特許第6825309号(P6825309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825309
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】タイヤ及びそれを装着した自動三輪車
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20210121BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20210121BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20210121BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20210121BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20210121BHJP
【FI】
   B60C11/03 Z
   B60C11/00 F
   B60C11/01 B
   B60C11/00 D
   B60C11/03 E
   B60C11/13 B
   B62K5/027
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-216503(P2016-216503)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2018-70109(P2018-70109A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】松並 俊行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 有美子
(72)【発明者】
【氏名】松永 聡志
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−176680(JP,A)
【文献】 特開平10−244811(JP,A)
【文献】 特開平10−119513(JP,A)
【文献】 特開2012−071722(JP,A)
【文献】 特開2013−018814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/00
B60C 11/01
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ子午線断面において、トレッド部が円弧状のプロファイルを有するタイヤであって、
前記トレッド部は、直進走行時に接地するクラウン領域と、前記クラウン領域のタイヤ軸方向両外側に位置しかつキャンバー角を伴う旋回走行時に接地する一対のショルダー領域とからなり
前記クラウン領域のランド比は、98%以上であるとともに、
前記ショルダー領域のランド比は、85%〜93%であることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
タイヤ子午線断面において、前記トレッド部の前記プロファイルの曲率半径TRは、前記トレッド部のトレッド接地幅TWの45%〜65%である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダー領域は、前記キャンバー角が10度以上の旋回走行時に接地する領域である請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部の踏面には、トレッドゴムが配されており、
前記トレッドゴムの0℃での損失正接tanδは、0.27以上である請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記クラウン領域には、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる少なくとも1つのクラウンスロットが、タイヤ周方向に断続的に配される請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記クラウンスロットは、タイヤ赤道上に配される請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記クラウンスロットは、前記トレッド部の摩耗限界を表示するウェアインジケータを有する請求項5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前輪に2輪、後輪に1輪を有し、かつ、旋回走行時に車体のバンクを伴う自動三輪車であって、
請求項1乃至7のいずれかに記載のタイヤを前記後輪に装着した自動三輪車。
【請求項9】
前記後輪は、旋回走行時に進行方向に対する前記後輪の向きを変更する操舵機構を有する請求項8に記載の自動三輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部が円弧状のプロファイルを有するタイヤ及びそれを装着した自動三輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋回走行時に車体のバンクを伴う自動三輪車には、便宜的に二輪車用タイヤが装着されていた。一般的に二輪車用タイヤは、タイヤ子午線断面において、トレッド部が円弧状のプロファイルを有している。
【0003】
このような二輪車用タイヤは、旋回走行時に、車体のバンクに伴いキャンバー角が発生し、そのときのキャンバースラストとコーナリングフォースとにより、旋回走行時の横力を発生させている。また、二輪車用タイヤの横力は、例えば、車線変更時等のキャンバー角の小さい旋回走行時では、キャンバースラストが小さく、主にコーナリングフォースに依存するものとなる。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、トレッド部に、主に直進走行時に接地するクラウン領域に配されるクラウン傾斜溝と、主にキャンバー角を伴う旋回走行時に接地する一対のショルダー領域に配されるショルダー溝とを有する二輪車用タイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−121408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、前輪に2輪、後輪に1輪を有する自動三輪車は、旋回走行時、後輪の1輪が、前輪の2輪から発生する横力に対応する大きい横力を発生させる必要がある。しかしながら、上記特許文献1の二輪車用タイヤは、トレッド部の剛性が低く、自動三輪車の1輪側である後輪に装着された場合、横力となるコーナリングフォースが不足するという問題があった。このような二輪車用タイヤを後輪に装着した自動三輪車は、特に、キャンバー角の小さい旋回走行時にコーナリングフォースが不足し、路面の凹凸の影響を受け易かった。
【0007】
さらに、後輪に操舵機構を有する自動三輪車は、前輪が操舵機構を有さないので、車両の運動特性に対する後輪の影響度が相対的に大きいものとなる。このような自動三輪車は、キャンバー角の小さい旋回走行時に、路面の凹凸により後輪の挙動が不安定となり、その結果、車両の挙動が不安定となるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、旋回走行時の車両の挙動を安定し得るタイヤ及びそれを装着した自動三輪車を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タイヤ子午線断面において、トレッド部が円弧状のプロファイルを有するタイヤであって、前記トレッド部は、直進走行時に接地するクラウン領域と、前記クラウン領域のタイヤ軸方向両外側に位置しかつキャンバー角を伴う旋回走行時に接地する一対のショルダー領域とを含み、前記クラウン領域のランド比は、98%以上であるとともに、前記ショルダー領域のランド比は、85%〜93%であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るタイヤにおいて、タイヤ子午線断面において、前記トレッド部の前記プロファイルの曲率半径TRは、前記トレッド部のトレッド接地幅TWの45%〜65%であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤにおいて、前記ショルダー領域は、前記キャンバー角が10度以上の旋回走行時に接地する領域であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤにおいて、前記トレッド部の踏面には、トレッドゴムが配されており、前記トレッドゴムの0℃での損失正接tanδは、0.27以上であるのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤにおいて、前記クラウン領域には、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる少なくとも1つのクラウンスロットが、タイヤ周方向に断続的に配されるのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤにおいて、前記クラウンスロットは、タイヤ赤道上に配されるのが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤにおいて、前記クラウンスロットは、前記トレッド部の摩耗限界を表示するウェアインジケータを有するのが望ましい。
【0016】
本発明は、前輪に2輪、後輪に1輪を有し、かつ、旋回走行時に車体のバンクを伴う自動三輪車であって、上述のタイヤを前記後輪に装着したのが望ましい。
【0017】
本発明に係る自動三輪車において、前記後輪は、旋回走行時に進行方向に対する前記後輪の向きを変更する操舵機構を有するのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤにおいて、クラウン領域のランド比は、98%以上である。このようなタイヤは、トレッド部の剛性が高く、車線変更時等のキャンバー角の小さい旋回走行時に大きなコーナリングフォースを発生することができる。このため、本発明のタイヤは、キャンバー角の小さい旋回走行時に、路面の凹凸の影響を受け難く、その挙動が安定したものとなり得る。また、本発明のタイヤを1輪側である後輪に装着した自動三輪車は、キャンバー角の小さい旋回走行時の後輪の挙動が安定し、その結果、車両の挙動が安定したものとなり得る。
【0019】
本発明のタイヤにおいて、ショルダー領域のランド比は、85%〜93%である。このようなタイヤは、旋回走行時のコーナリングフォースと、タイヤがスライドしたときのスライドコントロール性とをバランスよく両立することができる。このため、本発明のタイヤは、旋回走行時にも、その挙動が安定したものとなり得る。また、本発明のタイヤを1輪側である後輪に装着した自動三輪車は、旋回走行時の後輪の挙動が安定し、その結果、車両の挙動が安定したものとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2図1のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。図2は、図1のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。図1は、図2のA−A線の断面図である。
【0022】
ここで、前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧となるように充填され、しかも無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0023】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0024】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0025】
本実施形態のタイヤ1は、前輪に2輪、後輪に1輪を有し、かつ、旋回走行時に車体のバンクを伴う自動三輪車(図示省略)の後輪に装着されるのに適している。本実施形態の自動三輪車の後輪は、旋回走行時に進行方向に対する後輪の向きを変更する操舵機構を有している。このような自動三輪車は、旋回走行時の安定性と小回り性とをバランスよく両立している。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるトレッド補強層7とを備えている。
【0027】
カーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4に埋設されたビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5の回りで折り返される折返し部6bとを含んでいる。
【0028】
カーカスプライ6Aは、タイヤ赤道Cに対して、好ましくは、75〜90度、より好ましくは、80〜90度の角度で傾けて配列されたカーカスコードを有する。このカーカスコードには、例えば、ナイロン、ポリエステル又はレーヨン等の有機繊維コード等が好適に採用される。
【0029】
本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードエーペックスゴム8が設けられているのが望ましい。ビードエーペックスゴム8は、例えば、硬質のゴムで形成されている。これにより、ビード部4が効果的に補強される。
【0030】
トレッド補強層7は、少なくとも1枚以上の、本実施形態では2枚の補強プライ7A,7Bからなる。各補強プライ7A,7Bには、例えば、タイヤ赤道Cに対して、5〜40度の角度で傾斜した補強コードが配列されている。トレッド補強層7は、2枚の補強プライ7A,7Bの補強コードが、互いに交差する向きに重ね合わせて構成されるのが望ましい。補強コードには、例えば、スチールコード、アラミド又はレーヨン等が好適に採用される。
【0031】
タイヤ子午線断面において、トレッド部2は、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状のプロファイルを有しているのが望ましい。このようなトレッド部2は、旋回走行時に必要なキャンバースラストを発生させるのに適している。なお、本実施形態では、トレッド部2のトレッド端Te間のタイヤ軸方向距離であるトレッド接地幅TWが、タイヤ最大幅をなしている。
【0032】
タイヤ子午線断面において、トレッド部2のプロファイルの曲率半径TRは、好ましくは、トレッド部2のトレッド接地幅TWの45%〜65%であり、より好ましくは、トレッド接地幅TWの50%〜60%である。
【0033】
トレッド部2の曲率半径TRがトレッド接地幅TWの45%より小さいと、キャンバー角の小さい旋回走行時でも大きなキャンバースラストが発生し、アンダーステアの傾向が大きくなるおそれがある。また、トレッド部2の曲率半径TRがトレッド接地幅TWの65%より大きいと、大きなキャンバー角を伴う旋回走行時でもキャンバースラストが不足し、オーバーステアの傾向が大きくなるおそれがある。
【0034】
本実施形態では、トレッド部2の曲率半径TRを上述の範囲に特定することで、アンダーステア及びオーバーステアの傾向を適度な範囲にすることができ、タイヤ1の挙動の安定性が向上し得る。
【0035】
本実施形態のトレッド部2の踏面2Sには、トレッドゴム2Gが配されている。トレッドゴム2Gは、旋回走行時に大きな横力を得るために、大きなグリップ力を生ずるものが適している。この観点から、トレッドゴム2Gの0℃での損失正接tanδは、好ましくは、0.27以上であり、より好ましくは、0.29以上である。トレッドゴム2Gの0℃での損失正接tanδが0.27より小さいと、特にウェット路面におけるグリップ力が不足するおそれがある。
【0036】
なお、本明細書において、損失正接tanδは、JIS−K6394の規定に準じて、次に示される条件で粘弾性スペクトロメータを用いて測定された値である。
初期歪:10%
振幅:±5%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:0℃
【0037】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、主に直進走行時に接地するクラウン領域Crと、主にキャンバー角を伴う旋回走行時に接地する一対のショルダー領域Shとを含んでいる。
【0038】
クラウン領域Crは、タイヤ赤道Cを含み、かつ、直進走行時及び車線変更時等のキャンバー角の小さい旋回走行時に接地する領域であるのが望ましい。クラウン領域Crは、好ましくは、キャンバー角が10度未満の旋回走行時に接地する領域である。クラウン領域Crは、例えば、タイヤ赤道Cを中心とするトレッド接地幅TWの30%の領域である。
【0039】
クラウン領域Crのランド比は、98%以上であるのが好ましい。例えば、クラウン領域Crには溝を有さず、クラウン領域Crのランド比が100%であってもよい。このようなクラウン領域Crは、剛性が高く、トレッド部2の踏面2Sのせん断力を向上することができる。このため、このクラウン領域Crを含むトレッド部2は、キャンバー角の小さい旋回走行時のコーナリングフォースを向上させることができる。
【0040】
本実施形態では、クラウン領域Crのランド比を上述の範囲に特定することで、キャンバー角の小さい旋回走行時に、路面の凹凸の影響を受け難く、タイヤ1の挙動が安定したものとなり得る。また、本実施形態のタイヤ1を1輪側である後輪に装着した自動三輪車は、キャンバー角の小さい旋回走行時の当該後輪の挙動が安定し、その結果、車両の挙動が安定したものとなり得る。
【0041】
本実施形態のクラウン領域Crには、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる少なくとも1つのクラウンスロット10が、タイヤ周方向に断続的に配されている。クラウンスロット10は、タイヤ赤道C上に配されるのが望ましい。このようなクラウンスロット10は、後述するように、摩耗が最も大きいクラウン領域Crでの摩耗量を確認するのに適している。
【0042】
クラウンスロット10のタイヤ軸方向の幅W1は、好ましくは、トレッド接地幅TWの2%〜5%である。クラウンスロット10のタイヤ軸方向の幅W1がトレッド接地幅TWの2%より小さいと、摩耗量を確認するのに十分な空間を確保できないおそれがある。クラウンスロット10のタイヤ軸方向の幅W1がトレッド接地幅TW5%より大きいと、クラウン領域Crのランド比が低下し、クラウン領域Crの剛性が低下するおそれがある。
【0043】
図2に示されるように、クラウンスロット10のタイヤ周方向の長さL1は、好ましくは、タイヤ軸方向の幅W1の4〜7倍である。また、図1に示されるように、クラウンスロット10のタイヤ径方向の深さD1は、好ましくは、タイヤ軸方向の幅W1の0.3〜0.9倍である。このようなクラウンスロット10は、摩耗量を確認するのに十分な大きさと、クラウン領域Crの剛性とを両立することができる。
【0044】
図1では、クラウンスロット10の断面形状は、略円弧状のものが例示されている。クラウンスロット10の断面形状は、これに限定されるものではなく、例えば、矩形状であっても、台形状であっても、三角状であってもよい。また、クラウンスロット10の断面形状として、上述の複数の形状が組み合わされた形状であってもよい。
【0045】
図2に示されるように、クラウンスロット10は、トレッド部2の摩耗限界を表示する少なくとも1つの、本実施形態では2つのウェアインジケータ10Aを有しているのが望ましい。このようなウェアインジケータ10Aは、摩耗が最も大きいクラウン領域Crでの摩耗量を確認することができる。
【0046】
図1及び図2に示されるように、ショルダー領域Shは、クラウン領域Crのタイヤ軸方向両外側に位置しているのが望ましい。ショルダー領域Shは、好ましくは、キャンバー角が10度以上の旋回走行時に接地する領域である。
【0047】
ショルダー領域Shのランド比は、85%〜93%であるのが好ましく、89%〜91%であるのがより好ましい。ショルダー領域Shのランド比が85%より小さいと、旋回走行時のコーナリングフォースが低下するおそれがある。ショルダー領域Shのランド比が91%より大きいと、旋回走行時にスライドが発生したときのスライドコントロール性が低下するおそれがある。
【0048】
本実施形態では、ショルダー領域Shのランド比を上述の範囲に特定することで、旋回走行時のコーナリングフォースと、タイヤ1がスライドしたときのスライドコントロール性とをバランスよく両立することができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、旋回走行時にも、その挙動が安定したものとなり得る。また、本実施形態のタイヤ1を1輪側である後輪に装着した自動三輪車は、旋回走行時の当該後輪の挙動が安定し、その結果、車両の挙動が安定したものとなり得る。
【0049】
本実施形態のショルダー領域Shには、複数のショルダー傾斜溝11が、タイヤ周方向に断続的に配されている。ショルダー傾斜溝11は、例えば、第1ショルダー傾斜溝11A、第2ショルダー傾斜溝11B、第3ショルダー傾斜溝11C及び第4ショルダー傾斜溝11Dを含んでいる。これらショルダー傾斜溝11の種類や形状は、任意に設定され得る。
【0050】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0051】
図1に示す基本構造をなし、図2のトレッドパターンを有するタイヤが、表1の仕様に基づいて試作された。これら試作タイヤがテスト車両の後輪に装着され、性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0052】
使用車両:後輪操舵タイプの自動三輪車
前輪タイヤサイズ:80/90−16
前輪リムサイズ:2.15×16
後輪タイヤサイズ(試作タイヤ):120/90−10
後輪リムサイズ:3.50×10
内圧:225kPa
トレッド部の曲率半径TR/トレッド接地幅TW:60%
【0053】
<車線変更性能>
供試タイヤを装着したテスト車両で、テストドライバーが、最大深さ2cmの轍が形成された直進テストコースで、轍からの車線変更するように走行した。このときの「コントロール性」が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1の値を100とする評点であり、数値が大きい程良好であることを示す。
【0054】
<ウェット性能>
供試タイヤを装着したテスト車両で、テストドライバーが、ウェット状態のテストコースを走行した。このときの「スライドコントロール性」と「グリップ感」とが、テストドライバーの官能により総合的に評価された。結果は、比較例1の値を100とする評点であり、数値が大きい程良好であることを示す。
【0055】
<旋回性能>
供試タイヤを装着したテスト車両で、テストドライバーが、曲率半径50mの定常円テストコースを走行した。このときの「コントロール性」が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1の値を100とする評点であり、数値が大きい程良好であることを示す。
【0056】
<旋回摩耗性能>
供試タイヤを装着したテスト車両で、テストドライバーが、曲率半径50mの定常円テストコースを、時速30kmで50周走行した。このときのトレッド部のタイヤ赤道付近の「摩耗量」が、測定された。結果は、比較例1の値を100とする評点であり、数値が大きい程良好であることを示す。
【0057】
テストの結果が表1に示される。
【0058】
【表1】
【0059】
テストの結果、実施例1のタイヤは、比較例1に対して、車線変更性能、ウェット性能、旋回性能及び旋回摩耗性能をバランスよく向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0060】
1 タイヤ
2 トレッド部
Cr クラウン領域
Sh ショルダー領域
図1
図2