(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二輪自動車では、高速直進走行から旋回走行に移行する際に、急制動される。この急制動では、前輪タイヤに大きな荷重が負荷され、後輪タイヤには比較的に小さな荷重が負荷される。この旋回走行から高速直進走行に移行する際に、二輪自動車は急加速される。この急加速では、後輪タイヤには、大きな荷重が負荷される。この高速旋回走行では、高い制動性能と高いトラクション性能とが要求される。この制動性能とトラクション性能との向上には、タイヤに高い剛性と高いグリップ性能との両立が求められる。更に、このタイヤには、過渡特性の維持向上が求められている。この過渡特性を低下させることなく、制動性能及びトラクション性能を向上させることは、容易ではない。
【0005】
本発明の目的は、高速旋回走行における制動性能及びトラクション性能に優れるとともに、過渡特性にも優れる二輪自動車用タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る二輪自動車用タイヤは、その外面がトレッド面を形成するトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するバンドとを備えている。上記バンドは、バンドコードを備えている。上記バンドコードは、螺旋状に巻かれて周方向に延びている。上記バンドは、軸方向において、中央に位置する中央部と、この中央部の外端から外向きに延在する一対の側部とを備えている。上記中央部における上記バンドコードの密度Ecは、上記側部における上記バンドコードの密度Emより小さい。軸方向において、上記バンドの外端は、内腔面の軸方向外端より内側に位置して、且つリム幅を規定する直線RLより外側に位置している。上記トレッドは、
上記中央部が内側に位置するセンター領域と、上記側部が内側に位置する一対のミドル領域と、それぞれのミドル領域の軸方向外側に隣接する一対のショルダー領域とを備えている。
【0007】
好ましくは、上記トレッドは、ベース層と、このベース層の半径方向外側に積層されたキャップ層とを備えている。このベース層の複素弾性率Eb
* は、このキャップ層の複素弾性率Ec
* より大きい。上記センター領域は、軸方向中央に位置するベース接地領域と、このベース接地領域の軸方向外側に隣接する一対のキャップ接地領域とを備えている。上記ベース接地領域において、ベース層はトレッド面を形成している。それぞれのキャップ接地領域において、キャップ層はトレッド面を形成している。
【0008】
好ましくは、トレッド幅Wtに対する上記ベース接地領域の幅Wccの比は、0.05以上0.15以下である。
【0009】
好ましくは、上記複素弾性率Ec
* に対する上記複素弾性率Eb
* の比は、1.3以上2.0以下である。
【0010】
好ましくは、上記バンドの幅Wbに対する上記中央部の幅Wbcの比は、0.1以上0.3以下である。
【0011】
好ましくは、上記密度Emに対する上記密度Ecの比は、0.75以上0.90以下である。
【0012】
好ましくは、このタイヤは、上記バンドの半径方向内側に位置するベルトを備えている。半径方向において、上記ベルトの軸方向外端は、上記内腔面の軸方向外端より内側に位置している。
【0013】
好ましくは、上記ベルトは、内側層とこの内側層の半径方向外側に積層される外側層とを備えている。半径方向において、上記外側層の軸方向外端は、上記バンドの軸方向外端と上記内側層の軸方向外端との間に位置している。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るタイヤでは、バンドが中央部を備えているので、トレッドのセンター領域は接地性に優れている。このセンター領域は比較的に小さな荷重の負荷でも十分に接地しうる。バンドが側部を備えているので、急加速の大きな荷重に対して、ミドル領域が高い剛性を発揮する。更に、このタイヤでは、高い剛性を発揮させるためにサイドウォールの剛性が高くされても、ショルダー領域の剛性が高くなることが抑制されている。このタイヤでは、旋回走行における制動性能及びグリップ性能が向上すると共に剛性バランスに優れている。このタイヤは、過渡特性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。実線BLは、ビードベースラインを表す。このビードベースラインは、タイヤ2が装着される正規リムのリム径(JATMA参照)を規定する線である。このビードベースラインは軸方向に延びている。
【0018】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、ベルト12、バンド14、インナーライナー16及び一対のチェーファー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、二輪自動車の後輪に装着される。
【0019】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を形成する。トレッド面20は、軸方向において、一方のトレッド端Peから図示されない他方のトレッド端Peまで延びている。トレッド4は、ベース層22とキャップ層24とを有している。ベース層22は、トレッド4の軸方向一端から他端まで延びている。キャップ層24は、ベース層22の一部の半径方向外側に位置している。キャップ層24は、ベース層22の一部に積層されている。ベース層22は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。キャップ層24は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。このベース層22の複素弾性率Eb
* は、キャップ層24の複素弾性率Ec
* より大きい。このトレッド4には、溝が刻まれていてもよい。この溝により、トレッドパターンが形成される。
【0020】
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側端は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。
【0021】
ビード8は、サイドウォール6の半径方向内側に位置している。ビード8は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるエイペックス28とを備えている。コア26はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス28は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス28は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0022】
カーカス10は、第一プライ30及び第二プライ32からなる。第一プライ30及び第二プライ32は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。第一プライ30は、コア26の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ30には、主部30aと折り返し部30bとが形成されている。第二プライ32は、コア26の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第二プライ32には、主部32aと折り返し部32bとが形成されている。半径方向において、第一プライ30の折り返し部30bの端は、第二プライ32の折り返し部32bの端よりも外側に位置している。
【0023】
第一プライ30及び第二プライ32は、それぞれ並列された多数のカーカスコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのカーカスコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。カーカスコードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカスが、1枚のカーカスプライから形成されてもよい。
【0024】
ベルト12は、トレッド4の半径方向内側に位置する。ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に積層される。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層34及び外側層36を備えている。軸方向において、内側層34は、一方の軸方向外端Piから図示されない他方の軸方向外端Piまで延びている。軸方向において、外側層36は、一方の軸方向外端Poから図示されない他方の軸方向外端Poまで延びている。図示されないが、内側層34及び外側層36のそれぞれは、並列された多数のベルトコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのベルトコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層34のベルトコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層36のベルトコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。ベルトコードの好ましい材質は、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0025】
バンド14は、カーカス10の半径方向外側に位置している。バンド14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。バンド14は、ベルト12の半径方向外側に位置している。バンド14は、一方の軸方向外端Pbから他方の軸方向外端Pbまで、トレッド4に沿って延びている。バンド14は、カーカス10を補強する。
【0026】
バンド14は、中央部38と一対の側部40とを備えている。中央部38は、軸方向において赤道面を跨ぎ中央に位置している。一方の側部40は、軸方向において中央部38の一方の外端から外向きに一方の外端Pbまで延びている。図示されないが、他方の側部40は、軸方向において中央部38の他方の外端から外向きに他方の外端Pbまで延びている。
【0027】
図示されないが、バンド14は、バンドコードとトッピングゴムとからなる。バンドコードは、一方の外端Pbから他方の外端Pbまで、螺旋状に巻かれている。このコードは実質的に周方向に延びている。周方向に対するバンドコードの傾斜角度は、5°以下、更には2°以下である。この中央部38におけるバンドコードの密度Ecは、一対の側部40にけるバンドコードの密度Emより小さい。この密度Ec及びEmは、バンド14の軸方向幅5cm当たりのバンドコード打ち込み本数であるエンズとして、求められる。このバンドコードは有機繊維からなる。好ましい
有機繊維をして、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0028】
インナーライナー16は、カーカス10の内側に位置している。赤道面CLの近傍において、インナーライナー16は、カーカス10の内面に接合されている。インナーライナー16は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー16の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー16は、タイヤ2の内側表面である内腔面42を形成している。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
図1の符号Paは、内腔面42の軸方向外端を表す。この外端Paは、内腔面42において軸方向で最も外側に位置している。この外端Paは、軸方向においてトレッド端Peより内側に位置している。
【0029】
チェーファー18は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2が、図示されないリムに組み込まれると、このチェーファー18がリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。このチェーファー18は、リムシートに当接するシート面44とリムフランジに当接するフランジ当接面46とを備えている。チェーファー18は、例えば、布とこの布に含浸したゴムとからなっている。
【0030】
このトレッド4は、センター領域48、一対のミドル領域50及び一対のショルダー領域52を備えている。センター領域48は、赤道面を跨いで軸方向中央に位置している。それぞれのミドル領域50は、センター領域48の軸方向外側に隣接している。それぞれのショルダー領域52は、ミドル領域50の軸方向外側に隣接している。
【0031】
センター領域48の内側には、バンド14の中央部38が位置している。ミドル領域50の内側には、バンド14の側部40が位置している。ショルダー領域52の内側には、バンド14が位置していない。
図1の断面のトレッド面20に沿った方向において、ショルダー領域52は、バンド14の外端Pbの外側に位置している。
【0032】
センター領域48は、ベース接地領域54と一対のキャップ接地領域56とを備えている。ベース接地領域54は、軸方向において赤道面を跨いで中央に位置している。それぞれのキャップ接地領域56は、軸方向においてベース接地領域54の外側に隣接している。ベース接地領域54では、ベース層22にキャップ層24が積層されていない。この領域では、ベース層22がトレッド面20を形成している。それぞれのキャップ接地領域56、それぞれのミドル領域50、及びそれぞれのショルダー領域52において、ベース層22にキャップ層24が積層されている。これらの領域では、キャップ層24がトレッド面20を形成している。このキャップ層24の軸方向内端部は、キャップ接地領域56に位置している。この軸方向内端部の厚さは、軸方向外側から内側に向かって漸減している。このキャップ層24の厚さの漸減に対応して、キャップ層24の軸方向内端部の内側において、ベース層22の厚さが軸方向外側から内側に向かって漸増している。
【0033】
図1の片矢印Wtは、トレッド幅を表す。このトレッド幅Wtは、一方のトレッド端Peから他方のトレッド端Peまで幅である。片矢印Wcは、センター領域48の幅を表す。両矢印Wmは、ミドル領域50の幅を表す。両矢印Wsは、ショルダー領域52の幅を表す。片矢印Wccは、ベース接地領域54の幅を表す。このトレッド幅Wt、幅Wc、幅Wm、幅Ws及び幅Wccは、トレッド面20に沿って測定される。
【0034】
片矢印Wiは内側層34の幅を表す。この幅Wiは内側層34に沿って測定される。片矢印Woは外側層36の幅を表す。この幅Woは外側層36に沿って測定される。片矢印Wbはバンド14の幅を表している。片矢印Wbcは中央部38の幅を表す。両矢印Wbmは側部40の幅を表す。この幅Wb、幅Wbc及び幅Wbmは、バンド14に沿って測定される。
【0035】
二点鎖線RLは、タイヤ2が装着されるリムのリム幅(JATMA参照)を規定する直線である。この直線RLは、半径方向に延びる。二点鎖線Laは、内腔面42の外端Paを通って半径方向の延びる直線である。
【0036】
片矢印Rは、赤道面におけるトレッド面20の曲率半径を表している。二輪自動車に装着されるタイヤ2の曲率半径Rは、四輪自動車のそれに比べて小さい。これにより、旋回走行において、ライダーは二輪自動車を内側へ容易に傾斜させられる。この傾斜によって、二輪自動車の旋回走行が容易にされる。この曲率半径Rは、一般に50mm以上150mm以下である。
【0037】
このタイヤ2は、二輪自動車の後輪に装着される。高速での直進走行から旋回走行に移行する旋回走行の前期には、この二輪自動車に、大きな制動力が作用する。この大きな制動力によって、フロントタイヤに大きな荷重が負荷され、後輪に装着されたタイヤ2には比較的小さな荷重が負荷される。
【0038】
このタイヤ2では、中央部38のバンドコードの密度Ecが側部40のバンドコードの密度Emより小さい。この中央部38が位置するセンター領域48は、側部40が位置する
ミドル領域50より撓み易い。前述の旋回走行の前期において、このセンター領域48は比較的小さな荷重に対しても、十分に路面に接地しうる。
【0039】
高速での旋回走行から直進走行に移行する旋回走行の後期には、この二輪自動車は急加速される。この急加速によって、タイヤ2に大きな荷重が負荷される。この急加速の際に、主にミドル領域50が接地する。このミドル領域50の内側にバンド14の側部40が位置するので、ミドル領域50は高い剛性を発揮する。このミドル領域50は、特に周方向に高い剛性を発揮しうる。このタイヤ2は、この旋回走行の後期において高いトラクション性能を発揮しうる。
【0040】
この高いトラクション性能を発揮させる観点から、側部40におけるバンドコードの密度Emは、好ましくは25(本/5cm)以上であり、更に好ましくは
30(本/cm)以上である。一方で、センター領域48を撓み易くして、且つセンター領域48とミドル領域50との剛性バランスを低下させない観点から、この密度Emは、好ましくは70(本/5cm)以下であり、更に好ましくは60(本/5cm)以下である。
【0041】
タイヤ2に負荷される大きな荷重に対して、このサイドウォール6には十分な剛性が要求される。サイドウォール6の半径方向外側に、ショルダー領域52が位置する。このサイドウォール6の剛性の向上は、ショルダー領域52の剛性をも向上させる。このタイヤ2では、ショルダー領域52の内側には、バンド14が位置していない。このタイヤ2では、軸方向において、バンド14の外端Pbは、内腔面42の外端Paより内側に位置している。これにより、サイドウォール6の半径方向外側に位置するショルダー領域52の剛性がミドル領域50のそれに対して相対的に低くされている。一方で、この外端Pbは、軸方向において、リム幅を規定する直線RLより外側に位置している。これにより、ミドル領域50は高い剛性を発揮しうる。このタイヤ2では、ミドル領域50が高い剛性を発揮しつつ、トレッド4とサイドウォール6の剛性バランスが最適化されうる。
【0042】
このタイヤ2では、センター領域48のベース接地領域54において、ベース層22がトレッド面20を形成している。このベース接地領域54を備えることで、このセンター領域48は、その内側に中央部38が位置していても、高速直進走行の制動時に十分な剛性を発揮しうる。このセンター領域48は、この中央部38及びベース接地領域54を備えることで、高速直進走行の制動時に十分な接地性と剛性とを発揮する。このタイヤ2は、高速直進走行における制動性能に優れている。
【0043】
このタイヤ2では、センター領域48は、キャップ接地領域56を備えている。この
キャップ接地領域56でキャップ層24がトレッド面20を形成する。このキャップ層24の複素弾性率Ec
* は、ベース層22の複素弾性率Eb
* より小さい。このキャップ接地領域56が接地することで、センター領域48は十分なグリップ力を発揮しうる。キャップ接地領域56を備えることで、このセンター領域48は、十分な制動性能及びトラクション性能を発揮しうる。
【0044】
ベース接地領域54の幅Wccが大きいタイヤ2は、センター領域48の剛性が高い。このタイヤ2は、高速直進走行における制動性能を向上しうる。この観点から、トレッド幅Wtに対するベース接地領域54の幅Wccの比(Wcc/Wt)は、好ましくは0.05以上である。一方で、この幅Wccが小さいタイヤ2は、直進走行においてキャップ接地領域56が接地し易い。このタイヤ2はグリップ力に優れる。このタイヤ2は、制動性能及びトラクション性能に優れる。この観点から、この比(Wcc/Wt)は、好ましくは0.15以下である。
【0045】
キャップ層24の複素弾性率Ec
* が小さいタイヤ2は、グリップ性能に優れる。この観点から、この複素弾性率Ec
* は、好ましくは3.0MPa以下である。一方で、この複素弾性率Ec
* が大きいタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この複素弾性率Ec
* は、好ましくは1.0MPa以上である。
【0046】
このタイヤ2では、ミドル領域50及びショルダー領域52においても、キャップ層24がトレッド面20を形成しているので、ミドル領域50及びショルダー領域52は、高いグリップ力を発揮しうる。これにより、旋回走行において高い制動性能及びトラクション性能を発揮しうる。
【0047】
ベース層22の複素弾性率Eb
* が大きいタイヤ2は、センター領域48の剛性の向上に寄与する。このタイヤ2は、高速直進走行における制動性能を向上しうる。この観点から、複素弾性率Ec
* 対する複素弾性率Eb
* の比(Eb
* /Ec
* )は、好ましくは1.3以上であり、更に好ましくは1.5以上である。一方で、この複素弾性率Eb
* が大き過ぎるタイヤ2では、トレッド4とサイドウォール6との剛性バランスが低下する。この剛性バランスの低下は、操縦安定性を低下させる。この剛性バランスを適正にする観点から、この比(Eb
* /Ec
* )は、好ましくは2.0以下である。
【0048】
中央部38の幅Wbcが大きいタイヤ2は、センター領域48の接地性に優れる。この観点から、バンド14の幅Wbに対する中央部38の幅Wbcの比(Wbc/Wb)は、好ましくは0.10以上であり、更に好ましくは0.15以上である。一方で、この幅Wbcが大過ぎるタイヤ2は、旋回走行における制動性能及びトラクション性能を低下させる。この制動性能及びトラクション性能の維持向上の観点から、比(Wbc/Wb)は、好ましくは0.30以下であり、更に好ましくは0.25以下である。
【0049】
中央部38におけるバンドコードの密度Ecが小さいタイヤ2は、センター領域48の剛性を十分に低減しうる。これにより、センター領域48の剛性がミドル領域50のそれに対して十分に低減される。センター領域48とミドル領域50との剛性バランスの向上が図られる。この観点から、側部40におけるバンドコードの密度Emに対する密度Ecの比(Ec/Eb)は、好ましくは0.90以下である。一方で、この密度Ecが大きいタイヤ2では、センター領域48の剛性が高い。このセンター領域48は耐久性に優れている。この観点から、この比(Ec/Eb)は、好ましくは0.60以上であり、更に好ましくは0.75以上である。
【0050】
このタイヤ2では、半径方向において、内側層34と外側層36とバンド14とが積層されている。内側層34と外側層36との箍効果によって、トレッド4の剛性が高められている。このタイヤ2は、高い旋回性能を発揮しうる。更に、バンド14が積層されることで、高速回転におけるタイヤ2の径成長が抑制されている。
【0051】
このタイヤ2では、半径方向において内側層34の外端Piが内腔面42の外端Paより内側に位置している。この内側層34は、サイドウォール6の剛性の向上に寄与する。このサイドウォール6は、大きな荷重に対して十分な剛性を発揮しうる。更に、このタイヤ2では、第一プライ30の折り返し部30bと内側層34の端部とが重ね合わされることで、サイドウォール6の剛性が向上している。このタイヤ2では、半径方向に外側層36の外端Poがこの外端Piに代えて内腔面42の外端Paより内側に位置していてもよい。
【0052】
この様に、サイドウォール6の剛性が高められても、このトレッド4とこのバンド14とを組み合わせることで、このタイヤ2は、トレッド4とサイドウォール6との剛性バランスに優れている。特に低い空気圧で使用されるタイヤ2では、このトレッド4、ベルト12及びバンド14による剛性の向上効果が発揮され易い。この様なタイヤ2では、高い剛性バランスの向上効果が得られる。この観点から、この発明は、200kPa以下の空気圧で使用されるタイヤ2に適しており、190kPa以下の空気圧で使用されるタイヤ2に更に適している。
【0053】
このタイヤ2では、外側層36の外端Poは、バンド14の外端Pbと内側層34の外端Piとの間に位置している。このベルト12は、内側層34と外側層36とが重ね合わされることで、剛性バランスを維持しつつ、トレッド4及びサイドウォール6の剛性が高められている。これにより、このタイヤ2は、ショルダー領域52が接地した旋回走行において、十分な剛性を発揮しうる。
【0054】
本発明では、複素弾性率Eb
* 及び複素弾性率Ec
* は、「JIS K 6394」の規定に準拠して、下記の測定条件により、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製の商品名「VESF−3」)を用いて計測される。この計測では、ベース層22及びキャップ層24のゴム組成物から板状の試験片(長さ=45mm、幅=4mm、厚み=2mm)が形成される。この試験片が、計測に用いられる。
初期歪み:10%
振幅:±2.5%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:100℃
【0055】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となる様にタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0057】
[実施例1]
図1に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、200/60R17である。このタイヤの比(Wbc/Wb)、比(Ec/Em)、比(Wcc/Wt)及び比(Eb
* /Ec
* )は、下記の表1に示される通りであった。
【0058】
[比較例1]
従来のタイヤが準備された。このタイヤでは、軸方向において、ベルトの外端が内腔面の軸方向外端より外側に位置していた。ベルトコードの密度は、軸方向一方の外端から他方の外端まで一定であった。トレッドのキャップ層は、一方のトレッド端から他方のトレッド端まで連続して延在した。その他の構成は、実施例1と同様であった。
【0059】
[実施例2−5]
比(Wbc/Wb)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0060】
[実施例6−9及び比較例2]
比(Ec/Em)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0061】
[実施例10−13]
比(Wcc/Wt)を下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0062】
[実施例14−17]
比(Eb
* /Ec
* )を下記の表4に示される通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0063】
[性能評価]
排気量が1000ccであるレース用の二輪自動車(4サイクル)が準備された。タイヤが正規リムに組み込まれて、このタイヤが二輪自動車の後輪に装着された。このタイヤの内圧が180kPaとなるように、空気が充填された。前輪には、市販のタイヤ(サイズ=120/70ZR17)が装着された。その内圧が240kPaとなるように空気が充填された。この二輪自動車では、後輪の空気圧が前輪の空気圧より低く設定されていた。この二輪自動車を、その路面がアスファルトであるサーキットコースで走行させた。剛性バランス、過渡特性、制動性能及びトラクション性能について、ライダーによる官能評価が行われた。この結果が、実施例1を10とした指数で下記の表1から4に示されている。これらの指数は、数値が大きいほど好ましい。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
表1−4に示されるように、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。特に、総合評価が32点以上のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価結果が極めて高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。