(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1、第2のセンタラグ溝、第1、第2のセンタクローズドサイプ、及び前記貫通サイプは、タイヤ軸方向に対して同方向に傾斜することを特徴とする請求項1記載のタイヤ。
前記第1のサイプ部の深さと前記第2のサイプ部の深さは等しく、かつ前記継ぎサイプ部の深さは、前記センタ主溝の深さの1/3以下であることを特徴とする請求項4記載のタイヤ。
前記センタブロックは、前記第1、第2のセンタラグ溝が前記センタ主溝と交わる交差部における少なくとも一方のコーナ部分に、面取り部を具えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のタイヤ。
前記トレッド部は、前記センタ陸部にタイヤ軸方向一方側で第1のセンタ主溝を介して隣り合う第1のミドル陸部と、前記センタ陸部にタイヤ軸方向他方側で第2のセンタ主溝を介して隣り合う第2のミドル陸部とを含み、
各前記第1、第2のミドル陸部は、ラグ溝又は横溝からなる第1、第2の溝体を具え、
前記第1の溝体は、前記第1のセンタ主溝と交わる交差部を有し、かつ該交差部における少なくとも一方のコーナ部分に面取り部を具えるとともに、
前記第2の溝体は、前記第2のセンタ主溝と交わる交差部を有し、かつ該交差部における少なくとも一方のコーナ部分に面取り部を具えるとともに、
前記第1の溝体を延長した延長領域は、前記第1のセンタラグ溝を延長した延長領域と第1のセンタ主溝内で交わり、
前記第2の溝体を延長した延長領域は、前記第2のセンタラグ溝を延長した延長領域と第2のセンタ主溝内で交わることを特徴とする請求項6記載のタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ドライ操縦安定性と氷上性能とを両立させたタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部が、センタ主溝を含みタイヤ周方向に連続してのびる4本の主溝により、タイヤ赤道上に配されるセンタ陸部を含む5本の陸部に区分されたタイヤであって、
前記センタ陸部は、このセンタ陸部を横切る貫通サイプによって複数のセンタブロックに区分され、
各前記センタブロックは、
前記センタ陸部のタイヤ軸方向一方側の第1側縁からのび、かつ前記センタブロック内で途切れる第1のセンタラグ溝と、
前記第1側縁からのび、かつ前記センタブロック内で途切れる第1のセンタクローズドサイプと、
前記センタ陸部のタイヤ軸方向他方側の第2側縁からのび、かつ前記センタブロック内で途切れるとともに、前記第1のセンタクローズドサイプとはタイヤ軸方向で対置する第2のセンタラグ溝と、
前記第2側縁からのび、かつ前記センタブロック内で途切れるとともに、前記第1のセンタラグ溝とはタイヤ軸方向で対置する第2のセンタクローズドサイプとを具え、
前記第1のセンタラグ溝の長さLAは、この第1のセンタラグ溝を前記第2側縁まで延長したときの延長長さLA
0の1/2以下、
前記第2のセンタラグ溝の長さLBは、この第2のセンタラグ溝を前記第1側縁まで延長したときの延長長さLB
0の1/2以下、
前記第1のセンタクローズドサイプの長さLbは、この第1のセンタクローズドサイプを前記第2側縁まで延長したときの延長長さLb
0の1/3〜2/3、
前記第2のセンタクローズドサイプの長さLaは、この第2のセンタクローズドサイプを前記第1側縁まで延長したときの延長長さLa
0の1/3〜2/3であり、
前記長さLAは長さLaより小、かつ和(LA+La)は、前記延長長さLA
0より小、
前記長さLBは長さLbより小、かつ和(LB+Lb)は、前記延長長さLB
0より小とするとともに、
前記センタブロックは、前記第1のセンタラグ溝の途切れ端と第1のセンタクローズドサイプの途切れ端とを通る第1仮想線と、第2のセンタラグ溝の途切れ端と第2のセンタクローズドサイプの途切れ端とを通る第2仮想線との間を通って、前記貫通サイプ間を連続してのび、かつ溝及びサイプを有さない高剛性領域を具えたことを特徴としている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第1、第2のセンタラグ溝、第1、第2のセンタクローズドサイプ、及び前記貫通サイプは、タイヤ軸方向に対して同方向に傾斜することが好ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1仮想線と第2仮想線とは、互いに平行であることが好ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記貫通サイプは、前記第1側縁からのびる第1のサイプ部と、前記第2側縁からのびる第2のサイプ部と、前記第1、第2のサイプ部間を継ぐ継ぎサイプ部とを具え、
かつ前記継ぎサイプ部の深さは、前記第1、第2のサイプ部の深さよりも小であることが好ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第1のサイプ部の深さと前記第2のサイプ部の深さは等しく、かつ前記継ぎサイプ部の深さは、前記センタ主溝の深さの1/3以下であることが好ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記センタブロックは、前記第1、第2のセンタラグ溝が前記センタ主溝と交わる交差部における少なくとも一方のコーナ部分に、面取り部を具えることが好ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記センタ陸部にタイヤ軸方向一方側で第1のセンタ主溝を介して隣り合う第1のミドル陸部と、前記センタ陸部にタイヤ軸方向他方側で第2のセンタ主溝を介して隣り合う第2のミドル陸部とを含み、
各前記第1、第2のミドル陸部は、ラグ溝又は横溝からなる第1、第2の溝体を具え、
前記第1の溝体は、前記第1のセンタ主溝と交わる交差部を有し、かつ該交差部における少なくとも一方のコーナ部分に面取り部を具えるとともに、
前記第2の溝体は、前記第2のセンタ主溝と交わる交差部を有し、かつ該交差部における少なくとも一方のコーナ部分に面取り部を具えるとともに、
前記第1の溝体を延長した延長領域は、前記第1のセンタラグ溝を延長した延長領域と第1のセンタ主溝内で交わり、
前記第2の溝体を延長した延長領域は、前記第2のセンタラグ溝を延長した延長領域と第2のセンタ主溝内で交わることが好ましい。
【0013】
本明細書において、「サイプ」及び「サイプ部」は、1.5mm以下の幅を有する切れ込みを意味し、接地時サイプ壁面が互いに接触する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、センタ陸部が貫通サイプによってセンタブロックに区分される。そのため、横溝によってブロックに区分する場合に比して、ブロック剛性が相対的に高められる。しかも、第1、第2のラグ溝、及び第1、第2のクローズドサイプは、それぞれ一端がセンタブロック内で途切れるため、ブロック剛性の低下が低く抑えられる。又第1のラグ溝と第2のクローズドサイプとがタイヤ軸方向で対置し、かつ第2のラグ溝と第1のクローズドサイプとがタイヤ軸方向で対置することで、ラグ溝とクローズドサイプとが分散配置される。これにより、剛性の均一化が図られる。
【0015】
又、各長さLA、LA
0、LB、LB
0、La、La
0、Lb、Lb
0において、以下の関係がある。
LA/LA
0≦1/2、
LB/LB
0≦1/2、
1/3≦Lb/Lb
0≦2/3、
1/3≦La/La
0≦2/3、
LA<La、
(LA+La)<LA
0、
LB<Lb、
(LB+Lb)<LB
0、
そのため、ラグ溝及びクローズドサイプのエッジ長さを増やしながら、貫通サイプ間を連続してのびる高剛性領域を形成することができる。即ち、エッジ長さが増すことにより氷上性能を高めるとともに、高剛性領域の形成により、ブロック剛性を高く維持できる。そしてこれらが協働して、氷上性能とドライ操縦安定性とを高レベルで両立させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、及び、タイヤの内部に加圧空気が充填されない非空気式タイヤ(例えばエアーレスタイヤ)等の様々なタイヤに用いることができる。
図1には、タイヤ1が乗用車用のオールシーズンタイヤとして形成された場合が示される。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、車両への装着の向きが指定された非対称のトレッドパターンを具える。本実施形態では、タイヤ軸方向一方側(
図1において左側)に配された第1トレッド端Te1が、車両装着時に車両外側に位置し、タイヤ軸方向他方側(
図1において右側)に配された第2トレッド端Te2が、車両装着時に車両内側に位置する。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、車両装着の向きが限定されないタイヤにも適用され得る。
【0019】
第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときのタイヤ軸方向両外側の接地端の位置を意味する。又第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間のタイヤ軸方向距離をトレッド幅TWと呼ぶ。
【0020】
「正規状態」とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0024】
トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる4本の主溝が配される。4本の主溝は、タイヤ赤道Cと第1トレッド端Te1との間に配された第1のセンタ主溝12及び第1のショルダー主溝11、並びにタイヤ赤道Cと第2トレッド端Te2との間に配された第2のセンタ主溝13及び第2のショルダー主溝14を含む。
【0025】
第1、第2のショルダー主溝11、14は、例えば、溝中心線がタイヤ赤道Cからトレッド幅TWの0.20〜0.35倍の距離を隔てて配されるのが好ましい。第1、第2のセンタ主溝12、13は、例えば、溝中心線がタイヤ赤道Cからトレッド幅TWの0.05〜0.15倍の距離を隔てて配されるのが好ましい。
【0026】
各主溝11〜14の溝幅は、例えば、トレッド幅TWの3%〜7%であるのが好ましい。又各主溝11〜14の溝深さは、乗用車用タイヤの場合、例えば、5〜10mm程度であるのが好ましい。但し、各主溝11〜14の寸法は、このような範囲に限定されるものではない。
【0027】
トレッド部2には、各前記主溝11〜14で区分された複数の陸部が配される。具体的には、前記複数の陸部は、センタ陸部25と、第1、第2のミドル陸部21、23と、第1、第2のショルダー陸部22、24とを含む。
【0028】
前記センタ陸部25は、タイヤ赤道C上に配される。第1のミドル陸部21は、前記センタ陸部25に、第1のセンタ主溝12を介してタイヤ軸方向一方側(車両外側)で隣り合う。第1のショルダー陸部22は、前記第1のミドル陸部21に、第1のショルダー主溝11を介してタイヤ軸方向一方側(車両外側)で隣り合う。第2のミドル陸部23は、前記センタ陸部25に、第2のセンタ主溝13を介してタイヤ軸方向他方側(車両内側)で隣り合う。第2のショルダー陸部24は、前記第2のミドル陸部23に、第2のショルダー主溝14を介してタイヤ軸方向他方側(車両内側)で隣り合う。
【0029】
図2に、センタ陸部25の拡大図が示されている。
図2に示されるように、センタ陸部25は、このセンタ陸部25を横切る貫通サイプ3によって複数のセンタブロック4に区分される。センタ陸部25のタイヤ軸方向の幅W7は、例えば、トレッド幅TWの0.10〜0.15倍であるのが好ましい。
【0030】
前記貫通サイプ3は、センタ陸部25のタイヤ軸方向一方側の第1側縁E1からのびる第1のサイプ部3Aと、タイヤ軸方向他方側の第2側縁E2からのびる第2のサイプ部3Bと、前記第1、第2のサイプ部3A、3B間を継ぐ継ぎサイプ部3Mとを具える。
【0031】
本例では、前記第1のサイプ部3Aと継ぎサイプ部3Mと第2のサイプ部3Bとが鉤状に屈曲して連なる場合が示される。鉤状の貫通サイプ3は、荷重時、サイプの壁面同士が互いに鉤状に噛み合うため、センタ陸部25の剛性確保に好ましい。又タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にエッジ成分長さを増加させるため、氷雪上性能の向上にも貢献できる。
【0032】
第1、第2のサイプ部3A、3Bは、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜する。第1、第2のサイプ部3A、3Bのタイヤ軸方向に対する各角度θ10は、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向にバランス良くエッジ効果を発揮させるために、例えば30〜40°であるのが好ましい。又継ぎサイプ部3Mは、直進性のために、例えばタイヤ軸方向に対して5°以下の角度、即ちタイヤ軸方向に沿ってのびるのが好ましい。
【0033】
図5には、貫通サイプ3のA−A線断面図が示されている。
図5に示されるように、本例の貫通サイプ3では、継ぎサイプ部3Mの深さd15は、第1、第2のサイプ部3A、3Bの最小の深さd14よりも小である。これにより、貫通サイプ3によるセンタ陸部25の剛性低下が抑えられる。このために、継ぎサイプ部3Mの深さd15は、第1、第2のセンタ主溝12、13の深さd1の1/3以下であるのが好ましい。又剛性バランスの観点から、第1、第2のサイプ部3A、3Bの最小の深さd14は、互いに等しいことが好ましい。
【0034】
本例では、前記第1、第2のサイプ部3A、3Bは、サイプ底に、深底部57と、深底部57よりも浅い浅底部58とを含む。各浅底部58は、例えば貫通サイプ3のタイヤ軸方向両端部に配される。深底部57は、例えば浅底部58と継ぎサイプ部3Mとの間に配される。本例では浅底部58の深さが、第1、第2のサイプ部3A、3Bの前記最小の深さd14に相当する。
【0035】
図2に示すように、センタブロック4には、各1本の第1、第2のセンタラグ溝5A、5Bと、各1本の第1、第2のセンタクローズドサイプ6b、6aとが配される。
【0036】
第1のセンタラグ溝5Aと第1のセンタクローズドサイプ6bとは、それぞれ前記第1側縁E1から第2側縁E2側にのび、かつセンタブロック4内で途切れる。又第2のセンタラグ溝5Bと第2のセンタクローズドサイプ6aとは、それぞれ前記第2側縁E2から第1側縁E1側にのび、かつセンタブロック4内で途切れる。
【0037】
又第1のセンタラグ溝5Aと第2のセンタクローズドサイプ6aとは、タイヤ軸方向で対置している。又第2のセンタラグ溝5Bと第1のセンタクローズドサイプ6bとは、タイヤ軸方向で対置している。
【0038】
ここで、第1のセンタラグ溝5Aと第2のセンタクローズドサイプ6aとがタイヤ軸方向で「対置する」とは、第1のセンタラグ溝5Aの少なくとも一部と、第2のセンタクローズドサイプ6aの少なくとも一部とがタイヤ軸方向で向き合う(対向する)ことを意味する。又第2のセンタラグ溝5Bと第1のセンタクローズドサイプ6bとがタイヤ軸方向で「対置する」とは、第2のセンタラグ溝5Bの少なくとも一部と、第1のセンタクローズドサイプ6bの少なくとも一部とがタイヤ軸方向で向き合う(対向する)ことを意味する。このように配置することで、ラグ溝とクローズドサイプとが分散配置され、ブロック剛性の均一化が図られる。
【0039】
このとき、前記第1、第2のセンタラグ溝5A、5B、及び第1、第2のセンタクローズドサイプ6b、6aを、タイヤ軸方向に対して、前記貫通サイプ3の第1、第2のサイプ部3A、3Bと同方向に傾斜させるのが好ましい。このように、同方向に傾斜させることで、ブロック剛性の均一化がさらに達成される。
【0040】
第1、第2のセンタラグ溝5A、5Bのタイヤ軸方向に対する各角度θ11は、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向にバランス良くエッジ効果を発揮させるために、例えば30〜40°であるのが好ましい。特に好ましくは、第1、第2のセンタラグ溝5A、5Bは互いに平行である。
【0041】
第1、第2のセンタクローズドサイプ6b、6aのタイヤ軸方向に対する各角度θ12は、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向にバランス良くエッジ効果を発揮させるために、例えば30〜40°であるのが好ましい。特に好ましくは、第1、第2のセンタクローズドサイプ6b、6aは互いに平行である。
【0042】
センタブロック4では、第1のセンタラグ溝5Aが第1のセンタ主溝12と交わる交差部QAを具える。そしてこの交差部QAにおける少なくとも一方のコーナ部分、特には鋭角側のコーナ部分JAに面取り部60を具える。同様に、第2のセンタラグ溝5Bが第2のセンタ主溝13と交わる交差部QBを具え、この交差部QBにおける少なくとも一方のコーナ部分、特には鋭角側のコーナ部分JBに面取り部60を具える。この面取り部60は、雪路面を走行する際、第1のセンタ主溝12内の雪柱と、第1のセンタラグ溝5A内の雪柱との接続強度、及び第2のセンタ主溝13内の雪柱と、第2のセンタラグ溝5B内の雪柱との接続強度を高める。これにより、雪柱せん断力を高める効果が奏される。
【0043】
図3(A)に示すように、
(ア)第1のセンタラグ溝5Aの長さLAは、この第1のセンタラグ溝5Aを前記第2側縁E2まで延長したときの延長長さLA
0の1/2以下、
(イ)前記第2のセンタラグ溝5Bの長さLBは、この第2のセンタラグ溝5Bを前記第1側縁E1まで延長したときの延長長さLB
0の1/2以下、
(ウ)前記第1のセンタクローズドサイプ6bの長さLbは、この第1のセンタクローズドサイプ6bを前記第2側縁E2まで延長したときの延長長さLb
0の1/3〜2/3、
(エ)前記第2のセンタクローズドサイプ6aの長さLaは、この第2のセンタクローズドサイプ6aを前記第1側縁E1まで延長したときの延長長さLa
0の1/3〜2/3、
(オ)前記長さLAは長さLaより小、かつ和(LA+La)は、前記延長長さLA
0より小、
(カ)前記長さLBは長さLbより小、かつ和(LB+Lb)は、前記延長長さLB
0より小である。
【0044】
各長さLA、LA
0、LB、LB
0、La、La
0、Lb、Lb
0は、それぞれ長さ方向に沿った、溝巾中心又はサイプ巾中心における長さである。
【0045】
又
図3(B)に示すように、センタブロック4は、第1仮想線y1と第2仮想線y2との間を通って、貫通サイプ3、3間を直線状に連続してのびる帯状の高剛性領域Yを具える。前記第1仮想線y1は、第1のセンタラグ溝5Aの途切れ端EAと第1のセンタクローズドサイプ6bの途切れ端Ebとを通る直線として定義される。又第2仮想線y2は、第2のセンタラグ溝5Bの途切れ端EBと第2のセンタクローズドサイプ6aの途切れ端Eaとを通る直線として定義される。なお途切れ端EA、EB、Ea、Ebは、それぞれ溝巾の中心、又はサイプ巾の中心の位置で特定される。
【0046】
この高剛性領域Yは、溝及びサイプを有さないことにより高弾性を示す。従って、前記長さLA、LB、La、Lbによるエッジ長さを増やして氷上性能を高めつつ、高剛性領域Yの形成により、ブロック剛性の低下を抑制しうる。即ち、氷上性能とドライ操縦安定性とを高レベルで両立させることが可能となる。
【0047】
この効果は、上記条件(ア)〜(カ)を満たすことで達成される。例えば、長さLAが延長長さLA
0の1/2を超える場合、長さLBが延長長さLB
0の1/2を超える場合、長さLbが延長長さLb
0の2/3を超える場合、及び長さLaが延長長さLa
0の2/3を超える場合には、高剛性領域Yの形成が難しくなって、ブロック剛性低下の抑制効果が発揮されない。又長さの和(LA+La)が延長長さLA
0以上の場合、及び長さの和(LB+Lb)が延長長さLB
0以上の場合にも、高剛性領域Yの形成が難しくなる。
【0048】
逆に、長さLbが延長長さLb
0の1/3を下回る場合、及び長さLaが延長長さLa
0の1/3を下回る場合には、エッジ長さが不足し氷上性能が十分確保できなくなる。又長さLAが長さLa以上、及び長さLBが長さLb以上の場合、エッジ長さの不足或いはブロック剛性の低下を招く。
【0049】
又
図4(A)、(B)に、
図3のセンタブロック4とは長さLA、LB、La、Lbが同じであるが、高剛性領域Yが形成されず、ブロック剛性の低下が大きい場合が示される。
図5(A)では、例えば第1のセンタラグ溝5Aと第2のセンタクローズドサイプ6aとが対置せず、かつ第1のセンタクローズドサイプ6bと第2のセンタラグ溝5Bとが対置しないことにより高剛性領域Yが形成されていない。
図5(B)では、例えば第1のセンタラグ溝5Aと第2のセンタクローズドサイプ6aとが対置しないことにより高剛性領域Yが形成されていない。
【0050】
高剛性領域Yでは、第1、第2仮想線y1、y2は互いに平行であることが好ましい。又高剛性領域Yは、タイヤ軸方向に対して、第1、第2のセンタラグ溝5A、5Bと異なる向きに傾斜しているのが好ましい。
【0051】
図6に、第1のミドル陸部21の拡大図が示される。
図6に示されるように、第1のミドル陸部21のタイヤ軸方向の幅W1は、トレッド幅TWの0.15〜0.25倍であるのが好ましい。第1のミドル陸部21には、ラグ溝又は横溝からなり、かつ前記第1のセンタ主溝12と交わる第1の溝体19を具える。
【0052】
第1の溝体19は、本例では、鉤状のミドル横溝15として形成される。
ミドル横溝15(第1の溝体19)は、第1ラグ溝部16と、第2ラグ溝部17と、サイプ部18とを含む。第1ラグ溝部16は、第1のショルダー主溝11からのびかつタイヤ軸方向に対して傾斜している。第2ラグ溝部17は、第1のセンタ主溝12からのび第1ラグ溝部16と同じ向きに傾斜している。サイプ部18は、第1ラグ溝部16と第2ラグ溝部17との間を連通し、かつ第1ラグ溝部16と逆向きに傾斜している。
【0053】
ミドル横溝15は、サイプ部18を含むため、第1のミドル陸部21の剛性低下を防ぐことができ、ドライ操縦安定性の向上に貢献できる。また、雪上走行時、第1ラグ溝部16及び第2ラグ溝部17が雪柱せん断力を発揮するため、雪上性能の向上に貢献できる。また、ミドル横溝15は、サイプ部18が第1ラグ溝部16及び第2ラグ溝部17と逆向きに傾斜するため、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向のエッジ成分を増加させて氷上性能を向上させる。
【0054】
又ミドル横溝15が第1のセンタ主溝12と交わる交差部QCでは、この交差部QCにおける少なくとも一方のコーナ部分(特には鋭角側のコーナ部分JC)に、面取り部61を具える。本例では、ミドル横溝15が第1のショルダー主溝11と交わる交差部QDにおける少なくとも一方のコーナ部分(特には鋭角側のコーナ部分JD)にも、面取り部61を具える。面取り部61は、雪路面を走行する際、第1のセンタ主溝12内の雪柱と、ミドル横溝15内の雪柱との接続強度、及び第1のショルダー主溝11内の雪柱と、ミドル横溝15内の雪柱との接続強度を高め、雪柱せん断力を高める。
【0055】
第1ラグ溝部16及び第2ラグ溝部17のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、20〜30°であるのが好ましい。
【0056】
第1ラグ溝部16及び第2ラグ溝部17は、例えば、第1のミドル陸部21のタイヤ軸方向の中心位置を跨ることなく、その手前で途切れるのが好ましい。例えば、第1ラグ溝部16及び第2ラグ溝部17のタイヤ軸方向の長さL1は、第1のミドル陸部21の幅W1の0.30〜0.40倍であるのが好ましい。
【0057】
サイプ部18のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、例えば、25〜40°であるのが好ましい。サイプ部18のタイヤ軸方向の長さL2は、第1ラグ溝部16及び第2ラグ溝部17の長さL1よりも小さいのが望ましく、特には前記長さL1の0.65〜0.75倍であるのが好ましい。
【0058】
図7(A)には、
図6のミドル横溝15のE−E線断面図が示され、
図7(B)には、
図7(A)で示されたミドル横溝15と周方向で隣り合うミドル横溝15のF−F線断面図が示されている。
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、第1ラグ溝部16は、例えば、第2ラグ溝部17と深さが異なるのが好ましい。
【0059】
本例では、第1ラグ溝部16が第2ラグ溝部17よりも小さい深さを有するミドル横溝15(
図7(A)に示される)と、第2ラグ溝部17が第1ラグ溝部16よりも小さい深さを有するミドル横溝15(
図7(B)に示される)とがタイヤ周方向に交互に配される。このような態様は、第1のミドル陸部21を均一に摩耗させることができる。また、このようなラグ溝部の配置は、第1のミドル陸部21を不規則に変形させ易く、ラグ溝部内の雪を排出するのに役立つ。
【0060】
第1ラグ溝部16の深さd2及び第2ラグ溝部17の深さd3は、例えば、第1のセンタ主溝12の深さd1の0.45〜0.75倍であるのが好ましい。深さd2と深さd3との比d2/d3は、例えば、0.6〜1.8とされるのが好ましい。
【0061】
サイプ部18は、一定の深さd4を有し、その深さd4は、例えば、第1のセンタ主溝12の深さd1の0.15〜0.25倍であるのが好ましい。
【0062】
図6に示されるように、第1のミドル陸部21は、複数の前記ミドル横溝15で区分された複数のミドルブロック26を含む。ミドルブロック26には、第1のミドル陸部21を横切る鉤状ミドルサイプ28が配される。
【0063】
鉤状ミドルサイプ28は、例えば、外の傾斜部分28aと、内の傾斜部分28bと、中の傾斜部分28mとを含む。
【0064】
外の傾斜部分28aは、第1のショルダー主溝11からのび、かつ第1ラグ溝部16及び第2ラグ溝部17と同じ向きに傾斜している。内の傾斜部分28bは、第1のセンタ主溝12からのび、かつ外の傾斜部分28aと同じ向きに傾斜している。中の傾斜部分28mは、内外の傾斜部分28b、28aと逆向きに傾斜し、かつ内外の傾斜部分28b、28a間を連通する。
【0065】
鉤状ミドルサイプ28は、後述するミドルサイプ45(
図11に示す)と同様、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にエッジ成分を増加させ、氷上性能を高める。又サイプの壁面同士が互いに鉤状に噛み合うため、陸部を横切る場合にもブロック剛性を高く維持する。
【0066】
内外の傾斜部分28b、28aのタイヤ軸方向に対する角度θ3は、例えば、20〜30°であるのが好ましい。内外の傾斜部分28b、28aのタイヤ軸方向の長さL3は、上述の第1、第2ラグ溝部16、17の長さL1よりも大きいのが好ましい。特には、前記長さL3は、第1のミドル陸部21の幅W1の0.45〜0.55倍であるのが好ましい。
【0067】
中の傾斜部分28mは、タイヤ軸方向において、サイプ部18とオーバーラップしているのが好ましい。これにより、第1のミドル陸部21の偏摩耗が抑制される。
【0068】
中の傾斜部分28mは、例えば、タイヤ軸方向に対してサイプ部18よりも大きい角度θ4で傾斜しているのが好ましい。特には、中の傾斜部分28mのタイヤ軸方向に対する角度θ4は、65〜75°であるのが好ましい。
【0069】
中の傾斜部分28mは、サイプ部18よりも小さいタイヤ軸方向の長さL4を有するのが好ましい。中の傾斜部分28mの前記長さL4は、例えば、第1のミドル陸部21の幅W1の0.05〜0.15倍であるのが好ましい。
【0070】
図8には、
図6の鉤状ミドルサイプ28のG−G線断面図が示されている。
図8に示されるように、外の傾斜部分28a及び内の傾斜部分28bは、それぞれ、深底部29と、深底部29よりも小さい深さの浅底部30とを含む。各浅底部30は、例えば、鉤状ミドルサイプ28のタイヤ軸方向の端部に形成されている。深底部29は、例えば、浅底部30と鉤状ミドルサイプ28の中の傾斜部分28mとの間に形成されている。このような鉤状ミドルサイプ28は、中の傾斜部分28mと浅底部30とにより第1のミドル陸部21の剛性を高く維持する。
【0071】
深底部29の深さd5は、第1のセンタ主溝12の深さd1の0.65〜0.75倍であるのが好ましい。浅底部30の深さd6は、例えば、深底部29の深さd5の0.60〜0.70倍であるのが好ましい。
【0072】
中の傾斜部分28mは、例えば、外の傾斜部分28a及び内の傾斜部分28bよりも小さい深さd7を有するのが好ましい。中の傾斜部分28mの深さd7は、例えば、外の傾斜部分28aの深底部29の深さd5の0.20〜0.30倍であるのが好ましい。また、中の傾斜部分28mの深さd7は、第1のセンタ主溝12の深さd1の0.30倍以下が好ましい。
【0073】
図6に示されるように、ミドルブロック26は、鉤状ミドルサイプ28により、第1ブロック片26Aと第2ブロック片26Bとに区分されている。第1ブロック片26Aは、例えば、鉤状ミドルサイプ28のタイヤ周方向の一方側(
図6では下側)に区分され、第2ブロック片26Bは、例えば、鉤状ミドルサイプ28のタイヤ周方向の他方側(
図6では上側)に区分されている。これらブロック片26A、26Bには、一端が各ブロック片26A、26B内で途切れるクローズドサイプ32A、32Bが配される。
【0074】
第1ブロック片26Aに配されるクローズドサイプ32Aは、第1のショルダー主溝11からのび、かつ外の傾斜部分28aと同じ向きに傾斜する。第2ブロック片26Bに配されるクローズドサイプ32Bは、第1のセンタ主溝12からのび、かつ内の傾斜部分28bと同じ向きに傾斜する。このクローズドサイプ32A、32Bは、第1のミドル陸部21の剛性を維持しつつ、それらのエッジによって氷上性能を高める。
【0075】
クローズドサイプ32Aは、第2ラグ溝部17の延長線上に配されるのが好ましい。またクローズドサイプ32Bは、第1ラグ溝部16の延長線上に配されるのが好ましい。このようなクローズドサイプ32A、32Bの配置は、ミドルブロック26のタイヤ周方向のせん断変形を適度に促し、ミドル横溝15内の雪詰まりの抑制に有利となる。
【0076】
クローズドサイプ32A、32Bのタイヤ軸方向に対する角度θ5は、例えば、20〜30°であるのが好ましい。特には、クローズドサイプ32A、32Bは、それぞれ、鉤状ミドルサイプ28の外の傾斜部分28a又は内の傾斜部分28bと略平行にのびるのが好ましい。
【0077】
図9に、第1のショルダー陸部22の拡大図が示される。第1のショルダー陸部22のタイヤ軸方向の幅W3は、トレッド幅TWの0.15〜0.30倍であるのが好ましい。
【0078】
図9に示されるように、第1のショルダー陸部22は、第1のショルダー主溝11に沿ってのびる周方向サイプ34により、第1トレッド端Te1側の主要部22aと、第1のショルダー主溝11側の細幅部22bとに区分されている。細幅部22bのタイヤ軸方向の幅W4は、例えば、第1のショルダー陸部22の幅W3の0.10〜0.20倍である。
【0079】
第1のショルダー陸部22には、複数のショルダー横溝35が配される。ショルダー横溝35は、第1トレッド端Te1から第1のショルダー主溝11までのびる第1のショルダー横溝35Aと、第1トレッド端Te1から周方向サイプ34までのびる第2のショルダー横溝35Bとを含む。第1、第2のショルダー横溝35A、35Bは、タイヤ周方向に交互に配される。
【0080】
図10には、
図9の第1のショルダー横溝35AのH−H線断面図が示される。
図10に示されるように、第1のショルダー横溝35Aの内端部に、底面が隆起したタイバー36が配される。これにより第1のショルダー陸部22の剛性を高く維持する。
【0081】
第2のショルダー横溝35Bは、内端が第1のショルダー陸部22内で途切れることで、該第1のショルダー陸部22の剛性を高く維持する。
【0082】
第1、第2のショルダー横溝35A、35B間に、タイヤ軸方向にジグザグ状にのびるショルダーサイプ37が配される。このショルダーサイプ37は、内端が主要部22a内で途切れることで、該第1のショルダー陸部22の剛性を高く維持する。
【0083】
図11に、第2のミドル陸部23、及び第2のショルダー陸部24の拡大図が示される。第2のミドル陸部23のタイヤ軸方向の幅W5は、トレッド幅TWの0.10〜0.20倍であるのが好ましい。又第2のショルダー陸部24のタイヤ軸方向の幅W6は、トレッド幅TWの0.15〜0.25倍であるのが好ましい。
【0084】
第2のミドル陸部23には、ラグ溝又は横溝からなり、かつ前記第2のセンタ主溝13と交わる第2の溝体20を具える。
【0085】
第2の溝体20は、本例では、ミドル横溝40として形成される。このミドル横溝40は、第2のミドル陸部23を横切ることにより、第2のミドル陸部23を複数のミドルブロック39に区分する。
【0086】
ミドル横溝40は、前記第1、第2のセンタラグ溝5A、5Bとは、タイヤ軸方向に対して異なる向きに傾斜する。このミドル横溝40は、タイヤ軸方向内側の横溝部40aと、タイヤ軸方向外側の横溝部40bとを含む。内側の横溝部40aのタイヤ軸方向に対する角度θ6は、例えば30〜40°であるのが好ましい。
【0087】
内側の横溝部40aは、例えば、第2のミドル陸部23のタイヤ軸方向の巾中心位置よりも第2のショルダー主溝14側までのびている。内側の横溝部40aのタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、第2のミドル陸部23の前記幅W5の0.65〜0.80倍であるのが好ましい。外側の横溝部40bのタイヤ軸方向に対する角度θ7は、前記角度θ6よりも小、特には10〜20°であるのが好ましい。
【0088】
ミドル横溝40が第2のセンタ主溝13と交わる交差部QFでは、この交差部QFにおける少なくとも一方のコーナ部分(特には鋭角側のコーナ部分JF)に、面取り部62を具える。本例では、ミドル横溝40が第2のショルダー主溝14と交わる交差部QEにおける少なくとも一方のコーナ部分(特には鋭角側のコーナ部分JE)にも面取り部62を具える。面取り部62は、雪路面を走行する際、第2のセンタ主溝13内の雪柱と、ミドル横溝40内の雪柱との接続強度、及び第2のショルダー主溝14内の雪柱と、ミドル横溝40内の雪柱との接続強度を高め、雪柱せん断力を高める。
【0089】
特には
図12(A)、(B)に示されるように、前記ミドル横溝15(第1の溝体19)を延長した延長領域P1aと、前記第1のセンタラグ溝5Aを延長した延長領域P1bとが、第1のセンタ主溝12内で交わる。また前記ミドル横溝40(第2の溝体20)を延長した延長領域P2aと、前記第2のセンタラグ溝5Bを延長した延長領域P2bとが、第2のセンタ主溝13内で交わる。なお「交わる」とは、延長領域P1a、P1bの少なくとも一部が、第1のセンタ主溝12内で交わっていれば良く、又延長領域P2a、P2bの少なくとも一部が、第2のセンタ主溝13内で交わっていれば良い。このように構成することで、面取り部60、61、及び面取り部60、62が協働して、雪柱の接続強度をさらに高めうる。
【0090】
図13(A)には、
図11のミドル横溝40のB−B線断面図が示される。
図13(A)に示されるように、ミドル横溝40は、深底部41と、深底部41よりも小さい深さの浅底部42とを有するのが好ましい。
【0091】
より具体的には、内側の横溝部40aが、タイヤ軸方向内側の深底部41と、タイヤ軸方向外側の浅底部42とを有し、外側の横溝部40bが深底部41として形成されるのが好ましい。このようなミドル横溝40は、浅底部42により、第2のミドル陸部23の剛性を高く維持する。
【0092】
深底部41の深さd8は、第2のセンタ主溝13の深さd1の0.65〜0.75倍であるのが好ましい。浅底部42の深さd9は、深底部41の深さd8の0.60〜0.70倍であるのが好ましい。
【0093】
各ミドルブロック39に、1本の鉤状のミドルサイプ45と、対をなす内外のミドルクローズドサイプ46A、46Bとが配される。
【0094】
ミドルサイプ45は、第2のセンタ主溝13からのびる内の傾斜部分45aと、第2のショルダー主溝14からのびる外の傾斜部分45bと、前記内外の傾斜部分45a、45b間を継ぐ中の傾斜部分45mとを有する。
【0095】
前記内外の傾斜部分45a、45bは、前記ミドル横溝40と同方向に傾斜している。本例では、中の傾斜部分45mも、前記ミドル横溝40と同方向に傾斜している。
【0096】
内の傾斜部分45aのタイヤ軸方向に対する角度θ8aは、例えば30〜40°であるのが好ましい。外の傾斜部分45bのタイヤ軸方向に対する角度θ8bは、前記角度θ8aより小、特には10〜20°であるのが好ましい。又中の傾斜部分45mのタイヤ軸方向に対する角度θ9は、前記角度θ8aよりも大であり、特には65〜75°であるのが好ましい。
【0097】
ドライ操縦安定性のために、外の傾斜部分45bのタイヤ軸方向長さL45bは、内の傾斜部分45aのタイヤ軸方向長さL45aよりも小であるのが好ましい。特には、前記長さL45aは、第2のミドル陸部23のタイヤ軸方向の幅W5の0.4〜0.5倍であるのが好ましい。又前記長さL45bは、第2のミドル陸部23のタイヤ軸方向の幅W5の0.1〜0.3倍であるのが好ましい。
【0098】
図13(B)には、ミドルサイプ45のC−C線断面図が示されている。
図13(B)に示されるように、ミドルサイプ45は、中の傾斜部分45mが内外の傾斜部分45a、45bよりも小さい深さを有している。
【0099】
内外の傾斜部分45a、45bは、それぞれ、深底部47と、深底部47よりも小さい深さの浅底部48とを含む。各浅底部48は、例えば、ミドルサイプ45の両端部に配されており、深底部47は、浅底部48と中の傾斜部分45mとの間に配される。このようなミドルサイプ45は、中の傾斜部分45mと浅底部48とにより、第2のミドル陸部23の剛性を高く維持する。
【0100】
深底部47の深さd10は、第2のセンタ主溝13の深さd1の0.65〜0.75倍であるのが好ましい。浅底部48の深さd11は、第2のセンタ主溝13の深さd1の0.40〜0.50倍であるのが好ましい。中の傾斜部分45mの深さd12は、第2のセンタ主溝13の深さd1の0.15〜0.25倍であるのが好ましい。
【0101】
図11に示されるように、内のミドルクローズドサイプ46Aは、第2のセンタ主溝13から、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、第2のミドル陸部23内で途切れる。又外のミドルクローズドサイプ46Bは、第2のショルダー主溝14から、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、第2のミドル陸部23内で途切れる。内外のミドルクローズドサイプ46A、46Bは、前記内外の傾斜部分45a、45bと同じ向きに傾斜している。内のミドルクローズドサイプ46Aのタイヤ軸方向長さLxは、前記長さL45aの60〜80%であるのが好ましい。外のミドルクローズドサイプ46Bのタイヤ軸方向長さLyは、前記長さL45bの90〜110%であるのが好ましい。
【0102】
図14には、内外のミドルクローズドサイプ46A、46BのD−D線断面図が示されている。
図14に示されるように、内外のミドルクローズドサイプ46A、46Bは、例えば、深底部47と、深底部47よりも小さい深さの浅底部48とを含む。浅底部48は、各ミドルクローズドサイプ46A、46Bの主溝側の端部に形成されている。深底部47及び浅底部48の深さは、例えば、上述したミドルサイプ45の深底部47及び浅底部48と同様の範囲に設定されるのが好ましい。このような内外のミドルクローズドサイプ46A、46Bは、浅底部48により、第2のミドル陸部23の剛性を高く維持する。
【0103】
第2のミドル陸部23において、前記ミドルサイプ45と、ミドル横溝40と、外のミドルクローズドサイプ46Bとが、この順番にてタイヤ周方向一方側(
図1、11では下方側)に繰り返し形成される。又ミドルサイプ45と、ミドル横溝40と、内のミドルクローズドサイプ46Aとが、この順番にてタイヤ周方向他方側(
図1、11では上方側)に繰り返し形成される。このような配置は、剛性の周方向の均一性を高め、耐偏摩耗性に有利となる。
【0104】
図11に示されるように、第2のショルダー陸部24は、第2のショルダー主溝14で開口する複数のショルダーサイプ9を具える。ショルダーサイプ9は、第2のショルダー主溝14からのびる直線部9aと、この直線部9aから第2トレッド端Te2までジグザグ状にのびるジグザグ部9bとを含む。ショルダーサイプ9は、タイヤ軸方向に対してミドルサイプ45と同じ向きに傾斜するのが望ましく、特には、ショルダーサイプ9のタイヤ軸方向に対する角度は、前記外の傾斜部分45bの角度θ8bよりも小であるのが好ましい。
【0105】
第2のショルダー陸部24には、前記ショルダーサイプ9以外に、この第2のショルダー陸部24を横切る複数のショルダー横溝49を有する。これにより第2のショルダー陸部24は、複数のショルダーブロック50に区分される。各ショルダーブロック50に、2本のショルダーサイプ9が配されている。ショルダー横溝49は、ショルダーサイプ9に沿ってのび、その内端部には、底面が隆起したタイバー51が配される。
【0106】
本例ではミドル横溝40の延長線上に、ショルダー横溝49が配される。これにより、雪上走行時、ミドル横溝40、ショルダー横溝49、及び第2のショルダー主溝14によって、大きな雪柱を生成でき、雪上性能を向上しうる。
【0107】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0108】
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1では、
図4(A)に示すように、第1のセンタラグ溝5Aと第2のセンタクローズドサイプ6aとが対置せず、かつ第1のセンタクローズドサイプ6bと第2のセンタラグ溝5Bとが対置しないことにより高剛性領域Yが形成されていない。比較例2は、長さLbが延長長さLb
0の1/3より小、かつ長さLaが延長長さLa
0の1/3より小であることにより、高剛性領域Yは有するものの、エッジ長さが不足している。比較例3では、長さLbが延長長さLb
0の2/3より大、かつ長さLaが延長長さLa
0の2/3より大であることにより、高剛性領域Yが形成されていない。比較例4では、
長さLAが延長長さLA
0の1/2より大、かつ長さLBが延長長さLB
0の1/2より大であることにより、高剛性領域Yが形成されていない。各テストタイヤについて、氷雪上性能及びドライ操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6J
タイヤ内圧:210kPa
テスト車両:前輪駆動車、排気量2400cc
タイヤ装着位置:全輪
【0109】
<氷雪上性能>
氷雪路上で上記テスト車両を5km/hから20km/hまで加速させたときの走行距離が、GPSで測定され、平均加速度が算出された。結果は、比較例1の平均加速度を100とする指数で示されており、数値が大きい程、氷雪上性能が優れていることを示す。
【0110】
<ドライ操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で示されており、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0111】
【表1】
【0112】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ操縦安定性と氷上性能とを高レベルで両立させていることが確認できた。