(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
核医学診断装置においては、より高解像度の画像を提供することが求められている。この要求を実現するために、アレイ状に配置された複数の受光デバイスを有する放射線検出器が用いられる場合がある。このような構成とすることで、放射線検出器の検出可能領域におけるγ線の入射位置をより精度よく検出することが可能となる。
【0008】
このような構成において、放射線検出器の位置検出精度を向上させるためには、複数の受光デバイスの各々に対して個別の読出回路を設けることがより好ましい。しかしながら、1つの放射線検出器に多数の受光デバイスが二次元のアレイ状に配置される場合(たとえば、100個×100個)には、1つの検出器あたり数千〜数万個の読出回路が必要となり、さらにPET装置全体では、その数倍〜数十倍の読出回路が必要となる。そうすると、装置規模および装置コストが大幅に増加することが懸念される。
【0009】
このような課題に対して、非特許文献1においては、マルチプレクサ回路を用いて、1つの読出回路に対して複数のSiPMの出力信号を電気的に並列接続するとともに、各出力信号の重心演算を行なうことによって、少ない読出回路を用いて検出可能領域におけるγ線の入射位置を求める手法が提案されている。
【0010】
ここで、受光デバイスとしてSiPMが用いられる場合、SiPM自身が有する寄生容量と信号処理回路の入力インピーダンスとによってローパスフィルタが形成されるため、受光信号の高周波成分が劣化する場合が生じ得る。特に、SiPMの並列接続数が多くなると、受光信号の高周波成分の劣化度合いがより大きくなってしまうため、受光信号の立上りが検出しにくくなる。そのため、γ線の入射タイミングの検出特性(以下、「タイミング特性」とも称する。)が低下するおそれがある。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、核医学診断装置に用いられる放射線検出装置において、検出信号のタイミング特性の低下を抑制しつつ、位置検出精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による放射線検出装置は、核医学診断装置に用いられる。放射線検出装置は、複数のシンチレータと、半導体受光デバイスと、位置検出回路と、タイミング検出回路とを備える。シンチレータは、被検体から照射されるγ線を蛍光に変換する。半導体受光デバイスは、複数のシンチレータの各々に対応して設けられ、対応するシンチレータで変換された蛍光を電気信号に変換する。位置検出回路は、半導体受光デバイスのアノードからの電気信号に基づいて、複数のシンチレータにおけるγ線の検出位置を特定する。タイミング検出回路は、半導体受光デバイスのアノードに接続され、γ線が検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を特定する。
【0013】
このように、γ線の受光位置の特定、およびγ線の検出タイミングの特定が、半導体受光デバイスのアノードからの同じ電気信号を用いて行なうことができる。そのため、当該アノードからの電気信号を調整することで、位置検出および時間検出の双方の特性に同様の傾向の変化をもたらすことができる。したがって、位置検出精度の向上と時間検出精度の向上とを両立することが可能となる。
【0014】
好ましくは、複数のシンチレータはアレイ状に配置される。位置検出回路は、アレイの行についての電気信号の第1の荷重加算信号と、アレイの列についての電気信号の第2の荷重加算信号とに基づいて、アレイにおけるγ線の検出位置を特定する。
【0015】
このように、アレイ状に配列された複数のシンチレータの、各行および各列ごとにまとめられた信号に基づいてγ線の検出位置を特定することができる。したがって、位置検出回路において、位置検出を行なうための用いられる信号数を、シンチレータの数(すなわち、半導体受光デバイスの数)よりも少なくすることができ、装置規模および装置コストの増大を抑制することができる。
【0016】
好ましくは、放射線検出装置は、電源電圧と、上記の第1および第2の荷重加算信号を生成する重心演算回路をさらに備える。半導体受光デバイスは、電源電圧と重心演算回路との間に複数個並列に接続される。半導体受光デバイスのカソードは電源電圧に接続され、アノードは重心演算回路に接続される。タイミング検出回路は、複数個の半導体受光デバイスのいずれかからの信号が検出された場合に、γ線が検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を特定する。
【0017】
このような構成とすることによって、並列に接続された複数個の半導体受光デバイスのいずれかにγ線が照射された場合に、タイミング検出回路によって適切にγ線を検出することができる。
【0018】
好ましくは、タイミング検出回路と各半導体受光デバイスのアノードとの間に接続されたキャパシタをさらに備える。
【0019】
このように、キャパシタを介して半導体受光デバイスのアノードにタイミング検出回路が接続されることによって、タイミング検出回路で半導体受光デバイスの電気信号の高周波成分(すなわち応答速度の速い成分)を検出することができる。そのため、γ線の時間検出精度を向上させることができる。
【0020】
好ましくは、キャパシタの容量は、重心演算回路に並列接続される半導体受光デバイスの数に応じて決定される。
【0021】
半導体受光デバイスが並列接続されると、その寄生容量成分とタイミング検出回路に接続されるキャパシタとによってローパスフィルタが形成される。形成されたローパスフィルタは、タイミング検出回路で検出される電気信号の高周波成分を減衰させてしまい、時間検出精度の低下を招くおそれがある。そのため、タイミング検出回路に接続されるキャパシタの容量を、並列接続される半導体受光デバイスの数に応じて適切に設定することで、時間検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0022】
好ましくは、重心演算回路に並列接続される半導体受光デバイスの数は、タイミング検出回路に要求される検出精度に応じて決定される。
【0023】
上述のように、半導体受光デバイスが並列接続されると、その寄生容量成分によって形成されるローパスフィルタのために、タイミング検出回路における時間検出精度が影響を受ける。そのため、タイミング検出回路で必要とされる検出精度に応じて、並列接続される半導体受光デバイスの数を決定することによって、所望の時間検出精度を確保することができる。
【0024】
本発明による核医学診断装置は、上記のいずれかに記載の放射線検出装置を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、核医学診断装置に用いられる放射線検出装置において、検出信号のタイミング特性の低下を抑制するとともに、位置検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0029】
図1は、本実施の形態に従う核医学診断装置の全体概略図である。
図1においては、核医学診断装置がPET装置100である場合の例が示されているが、核医学診断装置はこれに限られず、いわゆる放射線検出器が用いられる装置であれば、たとえばSPECT装置のような他の装置であってもよい。なお、本実施の形態においては、放射線としてγ線の場合を例として説明する。
【0030】
図1を参照して、PET装置100は、架台装置10と、制御装置200と、表示装置260と、操作部270とを備える。なお、
図1の(a)は架台装置10の正面図であり、(b)は架台装置10の側面図である。
【0031】
架台装置10は、被検体15を載置するための天板20と、天板20を移動させる移動装置22と、開口部を有する略円筒形状のガントリ30と、ガントリ30内に配置された検出器リング40とを含む。
【0032】
制御装置200は、データ収集部210と、制御部220と、駆動部230とを含む。制御部220は、たとえばCPU(中央演算処理装置)およびメモリなどの記憶装置を含んで構成される。また、データ収集部210および駆動部230は、マイクロプロセッサまたはFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されてもよいし、制御部220のCPUの一部の構成であってもよい。
【0033】
被検体15は、天板20に設けられたクッション24上に載置される。天板20は、ガントリ30と検出器リング40の開口部を、図中の矢印ARで示されるZ方向に貫通するように設けられており、Z方向に沿って往復可能である。移動装置22は、駆動部230からの駆動信号によって制御され、天板20の高さを調整するとともに、天板20をZ方向に沿って移動させて、天板20上に載置された被検体15をガントリ30の開口部内へと導入する。
【0034】
検出器リング40は、複数の放射線検出器42をZ方向に垂直な平面上に放射状に配置することで形成された単位リングを、Z方向に複数個配列することによって構成されている。
【0035】
放射線検出器42(以下、「γ線検出器42」とも称する。)は、
図2に示すように、アレイ状の複数のシンチレータからなるシンチレータブロック44と、受光センサ45とを含んで構成される。シンチレータブロック44の各シンチレータは、被検体15に投与された陽電子放出核種を含んだ放射性薬剤(放射性トレーサ)50(たとえば、フルオロデオキシグルコース(FDG))から放射される放射線(γ線)52を紫外線領域にピークを持つ蛍光に変換する。受光センサ45には、各シンチレータに対応して受光デバイスが設けられており、各受光デバイスは、対応するシンチレータで変換された光電子を増倍して電気信号に変換する。本実施の形態においては、受光デバイスとして、アバランシェフォトダイオード(AMD)が半導体アレイとして用いられたシリコンフォトマルチプライヤ(SiPM)が用いられる。γ線検出器42は、生成した電気信号を、
図1の制御装置200内のデータ収集部210に出力する。
【0036】
データ収集部210は、γ線検出器42から受けた信号を処理して、制御部220へ出力する。制御部220は、データ収集部210からの受信信号に基づいて、検出したγ線の線量分布を画像化し、当該画像を表示装置260に表示する。
【0037】
操作部270は、たとえばキーボード、タッチパネル、マウス(いずれも図示せず)などのようなポインティングデバイスを含んで構成される。操作部270は、架台装置10の移動装置22を動作させるための指示、ならびに撮像の開始/停止などの指示を操作者から受ける。操作部270は、操作者の操作に従った信号を制御部220へ出力する。制御部220は、操作部270からの信号に応じて駆動部230を制御して、移動装置22を駆動する。
【0038】
なお、本実施の形態においては、γ線検出器42とデータ収集部210とを含んだ構成を「放射線検出装置」と称する。
【0039】
図3は、
図1におけるデータ収集部210の詳細を説明するための機能ブロック図である。
図3を参照して、データ収集部210は、検出器リング40を構成する各γ線検出器42に対応して設けられるFE(Front End)回路212と、同時計数回路218とを含む。各FE回路212は、波形整形回路213と、位置検出回路214と、エネルギ検出回路215と、タイミング検出回路216とを含む。
【0040】
波形整形回路213は、γ線検出器42で生成された電気信号を受け、当該電気信号のアナログ波形データの波形整形処理を行なう。具体的には、波形整形回路213は、
図4(a)に示すようなγ線検出器42からのアナログ波形データに対して、積分処理および微分処理等の演算処理を実行し、
図4(b)に示すような、波高値がエネルギを示すデータを生成する。波形整形回路213は、生成したデータを位置検出回路214、エネルギ検出回路215に出力する。
【0041】
位置検出回路214は、波形整形回路213で生成されたデータを受け、シンチレータブロック44におけるどのシンチレータでγ線が検出されたかを判定する。具体的には、波形整形回路213で生成されたデータの重心位置を演算することで、γ線を検出したシンチレータの位置を特定する。位置検出回路214は、特定したシンチレータ位置を示すデータを同時計数回路218へ出力する。
【0042】
エネルギ検出回路215は、波形整形回路213で生成されたデータを受け、エネルギを検出する。エネルギ検出回路215は、検出したエネルギを示すデータを同時計数回路218へ出力する。
【0043】
タイミング検出回路216は、
図4(a)に示されるγ線検出器42からのアナログ波形データから、γ線が検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報、すなわちγ線の検出時間(入射タイミング)を検出する。たとえば、
図4(a)に示されるアナログ波形データの値が、所定のしきい値を超えた時点を、γ線の検出時間として特定する。タイミング検出回路216は、特定された検出時間のデータを同時計数回路218へ出力する。
【0044】
同時計数回路218は、各FE回路212からのデータを受け、陽電子から放出された対消滅γ線の入射方向を決定するための同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数回路218は、複数のFE回路212からのデータに基づいて、γ線の入射タイミング(検出時間)が所定の時間ウィンドウ幅以内にあり、かつ、受光信号のエネルギがともに一定のエネルギウィンドウ幅以内にあるγ線検出器の組合せを検索する。そして、同時計数回路218は、検索したγ線検出器の組合せが、1つの陽電子から放射された2つの消滅フォトンを同時検出したγ線検出器であるとして特定する。すなわち、特定された2つのγ線検出器を結ぶ直線上に、γ線を放出している放射性トレーサ50が存在することを意味している。
【0045】
さらに、同時計数回路218は、タイミング検出回路216からのデータに基づいて、当該放射性トレーサ50からの2つの消滅フォトンの検出時間差(すなわち、γ線検出器から放射性トレーサまでの距離:TOF)を演算し、上記の2つのγ線検出器を結ぶ直線上における放射性トレーサ50の位置を特定する。同時計数回路218は、特定されたγ線検出器の位置および放射性トレーサ50の位置に関するデータを制御部220へ出力する。
【0046】
制御部220においては、同時計数回路218から受けたデータを再構成することによって被検体15の画像が生成され、当該画像が表示装置260に表示される。医師等の診断者は、表示された被検体15の画像を用いて核医学診断を実行する。
【0047】
このような構成を有するPET装置においては、正確な診断を行なうために、より高解像度の画像を提供することが求められる。解像度を向上させるためには、(1)各γ線検出器におけるγ線の入射位置検出精度の向上、および(2)2つのγ線検出器におけるγ線の検出時間差の検出精度(時間分解能)の向上が必要となる。
【0048】
各γ線検出器における入射位置の検出精度を向上させるには、各受光デバイス(SiPM)に対して個別の信号処理回路を1:1で設けることが好ましい。しかしながら、1つのγ線検出器に多数の受光デバイスが二次元のアレイ状に配置される場合には、受光デバイスと同じ数の信号処理回路が必要となり、結果として、PET装置全体においては数万〜数十万個もの信号処理回路が必要となり得る。そうすると、装置規模が膨大になるとともに、装置コストも増加してしまう。
【0049】
このような状況に対応するために、各γ線検出器において、マルチプレクサ回路を用いて複数の受光デバイスを並列接続し、当該複数の受光デバイスに対して1つの信号処理回路を設けることによって、装置全体の信号処理回路を削減する構成が提案されている。
【0050】
図5は、比較例の放射線検出装置300Aにおける信号処理回路を説明するための図である。
図5を参照して、当該比較例における信号処理回路においては、バイアス電圧BIASと、抵抗RLと、受光デバイスである複数のSiPMと、重心演算回路60と、キャパシタCfとを含む。
【0051】
複数のSiPMは、アレイ状に配置された複数のシンチレータ(
図2)に対応して設けられ、
図6に示されるようにアレイ状に配置される。
図6の例においては、16個のSiPMが4×4のアレイとして配置される場合が示されている。
【0052】
抵抗RLの一方端はバイアス電圧BIASに接続され、他方端は複数のSiPMの各々のカソードに接続される。各SiPMのアノードは、重心演算回路60に個別に接続される。
【0053】
また、抵抗RLの一方端(SiPMのカソード)は、キャパシタCfを介してFE回路212のタイミング検出回路216にも接続される。当該キャパシタCfによって、SiPMのアノード(すなわち、ノードND)の電圧変化の高周波成分のみがタイミング検出回路216へと伝達される。
【0054】
γ線検出器42にγ線が入射し、複数のSiPMのうちのいずれかによって検出されると、γ線を検出したSiPMに電流が流れることによって、ノードNDの電圧が
図4(a)のようにインパルス状に低下する。この電圧の低下量が所定量より大きくなると、タイミング検出回路216へ信号が出力される。これによって、タイミング検出回路216において、γ線の検出時間が特定される。
【0055】
重心演算回路60は、アレイ状に配置された複数のSiPMのうちのどのSiPMにおいてγ線が検出されたかを判定するための信号を生成する回路である。具体的には、
図6に示されるように、アレイ状に配列されたSiPMの各行の並列信号が、それぞれ抵抗R1〜R4によって荷重加算されて、位置検出信号Xa,Xbが生成される。同様に、SiPMの各列の並列信号がそれぞれ抵抗R1〜R4によって荷重加算されて、位置検出信号Ya,Ybが生成される。生成された位置検出信号は、FE回路212の波形整形回路213へ出力される。
【0056】
たとえば抵抗値をR1<R2<R3<R4に設定した場合には、位置検出信号Xaでは、1行目のSiPMでγ線が検出されたときの振幅が最も大きくなり、4行目のSiPMでγ線が検出されたときの振幅がもっとも小さくなる。すなわち、位置検出信号Xaの振幅によって、どの行のSiPMにおいてγ線が検出されたかを特定することができる。同様に、位置検出信号Yaの振幅によって、どの列のSiPMにおいてγ線が検出されたかを特定することができる。したがって、位置検出信号Xaと位置検出信号Yaとを用いることによって、アレイ状に配列されたSiPMのうちのどのSiPMでγ線が検出されたかを特定することができる(位置検出回路214)。
【0057】
なお、位置検出信号Xb,Ybは、各行および各列について、それぞれ位置検出信号Xa,Yaとは逆の順番で抵抗が接続される。そのため、位置検出信号Xb,Ybは、それぞれ位置検出信号Xa,Yaとは振幅の大きさの傾向が逆になる。たとえば位置検出信号Xbにおいては、1列目のSiPMでγ線が検出されたときの振幅が最も小さくなり、4行目のSiPMでγ線が検出されたときの振幅が最も大きくなる。このような、逆傾向の位置検出信号を用いることで、たとえば信号全体にオフセットが生じたような場合であっても、γ線が検出されたSiPMを正しく特定することができる。
【0058】
ここで、
図5に示した比較例の信号処理回路において、γ線の検出時間の検出精度を向上するためには、ノードNDの電圧変動を大きくすることが必要となるため、バイアス電圧BIASに接続されている抵抗RLを大きくすることが必要となる。しかしながら、この場合には、SiPMによるγ線の検出が終了した後に、キャパシタCfを充電するまでに時間がかかるため、重心演算回路60における位置検出信号のレスポンスが鈍くなる。そうすると、位置検出精度が低下する可能性がある。
【0059】
一方で、位置検出精度を向上させるために抵抗RLを小さくすると、逆にノードNDにおける電圧降下量が小さくなるために、γ線の検出時間精度(時間分解能)が低下してしまう。すなわち、
図5に記載した信号処理回路においては、位置検出精度と時間分解能とがトレードオフの関係となってしまい、両者の精度を共に向上させることが困難となる。
【0060】
この比較例の信号処理を用いた場合の、4×4のSiPMアレイによるγ線の位置検出マップの例を
図7に示す。
図7においては、16個のSiPMは区別できるものの、
図8に示すような理想的な位置検出マップと比較すると、大きく歪んだマップとなっている。
【0061】
また、比較例において重心演算回路60から出力される位置検出信号Xa,Xb,Ya,Ybの一例を
図9に示す。
図9からわかるように、比較例の信号処理回路を用いた場合には、一部の位置検出信号(
図9中のL2(Xb),L4(Yb))において、負の電圧値の振幅となっている。そのため、位置検出回路214における検出位置の特定が正しくできなくなっている。
【0062】
本実施の形態においては、このような課題を解決するために、γ線の検出時間を特定するためのタイミング信号を各SiPMのアノード側から読出し、
図5の信号処理回路における抵抗RLを用いない構成を採用する。このような構成とすることによって、抵抗RLに起因する位置検出信号の応答性の低下、およびタイミング信号のレベル低下を防止することができるので、位置検出精度および時間分解能の双方を向上することができる。
【0063】
図10は、本実施の形態に従う放射線検出装置300の信号処理回路を説明するための図である。
図10を参照して、当該信号処理回路においては、複数のSiPMのカソードが、抵抗を介することなく共にバイアス電圧BIASに接続されており、各SiPMのアノードは、重心演算回路60に個別に接続されている。また、各SiPMのアノードは、キャパシタCfを介して並列に接続され、さらにFE回路212のタイミング検出回路216に接続される。
【0064】
このように、バイアス電圧BIASに接続される抵抗成分(バイアス抵抗)がないため、重心演算回路60における位置検出信号の応答性の低下を抑制することができる。また、SiPMのアノード側からタイミング信号を取得するため、バイアス抵抗がなくても、γ線の検出時と被検出時との間の電圧差を十分に確保できるので、タイミング信号のレベル低下を抑制できる。これによって、位置検出精度および検出時間精度(時間分解能)を向上することができる。
【0065】
なお、このとき、SiPMの寄生容量成分によりタイミング信号の読出回路(FE回路212)のインピーダンスが高くなると、ローパスフィルタが形成されてしまうため、タイミング信号の高周波成分がカットされて信号の劣化が生じる可能性がある。そのため、タイミング信号の検出回路については、入力インピーダンスができるだけ低くなる構成とすることが望ましい。
【0066】
また、キャパシタCfの容量についても、SiPMの寄生容量成分に応じて決定することが好ましい。言い換えると、重心演算回路に並列接続されるSiPMの数に応じて、キャパシタCfの容量を決定することが望ましい。
【0067】
あるいは、所定のキャパシタCfの容量に対して、許容されるタイミング信号の劣化状態(すなわち、タイミング検出回路に要求される検出精度)に応じて、並列接続されるSiPMの数を決定してもよい。
【0068】
本実施の形態に従う放射線検出装置を用いた場合の、重心演算回路60から出力される位置検出信号Xa,Xb,Ya,Ybの一例を
図11に示す。
図11においては、比較例の
図9とは異なり、すべての位置検出信号Xa,Xb,Ya,Ybの振幅が正の電圧値となっている。そのため、本実施の形態の信号処理回路を用いることで、比較例の
図7のような位置検出マップの歪みを低減することが可能となる。
図12は、本実施の形態に従う放射線検出装置を用いた場合の、4×4のSiPMアレイによるγ線の位置検出マップの例を示す図である。
図12の位置検出マップは、比較例で示した
図7の位置検出マップに比べると歪みが低減されており、
図8に示した理想的な位置検出マップにより近いマップとなっている。
図12からわかるように、本実施の形態に従う放射線検出装置を用いた場合には、格子状に配置されたSiPMの位置関係を正しく認識することができる。
また、
図13は、さらにSiPMの数を多くした場合の位置検出マップの例であり、
図13では12×12の合計144個のSiPMが用いられている。
図13においても、若干の歪みはあるものの、格子状に配列されたSiPMの位置を全体として正しく把握することが可能となっている。
以上のように、本実施の形態に従う放射線検出装置を用いることにより、核医学診断装置において、被検体から放出される放射線の位置検出精度および時間分解能を高めることが可能となる。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。