(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825835
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】レーダ交通量計測装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
G08G1/01 D
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-135339(P2016-135339)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-5786(P2018-5786A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】富木 洋一
【審査官】
秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−050322(JP,A)
【文献】
特開2015−026127(JP,A)
【文献】
特開2010−191780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
B60W 30/00ー50/16
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
を備え、
前記物標信号検出部は、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が高いほど、前記物標信号の検出閾値を低くし、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が低いほど、前記物標信号の検出閾値を高くし、前記物標信号を検出する、
ことを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項2】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
を備え、
前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における前記物標信号の分布密度が低いほど、前記物標信号の位置の近接程度よりも前記物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成する、
ことを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項3】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
を備え、
前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における前記物標信号の分布密度が高いほど、前記物標信号の速度の近接程度よりも前記物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成する、
ことを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項4】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
を備え、
前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする速度を座標軸とする空間内における前記物標信号の速度が速いほど、前記物標信号の位置の近接程度よりも前記物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成する、
ことを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項5】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
を備え、
前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする速度を座標軸とする空間内における前記物標信号の速度が遅いほど、前記物標信号の速度の近接程度よりも前記物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成する、
ことを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項6】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
前記クラスタに対応する物標について、前記クラスタを構成する前記物標信号の位置の分布に基づいて、大型車であるか小型車であるかを判定する大型/小型判定部と、
を備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項7】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
前記クラスタについて、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における軌跡を抽出し、前記軌跡に動きがない前記クラスタを交通量の計測対象から外し、前記軌跡に動きがある前記クラスタを交通量の計測対象に含めるクラスタ軌跡抽出部と、
を備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項8】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
前記反射強度の情報、前記物標信号又は前記クラスタについて、レーダからの距離及びレーダに対する方位を座標軸とする空間内における位置及び速度を、前記道路のレーンの走る方向及び前記道路のレーンを跨ぐ方向を座標軸とする空間内における位置及び速度に変換する座標変換部と、
前記座標変換部により座標変換がなされた前記クラスタに対応する物標について、前記道路の複数のレーンのうちいずれのレーンを通過するかを判定するレーン判定部と、
を備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項9】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、
を備え、
前記反射強度取得部は、交通量の計測対象の交差点近傍に設置されて少なくとも2方向をそれぞれ指向する少なくとも2台分のレーダ装置から、前記反射強度の情報を取得し、
前記クラスタに対応する物標について、前記物標信号の位置及び速度の変化に基づいて、前記交差点近傍を直進するか右折/左折するかを判定する交差点判定部、
をさらに備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置。
【請求項10】
交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得ステップと、
前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出ステップと、
前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリングステップと、
を順に備え、
前記物標信号検出ステップは、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が高いほど、前記物標信号の検出閾値を低くし、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が低いほど、前記物標信号の検出閾値を高くし、前記物標信号を検出する、
ことを特徴とするレーダ交通量計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダを用いて自動的に交通量を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人手によらず自動的に交通量を計測する技術が存在する。特許文献1では、カメラ画像を用いて自動的に交通量を計測する技術が開示されている。その他では、超音波センサや赤外線センサを用いて自動的に交通量を計測する技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−162011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、カメラ画像を用いて自動的に交通量を計測する技術は、暗所や悪天候に強くなく、カメラの設置が容易でなく、距離や速度の検出の精度が高くなく、時刻毎の画像間の相関の処理が容易でない。そして、超音波センサや赤外線センサを用いて自動的に交通量を計測する技術では、広範囲を監視することができない。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、人手によらず自動的に交通量を計測するにあたり、暗所や悪天候に強くし、機器の設置を容易にし、距離や速度の検出の精度を高くし、時刻毎の画像間の相関の処理を容易にし、広範囲を監視することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、レーダを用いて自動的に交通量を計測することとした。そして、大型車や小型車や歩行者や自転車等の物標を、大きさのないポイントとして計測するのではなく、大きさのあるクラスタとして計測することとした。
【0007】
具体的には、本開示は、交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得部と、前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出部と、前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリング部と、を備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0008】
また、本開示は、交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する反射強度取得ステップと、前記反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する物標信号検出ステップと、前記物標信号について、前記物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成するクラスタリングステップと、を順に備えることを特徴とするレーダ交通量計測方法である。
【0009】
この構成によれば、人手によらず自動的に交通量を計測するにあたり、暗所や悪天候に強くし、機器の設置を容易にし、距離や速度の検出の精度を高くし、時刻毎の画像間の相関の処理を容易にし、広範囲を監視することができる。そして、大型車や小型車や歩行者や自転車等の物標を、クラスタの大きさや速度に基づいて判別することができる。
【0010】
また、本開示は、前記物標信号検出部は、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が高いほど、前記物標信号の検出閾値を低くし、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が低いほど、前記物標信号の検出閾値を高くし、前記物標信号を検出することを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0011】
ここで、小型車については、レーダ信号が車体表面で鏡面反射することが少ないため、物標信号の検出閾値を高くしても、小型車由来の物標信号の位置が分離することが少ない。一方で、大型車については、レーダ信号が荷台天井で鏡面反射することが多いため、物標信号の検出閾値を高くすれば、大型車由来の物標信号の位置が分離することが多い。そこで、この構成のように、物標信号の検出閾値を低くすることにより、大型車を小型車と誤判定することを防止することができる。
【0012】
また、本開示は、前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における前記物標信号の分布密度が低いほど、前記物標信号の位置の近接程度よりも前記物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成することを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0013】
ここで、物標信号の分布密度が低い非渋滞時には、車両毎の速度にばらつきが多い。そこで、この構成のように、物標信号の位置の近接程度よりも、物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、クラスタリングを行うことにより、大型車を小型車と誤判定することを防止することができる。
【0014】
また、本開示は、前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における前記物標信号の分布密度が高いほど、前記物標信号の速度の近接程度よりも前記物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成することを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0015】
ここで、物標信号の分布密度が高い渋滞時には、車両毎の速度にばらつきが少ない。そこで、この構成のように、物標信号の速度の近接程度よりも、物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、クラスタリングを行うことにより、速度の近しい隣り合う車両を一台の車両と誤判定することを防止することができる。
【0016】
また、本開示は、前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする速度を座標軸とする空間内における前記物標信号の速度が速いほど、前記物標信号の位置の近接程度よりも前記物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成することを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0017】
ここで、物標信号の速度が速い非渋滞時には、車両毎の速度にばらつきが多い。そこで、この構成のように、物標信号の位置の近接程度よりも、物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、クラスタリングを行うことにより、大型車を小型車と誤判定することを防止することができる。
【0018】
また、本開示は、前記クラスタリング部は、レーダ設置位置を基準とする速度を座標軸とする空間内における前記物標信号の速度が遅いほど、前記物標信号の速度の近接程度よりも前記物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、前記クラスタを構成することを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0019】
ここで、物標信号の速度が遅い渋滞時には、車両毎の速度にばらつきが少ない。そこで、この構成のように、物標信号の速度の近接程度よりも、物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、クラスタリングを行うことにより、速度の近しい隣り合う車両を一台の車両と誤判定することを防止することができる。
【0020】
また、本開示は、前記クラスタに対応する物標について、前記クラスタを構成する前記物標信号の位置の分布に基づいて、大型車であるか小型車であるかを判定する大型/小型判定部、をさらに備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0021】
この構成によれば、大型車や小型車を判別することができる。
【0022】
また、本開示は、前記クラスタについて、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における軌跡を抽出し、前記軌跡に動きがない前記クラスタを交通量の計測対象から外し、前記軌跡に動きがある前記クラスタを交通量の計測対象に含めるクラスタ軌跡抽出部、をさらに備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0023】
この構成によれば、路面反射や道路設備等を除外することができる。
【0024】
また、本開示は、前記反射強度の情報、前記物標信号又は前記クラスタについて、レーダからの距離及びレーダに対する方位を座標軸とする空間内における位置及び速度を、前記道路のレーンの走る方向及び前記道路のレーンを跨ぐ方向を座標軸とする空間内における位置及び速度に変換する座標変換部と、前記座標変換部により座標変換がなされた前記クラスタに対応する物標について、前記道路の複数のレーンのうちいずれのレーンを通過するかを判定するレーン判定部と、をさらに備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0025】
この構成によれば、車両毎の通過レーンを判定することができる。
【0026】
また、本開示は、前記反射強度取得部は、交通量の計測対象の交差点近傍に設置されて少なくとも2方向をそれぞれ指向する少なくとも2台分のレーダ装置から、前記反射強度の情報を取得し、前記クラスタに対応する物標について、前記物標信号の位置及び速度の変化に基づいて、前記交差点近傍を直進するか右折/左折するかを判定する交差点判定部、をさらに備えることを特徴とするレーダ交通量計測装置である。
【0027】
この構成によれば、車両毎の直進/右折/左折を判定することができる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本開示によれば、人手によらず自動的に交通量を計測するにあたり、暗所や悪天候に強くし、機器の設置を容易にし、距離や速度の検出の精度を高くし、時刻毎の画像間の相関の処理を容易にし、広範囲を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示のレーダ交通量計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示のレーダ交通量計測装置の処理を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の物標信号検出の処理を示す図である。
【
図4】本開示の物標信号検出の処理を示す図である。
【
図6】本開示のクラスタリングの処理を示す図である。
【
図7】本開示のクラスタリングの処理を示す図である。
【
図8】本開示のクラスタリングの処理を示す図である。
【
図9】本開示のクラスタ軌跡抽出の処理を示す図である。
【
図10】本開示のレーン判定の処理を示す図である。
【
図11】本開示の交差点判定の処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0031】
本開示のレーダ交通量計測装置の構成及び処理を
図1及び
図2に示す。
図5又は
図11のレーダセンサRSは、信号機や表示板や電信柱等の道路設備に設置される。レーダ交通量計測装置Mは、反射レーダ信号をレーダセンサRSから受信し、車両軌跡の情報を不図示のネットワークを介して不図示の交通量管理装置へと送信する。
【0032】
レーダ交通量計測装置Mは、反射強度取得部1、物標信号検出部2、座標変換部3、クラスタリング部4、クラスタ軌跡抽出部5、レーン判定部6、交差点判定部7及び大型/小型判定部8から構成され、ステップS1〜S8を実行する。
【0033】
反射強度取得部1は、交通量の計測対象の道路上からの反射レーダ信号について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、反射強度の情報を取得する(ステップS1)。ここで、反射レーダ信号の伝搬遅延に基づいて、レーダセンサRSからのレーダの反射点の距離(
図5の距離R)が計測され、複数のアンテナの間の反射レーダ信号の位相変化に基づいて、レーダセンサRSに対するレーダの反射点の方位(
図5の方位θ)が計測され、複数のスイープの間の反射レーダ信号の位相変化に基づいて、レーダセンサRSに対するレーダの反射点の速度(
図5の速度V)が計測される。
【0034】
物標信号検出部2は、上記の反射強度の情報について、レーダ設置位置を基準とする位置及び速度を座標軸とする空間内において、交通量の計測対象の物標に由来する反射信号の位置及び速度を物標信号として検出する(ステップS2)。本開示の物標信号検出の処理を
図3及び
図4に示す。
【0035】
物標信号検出部2は、路面反射等のバックグラウンドの反射強度に応じて、物標信号の検出閾値T1、T2を動的に設定し、強度ピークP1、P2を検出する。ここで、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が高いほど、物標信号の検出閾値T2を低くし、小型車の交通量に対する大型車の交通量の想定割合が低いほど、物標信号の検出閾値T1を高くし、上記の物標信号を検出する。
【0036】
つまり、小型車については、レーダ信号が車体表面で鏡面反射することが少ないため、物標信号の検出閾値T1を高くしても、小型車由来の物標信号の位置が分離することが少ない。一方で、大型車については、レーダ信号が荷台天井で鏡面反射することが多いため、物標信号の検出閾値T1を高くすれば、大型車由来の物標信号の位置が分離することが多い。そこで、
図3のように、物標信号の検出閾値T2を低くすることにより、大型車を小型車と誤判定することを防止することができる。
【0037】
座標変換部3は、上記の物標信号について(上記の反射強度の情報又は後述のクラスタでもよい。)、レーダセンサRSからの距離及びレーダセンサRSに対する方位を座標軸とする空間内における位置及び速度を、道路のレーンの走る方向及び道路のレーンを跨ぐ方向を座標軸とする空間内における位置及び速度に変換する(ステップS3)。本開示の座標変換の処理を
図5に示す。
【0038】
座標変換部3は、レーダセンサRSからのレーダの反射点RPの距離R、レーダセンサRSに対するレーダの反射点RPの方位θ及びレーダセンサRSに対するレーダの反射点RPの速度Vを、道路のレーンを跨ぐ方向のレーダの反射点RPの位置X(=Rsin(θ+φ))、道路のレーンの走る方向のレーダの反射点RPの位置Y(=Rcos(θ+φ))及び道路のレーンの走る方向のレーダの反射点RPの速度Vに変換する。
【0039】
ここで、θは、レーダセンサRSの正面方向から見た、レーダの反射点RPの方位であり、φは、道路のレーンの走る方向から見た、レーダセンサRSの正面の方位である。なお、上記の説明では、レーンの変更がない場合を考慮しているが、レーンの変更がある場合を考慮してもよい。また、上記の説明では、レーダセンサRSの設置高さを考慮していないが、レーダセンサRSの設置高さを考慮してもよい。
【0040】
クラスタリング部4は、上記の物標信号について、物標信号の位置及び速度のうち少なくともいずれかの近接程度に応じて、クラスタを構成する(ステップS4)。本開示のクラスタリングの処理を
図6〜
図8に示す。なお、
図6〜
図8の物標信号は、図面の簡便のため、少数の点群として記載している。
【0041】
具体的には、クラスタリング部4は、
図6に示したように、位置及び速度が近接する7点の物標信号を、クラスタCとしてまとめる。そして、クラスタCについて、道路のレーンを跨ぐ方向の大きさL
X、道路のレーンの走る方向の大きさL
Y、中心位置R
C及び代表速度V
C(例えば、7点の物標信号の速度の平均値)を計測する。
【0042】
ここで、クラスタリング部4は、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における物標信号の分布密度が低いほど、及び/又は、物標信号の速度が速いほど、物標信号の位置の近接程度よりも物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、クラスタを構成してもよい。
【0043】
具体的には、クラスタリング部4は、
図7に示したように、位置は近接せず速度は近接する上段の3点の物標信号と中段の3点の物標信号を、クラスタC1としてまとめる。一方で、中段の3点の物標信号とは位置が近接せず速度も近接しない下段の3点の物標信号を、クラスタC2としてまとめる。そして、クラスタC1、C2について、それぞれ、道路のレーンを跨ぐ方向の大きさL
X1、L
X2、道路のレーンの走る方向の大きさL
Y1、L
Y2、中心位置R
C1、R
C2及び代表速度V
C1、V
C2を計測する。
【0044】
ここで、物標信号の分布密度が低い、及び/又は、物標信号の速度が速い非渋滞時には、車両毎の速度にばらつきが多い。そこで、
図7のように、物標信号の位置の近接程度よりも、物標信号の速度の近接程度の方に重みを置いて、クラスタリングを行うことにより、大型車を小型車と誤判定することを防止することができる。
【0045】
一方で、クラスタリング部4は、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における物標信号の分布密度が高いほど、及び/又は、物標信号の速度が遅いほど、物標信号の速度の近接程度よりも物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、クラスタを構成してもよい。
【0046】
具体的には、クラスタリング部4は、
図8に示したように、速度は近接するが位置は近接しない上段の3点の物標信号と中段の3点の物標信号を、それぞれ、クラスタC3、C4としてまとめる。一方で、中段の3点の物標信号とは速度は近接するが位置は近接しない下段の3点の物標信号を、クラスタC5としてまとめる。そして、クラスタC3、C4、C5について、それぞれ、道路のレーンを跨ぐ方向の大きさL
X3、L
X4、L
X5、道路のレーンの走る方向の大きさL
Y3、L
Y4、L
Y5、中心位置R
C3、R
C4、R
C5及び代表速度V
C3、V
C4、V
C5を計測する。
【0047】
ここで、物標信号の分布密度が高い、及び/又は、物標信号の速度が遅い渋滞時には、車両毎の速度にばらつきが少ない。そこで、
図8のように、物標信号の速度の近接程度よりも、物標信号の位置の近接程度の方に重みを置いて、クラスタリングを行うことにより、速度の近しい隣り合う車両を一台の車両と誤判定することを防止することができる。
【0048】
クラスタ軌跡抽出部5は、上記のクラスタについて、レーダ設置位置を基準とする位置を座標軸とする空間内における軌跡を抽出し、その軌跡に動きがない上記のクラスタを交通量の計測対象から外し、その軌跡に動きがある上記のクラスタを交通量の計測対象に含める(ステップS5)。本開示のクラスタ軌跡抽出の処理を
図9に示す。
【0049】
クラスタ軌跡抽出部5は、時刻t1〜t3におけるクラスタC6〜C8において、位置、速度(有限値)及び大きさについて時間相関があると判定する。そして、時刻t1〜t3におけるクラスタC6〜C8を、1個の物標の軌跡としてまとめる。さらに、その1個の物標の軌跡に動きがある(速度が有限値である)ことから、大型車や小型車や歩行者や自転車等によるものとして、その1個の物標を交通量の計測対象に含める。
【0050】
クラスタ軌跡抽出部5は、時刻t1〜t3におけるクラスタC9〜C11において、位置、速度(ほぼ0)及び大きさについて時間相関があると判定する。そして、時刻t1〜t3におけるクラスタC9〜C11を、1個の物標の軌跡としてまとめる。さらに、その1個の物標の軌跡に動きがない(速度がほぼ0である)ことから、路面反射や道路設備等によるものとして、その1個の物標を交通量の計測対象から外す。
【0051】
レーン判定部6は、座標変換部3により座標変換がなされた上記のクラスタに対応する物標について、道路の複数のレーンのうちいずれのレーンを通過するかを判定する(ステップS6)。本開示のレーン判定の処理を
図10に示す。
【0052】
レーン判定部6は、レーンNo.1が道路のレーンを跨ぐ方向に位置X
L0から位置X
L1まで占めることを確認し、レーンNo.2が道路のレーンを跨ぐ方向に位置X
L1から位置X
L2まで占めることを確認する。そして、クラスタC12の中心位置が道路のレーンを跨ぐ方向に位置X
1(X
L0<X
1<X
L1)にあることから、クラスタC12に対応する物標について、レーンNo.1を通過すると判定する。さらに、クラスタC13の中心位置が道路のレーンを跨ぐ方向に位置X
2(X
L1<X
2<X
L2)にあることから、クラスタC13に対応する物標について、レーンNo.2を通過すると判定する。
【0053】
交差点判定部7は、上記のクラスタに対応する物標について、物標信号の位置及び速度の変化に基づいて、交通量の計測対象の交差点近傍を直進するか右折/左折するかを判定する(ステップS7)。本開示の交差点判定の処理を
図11に示す。
【0054】
ステップS7に先立ち、ステップS1において、反射強度取得部1は、交通量の計測対象の交差点近傍に設置されて少なくとも2方向をそれぞれ指向する少なくとも2台分のレーダセンサRSから、上記の反射強度の情報を取得する。
【0055】
クラスタC14、C15に対応する物標は、交差点を左折/直進する前には、同一の道路上を並走する。クラスタC15に対応する物標が交差点を直進した先には、レーダセンサRS1が設置されている。クラスタC14に対応する物標が交差点を左折した先には、レーダセンサRS2が設置されている。以下では、レーダセンサRS1、RS2について説明する。なお、交差点の中心位置に関して、レーダセンサRS1の設置位置と点対称位置に、レーダセンサRS3の設置位置がある。また、交差点の中心位置に関して、レーダセンサRS2の設置位置と点対称位置に、レーダセンサRS4の設置位置がある。
【0056】
交差点判定部7は、クラスタC15に対応する物標について、以下の情報を取得する:(1)レーダセンサRS1の設置位置に対する方位を変えることなく、レーダセンサRS1の設置位置へとほぼ一定の速度で近づく、(2)レーダセンサRS2の設置位置に対する方位を変えながら、レーダセンサRS2の設置位置へと徐々に減速して近づいた後、レーダセンサRS2の設置位置に対する方位を変えながら、レーダセンサRS2の設置位置から徐々に加速して遠ざかる。そして、レーダセンサRS2の設置位置をやり過ごし、レーダセンサRS1の設置位置へと直進したと判定する。
【0057】
交差点判定部7は、クラスタC14に対応する物標について、以下の情報を取得する:(1)レーダセンサRS1の設置位置に対する方位を変えることなく、レーダセンサRS1の設置位置へと徐々に減速して近づいた後、レーダセンサRS1の設置位置に対する方位を変えながら、レーダセンサRS1の設置位置から徐々に加速して遠ざかる、(2)レーダセンサRS2の設置位置に対する方位を変えながら、レーダセンサRS2の設置位置へと徐々に減速して近づいた後、レーダセンサRS2の設置位置に対する方位を変えることなく、レーダセンサRS2の設置位置へと徐々に加速して近づく。そして、レーダセンサRS1の設置位置をやり過ごし、レーダセンサRS2の設置位置へと左折したと判定する。
【0058】
大型/小型判定部8は、上記のクラスタに対応する物標について、クラスタを構成する物標信号の位置の分布に基づいて、大型車であるか小型車であるかを判定する(ステップS8)。例えば、大型/小型判定部8は、道路のレーンの走る方向のクラスタCの大きさL
Y(
図6を参照)を所定閾値と比較する。そして、道路のレーンの走る方向の大きさL
Yが所定閾値より大きいクラスタCに対応する物標について、大型車であると判定する。一方で、道路のレーンの走る方向の大きさL
Yが所定閾値より小さいクラスタCに対応する物標について、小型車であると判定する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示のレーダ交通量計測装置及び方法は、人手によらず自動的に交通量を計測するにあたり、暗所や悪天候に強くし、機器の設置を容易にし、距離や速度の検出の精度を高くし、時刻毎の画像間の相関の処理を容易にし、広範囲を監視することができる。
【符号の説明】
【0060】
M:レーダ交通量計測装置
1:反射強度取得部
2:物標信号検出部
3:座標変換部
4:クラスタリング部
5:クラスタ軌跡抽出部
6:レーン判定部
7:交差点判定部
8:大型/小型判定部
P1、P2:強度ピーク
T1、T2:検出閾値
RS、RS1〜RS4:レーダセンサ
RP:反射点
C、C1〜C15:クラスタ