特許第6825708号(P6825708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825708
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】フレーム式原子吸光分光光度計
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/31 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   G01N21/31 610B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-529333(P2019-529333)
(86)(22)【出願日】2017年7月10日
(86)【国際出願番号】JP2017025138
(87)【国際公開番号】WO2019012580
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2019年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】小林 央祐
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−114285(JP,U)
【文献】 特開2011−227054(JP,A)
【文献】 特開平09−304270(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/098661(WO,A1)
【文献】 特開平02−176447(JP,A)
【文献】 特開平01−244340(JP,A)
【文献】 特開平06−018285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/74
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び助燃ガスの混合ガスをバーナで燃焼させてフレームを形成し、当該フレーム中に試料を噴霧することにより試料を原子化する原子化部と、
前記フレーム中に測定光を照射する光源と、
前記フレーム中を通過した測定光を検出する検出器と、
前記バーナを手動で回転させて、測定光の光路に対する前記バーナの角度を変化させる手動回転機構と、
前記バーナの回転位置を離散的に検出する回転位置検出部と
既知試料を測定することにより得られた検量線データに対応付けて、当該検量線データが得られたときの前記バーナの回転位置が装置条件として記憶される記憶部とを備えることを特徴とするフレーム式原子吸光分光光度計。
【請求項2】
未知試料を測定することにより得られた測定データと、その測定時と同じ装置条件で得られた前記検量線データとに基づいて、試料の濃度を算出する試料濃度算出部をさらに備え、
前記記憶部には、前記試料濃度算出部により算出された試料の濃度、及び、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データに対応付けて、当該検量線データが得られたときの前記バーナの回転位置が装置条件として記憶されることを特徴とする請求項に記載のフレーム式原子吸光分光光度計。
【請求項3】
前記試料濃度算出部により算出された試料の濃度、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データ、及び、当該検量線データが得られたときの前記バーナの回転位置を含む装置条件を、レポートデータとして出力するデータ出力部をさらに備えることを特徴とする請求項に記載のフレーム式原子吸光分光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス及び助燃ガスの混合ガスをバーナで燃焼させてフレームを形成し、当該フレーム中に試料を噴霧することにより原子化された試料の原子吸光を測定するためのフレーム式原子吸光分光光度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子吸光分光光度計の一例として、フレーム式の原子吸光分光光度計が知られている。この種の原子吸光分光光度計では、燃料ガス及び助燃ガスの混合ガスをバーナで燃焼させることにより、フレーム(炎)が形成される。そして、このフレーム中に試料を噴霧して、試料を原子化させることにより、原子化された試料の原子吸光を測定することができる。
【0003】
原子吸光測定の際には、試料の濃度と吸光度との関係を表す検量線が用いられる。検量線は、試料の濃度が低い範囲では直線性が高いが、試料の濃度が高い範囲では直線性が低く、測定精度が低下するという特性がある。そのため、試料の濃度が高い場合には、バーナの角度を調整することにより、吸光感度を低下させることが一般的に行われている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−11484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにバーナの角度を調整して感度調整を行う場合、測定結果のトレーサビリティの観点から、測定結果とバーナの角度とを対応付けて記憶しておくことが望ましい。上記特許文献1のように、バーナの角度をモータで調整するような構成の場合には、モータの回転角からバーナの角度を容易に得ることができるため、そのバーナの角度を測定結果に対応付けて記憶させることができる。
【0006】
しかしながら、バーナの角度をモータで調整するような構成では、機構が複雑であり、モータの故障などが生じるおそれがある。また、バーナは、使用する助燃ガスの種類に応じて交換する必要があるが、モータなどの駆動機構があることにより交換作業が煩雑になる。そこで、バーナの角度を手動で調整することが考えられるが、この場合には、モータの回転角からバーナの角度を得ることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、手動でバーナの角度を調整でき、かつ、バーナの回転位置を容易に得ることができるフレーム式原子吸光分光光度計を提供することを目的とする。また、本発明は、手動でバーナの角度を調整する構成を採用しつつ、測定結果のトレーサビリティを確保することができるフレーム式原子吸光分光光度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るフレーム式原子吸光分光光度計は、原子化部と、光源と、検出器と、手動回転機構と、回転位置検出部とを備える。前記原子化部は、燃料ガス及び助燃ガスの混合ガスをバーナで燃焼させてフレームを形成し、当該フレーム中に試料を噴霧することにより試料を原子化する。前記光源は、前記フレーム中に測定光を照射する。前記検出器は、前記フレーム中を通過した測定光を検出する。前記手動回転機構は、前記バーナを手動で回転させて、測定光の光路に対する前記バーナの角度を変化させる。前記回転位置検出部は、前記バーナの回転位置を検出する。
【0009】
このような構成によれば、手動回転機構により手動でバーナの角度を調整することができる。また、バーナの回転位置を回転位置検出部で検出することができるため、バーナの回転位置を容易に得ることができる。さらに、回転位置検出部で検出したバーナの回転位置と測定結果との関係を対応付けることが可能となるため、測定結果のトレーサビリティを確保することができる。
【0010】
(2)前記回転位置検出部は、前記バーナの回転位置を離散的に検出してもよい。
【0011】
このような構成によれば、バーナの回転位置を離散的に検出し、各回転位置と測定結果との関係を対応付けることができる。したがって、回転位置検出部により検出される各回転位置における測定結果のトレーサビリティを確保することができる。
【0012】
(3)前記回転位置検出部は、前記バーナの回転位置を連続的に検出してもよい。
【0013】
このような構成によれば、バーナの回転位置を連続的に検出し、連続する各回転位置と測定結果との関係を対応付けることができる。したがって、測定結果のトレーサビリティをより向上することができる。
【0014】
(4)前記フレーム式原子吸光分光光度計は、前記回転位置検出部により検出される前記バーナの回転位置を装置条件として記憶する記憶部をさらに備えていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、バーナの回転位置が装置条件として記憶部に記憶されるため、測定結果を確認する際に、装置条件の一部としてバーナの回転位置を記憶部から読み出して確認することができる。したがって、測定結果のトレーサビリティをより向上することができる。
【0016】
(5)前記記憶部には、既知試料を測定することにより得られた検量線データに対応付けて、当該検量線データが得られたときの前記バーナの回転位置が装置条件として記憶されてもよい。
【0017】
このような構成によれば、検量線データが得られたときのバーナの回転位置を、装置条件の一部として記憶部から読み出して確認することができるため、測定結果のトレーサビリティをより向上することができる。
【0018】
(6)前記フレーム式原子吸光分光光度計は、試料濃度算出部をさらに備えていてもよい。前記試料濃度算出部は、未知試料を測定することにより得られた測定データと、その測定時と同じ装置条件で得られた前記検量線データとに基づいて、試料の濃度を算出する。この場合、前記記憶部には、前記試料濃度算出部により算出された試料の濃度、及び、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データに対応付けて、当該検量線データが得られたときの前記バーナの回転位置が装置条件として記憶されてもよい。
【0019】
このような構成によれば、未知試料の測定データと検量線データとに基づいて算出された試料の濃度を測定結果として確認する際に、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データが得られたときのバーナの回転位置を、装置条件の一部として記憶部から読み出して確認することができる。
【0020】
(7)前記フレーム式原子吸光分光光度計は、データ出力部をさらに備えていてもよい。前記データ出力部は、前記試料濃度算出部により算出された試料の濃度、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データ、及び、当該検量線データが得られたときの前記バーナの回転位置を含む装置条件を、レポートデータとして出力する。
【0021】
このような構成によれば、未知試料の測定データと検量線データとに基づいて算出された試料の濃度を測定結果としてレポートデータで確認する際に、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データと、当該検量線データが得られたときのバーナの回転位置を、装置条件の一部として確認することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、手動回転機構により手動でバーナの角度を調整することができ、かつ、回転位置検出部によりバーナの回転位置を容易に得ることができる。また、本発明によれば、回転位置検出部で検出したバーナの回転位置と測定結果との関係を対応付けることが可能となるため、測定結果のトレーサビリティを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る原子吸光分光光度計の構成例を示した概略図である。
図2】原子化部の具体的構成を示した斜視図である。
図3A】バーナの回転機構について説明するための平面図であり、バーナの吹出口が測定光の光路に沿った状態を示している。
図3B】バーナの回転機構について説明するための平面図であり、バーナの吹出口が測定光の光路に対して直交する状態を示している。
図4】制御部の具体的構成を示したブロック図である。
図5】データ出力部により出力されるレポートデータの具体例を示した図である。
図6A】バーナの回転機構の変形例について説明するための平面図であり、バーナの吹出口が測定光の光路に沿った状態を示している。
図6B】バーナの回転機構の変形例について説明するための平面図であり、バーナの吹出口が測定光の光路Pに対して直交する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.原子吸光分光光度計の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る原子吸光分光光度計1の構成例を示した概略図である。この原子吸光分光光度計1は、燃料ガス及び助燃ガスの混合ガスを燃焼させることによりフレーム2を形成し、そのフレーム2中に試料を噴霧することにより原子化された試料の原子吸光を測定するためのフレーム式原子吸光分光光度計である。
【0025】
原子吸光分光光度計1には、光源11、原子化部12、検出器13、測光部14、制御部15、表示部16及び操作部17などが備えられている。図1において、実線の矢印は信号の流れを表しており、破線の矢印は測定光の流れを表している。
【0026】
光源11は、例えばホロカソードランプにより構成されている。光源11から出射される光は、輝線スペクトルを含む測定光であり、フレーム2に照射される。フレーム2に照射された測定光は、フレーム2中に含まれる原子化された試料の成分により特定の波長が吸収される。このようにして特定の波長が吸収された測定光は、フレーム2を通過した後、検出器13により検出される。
【0027】
原子化部12には、燃料ガス、助燃ガス及び試料が供給される。燃料ガスとしては、例えばアセチレンガス(C)を用いることができる。また、助燃ガスとしては、例えば空気又は亜酸化窒素ガス(NO)を用いることができる。ただし、燃料ガス及び助燃ガスは、上記のようなガスに限られるものではない。
【0028】
原子化部12では、燃料ガス及び助燃ガスが混合されることにより混合ガスが生成され、その混合ガスが燃焼されることにより、分析中は連続的にフレーム2が形成された状態となる。また、試料は霧化された上で混合ガスに混合され、混合ガスとともにフレーム2中に供給される。これにより、フレーム2中に試料が噴霧され、フレーム2の熱によって試料が原子化される。
【0029】
検出器13は、例えば光電子増倍管により構成されている。フレーム2中を通過した測定光は検出器13により検出され、光電変換によって光強度に応じた電気信号が検出器13から出力される。測光部14は、検出器13からの出力信号を増幅するとともに、A/D変換によりデジタル信号に変換する。
【0030】
制御部15は、検出器13から測光部14を介して入力される信号に基づいて、試料中の成分の濃度を演算する処理を行う。具体的には、試料中の成分により特定の波長が吸収されるため、試料中の成分の濃度と吸光度との関係を表す検量線を用いて演算を行うことにより、試料中の成分の濃度を算出することができる。
【0031】
制御部15には、表示部16及び操作部17が接続されている。表示部16は、例えば液晶表示器により構成されており、原子吸光分光光度計1による試料の測定結果などが表示される。操作部17は、例えばキーボード及びマウスにより構成されており、分析時の装置の条件(装置条件)を設定する際などにユーザにより操作される。
【0032】
2.原子化部の具体的構成
図2は、原子化部12の具体的構成を示した斜視図である。原子化部12には、燃料ガス及び助燃ガスの混合ガスを燃焼させるためのバーナ121が備えられている。バーナ121は、例えば直方体などの長尺形状で形成されており、その長尺方向が水平に延びるように配置されている。
【0033】
バーナ121の上面には、長手方向に一直線上に延びる吹出口122が形成されている。分析時には、吹出口122から燃料ガス及び助燃ガスの混合ガスが連続的に吹き出されて燃焼される。これにより、吹出口122の上方には、当該吹出口122に沿って一直線上に延びるフレームが形成される。
【0034】
バーナ121の下面には、鉛直方向に延びる回転軸123が設けられている。バーナ121は、回転軸123を中心に水平面内で回転自在となっている。したがって、回転軸123を中心にバーナ121を回転させることにより、吹出口122の角度を手動で調整することができる。
【0035】
図2の状態では、光源11からの測定光の光路Pに沿って吹出口122が延びている。この状態では、光源11からの測定光が、吹出口122の上方に形成されるフレーム中を一端から他端まで通過する。そのため、フレーム中の原子化された試料の成分による測定光の吸光度が高くなる。
【0036】
検量線は、試料中の成分の濃度と吸光度との関係を表しており、濃度が高いほど吸光度が高くなるような直線で表される。しかし、試料中の成分の濃度が比較的高い領域では、検量線の直線性が悪くなり、分析の精度が低下してしまう。そこで、試料中の成分の濃度が高い場合には、バーナ121を回転させてフレームの角度を変化させ、測定光がフレーム中を通過する距離を短くする。これにより、吸光度が下がり、検量線における直線性が高い部分を用いて試料中の成分の濃度を算出することができるため、分析の精度が向上する。
【0037】
3.バーナの回転機構
図3A及び図3Bは、バーナ121の回転機構について説明するための平面図である。図3Aは、バーナ121の吹出口122が測定光の光路Pに沿った状態を示している。一方、図3Bは、バーナ121の吹出口122が測定光の光路Pに対して直交する状態を示している。
【0038】
バーナ121には、把持部124が設けられている。ユーザは、把持部124を把持して力を加えることにより、回転軸123を中心にバーナ121を回転させることができる。すなわち、回転軸123及び把持部124は、バーナ121を手動で回転させるための手動回転機構を構成している。この手動回転機構により、測定光の光路Pに対するバーナ121の角度を手動で変化させることができる。なお、図2では、把持部124を省略して示している。
【0039】
また、原子化部12には、バーナ121の回転位置を検出する回転位置検出部125が設けられている。この例では、回転位置検出部125には、光学センサ125A及び遮光部125Bが含まれる。光学センサ125Aは、例えば発光部及び受光部(いずれも図示せず)を備えており、発光部からの光を受光部で受光するか否かに基づいて、バーナ121の回転位置を検出することができる。
【0040】
遮光部125Bは、バーナ121に設けられており、バーナ121の回転に伴って回転軸123を中心に回転移動する。光学センサ125Aは、バーナ121の回転に伴い移動する遮光部125Bの軌道上に複数設けられている。具体的には、回転軸123を中心にして、周方向に等間隔で複数の光学センサ125Aが配置されている。
【0041】
これにより、バーナ121の回転位置に応じて、いずれかの光学センサ125における発光部からの光が遮光部125Bにより遮られ、その発光部からの光が受光部で受光されない状態となる。したがって、各光学センサ125Aにおける受光量に基づいて、バーナ121の回転位置を離散的(断続的)に検出することができる。なお、図2では、回転位置検出部125を省略して示している。
【0042】
ただし、離散的に検出を行う回転位置検出部125は、光学センサに限らず、例えば静電容量センサや、リミットスイッチなどの接触式センサのように、他の各種センサにより構成されてもよい。
【0043】
4.制御部の具体的構成
図4は、制御部15の具体的構成を示したブロック図である。制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部15は、CPUがプログラムを実行することにより、記憶処理部151、検量線生成部152、試料濃度算出部153及びデータ出力部154などとして機能する。制御部15は、例えばハードディスク又はRAM(Random Access Memory)により構成される記憶部18に対して、データの入出力を行うことができるようになっている。
【0044】
記憶処理部151は、記憶部18に対してデータを出力することにより、記憶部18にデータを記憶させるための処理を行う。例えば、ユーザが操作部17を操作することにより装置条件の設定を行った場合には、その装置条件のデータが記憶処理部151により記憶部18に記憶される。装置条件とは、分析時の装置の設定条件であり、上述のようなバーナ121の回転位置の他、例えば燃料ガス及び助燃ガスの流量、バーナ121の高さといった原子化部12についての各種設定条件や、他の各種パラメータが含まれる。
【0045】
検量線生成部152は、含有成分の濃度が既知の試料(既知試料)を測定することにより測光部14から入力される測定データに基づいて、検量線を生成するための処理を行う。検量線生成部152により生成された検量線のデータは、記憶処理部151により記憶部18に記憶される。このとき、既知試料の測定時における装置条件(検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置などの装置条件)が、検量線データに対応付けて記憶部18に記憶される。
【0046】
含有成分の濃度が未知の試料(未知試料)を測定した場合には、記憶処理部151が測光部14から入力される測定データを記憶部18に記憶させる。この場合にも、未知試料の測定時における装置条件(測定データが得られたときのバーナ121の回転位置などの装置条件)が、測定データに対応付けて記憶部18に記憶される。
【0047】
試料濃度算出部153は、未知試料を測定することにより得られた測定データに基づいて、未知試料に含まれる成分の濃度を算出する。具体的には、未知試料の測定時と同じ装置条件で得られた検量線データが記憶部18から読み出され、その検量線データと未知試料の測定データとが比較されることにより、試料の濃度が算出される。
【0048】
試料濃度算出部153により算出された試料の濃度は、測定結果として記憶部18に記憶される。このとき、算出された試料の濃度は、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データ、及び、当該検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置などの装置条件に対応付けて、記憶部18に記憶される。
【0049】
データ出力部154は、記憶部18に記憶されているデータを出力するための処理を行う。データ出力部154から出力されるデータは、測定結果を表すレポートデータとして表示部16に表示され、ユーザにより確認される。ただし、データ出力部154から出力されるレポートデータは、表示部16に対する表示に限らず、印刷などの他の方法でユーザに提供されてもよい。
【0050】
5.レポートデータの具体例
図5は、データ出力部154により出力されるレポートデータの具体例を示した図である。レポートデータには、測定結果の他、その測定時における装置条件、及び、測定時に用いられた検量線データなどが含まれる。
【0051】
レポートデータ中の測定結果には、例えば試料濃度算出部153により算出された試料の濃度の他、測光部14からの測定データに基づいて算出された吸光度など、試料の測定により得られる各種データが含まれる。レポートデータ中の検量線データは、試料の濃度の算出時に用いられた検量線データであり、例えば試料中の成分の濃度と吸光度との関係がグラフで表される。レポートデータ中の装置条件には、例えば測定時におけるバーナ121の回転位置(バーナ角度)などが含まれる。このバーナ角度は、レポートデータ中の検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置と等しい。
【0052】
6.作用効果
(1)本実施形態では、把持部124により手動でバーナ121の角度を調整することができる。また、バーナ121の回転位置を回転位置検出部125で検出することができるため、バーナ121の回転位置を容易に得ることができる。さらに、回転位置検出部125で検出したバーナ121の回転位置と測定結果との関係を対応付けることが可能となるため、測定結果のトレーサビリティを確保することができる。
【0053】
(2)また、本実施形態では、回転位置検出部125によりバーナ121の回転位置を離散的に検出し、各回転位置と測定結果との関係を対応付けることができる。したがって、回転位置検出部125により検出される各回転位置における測定結果のトレーサビリティを確保することができる。回転位置検出部125により検出される回転位置以外のバーナ121の回転位置については、例えば補間法を用いて測定結果と対応付けることができる。
【0054】
(4)本実施形態では、バーナ121の回転位置が装置条件として記憶部18に記憶されるため、測定結果を確認する際に、装置条件の一部としてバーナ121の回転位置を記憶部18から読み出して確認することができる。したがって、測定結果のトレーサビリティをより向上することができる。
【0055】
(5)特に、本実施形態では、既知試料を測定することにより得られた検量線データに対応付けて、当該検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置が装置条件として記憶部18に記憶される。これにより、検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置を、装置条件の一部として記憶部18から読み出して確認することができるため、測定結果のトレーサビリティをより向上することができる。
【0056】
(6)さらに、本実施形態では、試料濃度算出部153により算出された試料の濃度、及び、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データに対応付けて、当該検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置が装置条件として記憶部18に記憶される。これにより、未知試料の測定データと検量線データとに基づいて算出された試料の濃度を測定結果として確認する際に、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置を、装置条件の一部として記憶部18から読み出して確認することができる。
【0057】
(7)また、本実施形態では、試料濃度算出部153により算出された試料の濃度、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データ、及び、当該検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置を含む装置条件が、データ出力部154によりレポートデータとして出力される。これにより、未知試料の測定データと検量線データとに基づいて算出された試料の濃度を測定結果としてレポートデータで確認する際に、その試料の濃度の算出時に用いられた検量線データと、当該検量線データが得られたときのバーナ121の回転位置を、装置条件の一部として確認することができる。
【0058】
7.変形例
図6A及び図6Bは、バーナ121の回転機構の変形例について説明するための平面図である。図6Aは、バーナ121の吹出口122が測定光の光路Pに沿った状態を示している。一方、図6Bは、バーナ121の吹出口122が測定光の光路Pに対して直交する状態を示している。
【0059】
この例では、回転位置検出部125の構成が上記実施形態とは異なっている。具体的には、この例における回転位置検出部125は、上記実施形態のようにバーナ121の回転位置を離散的に検出するのではなく、連続的に検出するような構成となっている。回転位置検出部125以外の構成については、上記実施形態と同様であるため、同様の構成については図に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
光学センサ125Aは、上記実施形態のように複数設けられた構成ではなく、1つだけ設けられている。この光学センサ125は、上記実施形態と同様に発光部及び受光部を備えており、受光部における受光量に応じて異なる強度の信号を出力するようになっている。
【0061】
遮光部125Bは、上記実施形態と同様にバーナ121に設けられており、バーナ121の回転に伴って回転軸123を中心に回転移動するが、上記実施形態とは異なり、常に光学センサ125における発光部からの光を遮っている。ただし、図6A及び図6Bに示すように、バーナ121の回転位置に応じて、遮光部125Bが光を遮る量が異なっている。したがって、バーナ121の回転に伴い連続的に変化する光学センサ125Aの受光部における受光強度に基づいて、バーナ121の回転位置を連続的に検出することができる。
【0062】
これにより、バーナ121の回転位置を連続的に検出し、連続する各回転位置と測定結果との関係を対応付けることができる。したがって、測定結果のトレーサビリティをより向上することができる。
【0063】
ただし、連続的に検出を行う回転位置検出部125は、光学センサに限らず、例えば静電容量センサのように、他の各種センサにより構成されてもよい。
【0064】
以上の実施形態では、バーナ121を手動で回転させるための手動回転機構が、回転軸123及び把持部124により構成される場合について説明した。しかし、手動回転機構は、バーナ121を手動で回転させることができるような構成であればよく、例えば把持部124を備えていない構成などであってもよい。
【0065】
また、回転位置検出部125の構成についても、上記実施形態及び変形例に示すような構成に限らず、他の各種構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 原子吸光分光光度計
2 フレーム
11 光源
12 原子化部
13 検出器
14 測光部
15 制御部
16 表示部
17 操作部
18 記憶部
121 バーナ
122 吹出口
123 回転軸
124 把持部
125 回転位置検出部
125A 光学センサ
125B 遮光部
151 記憶処理部
152 検量線生成部
153 試料濃度算出部
154 データ出力部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B