(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のプラズマエッチング装置用電極(プラズマ処理装置用電極板)では、化学気相成長法により炭化珪素層を形成しているため、炭化珪素層を形成するのに時間がかかる。このため、プラズマ処理装置用電極板を炭化珪素の焼結体により構成することが考えられる。
【0007】
ここで、通常のプラズマ処理装置用電極板として用いられるシリコンの場合、プラズマ処理装置用電極板の製造工程において、該プラズマ処理装置用電極板の表面及び外周面を研削加工した際に加工ダメージ(研削痕)が生じ、この加工ダメージをフッ酸、硝酸、酢酸系の混酸等のエッチングにて加工ダメージの除去加工を行うことで、プラズマエッチング中のパーティクルの発生を抑制している。しかしながら、プラズマ処理装置用電極板を炭化珪素により構成した場合には、耐プラズマ性は高いが、化学的に安定で、化学エッチングしにくいことから電極板の加工ダメージを除去することが難しい。このため、研削痕を除去して、パーティクルの発生を抑制できるプラズマ処理装置用炭化珪素電極板が望まれている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、パーティクルの発生を抑制できるプラズマ処理装置用炭化珪素電極板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラズマ処理装置用炭化珪素電極板は、プラズマ生成用のガスを通過させる複数の通気孔を有する円板状のプラズマ処理装置用電極板であって、炭化珪素材により構成され、外周面における厚さ方向の中心平均粗さRaが1.0
μm以下であり、前記外周面に形成される研削痕の深さ寸法が5.0μm以下である。
【0010】
プラズマ処理装置用電極板が炭化珪素材により構成されているので、プラズマ処理装置用炭化珪素電極板の耐久性を向上させることができる。
ここで、外周面における厚さ方向の中心平均粗さRaが1.0を超えていると、表面及び外周面がプラズマにさらされたときに、パーティクルが発生しやすくなる。また、外周面に形成される研削痕の深さ寸法が5.0μmを超えていると、研削痕に基づくパーティクルが発生しやすくなる。
なお、外周面における厚さ方向の中心平均粗さRaを規定したのは、後述するように研磨方向を周方向としたことから、研磨方向と同じ周方向のRaは、研磨方向と直交する厚さ方向のRaより小さく、厚さ方向のRaの上限を規定すれば、周方向の中心平均粗さRaはその上限内となるからである。
本発明では、外周面における厚さ方向の中心平均粗さRaが1.0以下であり、外周面に形成される研削痕の深さ寸法が5.0μm以下に設定されているので、外周面におけるパーティクルの発生を抑制でき、かつ、外周面の研削痕に基づくパーティクルの発生を抑制できる。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置用炭化珪素電極板の製造方法は、プラズマ生成用のガスを通過させる複数の通気孔を有する円板状のプラズマ処理装置用電極板の製造方法であって、炭化珪素材の外周面を研削する研削工程と、前記研削工程後に、前記外周面を研磨する研磨工程と、を備え、前記研磨工程では、前記外周面を研磨する際に、前記炭化珪素材の周方向に沿う研削方向に対して同じ研磨方向となるように前記炭化珪素材
と研磨具とを相対回転させる。
【0012】
ここで、研磨工程において研磨具を炭化珪素材における外周面に押し付けた状態で炭化珪素材の厚さ方向に移動させたり、研磨具を外周面に押し付けた状態で該研磨具を炭化珪素材の径方向を中心として回転させたりすると、外周面の研削方向と該外周面の研磨方向とが異なることとなり、研削工程において外周面に形成された研削痕が拡大するおそれがある。
これに対し、本発明では、外周面の研磨方向と研削方向とが同じであるので、研削工程において外周面に形成された研削痕が拡大することを抑制しつつ、該研削痕の深さ寸法を小さくできる。これによれば、外周面の研削痕に基づくパーティクルの発生をさらに抑制できるプラズマ処理装置用炭化珪素電極板を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラズマ処理装置用炭化珪素電極板及びその製造方法では、プラズマ処理装置用炭化珪素電極板の外周面を特定の方向で研磨加工することで、パーティクルの発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置用炭化珪素電極板及びその製造方法について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
本実施形態のプラズマ処理装置用炭化珪素電極板1(以下、電極板1という)は、プラズマ処理装置としてのプラズマエッチング装置に用いられる電極板である。
電極板1は、炭化珪素の焼結体(炭化珪素材)により構成されている。具体的には、電極板1を構成する炭化珪素の焼結体は、例えば、YとOとを含み、残部がSiC及び不可避不純物からなり、YとOとの含有量比Y/Oが質量比で3.8以上4.6以下の範囲内にあり、Yの含有量が0.80質量%以上4.82質量%以下の範囲とされている。なお、Yの含有量は、炭化珪素の焼結体全体量に対する比率である。
【0016】
この電極板1は、Y/Oが高いことから、酸素欠損を有するY酸化物がSiC結晶の粒界に3次元の網目状に存在している構造であると考えられ、電極板1の導電性及び熱伝導性が高められている。また、電極板1の密度比(組成から算出される理論密度に対する実際の密度の比)が95%以上とされ、耐プラズマ性が高められている。
【0017】
このような電極板1は、例えば、厚さが1〜20mm程度、直径100〜600mm程度の円板状に形成されている。
また、電極板1には、
図1では簡略化して示しているものの、実際には、孔径がφ0.1〜φ3mmで、数mm〜10mmのピッチで数百〜5000個程度の通気孔11が厚さ方向に平行に貫通して形成されている。
【0018】
本実施形態では、電極板1の外周面1Cにおける厚さ方向の中心平均粗さRaが1.0以下に設定されている。
電極板1の表面1A、裏面1B及び外周面1Cのうち、表面1A及び外周面1Cは、上記通気孔を介して流出するプラズマ生成用のガスにより生じたプラズマにさらされる。このため、外周面1Cにおける厚さ方向の中心線平均粗さRaが1.0を超えていると、表面1A及び外周面1Cがプラズマにさらされたときに、パーティクルが発生しやすくなる。
なお、さらにパーティクル発生を抑制するため、電極板1の表面1Aにおける径方向の中心線平均粗さRaも、1.0以下とされていることが好ましい。
【0019】
また、外周面1Cに形成される研削痕の深さ寸法は、5.0μm以下に設定されている。外周面1Cに形成される研削痕の深さ寸法が5.0μmを超えていると、研削痕に基づくパーティクルが発生しやすくなる。
【0020】
[電極板の製造工程]
このような電極板1は、炭化珪素の焼結体(炭化珪素材)を形成する焼結体形成工程、炭化珪素材を研削する研削工程、研削された炭化珪素材に複数の通気孔を形成する通気孔形成工程、及び通気孔の形成された炭化珪素材を研磨する研磨工程を備える製造方法により製造される。以下、この製造方法について詳しく説明する。
【0021】
[焼結体形成工程]
焼結体形成工程では、SiC粉末とY酸化物粉末とを混合し、混合物を所定形状(例えば、円筒状)のモールド内に充填し、ホットプレス装置を用いて加圧焼成して焼結体を作成する。このホットプレス装置内の雰囲気は、Y酸化物粉末としてY
2O
3粉末を用いた場合、炭化ガスや水素ガスを含む還元雰囲気とされ、Y酸化物粉末として予め炭化ガスや水素ガスを含む還元雰囲気中で焼成して得た酸素欠損を有するY酸化物粉末を用いた場合、真空雰囲気若しくはアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気とされる。
また、焼成温度は1900℃以上2100℃以下が好ましく、焼成時の圧力は20MPa以上40MPa以下であることが好ましい。
【0022】
[研削工程]
研削工程では、研削装置により焼結体形成工程により形成された炭化珪素材の表面及び外周面を研削する。この炭化珪素材の表面を研削する際には、回転する研削ホイールを炭化珪素材の表面に押し当てた状態で炭化珪素材と研削ホイールとを相対回転させることにより該表面を研削する。
また、炭化珪素材の外周面を研削する際には、研削ホイールを炭化珪素材の外周面に押し当てた状態で、炭化珪素材と研削ホイールとを相対回転させることにより外周面を研削する。例えば、炭化珪素材のみが回転してもよいし、研削ホイールが炭化珪素材の外周に沿って回転してもよい。この研削工程において炭化珪素材の外周面が研削されると、周方向に延びる研削痕が炭化珪素材の外周面に形成される。
【0023】
[通気孔形成工程]
通気孔形成工程では、研削工程により表面10A及び外周面10Cの研削がなされた研削後の炭化珪素材10に複数の通気孔をレーザ加工やドリル加工により形成される。
【0024】
[研磨工程]
研磨工程では、通気孔の形成された炭化珪素材10の表面10A及び外周面10Cを表面研磨装置30及び外周面研磨装置40のそれぞれにより研磨する。
表面研磨装置30は、
図2に示すように、炭化珪素材10の裏面10Bを押圧するプレッシャープレート31と、プレッシャープレート31の内側に貼付され、炭化珪素材10を吸着固定する吸着パッド32と、炭化珪素材10の表面10Aを研磨する研磨具34が表面に貼付された定盤33とを備えている。
【0025】
この研磨具34は、サテン織シルク、平織ポリエステルや不織布、アセテート、ウール、合成短織維ナップ等により構成され、そのダイヤモンド粒子の粒径が0.25μm以上45μm以下に設定されたダイヤモンド琢磨布、粒度が♯60〜♯220(平均粒径0.26mm〜0.072mm)のダイヤモンド砥石、粒度が♯60〜♯800(平均粒径0.26mm〜0.02mm)のダイヤモンドシート、平均粒径が20μm〜300μmのダイヤモンドがメタルで固定されたダイヤモンドパット、及び粒度が♯80〜♯4000(平均粒径0.2mm〜0.004mm)のSiC粒子が塗布されたSiC研磨紙等により構成される。
【0026】
また、プレッシャープレート31の押圧力は、30〜100g/cm
2に設定されている。このプレッシャープレート31が吸着パッド32を介して炭化珪素材10を研磨具34に上記圧力にて押圧した状態で、0.5〜3時間、5〜60rpmで回転させることにより、研磨具34により表面10Aが研磨される。これにより、炭化珪素材10の表面10A(電極板1の表面1A)における径方向の中心平均粗さRaが1.0以下となる。
【0027】
外周面研磨装置40は、
図3に示すように、炭化珪素材10を該炭化珪素材10の周方向に回転させる回転装置41と、炭化珪素材10の外周面10Cを研磨する研磨具43が固定された押圧部材42とを備えている。
この研磨具43は、上記研磨具34と同様の構成とされている。
【0028】
また、押圧部材42は、研磨具43を介して炭化珪素材10の外周面10Cを押圧し、その押圧力は、30〜100g/cm
2に設定されている。この押圧部材42は、炭化珪素材10の厚さ以上の厚さに形成されており、これにより炭化珪素材10の外周面10Cを厚さ方向にわたって押圧できるようになっている。このような押圧部材42は、研磨具43を外周面10Cに押し付けた状態で固定され、炭化珪素材10を回転装置41によって研削工程において回転された方向と同方向に、5〜60rpmで回転させることにより外周面10Cを研磨する。研磨時間は、例えば、0.5〜3時間である。
これにより、炭化珪素材10の外周面10C(電極板1の外周面1C)における厚さ方向の中心平均粗さRaが1.0以下となる。
【0029】
ここで、研磨工程において研磨具43を外周面10Cに押し付けた状態で炭化珪素材10の厚さ方向に移動させたり、研磨具43を炭化珪素材10の径方向を中心として回転させたりすると、外周面10Cの研削方向と該外周面10Cの研磨方向とが異なることとなり、研削工程において外周面10Cに形成された研削痕が拡大するおそれがある。
これに対し、本実施形態では、研磨具43を押圧部材42により外周面10Cに押し付けた状態で、炭化珪素材10を回転させることにより外周面10Cを研磨し、外周面10Cの研磨方向と研削方向とが同じであるので、研削工程において外周面10Cに形成された研削痕が拡大することを抑制しつつ、該研削痕の深さ寸法を5.0μm以下にできる。これによれば、外周面10Cの研削痕に基づくパーティクルの発生を抑制できる。
【0030】
このように本実施形態の製造方法により製造される電極板1の表面1A及び外周面1Cは、中心線平均粗さRaが1.0以下であり、外周面1Cに形成される研削痕の深さ寸法が5.0μm以下に設定されているので、表面1A及び外周面1Cにおけるパーティクルの発生を抑制でき、特に、外周面1Cの研削痕に基づくパーティクルの発生を抑制できる。
【0031】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、電極板1(炭化珪素材10)は、円板状に形成され、外周面10Cは、裏面10Bから表面10Aまで延びる一面により形成されていた。しかしながら、これに限らず、例えば、
図4及び
図5に示すように外周面が段形状に形成されることとしてもよい。
第2実施形態の炭化珪素材10Dは、略円板状に形成され、
図4に示すように、表面10Eと、表面10Eよりも外径の大きい裏面10Fと、外周面10Gを備える。外周面10Gは、表面10Eから裏面10Fに向けて延びる第1周面10Hと、裏面10Fから表面10Eに向けて延びる第2周面10Iと、第1周面10Hの端部から外側に向けて延び第2周面10Iの端部に接続される環状平面10Jとを備えている。すなわち、本実施形態の外周面10Gは、
図4に示すように段形状に形成されている。
【0032】
次に、この外周面10Gの研削工程及び研磨工程について説明する。
[研削工程]
研削工程において炭化珪素材の表面は、第1実施形態と同様に研削する。
一方、炭化珪素材の外周面を研削する際には、研削ホイールを炭化珪素材の外周面に押し当てた状態で、炭化珪素材と研削ホイールとを相対回転させることにより径の小さい第1周面10Hと環状平面10Jとを研削する。その後、該外周面の下側半分の領域に研削ホイールを押し当てた状態で、炭化珪素材と研削ホイールとを再度相対回転させることにより第2周面10Iを研削する。これにより、炭化珪素材10Dの外周面10Gが
図4に示す形状となる。
【0033】
[研磨工程]
外周面研磨装置40Aは、炭化珪素材10Dを該炭化珪素材10Dの周方向に回転させる回転装置41と、炭化珪素材10Dの外周面10Gを研磨する研磨具43が固定された押圧部材42と、これらに加えて、外周面10Gの環状平面10Jに向けて研磨具43を押圧する押圧部材44を備えている。
まず、第2周面を第1実施形態と同様、
図4に示すようにして研磨し、その後、第1周面10Hを第2周面10Iと同様に研磨する。そして、
図5に示すように、押圧部材44は研磨具43を介して環状平面10Jを押圧し、その押圧力は、30〜100g/cm
2に設定されている。この押圧部材44は、研磨具43を環状平面10Jに押し付けた状態で固定され、炭化珪素材10Dを回転装置41によって研削工程において回転された方向と同方向に、0.5〜3時間、5〜60rpmで回転させることにより外周面10Cを研磨する。
これにより、炭化珪素材10Dの外周面10G(第2実施形態の電極板の外周面)の厚さ方向の中心平均粗さRaが1.0以下となる。
したがって、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0034】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記第1実施形態では、外周面10Cは、表面10Aから裏面10Bに向けて延びる垂直な面により構成されることとしたが、これに限らず、例えば、表面10Aから裏面10Bに向けて傾斜して伸びるテーパー面により構成されてもよい。この場合、押圧部材42が該テーパー面に沿う形状であればよい。
【0035】
上記第1実施形態では、押圧部材42は、研磨具43を外周面10Cに押し付けた状態で固定され、炭化珪素材10を回転装置41によって研削工程において回転された方向と同方向に回転させることにより外周面10Cを研磨することとしたが、これに限らず、例えば、炭化珪素材10を固定した状態で、研磨具43が炭化珪素材10の外周面に沿って回転することとしてもよいし、これらのいずれもが回転することとしてもよい。すなわち、炭化珪素材10の周方向に沿う研削方向に対して同じ研磨方向となるように炭化珪素材10と研磨具43とが相対回転すればよい。また、第2実施形態においても同様である。
上記第1実施形態では、電極板1を炭化珪素の焼結体により構成したが、これに限らず、CVD法など焼結以外の方法により形成された炭化珪素を用いてもよい。
上記第2実施形態では、第2周面10I及び第1周面10Hを研磨した後、環状平面10Jを研磨することとしたが、これに限らず、例えば、第2周面10Iを研磨した後、押圧部材44により研磨具43を第1周面10H及び環状平面10Jに押し付けた状態で固定し、炭化珪素材10Dを回転させて、これらを同時に研磨することとしてもよい。
【実施例】
【0036】
炭化珪素材として、表面及び外周面が研削された炭化珪素の焼結体を用意した。諸条件を変更しながら炭化珪素材の表面及び外周面を研磨し、研磨後の炭化珪素材(電極板)をプラズマエッチング装置に装着して、プラズマエッチング時間経過後のパーティクルの数に関する実験を行った。得られた従来例1〜3、比較例1〜6及び実施例1〜6のサンプルについて、表1〜3を参照しながら説明する。
【0037】
[プラズマエッチング装置の条件]
なお、プラズマエッチング装置の条件は、チャンバー内圧力を10
−1Torrとし、プラズマ生成用のガスの組成は、90sccmCHF
3+4sccmO
2+150sccmHeとした。また、高周波電力は2kWとし、周波数は20kHzとした。
【0038】
[中心線平均粗さRa]
表面の径方向における中心平均粗さRa(μm)は、測定された粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線とで囲まれた領域の面積の総和を求め、これを測定長さで除した値である。この粗さ曲線は、接触式測定装置によって測定され、表面についての測定長さは、径方向に1mmとした。また、表面についての測定位置は、円形状の表面の中心と、中心から200mm離れた箇所の0°位置、90°位置、180°位置、270°位置の計5箇所を測定し、その5つの中心平均粗さRaの平均値を比較した。
また、外周面についての測定長さは、厚さ方向に1mmとし、外周面の厚さ方向における中心平均粗さRaの測定位置は、外周面を90°毎(0°位置、90°位置、180°位置及び270°位置)の計4箇所を測定し、その4つの中心平均粗さRaの平均値を比較した。
【0039】
[最大加工ダメージ深さ]
光学顕微鏡にて、各サンプル材の研磨加工がなされた面の1mm角の加工ダメージの最大深さ(研削痕の最大深さ寸法)を測定した。表面は、円形状の表面の中心と、中心から200mm離れた箇所の0°位置、90°位置、180°位置、270°位置の計5箇所を測定し、その中で最も深さが大きいものを最大加工ダメージ深さとして測定した。
また、外周面は、該外周面を90°毎(0°位置、90°位置、180°位置及び270°位置)の計4箇所を測定し、その中で最も深さが大きいものを最大加工ダメージ深さとして測定した。
このような加工ダメージを測定するためのサンプル材は、以下のように形成される。まず、研磨加工がなされた面を切断しない状態とし、他の5面を切断して2mm角のサンプルを採取し、研磨加工面の断面が観察できるように樹脂に埋め込む。そして、サンプル採取時の切断による加工ダメージを除去するため、観察面を0.5mm研磨する。この研磨は、新たな加工ダメージの発生を抑制するため、観察面を切断面に対して水平となるように研磨する。このようにして形成されたサンプル材は、上記サンプルを採取する際の切断の影響を考慮し、上部0.5mm及び下部0.5mmは観察領域には含まず、観察断面の中央側1mm幅(上記1mm角)について、観察領域とした。
なお、外周面は、外周から内周方向に入る深さ寸法を測定し、表面は、該表面から内部方向に入る深さ寸法を測定した。
【0040】
[研磨条件]
また、研磨条件は、表面及び外周面ともに、サテン織シルクにより構成され、ダイヤモンド粒子の粒径が3μmであるダイヤモンド琢磨布を用いて研磨し、以下の6種類の研磨加工を表面及び外周面のそれぞれに施した。
【0041】
[未研磨]
この未研磨の状態のものを従来例とした。
[対ツール垂直研磨加工]
この対ツール垂直研磨加工(表1〜3では、対ツール垂直研磨という)では、研削加工において研削ホイールにより形成された研削痕(ツール目)に対して直交する方向に研磨具を移動させながら、炭化珪素材の表面又は外周面を研磨する研磨加工を2時間実行した。
[対ツール回転研磨加工]
この対ツール回転研磨加工(表1〜3では、対ツール回転研磨という)では、研削加工の研削ホイールにより形成された研削痕(ツール目)を考慮することなく、炭化珪素材を回転させるとともに研磨具を炭化珪素材の径方向又は該径方向に直交する方向を中心として回転させて表面又は外周面を研磨する研磨加工を2時間実行した。
【0042】
[対ツール水平研磨加工1]
この対ツール水平研磨加工1(表1〜3では、対ツール水平研磨1という)では、研削加工の研削ホイールにより形成された研削痕(ツール目)に対して水平に(研削方向と同方向に)表面又は外周面を研磨する研磨加工を1時間実行した(ハーフミラー加工)。
[対ツール水平研磨加工2]
この対ツール水平研磨加工2(表1〜3では、対ツール水平研磨2という)では、ツール目に対して水平に表面又は外周面を研磨する研磨加工を2時間実行した(ミラー加工)。
[対ツール水平研磨加工3]
この対ツール水平研磨加工3では、ツール目に対して水平に表面を研磨する研磨加工を3時間以上実行した。
【0043】
表1は、炭化珪素材の表面に対ツール水平研磨加工3が実行された例を示す表である。この表面の径方向における中心平均粗さRaは0.01であり、最大加工ダメージ深さ(研削痕の最大深さ寸法)は0μmである。この対ツール水平研磨加工3が実行された炭化珪素材の外周面に対して、研磨条件を上述した未研磨、対ツール垂直研磨加工、対ツール回転研磨加工、対ツール水平研磨加工1及び対ツール水平研磨加工2とした研磨を実施した。以下の表2,3も同様である。
表2は炭化珪素材の表面に対ツール水平研磨加工2が実行された例を示す表である。この対ツール水平研磨加工2が実行された表面の径方向における中心平均粗さRaは0.1であり、最大加工ダメージ深さは2μmである。
表3は炭化珪素材の表面に対ツール水平研磨加工1が実行された例を示す表である。この対ツール水平研磨加工1が実行された表面の径方向における中心平均粗さRaは1.0であり、最大加工ダメージ深さは5μmである。
【0044】
[プラズマエッチング時間経過後のパーティクルの数]
以上のような研磨加工がなされた炭化珪素材(電極板)を上記条件のプラズマエッチング装置に装着して、プラズマエッチング時間経過後のパーティクルの数を評価した。
具体的には、表1〜3の各種条件においてプラズマエッチングを500時間行い、プラズマエッチング開始から1時間、50時間、100時間、200時間、300時間、400時間及び500時間を経過した時点でのモニターウェーハ上のパーティクル数を測定した。このパーティクル数の測定は、パーティクルカウンター(トプコン製 WM−3000)を使用し、モニターウェーハ上をレーザ光により走査し、付着したパーティクルからの光散乱強度を測定することによりパーティクルの位置及び大きさを検出することにより行った。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
炭化珪素材の外周面における厚さ方向の中心平均粗さRaが1.0以下であり、外周面に形成される研削痕の深さ寸法が5.0μm以下である実施例1〜6は、プラズマエッチング装置にて500時間使用された場合でもパーティクルの発生数が330個以下であった。
【0049】
一方、従来例1〜3及び比較例1〜6は、炭化珪素材の外周面における厚さ方向の中心平均粗さRa及び外周面に形成される研削痕の深さ寸法が上記範囲内でないことから、パーティクルの発生数が多く、実施例1〜6に比べて劣っていた。
【0050】
また、上記表1〜3において、外周面における厚さ方向の中心平均粗さRa、最大加工ダメージ深さ及びパーティクルの数は、炭化珪素材における外周面の加工条件(研磨条件)により大きく異なり、外周面における厚さ方向の中心平均粗さRa、最大加工ダメージ深さ及びパーティクルの数のそれぞれにおいて、対ツール水平研磨加工2が最も好ましく、これに次いで対ツール水平研磨加工1が好ましいことがわかった。すなわち、炭化珪素材における外周面の研磨は、研削方向と同方向に行うことが好ましいことがわかった。