特許第6825402号(P6825402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許6825402-クランプ装置及び遠隔穿孔装置 図000002
  • 特許6825402-クランプ装置及び遠隔穿孔装置 図000003
  • 特許6825402-クランプ装置及び遠隔穿孔装置 図000004
  • 特許6825402-クランプ装置及び遠隔穿孔装置 図000005
  • 特許6825402-クランプ装置及び遠隔穿孔装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825402
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】クランプ装置及び遠隔穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20210121BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20210121BHJP
   B23B 39/14 20060101ALI20210121BHJP
   B23B 41/00 20060101ALI20210121BHJP
   B25B 5/16 20060101ALI20210121BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   B23Q3/06 304Z
   B23B49/00 A
   B23B39/14
   B23B41/00 Z
   B25B5/16
   E04G21/16
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-23364(P2017-23364)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-126846(P2018-126846A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年10月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 平成28年11月24日、ウェブサイトのアドレス http://irid.or.jp/press/2016/ http://irid.or.jp/wp−content/uploads/2016/11/20161124_1.pdf 取材日 平成28年11月25日、取材場所 株式会社東芝 広野ロジセンター ウェブサイトの掲載日 平成28年12月24日、ウェブサイトのアドレス http://photo.tepco.co.jp/date/2016/201612−j/161224−01j.html http://photo.tepco.co.jp/library/161224_01/161224_01.JPG ウェブサイトの掲載日 平成28年12月26日、ウェブサイトのアドレス http://photo.tepco.co.jp/date/2016/201612−j/161226−01j.html http://photo.tepco.co.jp/library/161226_01/161226_01.jpg http://www.tepco.co.jp/tepconews/library/archive−j.html?video_uuid=sszb985z&catid=61699
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】片野 泰知
(72)【発明者】
【氏名】今堀 敬三
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−123372(JP,U)
【文献】 特開平10−235494(JP,A)
【文献】 実公昭45−017983(JP,Y1)
【文献】 特開2016−079571(JP,A)
【文献】 特開2012−006130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
B23B 39/14
B23B 41/00
B23B 49/00
B25B 1/00− 5/16
E04G 21/16
F16B 2/02− 2/18
F16L 23/02−23/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に第2の部材を固定するクランプ装置であって、
前記第1の部材に前記第2の部材を押し付ける押付機構と、
前記第1の部材の背面に当接し、前記押付機構による押し付け反力を受ける反力受け機構と、を有し、
前記反力受け機構は、
ケースと、
前記ケースに収容され、本体部が回転軸を介して前記ケースに連結されたシリンダと、
前記ケースに収容され、前記シリンダの伸縮動作に応じて、前記第1の部材の背面側に突出する突出位置と当該突出位置から退避する退避位置との間で移動するリンク機構と、を有し、
前記リンク機構は、
一端部が回転軸を介して前記ケースに連結された第1アームと、
前記第1アームの他端部に、一端部が回転軸を介して連結され、他端部に前記第1の部材の背面に当接する車輪を有する第2アームと、
前記第2アームの中間部のやや他端部よりに、一端部が回転軸を介して連結されると共に、前記第1アームの一端部の回転軸と前記シリンダの本体部の回転軸との間において、他端部が回転軸を介して前記ケースに連結された第3アームと、を有し、
前記シリンダは、前記本体部に対して伸縮可能に設けれ、前記第1アームの他端部と前記第2アームの一端部とが連結される回転軸に接続されたロッド部を有し、
前記ロッド部が収縮したとき、前記第1アーム及び前記第2アームは、一直線状に配置される、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記シリンダは、エアシリンダであり、
前記押付機構は、駆動源としてエアモーターを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
移動台車と、
前記移動台車に搭載された隔離装置と、
前記隔離装置に連結された穿孔装置と、
前記隔離装置を穿孔対象物に固定するクランプ装置と、を有し、
前記クランプ装置として、請求項1または2に記載のクランプ装置を有する、ことを特徴とする遠隔穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置及び遠隔穿孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、遠隔操作による穿孔作業を可能とする遠隔穿孔装置が開示されている。この遠隔穿孔装置は、過酷事故が発生した原子炉建屋内の高線量環境下で、作業者に代わり、ペネトレーションの閉止板に穿孔作業を行うものである。ペネトレーションの閉止板に貫通孔をあけると、これまで確保されていたバウンダリを一旦破壊することになるため、仮設バウンダリを構築する必要がある。
【0003】
このため、遠隔穿孔装置は、先端にドリルが装着される延長シャフトと、遠隔操作により進退可能であると共に該延長シャフトが着脱される穿孔装置本体と、前記壁部に短管を介して取付けられる弁スプールと、前記短管内に窒素ガスを供給するパージラインと、前記弁スプールに固着され前記延長シャフトが挿入可能なシール部と、を具備する。
【0004】
そして、パージラインより窒素ガスが供給されている状態で、シール部に延長シャフトが挿入されることで弁スプールが気密に封止され、該弁スプール内のバウンダリが確保されるので、バウンダリを確保しつつ前記貫通孔を穿設可能であり、過酷事故等により穿孔該当内部に高線量物質が存在した場合であっても、高線量物質を外部に放出させることなく穿孔作業を行うことができるという優れた効果を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−79571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、閉止板に貫通孔を形成する場合には、閉止板に対して隔離装置(弁スプール等)を気密に固定する必要がある。この固定方法としては、例えば、シャコ万力のようなものを用いて、ペネトレーションのフランジ部を複数箇所で挟み込む方法が考えられるが、これを遠隔操作により行おうとすると、複雑な構成のアクチュエータが必要となり、重量の増加、故障の確率が上がる等、遠隔操作に支障が出る虞がある。また、閉止板の中心から偏心した位置に隔離装置を固定して貫通孔を形成するような場合、ペネトレーションのフランジ部を挟み込む構成では、フランジ部から隔離装置までの距離が一定でなくなるため、気密を保つことが困難になる虞がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、遠隔操作によって対象物を簡易かつ確実に固定することができるクランプ装置及び遠隔穿孔装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、第1の部材に第2の部材を固定するクランプ装置であって、前記第1の部材に前記第2の部材を押し付ける押付機構と、前記第1の部材の背面に当接し、前記押付機構による押し付け反力を受ける反力受け機構と、を有し、前記反力受け機構は、シリンダと、前記シリンダの伸縮動作に応じて、前記第1の部材の背面側に突出する突出位置と当該突出位置から退避する退避位置との間で移動するリンク機構と、を有する、という構成を採用する。
【0009】
また、本発明においては、前記リンク機構は、前記第1の部材に当接する車輪を有する、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、前記リンク機構は、前記押付機構による押し付け反力を受けたときに、前記突出位置から前記退避位置への移動を規制する、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記シリンダは、エアシリンダであり、前記押付機構は、駆動源としてエアモーターを有する、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、移動台車と、前記移動台車に搭載された隔離装置と、前記隔離装置に連結された穿孔装置と、前記隔離装置を穿孔対象物に固定するクランプ装置と、を有し、前記クランプ装置として、先に記載のクランプ装置を有する、遠隔穿孔装置を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、クランプ装置を、第1の部材に第2の部材を押し付ける押付機構と、当該押付機構による押し付け反力を受ける反力受け機構と、によって構成し、反力受け機構は、エアシリンダの伸縮動作という簡易な動作で、第1の部材の背面側に突出可能なリンク機構とする。このリンク機構は、第1の部材の背面側に突出し、第1の部材に第2の部材を押し付ける際の反力受けとなり、これにより押付機構は、第1の部材に対し、垂直に第2の部材を押し付けることができ、気密を保つことができる。
したがって、本発明によれば、遠隔操作によって対象物を簡易かつ確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における遠隔穿孔装置を示す側断面図である。
図2図1に示すクランプ装置を背面側から視た矢視A図である。
図3】本発明の実施形態におけるリンク収容部に収容されたリンク機構の(a)収容状態を示す図、及び(b)展開状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態におけるクランプ装置の動作を説明する説明図である。
図5】本発明の実施形態におけるクランプ装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために、例を挙げて説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明に用いる図面は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上、省略した部分がある。
【0016】
図1は、本発明の実施形態における遠隔穿孔装置1を示す側断面図である。
本実施形態の遠隔穿孔装置1は、遠隔操作によって、原子炉建屋内において床2の上を走行し、壁3に設けられたペネトレーション4を閉止している閉止板5に、貫通孔を形成する穿孔作業を行うものである。すなわち、閉止板5が取り付けられたペネトレーション4が、穿孔対象物(第1の部材)である。この遠隔穿孔装置1は、移動台車10と、隔離装置20と、穿孔装置30と、吊下げ装置40と、クランプ装置50と、を有する。
なお、以下の説明では、移動台車10の走行方向を基準に、前後、左右、上下方向を規定して説明する。すなわち、移動台車10の走行方向を前後方向とし、移動台車10がペネトレーション4に向かう方向を前とし、遠ざかる方向を後とする。そして、該前後方向と直交する水平方向を左右方向とし、前後、左右方向と直交する鉛直方向を上下方向とする。
【0017】
移動台車10は、前方台車11と、後方台車12とが連結されたものである。前方台車11には、隔離装置20、クランプ装置50が支持されている。後方台車12には、吊下げ装置40が支持されている。穿孔装置30は、隔離装置20に連結されると共に、吊下げ装置40に吊下げ支持されており、前方台車11と、後方台車12に跨って支持されている。
【0018】
前方台車11の後方には、後方に突出した連結部材13が設けられている。この連結部材13には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、後方台車12の前方に設けられたエアシリンダ14のロッド部が挿入可能な構成となっている。また、前方台車11(移動台車10の前方)には、旋回不能な固定キャスター15が設けられている。一方、後方台車12(移動台車10の後方)には、旋回可能なフリーキャスター16が設けられている。
【0019】
移動台車10は、走行ユニット17を有し、その駆動源として、走行用エアモーター17aと、旋回用エアモーター17bと、を有する。走行用エアモーター17aは、走行ユニット17の2つの車輪を同じ方向に回転させて移動台車10を走行させる。また、旋回用エアモーター17bは、走行ユニット17の2つの車輪を逆方向に回転させて移動台車10を旋回させる。この走行ユニット17は、後方台車12(移動台車10の後方)に設けられている。具体的には、走行ユニット17は、固定キャスター15の後方であって、フリーキャスター16の前方に設けられている。このように、本実施形態の移動台車10は、走行ユニット17の走行用エアモーター17aと旋回用エアモーター17bの回転を制御することにより、移動台車10の前方を起点に、移動台車10の後方を左右に振ることが可能な後輪駆動方式となっている。
【0020】
また、後方台車12には、外部制御装置と通信可能な制御ユニット18が搭載されている。なお、通信方式は、有線または無線を問わない。制御ユニット18は、遠隔穿孔装置1の各構成機器の動作を制御するものである。また、後方台車12には、エアシリンダ14や走行用エアモーター17a及び旋回用エアモーター17b、後述するその他のエア駆動装置に、エアを供給する図示しないエアコンプレッサが搭載されている。
【0021】
隔離装置20は、移動台車10の前方台車11に搭載されている。隔離装置20は、ペネトレーション4の閉止板5に貫通孔をあけるときの仮設バウンダリを構築するものである。すなわち、隔離装置20は、閉止板5の表面5aに気密に当接し、ペネトレーション4の内側に存在する高線量物質を含むガスを外部に排出させないようにするものである。この隔離装置20は、フロントチャンバ21(スプール)と、遠隔操作弁22と、リアチャンバ23と、を有する。
【0022】
フロントチャンバ21は、閉止板5の表面5aに気密に密着する開口フランジ21aを有する。開口フランジ21aの閉止板5の表面5aに当接する当接面には、気密性を高めるシール部材が設けられている。遠隔操作弁22は、フロントチャンバ21の後方に連結されると共に、その内部空間がフロントチャンバ21の内部に連通している。この遠隔操作弁22は、例えば、制御ユニット18の制御の下に開閉する電動ボール弁である。なお、遠隔操作弁22は、電動弁であっても電磁弁であってもよい。
【0023】
リアチャンバ23は、遠隔操作弁22の後方に連結されると共に、その内部空間が遠隔操作弁22の内部に連通している。フロントチャンバ21、遠隔操作弁22及びリアチャンバ23は、後述する穿孔装置30の本体部31が水平方向(移動台車10の前後方向)に挿入可能となるように水平方向に連結されている。リアチャンバ23は、隔離装置20に挿入された穿孔装置30の本体部31の芯出しをする芯出し部(突起部)を有する。
【0024】
フロントチャンバ21と遠隔操作弁22は、遮蔽体24を挟んでその前後に連結されている。フロントチャンバ21は、遮蔽体24の前方に配設され、遠隔操作弁22は、遮蔽体24の後方に配設されている。なお、前方台車11(移動台車10の前方)には、遠隔操作弁22(及びリアチャンバ23)の下方に配設された底部遮蔽体25と、遠隔操作弁22の上方に配設された天部遮蔽体26と、遠隔操作弁22の左右に配置された図示しない側部遮蔽体と、が設けられている。
【0025】
遮蔽体24には、前方に延びる前方フレーム24aと、後方に延びる後方フレーム24bとが接続されており、それぞれのフレームが前方台車11(移動台車10の前方)に設けられた高さ調整装置27によって支持されている。高さ調整装置27は、複数のジャッキボルト28を有している。ジャッキボルト28は、駆動源としてエアモーターを有し、該エアモーターにて図示しないウォーム機構を駆動させることで、遮蔽体24を介して隔離装置20を上下に移動させる構成となっている。
【0026】
穿孔装置30は、隔離装置20に片持ち支持状態で連結されている。この穿孔装置30は、本体部31と、回転刃32と、移動装置33と、連結装置34と、を有する。連結装置34は、連結管34aと、トグルクランプ34bと、エアシリンダ34cと、を有する。連結管34aは、リアチャンバ23の後方に連結されると共に、その内部空間がリアチャンバ23の内部に連通している。連結管34aの後端部には、本体部31が挿入可能なシール部34a1が設けられ、隔離装置20及び連結管34aの内部のバウンダリ(気密空間)が確保される。
【0027】
トグルクランプ34bは、連結管34aの外周に複数設けられ、連結管34aの前端部のフランジと、リアチャンバ23の後端部のフランジとを挟み込んで、連結管34aとリアチャンバ23とを連結するものである。エアシリンダ34cは、トグルクランプ34bの取手部と対向して設けられており、トグルクランプ34bの取手部をそのロッド部で押し込むことで、遠隔操作により、隔離装置20との連結状態を解除可能とさせるものである。
【0028】
本体部31は、少なくとも隔離装置20よりも長く延びる長尺形状を有し、その先端に回転刃32が配設されている。すなわち、本体部31は、隔離装置20の内部を通って、その先端(回転刃32)が閉止板5にアクセス可能な長さを有している。本実施形態の回転刃32は、ホールソーであり、図示しないモーターによって本体部31の中心軸を中心に回転する構成となっている。
【0029】
移動装置33は、本体部31を隔離装置20に対して前後方向に相対移動させるものである。この移動装置33は、連結管34aに接続されたガイドロッド33aを有する。ガイドロッド33aには、本体部31の後端部に接続されたスライダ33bが係合している。このガイドロッド33aは、本体部31の周りに複数配設されており、それらの後端部は、支持板33eに接続されている。
【0030】
移動装置33は、ボールねじ機構により、本体部31を移動させる構成となっており、ねじ軸33cと、ナット33dと、を有する。ねじ軸33cは、前端部が連結管34aに回転自在に支持され、後端部が支持板33eに回転自在に支持されている。ナット33dは、ねじ軸33cに対して相対回転可能に係合すると共に、本体部31の後端部に接続されている。ねじ軸33cは、図示しないモーターに接続されており、ナット33dに対して相対的に回転することにより、本体部31を前後方向に移動させる構成となっている。
【0031】
吊下げ装置40は、隔離装置20に片持ち支持状態で連結された穿孔装置30の重さを相殺しつつ、穿孔装置30を吊下げ支持するものである。本実施形態の吊下げ装置40は、ワイヤ41下端に吊下げた物品の重さを相殺するワイヤ巻取式のバランサーである。この吊下げ装置40は、内部に設けたスプリング(ゼンマイ)の張力を利用することで吊下げた物品の重さをゼロに近付け、軽い力で上下に操作できるようにしたものであり、任意の高さでバランスが取れるような構成となっている。
【0032】
吊下げ装置40は、引っ掛けワイヤ42を介して、後方台車12に逆さ吊りされている。この吊下げ装置40は、2台設けられており、本体部31の前方と後方とを支持している。具体的に、連結管34aの後端上部と支持板33eの上部との間には、吊バー44が架設されており、この吊バー44には、2つの吊ピース43が取り付けられている。そして、吊ピース43のそれぞれには、プーリー45を介して、それぞれ別の吊下げ装置40のワイヤ41が接続されている。
【0033】
クランプ装置50は、閉止板5が取り付けられたペネトレーション4(第1の部材)に隔離装置20(第2の部材)を固定するものであり、遠隔穿孔装置1の前方に設けられている。クランプ装置50は、押付機構51と、反力受け機構52と、を有する。反力受け機構52は、ペネトレーション4のフランジ部の背面4a側に展開可能に構成されている。押付機構51は、反力受け機構52がペネトレーション4のフランジ部の背面4a側に展開した状態で、隔離装置20のフロントチャンバ21の開口フランジ21aを閉止板5に押し付けるものである。
【0034】
上記構成の遠隔穿孔装置1による穿孔作業は、外部制御装置からの遠隔操作により、概略、次のように行われる。先ず、走行ユニット17を駆動させて、遠隔穿孔装置1をペネトレーション4に近付ける。次に、高さ調整装置27を駆動させ、隔離装置20の開口フランジ21aが閉止板5の規定の高さに当接するように高さ調整する。次に、クランプ装置50の反力受け機構52を展開させた後に、押付機構51を駆動させ、高さ調整した開口フランジ21aを閉止板5の表面5aに押し付ける。
【0035】
その後、遠隔操作弁22を開くと共に、移動装置33を駆動させ、穿孔装置30の本体部31を隔離装置20の内部に挿入する。次に、本体部31の先端部に設けた回転刃32を回転させ、フロントチャンバ21を介して閉止板5にアクセスし、閉止板5に貫通孔を形成する。閉止板5に貫通孔を形成したら、移動装置33を駆動させ、本体部31を後退させると共に、遠隔操作弁22を閉じる。
【0036】
その後、作業を終えた穿孔装置30を離脱させるべく、連結装置34のエアシリンダ34cを駆動させ、トグルクランプ34bの取手部を押し込み、隔離装置20と穿孔装置30との連結を解除する。また、前方台車11と後方台車12との連結を解除するべく、エアシリンダ14を駆動させ、連結部材13からロッド部を引き抜く。その後、走行ユニット17を駆動させ、後方台車12と共に穿孔装置30を離脱させる。
【0037】
穿孔装置30が離脱したら、残された隔離装置20(及び遮蔽体24)に、例えば、ペネトレーション4の内部を調査する調査装置や、ペネトレーション4の内部の堆積物を除去する除去装置等を連結することで、バウンダリを確保しつつ、ペネトレーション4の内部で、所定の作業を行うことができる。
【0038】
図2は、図1に示すクランプ装置50を背面側から視た矢視A図である。
クランプ装置50は、図2に示すように、押付機構51と、反力受け機構52と、クランプ脱出機構53と、を有する。反力受け機構52は、ベース板60と、リンク収容部61と、を有する。ベース板60には、開口60aが形成されている。開口60aは、フロントチャンバ21の開口フランジ21aの外径よりも僅かに大きく形成され、開口フランジ21aが挿通可能な構成となっている。
【0039】
このベース板60には、上下に2台ずつ、計4台のリンク収容部61が取り付けられている。これら4台のリンク収容部61は、左右対称の配置とされている。また、これら4台のリンク収容部61のうち、上方の2台のリンク収容部61は、下方の2台のリンク収容部61よりも、開口60aに対して近くに配置されている。すなわち、本実施形態では、閉止板5の中心に対して偏心した位置(図1参照)に隔離装置20を取り付けるため、リンク収容部61から隔離装置20(開口60a)までの距離が上下で異なっている。
【0040】
図3は、本発明の実施形態におけるリンク収容部61に収容されたリンク機構64の(a)収容状態を示す図、及び(b)展開状態を示す図である。
リンク収容部61は、図3に示すように、ケース62と、ケース62の内部に収容されたエアシリンダ63(シリンダ)及びリンク機構64と、を有する。なお、エアシリンダ63は、リンク機構64の視認性を向上させるために、二点鎖線で示している。エアシリンダ63の本体の後端部は、回転軸63aを介してケース62に連結されている。
【0041】
リンク機構64は、エアシリンダ63の伸縮動作に応じて、図3(a)に示す退避位置と、図3(b)に示す突出位置と、の間で移動する構成となっている。リンク機構64は、図3(a)に示す退避位置に位置するとき、図1に示すペネトレーション4のフランジ部の外径よりも径方向外側に退避する。また、リンク機構64は、図3(b)に示す突出位置に位置するとき、図1に示すペネトレーション4のフランジ部の外径よりも径方向内側に突出し、当該フランジ部の背面4a側に突出する。
【0042】
本実施形態のリンク機構64は、図3に示すように、回転可能に互いに連結された3つのアーム65a,65b,65cから構成される。なお、これら3つのアーム65a,65b,65cは、左右一対で設けられ、左右に延びる図示しないシャフトにより連結されている。アーム65aは、その一端部が回転軸66aを介してケース62に連結されている。このアーム65aの他端部には、アーム65bの一端部が回転軸66bを介して連結されている。
【0043】
アーム65bの他端部には、車輪67が取り付けられている。また、アーム65bの中間部のやや他端部よりの後方には、アーム65cが連結される回転軸66cが配設されている。アーム65cは、アーム65aよりも後方において、その一端部が回転軸66dを介してケース62連結されている。このアーム65cの他端部は、回転軸66cを介してアーム65bと連結されている。
【0044】
エアシリンダ63のロッド部は、回転軸66bに接続されている。エアシリンダ63のロッド部が伸長したとき、リンク機構64は、図3(a)に示すように、退避位置に移動する。また、エアシリンダ63のロッド部が収縮したとき、リンク機構64は、図3(b)に示すように、突出位置に移動する。このようなリンク機構64は、押付機構51による押し付け反力(符号F1で示す)を受けたときに、突出位置から退避位置への移動を規制する構成となっている。
【0045】
すなわち、アーム65bの他端部には、ペネトレーション4のフランジ部の背面4a(図1参照)に当接する車輪67が設けられており、その他端部が前方に向かって押し付け反力を受けると、アーム65bは、その中間部近傍の回転軸66cを中心に回転し、アーム65bの一端部の回転軸66bが、後方に向かって押し込まれる(符号F2で示す)。この方向は、エアシリンダ63の収縮方向であるため、リンク機構64は、突出状態を維持できる。なお、このような、簡易的なダウンロック構造としては、飛行機の前輪の出し入れ機構のように、様々な構造を採用し得る。
【0046】
図2に戻り、押付機構51は、ベース板70と、押付部71と、を有する。ベース板70には、開口70aが形成されている。開口70aは、フロントチャンバ21の開口フランジ21aの外径よりも僅かに大きく形成され、開口フランジ21aが挿通可能な構成となっている。このベース板70には、開口70aの周縁部に沿って等間隔に、計4台の押付部71が取り付けられている。
【0047】
これら4台の押付部71は、開口70aに対し、左右対称の配置とされている。押付部71は、駆動源としてのエアモーター72と、ボールねじ機構等によりエアモーター72の回転によって前後方向に進退する押付ロッド73と、を有する。押付ロッド73は、開口70aに配置され、フロントチャンバ21の開口フランジ21aを背面から押圧する。なお、4台の押付部71のうち、上方2台の押付部71のエアモーター72の向きと、下方2台の押付部71のエアモーター72の向きは、設置スペースの関係で異なっている。
【0048】
押付機構51のベース板70と、反力受け機構52のベース板60は、3台のガイド機構80によって、前後方向に相対移動可能に連結されている。ガイド機構80は、ガイドフレーム81に取り付けられている。ガイドフレーム81は、フロントチャンバ21の胴部21bに跨る鞍形状を有し、その鞍形状の両下端は連結フレーム82によって連結され、この連結フレーム82は、図1に示すフロントチャンバ21の下部21c(切粉集塵部)に固定されている。
【0049】
クランプ脱出機構53は、図2に示すように、トグルクランプ54と、エアシリンダ55と、を有する、トグルクランプ54は、反力受け機構52のベース板60に固定され、押付機構51のベース板70を挟み込んで、ベース板60,70を連結させるものである。エアシリンダ55は、トグルクランプ54の取手部と対向して設けられており、トグルクランプ54の取手部をそのロッド部で押し込むことで、遠隔操作により、ベース板60,70の連結状態を解除可能とさせるものである。なお、クランプ脱出機構53は、穿孔作業の後に動作させるものであり、これにより、ベース板60,70の前後方向の相対移動が可能となって、リンク機構64の退避(クランプ解除)が容易になる。
【0050】
次に、上記構成のクランプ装置50の動作について、図4及び図5を参照して詳しく説明する。
図4及び図5は、本発明の実施形態におけるクランプ装置50の動作を説明する説明図である。なお、図4及び図5では、クランプ装置50以外の構成は、簡略化している。
【0051】
先ず、図4(a)に示すように、遠隔操作によって、移動台車10を、閉止板5が取り付けられたペネトレーション4に近付ける。そして、図4(b)に示すように、クランプ装置50の反力受け機構52(ベース板60)を、閉止板5に当接させる。
【0052】
次に、図5(a)に示すように、遠隔操作によって、クランプ装置50の反力受け機構52(リンク機構64)を展開させる。具体的には、図3(b)に示すように、エアシリンダ63を収縮させることで、リンク機構64をペネトレーション4のフランジ部の背面4a側に突出させる。このとき、リンク機構64が、ペネトレーション4のフランジ部に接触することがあるが、このリンク機構64には車輪67が設けられているため、ペネトレーション4のフランジ部や、その背面4a側の構造物(ナット等)に引っ掛かることなく、所定の位置まで突出することができる。
【0053】
次に、図5(b)に示すように、遠隔操作によって、クランプ装置50の押付機構51(押付ロッド73)を前進させる。具体的には、図2に示すエアモーター72を駆動させることで、押付ロッド73を前進させる。このように、押付機構51と反力受け機構52の各駆動部をエア駆動に統一することで、遠隔穿孔装置1全体の小型化、軽量化に寄与できる。
【0054】
押付ロッド73が前進すると、図5(b)に示すように、隔離装置20(フロントチャンバ21)が閉止板5に押し付けられると共に、押付機構51が相対的に後退する。押付機構51が後退すると、押付機構51に連結された反力受け機構52も一体的に後退し、ペネトレーション4のフランジ部の背面4aに対して一定距離をあけて配置されたリンク機構64の車輪67が、ペネトレーション4のフランジ部の背面4aに接触し、クランプ状態となる。
【0055】
クランプ状態となったら、押付機構51の各押付部71における押付ロッド73の押し付け具合を調整することで、フロントチャンバ21の開口フランジ21aを閉止板5に気密に固定することができる。また、このとき、リンク機構64は、押付機構51による押し付け反力を受けるが、図3(b)に示すように、簡易的なダウンロック構造を有するため、押付機構51による押し付け反力を受けたときに、突出位置から退避位置への移動を規制できる。
【0056】
このように、本実施形態では、クランプ装置50を、閉止板5に隔離装置20を押し付ける押付機構51と、当該押付機構51による押し付け反力を受ける反力受け機構52と、によって構成し、反力受け機構52は、エアシリンダ63の伸縮動作という簡易な動作で、ペネトレーション4のフランジ部の背面4a側に突出可能なリンク機構64とする。そして、このリンク機構64は、ペネトレーション4のフランジ部の背面4a側に突出し、閉止板5に隔離装置20を押し付ける際の反力受けとなるため、押付機構51は、本実施形態のように、閉止板5の中心から上方に偏心した位置に隔離装置20を固定する場合であっても、隔離装置20を閉止板5に対し垂直に押し付けることができ、気密を保つことができる。
【0057】
したがって、上述の本実施形態によれば、閉止板5が取り付けられたペネトレーション4に隔離装置20を固定するクランプ装置50であって、閉止板5に隔離装置20を押し付ける押付機構51と、閉止板5が取り付けられたペネトレーション4のフランジ部の背面4aに当接し、押付機構51による押し付け反力を受ける反力受け機構52と、を有し、反力受け機構52は、エアシリンダ63と、エアシリンダ63の伸縮動作に応じて、背面4a側に突出する突出位置と当該突出位置から退避する退避位置との間で移動するリンク機構64と、を有する、という構成を採用することにより、遠隔操作によって簡易かつ確実な固定が可能となる。
【0058】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、穿孔装置30の回転刃32としてホールソーを例示したが、回転刃32としてドリルを採用してもよい。
【0060】
また、例えば、上記実施形態では、閉止板5が取り付けられたペネトレーション4に、隔離装置20を固定するクランプ装置50を例示したが、クランプ装置50の固定対象物はこれらに限らないのは言うまでもない。また、このクランプ装置50は、遠隔穿孔装置1の他に、例えば、ロボットハンドにも適用することができる。また、本実施形態では、リンク機構64を動作させるシリンダとして、エアシリンダ63を使用したが、他の環境では、例えば油圧シリンダ等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 遠隔穿孔装置
4 ペネトレーション(第1の部材)
4a 背面
5 閉止板(第1の部材)
10 移動台車
20 隔離装置(第2の部材)
21 フロントチャンバ
21a 開口フランジ
30 穿孔装置
50 クランプ装置
51 押付機構
52 反力受け機構
63 エアシリンダ(シリンダ)
64 リンク機構
67 車輪
72 エアモーター
図1
図2
図3
図4
図5