(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発明者の知見>
本発明者は、ポリマー碍子からなる相間スペーサを試作して風音の発生状況を実験で調べてみた。実験では、低騒音風洞を使用し、ポリマー碍子を垂直に設置した。そして、ポリマー碍子に吹き付ける風の速度(風速)を徐々に増加させ、そのときに発生する風音を測定した。
【0012】
図1はポリマー碍子の風速の測定結果を示す図であり、図中縦軸は騒音レベル、横軸は風速を表している。
図示のように、ポリマー碍子の風速は、風速23〜27m/sと風速32〜37m/sでそれぞれ風音の卓越が認められた。また、風速23〜27m/sで発生する風音の卓越の周波数は1.6kHz、風速32〜37m/sで発生する風音の卓越の周波数は2kHzとなり、いずれの場合も風音の騒音レベルが90dB以上であった。このレベルの風音は、非常に甲高い音となり、人間には耳障りな音として認識される。このため、ポリマー碍子の設置場所の近くに住む住民から騒音の苦情が寄せられるおそれがある。
【0013】
本発明者は、低騒音風洞を用いた風音測定において、ポリマー碍子の手前(風上)に棒状の障害物を、ポリマー碍子と平行に設置してみた。そうしたところ、上記風音の発生が認められた風速域でも風音がほとんど発生しなくなった。この理由としては、棒状の障害物によって風の流れが乱され、複数の笠部に起因した音響共鳴の発生が阻害されたためと考えられる。ただし、送電線の架設場所にそのような障害物を設置することは現実的ではない。
【0014】
そこで本発明者は、上記風音測定において、ポリマー碍子の設置位置を変えずに、棒状の障害物の位置を徐々に下げてみた。その結果、ポリマー碍子に対して棒状の障害物の上端が、ある高さよりも低くなったときに風音が鳴り出すことが分かった。また、さらに詳しく調べてみたところ、棒状の障害物の上端が、ポリマー碍子の上端側から数えて5つ目の笠部よりも下がると風音が鳴り出すことが分かった。
【0015】
本発明は、上述した発明者の知見に基づいてなされたもので、以下のような構成を採用している。
【0016】
(1)ロッド状の芯材と、
前記芯材の長手方向の一端と他端に設けられた一対の端末金具と、
前記一対の端末金具の間で前記芯材の長手方向に配列された複数の笠部と、を備え、
前記複数の笠部は、前記長手方向で複数のグループに分かれて配置され、
前記複数のグループの各々は、前記長手方向に連続して並ぶ、少なくとも2つの前記笠部を含み、
前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、1つのグループ内で隣り合う前記笠部間の間隔よりも広い、碍子装置。
この構成を採用すれば、芯材の長手方向で笠部の配列の連続性を断ち、音響共鳴による風音の発生を抑制することができる。
【0017】
(2)前記1つのグループに配置される前記笠部の数が4つである、
上記(1)に記載の碍子装置。
この構成を採用すれば、1つのグループに配置される笠部の数を5つ以上とする場合に比べて、音響共鳴による風音の発生を効果的に抑制することができる。
【0018】
(3)前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、前記1つのグループ内で隣り合う前記笠部間の間隔の1.5倍以上5倍以下である、
上記(1)または(2)に記載の碍子装置。
この構成を採用すれば、相間スペーサの絶縁性能の低下を抑制し、且つ、音響共鳴による風音の発生を抑制することができる。
【0019】
(4)前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、前記笠部の外径の2.5倍以上である、
上記(1)または(2)に記載の碍子装置。
この構成を採用すれば、笠部の外径に応じてグループ間の間隔を適切に設定し、音響共鳴による風音の発生を効果的に抑制することができる。
【0020】
以下、本発明に係る碍子装置を相間スペーサに適用した場合の実施形態について説明する。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係る架空送電線路の構成を示す概略図である。
図示のように、鉄塔1aと鉄塔1bの間には、上相、中相、下相からなる3相の架空送電線2a,2b,2cが架設されている。これらの架空送電線2a,2b,2cは、互いに上下方向に位置をずらして架設されている。具体的には、上相の架空送電線2aと中相の架空送電線2bが上下方向で隣り合うように架設され、中相の架空送電線2bと下相の架空送電線2cが上下方向で隣り合うように架設されている。
【0022】
また、上相の架空送電線2aと中相の架空送電線2bの間には相間スペーサ3aが設置され、中相の架空送電線2bと下相の架空送電線2cの間にも相間スペーサ3bが設置されている。これにより、上相の架空送電線2aと中相の架空送電線2aは相間スペーサ3aによって連結され、中相の架空送電線2bと下相の架空送電線2cは相間スペーサ3bによって連結されている。
【0023】
なお、鉄塔1a,1b間に架設された架空送電線2a,2b,2cに取り付ける相間スペーサ3a,3bの数は、鉄塔1a,1b間の距離、架空送電線2a,2b,2cの各相間の距離などに応じて適宜される。一般的には、鉄塔1a,1b間の距離が300mであれば、相間スペーサ3a,3bの取付個数は5個〜6個程度に設定される。
【0024】
図3は本発明の実施形態に係る相間スペーサの構成を示す概略図であり、
図4は該相間スペーサの部分断面図である。なお、
図3は相間スペーサを長手方向と直交する方向から見た場合を示している。
【0025】
相間スペーサ3は、上下方向で隣り合う架空送電線同士が接触しないよう、それらの架空送電線の間(相間)に所定の間隔を確保することにより、ギャロッピングやスリートジャンプに起因した架空送電線同士の接触を防止するものである。
【0026】
相間スペーサ3は、ロッド状(棒状)の芯材11と、複数の笠部12と、各々の笠部12と一体構造をなす胴部13と、芯材11の長手方向の一端と他端に設けられた一対の端末金具14と、を備える。
【0027】
(芯材11)
芯材11は、たとえば、繊維強化プラスチックなどの絶縁材料で構成されている。芯材11は、中実円柱形のロッド状に形成され、その中心軸方向に所定の長さを有する。以降の説明では、芯材11の長さ方向を長手方向または中心軸方向と記載する。
【0028】
(笠部12および胴部13)
複数の笠部12と胴部13は、たとえば、シリコーンゴムなどの高分子ポリマーからなる絶縁材料で構成されている。この場合、相間スペーサ3は、ポリマー碍子に相当する。
【0029】
複数の笠部12と胴部13は、芯材11の外周面を被覆するように、モールド成形によって一体に形成されている。各々の笠部12は、傾斜面12aを有する。傾斜面12aは、芯材11の中心軸の周辺に裾広がり状に傾斜している。笠部12の外径d1は、胴部13の外径d2よりも大きく設定されている。これにより、各々の笠部12は、芯材11の長手方向と直交する径方向に突出するように笠状に形成されている。
【0030】
複数の笠部12は、芯材11の両端に位置する一対の端末金具14の間で、芯材11の長手方向に所定の間隔(後述)で配列されている。各々の笠部12は、胴部13の外周面よりも径方向に大きく突出することにより、電気的な絶縁のための沿面距離を長く確保するものである。沿面距離は、絶縁物の表面に沿った長さを意味する。
【0031】
胴部13は、芯材11よりも一回り大きい円筒状に形成されている。胴部13は、芯材11の長手方向で複数の笠部12を相互に連結するように形成されている。複数の笠部12と胴部13は、芯材11を被覆する外被の部分を構成している。以降の説明では、複数の笠部12と胴部13との一体構造物を単に「外被」ともいう。
【0032】
(端末金具14)
端末金具14は、芯材11の長手方向の一端と他端に1つずつ取り付けられている。端末金具14は、たとえば、亜鉛めっきが施された軟鋼、あるいはアルミニウム合金などの金属によって構成される。端末金具14には、貫通孔15が設けられている。貫通孔15は、相間スペーサ3の端部に電線グリップ用の金具(不図示)を取り付けるために形成される。
【0033】
端末金具14は、芯材11の端部に固定されている。芯材11と端末金具14の固定部分には、必要に応じて、接着剤による接着層が設けられる場合もある。
【0034】
なお、端末金具14の形状は、架空送電線に相間スペーサ3を取り付けるための構造形式によって種々の変更が可能である。また、本実施形態では、芯材11の両端に同じ形状の端末金具14が取り付けられているが、これに限らず、芯材11の一端と他端にそれぞれ形状の異なる端末金具が取り付けられる場合もあり得る。
【0035】
(笠部12の配列)
次に、芯材11の長手方向における複数の笠部12の配列について説明する。
1つの相間スペーサ3に設けられる笠部12の数は、架空送電線2a,2b,2cの各相間の距離(以下、「相間距離」という)や、相間に求められる絶縁性能などに応じて設定される。このため、たとえば、3mの相間距離にあわせて構成される相間スペーサ3と、5mの相間距離にあわせて構成される相間スペーサ3で比較すると、後者の相間スペーサ3が、より多くの笠部12を有するものとなる。ただし、ここでは説明の便宜上、1つの相間スペーサ3に12個の笠部12を設ける場合を例に挙げて説明する。
【0036】
一対の端末金具14間に配列された複数の笠部12は、芯材11の長手方向で複数のグループ16に分かれて配置されている。
図3に示す例では、12個の笠部12が、3つのグループ16に分かれて配置されている。なお、相間スペーサのなかには、2つのポリマー碍子を連結棒を介して連結したものがある。この種の相間スペーサに本発明を適用する場合は、個々のポリマー碍子を1つのグループとはみなさず、各々のポリマー碍子において、芯材の両端の位置する一対の端末金具間に配列される複数の笠部12を複数のグループに分けて配置するものとする。
【0037】
各々のグループ16は、芯材11の長手方向に連続して並ぶ4つの笠部12を含んでいる。1つのグループ16に含まれる4つの笠部12は、芯材11の長手方向に一定の間隔p1で配列されている。間隔p1は、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔を意味する。この間隔p1は、芯材11の長手方向で隣り合う2つの笠部12の間隔であって、笠部12の所定の部位を基準に規定される。本実施形態では、一例として、笠部12の外周縁の位置を基準に間隔p1を規定している。ただし、これに限らず、芯材11の長手方向における笠部12の中心(重心)位置を基準に間隔p1を規定してもよいし、笠部12の上端位置を基準に間隔p1を規定してもよい。この点は、後述する間隔p2を規定する場合も同様である。
【0038】
これに対して、芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2は、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1よりも広くなっている。間隔p2は、芯材11の長手方向で隣り合う2つのグループ16のうち、一方のグループ16の含まれる一の笠部12と、他方のグループ16に含まれる他の笠部12との間の間隔を意味する。この場合、上記一の笠部12は、上記一方のグループ16の端部で且つ上記他方のグループ16に最も近い位置に配置されるものとし、上記他の笠部12は、上記他方のグループ16の端部で且つ上記一方のグループ16に最も近い位置に配置されるものとする。これにより、グループ16間の間隔p2を規定する上記一の笠部12と上記他の笠部12は、芯材11の長手方向で互いに隣り合う位置に配置されるものとなる。
【0039】
ここで、上述した1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1と、芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2との関係について、さらに詳しく説明する。
【0040】
間隔p1と間隔p2の関係を「p1<p2」とする場合、それらの差が小さすぎると、音響共鳴の発生を十分に抑制できなくなるおそれがある。また、p1とp2の差が大きすぎると、芯材11の単位長さあたり配列可能な笠部12の数が減少し、相間スペーサ3の絶縁性能を十分に確保できなくなるおそれがある。
【0041】
このため、複数の笠部12をグループ化するにあたって、グループ16間の間隔p2は、好ましくは間隔p1の1.5倍以上、より好ましくは間隔p1の2倍以上、さらに好ましくは間隔p1の2.5倍以上とするのがよい。また、間隔p2は、好ましくは間隔p1の5倍以下、より好ましくは間隔p1の4倍以下、さらに好ましくは間隔p1の3倍以下とするのがよい。
【0042】
また、笠部12の外径d1を基準にグループ16間の間隔p2を規定する場合、間隔p2は、笠部12の外径d1の2.5倍以上とすることが好ましい。また、間隔p2は、笠部12の外径d1の5倍以下とすることが好ましい。
【0043】
<碍子装置の製造方法>
次に、本発明の実施形態に係る碍子装置の製造方法について説明する。ここでは、上記相間スペーサ3の製造方法を例に挙げて説明する。
【0044】
(準備工程)
まず、ロッド状をなす繊維強化プラスチック製の芯材11を用意する。用意する芯材11の長さは、相間距離に適合する長さとする。
【0045】
(金具取付工程)
次に、芯材11の長手方向の一端と他端にそれぞれ端末金具14を取り付ける。端末金具14には、芯材11の端部を嵌合可能な筒部をあらかじめ形成しておく。そして、その筒部を芯材11の端部に嵌合した後、ダイスなどによって筒部をかしめることにより、芯材11の端部に端末金具14を圧着して固定する。
【0046】
(成形工程)
次に、端末金具14付きの芯材11を成形金型(不図示)にセットし、芯材11の外周面を絶縁材料で被覆するようにモールド成形する。モールド成形には、コンプレッション成形、トランスファ成形、インジェクション成形などを適用可能であり、なかでもコンプレッション成形を好適に適用可能である。
【0047】
コンプレッション成形を適用する場合は、まず、シリコーンゴム等の成形材料を成形金型のキャビティに入れて、圧力をかけながら加熱溶融させる。次いで、成形金型内で成形材料を冷却により硬化させた後、成形金型から成形品を取り出す。成形金型には、上記複数の笠部12と胴部13の形状に対応する成形面を形成しておく。また、成形金型の成形面は、複数の笠部12が芯材11の長手方向で複数のグループ16に分かれて配置され、且つ、該長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2が、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1よりも広くなるように形成しておく。これにより、芯材11の外周面を複数の笠部12と胴部13によって被覆してなる相間スペーサ3が得られる。
【0048】
なお、ここでは、芯材11の両端に端末金具14を取り付けてから、圧縮成形を行う場合について説明したが、これ以外にも、たとえば、芯材11の両端を残してモールド成形し、その後、芯材11の両端に端末金具14を取り付けてもよい。
【0049】
また、他の製造方法として、次のような方法を採用することも可能である。
まず、繊維強化プラスチック製の芯材11を用意する。また、芯材11とは別に、複数の笠部12と胴部13を一体に有する外被を用意する。外被には、芯材11の外径に適合する貫通孔を形成しておく。
【0050】
次に、外被の貫通孔に芯材11を挿通することにより、芯材11に外被を取り付ける。これにより、芯材11の外周面が外被によって被覆される。次に、芯材11の両端にかしめ等によって端末金具14を取り付ける。これにより、相間スペーサ3が得られる。
【0051】
<参考形態>
図5は本発明の参考形態に係る相間スペーサの構成を示す概略図である。
図示した相間スペーサ3は、ロッド状の芯材11と、複数の笠部12と、各々の笠部12と一体構造をなす胴部13と、芯材11の両端に設けられた一対の端末金具14と、を備え、この点は、上記実施形態と同様である。ただし、参考形態の相間スペーサ3では、複数の笠部12がグループ分けされることなく、芯材11の長手方向に一定の間隔p1で連続的に配列された構成になっている。
【0052】
上記参考形態の相間スペーサ3においては、芯材11の長手方向に多数の笠部12が連続的に配列されているため、相間スペーサ3に強風が吹き付けると音響共鳴が発生し、風音が発生しやすくなる。
【0053】
これに対して、上記実施形態の相間スペーサ3においては、芯材11の長手方向で複数の笠部12が複数のグループ16に分かれている。そして、芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2が、各々のグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1よりも広くなっている。
【0054】
これにより、芯材11の長手方向においては、笠部12の連続的な配列が、グループ16間で断たれる。このため、1つのグループ16内に含まれる笠部12の数を所定数以下に制限することにより、音響共鳴の発生とこれにともなう風音の発生を抑制することができる。上記所定数は、芯材11の長手方向に連続的に配列する笠部12を数を2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、等と順に増やしていったときに、音響共鳴によって風音が発生しはじめるときの笠部12の数を意味する。
【0055】
<実施形態の効果>
本発明の実施形態によれば、以下に述べる1つまたは複数の効果が得られる。
【0056】
(a)複数の笠部12が芯材11の長手方向で複数のグループ16に分かれて配置され、その長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2が、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1よりも広くなっている。この構成では、芯材11の長手方向で笠部12の配列の連続性が断たれる。このため、音響共鳴の発生やこれにともなう風音の発生を抑制することができる。
【0057】
(b)上記本発明者の知見をもとに、1つのグループ16に配列される笠部12の数を4つとし、4つの笠部12の集合体を1つのグループとして複数(本形態例では12個)の笠部12をグループ分けしている。これにより、芯材11の長手方向で5つ以上の笠部12が一定の間隔で連続的に配列される箇所が存在しなくなる。このため、音響共鳴による風音の発生を効果的に抑制することができる。また、音響共鳴による風音の発生は1つのグループを2つ、または、3つの笠部12で構成した場合にも得られる。ただし、その場合は、芯材11の長手方向における笠部12の配列が全体的に疎らになる。このため、限られた長さの相間スペーサ3で所望の絶縁性能を確保することを考慮すると、1つのグループに属する笠部12の数は4つとすることが好ましい。また、1つのグループに属する笠部12の数を減らすと、同じ総数の笠部12を配列するために必要になる芯材11の長さが長くなる。このため、限られた長さの相間スペーサ3に所望の数以上の笠部12を配列することを考慮しても、1つのグループに属する笠部12の数は4つとすることが好ましい。
【0058】
(c)芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2を、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1の1.5倍以上5倍以下としている。これにより、相間スペーサ3の絶縁性能の低下を抑制し、且つ、音響共鳴による風音の発生を抑制することができる。
【0059】
(d)芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2を、笠部12の外径d1の2.5倍以上としている。これにより、笠部12の外径d1に応じてグループ16間の間隔p2を適切に設定し、音響共鳴による風音の発生を効果的に抑制することができる。
【0060】
<他の実施形態>
続いて、本発明の他の実施形態について
図6〜
図8を用いて説明する。
【0061】
図6に示す相間スペーサ3は、一対の端末金具14の間に配列された複数の笠部12が、芯材11の長手方向で4つのグループ16に分かれて配置されている。また、4つのグループ16の各々は、芯材11の長手方向に連続して並ぶ3つの笠部12を含んでいる。そして、芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2が、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1よりも広くなっている。このように、芯材11の長手方向に一定の間隔p1で並ぶ3つの笠部12を、1つのグループ16としてグループ分けした場合でも、上記長手方向における笠部12の連続的な配列が、グループ16間で断たれる。このため、音響共鳴の発生やこれにともなう風音の発生を抑制することができる。
【0062】
なお、
図6に示す相間スペーサ3の他の形態として、4つのグループ16をそれぞれ2つの笠部12で構成してもよい。
【0063】
図7に示す相間スペーサ3は、一対の端末金具14の間に配列された複数の笠部12が、芯材11の長手方向で4つのグループ16に分かれて配置されている。また、4つのグループ16のうち、3つのグループ16の各々は、芯材11の長手方向に連続して並ぶ3つの笠部12を含み、1つのグループ16は、芯材11の長手方向に連続して並ぶ2つの笠部12を含んでいる。つまり、1つのグループ16に含まれる笠部12の数が、グループ16によって異なっている。また、芯材11の長手方向において、一端部寄りに位置するグループ16は、それ以外のグループ16よりも少ない数の笠部12を含んでいる。ただし、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1は、すべてのグループ16で共通(同じ寸法)になっている。そして、芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2が、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1よりも広くなっている。このように複数の笠部12を配列した場合でも、芯材11の長手方向における笠部12の連続的な配列が、グループ16間で断たれる。このため、音響共鳴の発生やこれにともなう風音の発生を抑制することができる。
【0064】
なお、
図7に示す相間スペーサ3の他の形態として、芯材11の長手方向の両端寄りに位置する2つのグループ16を、それぞれ2つの笠部12で構成し、該長手方向の中央寄りに位置する2つのグループ16を、それぞれ3つの笠部12で構成してもよい。
【0065】
図8に示す相間スペーサ3は、一対の端末金具14の間に配列された複数の笠部12が、芯材11の長手方向で3つのグループ16に分かれて配置されている。また、3つのグループ16のうち、両側2つのグループ16の各々は、芯材11の長手方向に連続して並ぶ4つの笠部12を含み、中央のグループ16は、芯材11の長手方向に連続して並ぶ3つの笠部12を含んでいる。つまり、1つのグループ16に含まれる笠部12の数が、グループ16によって異なっている。また、芯材11の長手方向において、端部寄りに位置するグループ16は、中央寄りに位置するグループ16よりも多くの数の笠部12を含んでいる。ただし、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1は、すべてのグループ16で共通(同じ寸法)になっている。そして、芯材11の長手方向で隣り合うグループ16間の間隔p2が、1つのグループ16内で隣り合う笠部12間の間隔p1よりも広くなっている。このように複数の笠部12を配列した場合でも、芯材11の長手方向における笠部12の連続的な配列が、グループ16間で断たれる。このため、音響共鳴の発生やこれにともなう風音の発生を抑制することができる。
【0066】
なお、
図8に示す相間スペーサ3の他の形態として、芯材11の長手方向の一端部に位置する1つのグループ16を4つの笠部12で構成し、それ以外の2つのグループ16をそれぞれ3つの笠部12で構成してもよい。
【0067】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0068】
たとえば、上記実施形態においては、相間スペーサ3が備える複数の笠部12をすべて同じ外径としているが、これに限らず、相対的に外径の大きい笠部12と外径の小さい笠部12が混在した構成であってもよい。その場合は、相対的に外径の大きい笠部12と外径の小さい笠部12を、芯材11の長手方向に交互に配置した構成を採用することができる。
【0069】
また、上記実施形態においては、相間スペーサに適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、たとえば懸垂碍子など、他の碍子装置にも適用可能である。
【0070】
また、上記実施形態においては、複数の笠部12と胴部13とを一体に有する外被を高分子ポリマーで構成した、ポリマー碍子からなる相間スペーサ3を例に挙げて説明したが、複数の笠部12は高分子ポリマー以外の材料で構成されていてもかまわない。
【0071】
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
(付記1)
ロッド状の芯材と、
前記芯材の長手方向の一端と他端に設けられた一対の端末金具と、
前記一対の端末金具の間で前記芯材の長手方向に配列された複数の笠部と、を備え、
前記複数の笠部は、前記長手方向で複数のグループに分かれて配置され、
前記複数のグループの各々は、前記長手方向に連続して並ぶ、少なくとも2つの前記笠部を含み、
前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、1つのグループ内で隣り合う前記笠部間の間隔よりも広い、碍子装置。
(付記2)
前記1つのグループに配置される前記笠部の数が4つである、
付記1に記載の碍子装置。
(付記3)
前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、前記1つのグループ内で隣り合う前記笠部間の間隔の1.5倍以上5倍以下である、
付記1または付記2に記載の碍子装置。
(付記4)
前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、前記笠部の外径の2.5倍以上である、
付記1または付記2に記載の碍子装置。
(付記5)
前記碍子装置が相間スペーサである、
付記1から付記4のいずれか1つに記載の碍子装置。
(付記6)
ロッド状の芯材を用意する準備工程と、
前記芯材の外周面を被覆するように絶縁材料をモールド成形することにより複数の笠部を形成する成形工程と、
を含む碍子装置の製造方法であって、
前記成形工程では、前記複数の笠部が前記長手方向で複数のグループに分かれて配置され、且つ、前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、1つのグループ内で隣り合う前記笠部間の間隔よりも広くなるように、前記複数の笠部を形成する、
碍子装置の製造方法。
(付記7)
鉄塔間に複数の架空送電線を互いに上下方向に位置をずらして架設し、且つ、上下方向で隣り合う前記架空送電線同士を相間スペーサで連結してなる架空送電線路であって、
前記相間スペーサは、
ロッド状の芯材と、
前記芯材の長手方向の一端と他端に設けられた一対の端末金具と、
前記一対の端末金具の間で前記芯材の長手方向に配列された複数の笠部と、を備え、
前記複数の笠部は、前記長手方向で複数のグループに分かれて配置され、
前記複数のグループの各々は、前記長手方向に連続して並ぶ、少なくとも2つの前記笠部を含み、
前記長手方向で隣り合う前記グループ間の間隔が、1つのグループ内で隣り合う前記笠部間の間隔よりも広い、架空送電線路。