(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイヤ止めブロックは、前記床面に対し、車両前後方向の複数の位置に固定可能になっており、前記スリットは、車両幅方向に並行して複数条形成されている請求項1に記載のタイヤ固縛装置。
前記第一のスリットおよび前記第二のスリットは、車両幅方向に並行して複数条形成され、前記係合板は、当該複数条形成された第二のスリットの長穴部それぞれに設けられている請求項5に記載のタイヤ固縛装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るタイヤ固縛装置が装備された車両運搬車の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
図1に示すように、この車両運搬車1は、シャシフレーム2上に荷台3を備える。荷台3の前部には、いわゆる鳥居5が荷台3と一体に設けられ、また、荷台3の後部には、後煽り4が装備されている。後煽り4は、自車両前後方向に回動可能に取付けられ、同図(a)に示す垂直な閉じ位置、および後方に回動して積載車両Vを乗り入れるときのスロープとなる開き位置のそれぞれに位置可能になっている。
【0015】
荷台3とシャシフレーム2との間には、荷台昇降装置8が装備されている。荷台昇降装置8は、荷台3を移動させる不図示の移動機構を備え、この移動機構によって、荷台3を、シャシフレーム2上に格納した格納位置、およびその格納位置から荷台3を自車両の後方に降ろした乗込位置までスライド移動可能に構成されている。これにより、この車両運搬車1は、乗込位置で積載車両Vを荷台3に積載するとともに、荷台3を格納位置に格納して積載車両Vを運搬可能になっている。
【0016】
荷台3は、同図(b)に平面視を示すように、積載車両Vを載置できる長方形状の床面3fを有する。床面3fは、車両前後方向に離隔配置された複数のクロスフレーム10により裏面から適所が補強されている。
【0017】
床面3fの前部右側には、牽引装置21が設けられている。牽引装置21は、
図2に拡大図示するように、ワイヤ21rが巻回されるウインチ21wと、ウインチ21wから繰り出されるワイヤ21rを案内可能に適所に配置された複数の滑車21sと、ワイヤ21rの先端に連結されたフック21fとを備える。
牽引装置21は、荷台3を後方に傾動後に、フック21fを積載車両Vの前部牽引フック等に係合し、ウインチ21wを繰り込み作動して、荷台3上に積載車両Vを牽引可能になっている。なお、荷台3には、前部および後部の適所に、複数の緊締用環11が設けられている。
【0018】
ここで、この車両運搬車1には、積載車両V側の牽引フックの有無に拘わらず、前輪タイヤTfおよび後輪タイヤTrそれぞれを、床面3f上に直接固縛するタイヤ固縛装置20、30が装備されている。以下、前輪用タイヤ固縛装置20および後輪用タイヤ固縛装置30について詳しく説明する。
【0019】
この車両運搬車1は、
図2に示すように、荷台3の床面3fの両側に、荷台3の中心線CLに対して左右対称に、前輪用タイヤ固縛装置20、および後輪用タイヤ固縛装置30がそれぞれ設けられている。なお、各固縛装置20、30は、左右対称の構成なので、以下、左右を特に区別なく説明する。
【0020】
前輪用タイヤ固縛装置20は、
図3に斜視図を示すように、タイヤ止めブロック23、スリット24および固縛ベルト22を有する。
荷台3の前部の左右には、
図2に示すように、前輪用タイヤ固縛装置20が用いる、緊締具27がそれぞれ装備されている。緊締具27は、積載車両Vの前輪タイヤTfを荷台3に締め付け固定するための締付手段である。緊締具27は、ハンドル27hの回動に連動する周知のラチェット機構27tを備える。
ラチェット機構27tのドラムには、ワイヤ27rが巻き取り可能に巻回される。ワイヤ27rは、その途中部分が複数の滑車27sに荷台3の適所で案内されるとともに、先端のフック27fが、固縛ベルト22基端の連結環22fに着脱可能に係合され、ハンドル27hの往復回動により、前輪用タイヤ固縛装置20の固縛ベルト22を緊締可能になっている。
【0021】
タイヤ止めブロック23は、固縛対象となる前輪タイヤTfに対して、車両前後方向の前方に設けられた緊締具27側の床面3f上に固定される。
図4に断面を示すように、タイヤ止めブロック23は、鋼製の板部材を略V字状に曲げ加工して形成されている。なお、V字状の開口側の部分は、適所が不図示の補強材によって連結される。タイヤ止めブロック23は、V字状を逆にした状態で床面3f上に載置され、逆V字状の開口側の縁部が床面3fとの当接部23kとされる。
【0022】
V字状の二面のうち、車両後方を向く面がタイヤ止め面23sになっている。当接部23kには、左右に離隔して一対の係止爪23pが設けられる。一対の係止爪23pは、鋼製の丸棒を曲げ加工して形成され、タイヤ止め面23sの内面に沿って車両後方側下方に向けて斜めに張り出すとともに、途中部分から先端側が車両後方側水平方向に向けて曲げ加工されている。
【0023】
床面3f側には、
図2に示すように、一対の係止爪23pを挿抜可能に形成された一対の装着穴23hが、各係止爪23pに対向する位置に設けられている。本実施形態では、車両前後方向に所定距離離隔して、計6組の装着穴23hが形成されている。これにより、タイヤ止めブロック23は、車軸の前後位置やタイヤサイズ(径)に応じて、一対の係止爪23pを、荷台3の床面3fの適所に形成された一対の装着穴23hに挿入した状態で床面3f上に載置される。これにより、車両前後方向の複数の位置(本実施形態では6つの位置)から選択した所期の位置にタイヤ止めブロック23を固定可能になっている。
【0024】
さらに、タイヤ止めブロック23は、
図4に示すように、前輪タイヤTf側とは反対側を向く固縛面23mに、後述する第二のフック26の装着穴23fを有する。本実施形態では、装着穴23fは、同図(b)に示すように、固縛面23mに、車両幅方向に並行して複数(本実施形態の例では4箇所)形成されている。これにより、本実施形態では、車軸の軸方向位置やタイヤサイズ(幅)に応じて、車両幅方向の複数の装着穴23f(本実施形態では4箇所)から固縛に適した位置の装着穴23fを選択可能になっている。
【0025】
各装着穴23fは、
図7に斜視図を示すように、タイヤ止めブロック23の高さ方向に沿って長穴状をなす長穴部23nと、長穴部23nの上端に形成された円形部23hとから構成される。円形部23hの直径は、長穴部23nの幅寸法よりも大きい。さらに、固縛面23mの裏面には、タイヤ止めブロック23の内方側に突設する係合爪23tが設けられている。係合爪23tは、各装着穴23fそれぞれに対し、円形部23hの下部近傍の位置に設けられている。
【0026】
スリット24は、
図2および
図3(b)に示すように、タイヤ止めブロック23とは、車両前後方向の反対側であって、荷台3の床面3fに車両前後方向に沿って延在する長穴状に穿設されている。本実施形態では、スリット24は、車両幅方向に並行して複数条(本実施形態の例では4条)形成される。各スリット24は、
図6に斜視図(一部断面)を示すように、車両前後方向で長穴状の長穴部24nと、長穴部24nの後端に形成された円形部24hとから構成される。
【0027】
円形部24hの直径は、長穴部24nの幅寸法よりも大きい。各スリット24の長穴部24nの延在範囲は、積載車両Vを積載時に前輪タイヤTfが停止する個所での車軸の軸方向位置やタイヤサイズ(幅)に合わせて設けられる。これにより、本実施形態では、車軸の軸方向位置やタイヤサイズ(幅)に応じて、車両幅方向の複数のスリット24(本実施形態では4箇所)から固縛に適した位置のスリット24を選択可能になっている。なお、本実施形態の例では、タイヤ止めブロック23を基準として、タイヤ直径がφ540〜φ700mmのタイヤを想定して各スリット24の長穴部24nの延在範囲が設定されている。
【0028】
また、同図に示すように、床面3fの裏面3rには、固縛時に作用する力に床面3fのスリット24を形成した部分が耐え得るように補強板28が設けられている。補強板28は、各スリット24の両側に沿ってスリット24の形成部全体に亘って配置された複数の縦板28tと、複数の縦板28tを幅方向で相互に繋ぐ複数の横板28yとから構成される。横板28yには、スリット24の開口に対向する位置に逃げ溝28jがそれぞれ形成され、後述する第一のフック25の係合部25sとの干渉が防止されている。
【0029】
固縛ベルト22は、
図5に示すように、引張り強さに優れたポリエステル繊維を編んで帯状に形成されたベルト本体22aを有する。ベルト本体22aの基端22k(同図左側)には、緊締具27に連結するための連結環22fが装着されている。連結環22fは、円柱部材を環状に曲げ加工して形成され、ベルト本体22a側の直線部に、ベルト本体22aの基端22kの部分を巻き付けた状態で基端22kを折り返した部分が縫着されることでベルト本体22aに装着されている。
【0030】
また、ベルト本体22aの先端22s(同図右側)には、第1のフック25が連結されている。第一のフック25は、
図6(a)に示すように、略U字状の本体部25hを有し、本体部25hの左右の腕部間に円柱状の連結軸25gが張り渡されている。ベルト本体22aの先端22sは、連結軸25gに巻き付けた状態で折り返し部分が縫着されている。
【0031】
さらに、第一のフック25は、
図6(a)に示すように、本体部25hの中央から下方に張り出す係合用の軸部25jと、軸部25jの先端に同軸に円盤状に設けられた係合部25sとを有する。軸部25jの基端部は、本体部25hと一体になっている。係合部25sの直径は、上述した各スリット24の円形部24hの直径よりも小さく且つ長穴部24nの幅寸法よりも大きい。よって、第一のフック25は、軸部25jおよび係合部25sを円形部24hに挿入可能である。
【0032】
また、各スリット24の長穴部24nの幅寸法は、第一のフック25の軸部25jの直径よりも僅かに広く且つ係合部25sの直径よりも狭い。よって、第一のフック25は、軸部25jが長穴部24nに沿ってスライド自在であり、係合部25sは、長穴部24nに係合可能である。これにより、第一のフック25は、スリット24の長手方向の任意の位置に係合部25sを係合可能になっている。
【0033】
さらに、
図5に示すように、ベルト本体22aの途中部分であって基端寄りの位置には、ベルト本体22aに沿って移動可能に第二のフック26が装着されている。なお、ベルト本体22aには、第1および第2のフック25,26の間の位置に、タイヤの外周面と直接当たり、第一のフック25まで張力を伝えるために、摩擦を軽減するカバー部22bが設けられている。
【0034】
第二のフック26は、
図7(a)に示すように、略U字状の本体部26hを有し、本体部26hの中央から下方に張り出す係合用の軸部26jと、軸部26jの先端に同軸に円盤状に設けられた係合部26sとを有する。また、本体部26hの左右の腕部間には円柱状の案内軸26gがガイド部として張り渡されている。案内軸26gは、本体部26hに対し、自身軸回りに回転自在に装着されている。ベルト本体22aは、第二のフック26の本体部26hと案内軸26gとの間に挿通されて円滑にガイドされるようになっている。第二のフック26は、タイヤ止めブロック23に対し、前輪タイヤTf側とは反対側を向く固縛面23mに装着される。
【0035】
一方、後輪用タイヤ固縛装置30は、
図2に示すように、第一のスリット41、第二のスリット42および固縛ベルト32を有する。
第一のスリット41は、固縛対象となる後輪タイヤTrに対し、車両前後方向の前側に設けられ、荷台3の床面3fに、車両前後方向に沿って長穴状に形成されている。第一のスリット41は、
図10に斜視図(一部断面)を示すように、車両前後方向で長穴状のスリットの前端に形成された円形部41hと、円形部41h以外の長穴部41nとから構成される。円形部41hの直径は、長穴部41nの幅寸法よりも大きい。
【0036】
本実施形態の固縛例では、第一のスリット41は、同図に示すように、車両幅方向に並行して複数条(本実施形態の例では4条)形成される。なお、
図2に示すように、第一のスリット41の配置数や、各第一のスリット41の長穴部41nの延在範囲は、積載車両Vを積載時に後輪タイヤTrが停止する個所における車軸の軸方向位置やタイヤサイズ(幅)に合わせて設けられる。
【0037】
本実施形態の例では、本実施形態の固縛例に示す位置の他、それよりも車両前方側および後方側のクロスフレーム10に干渉しない位置それぞれに、複数の第一のスリット41が更に配備されている(同図の例では、車両前方側には本実施形態の固縛例よりも短い第一のスリット41が3条設けられ、車両後方側には、本実施形態の固縛例と同じ長さの第一のスリット41が4条設けられている。)。
これにより、本実施形態では、車軸の軸方向位置やタイヤサイズ(幅)に応じて、車両前後方向および車両幅方向の複数の第一のスリット41(本実施形態では前後方向中央の3箇所のうちの中央)から固縛に適した位置の第一のスリット41を選択可能になっている。
【0038】
また、
図10に示すように、床面3fの裏面3rには、固縛時に作用する力に床面3fの第一のスリット41が形成された部分が耐え得るように補強板38が設けられている。補強板38は、各第一のスリット41の両側に沿って第一のスリット41形成部全体に亘って配置された複数の縦板38tと、複数の縦板38tを幅方向で相互に繋ぐ複数の横板38yとから構成される。横板38yには、第一のスリット41の開口に対向する位置それぞれに逃げ溝38jが形成され、後述する第一のフック51の係合部51sとの干渉が防止されている。
【0039】
第二のスリット42は、
図2に示すように、第一のスリット41に対して後輪タイヤTrとは反対側の床面3fに車両前後方向に沿って長穴状に形成されている。
図11に斜視図(一部断面)を示すように、第二のスリット42に対し、床面3fの裏面3rには、後述する第二のフック52に係合可能な複数の係合溝33mを有する係合板33が設けられている。
【0040】
係合板33は、
図11に示すように、荷台3の床面3fの下方において、荷台3の左右両側に、各第二のスリット42に対して、それぞれ2枚ずつ、荷台3の長手方向に沿って各スリット42を両側から挟むように配設される。各係合板33は、曲げ加工された平板から形成され、荷台3フレーム5の床面3fの裏面に溶接等によって固定される。本実施形態の例では、U字状に曲げ加工されたU型係合板33Uと、U型係合板33Uの両側の位置に設けられて、L字状に曲げ加工されたL型係合板33Lとから係合板33が構成されている。なお、各係合板33は、荷台3裏面のクロスフレーム10に干渉しない位置に装着される。
【0041】
左右の係合板33は、各第二のスリット42に対して、第二のスリット42を介して上方から挿入された第二のフック52の係合部52sがスリット42を通して係合板33の係合溝33mに係合可能に配置される。係合板33は、固縛時に作用する力に第二のスリット42の形成された部分が耐え得る補強板を兼ねている。係合板33は、第二のスリット42の延在方向に沿って床面3fの裏面3rを覆うように設けられ、複数の係合溝33mが、第二のスリット42の延在方向の複数の位置で、第二のフック52に係合可能になっている。なお、本実施形態の例では、
図2に示すように、本実施形態の固縛例に示す位置に設けられた3条の第二のスリット42の他、それよりも車両後方側であってクロスフレーム10に干渉しない位置に、一条の第二のスリット42が更に配備されている。
【0042】
固縛ベルト32は、
図9に示すように、緊締具31と、緊締具31に対し後輪タイヤTrの側に連結されたベルト本体32aと、緊締具31に対し後輪タイヤTrとは反対側に連結された連結ベルト部32bと、連結ベルト部32bの先端(同図右側)に連結された連結フック53と、ベルト本体32aの先端(同図左側)に連結された第1のフック51と、ベルト本体32aの途中部分にベルトに沿ってスライド自在に装着された第2のフック52とを有する。連結フック53は、荷台3の後部に設けられた緊締用環11に着脱可能に係合される。連結フック53には、鉤状フックの開口部分を覆うように、ばねの付勢力で閉じ位置に保持される開閉片53bが枢支されている。
【0043】
緊締具31は、積載車両Vの後輪タイヤTrを荷台3に締め付け固定するための締付手段である。緊締具31は、ハンドル31hの回動に連動する周知のラチェット機構31tを備える。ラチェット機構31tのドラム31dには、ベルト本体32aが巻き取り可能に巻回される。固縛ベルト32は、先端フック53が、荷台3後部に設けられた緊締用環11に係合され(
図2参照)、ハンドル31hの往復回動により、後輪用タイヤ固縛装置30の固縛ベルト32を緊締可能になっている。
【0044】
ベルト本体32aおよび連結ベルト部32bは、引張り強さに優れたポリエステル繊維を編んで帯状に形成されている。連結ベルト部32bの両端は、緊締具31および連結フック53それぞれに対し、端部を巻き付けた状態で折り返し部分が縫着されている。また、ベルト本体32aは、緊締具31に対してはベルト端がドラムに巻回可能に固定され、第1のフック51に対しては端部を巻き付けた状態で折り返し部分が縫着されている。
【0045】
第一のフック51は、
図9および
図10に示すように、略U字状の本体部51hを有し、本体部51hの左右の腕部間に円柱状の連結軸51gが張り渡されている。ベルト本体32aの先端32sは、連結軸51gに巻き付けた状態で折り返し部分が縫着されている。
【0046】
さらに、第一のフック51は、本体部51hの中央から下方に張り出す係合用の軸部51jと、軸部51jの先端に同軸に円盤状に設けられた係合部51sとを有する。係合部51sの直径は、各第一のスリット41の円形部41hの直径よりも小さく且つ長穴部41nの幅寸法よりも大きい。よって、第一のフック51は、軸部51jおよび係合部51sを円形部41hに挿入可能である。
【0047】
また、各第一のスリット41の長穴部41nの幅寸法は、第一のフック51の軸部51jの直径よりも僅かに広く且つ係合部51sの直径よりも狭い。よって、第一のフック51は、軸部51jが長穴部41nに沿ってスライド自在であり、係合部51sは、長穴部41nに係合可能である。これにより、第一のフック51は、第一のスリット41の長手方向の任意の位置に係合可能になっている。
【0048】
さらに、
図9に示すように、ベルト本体32aの途中部分であって基端寄りの位置には、ベルト本体32aに沿って移動可能に第二のフック52が装着されている。なお、ベルト本体32aには、第1および第2のフック51,52の間の位置に、タイヤの外周面と直接当たり、第一のフック51まで張力を伝えるために、摩擦を軽減するカバー部32cが設けられている。
【0049】
第二のフック52は、
図11に示すように、略U字状の本体部52hを有し、本体部52hの中央から下方に張り出す係合用の軸部52jと、軸部52jの先端に左右に張り出すようにT字状に設けられた係合部52sとを有する。
また、本体部52hの左右の腕部間に円柱状の案内軸52gがガイド部として張り渡されており、案内軸52gは、本体部52hに対し、自身軸回りに回転自在に装着されている。ベルト本体32aは、本体部52hと案内軸52gとの間に挿通されて円滑にガイドされるようになっている。第二のフック52は、第二のスリット42の長手方向の任意の位置に挿抜可能であり、第二のスリット42の裏面側に設けられた係合板33の係合溝33mに係合部52sを掛け止めた状態で装着される。
【0050】
これにより、固縛ベルト32は、自身先端部32sが第一のフック51の基端部51gに接続されるとともに、自身途中のベルト部分32aが後輪タイヤTrの外周面Tsに沿って掛け回されてから第二のフック52の基端側に設けられたガイド部52gを介して緊締具31のドラム31dに接続され、さらに緊締具31の他端側の連結ベルト部32bに接続された連結フック53が荷台3後部に設けられた緊締用環11に係合可能になっている。
【0051】
次に、この車両運搬車1に装備されたタイヤ固縛装置20、30を用いたタイヤ固縛方法、およびタイヤ固縛装置20、30の作用・効果について説明する。
上述した車両運搬車1に積載車両Vを積載する際は、
図1に示すように、車両運搬車1の荷台3上に積載車両Vを積載し、左右の前輪タイヤTfを、荷台3の床面3f上に設けたタイヤ止めブロック23に当接した位置で停車させる。その後、積載車両Vの左右の前輪タイヤTfおよび後輪タイヤTrを、対応する固縛装置20、30により個別に荷台3上に締め付けて固定する。
【0052】
前輪タイヤTfを固縛する際は、前輪用タイヤ固縛装置20を用い、まず、前輪タイヤTfのタイヤ外周面Tsの上側に固縛ベルト22のカバー部22bを巻き掛ける。次いで、固縛ベルト22の先端に連結された第一のフック25を、床面3fのスリット24を通して適所に係合する。
第一のフック25を係合するときは、スリット後端の円形部24hから係合部25sを挿入し、第一のフック25の軸部25jをスリット24に沿って適宜にスライド調整してベルトの姿勢が垂直になる位置にてスリット24に係合部25sを係合させる。
次いで、固縛ベルト22の途中部分に挿通された第二のフック26をベルト延在方向に沿って適所までスライド調整しつつ、タイヤ止めブロック23の前側の固縛面23mに形成された装着穴23fに係合する。
【0053】
第二のフック26を装着穴23fに係合するときは、まず、装着穴23f上部の円形部23hから円盤状の係合部26sを挿入し、軸部26jを装着穴23fの長穴部23nの位置まで下方に押し下げる。このとき、円盤状の係合部26sの外周面を、固縛面23m裏面の係合爪23tを乗り越えさせて、長穴部23nの位置まで下方に押し下げる。
【0054】
次に、緊締具27に連結される固縛ベルト22の基端部の連結環22fを緊締具27のフック27fに係合した後に、緊締具27を緊締操作する。これにより、固縛ベルト22の先端部22sが第一のフック25の基端部25kに接続されるとともに途中のベルト部分(本実施形態では、カバー部22b)がタイヤTfの外周面Tsに沿って掛け回され且つ第二のフック26を介して緊締具27に接続された状態で固縛ベルト22が緊締され、左右の前輪タイヤTfそれぞれを床面3f上に締め付けて固定できる。
【0055】
これにより、第一のフック25の固縛位置は、固縛ベルト22の緊締力により、ベルトの姿勢が垂直になる位置にてスリット24に保持され、また、第二のフック26の固縛位置は、固縛ベルト22の緊締力により、円盤状の係合部26sが係合爪23tを乗り越えた長穴部23nの位置で保持される。なお、前輪用タイヤ固縛装置20による固縛を解除する場合は、上述した手順とは逆の順によればよいので、詳しい説明を省略する。
【0056】
後輪タイヤTrを固縛する際は、後輪用タイヤ固縛装置30を用い、まず、後輪タイヤTrのタイヤ外周面Tsの上側に固縛ベルト32のカバー部32cを巻き掛ける。次いで、固縛ベルト32の先端に連結された第一のフック51の係合部51sを、床面3fの第一のスリット41の挿入穴41hからスリット部41sに通し、係合部51sをスリットの長穴部41nに沿って適宜にスライド調整してベルトの姿勢が垂直になる位置にて第一のスリット41に係合する。
【0057】
次いで、固縛ベルト32の途中部分に挿通されている第二のフック52の係合部52sを、第二のスリット42を通し、係合板33に設けられる係合溝33mに、ベルトの姿勢が垂直またはその近傍となる位置にて係合する。第二のフック52を第二のスリット42に通すときは、まず、第二のフック52全体の姿勢を、T字状の係合部52sのT字の向きが第二のスリット42の延在方向に沿った向きにして、第二のスリット42内に係合部52sを挿通する。その後、第二のフック52全体の姿勢を90°回転させて、係合部52sのT字の向きが第二のスリット42の延在方向とは直交する向きとし、その状態で係合部52sを係合溝33mに係合させる。
【0058】
次いで、固縛ベルト32の基端側に設けられるフック53を荷台3後部の緊締用環11に係合し、緊締具31を緊締操作して、後輪タイヤTrそれぞれを床面3f上に締め付けて固定する。これにより、第一のフック51の固縛位置は、固縛ベルト32の緊締力により、ベルトの姿勢が垂直になる位置にて第一のスリット41に保持され、また、第二のフック52の固縛位置は、固縛ベルト32の緊締力により、T字状の係合部52sが係合溝33mの位置で保持される。なお、後輪用タイヤ固縛装置30による固縛を解除する場合は、上述した手順とは逆の順によればよいので、詳しい説明を省略する。
【0059】
以上説明したように、この車両運搬車1に装備されたタイヤ固縛装置20、30によれば、固縛対象となるタイヤ自体を荷台3に固定する構造なので、積載車両V側の牽引フックの有無に拘わらず、タイヤを直接固縛できる。
【0060】
ここで、例えば、上述した特許文献1に記載のタイヤ固縛装置のように、車両前後方向に離隔する複数のスリットから一のスリットを選択してフックを係合する構成であると、タイヤサイズや車両の車軸の位置に応じて、必ずしも如何なる車両に対しても適切な固縛位置に対応するスリットを選定できない。そのため、固縛力が効果的にタイヤに作用しない場合には、積載車両のタイヤ外周面に巻き掛けられる固縛ベルトがタイヤ外周面から外れるおそれがあり、選択できるフックの位置によっては、固縛ベルトが略真下に引けず、積載車両Vのフェンダ等の部品と干渉するおそれがある。
【0061】
これに対し、本実施形態のタイヤ固縛装置20、30は、第一のフック25、51を係合するためのスリット24、41が車両前後方向に沿って長穴状に形成されているため、そのスリット24、41に沿って、第一のフック25、51をスリット24、41の長手方向の任意の位置にスライド移動できる。これにより、固縛ベルトを積載車両Vのフェンダ等の部品と最も干渉しない略真下の位置に第一のフック25、51の固縛位置を設定できる。したがって、その固縛位置にて緊締具により固縛ベルトを締め込むと、積載車両の固縛対象となるタイヤを固縛し、積載車両Vのフェンダ等の部品と干渉しないで固縛できる。
【0062】
また、第一のフック25、51の固縛位置を略真下の位置に設定することにより、積載車両Vとの干渉を防止できる。また、各スリット24、41の幅方向での占有寸法を狭くできるため、上記実施形態のように、幅方向に複数条のスリット24、41を配置できる。そのため、タイヤサイズ(幅方向)や車両の車軸の位置(車幅方向)に応じた対応性についてもより向上させることができる。
【0063】
なお、本発明に係るタイヤ固縛装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、本発明に係るタイヤ固縛装置を車両運搬車1の荷台3に装備した例を説明したが、これに限定されず、本発明に係るタイヤ固縛装置は、車両の固縛対象となるタイヤを、緊締具を用いて床面上に固縛する用途にて種々の乗り物に適用できる。例えば船、飛行機等にも適用可能である。
【0064】
また、例えば上記実施形態では、床面3fの左右にそれぞれ4列に複数のスリット20を列設した場合を説明したが、これに限定されず、床面3fの左右にそれぞれ1列または2列以上に複数のスリット20を列設してもよい。また、上記実施形態では、床面3f下の左右にそれぞれ2本の係合板33を併設した例を説明したが、床面3f下の左右にそれぞれ1本または3本以上の係合板33を併設してもよい。また、上記実施形態のようなラチェット機構を備える緊締具27、31に代えて、他の公知の締付機構を備える緊締具を締付手段として用いてもよい。
【0065】
また、例えば上記実施形態では、後輪用タイヤ固縛装置30における第二のフック52が、本体部52hの中央から下方に張り出す係合用の軸部52jと、軸部52jの先端に左右に張り出すようにT字状に設けられた係合部52sとを有する例を説明したが、フックの係合部分の形状やこれに係合する床面側の被係合部の形状は、これに限定されない。
【0066】
例えば、
図12に変形例を示すように、軸部52jの先端をJ字状に設けた鉤型の係合部52sとしてもよい(同図(a)、(b)参照)。この場合において、同図(c)に示すように、係合板を設けることなく、第二のスリット42を、第一のスリット41とは反対側の床面3fに車両幅方向に沿って長穴状に形成することができる。同図の例であれば、第二のフック52は、車両幅方向に延在する第二のスリット42の長手方向の任意の位置にて係合できる。
また、床面側の被係合部である第二のスリット42の形状も、「スリット」に限定されず、例えば、スリット形状に替えて、第二のフック52の先端を挿抜可能な丸穴に形成した係合穴を被係合部42としてもよい。軸部52jの先端をJ字状に設けた上で、被係合部42を丸穴とすれば、スリットに比べて、第二のフック52の係合時に床面3fに作用する力に抗する上で好適である。
【0067】
また、同図(d)に示すように、被係合部42をスリットにする場合、車両幅方向に延在する第二のスリット42の長手方向に沿って、係合用の丸棒39を床面3fの裏面3rに溶接等により設けても良い。このような構成であれば、被係合部42をスリットとしつつ、第二のフック52の係合時に床面3fに作用する力に抗する上で好適である。なお、後輪用タイヤ固縛装置30における第二のフック52の変形例を具体的に示したが、他のフック25、26、51についても、T字形に替えてJ字形とするなど、同様の変形を適宜に適用可能であることは勿論である。