特許第6825830号(P6825830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825830
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】振動モータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   B06B1/04 S
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-119539(P2016-119539)
(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-221909(P2017-221909A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年3月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤沼 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大井 満
(72)【発明者】
【氏名】林 徹史
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0293022(US,A1)
【文献】 米国特許第06307287(US,B1)
【文献】 特開2002−200460(JP,A)
【文献】 特開平11−068903(JP,A)
【文献】 特開平01−120473(JP,A)
【文献】 特表2008−508989(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0099600(US,A1)
【文献】 実開平02−067133(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体およびコイルを有する静止部と、
磁石を含み、前記静止部に対して、一方向に振動可能に支持される振動体と、
前記静止部と前記振動体との間に位置する弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、第1固定部と、第2固定部と、板ばね部と、有し、
前記板ばね部は、第1梁部と、前記第1梁部と一方向に対向する第2梁部と、前記第1梁部の端部と前記第2梁部の端部を連結する連結部と、を有し、
前記第1梁部は、前記第1固定部を介して前記筐体に接続され、
前記第2梁部は、前記第2固定部を介して前記振動体に接続され、
前記第1梁部は、一方向に対して直交する方向である上下方向の幅が前記第1固定部よりも狭い第1幅狭部と、前記第1幅狭部から前記第1固定部に向かって上下方向の幅が漸次変わる第1傾斜部と、を有し、
前記第2梁部は、上下方向の幅が前記第2固定部よりも狭い第2幅狭部と、前記第2幅狭部から前記第2固定部に向かって上下方向の幅が漸次変わる第2傾斜部と、を有し、
前記第1傾斜部と前記第2傾斜部の少なくとも一方は、前記第1幅狭部または前記第2幅狭部に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さく、または漸次小さくなった後に大きくなる幅変化部を有することを特徴とする振動モータ。
【請求項2】
前記第1梁部は、前記第1幅狭部から前記連結部に向かって上下方向の幅が漸次変わる第3傾斜部をさらに有し、
前記第2梁部は、前記第2幅狭部から前記連結部に向かって上下方向の幅が漸次変わる第4傾斜部をさらに有し、
前記第3傾斜部と前記第4傾斜部の少なくとも一方は、前記幅変化部を有することを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記第1幅狭部と前記幅変化部との間、または前記第2幅狭部と前記幅変化部との間には、上下方向の幅が前記幅変化部の最小幅よりも大きく、上下方向に突出する凸部が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記幅変化部は、
前記第1幅狭部に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さく、または漸次小さくなった後に大きくなる第1幅変化部と、
前記第2幅狭部に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さく、または漸次小さくなった後に大きくなる第2幅変化部と、
を有し、
前記第1幅狭部と前記第1幅変化部との間には、上下方向の幅が前記第1幅変化部の第1最小幅よりも大きく、上下方向に突出する第1凸部が設けられ、
前記第2幅狭部と前記第2幅変化部との間には、上下方向の幅が前記第2幅変化部の第2最小幅よりも大きく、上下方向に突出する第2凸部が設けられ、
前記第2凸部の幅と前記第2最小幅との上下方向の差は、前記第1凸部と前記第1最小幅との上下方向の差よりも大きいことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記第1固定部および前記第2固定部は、溶接部によって固定されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の振動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン等の各種機器には、触覚フィードバックを発生させる振動モータが備えられる。従来の振動モータの一例は、特許文献1に開示される。
【0003】
特許文献1の振動モータは、磁石を含む振動体と、筐体に固定されたコイルを備える。振動モータを駆動させる場合、磁石とコイルとの間において磁界が発生し、振動体が振動する。
【0004】
上記振動モータは、振動体を一方向に振動可能に支持する弾性部材を有する。弾性部材は、第1固定部と、第2固定部と、板ばね部と、を有する。板ばね部は、第1固定部を介して筐体に固定されると共に、第2固定部を介して振動体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国実用新案出願公告第202111607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
弾性部材が振動体または筐体に固定される固定部には、応力が加わり易い。近年の構造解析により、固定部に応力が加わることで、弾性部材が破断する虞があることが分かっている。
【0007】
上記特許文献1の構成では、弾性部材において、板ばね部は幅狭部を有する。幅狭部は、固定部よりも一方向に対して直交する方向である上下方向の幅が狭い部分である。これにより、応力を弾性部材内部において分散させることができる。
【0008】
しかしながら、固定部の応力を分散させるには、上記構成では不十分であり、弾性部材が破断する虞が依然あった。
【0009】
上記状況に鑑み、本発明は、弾性部材の固定部の応力をより分散させ、弾性部材の破断を抑制することのできる振動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の例示的な振動モータは、筐体およびコイルを有する静止部と、
磁石を含み、前記静止部に対して、一方向に振動可能に支持される振動体と、
前記静止部と前記振動体との間に位置する弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、第1固定部と、第2固定部と、板ばね部と、有し、
前記板ばね部は、第1梁部と、前記第1梁部と一方向に対向する第2梁部と、前記第1
梁部の端部と前記第2梁部の端部を連結する連結部と、を有し、
前記第1梁部は、前記第1固定部を介して前記筐体に接続され、
前記第2梁部は、前記第2固定部を介して前記振動体に接続され、
前記第1梁部は、一方向に対して直交する方向である上下方向の幅が前記第1固定部よ
りも狭い第1幅狭部と、前記第1幅狭部から前記第1固定部に向かって上下方向の幅が漸
変わる第1傾斜部と、を有し、
前記第2梁部は、上下方向の幅が前記第2固定部よりも狭い第2幅狭部と、前記第2幅
狭部から前記第2固定部に向かって上下方向の幅が漸次変わる第2傾斜部と、を有し

前記第1傾斜部と前記第2傾斜部の少なくとも一方は、前記第1幅狭部または前記第2
幅狭部に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さく、または漸次小さくなった後に大きくなる幅変化部を有する構成としている。

【発明の効果】
【0011】
例示的な本発明の振動モータによれば、弾性部材の固定部の応力をより分散させ、弾性部材の破断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る振動モータの分解斜視図である。
図2図2は、弾性部材の周辺箇所を示す一部拡大斜視図である。
図3図3は、弾性部材を第1方向に視た一部側面図である。
図4図4は、弾性部材を第1方向に視た側面図である。
図5A図5Aは、本発明の一実施形態に係る弾性部材を用いたシミュレーションを行った場合の応力分布結果を示すグラフである。
図5B図5Bは、比較例としての弾性部材を用いたシミュレーションを行った場合の応力分布結果を示すグラフである。
図6図6は、第1変形例に係る弾性部材を第1方向に視た側面図である。
図7図7は、第2変形例に係る弾性部材を第1方向に視た側面図である。
図8図8は、第3変形例に係る弾性部材を第1方向に視た側面図である。
図9A図9Aは、シミュレーションに用いた本発明の一実施形態に係る弾性部材の斜視図である。
図9B図9Bは、シミュレーションに用いた比較例に係る弾性部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る振動モータの分解斜視図である。
【0014】
なお、図1において、左右方向(一方向)を第1方向として、X方向で表す。また、第1方向に対して、直交する方向である上下方向をY方向として表す。例えば、図1において紙面上側が上下方向(Y方向)における上側となる。また、第1方向および上下方向に直交する第2方向をZ方向として表す。以下、他の図面についても同様のことが当てはまる。ただし、この方向の定義は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係および方向を示すものではない。
【0015】
<1.振動モータの全体構成>
本実施形態に係る振動モータ100は、ベースプレート11、基板21、コイル31、振動体40、弾性部材50、弾性部材60、およびカバー12を備える。振動モータ100は、ベースプレート11とカバー12とを含む筐体を備える。
【0016】
基板21は、リジッド基板またはフレキシブル基板等で構成され、ベースプレート11の上面に固定される。コイル31は、基板21の上面に取付けられる。コイル31は、例えば接着剤により接着される。なお、コイル31は基板21に接着以外の方法により固定されてもよい。
【0017】
静止部は、上記筐体、基板21、およびコイル31によって構成される。つまり、振動モータ100は、筐体およびコイル31を有する静止部を備える。
【0018】
振動体40は、複数の磁石41、42と、直方体状のおもり43とを有する。この実施形態において、磁石41、42の数は2つである。おもり43は、直方体状であり、空洞部431を有する。空洞部431は、おもり43を軸方向に貫通する。空洞部431は、第1方向に2つ配列される。磁石41、42は、各空洞部431内部に収容される。これにより、磁石41、42は、おもり43によって保持される。磁石41、42は、コイル31に対して上側に配置される。なお、空洞部431はおもり43を軸方向に貫通していなくともよく、磁石41、42を収容可能な凹部であってもよい。
【0019】
弾性部材50は、第1固定部51と、第2固定部52と、板ばね部53と、を有する。第1固定部51、第2固定部52、および板ばね部53は同一部材で構成される。板ばね部53は、第1梁部531、第2梁部532、および連結部533を有する。平板状の第1梁部531は、平板状の第2梁部532と第1方向において対向する。連結部533は、第1梁部531の端部と第2梁部532の端部とを連結する。第2梁部532の連結部533側でない端部には、第2固定部52の端部が接続される。第2固定部52は、途中で第1方向に折れ曲がる。第2固定部52は、おもり43の第1方向に延びる側面に固定される。すなわち、第2梁部532は、第2固定部52を介して振動体40に固定される。
【0020】
第1梁部531の連結部533と反対側の端部には、第1固定部51が接続される。第1固定部51は、カバー12の内壁面に固定される。すなわち、第1梁部531は、第1固定部51を介して筐体に接続される。
【0021】
つまり、弾性部材50は、静止部と振動体40との間に位置する。なお、弾性部材50のより詳細な構成については後述する。
【0022】
弾性部材60は、弾性部材50と同様の構造である。弾性部材60の一端側は、おもり43の第1方向に延びる側面に固定される。弾性部材60の一端側は、弾性部材50が固定される箇所と対角に位置する。弾性部材60の他端側は、カバー12の内壁面に固定される。これにより、振動体40は、静止部に対して、第1方向(一方向)に振動可能に弾性部材50、60によって支持される。カバー12とベースプレート11とで構成される内部空間に、基板21の一部、コイル31、振動体40、および弾性部材50、60が収容される。
【0023】
このような構成において、振動モータ100では、コイル31に基板21における配線を介した通電が行われる。コイル31に電流が流れると、コイル31に発生する磁界と磁石41、42が形成する磁界との相互作用によって、振動体40は第1方向に往復振動する。
【0024】
<2.弾性部材の詳細構成>
次に、弾性部材50の構成について詳述する。図2は、弾性部材50の周辺箇所を示す一部拡大斜視図である。
【0025】
第1梁部531は、第1幅狭部5311と、第1傾斜部5312と、第3傾斜部5313と、を有する。第1幅狭部5311は、上下方向(Y方向)の幅が第1固定部51よりも狭い。第1傾斜部5312は、第1幅狭部5311から第1固定部51に向かって上下方向の幅が漸次大きくなる。第3傾斜部5313は、第1幅狭部5311から連結部533に向かって上下方向の幅が漸次大きくなる。
【0026】
第1固定部51は、カバー12(図2では不図示)の内壁面に溶接部W1によって固定される。すなわち、溶接によりカバー12の内壁面と第1固定部51が溶融して同一の部材となる。これにより、弾性部材50を筐体に対して強固に固定することができる。なお、第1固定部51の固定は、接着により行ってもよい。
【0027】
第2梁部532は、第2幅狭部5321と、第2傾斜部5322と、第4傾斜部5323と、を有する。第2幅狭部5321は、上下方向の幅が第2固定部52よりも狭い。第2傾斜部5322は、第2幅狭部5321から第2固定部52に向かって上下方向の幅が漸次大きくなる。第4傾斜部5323は、第2幅狭部5321から連結部533に向かって上下方向の幅が漸次大きくなる。
【0028】
第2固定部52は、おもり43の第1方向に延びる側面に溶接部W2によって固定される。すなわち、溶接によりおもり43の側面と第2固定部52が溶融して同一の部材となる。これにより、弾性部材50を振動体40に対して強固に固定することができる。なお、第2固定部52の固定は、接着により行ってもよい。
【0029】
第1傾斜部5312は、第1幅変化部5312Aを有する。第1幅変化部5312Aは、第1幅狭部5311に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に大きくなる。第2傾斜部5322は、第2幅変化部5322Aを有する。第2幅変化部5322Aは、第2幅狭部5321に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に大きくなる。すなわち、第1傾斜部5312と第2傾斜部5322の少なくとも一方は、幅変化部を有する。
【0030】
図3は、弾性部材50を第1方向に視た一部側面図を示す。図3は、便宜上、固定部51と第1梁部531のみを示す。図3に矢印にて示すように、第1固定部51の近くに第1幅変化部5312Aを設けることで、第1固定部51にかかる応力を第1幅変化部5312Aに分散させることができる。従って、第1幅狭部5311に加えて第1幅変化部5312Aを設けて、第1幅変化部5312Aに応力を分散させることで、応力がかかり易く破断の虞が高い第1固定部51の応力を大きく分散させることができる。よって、第1固定部51での破断を抑制することができる。
【0031】
同様の原理により、第2固定部52の近くに第2幅変化部5322Aを設けることで、第2固定部52にかかる応力を第2幅変化部5322Aに分散させることができる。従って、第2幅狭部5321に加えて第2幅変化部5322Aを設けて、第2幅変化部5322Aに応力を分散させることで、応力がかかり易く破断の虞が高い第2固定部52の応力を大きく分散させることができる。よって、第2固定部52での破断を抑制することができる。
【0032】
図4は、弾性部材50を第1方向に視た側面図を示す。図4は、弾性部材50を第1梁部531側から視た図であり、破線にて第2梁部532が示される。
【0033】
第1幅狭部5311と第1幅変化部5312Aとの間には、第1凸部5314が設けられる。第1凸部5314は、上下方向に突出し、上下方向の幅が第1幅変化部5312Aの第1最小幅H1よりも大きい。第1凸部5314を設けることで、第1幅変化部5312Aよりも第1幅狭部5311側の応力がかかる部分の剛性を確保できる。
【0034】
第2幅狭部5321と第2幅変化部5322Aとの間には、第2凸部5324が設けられる。第2凸部5324は、上下方向に突出し、上下方向の幅が第2幅変化部5322Aの第2最小幅H2よりも大きい。第2凸部5324を設けることで、第2幅変化部5322Aよりも第2幅狭部5321側の応力がかかる部分の剛性を確保できる。すなわち、第1幅狭部5311と第1幅変化部5312Aとの間、または第2幅狭部5321と第2幅変化部5322Aとの間には、凸部が設けられる。
【0035】
図4に示すように、第2凸部5324の幅と第2最小幅H2との上下方向の差は、第1凸部5314の幅と第1最小幅H1との上下方向の差よりも大きい。これにより、第2固定部52に近い第2幅変化部5322Aに、より応力をかけることで、特に応力のかかり易い第2固定部52における応力を低減させることができる。
【0036】
本実施形態の効果を検証するためにシミュレーションを行った。図5Aは、本実施形態に係る弾性部材50を用いたシミュレーションを行った場合の応力分布結果を示す。図5Bは、本実施形態との比較例としての弾性部材を用いたシミュレーションを行った場合の応力分布結果を示す。比較例の弾性部材は、第1梁部と第2梁部において、それぞれ幅狭部から固定部に向かって単調に上下方向の幅が増加する形状としている。すなわち、比較例の弾性部材は、上記特許文献1に開示された弾性部材と同等である。
【0037】
上記弾性部材50を用いたシミュレーションは、図9Aに示す第2固定部52に固定された振動体を第1固定部51とは離れる第1方向に自然状態より所定量だけ変位させた条件にて行い、第1固定部51における起点SP1から第2固定部52における終点EP1までの弾性部材50の延びる長手方向の位置における応力を解析した。図5Aにおいて、横軸は弾性部材50の長手方向位置Pを示し、縦軸は応力σを示す。すなわち、図5Aにおいて、横軸の左端部が起点SP1の位置を示し、右端部が終点EP1の位置を示す。
【0038】
上記比較例の弾性部材を用いたシミュレーションは、図9Bに示す第2固定部52’に固定された振動体を第1固定部51’とは離れる第1方向に自然状態より所定量だけ変位させた条件にて行い、第1固定部51’における起点SP2から第2固定部52’における終点EP2までの弾性部材50’の延びる長手方向の位置における応力を解析した。図5Bにおいて、横軸は弾性部材50’の長手方向位置Pを示し、縦軸は応力σを示す。すなわち、図5Bにおいて、横軸の左端部が起点SP2の位置を示し、右端部が終点EP2の位置を示す。
【0039】
図5A図5Bとを比較すると、図5Aの領域A1に示す第1固定部51に近い第1幅変化部5312Aの位置における応力は、図5Bの領域A11に示す同等の位置における応力よりも大きくなる。これにより、図5Aの領域A2に示す第1固定部51の位置における応力は、図5Bの領域A21に示す第1固定部の位置における応力よりも小さい。従って、本実施形態に係る第1固定部51にかかる応力を低減して、第1固定部51での破断を抑制できることが分かる。
【0040】
また、図5Aの領域A3に示す第2固定部52に近い第2幅変化部5322Aの位置における応力は、図5Bの領域A31に示す同等の位置における応力よりも大きくなる。これにより、図5Aの領域A4に示す第2固定部52の位置における応力は、図5Bの領域A41に示す第2固定部の位置における応力よりも小さい。従って、本実施形態に係る第2固定部52にかかる応力を低減して、第2固定部52での破断を抑制できることが分かる。
【0041】
<弾性部材の変形例>
次に、弾性部材の各種変形例について説明する。図6は、第1変形例に係る弾性部材501を第1方向に視た側面図を示す。図6は、弾性部材501を第1梁部531側から視た図であり、破線にて第2梁部532が示される。
【0042】
弾性部材501の図4に示す弾性部材50との構成の相違点は、第3傾斜部5313および第4傾斜部5323の構成である。具体的には、第3傾斜部5313は、第3幅変化部5313Aを有し、第4傾斜部5323は、第4幅変化部5323Aを有する。すなわち、第3傾斜部5313と第4傾斜部5323の少なくとも一方は、幅変化部を有する。
【0043】
第3幅変化部5313Aは、第1幅狭部5311に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に大きくなる。第4幅変化部5323Aは、第2幅狭部5321に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に大きくなる。
【0044】
弾性部材501の構成であれば、連結部533の近くに設けられる第3幅変化部5313Aおよび第4幅変化部5323Aに応力を分散させることで、連結部533にかかる応力を低減させ、連結部533での破断を抑制することができる。
【0045】
図7は、第2変形例に係る弾性部材502を第1方向に視た側面図である。図7は、弾性部材502を第1梁部531側から視た図であり、破線にて第2梁部532が示される。弾性部材502においては、第1幅変化部5312Aは、第1幅狭部5311に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に一定となる。第2幅変化部5322Aは、第2幅狭部5321に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に一定となる。このような構成の第1幅変化部5312Aおよび第2幅変化部5322Aであっても、第1固定部51および第2固定部52にかかる応力を分散させることができる。すなわち、幅変化部は、幅狭部に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に大きく、または一定となる。
【0046】
第1幅狭部5311と第1幅変化部5312Aとの間には、上下方向の幅が第1幅変化部5312Aの第1最小幅H1よりも大きく、上下方向に突出する第1凸部5314が設けられる。第2幅狭部5321と第2幅変化部5322Aとの間には、上下方向の幅が第2幅変化部5322Aの第2最小幅H2よりも大きく、上下方向に突出する第2凸部5324が設けられる。第2凸部5324の幅と第2最小幅H2との上下方向の差は、第1凸部5314の幅と第1最小幅H1との上下方向の差よりも大きい。
【0047】
図8は、第3変形例に係る弾性部材503を第1方向に視た側面図である。図8は、弾性部材503を第1梁部531側から視た図であり、破線にて第2梁部532が示される。弾性部材503においては、第1幅狭部5311と連結部533との間に、上下方向の幅が一定となる幅一定部5315が設けられる。第2幅狭部5321と連結部533との間に、上下方向の幅が一定となる幅一定部5325が設けられる。すなわち、幅狭部と連結部との間に傾斜部を設けることは必須ではない。
【0048】
なお、以上説明した実施形態において、第1傾斜部5312、第2傾斜部5322のうち片方のみに幅変化部を設けることとしてもよい。また、第3傾斜部5313、第4傾斜部5323のうち片方のみに幅変化部を設けることとしてもよい。また、第3傾斜部5313に設ける第3幅変化部5313Aは、第1幅狭部5311に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に一定としてもよい。また、第4傾斜部5323に設ける第4幅変化部5323Aは、第2幅狭部5321に向かうに従って上下方向の幅が漸次小さくなった後に一定としてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、例えばスマートフォンやゲームパッドなどに備えられる振動モータに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100・・・振動モータ、11・・・ベースプレート、12・・・カバー、21・・・基板、31・・・コイル、40・・・振動体、41、42・・・磁石、43・・・おもり、431・・・空洞部、50、501〜503・・・弾性部材、51・・・第1固定部、52・・・第2固定部、53・・・板ばね部、531・・・第1梁部、5311・・・第1幅狭部、5312・・・第1傾斜部、5312A・・・第1幅変化部、5313・・・第3傾斜部、5313A・・・第3幅変化部、5314・・・第1凸部、5315・・・幅一定部、532・・・第2梁部、5321・・・第2幅狭部、5322・・・第2傾斜部、5322A・・・第2幅変化部、5323・・・第4傾斜部、5323A・・・第4幅変化部、5324・・・第2凸部、5325・・・幅一定部、533・・・連結部、60・・・弾性部材、H1・・・第1最小幅、H2・・・第2最小幅、W1、W2・・・溶接部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B