(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正部による補正は、前記対象計測結果の示す前記振動から前記補正値の示す振動分を除去することである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動センサシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0013】
(1)本発明の実施の形態に係る振動センサシステムは、計測対象の振動を計測する振動センサの計測結果を取得する取得部と、所定条件を満たす期間において前記取得部によって取得された前記計測結果に基づいて補正値を決定する補正値決定部と、前記期間の経過後に前記取得部によって取得された前記計測結果である対象計測結果を、前記補正値決定部によって決定された前記補正値を用いて補正する補正部とを備える。
【0014】
このような構成により、たとえば、計測対象が稼働していない状態であることを所定条件とすることで、計測対象が静止していても計測されるノイズ成分、および振動センサの設置環境に依存する成分に基づく補正値を決定することができる。これにより、上記成分の悪影響が抑制されるように対象計測結果を補正することができるので、上記成分により精度よく計測することが困難であった振幅の小さい微弱な振動を計測することができる。したがって、計測対象の振動を計測する構成において、計測対象の振動をより精度よく計測することができる。
【0015】
(2)好ましくは、前記補正値は、一定の変動幅である。
【0016】
このような構成により、たとえば、抑制対象の成分の変動が一定の範囲に収まる場合において、当該成分の対象計測結果に対する悪影響を効果的に抑制することができる。
【0017】
(3)より好ましくは、前記補正値は、正方向の変動幅と負方向の変動幅とを含む。
【0018】
このような構成により、抑制対象の成分の変動が正方向および負方向に非対称である場合においても、当該成分の対象計測結果に対する悪影響を効果的に抑制することができる。
【0019】
(4)好ましくは、前記補正部による補正は、前記対象計測結果の示す前記振動から前記補正値の示す振動分を除去することである。
【0020】
このように、たとえば、計測対象が静止していても計測される振動分を対象計測結果の示す振動から除去する構成により、対象計測結果の示す振動の振幅より小さい値の振幅を計測対象の振幅とすることができるので、振幅の小さい微弱な振動を良好に計測することができる。
【0021】
(5)好ましくは、前記所定条件は、ユーザにより所定の操作がなされたことを含む。
【0022】
このように、たとえば、計測対象が稼働していないことを認識可能なユーザにより所定の操作がなされたことを含む所定条件とする構成により、計測対象が静止している状態における計測結果を取得する可能性を高めることができる。
【0023】
(6)より好ましくは、前記振動センサシステムは、さらに、前記所定の操作を受け付ける操作部を備え、前記所定条件は、前記操作部が前記所定の操作を受け付けたことを含む。
【0024】
このような構成により、ユーザは、計測対象が稼働していない状態における計測結果の取得処理を容易に開始させることができる。
【0025】
(7)好ましくは、前記所定条件は、前記計測結果に基づく情報を処理する管理装置から指示を受けたことである。
【0026】
このように、たとえば、計測対象の稼働状況を認識可能な管理装置から指示を受けたことを所定条件とする構成により、計測対象が静止している状態における計測結果を取得する可能性を高めることができる。
【0027】
(8)好ましくは、前記所定条件は、前記振動センサシステムの電源がオンされたことである。
【0028】
このように、たとえば計測対象が稼働していない状態である場合において振動センサシステムの電源がオンされたことを所定条件とする構成により、計測対象が静止している状態における計測結果を取得する可能性を高めることができる。
【0029】
(9)好ましくは、前記振動センサシステムは、さらに、前記補正値決定部による前記補正値の決定完了を認識可能に出力する出力部を備える。
【0030】
このような構成により、ユーザは、補正値の決定タイミングを容易に認識することができるので、たとえば、補正値の決定より前に計測対象を稼働させてしまうことを防ぐことができる。
【0031】
(10)好ましくは、前記取得部は、前記計測対象の温度を計測する温度センサの計測結果をさらに取得し、前記振動センサシステムは、さらに、前記計測対象の温度と前記補正値の正常範囲を決定するための値との対応関係を示す対応情報を保持する保持部と、前記取得部によって取得された前記温度センサの計測結果および前記対応情報に基づいて、前記補正値決定部によって決定された前記補正値が正常であるか否かを判定する判定部とを備える。
【0032】
このような構成により、判定部の判定結果に基づいて、対象計測結果が適正であるか否かを計測対象の温度に関わらず判断することができるので、対象計測結果の信頼性を高めることができる。
【0033】
(11)本発明の実施の形態に係る振動計測方法は、振動を計測する振動センサを、計測対象を含むエリアに設置するステップと、前記計測対象が稼働していない状態における前記振動センサの計測結果を取得するステップと、取得した前記計測結果に基づいて補正値を決定するステップと、前記計測対象を稼働するステップと、前記計測対象が稼働している状態における前記計測結果である対象計測結果を取得するステップと、取得した前記対象計測結果を、前記補正値を用いて補正するステップとを含む。
【0034】
このような構成により、たとえば、計測対象が静止していても計測されるノイズ成分、および振動センサの設置環境に依存する成分に基づく補正値を決定することができる。これにより、上記成分の悪影響が抑制されるように対象計測結果を補正することができるので、上記成分により精度よく計測することが困難であった振幅の小さい微弱な振動を計測することができる。したがって、計測対象の振動を計測する構成において、計測対象の振動をより精度よく計測することができる。
【0035】
(12)本発明の実施の形態に係る振動計測プログラムは、振動センサシステムにおいて用いられる振動計測プログラムであって、コンピュータを、計測対象の振動を計測する振動センサの計測結果を取得する取得部と、所定条件を満たす期間において前記取得部によって取得された前記計測結果に基づいて補正値を決定する補正値決定部と、前記期間の経過後に前記取得部によって取得された前記計測結果である対象計測結果を、前記補正値決定部によって決定された前記補正値を用いて補正する補正部、として機能させるためのプログラムである。
【0036】
このような構成により、たとえば、計測対象が稼働していない状態であることを所定条件とすることで、計測対象が静止していても計測されるノイズ成分、および振動センサの設置環境に依存する成分に基づく補正値を決定することができる。これにより、上記成分の悪影響が抑制されるように対象計測結果を補正することができるので、上記成分により精度よく計測することが困難であった振幅の小さい微弱な振動を計測することができる。したがって、計測対象の振動を計測する構成において、計測対象の振動をより精度よく計測することができる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0038】
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムの構成を示す図である。
【0039】
図1を参照して、振動センサシステム301は、複数の振動計測装置101と、複数のアクセスポイント151と、管理装置181とを備える。
【0040】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る振動計測装置の設置例を示す図である。
【0041】
図2を参照して、設備10は、回転部9A,9B,9Cを含む。以下、回転部9A,9B,9Cの各々を回転部9とも称する。
【0042】
回転部9Cは、たとえばモータである。回転部9Cによって生成された回転動力は、回転部9B,9Aを介して伝達される。
【0043】
振動計測装置101は、設備10に設けられる。より詳細には、振動計測装置101は、たとえば加速度センサを含み、設備10に固定される。振動計測装置101は、設備10の振動を計測する。
【0044】
図2では、3つの振動計測装置101は、たとえば設備10における回転部9A,9B,9Cにそれぞれ取り付けられる。
【0045】
再び
図1を参照して、振動計測装置101は、設備10の振動を計測し、計測結果を示す振動データ情報を含む無線信号をブロードキャストする。
【0046】
アクセスポイント151は、たとえば、内部ネットワーク11を介して管理装置181と有線通信を行うことが可能である。
【0047】
アクセスポイント151は、振動計測装置101から振動データ情報を受信すると、受信した振動データ情報を中継して内部ネットワーク11経由で管理装置181へ送信する。
【0048】
管理装置181は、振動計測装置101による計測結果に基づく情報を処理する。より詳細には、管理装置181は、アクセスポイント151から振動データ情報を受信し、受信した振動データ情報に基づいて設備10を管理する。
【0049】
具体的には、管理装置181は、たとえば設備10における微弱な振動を検出する検出処理を行う。また、管理装置181は、設備10の振動を分析することにより、たとえば、回転部9におけるアンバランス、ミスアライメント、共振による異常振動およびベアリングの異常振動等を検出し、設備10のメンテナンスおよび異常診断を行う。
【0050】
なお、アクセスポイント151は、振動計測装置101から振動データ情報を無線により受信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。アクセスポイント151は、振動計測装置101から振動データ情報を有線により受信する構成であってもよい。
【0051】
また、アクセスポイント151および管理装置181間において有線通信が行われる構成であるとしたが、これに限定するものではない。アクセスポイント151および管理装置181間において無線通信が行われる構成であってもよい。
【0052】
また、アクセスポイント151は、振動計測装置101から他の装置を介さずに振動データ情報を受信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、アクセスポイント151および振動計測装置101間において中継装置が設けられ、アクセスポイント151は、振動計測装置101から当該中継装置を介して振動データ情報を受信する構成であってもよい。
【0053】
[課題]
図2に示すように、振動計測装置101が回転部9の近傍に設けられる場合、振動計測装置101と振動源である計測対象との距離が短いので、計測対象から振動計測装置101へ伝わる振動のレベル(以下、計測対象レベルとも称する。)は大きい。
【0054】
しかしながら、振動計測装置101を振動源の近傍に設けることが困難な場合がある。また、振動計測装置101を振動源の近傍に設けることが可能であっても、振動源の振動が微弱な場合がある。
【0055】
このような場合、計測対象レベルが小さくなり、振動計測装置101が計測対象の振動の有無を検出することが困難となる。このような、微弱な振動を精度よく計測することが可能な技術が求められる。
【0056】
具体的には、たとえば半導体材料の合成炉のような化学反応を進行させる炉では、炉自体が高温となり、また炉の周囲にはヒータが設けられるので、振動源である反応物の近傍に振動計測装置101を設置することが困難となる。
【0057】
このような場合、たとえば炉の蓋等のように炉から離れた位置に振動計測装置101が設けられるため、計測対象レベルが小さくなってしまう。
【0058】
たとえば、反応物が振動していることを検出することができれば、突沸の発生および反応生成物の品質劣化等を判断することができる。また、反応物が振動していないことを検出することができれば、反応炉における配管の詰まり等を判断することができる。
【0059】
また、半導体材料の合成炉における反応物に起因する微弱な振動の検出の他に、レンズの研磨品質を判断するためにレンズの表面研磨中における微弱な振動を検出することが求められる。また、重要設備の運搬中における破損の有無を判断するために運搬中における当該重要設備の微弱な振動を検出することが求められる。
【0060】
そこで、本発明の実施の形態に係る振動センサシステムでは、以下のような構成および動作により、このような課題を解決する。
【0061】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムにおける振動計測装置の構成を示す図である。
【0062】
図3を参照して、振動計測装置101は、振動センサ部21と、無線モジュール22と、バッテリ23と、操作部24と、点灯部(出力部)26とを備える。なお、バッテリ23は、振動計測装置101の外部に設けられてもよい。
【0063】
振動計測装置101における振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26は、バッテリ23から供給される電力を用いて動作する。なお、振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26の少なくともいずれか1つが、系統から受ける電力を用いて動作してもよいし、所定の直流電圧を出力する外部電源から受ける電力を用いて動作してもよい。
【0064】
振動センサ部21は、具体的にはデジタル加速度センサである。より詳細には、振動センサ部21は、振動センサとしてアナログの加速度センサと、計測結果を保持するデータレジスタと、データレジスタの状態を示すフラグを保持するフラグレジスタとを含む。加速度センサは、設備10に密着するように取り付けられ、自己の加速度を設備10の加速度として計測し、計測結果を示すアナログの計測信号を出力する。
【0065】
振動センサ部21は、加速度センサから出力される計測信号を、無線モジュール22によって設定されるサンプリング周期Tvでサンプリングし、サンプリング結果であるデジタルの振動データDvをデータレジスタにおいて保持するとともに、フラグレジスタにおけるフラグを所定時間オンする。
【0066】
なお、サンプリング周期Tvは所定の周期であってもよい。また、振動センサ部21は、たとえばデジタルフィルタ処理した振動データDvをデータレジスタにおいて保持してもよい。
【0067】
無線モジュール22は、たとえば専用の半導体集積回路により実現され、振動センサ部21から取得した振動データDvをアクセスポイント151へ送信する。
【0068】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムにおける振動計測装置の外観の一例を示す図である。
【0069】
図3および
図4を参照して、操作部24および点灯部26は、たとえば振動計測装置101の筐体の表面に設けられる。
【0070】
図4では、振動センサ部21が振動計測装置101の筐体内に設けられる構成が示される。なお、振動センサ部21が振動計測装置101の筐体内に設けられる構成に限らず、振動センサ部21が当該筐体の外部に設けられる構成であってもよい。この場合、振動センサ部21は、たとえばケーブルを介して振動計測装置101に接続される。
【0071】
操作部24は、具体的にはボタンであり、ユーザが振動計測装置101に対して補正値を算出する処理を開始させるために用いられる。なお、操作部24は、スイッチ等であってもよい。
【0072】
ユーザは、たとえば、設備10が稼働していない状態において、操作部24に対して押下等のオンする操作を行う。操作部24は、ユーザによるオン操作を受け付け、オン操作を示すオン操作情報を無線モジュール22へ出力する。
【0073】
点灯部26は、たとえばLED(Light Emitting Diode)であり、無線モジュール22の制御に従って点灯する。
【0074】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る振動計測装置における無線モジュールの構成を示す図である。
【0075】
図5を参照して、無線モジュール22は、メモリ(保持部)30と、取得部31と、送信部32と、補正値決定部34と、補正部35と、開始判断部36とを含む。
【0076】
開始判断部36は、所定条件C1を満たす、所定の長さL1を有する期間P1を設定する。
【0077】
所定条件C1は、たとえば、操作部24が所定の操作、具体的にはユーザによるオン操作を受け付けたことを含む。言い換えると、所定条件C1は、たとえばユーザにより所定の操作、具体的には操作部24に対するオン操作がなされたことを含む。より具体的には、所定条件C1は、たとえば、操作部24に対するオン操作がなされたこと、および当該オン操作がなされてからL1が経過することを含む。
【0078】
より詳細には、開始判断部36は、操作部24からオン操作情報を受けると、オン操作情報を受けたタイミングを開始タイミングとする期間P1を設定する。
【0079】
また、所定条件C1は、たとえば振動センサシステム301の電源がオンされたことである。詳細には、所定条件C1は、たとえば振動計測装置101の電源がオンされたことである。
【0080】
より詳細には、開始判断部36は、自己の振動計測装置101がオフ状態からオン状態へ遷移すると、遷移したタイミングを開始タイミングとする期間P1を設定する。
【0081】
開始判断部36は、設定した期間P1の開始タイミング、および当該開始タイミングからL1経過後の終了タイミングにおいて、それぞれ期間開始情報および期間終了情報を補正値決定部34へ出力する。
【0082】
補正値決定部34は、開始判断部36から期間開始情報を受けると、期間P1が開始したことを認識し、割り込み処理である補正値決定処理を開始する。
【0083】
より詳細には、補正値決定部34は、期間P1において所定の補正測定周期ごとに取得命令を取得部31へ出力する。
【0084】
取得部31は、計測対象の振動を計測する振動センサの計測結果すなわち振動データDvを取得する。
【0085】
具体的には、取得部31は、補正値決定部34から取得命令を受けると、振動センサ部21に対してサンプリング周期Tvを設定する。そして、取得部31は、振動センサ部21におけるフラグレジスタの保持するフラグを監視し、当該フラグがオンされると、データレジスタから振動データDvを取得する。取得部31は、取得した振動データDvにインデックスを付してメモリ30に蓄積するとともに、取得完了通知を補正値決定部34へ出力する。
【0086】
このインデックスは、取得部31が振動データDvをメモリ30に蓄積するごとにインクリメントされる。したがって、インデックスは、振動データDvの生成順を示すとともに、振動データDvの取得時刻に対応する。
【0087】
また、取得部31は、たとえばメモリ30をリングバッファとして機能させる。すなわち、取得部31は、振動データDvを上限数までメモリ30に蓄積する。取得部31は、たとえば、上限数の振動データDvをメモリ30に蓄積した状態において新たな振動データDvをメモリ30に蓄積する際、当該上限数の振動データDvのうち最も古い振動データDvすなわち最も小さいインデックスの付された振動データDvを破棄した後、新たな振動データDvをメモリ30に蓄積する。
【0088】
補正値決定部34は、取得部31から最初の取得完了通知を受けると、メモリ30に蓄積された各振動データDvに付されたインデックスを参照し、参照した各インデックスのうち最も値の大きいインデックスすなわち最新の振動データDvに付されたインデックス(以下、開始インデックスとも称する。)を特定する。
【0089】
補正値決定部34は、たとえば、開始判断部36から期間終了情報を受けるまで補正測定周期ごとに取得命令を取得部31へ出力し、取得命令の応答である2回目以降の取得完了通知を取得部31から受ける。すなわち、メモリ30において、補正測定周期ごとに新たな振動データDvが蓄積される。
【0090】
そして、補正値決定部34は、開始判断部36から期間終了情報を受けると、期間P1が満了したことを認識し、メモリ30に蓄積された各振動データDvに付されたインデックスを再び参照する。
【0091】
補正値決定部34は、参照した各インデックスのうち最も値の大きいインデックスすなわち最新の振動データDvに付されたインデックス(以下、終了インデックスとも称する。)を特定する。
【0092】
補正値決定部34は、特定した開始インデックスおよび終了インデックスを用いて、開始インデックスの付された振動データDvから終了インデックスの付された振動データDvまでの振動データDv(以下、対象振動データDt1とも称する。)をメモリ30から取得する。
【0093】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る振動計測装置における取得部によって取得された振動データの示す加速度の時間変化の一例を示す図である。なお、
図6において、縦軸は重力加速度単位の加速度[g]を示し、横軸は秒単位の時間[秒]を示す。
【0094】
図6には、期間P1において取得部31によって取得された振動データDvすなわち対象振動データDt1の示す加速度の時系列変化が示される。
【0095】
図6を参照して、補正値決定部34は、所定条件C1を満たす期間P1において取得部31によって取得された計測結果に基づいて補正値を決定する。
【0096】
より詳細には、補正値決定部34は、たとえば、対象振動データDt1に基づいて、一定の変動幅であって正方向の変動幅と負方向の変動幅とを含む補正値を決定する。
【0097】
具体的には、補正値決定部34は、たとえば対象振動データDt1の平均値Aveを算出する。そして、補正値決定部34は、対象振動データDt1に含まれる各々のデータから平均値Aveを差し引くことにより対象振動データDt2を作成する。
【0098】
補正値決定部34は、対象振動データDt2のうちのゼロ以上の値を有するデータ(以下、正データとも称する。)に基づいて実効値Aepを補正値として算出する。
【0099】
より詳細には、たとえば、正データの個数がNである場合において、正データの各々が示す値がX1〜XNで表されるとき、正データの実効値Aepは以下の式(1)により求められる。
【数1】
【0100】
同様に、補正値決定部34は、式(1)を用いて、対象振動データDt2のうちのゼロより小さい値を有するデータ(以下、負データとも称する。)に基づいて実効値Aemを補正値として算出する。この負データの実効値Aemも正の値となる。
【0101】
なお、補正値決定部34は、正データのすべてを用いて実効値Aepを算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。補正値決定部34は、正データに含まれる各振動データDvのうち、加速度の大きい順の上位から所定個数の振動データDvたとえば10個の振動データDvを特定し、特定した振動データDvを除去した正データに基づいて実効値Aepを算出する構成であってもよい。
【0102】
これにより、実効値Aepを算出する場合において、
図6に示すピークP1,P2のように他の振動データDvと比べて大きい加速度の振動データDvを除くことができるので、より良好な実効値Aepを算出することができる。
【0103】
同様に、補正値決定部34は、負データのすべてを用いて実効値Aemを算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。補正値決定部34は、負データに含まれる各振動データDvのうち、加速度の大きい順の下位から所定個数の振動データDvたとえば10個の振動データDvを特定し、特定した振動データDvを除去した負データに基づいて実効値Aemを算出する構成であってもよい。
【0104】
補正値決定部34は、算出した平均値Aveおよび実効値Aep,Aemを含む補正値情報を補正部35へ出力し、補正値決定処理を終了する。
【0105】
また、補正値決定部34は、補正値決定処理の開始タイミングおよび終了タイミングにおいて、それぞれ処理開始情報および処理終了情報を点灯部26へ出力する。
【0106】
再び
図3および
図4を参照して、点灯部26は、たとえば補正値決定部34による補正値の決定完了を認識可能に出力する。
【0107】
より詳細には、点灯部26は、無線モジュール22における補正値決定部34から処理開始情報を受けると、自己のLEDを点灯する。そして、点灯部26は、補正値決定部34から処理終了情報を受けると、自己のLEDを消灯する。
【0108】
なお、点灯部26は、補正値決定部34が補正値決定処理を行っている間、自己のLEDを単に点灯する構成に限らず、補正値決定処理の進捗状況がわかるように自己のLEDを点灯する構成であってもよい。
【0109】
具体的には、補正値決定部34は、たとえば、補正値決定処理の進捗度合いを示す進捗情報を所定周期ごとに作成し、作成した進捗情報を点灯部26へ出力する。
【0110】
点灯部26は、たとえば、補正値決定部34から受ける進捗情報の示す進捗度合いに応じた点滅速度で自己のLEDを点灯する。
【0111】
再び
図5を参照して、補正値決定部34は、補正値決定処理が終了すると、たとえば、所定の通常測定周期ごとに取得命令を取得部31へ出力し、当該取得命令の応答である取得完了通知を取得部31から受けると、受けた取得完了通知を補正部35へ出力する。
【0112】
補正部35は、期間P1の経過後に取得部31によって取得された計測結果である対象計測結果を、補正値決定部34によって決定された補正値を用いて補正する補正処理を行う。
【0113】
詳細には、補正部35は、たとえば、対象計測結果の示す振動から補正値の示す振動分を除去する補正処理を行う。
【0114】
より詳細には、補正部35は、補正値決定部34から補正値情報を受けると、受けた補正値情報から平均値Aveおよび実効値Aep,Aemを取り出す。
【0115】
また、補正部35は、補正値決定部34から取得完了通知を受けると、最も値の大きいインデックスの付された振動データDvすなわち最新の振動データDvをメモリ30から取得し、取得した振動データDvの値から平均値Aveを差し引く。
【0116】
補正部35は、平均値Aveを差し引いた振動データDvの値がゼロ以上である場合、当該値から実効値Aepを差し引く。一方、補正部35は、平均値Aveを差し引いた振動データDvの値がゼロより小さい場合、当該値に実効値Aemを加える。
【0117】
補正部35は、実効値Aepを差し引くか、または実効値Aemを加えた後の振動データDv(以下、補正済振動データとも称する。)、および自己の無線モジュール22のIDを含む振動データ情報を作成し、作成した振動データ情報を送信部32へ出力する。
【0118】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る振動計測装置における補正部によって補正された振動データの示す加速度の時間変化の一例を示す図である。なお、
図7の見方は、
図6と同様である。
【0119】
図7には、
図6に示す対象振動データDt1に対して補正処理を適用した後の振動データDv2が示される。
【0120】
このように、振動データDv2では、
図6に示す対象振動データDt1と比べて、不規則な振動の振幅を小さくすることができるので、振動データDv2に基づいて微弱な振動をより精度よく検出することができる。
【0121】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る振動計測装置は、実効値Aep,Aemを用いて振動データDvを補正する構成であるとしたが、これに限定するものではない。振動計測装置101は、実効値Aep,Aemを用いないで振動データDvを補正する構成であってもよい。
【0122】
具体的には、振動計測装置101における補正値決定部34は、上述したように、対象振動データDt1の平均値Aveを算出し、対象振動データDt1に含まれる各々のデータから平均値Aveを差し引くことにより対象振動データDt2を作成する。
【0123】
補正値決定部34は、対象振動データDt2のうちのゼロ以上の値を有する正データの平均値Avep、および対象振動データDt2のうちのゼロより小さい値を有する負データの平均値Avenを補正値として算出する。
【0124】
この際、補正値決定部34は、正データのすべてを用いて平均値Avepを算出する構成に限らず、正データに含まれる各振動データDvのうち、加速度の大きい順の上位から所定個数の振動データDvを除去した正データに基づいて平均値Avepを算出する構成であってもよい。
【0125】
同様に、補正値決定部34は、負データのすべてを用いて平均値Avenを算出する構成に限らず、負データに含まれる各振動データDvのうち、加速度の大きい順の下位から所定個数の振動データDvを除去した負データに基づいて平均値Avenを算出する構成であってもよい。
【0126】
補正部35は、補正対象の振動データDvから平均値Aveを差し引いた値がゼロ以上である場合、当該値から平均値Avepの絶対値を差し引く。一方、補正部35は、補正対象の振動データDvから平均値Aveを差し引いた値がゼロより小さい場合、当該値に平均値Avenの絶対値を加える。
【0127】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る無線モジュールでは、取得部31は、補正値決定部34から取得命令を受けると、振動センサ部21から振動データDvを取得し、取得した振動データDvをメモリ30に蓄積して取得完了通知を補正値決定部34へ出力する構成であるとしたが、これに限定するものではない。取得部31は、取得完了通知を補正値決定部34へ出力しない構成であってもよい。
【0128】
この場合、補正値決定部34は、たとえば、取得部31へ取得命令を出力したタイミングからサンプリング周期Tvの時間が経過したことをもって、振動センサ部21が新たな振動データDvをメモリ30に蓄積したと判断する。また、補正部35は、たとえば、補正値決定部34が出力する取得命令を監視し、補正値決定部34が取得部31へ取得命令を出力したタイミングからサンプリング周期Tvの時間が経過したことをもって、振動センサ部21が新たな振動データDvをメモリ30に蓄積したと判断する。
【0129】
再び
図5を参照して、送信部32は、補正部35によって補正された対象計測結果を含む無線信号を片方向通信により送信する。
【0130】
具体的には、送信部32は、たとえば、IEEE802.15.4の通信規格に従って無線信号を送信することが可能である。
【0131】
より詳細には、送信部32は、補正部35から振動データ情報を受けると、受けた振動データ情報をパケットに格納し、当該パケットをブロードキャストする。
【0132】
再び
図1を参照して、アクセスポイント151は、振動計測装置101からパケットを受信すると、受信したパケットを中継して内部ネットワーク11経由で管理装置181へ送信する。
【0133】
管理装置181は、アクセスポイント151から受信した補正済振動データを処理する。より詳細には、管理装置181は、アクセスポイント151からパケットを受信すると、受信したパケットから振動データ情報を取得する。
【0134】
管理装置181は、取得した振動データ情報に基づいて検出処理を行う。具体的には、管理装置181は、振動データ情報から補正済振動データを取り出し、取り出した補正済振動データに、振動データ情報に含まれる無線モジュール22のID、および受信時刻を示すタイムスタンプを付する。
【0135】
管理装置181は、補正済振動データを蓄積する。管理装置181は、たとえば、蓄積した複数の補正済振動データの示す値の時系列変化に基づいて、計測対象における微弱な振動の有無を判定する。
【0136】
[無線モジュールの変形例]
所定条件C1は、操作部24に対するオン操作がなされてからL1が経過するまでか、または振動計測装置101の電源がオンされたこととしたが、これに限定するものではない。所定条件C1は、管理装置181から指示を受けたことであってもよい。
【0137】
ここでは、振動計測装置101が管理装置181から指示を受けた場合の振動センサシステム301における処理について説明する。
【0138】
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムにおける無線モジュールの変形例の構成を示す図である。
【0139】
図8を参照して、無線モジュール22の変形例は、
図5に示す無線モジュール22と比べて、送信部32の代わりに、通信部62を備える。
【0140】
図8を参照して、通信部62は、アクセスポイント151と双方向の無線通信を行うことが可能である。通信部62は、アクセスポイント151および内部ネットワーク11を介して管理装置181と通信を行うことが可能である。
【0141】
再び
図1を参照して、管理装置181は、たとえば、設備10の稼働状況を管理する。管理装置181は、たとえば、設備10が稼働していない状態において、補正値決定命令を内部ネットワーク11およびアクセスポイント151経由で振動計測装置101へ送信する。
【0142】
再び
図8を参照して、無線モジュール22における通信部62は、管理装置181から補正値決定命令を受信すると、受信した補正値決定命令を開始判断部36へ出力する。
【0143】
開始判断部36は、通信部62から補正値決定命令を受けると、受けた補正値決定命令に従って、補正値決定命令を受けたタイミングを開始タイミングとする期間P1を設定する。
【0144】
開始判断部36は、設定した期間P1の開始タイミングおよび終了タイミングにおいて、それぞれ期間開始情報および期間終了情報を補正値決定部34へ出力する。
【0145】
[振動計測装置101の変形例1]
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムにおける振動計測装置の変形例の構成を示す図である。
【0146】
図9を参照して、振動計測装置101の変形例1は、
図3に示す振動計測装置101と比べて、さらに、電源管理部33を備える。
【0147】
振動計測装置101の変形例1における振動センサ部21、無線モジュール22、バッテリ23、操作部24および点灯部26の動作は、
図3に示す振動計測装置101における振動センサ部21、無線モジュール22、バッテリ23、操作部24および点灯部26とそれぞれ同様である。
【0148】
振動計測装置101の変形例1における電源管理部33は、振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26への電力供給のオンおよびオフを制御する。
【0149】
より詳細には、電源管理部33には、たとえば、起床期間およびスリープ期間が交互に繰り返されるスケジュールが設定されている。電源管理部33は、当該スケジュールに従って、振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26への電力供給のオンおよびオフを制御する。
【0150】
電源管理部33は、起床期間において、バッテリ23からの電力を振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26へ供給する。一方、電源管理部33は、スリープ期間において、振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26への電力供給を停止する。
【0151】
振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26は、起床期間に入って電源管理部33から電力供給を受けると、動作を開始する。
【0152】
より詳細には、補正値決定部34は、起床期間において通常測定周期ごとに取得命令を取得部31へ出力する。
【0153】
そして、振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26は、スリープ期間に入って電源管理部33からの電力供給が停止すると、動作を停止する。
【0154】
また、電源管理部33は、スリープ期間においても、操作部24からオン操作情報を受けると、スケジュールに関わらず振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26へ電力を供給する。
【0155】
開始判断部36は、スリープ期間においても、操作部24からオン操作情報を受けると、スケジュールに関わらず期間P1を設定する。これにより、補正値決定部34において、補正値決定処理が割り込み処理として行われる。
【0156】
なお、電源管理部33は、無線モジュール22における送信動作を監視し、無線モジュール22における振動データ情報の送信処理がスリープ期間の開始タイミングより前に終了した場合、当該開始タイミングより前のタイミングであっても当該送信処理の終了後に振動センサ部21、無線モジュール22および点灯部26への電力供給を停止してもよい。
【0157】
[振動計測装置101の変形例2]
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムにおける振動計測装置の変形例の構成を示す図である。
【0158】
図10を参照して、振動計測装置101の変形例2は、
図3に示す振動計測装置101と比べて、さらに、温度センサ部25を備える。
【0159】
振動計測装置101の変形例2における振動センサ部21、無線モジュール22、バッテリ23、操作部24および点灯部26の動作は、
図3に示す振動計測装置101における振動センサ部21、無線モジュール22、バッテリ23、操作部24および点灯部26とそれぞれ同様である。
【0160】
振動計測装置101の変形例2における温度センサ部25は、たとえば計測対象の温度を計測する。具体的には、温度センサ部25は、たとえばアナログの温度センサを含む。温度センサは、設備10に密着するように取り付けられ、設備10の温度を計測し、計測結果を示すアナログの計測信号を出力する。
【0161】
温度センサ部25は、温度センサから出力される計測信号を所定のサンプリング周期Ttでサンプリングし、サンプリング結果であるデジタルの温度データDtを無線モジュール22へ出力する。
【0162】
なお、サンプリング周期Ttは可変であってもよい。また、温度センサ部25は、たとえばデジタルフィルタ処理した温度データDtを無線モジュール22へ出力してもよい。
【0163】
図11は、
図10に示す振動計測装置の変形例における無線モジュールの構成を示す図である。
【0164】
図11を参照して、振動計測装置101の変形例2における無線モジュール22は、
図5に示す無線モジュール22と比べて、さらに、判定部37を含む。
【0165】
図11に示す無線モジュール22におけるメモリ30、取得部31、送信部32、補正値決定部34、補正部35および開始判断部36の動作は、
図5に示す無線モジュール22におけるメモリ30、取得部31、送信部32、補正値決定部34、補正部35および開始判断部36とそれぞれ同様である。
【0166】
無線モジュール22における取得部31は、たとえば、計測対象の温度を計測する温度センサの計測結果をさらに取得する。より詳細には、取得部31は、温度センサ部25から温度データDtをサンプリング周期Ttごとに受けて、受けた温度データDtを判定部37へ出力する。
【0167】
図12は、本発明の第1の実施の形態に係る振動計測装置の変形例における補正値決定部が用いる参考実効値の温度変化の一例を示す図である。なお、
図12において、縦軸は加速度の参考実効値[mg]を示し、横軸は温度[℃]を示す。
【0168】
図12を参照して、メモリ30は、たとえば、計測対象の温度と補正値の正常範囲を決定するための値との対応関係を示す対応情報を保持する。具体的には、メモリ30は、計測対象の温度と加速度の参考実効値との対応関係を示す対応情報を保持する。
【0169】
参考実効値は、たとえば振動計測装置101の出荷時に設定される。より詳細には、参考実効値は、たとえば、静止状態における振動計測装置101によって算出された実効値Aep,Aemに基づく値である。
【0170】
判定部37は、たとえば、取得部31によって取得された温度センサの計測結果および対応情報に基づいて、補正値決定部34によって決定された補正値が正常であるか否かを判定する。
【0171】
より詳細には、補正値決定部34は、補正値決定処理において平均値Aveおよび実効値Aep,Aemを算出し、算出結果を含む補正値情報を補正部35および判定部37へ出力する。
【0172】
判定部37は、補正値決定部34から補正値情報を受けると、現在の設備10の温度における補正値の正常範囲を決定する。
【0173】
より詳細には、判定部37は、取得部31から受ける温度データDtのうち、直近の温度データDtの示す温度を設備10の温度Tsとして決定する。
【0174】
判定部37は、たとえば、対応情報の示す温度ごとの参考実効値を最小二乗近似することにより直線Ltを求め、求めた直線Ltを用いて、特定した温度Tsに対応する参考実効値Asを算出する。
【0175】
判定部37は、たとえば、算出した参考実効値Asを所定数倍した値以下でありかつゼロ以上の範囲を正常範囲として決定する。なお、判定部37は、参考実効値As以下でありかつゼロ以上の範囲を正常範囲として決定してもよい。
【0176】
判定部37は、補正値情報に含まれる実効値AepおよびAemの両方が正常範囲に含まれる場合、補正値決定部34によって決定された補正値が正常であると判定する。
【0177】
一方、判定部37は、当該実効値Aep,Aemの少なくともいずれか一方が正常範囲に含まれない場合、補正値決定部34によって決定された補正値が異常であると判定する。
【0178】
判定部37は、判定結果を含む判定結果情報を作成し、作成した判定結果情報を送信部32経由で管理装置181へ送信する。
【0179】
このような構成により、管理装置181では、判定結果情報に基づいて補正済振動データの信頼度を評価することができる。
【0180】
[振動計測方法]
図13は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムにおける振動計測方法の手順を定めたフローチャートである。
【0181】
図13を参照して、ユーザは、振動を計測する加速度センサを、計測対象を含むエリアに設置する(ステップS102)。より詳細には、ユーザは、振動計測装置101に含まれる加速度センサが設備10に密着するように振動計測装置101を設備10に取り付ける。
【0182】
次に、ユーザは、設備10が稼働していない状態において、振動計測装置101の電源をオンする(ステップS104)。
【0183】
次に、振動計測装置101は、計測対象が稼働していない状態における加速度センサの計測結果を取得する(ステップS106)。詳細には、振動計測装置101は、所定条件C1が満たされたので補正値決定処理を開始する。より詳細には、振動計測装置101は、サンプリング周期Tvごとに振動データDvを取得する取得処理を開始し、期間P1における振動データDvすなわち対象振動データDt1を取得する。
【0184】
次に、振動計測装置101は、取得した計測結果に基づいて補正値を決定する(ステップS108)。より詳細には、振動計測装置101は、対象振動データDt1に基づいて補正値を決定する(ステップS108)。
【0185】
次に、ユーザは、計測対象を稼働する(ステップS110)。より詳細には、ユーザは、点灯部26におけるLEDの点灯状況を監視し、LEDが消灯すると振動計測装置101における補正値決定処理が完了したと判断し、設備10を稼働させる。
【0186】
次に、振動計測装置101は、計測対象が稼働している状態における計測結果である対象計測結果を取得する(ステップS112)。より詳細には、振動計測装置101は、サンプリング周期Tvごとの振動データDvの取得処理を継続して行う。
【0187】
次に、振動計測装置101は、取得した対象計測結果を、決定した補正値を用いて補正する(ステップS114)。より詳細には、振動計測装置101は、取得した振動データDvの補正処理を行う。
【0188】
次に、振動計測装置101は、補正後の振動データDvすなわち補正済振動データを含む振動データ情報を送信する(ステップS116)。
【0189】
なお、振動計測装置101は、上記ステップ114およびS116における振動データDvの補正処理および送信処理を1回行う構成に限らず、たとえばユーザが振動計測装置101の電源をオフするまで、振動データDvの補正処理および送信処理を繰り返し行う構成でってもよい。
【0190】
[動作の流れ]
振動センサシステム301における各装置は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンス図またはフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリからそれぞれ読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0191】
図14は、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムが振動データを処理する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0192】
図14を参照して、まず、振動計測装置101は、所定条件C1が満たされるまで待機する(ステップS202でNO)。
【0193】
そして、振動計測装置101は、所定条件C1が満たされると(ステップS202でYES)、期間P1を設定する(ステップS204)。
【0194】
次に、振動計測装置101は、期間P1においてサンプリング周期Tvごとに振動データDvを取得する、すなわち対象振動データDt1を取得する(ステップS206)。
【0195】
次に、振動計測装置101は、取得した対象振動データDt1に基づいて補正値を決定する(ステップS208)。
【0196】
次に、振動計測装置101は、リングバッファとして機能するメモリ30に新たな振動データDvが蓄積されるまで待機し(ステップS210でNO)、メモリ30に新たな振動データDvが蓄積されると(ステップS210でYES)、新たな振動データDvの補正処理を行う(ステップS212)。
【0197】
次に、振動計測装置101は、補正後の振動データDvすなわち補正済振動データを含む振動データ情報を送信する(ステップS214)。
【0198】
次に、振動計測装置101は、ユーザによりオン操作が発生するか、または補正値決定命令を管理装置181から受信した場合(ステップS216でYES)、新たな期間P1を設定する(ステップS204)。
【0199】
一方、振動計測装置101は、ユーザによりオン操作が発生せず、かつ補正値決定命令を管理装置181から受信しない場合(ステップS216でNO)、メモリ30に新たな振動データDvが蓄積されるまで待機する(ステップS210でNO)。
【0200】
なお、振動計測装置101は、上記ステップS216においてユーザによるオン操作の発生および補正値決定命令の受信についての判定を行ったが、これに限定するものではない。振動計測装置101は、割り込み処理として、当該判定をステップS210の待機中、ステップS210およびS212の間、ならびにステップS212およびS214の間のうちのいずれで行ってもよい。
【0201】
また、管理装置181は、上記ステップS214において振動データ情報が振動計測装置101により送信された後、振動データ情報を受信し、受信した振動データ情報に基づいて検出処理を行う。
【0202】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムは、複数の振動計測装置101と、複数のアクセスポイント151と、管理装置181とを備えるとしたが、これに限定するものではない。振動センサシステム301は、取得部31と、補正値決定部34と、補正部35とを備える最小構成要素により、計測対象の振動を計測する構成において、計測対象の振動をより精度よく計測するという本発明の目的を達成することが可能である。
【0203】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、複数の振動計測装置101が設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。振動センサシステム301では、1つの振動計測装置101が設けられる構成であってもよい。
【0204】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、振動センサは、加速度センサであるとしたが、これに限定するものではない。振動センサは、位置センサおよび速度センサのいずれか一方であってもよい。振動センサが、位置センサまたは速度センサであっても、対象計測結果を補正することが可能である。
【0205】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、振動センサ部21が設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。振動センサ部21が振動センサシステム301の外部に設けられる構成であってもよい。
【0206】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、補正値は、一定の変動幅であって正方向の変動幅と負方向の変動幅とを含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。補正値は、実効値Aep,Aemの平均値等の一定の変動幅である構成であってもよい。また、当該補正値は、一定の変動幅でなくてもよい。
【0207】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、補正部35は、対象計測結果の示す振動から補正値の示す振動分を除去する構成であるとしたが、これに限定するものではない。補正部35は、補正値を用いて、対象計測結果から補正値の示すオフセット分を除去する構成であってもよい。
【0208】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、所定条件C1は、操作部24に対するオン操作がなされたことを含むか、または振動計測装置101の電源がオンされたこととしたが、これに限定するものではない。所定条件C1は、操作部24に対するオン操作がなされたことを含むこと、および振動計測装置101の電源がオンされたことのいずれか一方であってもよい。また、所定条件C1は、これらと異なる条件であってもよい。
【0209】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムは、操作部24および点灯部26を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。振動センサシステム301は、操作部24および点灯部26のいずれか一方を備える構成であってもよいし、操作部24および点灯部26を備えない構成であってもよい。
【0210】
ところで、上述の特許文献1に記載の技術を超えて、計測対象の振動をより精度よく計測するための技術が求められている。
【0211】
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、取得部31は、計測対象の振動を計測する振動センサの計測結果を取得する。補正値決定部34は、所定条件C1を満たす期間P1において取得部31によって取得された計測結果に基づいて補正値を決定する。そして、補正部35は、期間P1の経過後に取得部31によって取得された計測結果である対象計測結果を、補正値決定部34によって決定された補正値を用いて補正する。
【0212】
このような構成により、たとえば、計測対象が稼働していない状態であることを所定条件C1とすることで、計測対象が静止していても計測されるノイズ成分、および振動センサの設置環境に依存する成分に基づく補正値を決定することができる。これにより、上記成分の悪影響が抑制されるように対象計測結果を補正することができるので、上記成分により精度よく計測することが困難であった振幅の小さい微弱な振動を計測することができる。したがって、計測対象の振動を計測する構成において、計測対象の微弱な振動をより精度よく計測することができる。
【0213】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、補正値は、一定の変動幅である。
【0214】
このような構成により、たとえば、抑制対象の成分の変動が一定の範囲に収まる場合において、当該成分の対象計測結果に対する悪影響を効果的に抑制することができる。
【0215】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、補正値は、正方向の変動幅と負方向の変動幅とを含む。
【0216】
このような構成により、抑制対象の成分の変動が正方向および負方向に非対称である場合においても、当該成分の対象計測結果に対する悪影響を効果的に抑制することができる。
【0217】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、補正部35による補正は、対象計測結果の示す振動から補正値の示す振動分を除去することである。
【0218】
このように、たとえば、計測対象が静止していても計測される振動分を対象計測結果の示す振動から除去する構成により、対象計測結果の示す振動の振幅より小さい値の振幅を計測対象の振幅とすることができるので、振幅の小さい微弱な振動を良好に計測することができる。
【0219】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、所定条件C1は、ユーザにより所定の操作がなされたことを含む。
【0220】
このように、たとえば、計測対象が稼働していないことを認識可能なユーザにより所定の操作がなされたことを含む所定条件C1とする構成により、計測対象が静止している状態における計測結果を取得する可能性を高めることができる。
【0221】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、操作部24は、上記所定の操作を受け付ける。そして、所定条件C1は、操作部24が上記所定の操作を受け付けたことを含む。
【0222】
このような構成により、ユーザは、計測対象が稼働していない状態における計測結果の取得処理を容易に開始させることができる。
【0223】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、所定条件C1は、計測結果に基づく情報を処理する管理装置181から指示を受けたことである。
【0224】
このように、たとえば、計測対象の稼働状況を認識可能な管理装置181から指示を受けたことを所定条件C1とする構成により、計測対象が静止している状態における計測結果を取得する可能性を高めることができる。
【0225】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、所定条件C1は、振動センサシステム301の電源がオンされたことである。
【0226】
このように、たとえば計測対象が稼働していない状態である場合において振動センサシステム301の電源がオンされたことを所定条件C1とする構成により、計測対象が静止している状態における計測結果を取得する可能性を高めることができる。
【0227】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、点灯部26は、補正値決定部34による補正値の決定完了を認識可能に出力する。
【0228】
このような構成により、ユーザは、補正値の決定タイミングを容易に認識することができるので、たとえば、補正値の決定より前に計測対象を稼働させてしまうことを防ぐことができる。
【0229】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動センサシステムでは、取得部31は、計測対象の温度を計測する温度センサの計測結果をさらに取得する。メモリ30は、計測対象の温度と補正値の正常範囲を決定するための値との対応関係を示す対応情報を保持する。そして、判定部37は、取得部31によって取得された温度センサの計測結果および対応情報に基づいて、補正値決定部34によって決定された補正値が正常であるか否かを判定する。
【0230】
このような構成により、判定部37の判定結果に基づいて、対象計測結果が適正であるか否かを計測対象の温度に関わらず判断することができるので、対象計測結果の信頼性を高めることができる。
【0231】
また、本発明の第1の実施の形態に係る振動計測方法では、まず、振動を計測する振動センサを、計測対象を含むエリアに設置する。次に、計測対象が稼働していない状態における振動センサの計測結果を取得する。次に、取得した計測結果に基づいて補正値を決定する。次に、計測対象を稼働する。次に、計測対象が稼働している状態における計測結果である対象計測結果を取得する。次に、取得した対象計測結果を、補正値を用いて補正する。
【0232】
このような構成により、たとえば、計測対象が静止していても計測されるノイズ成分、および振動センサの設置環境に依存する成分に基づく補正値を決定することができる。これにより、上記成分の悪影響が抑制されるように対象計測結果を補正することができるので、上記成分により精度よく計測することが困難であった振幅の小さい微弱な振動を計測することができる。したがって、計測対象の振動を計測する構成において、計測対象の微弱な振動をより精度よく計測することができる。
【0233】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0234】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る振動センサシステムと比べて、管理装置において補正値が決定される振動センサシステムに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る振動センサシステムと同様である。
【0235】
[構成および基本動作]
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る振動センサシステムの構成を示す図である。
【0236】
図15を参照して、振動センサシステム302は、複数の振動計測装置102と、アクセスポイント151と、管理装置182とを備える。
【0237】
振動センサシステム302におけるアクセスポイント151の動作は、
図1に示す振動センサシステム301におけるアクセスポイント151と同様である。
【0238】
振動計測装置102は、無線通信により情報を送受信する機能を有しており、アクセスポイント151および内部ネットワーク11を介して管理装置182と通信を行うことが可能である。
【0239】
図16は、本発明の第2の実施の形態に係る振動センサシステムにおける振動計測装置の構成を示す図である。
【0240】
図16を参照して、振動計測装置102は、
図3に示す振動計測装置101と比べて、無線モジュール22の代わりに、無線モジュール52を備える。
【0241】
振動計測装置102における振動センサ部21、バッテリ23、操作部24および点灯部26の動作は、
図3に示す振動計測装置101における振動センサ部21、バッテリ23、操作部24および点灯部26とそれぞれ同様である。
【0242】
図17は、本発明の第2の実施の形態に係る振動計測装置における無線モジュールの構成を示す図である。
【0243】
図17を参照して、無線モジュール52は、
図5に示す無線モジュール22と比べて、メモリ30、送信部32、補正値決定部34、補正部35および開始判断部36の代わりに、処理部61および通信部62を含む。
【0244】
無線モジュール52における通信部62は、アクセスポイント151と無線通信を行うことが可能である。
【0245】
処理部61は、操作部24からオン操作情報を受けると、受けたオン操作情報を通信部62経由で管理装置182へ送信する。
【0246】
また、処理部61は、自己の振動計測装置102がオフ状態からオン状態へ遷移すると、オン遷移情報を通信部62経由で管理装置182へ送信する。
【0247】
また、通信部62は、管理装置182から処理開始情報を受信すると、受信した処理開始情報を処理部61へ出力する。また、通信部62は、管理装置182から処理終了情報を受信すると、受信した処理終了情報を処理部61へ出力する。また、通信部62は、管理装置182から取得命令を受信すると、受信した取得命令を処理部61へ出力する。
【0248】
処理部61は、通信部62から処理開始情報を受けると、受けた処理開始情報を点灯部26へ出力する。また、処理部61は、通信部62から処理終了情報を受けると、受けた処理終了情報を点灯部26へ出力する。
【0249】
また、処理部61は、通信部62から取得命令を受けると、受けた取得命令を取得部31へ出力する。
【0250】
取得部31は、処理部61から取得命令を受けると、振動センサ部21におけるフラグレジスタの保持するフラグを監視し、当該フラグがオンされると、データレジスタから振動データDvを取得する。取得部31は、取得した振動データDvにインデックスを付して処理部61へ出力する。
【0251】
処理部61は、取得部31から振動データDvを受けると、受けた振動データDv、および自己の無線モジュール52のIDを含む振動データ情報を作成し、作成した振動データ情報を通信部62へ出力する。
【0252】
通信部62は、処理部61から振動データ情報を受けると、受けた振動データ情報をアクセスポイント151および内部ネットワーク11経由で管理装置182へ送信する。
【0253】
図18は、本発明の第2の実施の形態に係る振動センサシステムにおける管理装置の構成を示す図である。
【0254】
図18を参照して、管理装置182は、メモリ70と、通信処理部71と、検出部73と、補正値決定部74と、補正部75と、開始判断部76とを備える。
【0255】
管理装置182におけるメモリ70、補正値決定部74、補正部75および開始判断部76の動作は、
図5に示す無線モジュール22におけるメモリ30、補正値決定部34、補正部35および開始判断部36とそれぞれ同様である。
【0256】
通信処理部71は、内部ネットワーク11を介してアクセスポイント151と通信を行うことが可能である。
【0257】
通信処理部71は、たとえばメモリ70をリングバッファとして機能させる。通信処理部71は、振動計測装置102から振動データ情報を受信すると、受信した振動データ情報から振動データDvおよび無線モジュール52のIDを取得する。
【0258】
通信処理部71は、取得した振動データDvに無線モジュール52のIDを付した後、振動データDvをメモリ70に蓄積する。
【0259】
通信処理部71は、振動計測装置102からオン操作情報を受信すると、受信したオン操作情報を開始判断部76へ出力する。また、通信処理部71は、振動計測装置102からオン遷移情報を受信すると、受信したオン遷移情報を開始判断部76へ出力する。
【0260】
開始判断部76は、通信処理部71からオン操作情報を受けると、オン操作情報を受けたタイミングを開始タイミングとする期間P1を設定する。また、開始判断部76は、通信処理部71からオン遷移情報を受けると、オン遷移情報を受けたタイミングを開始タイミングとする期間P1を設定する。
【0261】
開始判断部76は、設定した期間P1の開始タイミングおよび終了タイミングにおいて、それぞれ期間開始情報および期間終了情報を補正値決定部74へ出力する。
【0262】
補正値決定部74は、開始判断部76から期間開始情報を受けると、期間P1が開始したことを認識し、補正値決定処理を開始する。
【0263】
より詳細には、補正値決定部74は、期間P1において補正測定周期ごとに取得命令を通信処理部71、内部ネットワーク11およびアクセスポイント151経由で振動計測装置102へ送信する。
【0264】
補正値決定部74は、期間P1においてメモリ70に蓄積される振動データDvに付されたインデックスを監視し、期間P1が満了すると、監視結果を用いてメモリ70から対象振動データDt1を取得し、取得した対象振動データDt1に基づいて平均値Aveおよび実効値Aep,Aemを算出する。
【0265】
補正値決定部74は、算出結果を含む補正値情報を補正部75へ出力し、補正値決定処理を終了する。
【0266】
また、補正値決定部74は、補正値決定処理の開始タイミングおよび終了タイミングにおいて、それぞれ処理開始情報および処理終了情報を通信処理部71、内部ネットワーク11およびアクセスポイント151経由で振動計測装置102へ送信する。
【0267】
また、補正値決定部34は、補正値決定処理が終了すると、通常測定周期ごとに取得命令を通信処理部71、内部ネットワーク11およびアクセスポイント151経由で振動計測装置102へ送信する。
【0268】
補正部75は、補正値決定部74から補正値情報を受けると、受けた補正値情報から平均値Aveおよび実効値Aep,Aemを取り出す。
【0269】
補正部75は、メモリ70に蓄積される振動データDvを監視し、メモリ70に新たな振動データDvが蓄積されると、当該新たな振動データDvをメモリ70から取得する。
【0270】
補正部75は、平均値Aveおよび実効値Aep,Aemを用いて、取得した振動データDvを補正し、補正後の補正済振動データを検出部73へ出力する。
【0271】
検出部73は、補正部75から補正済振動データを受けると、受けた補正済振動データに基づいて検出処理を行う。
【0272】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る振動センサシステムと同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0273】
なお、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態に係る各装置の構成要素および動作のうち、一部または全部を適宜組み合わせることも可能である。
【0274】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0275】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0276】
[付記1]
計測対象の振動を計測する振動センサの計測結果を取得する取得部と、
所定条件を満たす期間において前記取得部によって取得された前記計測結果に基づいて補正値を決定する補正値決定部と、
前記期間の経過後に前記取得部によって取得された前記計測結果である対象計測結果を、前記補正値決定部によって決定された前記補正値を用いて補正する補正部とを備え、
前記計測対象は、半導体材料の合成炉または回転部を含む設備であり、
前記振動センサは、デジタル加速度センサであり、前記計測対象に密着するように取り付けられ、
前記振動センサは、自己の加速度を前記計測対象の加速度として計測し、計測結果を示すデジタルの振動データを出力し、
前記取得部は、前記振動センサから出力される前記振動データを前記計測結果として取得し、
前記補正値決定部は、前記期間において前記取得部によって取得された前記振動データである対象振動データの平均値を算出し、前記対象振動データから前記平均値を差し引いた後、ゼロ以上の値を有する前記対象振動データの実効値である正側実効値、およびゼロより小さい値を有する前記対象振動データの実効値である負側実効値を前記補正値として算出し、
前記補正部は、前記対象計測結果から前記補正部決定部によって算出された前記平均値を差し引いた後、前記対象計測結果がゼロ以上の値である場合、前記対象計測結果から前記正側実効値を差し引き、また、前記対象計測結果がゼロより小さい場合、前記対象計測結果に前記負側実効値を加える、振動センサシステム。