【実施例1】
【0020】
まず、本発明が採用される、トグル式型締機構における、型締状態からの型開き動作を説明するべきであるが、型開き状態からの型閉じ動作及び型締動作を説明する方が、トグル式型締機構の型開き動作の理解が容易であるため、
図1乃至
図3を参照しながら、トグル式型締機構の構成、及びトグル式型締機構による型閉じ動作及び型締動作を説明する。
【0021】
図1の装置1は、ダイカストマシンや射出成形機に搭載されるトグル式型締機構10の概略側面図であって、可動盤15に取り付けられた可動型12bを型開き完了位置まで型開きさせた状態である。マシンベース13上には、固定盤14が固定キー14aを介して固定的に載置されている。可動盤15は、マシンベース13上に、摺動移動可能に載置されている。固定盤14及び可動盤15間には、固定型12aと可動型12bとからなる金型12が取り付けられており、可動盤15を型開閉方向(
図1の左右方向)に移動させることにより、固定型12aに対して可動型12bを型開閉させることができる。尚、
図1乃至
図3における、固定盤14の前方(
図1の右側)に配置される、ダイカストマシンや射出成形機の射出装置の図示は割愛している。
【0022】
可動盤15の後方(
図1の左側)には、トグルリンクが装着されている。可動盤15の上方側には、トグルピン40を介してトグルリンク22の一端が連結され、更に、同他端にはミッドリンク23の一端が連結されている。ミッドリンク23の他端は、リンクハウジング16の上方側にトグルピンを介して連結されると共に、同ミッドリンク23の略中間部が、クロスヘッドリンク24の一端ともトグルピンを介して連結される。クロスヘッドリンク24の他端はクロスヘッド25の上方側とトグルピンを介して連結されている。
【0023】
一方、可動盤15及びリンクハウジング16の下方側間にも上記と同様のトグルリンクが構成され、下方側のクロスヘッドリンク24の他端がクロスヘッド25の下方側と連結されている。尚、トグルピンは全て符号40で示すものとするが、
図1他においては、代表して、トグルリンク22の一端側(可動盤15側)のトグルピン40のみ表記するかトグルピン40の表記を割愛している。また、トグルリンク22及びミッドリンク23を、2つのリンクの屈曲・伸張状態(2つのリンク間の屈曲角度)を説明するために、まとめてトグルリンクと呼称することがある。
【0024】
尚、後述するボールねじ機構のボールねじ軸21aと略平行(
図1の手前と奥)に、リンクハウジング16から可動盤15側に突出するように2本のガイドロッドが配置されており、このガイドロッドの可動盤15側の端部は、タイバー17他に支持されるガイドロッド支持板等に支持されている。このガイドロッドは、クロスヘッド25の左右(
図1の手前と奥)を、ガイドロッドブッシュを介して貫通しており、自重を含む、クロスヘッド25の鉛直方向に作用する荷重を支持すると共に、クロスヘッド25の型開閉方向の移動を案内する構成である。ガイドロッドは後述するボールねじ機構のボールねじ軸21aと略平行(
図1の手前と奥)に配置されるため、
図1他側面図に図示すると、ボールねじ軸21aやクロスヘッド25と重複して見難くなるため、図示は割愛している。
【0025】
そして、回転及び直線運動変換機構であるボールねじ機構のボールねじ軸21aが、図示しないベアリング等の回転支持機構を介してリンクハウジング16を貫通させて、リンクハウジング16に対して回転可能に、且つ、型開閉方向の移動を拘束された状態で支持されている。また、ボールねじ軸21aの外周面に加工されたねじ部と組み合わされるナット体21bが、クロスヘッド25の型開閉方向に貫通するように配置され、ボールねじ軸21aとクロスヘッド25とがそのナット体21bを介して連結されている。更に、リンクハウジング16の後方(
図1の左側)には、リンクハウジング16に配置された図示しない支持部材にサーボモータ20が配置され、同じくリンクハウジング16の後方に突出させたボールねじ軸21aの端部とカップリング20aを介して連結されている。尚、図を簡単にするため、サーボモータ20とボールねじ軸21aとがカップリング20aを介して直接連結される形態としたが、歯車やチェーン、あるいは、プーリーやプーリーベルト等の伝達機構や、サーボモータ20の保護のためのクラッチ等を、サーボモータ20とボールねじ軸21aとの間に配置させる形態であっても良い。
【0026】
固定盤14、可動盤15及びリンクハウジング16には、4本のタイバー17が貫通しており、それぞれのタイバー17は、固定ナット18により固定盤14に固定され、可動ナット19によりリンクハウジング16に固定される。また、可動盤15と同様に、リンクハウジング16もマシンベース13上に摺動移動可能に載置されている。ここで、可動ナット19は、リンクハウジング16の後方(
図1の左側)の面に回転可能に、且つ、型開閉方向の移動を拘束された状態で配置されているとともに、可動ナット19と同じ面に配置されるダイハイト調整装置(図示せず)によって、リンクハウジング16の後方の面で回転させることが可能である。更に、可動ナット19の内周面に形成させたねじ部と、タイバー17の外周面に形成させたねじ部とを螺合させることで、タイバー17のリンクハウジング16に対する型開閉方向の位置が固定される。
【0027】
この構成により、ダイハイト調整装置によって可動ナット19を回転させ、リンクハウジング16及び、トグルリンクでリンクハウジング16と連結された可動盤15を一体で、マシンベース13上を型開閉方向に移動させ、金型12の型厚及び所望する型締力に応じた位置に調整することができる。リンクハウジング16及び可動盤15の位置は、型締状態において、正規の型締力が金型12に付与される(
図3参照)ように、型厚及び型締力調整されているものとし、その結果、
図1において、固定盤18の端面からリンクハウジング16の端面までの距離(タイバー17全長/自然長)はL(エル)である。
【0028】
図1に示す、トグルリンクを最大限屈曲させた型開き状態(型開き完了位置)から、サーボモータ20を駆動させて、ボールねじ軸21aをリンクハウジング16に対して回転させる。ここで、ナット体21bを介してボールねじ軸21aと連結されているクロスヘッド25は、その上下方向をクロスヘッドリンク24によりミッドリンク23と連結されており、ナット体21bと共に、ボールねじ軸21aの回転方向と同じ方向の回転運動を拘束されている。そのため、ボールねじ軸21aの回転駆動により、クロスヘッド25は、ナット体21bと共に、ボールねじ軸21aの回転速度と、ボールねじ軸21の外周面に加工されたねじ部のピッチ(リード)に準じた速度で型閉じ方向(
図1の右側)へ移動(前進)する。このようにして、クロスヘッド25を型閉じ方向に移動(前進)させることができる。
【0029】
このクロスヘッド25の前進により、クロスヘッドリンク24を介してクロスヘッド25と連結されているミッドリンク23と、同ミッドリンク23とリンクピンを介して連結されているトグルリンク22とを、屈曲状態から伸張させて、固定盤14側への、タイバー17に案内される可動盤15の移動を開始させ、固定型12aへ可動型12bを型閉じさせることができる。
【0030】
クロスヘッド25の前進を継続させ、固定型12aへの可動型12bの型閉じ動作を継続させると、
図2に示すように、可動型12bの金型合わせ面が固定型12aの金型合わせ面に接触する。先に説明したように、この状態を金型タッチ(金型タッチ状態)、また、この状態の可動型12bの型開閉方向の制御上の位置を金型タッチ位置と呼称する。この金型タッチの際のショック低減のために、金型保護設定が装備されることも先に説明したとおりである。ここで、金型12の金型合わせ面の加工精度や、可動盤15や固定盤14の平行度、あるいは、金型12のそれぞれの盤への固定精度他、型閉じ動作及び関連する部位には、実際には許容される様々な誤差(加工公差や組立公差等)があり、2つの金型の金型合わせ面が理想的に接触する状態(金型タッチ状態)を明確に判断することは難しい。そこで、この金型タッチ状態(位置)を、可動型12bの位置だけではなく、金型タッチ位置近傍で急増する、サーボモータ20の回転トルクをモニタして、同回転トルクの所定値への到達により判断する場合もある。すなわち、
図2では、固定盤18の端面からリンクハウジング16の端面までの距離(タイバー17全長/自然長)を
図1と同様にLとしているが、正規の型締力よりは低い型締力が付与された、タイバー全長がL+α(アルファ/括弧書き)に伸張された状態(位置)を金型タッチ状態(位置)とする場合もある。
【0031】
尚、
図2では、トグルリンクは完全に伸張していない。更にクロスヘッド25の前進を継続させると、
図3に示すように、トグルリンク22及びミッドリンク23が直線状態になり、トグルリンクが完全に伸張した状態になる(ロッキング状態)。この状態では、タイバー全長がL+β(ベータ/β>α)まで伸張されて、タイバー17の伸張量βに準じた正規の型締力が金型12に付与された型締状態となる。この状態の可動型12bの制御上の位置を型締限位置と呼称する。先に説明したように、トグルリンク22及びミッドリンク23が直線状態になった後は、この状態を維持させるのに、駆動源(サーボモータ20)の出力(回転トルク)維持を必要としない。
【0032】
トグル式型締機構10の型開き動作は、これまで説明した、型開き状態(型開き完了位置)から、金型タッチ状態(金型タッチ位置)を経て型締状態(型締限位置)に至る型閉じ動作及び型締め動作を逆にした、可動型12bの型締状態(型締限位置)からの移動動作と理解すれば、型開き動作の理解が容易である。
【0033】
また、トグル式型締機構10の型開き動作における、可動型12b及び固定型12aの型締状態から金型タッチ状態に至る間は、クロスヘッド25は移動(後退)するものの、両型が接触した状態のままタイバー17の伸張量が減少するだけなので、可動型12bの位置を固定型12a基準で定義することができない。これは型閉じ及び型締め動作においても同様である。そのため、トグル式型締機構においては、駆動源、もしくは駆動源に対する相対的な移動がないリンクハウジングを基準とするクロスヘッドの位置を可動型の制御上の位置として、型開閉及び型締め動作における可動型の位置及び移動速度を制御することが一般的である。何故なら、トグル式型締機構における、可動型(可動盤)及びクロスヘッドの位置関係は、そのトグル式型締機構のトグル特性に基づく1対1の関係が成立するからである。
【0034】
一方、クロスヘッドの移動量(距離)と、これに対応する可動型(可動盤)の移動量(距離)とは比例せず、トグル特性に基づき変化する。トグル式型締機構のトグルリンク仕様にも依るが、例えば、型締め状態から金型タッチ状態近傍までの型開き動作における初期の可動型の型開き方向への移動量は、同じ制御における、クロスヘッドの型開き方向への移動量の約1/10であり、クロスヘッドが型開き方向に移動するに連れて、クロスヘッドの移動量(距離)に対応する可動型(可動盤)の移動量(距離)は増加する。
【0035】
実施例1のように、駆動源がサーボモータ20の場合は、サーボモータに内蔵された回転角度(回転数)検出手段と、採用するボールねじ機構の仕様としてのリード(ピッチ)の数値に基づいて、回転角度(回転数)検出手段に記録されている数値情報を初期化した状態(位置)からのクロスヘッド25の移動方向、移動量(距離)及び移動速度等の制御が行われる。一方、後述する型開き動作設定における型開き動作の分割区間や、射出成形機において、成形中に固定型から可動型を微少量型開きさせる、あるいは、微少型開き状態の可動型を固定型側に型閉じ・型締めさせる、等の可動型の位置制御においては、可動型の位置情報の設定・入力を、クロスヘッドの位置ではなく、可動型の型開き(型閉じ)位置そのもので行う方が、装置外からの目視や計測が容易で好適である。
【0036】
従って、トグル式型締機構においては、装置の操作盤や制御盤の設定・入力手段から設定・入力された可動型の型開き(型閉じ)位置そのものを、制御装置に記憶させたトグル特性に基づいたクロスヘッド位置に換算して、これら可動型の型開閉制御を行わせることが一般的である。尚、以降の説明においては、可動型の型開き(型閉じ)位置を、クロスヘッド位置ではなく、可動型の型開き(型閉じ)位置そのものを設定・入力することを前提にしている。しかしながら、これは本発明に必須の前提ではなく、可動型の型開き(型閉じ)位置を、クロスヘッド位置で設定・入力することも可能である。
【0037】
トグル式型締機構の構成、及びトグル式型締機構による型閉じ動作及び型締動作に引き続き、
図4を参照しながら、実施例1の型開き動作設定方法を説明する。
【0038】
本発明は、これまで説明したような、トグル式型締機構10における、可動型12bの、型締限位置から型開き完了位置までの型開き動作が複数の区間に任意に分割され、区間毎にクロスヘッド25の移動速度が設定される型開き動作設定を前提としている。実施例1の型開き動作設定方法は、型開き動作設定における複数の各区間と、低圧離型保護設定(金型保護設定)における低圧離型保護区間と、の位置関係を比較して、それら区間の、低圧離型保護区間と重複する範囲に、低圧離型保護区間を、新たな区間として挿入するもので、低圧離型保護区間と重複する範囲が、型開き動作設定における1区間の中間にある場合である。
【0039】
実施例1における、可動型12bの、型締限位置から型開き完了位置までの型開き動作の分割区間(型開き区間)、及び、各型開き区間の型開速度が設定された型開き動作設定を
図4(a)に示す。「型開速度」は可動型12bの型開速度ではなく、クロスヘッド25の型開き方向への移動速度である。これは、先に説明したように、クロスヘッドの移動量(距離)と、これに対応する可動型(可動盤)の移動量(距離)とは比例せず、トグル特性に基づき変化するため、クロスヘッド25を等速で移動させても、可動型12bを等速で移動させることができないためである。また、可動型12bの分割区間が適切であれば、各区間内における可動型12bの型開速度は、各区間内における好適な速度範囲内であれば変動しても良く、各区間内で可動型12bの型開速度を一定に制御するために、クロスヘッド25に、トグル特性に基づいた複雑な可変速度制御を採用する必要がないためでもある。
【0040】
また、「型開位置」は、クロスヘッド25の位置ではなく、固定型12aを基準とする可動型12bの型開き位置そのものである。型開き区間は(1)から(6)までの6区間に任意に分割されており、型開き区間(1)の始点が型締限位置(上段/0.0mm)で、型開き区間(6)の終点が型開き完了位置(下段/1,000.0mm)である。各型開き区間の型開速度(クロスヘッド速度)は、型開き動作初期の型開き区間(1)のみ250mm/sec.で、可動型12bが所定位置(25mm)まで型開きした以降は、型開き区間によらず445mm/sec.である。また、図示はしていないが、型開き区間(1)から(6)に依らず、サーボモータ20のトリップ防止のためのトルクリミット(仮にサーボモータ20の定格トルクの100%とする)が設定されている。型開き動作初期における型開速度のみ低速に設定すれば、型開き動作初期に過大な型開き力が生じない限り、以降の型開速度やトルクリミットを型開き区間毎に異なる設定にする必要はなく、このような型開き動作設定が一般的である。また、先に説明したように、型開き動作設定における各型開き区間は、鋳造条件や成形条件の変更や、金型自体の変更の際、大きく変更する必要性が低い。
【0041】
本発明においては、
図4(a)に示す型開き動作設定とは独立して、
図4(b)に示す低圧離型保護設定(金型保護設定)が行われる。具体的には、低圧離型保護設定画面が、型開き動作設定画面とは別であったり、同じ画面に表示される場合でも、それぞれが独立して表示されたりする等、それぞれの設定が独立して設定・入力可能で、型開き動作設定における各型開き区間と、低圧離型保護設定における低圧離型保護区間と、の位置関係を比較可能であればどのような形態であっても良い。ここで設定されるのは、低圧離型保護区間の始点位置(「保護区間始点位置」)、同始点から型開き方向側の低圧離型保護区間の終点位置(「保護区間終点位置」)、同区間におけるトルクリミット(「低圧離型保護トルクリミット」)、及び、同区間における、可動型12bの型開速度(「離型保護速度」)である。
【0042】
まず、この低圧離型保護区間の始点位置(以後:始点/「保護区間始点位置」)は、クロスヘッド25の位置ではなく、可動型12bそのものの位置である。ここで、この低圧離型保護区間の始点を金型タッチ位置(実施例1においては仮に5.0mm)とする。何故なら、型締状態から金型タッチ状態までの型開き動作中は、正規の型締力を付与させるためのタイバー17の伸張量β(
図3参照)を、ゼロもしくは伸張量α(
図2参照)まで、タイバー17の伸張(弾性変形)を解除する工程であって、実質的に可動型12bが固定型12aから型開き(離間)されない、それぞれの金型合わせ面の接触状態が維持されるため、万一、型開閉方向に凹凸量が多い製品や、鋳造・成形条件設定の不具合等で、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大となった状態であっても、過大な型開き力が生じる虞が低いからである。
【0043】
ここで、
図3に示す、トグルリンク22及びミッドリンク23が直線状態になり、トグルリンクが完全に伸張した状態(ロッキング状態/型締状態)においては、サーボモータ20の回転トルク維持を必要としないことは先に説明したとおりである。しかしながら、この状態から、サーボモータ20によりボールねじ軸21aを回転させて、クロスヘッド25を型開き方向(
図3左側)に移動させて、
図2に示す、トグルリンク22及びミッドリンク23を僅かに屈曲した状態(金型タッチ状態)にする場合、
図2に示す状態(金型タッチ状態)から
図3に示す状態まで可動型12を型開きさせる場合にサーボモータ20に発生するトルクよりも、高いトルクが発生する。すなわち、仮に前者のトルクを型締状態解除トルク、後者のトルクを通常型開きトルクとすると、型締状態解除トルク>通常型開きトルクとなることが一般的である。
【0044】
そのため、低圧離型保護区間の始点を金型タッチ位置よりも型閉じ方向側に設定した場合、低圧離型保護トルクリミットを、上記の型締状態解除トルクよりも低く設定すると、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大であるか否かに依らず、型開き動作自体が困難になる虞がある。これを防止するために、低圧離型保護トルクリミットを型締状態解除トルクよりも高く設定しなければならないという制約が生じ、低圧離型保護トルクリミットを十分に低く設定することが困難になる。
【0045】
その結果、過大な型開き力が生じた場合の、型開き動作にショックが発生したり、鋳造品や成形品の破損、あるいは、一部が型内に残ったり、トグル式型締機構のトグルリンク用ブッシュの偏摩耗、あるいは、ボールねじ機構の偏摩耗や破損を防止する効果が低下する虞がある。一方、固定型からの可動型の離間が実際の開始される金型タッチ位置以降の型開き動作においては、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大である場合に過大な型開き力が生じる虞がある。そのため、低圧離型保護区間の始点を金型タッチ位置よりも型開き方向側に設定した場合、低圧離型保護トルクリミットに準じて型開き力が制限される前に、過大な型開き力が生じる虞がある。これら観点から、低圧離型保護区間の始点を金型タッチ位置とすることが望ましい。尚、固定型12aに対して可動型12bがどのような状態(位置)になった場合を金型タッチ状態(位置)とするかは、先に説明したように、様々な判断が考えられるため、トグル式型締機構10の仕様や金型12に準じた判断に基づいて、好適な金型タッチ状態(位置)が採用されれば良い。
【0046】
また、低圧離型保護区間の始点を金型タッチ位置とする場合、先に説明したように、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大であるか否かに依らず、低圧離型保護区間において上記のような型締状態解除トルクが発生する虞は低い。そこで、上記のような効果の低下を防止するために、後述する低圧離型保護トルクリミットの上限を型締状態解除トルクとすることが好ましく、型締状態解除トルクの変動を鑑みて、低圧離型保護トルクリミットの上限を型締状態解除トルクより低くすることが更に好ましい。一方、過大な型開き力が生じない場合の低圧離型保護区間の型開き動作が問題なく行われるように、低圧離型保護トルクリミットの下限を通常型開きトルクとすることが好ましく、通常型開きトルクの変動を鑑みて、低圧離型保護トルクリミットの下限を通常型開きトルクより高くすることが好ましい。
【0047】
次に、
図4(b)の低圧離型保護区間の終点位置(以後:終点/「保護区間終点位置」)を設定する。これは、低圧離型保護区間の始点から型開き方向側の低圧離型保護区間の終点を設定するもので、この終点も、クロスヘッド25の位置ではなく、可動型12bそのものの位置である。尚、
図4(b)の低圧離型保護設定には、低圧離型保護区間の距離(保護区間設定/15.0mm)も表示されている。これも、クロスヘッド25の移動距離ではなく、可動型12bそのものの型開き方向への移動距離である。この低圧離型保護区間の距離は、低圧離型保護区間の始点(5.0mm)及び低圧離型保護区間の終点(20.0mm)から容易に算出(20.0−5.0=15.0mm)できるため、低圧離型保護区間の始点及び低圧離型保護区間の終点を設定する場合は、自動算出させて表示させても良い。また、図示はしていないが、低圧離型保護区間の始点からの、可動型12bそのものの型開き方向への移動距離として、低圧離型保護区間の距離を設定させても良く、その場合は、低圧離型保護区間の終点を自動算出させて表示させても良い。
【0048】
次に、
図4(b)の低圧離型保護区間におけるトルクリミット(「低圧離型保護トルクリミット」)を設定する。低圧離型保護区間の始点を金型タッチ位置とすることにより、先に説明した型締状態解除トルクよりも十分に低いトルクリミットを設定することができる。尚、必ずしも、低圧離型保護トルクリミットを型締状態解除トルクより低く設定する必要はない。一方、低圧離型保護区間におけるトルクリミットの下限については、先に説明したように、通常型開きトルクより高くすることが好ましい。実施例1においては、低圧離型保護トルクリミットを、仮にサーボモータ20の定格トルクの20%に設定するものとする。
【0049】
最後に、
図4(b)の低圧離型保護区間における可動型12bの型開速度(「離型保護速度」)を設定する。この型開速度も、型開き動作設定における型開速度と同様に、可動型12bそのものの型開速度ではなく、クロスヘッド25の型開き方向への移動速度である。離型保護速度は、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大となった状態を鑑み、できるだけ低い速度が設定されることが好ましい。
【0050】
これまで説明したように、
図4(a)に示す型開き動作設定とは独立して、
図4(b)に示す低圧離型保護設定が行われる。両設定が完了すると、装置1の図示しない制御装置内で、
図4(a)に示す型開き動作設定における6つの各型開き区間と、
図4(b)に示す低圧離型保護設定における低圧離型保護区間と、の位置関係が比較される。
図4(b)の低圧離型保護区間は、始点が5.0mm、終点が20.0mmであるため、
図4(a)に示す型開き動作設定の型開き区間(1)(始点が0.0mm、終点が25.0mm)の中間の範囲と重複する。従って、制御装置内では、
図4(a)に示す型開き区間(1)の、低圧離型保護区間と重複する範囲に、
図4(b)の低圧離型保護区間を挿入するために、
図4(a)に示す型開き動作設定の型開き区間(1)の、
図4(b)の低圧離型保護区間と重複する範囲を除いて、同区間の前後を更に分割して、
図4(c)に示す型開き区間(1)及び(3)とする。
【0051】
そして、
図4(b)の低圧離型保護区間を、新たな区間(
図4(c)に示す型開き区間(2))として挿入する。これらが制御装置内で行われ、
図4(a)に示す、型開き区間6個の型開き動作設定が、
図4(c)に示す、型開き区間8個の型開き動作設定に自動的に修正される。すなわち、金型保護設定(低圧離型保護設定)を機能させる区間(低圧離型保護区間)の設定変更に伴う、型開き動作設定の分割区間の変更を不要にすることができる。
【0052】
また、その結果、型開き動作が、自動的に修正された型開き動作設定に基づいて制御されるため、型開き動作中、型開き動作設定とは独立して行われた低圧離型保護設定を、低圧離型保護区間において優先させて、低圧離型保護機能を機能させることができる。低圧離型保護機能を機能させれば、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大となった状態であっても、型開き力は、設定された低圧離型保護トルクリミット(実施例1の場合は、サーボモータ20の定格トルクの20%)に準じた型開き力以下に制限される。低圧離型保護トルクリミットの設定が適切であれば、型開き動作にショックが発生したり、鋳造品や成形品の破損、あるいは、一部が型内に残ったり、トグル式型締機構のトグルリンク用ブッシュの偏摩耗、あるいは、ボールねじ機構の偏摩耗や破損の発生を防止することができる。また、型開き動作は停止しないものの、進行しないため、装置1の操作オペレータが異常発生を知ることができる。一方、装置1における型開き動作時間や、鋳造・成形サイクルを監視している場合は、それら監視により異常発生が発信される。
【0053】
ここで、異常発生を積極的に発信させる目的で、低圧離型保護設定において、低圧離型保護区間(距離)及びクロスヘッド25の移動速度(離型保護速度)から、クロスヘッド25が、低圧離型保護区間(距離)に対応する距離の移動に要する保護時間を算出すると共に、クロスヘッド25が、その保護時間内に低圧離型保護区間(距離)に対応する距離外に移動しない場合、異常発生を発信させると共に、型開き動作を停止させても良い。この対応により、型開き動作時における、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大となった状態を、短時間で、装置1の操作オペレータが把握することができる。
【0054】
このように、実施例1に係る、トグル式型締機構の型開き動作設定方法は、
図4(b)に示す低圧離型保護設定が、
図4(a)に示す型開き動作設定と独立して行われ、型開き動作設定における複数の各区間と、低圧離型保護設定における低圧離型保護区間と、の位置関係を比較して、それら区間の、低圧離型保護区間と重複する範囲に、低圧離型保護区間を、新たな区間として挿入する、そして、
図4(c)に示す新たな型開き動作設定に基づいて、型開き動作が制御されるため、金型保護設定を機能させる区間の設定変更に伴う、型開き動作設定の分割区間の変更を不要にすることができる。
【0055】
また、型開き動作中、低圧離型保護設定を優先させて、低圧離型保護機能を機能させるため、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大となった状態であっても、型開き力は、設定された低圧離型保護トルクリミットに準じた型開き力以下に制限され、型開き動作にショックが発生したり、鋳造品や成形品の破損、あるいは、一部が型内に残ったり、トグル式型締機構のトグルリンク用ブッシュの偏摩耗、あるいは、ボールねじ機構の偏摩耗や破損の発生を防止することができる。
【0056】
一方、鋳造条件や成形条件、製品形状(金型)に依っては、金型と鋳造品や成形品との密着力が過大となる可能性が非常に低く、過大な型開き力が生じる可能性が非常に低い場合もある。そのような場合を鑑み、本発明においては、低圧離型保護設定に、低圧離型保護設定の使用・不使用を選択する低圧離型保護使用設定を更に含んでいても良い。本発明においては、型開き動作設定とは独立して、低圧離型保護設定が行われるため、低圧離型保護使用設定において、低圧離型保護設定の不使用を選択することにより、低圧離型保護設定の有無に依らず、型開き動作が、当初設定された型開き動作設定に基づいて行われる。
【0057】
そして、低圧離型保護設定が必要と判断された場合は、既に設定済みの型開き動作設定に依らず、好適と推測される低圧離型保護設定を行い、低圧離型保護使用設定において、低圧離型保護設定の使用を選択することにより、低圧離型保護機能を任意に機能させることができる。また、トライアンドエラーで、低圧離型保護設定をより好適な設定にするために設定変更を繰り返す場合において、新たに設定される低圧離型保護設定の低圧離型保護区間が、既に設定済みの型開き動作設定の分割区分に自動的に挿入されるため、型開き動作設定の分割区間の変更は不要である。また、低圧離型保護設定はそのままで、型開き動作設定の分割区分を変更する場合であっても、変更された分割区分と低圧離型保護区間との位置関係が比較され、変更された分割区分に低圧離型保護区間が自動的に挿入されることは言うまでもない。
【実施例2】
【0058】
次に、実施例2に係る、型開き動作設定方法を説明する。本実施例2も、実施例1のトグル式型締機構10を前提にして説明するため、トグル式型締機構10の構成及び型開き動作の説明は割愛する。実施例2の実施例1との相違点は、型開き動作設定における区間の一つが、該区間の始点及び終点のいずれか一方を金型タッチ位置とする点である。
【0059】
実施例2における、可動型12bの型開き区間、及び、各型開き区間の型開速度が設定された型開き動作設定を
図5(a)に示す。
【0060】
図5(a)に示すように、型開き区間は(1)から(6)までの6区間に任意に分割されており、型開き区間(1)の始点が型締限位置(上段/0.0mm)で、型開き区間(6)の終点が型開き完了位置(下段/1,000.0mm)である。また、型開き区間(1)の終点、及び、型開き区間(2)の始点が金型タッチ位置(5.0mm)である。そして、各型開き区間の型開速度は、型開き動作初期の区間(1)のみ250mm/sec.で、可動型12bが金型タッチ位置(5.0mm)まで型開きした以降は、型開き区間に依らず445mm/sec.である。また、図示はしていないが、型開き区間(1)から(6)に依らず、サーボモータ20のトリップ防止のためのトルクリミット(仮にサーボモータ20の定格トルクの100%とする)が設定されている。
【0061】
次に、
図5(b)に示す低圧離型保護設定においては、仮に、実施例1と同様の数値が設定されるものとする。(低圧離型保護区間の始点(5.0mm/金型タッチ位置)、同始点から型開き方向側の低圧離型保護区間の終点(20.0mm)、同区間におけるトルクリミット(20%)、同区間における、可動型12bの型開速度(100.0mm/sec.))
【0062】
実施例2においては、型開き動作設定における区間の一つが、該区間の始点及び終点のいずれか一方を金型タッチ位置であって、具体的には、型開き区間(1)の終点、及び、型開き区間(2)の始点が金型タッチ位置である。従って、装置1の図示しない制御装置内で、
図5(a)に示す型開き動作設定における6つの各型開き区間と、
図5(b)に示す低圧離型保護設定における低圧離型保護区間と、の位置関係が比較され、同制御装置内では、
図5(a)に示す型開き区間(2)の、低圧離型保護区間と重複する範囲に、
図5(b)の低圧離型保護区間を挿入するために、
図5(a)に示す型開き動作設定の型開き区間(2)から、
図5(b)の低圧離型保護区間と重複する範囲を除く修正が行われ、
図5(c)に示す型開き区間(3)とする。そして、
図5(c)に示す型開き区間(1)及び(3)の間に、
図5(b)の低圧離型保護区間を、新たな区間(
図5(c)に示す型開き区間(2))として挿入する。これらが制御装置内で行われ、
図5(a)に示す、型開き区間6個の型開き動作設定が、
図5(c)に示す、型開き区間7個の型開き動作設定に自動的に修正される。
【0063】
このように、実施例2に係る、トグル式型締機構の型開き動作設定方法においても、
図5(b)に示す低圧離型保護設定が、
図5(a)に示す型開き動作設定と独立して行われ、型開き動作設定における複数の各区間と、低圧離型保護設定における低圧離型保護区間と、の位置関係を比較して、それら区間の、低圧離型保護区間と重複する範囲に、低圧離型保護区間を、新たな区間として挿入する、そして、
図5(c)に示す新たな型開き動作設定に基づいて、型開き動作が制御されるため、金型保護設定を機能させる区間の設定変更に伴う、型開き動作設定の分割区間の変更を不要にすることができる。また、型開き動作中、低圧離型保護設定を優先させて、低圧離型保護機能を機能させる点も実施例1と同様である。
【0064】
一方、実施例2においても、鋳造条件や成形条件、製品形状(金型)に依っては、低圧離型保護設定に、低圧離型保護設定の使用・不使用を選択する低圧離型保護使用設定を更に含んでいても良い。
【実施例3】
【0065】
次に、実施例3に係る、型開き動作設定方法を説明する。本実施例3も、実施例1のトグル式型締機構10を前提にして説明するため、トグル式型締機構10の構成及び型開き動作の説明は割愛する。実施例3は、型開き動作設定における区間の一つが、該区間の始点及び終点のいずれか一方を金型タッチ位置とする点については実施例2と同様であるが、型開き動作設定における該区間の始点を金型タッチ位置とすると共に、該区間の終点が、低圧離型保護区間の終点と一致する点が相違する。
【0066】
実施例3における、可動型12bの型開き区間、及び、各型開き区間の型開速度が設定された型開き動作設定を
図6(a)に示す。
【0067】
図6(a)に示すように、型開き区間は(1)から(7)までの7区間に任意に分割されており、型開き区間(1)の始点が型締限位置(上段/0.0mm)で、型開き区間(7)の終点が型開き完了位置(下段/1,000.0mm)である。また、型開き区間(1)の終点、及び、型開き区間(2)の始点が金型タッチ位置(5.0mm)であり、同じく、型開き区間(2)の終点が、低圧離型保護区間の終点(15.0mm)と一致する。そして、各型開き区間の型開速度は、型開き区間(1)が250mm/sec.で、型開き区間(2)が300mm/sec.で、可動型12bが所定位置(15.0mm)まで型開きした以降は、型開き区間によらず445mm/sec.である。また、図示はしていないが、型開き区間(1)から(7)に依らず、サーボモータ20のトリップ防止のためのトルクリミット(仮にサーボモータ20の定格トルクの100%とする)が設定されている。
【0068】
次に、
図6(b)に示す低圧離型保護設定においては、仮に、低圧離型保護区間の始点が5.0mm(金型タッチ位置)、同始点から型開き方向側の低圧離型保護区間の終点が15.0mm、同区間におけるトルクリミットが20%、同区間における、可動型12bの型開速度が100.0mm/sec.として設定されるものとする。
【0069】
実施例3においても、型開き動作設定における区間の一つが、該区間の始点及び終点のいずれか一方を金型タッチ位置であって、具体的には、型開き区間(1)の終点、及び、型開き区間(2)の始点が金型タッチ位置であり、同じく、型開き区間(2)の終点が、低圧離型保護区間の終点(15.0mm)と一致する。従って、装置1の図示しない制御装置内で、
図6(a)に示す型開き動作設定における7つの各型開き区間と、
図6(b)に示す低圧離型保護設定における低圧離型保護区間と、の位置関係が比較され、同制御装置内では、
図6(a)に示す型開き区間(2)が、低圧離型保護区間と完全に重複するため、
図6(a)に示す型開き動作設定の型開き区間(2)に、
図6(b)の低圧離型保護区間をそのまま挿入し、
図6(c)に示す型開き区間(2)とする修正が行われる。これらが制御装置内で行われ、
図6(a)に示す、型開き区間7個の型開き動作設定が、
図6(c)に示す、型開き区間7個の型開き動作設定に自動的に修正される。すなわち、実施例3においては、型開き動作設定における型開き区間の数や範囲に変化はないが、型開き区間(2)においては、修正前の型開き動作設定の、型開き区間(2)における型開速度(300mm/sec.)及びトルクリミット(100%)ではなく、低圧離型保護設定における型開速度(100mm/sec.)及びトルクリミット(20%)に基づいて型開き動作が行われる。
【0070】
このように、実施例3に係る、トグル式型締機構の型開き動作設定方法においても、
図6(b)に示す低圧離型保護設定が、
図6(a)に示す型開き動作設定と独立して行われ、型開き動作設定における複数の各区間と、低圧離型保護設定における低圧離型保護区間と、の位置関係を比較して、それら区間の、低圧離型保護区間と重複する範囲に、低圧離型保護区間を、新たな区間として挿入する、そして、
図6(c)に示す新たな型開き動作設定に基づいて、型開き動作が制御されるため、金型保護設定を機能させる区間の設定変更に伴う、型開き動作設定の分割区間の変更を不要にすることができる。また、型開き動作中、低圧離型保護設定を優先させて、低圧離型保護機能を機能させる点も実施例1と同様である。
【0071】
一方、実施例3においても、鋳造条件や成形条件、製品形状(金型)に依っては、低圧離型保護設定に、低圧離型保護設定の使用・不使用を選択する低圧離型保護使用設定を更に含んでいても良い。
【0072】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲において、多様な変更又は改良を加えることが可能である。