している。上クランプ端P1は、上クランプリング26の外面26a(仮想延長面)とプラダー8とが交差する位置において特定される。この上クランプ端P1は、プラダー8の厚さ方向の中点として特定される。下クランプリング28は、ブラダー8の下方の端をクランプしている。点P2は、下クランプ端を表している。下クランプ端P2は、下クランプリング28の外面28a(仮想延長面)とプラダー8とが交差する位置において、プラダー8の厚さ方向の中点として特定される。
【0021】
上クランプリング26は、センターポスト30に支持されている。センターポスト30は、クランプリング昇降部32に取り付けられている。クランプリング昇降部32は、下プラテン盤20に対して、センターポスト30を上下方向に移動可能に支持している。下クランプリング28は、下プレート12に支持されている。図示されないが、この下クランプリング28は、下プレート12に対して、上下方向に移動可能にされてもよい。
【0022】
図3のローダー40は、支持軸42、第一アーム44、第二アーム46、パドル昇降部48、パドル拡縮径部50及び複数のパドル52を備えている。第一アーム44は、支持軸42にその一端部を支持されている。第一アーム44の他端部は、支持軸42を回転軸にして回転可能にされている。この第一アームの他端部に、第二アーム46の一端部が軸着されている。第二アーム46の他端部は、第一アームの他端部を回転軸にして回転可能にされている。この回転軸は、支持軸42を回転軸に平行である。この第二アーム46の他端部にパドル昇降部48が取り付けられている。パドル昇降部48は、パドル拡縮径部50を上下方向に移動可能に支持している。このパドル拡縮径部50には、複数のパドル52が取り付けられている。複数のパドル52は、パドル拡縮径部50を中心位置にして、円周方向に並べられている。この複数のパドル52は、並べられた円周方向に直交する方向に、パドル拡縮径部50によって、拡径及び縮径可能にされている。
【0023】
図4には、パドル52の部分拡大図が示されている。このパドル52は、本体54及び先端部56を備えている。本体54は、上下方向に延びている。先端部56は、本体54の下端から下方に向かって、半径方向内側から外側向きに傾斜して延びている。このパドル52の形状は、例えば板状である。板状の本体54は、並べられた円周方向の接線方向を幅方向とし、半径方向を厚さ方向としている。このパドル52の形状は、棒状であってもよい。
【0024】
図4の両矢印Ltは、先端部56の長さを表している。この長さLtは、本体54の下端から先端部56の先端までの距離として測定されている。両矢印Ttは、先端部56の厚さを表している。この厚さTtは、板状の先端部56の厚さである。両矢印θtは、本体54と先端部56との屈曲角度を表している。
【0025】
制御装置は、サイド昇降部24、クランプリング昇降部32、プレス台及びローダー40制御する。この制御装置は、更に、ブラダー8を膨張及び収縮させる媒体の供給及び排出をする装置を制御する。
【0026】
この加硫装置2を用いたタイヤの製造方法が説明される。この製造方法は、予備成形工程及び加硫工程を備えている。この予備成形工程では、タイヤの各部を形成する未加硫ゴム部材が貼り合わされてローカバー4が成形される。加硫工程では、このローカバーが金型6内で加硫される。この加硫工程を経て、ローカバー4からタイヤが得られる。この加硫工程は、投入工程、シェーピング工程、金型閉工程、加圧加熱工程、金型開工程及び取出工程を備えている。
【0027】
図5(a)には、この投入工程において、ローカバー4がローダー40で金型6にセットされた状態が示されている。このローカバー4は、トレッド部58と一対のサイドウォール部60と一対のビード部62からなっている。トレッド部58は、半径方向外側に位置している。それぞれのサイドウォール部60は、トレッド部58の軸方向端から半径方向内側に延びている。それぞれのビード部62は、サイドウォール部60の半径方向内端から更に半径方向内側に延びている。ビード部62の半径方向内端によって、円形の孔64が形成されている。
【0028】
この図5(a)において、パドル52がローカバー4のビード部62を係止している。ローカバー4は、パドル52にぶら下げられている。ローダー40は、ローカバー4を、金型2の所定の位置にセットする。図5(a)では、ブラダー8は収縮している。上クランプリング26は、センターポスト30及びクランプリング昇降部32によって、所定の高さに配置されている。これにより、ブラダー8の上クランプ端P1は、所定の高さに配置されている。
【0029】
図5(a)の両矢印Hbは、ブラダー8の下クランプ端P2から上クランプ端P1までの上下方向の高さを表している。両矢印Hrは、ブラダー8の下クランプ端P2からローカバー4のビード部62の上下方向最上端までの高さを表している。両矢印Hsは、高さHbから高さHrを引いた差を表している。この高さHb、Hr及び差Hsは、上下方向の直線距離として測定される。
【0030】
図5(b)には、シェーピング工程において、収縮していたブラダー8が膨張させられた状態が示されている。図5(b)では、パドル52がローカバー4に係止した状態で、ブラダー8がローカバー4の内面4aに当接している。図5(b)では、ローダー40は、ローカバー4を、図5(a)と同じ所定の位置に保持している。上クランプリング26は、ブラダー8の上クランプ端P1を、図5(a)と同じ所定の高さに保持している。
【0031】
図5(c)には、シェーピング工程において、パドル52がローカバー4から外された状態が示されている。図5(c)では、ブラダー8が、ローカバー4の内面4a全体に当接している。図5(c)では、上クランプリング26は、ブラダー8の上クランプ端P1を、図5(a)と同じ所定の高さに保持している。
【0032】
この図5(a)から図5(c)を参照しつつ、この加硫工程が説明される。まず、投入工程では、ローカバー4が準備されている。金型6は、開いた状態にある。図示されないが、セグメント34と上方に配置されたサイドプレート36及びビードリング38とは、所定の退避位置にある。上クランプリング26は、下クランプリング28に近付いた下方に下がっている。
【0033】
投入工程では、ローダー40のパドル52がローカバー4のビード部62に係止される。例えば、パドル52がパドル拡縮径部50によって、縮径される。この縮径されたパドル52が、第一アーム44、第二アーム46及びパドル昇降部48によって、ローカバー4の孔64から、ローカバー4の内側に挿入される。挿入後に、パドル52がパドル拡縮径部50によって、拡径される。この拡径によって、パドル52がビード部62に係止される。ローダー40は、ローカバー4を、金型2の所定の位置にセットする。上クランプリング26は、センターポスト30及びクランプリング昇降部32によって、所定の高さに配置される。このときブラダー8は収縮している。この様にして、ローカバー4、ブラダー8及びパドル52は、図5(a)の状態にされる。
【0034】
投入工程後のシェーピング工程では、図5(a)の状態で、ブラダー8に媒体が供給される。ブラダー8が膨張する。ブラダー8は、ローカバー4の内面4aに当接する。ブラダー8は、内面4aに沿って膨張する。このとき、パドル52がローカバー4のビード部62に係止されているので、このビード部62の周辺で、ブラダー8とローカバー4の内面4aとの間に隙間が形成される。パドル52が係止されているビード部62の周辺以外で、ブラダー8と内面4aとが当接して密着している。この様にして、図5(b)の状態にされる。
【0035】
図5(b)の状態で、パドル52がローカバー4から外される。パドル52がパドル拡縮径部50によって、縮径される。この縮径されたパドル52が、パドル昇降部48によって、ローカバー4の孔64から上方に引き抜かれる。引き抜かれたパドル52は、第一アーム44、第二アーム46及びパドル昇降部48によって、所定の退避位置に移動させられる。パドル52が外されたビード部62の周辺で、ブラダー8がローカバー4の内面4aに当接する。ブラダー8と内面4aの全体とが当接して密着する。この様にして、図5(c)の状態にされる。
【0036】
シェーピング工程後の金型閉工程では、図5(c)の状態で、退避位置にあったセグメント34と、上方のサイドプレート36及びビードリング38とは、ローカバー4の上方の所定の位置に移動する。この様にして、図1の示される状態にされる。この図1に示される状態から、金型6が閉じられて、セグメント34、一対のサイドプレート36及びビードリング38と、ブラダー8とが金型6のキャビティを形成する。この金型6内にローカバー4が収容される。
【0037】
金型閉工程後の加圧加熱工程では、金型内のローカバー4が加圧及び加熱される。ローカバー4が加硫される。この加硫を経て、このローカバー4からタイヤが形成される。金型開工程では、金型6が開かれる。取出工程では、開かれた金型6から、タイヤが取り出される。
【0038】
このシェーピング工程では、ビード部62にパドル52が係止された状態で、ブラダー8がローカバー4に膨張している。膨張したブラダー8がローカバー4の内面4aに当接している。パドル52は、ビード部62の周辺に隙間を形成する。この隙間からブラダー8とローカバー4の間のエアーが排出される。このブラダー8と内面4aとが密着しうる。この加硫工程は、ブラダー8とローカバー4の間のエアーの残留が抑制されている。この加硫工程は、ベアの発生が抑制されている。
【0039】
このシェーピング工程では、ローカバー4に係止されたパドル52によって、隙間が形成されている。このパドル52は、ローカバー4を金型6にセットするために、投入工程においてローカバー4に係止される。このシェーピング工程では、従来の加硫装置に、特別な装置等を付加することなく、ブラダー8とローカバー4の間に、エアーを排出する隙間が形成されている。この加硫工程は、設備改造をすることなく、簡易に、ブラダー8とローカバー4の間のエアーの残留が抑制されている。
【0040】
このシェーピング工程では、パドル52を外すタイミングを変更することで、残留エアーが排出されている。この加硫工程では、残留エアーの発生を抑制するために、特別なエアー抜き工程を必要としない。特別なエアー抜き工程の時間が必要とされない。この加硫工程は、従来の加硫工程と、同様のサイクルタイムで、ローカバーを加硫成形しうる。この加硫方法は、生産性を阻害することなく、ベアの発生が抑制されている。
【0041】
このショーピング工程では、上クランプ端P1の高さHbが、ビード部62の高さHrに対して低過ぎるとき、ローカバー4の内面4aの半径方向外側部分より先に、パドル52の半径方向外側の部分で、ブラダー8と内面4aとが当接しうる。このような当接は、この当接部分より半径方向外側のエアーの排出を阻害する。この観点から、高さHbから高さHrを引いた差Hsは、好ましくは0(mm)以上である。
【0042】
一方で、高さHbが高さHrに対して高過ぎるとき、ローカバー4の上方外側にプラダー8が大きくはみ出す。加硫工程の加圧及び加熱によって、ブラダー8が変形し、ブラダー8の表面に折れや皺が生じ易い。折れや皺等の所謂プラダークリースは、タイヤの表面に皺を生じさせる。この観点から、この差Hsは、好ましくは10(mm)以下である。
【0043】
本体54と先端部56との屈曲角度θが小さいパドル52は、ブラダー8が膨張した状態で(図5(b)参照)、ブラダー8を傷めることなく容易に、ローカバー8から外すことができる。この観点から、この屈曲角度θは、好ましくは150(°)以下である。一方で、この屈曲角度が大きいパドル52は、ブラダー8が膨張した状態で、ローカバー4を疵付けることなく容易に、ローカバー8から外すことができる。この観点から、この屈曲角度θは、好ましくは90(°)以上である。
【0044】
この先端部56の長さLtが長いパドル52は、膨張するブラダー8とローカバー4との間に大きな隙間を形成する。このパドル52は、エアーの排出性に優れる。この観点から、この長さLtは、好ましくは5(mm)以上である。一方で、この長さLtが小さいパドル52は、ブラダー8が膨張した状態で(図5(b)参照)、ブラダー8を傷めることなく、ローカバー4を疵付けることなく、容易に、ローカバー4から外すことができる。この観点から、この長さLtは。好ましくは10(mm)以下である。
【0045】
先端部56の厚さTtが大きいパドル52は、シェーピング工程において、残留エアーの排出性に優れている。この観点から、先端部56の厚さTtは、好ましくは2(mm)以上である。この厚さTtに特に上限はないが、実用上、この厚さTtは、好ましくは10(mm)以下である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0047】
[実施例1]
図1の加硫装置を用いて、本発明に係る加硫方法でタイヤが生産された。このシェーピング工程では、ローカバーのビード部にパドルが係止された状態で、ブラダーが膨張していた。ブラダーがローカバーに当接した後に、パドルはローカバーから外された。このときの、ブラダー8の上クランプ端の高さHbと、ローカバーのビード部の高さHrと、高さHbと高さHsとの差Hsは、表1に示される通りであった。この方法で、タイヤが8500本生産された。このタイヤのサイズは、「195/55R16」であった。
【0048】
[比較例1]
このシェーピング工程では、ローカバーのビード部からパドルがはずされた後に、ブラダーが膨張していた。また、高さHb、高さHr及び差Hsは、表1に示される通りであった。その他の構成は、実施例1と同様にして、タイヤが、4500本生産された。
【0049】
[比較例2]
高さHb、高さHr及び差Hsが表1に示される通りであった。その他の構成は、比較例1と同様にして、タイヤが生産された。
【0050】
[不良率]
得られたタイヤの内面が観察され、ベアの有無が検査された。また、ビード部周辺の表面が観察され、ブラダークリースによる皺が検査された。このベアや皺が確認されたタイヤの本数を、生産本数で除して、不良率が算出された。その結果が表1に指数として表されている。この指数は、比較例1の不良率を100として、表されている。この指数は、数字が小さいほど、不良率が小さい。この数値が小さいほど、この評価結果は、好ましい。
【0051】
[サイクルタイム]
シェーピング工程のサイクルタイムが測定された。具体的には、投入工程完了後、金型閉工程開始までの時間が測定された。その結果が表1に指数として表されている。この指数は、比較例1のサイクルタイムを100として、表されている。この指数は、数字が小さいほど、サイクルタイムが短い。この数値が小さいほど、この評価結果は、好ましい。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるように、実施例1のタイヤは、比較例1及び2のタイヤに比べて、不良率が極めて小さい。また、シェーピング工程のサイクルタイムは、比較例1及び2と同等にされている。本発明に係る加硫方法は、残留エアーを排出させるための特別な工程を設けることなく、ベアやビード部周辺の皺の発生が抑制されている。実施例の加硫方法では、比較例の加硫方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明された方法は、タイヤをブラダーでシェーピングする工程を含むタイヤの加硫方法に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0055】
2・・・加硫装置
4・・・ローカバー
6・・・金型
8・・・プラダー
26・・・上クランプリング
28・・・下クランプリング
30・・・センターポスト
32・・・クランプリング昇降部
34・・・セグメント
36・・・サイドプレート
38・・・ビードリング
40・・・ローダー
48・・・パドル昇降部
50・・・パドル拡縮径部
52・・・パドル
54・・・本体
56・・・先端部
58・・・ビード部
図1
図2
図3
図4
図5