(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825534
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】カバー構造及び電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20210121BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20210121BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20210121BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610B
H05K5/02 L
H05K7/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-202568(P2017-202568)
(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公開番号】特開2019-75953(P2019-75953A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雅和
(72)【発明者】
【氏名】小田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】大道寺 龍弥
(72)【発明者】
【氏名】濱田 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】岡本 典子
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−295263(JP,A)
【文献】
再公表特許第2006/109804(JP,A1)
【文献】
特開2009−159669(JP,A)
【文献】
実開平01−041984(JP,U)
【文献】
特開2014−217235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H05K 5/02
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続箱の電装部品が実装される回路基板に取り付けられ、前記電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルに用いられる基体と、前記回路基板を収容する収容体とを含むカバー構造において、
前記基体は、
前記ケーブルのプラグが嵌入される開口を有する有底筒体部分と、
該有底筒体部分の側板の一部に、底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、
前記底板の外面における前記水抜き孔の周囲を囲うように立ち上がる壁と
を含む形状に絶縁性材料により一体成形され、
前記収容体の内側には、前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されており、
前記底板の外面の壁の内側には、前記係止棒が当接する
カバー構造。
【請求項2】
電装部品が実装されており、該電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルが取り付けられている回路基板と、該回路基板を収容する収容体とを備える電気接続箱において、
前記レセプタクルの基体は、
前記ケーブルのプラグが嵌入される開口を有する有底筒体部分と、
該有底筒体部分の側板の一部に、底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、
前記底板の外面における前記水抜き孔の周囲を囲うように立ち上がる壁と
を含む形状に絶縁性材料により一体成形され、
前記壁を回路基板とは反対側に向けて前記回路基板に取り付けられており、
前記収容体の内側には、前記壁の内側に当接し、且つ前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されている
電気接続箱。
【請求項3】
前記レセプタクルの基体は、
前記回路基板の周縁部に、前記底板が前記回路基板に対し略垂直となるように前記開口を外向きにして取り付けられており、
前記壁は、前記底板の外面における前記水抜き孔の底板側の開口の周囲を、前記回路基板から遠位側の一部を除いて囲う
請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記有底筒体部分は、複数の扁平な矩形筒体が所定の隙間を隔てて並設されて構成されており、
前記レセプタクルは、前記矩形筒体の並設方向を前記回路基板の側辺に沿わせるように取り付けられており、
前記水抜き孔は、隣り合う前記矩形筒体の内の一方の側板の、前記隙間に対向する部分に、前記底板に亘るようにして設けられている
請求項2又は3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記係止棒は、
前記底板に沿って前記水抜き孔の底板側の孔を覆う覆い板と、
該覆い板の前記水抜き孔側と反対面に略直角に設けられ、前記壁の内側に当接するリブ板とを有する
請求項2から4のいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記収容体は、前記回路基板に対向するようにして前記電装部品を覆うカバー板を有し、
前記係止棒は、前記カバー板の両側辺部の略中央に、内向きにコの字の断面をなすように立設されている
請求項2から5のいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項7】
電装部品が実装されており、該電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルが取り付けられている矩形状の回路基板と、該回路基板を収容箱及びカバー板の間に収容する収容体とを備える電気接続箱において、
前記レセプタクルの基体は、
矩形状の底板に、所定の隙間を隔てて長手方向に並設された複数の扁平な矩形筒体と、
隣り合う前記矩形筒体の内の一方の側板の、前記隙間に対向する部分に、前記底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、
前記底板の外面に形成され、前記水抜き孔の底板側の孔の周囲をコの字状に囲う窪みを前記底板の一長辺側に有する厚底部と
を含んで絶縁性材料により一体成形され、
前記レセプタクルは、前記底板を前記回路基板に略垂直とし、前記矩形筒体の並設方向を前記回路基板に沿わせるようにして前記矩形筒体の開口を外側に向け、前記窪みが前記回路基板から遠位側となるように前記回路基板の側辺部に取り付けられており、
前記収容体の前記収容箱又はカバー板の内側には、前記窪みのコの字状の面に当接し、前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されている
電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車輌に搭載される電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌に搭載される電気接続箱は、バッテリ及び電子機器夫々へ接続されるケーブルとの接続部と、該接続部に接続されるリレー、ヒューズ等の電装部品と、これらを収容する収容体とを備える。雨天走行時又は洗車時等を考慮した電気接続箱の防水構造が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、電装部品が取り付けられる箱状のベースと、電装部品を覆うカバーとを組み付けるように構成する電気接続箱の防水構造が開示されている。特許文献1では特に、ベース部分の側板とカバーの周縁に立設された周板とをいずれも二重構造とし、内側の周板を外側の周板よりも延ばした構造としてベースとカバーとの結合部分からの水の進入を防ぐことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−236654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、収容体の結合部分における防水は勿論、接続されるケーブルの表面を伝う水を考慮した防水も求められている。また電気接続箱を自動車に搭載する場合、走行中の振動に耐え得るように耐振対策も必要である。つまり接続部からの水の進入をより安全に防ぎつつ、更に、耐振性能を向上させることも望まれる。
【0006】
本開示の目的は、防水及び耐振を簡易に実現する電気接続箱のカバー構造及び該カバー構造を含む電気接続箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るカバー構造は、電気接続箱の電装部品が実装される回路基板に取り付けられ、前記電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルに用いられる基体と、前記回路基板を収容する収容体とを含むカバー構造において、前記基体は、前記ケーブルのプラグが嵌入される開口を有する有底筒体部分と、該有底筒体部分の側板の一部に、底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、前記底板の外面における前記水抜き孔の周囲を囲うように立ち上がる壁とを含む形状に絶縁性材料により一体成形され、前記収容体の内側には、前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されており、前記底板の外面の壁の内側には、前記係止棒が当接する。
【0008】
本開示の一態様に係る電気接続箱は、電装部品が実装されており、該電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルが取り付けられている回路基板と、該回路基板を収容する収容体とを備える電気接続箱において、前記レセプタクルの基体は、前記ケーブルのプラグが嵌入される開口を有する有底筒体部分と、該有底筒体部分の側板の一部に、底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、前記底板の外面における前記水抜き孔の周囲を囲うように立ち上がる壁とを含む形状に絶縁性材料により一体成形され、前記壁を回路基板とは反対側に向けて前記回路基板に取り付けられており、前記収容体の内側には、前記壁の内側に当接し、且つ前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されている。
【0009】
なお本願は、このような特徴的なカバー構造及び該カバー構造を含む電気接続箱として実現することができるだけでなく、カバー構造の構成部の一部を部品として実現したり、本開示の電気接続箱に採用されたカバー構造を、他の装置のカバーとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、電気接続箱の防水及び耐振が簡易に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態の電気接続箱の模式分解斜視図である。
【
図5】係止棒が窪みに係合した状態を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の一態様に係るカバー構造は、電気接続箱の電装部品が実装される回路基板に取り付けられ、前記電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルに用いられる基体と、前記回路基板を収容する収容体とを含むカバー構造において、前記基体は、前記ケーブルのプラグが嵌入される開口を有する有底筒体部分と、該有底筒体部分の側板の一部に、底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、前記底板の外面における前記水抜き孔の周囲を囲うように立ち上がる壁とを含む形状に絶縁性材料により一体成形され、前記収容体の内側には、前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されており、前記底板の外面の壁の内側には、前記係止棒が当接する。
【0014】
本開示の一態様にあっては、回路基板の周縁部に開口を外向きに取り付けられるレセプタクルの基体は、防水のために樹脂で一体に成形される。一体成形のため開口に対応する有底筒体部分に水抜き孔を設ける際に、その孔が底板に亘るが、レセプタクルの底板の外面に、その水抜き孔の底板側の開口を囲うようにして立ち上がる壁が設けられており、またその壁に当接しつつ且つ底板に沿って水抜き孔の底板側の開口を塞ぐ係止棒が収容体側に立設されてある。これにより、壁に当接する係止棒によって水抜き孔からの水の進入を防ぐと共に、レセプタクルを介して回路基板と収容体との間のガタツキが抑制されるから、防水及び耐振の性能が向上する。
【0015】
(2)本開示の一態様に係る電気接続箱は、電装部品が実装されており、該電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルが取り付けられている回路基板と、該回路基板を収容する収容体とを備える電気接続箱において、前記レセプタクルの基体は、前記ケーブルのプラグが嵌入される開口を有する有底筒体部分と、該有底筒体部分の側板の一部に、底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、前記底板の外面における前記水抜き孔の周囲を囲うように立ち上がる壁とを含む形状に絶縁性材料により一体成形され、前記壁を回路基板とは反対側に向けて前記回路基板に取り付けられており、前記収容体の内側には、前記壁の内側に当接し、且つ前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されている。
【0016】
本開示の一態様にあっては、(1)に記載したように、係止棒によって水抜き孔からの水の進入を防ぐと共に、レセプタクルを介して回路基板と収容体との間のガタツキが抑制されるから、防水及び耐振の性能が向上する。
【0017】
(3)本開示の一態様に係る電気接続箱は、前記レセプタクルの基体は、前記回路基板の周縁部に、前記底板が前記回路基板に対し略垂直となるように前記開口を外向きにして取り付けられており、前記壁は、前記底板の外面における前記水抜き孔の底板側の開口の周囲を、前記回路基板から遠位側の一部を除いて囲う。
【0018】
本開示の一態様にあっては、底板の外面の回路基板から遠位側に設けられた窪みが、水抜き孔の底板側の開口を囲う壁となり、且つ、収容体に立設された係止棒が当接する壁となる。係止棒が開口を塞ぎつつ、回路基板と収容体との間のガタつきを抑制する。
【0019】
(4)本開示の一態様に係る電気接続箱は、前記有底筒体部分は、複数の扁平な矩形筒体が所定の隙間を隔てて並設されて構成されており、前記レセプタクルは、前記矩形筒体の並設方向を前記回路基板の側辺に沿わせるように取り付けられており、前記水抜き孔は、隣り合う前記矩形筒体の内の一方の側板の、前記隙間に対向する部分に、前記底板に亘るようにして設けられている。
【0020】
本開示の一態様にあっては、ケーブル用の開口に対応する筒体が複数設けられ、その複数の開口に対応する複数の矩形筒体間に隙間が設けられている。そして隣り合う筒体の内の、一方の筒体の側板の前記隙間に対向する一部に、その一方の筒体用の水抜き孔が底板に亘って形成される。つまり一方の矩形筒体の内側と隣り合う矩形筒体間に設けられた隙間部分とが連通する。一方の矩形筒体の開口から進入した水は、側板に形成された孔から排水されて隙間に逃され、他方の矩形筒体へ進入することが防止される。
【0021】
(5)本開示の一態様に係る電気接続箱は、前記係止棒は、前記底板に沿って前記水抜き孔の底板側の孔を覆う覆い板と、該覆い板の前記水抜き孔側と反対面に略直角に設けられ、前記壁の内側に当接するリブ板とを有する。
【0022】
本開示の一態様にあっては、係止棒の水抜き孔を覆う覆い板にはリブを設けてあるために、覆い板に力が掛かった場合に倒れ込むことが防止される。
【0023】
(6)本開示の一態様に係る電気接続箱は、前記収容体は、前記回路基板に対向するようにして前記電装部品を覆うカバー板を有し、前記係止棒は、前記カバー板の両側辺部の略中央に、内向きにコの字の断面をなすように立設されている。
【0024】
本開示の一態様にあっては、係止棒がカバー板の両側辺部に内向きにコの字の断面をなすように形成されている。コの字の縦棒が覆い板に対応し、横棒がリブに対応する。断面がコの字状に形成されることで係止棒が倒れ込むことが防止される。
【0025】
(7)本開示の一態様に係る電気接続箱は、電装部品が実装されており、該電装部品に電気接続されるケーブル用のレセプタクルが取り付けられている矩形状の回路基板と、該回路基板を収容箱及びカバー板の間に収容する収容体とを備える電気接続箱において、前記レセプタクルの基体は、矩形状の底板に、所定の隙間を隔てて長手方向に並設された複数の扁平な矩形筒体と、隣り合う前記矩形筒体の内の一方の側板の、前記隙間に対向する部分に、前記底板に亘るようにして設けられた水抜き孔と、前記底板の外面に形成され、前記水抜き孔の底板側の孔の周囲をコの字状に囲う窪みを前記底板の一長辺側に有する厚底部とを含んで絶縁性材料により一体成形され、前記レセプタクルは、前記底板を前記回路基板に略垂直とし、前記矩形筒体の並設方向を前記回路基板に沿わせるようにして前記矩形筒体の開口を外側に向け、前記窪みが前記回路基板から遠位側となるように前記回路基板の側辺部に取り付けられており、前記収容体の前記収容箱又はカバー板の内側には、前記窪みのコの字状の面に当接し、前記水抜き孔の底板側を覆う係止棒が立設されている。
【0026】
本開示の一態様にあっては、回路基板の周縁部に開口を外向きに取り付けられるレセプタクルの基体は、ケーブル用の開口に対応する筒体を矩形の底板上に複数、隙間を設けて並設して構成されており、隣り合う矩形筒体の内の一方の、その隙間に対向する側板の一部に水抜き孔が設けられる。複数のケーブル用の開口を設ける場合に、一方のケーブルを伝って開口から進入した水は、側板に形成された孔から排水されて複数の筒体間の隙間の部分に逃され、他方の筒体へ侵入することが防止される。またレセプタクルは一体成形されるから、その水抜き孔を設けるためにその孔が底板に亘ることが回避できないが、レセプタクルの底板にその水抜き孔の底板側の開口を囲うようにして立ち上がる壁が設けられており、またその壁に当接しつつ且つ底板に沿って水抜き孔の底板側の開口を塞ぐ係止棒が収容体側に立設されてある。これにより、壁に当接する係止棒によって水抜き孔からの水の進入を防ぐと共に、レセプタクルを介して回路基板と収容体との間のガタツキが抑制されるから、防水及び耐振の性能が向上する。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電気接続箱の収容構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
図1は、本開示の一実施形態の電気接続箱1の模式分解斜視図である。電気接続箱1は、リレー及び電装部品が実装された回路基板11を、収容体12内に収容して構成されている。収容体12は、ロアケース121及びアッパケース122を備える。ロアケース121及びアッパケース122はいずれも樹脂製の一体成型品である。ロアケース121は矩形箱状であって、長辺側の側板は所定長に亘って欠落させてある。
図1には片側の欠落部が示されているが、反対側も同位置が同長に亘って欠落させてある。アッパケース122はロアケース121の底板と対応する大きさのカバー板と、該カバー板の両短辺に沿って厚さ方向両側に張り出す端壁とを備える。回路基板11はロアケース121及びアッパケース122に挟持されて収容される。
【0029】
図2は、回路基板11の斜視図であり、
図3は回路基板11の平面図である。回路基板11には、略矩形状の基板3の長手方向を略2対1の割合で分割した内の狭範囲側に、リレー等の電源関係の電装部品の実装領域32が設定されている。広範囲側には中央部分に、電源制御系の電装部品の実装領域31が設定され、該実装領域31の両側には、基板3の側辺部に沿ってケーブル接続用のレセプタクル4(接続部)が夫々取り付けられている。
【0030】
レセプタクル4は樹脂製の一体成形品である基体40に、後述する接続ピン34を設けて構成される。レセプタクル4の基体40は、矩形状の底板45上に、長手方向に並設された第1筒体部41及び第2筒体部42を含む。第1筒体部41及び第2筒体部42は、扁平な矩形筒体であり、第1筒体部41の方が長手方向の長さが長い。第1筒体部41及び第2筒体部42は、長手方向に隙間を隔てて並設されている。また基体40は、第1筒体部41及び第2筒体部42の並設方向に沿って、隙間を隔てて設けられた取付板43を含む。
【0031】
基体40の第1筒体部41には水抜き孔47が設けられている。水抜き孔47は、第1筒体部41の側板の内、第2筒体部42との隙間に対向する側板の底板45寄りの位置に、底板45に亘るようにして設けられている矩形状の孔である。水抜き孔47は、レセプタクル4を一体成形する際に、底板45側に金型に設けられた凸部によって形成される。底板45に連続する開口48は、型抜きを可能とするために設けてある。第2筒体部42にも、その側板の内、第1筒体部41と対向する部分とは反対側の側板の底板45寄りの位置に、水抜き孔49が底板45に亘るようにして矩形状に設けられている。同様にして底板45に連続する開口50は、型抜きを可能とするために設けてある。
【0032】
またレセプタクル4の基体40の底板45には、外面の略全体に亘って厚底部46が形成してあり、該厚底部46の取付板43から遠位側の長辺に窪み61を設けてある。窪み61の内側は、前記開口48の三方を囲うようにして立ち上がる壁となる。
【0033】
このようなレセプタクル4の基体40は、取付板43を基板3の面上に当接させ、第1筒体部41及び第2筒体部42の開口側を基板3の外側に向けて固定される。なお回路基板11にはレセプタクル4は2つ設けられているが、その形状は互いに鏡映対称の関係にあり、基板3上に同様に取り付けられている。
【0034】
レセプタクル4は、基体40の底板45の厚底部46を貫通するように設けた複数の接続ピン34を更に備える。接続ピン34の一端は、基板3に向けて屈曲されており、基板3上の回路パターンに電気接続されている。接続ピン34の他端は、底板45の底面から第1筒体部41及び第2筒体部42の内部に突出している(図示省略)。これにより回路基板11の2つのレセプタクル4においてケーブルプラグが第1筒体部41の開口と、第2筒体部42の開口とに嵌入されると、ケーブル内の導線群と、回路基板11上の電装部品との間が接続ピン34を介して電気接続される。
【0035】
図4は、アッパケース122を示す模式斜視図である。
図4では、
図1に示されている面と反対側の面が示されている。
図4に示すようにアッパケース122のカバー板の片面には、2本の係止棒20が立設されている。係止棒20は、短冊板状の覆い板と、該覆い板の両長辺から垂直に立ち上がるリブ板とを備え、断面コの字の形状をなす。2本の係止棒20は、コの字の開口側を対向させるようにしてカバー板の両側辺部の略中央に立設されている。覆い板は側辺に沿って外向きに、カバー板に略垂直をなす。なお
図4に示すリブ板は、根元から先端に向けて幅狭となる台形状としているが矩形であってもよい。またリブ板は1つであっても3つ以上であってもよい。
【0036】
このような各部品から電気接続箱1は以下のように構成される。まずロアケース121の底板上に、その側板の欠落部にレセプタクル4を対応させ、実装領域31,32を上向きにして回路基板11を載置する。その上にアッパケース122を、係止棒20が立設されている側の面を回路基板11側に対向させるようにして設置する。係止棒20の位置及び寸法は、回路基板11に取り付けられているレセプタクル4の窪み61に対応するようにしてあり、係止棒20が窪み61に係合する。そしてロアケース121の側板とアッパケース122とを嵌合させ、ロアケース121及びアッパケース122を複数本の止めねじによりねじ止めし、回路基板11を挟んで相互に固定する。なおロアケース121及びアッパケース122の接合部分は適切に防水がなされるように設計されており、また仮に水が進入した場合の排水機構も設けられている。
【0037】
この状態での電気接続箱1における係止棒20とレセプタクル4の底板45の厚底部46における係合状態について詳細に説明する。
図5は、係止棒20が窪み61に係合した状態を示す模式斜視図であり、
図6は
図5中のVI−VI線による断面図である。
図5及び
図6に示すように、係止棒20が窪み61に係合した状態では覆い板の外面が、底板45の水抜き孔47の開口48全体を覆っている。また係止棒20のリブ板部の外面が窪み61の対向面に夫々当接し、係止棒20の先端が窪み61の奥の面に当接する。
【0038】
電気接続箱1は、回路基板11の実装領域31を上側とし、実装領域32を下側として、即ちレセプタクル4における第1筒体部41を上側とし、第2筒体部42を下側として車輌のエンジンルーム等に設置される。電気接続箱1は雨天走行時又は洗車時等、水に晒される可能性がある。電気接続箱1において収容体12におけるロアケース121及びアッパケース122の接合部分は適切に防水及び排水がなされるように設計されているが、ケーブルを伝う水はレセプタクル4内に進入しようとする。しかしながら第1筒体部41の開口へ進入してきた水は、
図2及び
図6中の白抜きの矢符で示すように、下部に位置する水抜き孔47から、第1筒体部41及び第2筒体部42の間の隙間へ逃される。このように水抜き孔47は排水口として機能する。しかも水抜き孔47の底板45側の開口48は、
図5及び
図6で示したように、係止棒20の覆い板により全体が覆われているから、回路基板11の実装領域31側へ水が進入することが回避される。第2筒体部42の開口へ進入してきた水は、
図2及び
図6中の白抜きの矢符で示すように、下部に位置する水抜き孔49から排水され、少なくとも、回路基板11の制御系の電装部品が実装される実装領域31への水の進入を防ぐ。水抜き孔49から排出された水は、収容体12の排水構造によって外部へ逃されるようにしてある。また電源系の電装部品が実装される実装領域32は、更に下部から適切に排水されれば十分に耐えうるように設計されているとよい。このように本開示の電気接続箱1では、レセプタクル4の開口から進入してくる水分を考慮して防水性能が向上している。
【0039】
係止棒20は上述したように、リブ板部の外面が窪み61の対向面に夫々当接し、係止棒20の先端が窪み61の奥の面に当接するから、回路基板11はその長手方向及び厚み方向のいずれにおいても、アッパケース122に対するガタつきが抑制される。収容体12が十分に防振対策を施して車輌内に取り付けられれば、内部に収容される回路基板11は、車輌の走行による振動に晒されたとしても、その振動によってガタつかないので、実装されている電子部品は、振動に耐え得る。
【0040】
このようにして、樹脂の一体成形により形成されるレセプタクル4に水抜き孔47を設けるために形成される底板45側の開口48を、レセプタクル4に設けられた窪み61に嵌入される係止棒20の係止面で塞ぐという簡易な構成で、電気接続箱1の防水及び耐振動の性能をいずれも向上させることができる。
【0041】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 電気接続箱
11 回路基板
12 収容体
121 ロアケース
122 アッパケース
3 基板
31,32 実装領域
34 接続ピン
4 レセプタクル
40 基体
41 第1筒体部
42 第2筒体部
43 取付板
45 底板
46 厚底部
47,49 水抜き孔
48 開口
61 窪み(壁)