(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下の前記レンズの有効径内における上下の前記レンズのレンズ面どうしの間の間隔より、上下の前記レンズの有効径外における対向面どうし間の間隔が広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の貼合わせレンズ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の貼合わせレンズ18を有するレンズユニット11を示している。このレンズユニット11は、例えば、車載カメラ用のものであり、自動車の外側に少なくともレンズユニット11の物体側の端部(
図1では上端部)を露出して設置される。
【0019】
レンズユニット11は、円筒状の鏡筒12と、鏡筒12内に配置される複数(例えば、4つ)のレンズ13,14,15,18と、2つの絞り部材21,22とを備えている。このレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0020】
鏡筒12に固定されて支持されている複数のレンズ13,14,15,18は、それぞれの光軸を一致させた状態に配置されており、1つの光軸に沿って各レンズ13,14,15,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる1群のレンズ群を構成している。また、レンズ18は、貼合わせレンズ18であり、レンズ16とレンズ17が接着剤によって貼合された状態となっている。
【0021】
2つの絞り部材21,22のうちの物体側(鏡筒12の一方の端部)から1番目の絞り部材21は、物体側から2番目のレンズ14と3番目のレンズ15との間に配置されている。物体側から2番目の絞り部材22は、物体側から3番目のレンズ15と4番目のレンズ16との間に配置されている。絞り部材21、22は透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。
【0022】
鏡筒12は、物体側の一方の端部(
図1において上端部)が、カシメられることにより、その内径が縮径され、内部に収容された最も物体側のレンズ13の外径より鏡筒12の物体側の端部の内径が小さくされ、これによって枠部23が設けられている。
また、鏡筒12の像側の他方の端部(
図1において下端部)には、貼合わせレンズ18より径の小さい開口部を有する枠部24が設けられている。これら枠部23,24により、鏡筒12内にレンズ群を構成する複数のレンズ13、14、15、18と絞り部材21,22が保持されている。なお、枠部23は、鏡筒12にレンズ13,14,15,18を収納した後に鏡筒12の物体側の端部に取り付けられるものであってもよい。
【0023】
最も物体側のレンズ13の外周面には、当該レンズ13の像側部分に径が小さくなった縮径部が設けられ、当該縮径部にシール部材としてのOリング26が設けられ、レンズ13の外周面と鏡筒12の内周面との間を、鏡筒12の物体側端部で封止した状態となっている。これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。
【0024】
鏡筒12は、その内径が物体側から像側に向かって段階的に小さくなっている。これに対応して、レンズ13,14,15,18は、それらの配置位置が物体側から像側に向かうにつれて、外径が小さくなっている。基本的にレンズ13,14,15,18それぞれの外径と、鏡筒12の各レンズ13,14,15,18が支持される部分それぞれの内径とは略等しくなっている。なお、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられるフランジ部25が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
【0025】
また、レンズ13,14,15,18のうちの最も物体側の車外(鏡筒12外)に露出するレンズ13がガラスレンズで、レンズ14,15,18が樹脂レンズとなっている。
最も像側の貼合わせレンズ18は、その外周部の像側の面(
図1において下面)が基準面として光軸に直交する面となっている。この貼合わせレンズ18の基準面は、貼合わせレンズ18の外径より小さな内径の開口部を有する枠部23の内面側の基準面に当接するようになっている。
【0026】
本実施の形態において、貼合わせレンズ18は、
図2に示すように、物体側の凹レンズ16と、像側の凸レンズ17とを接着剤で貼り合わせたものであり、これらレンズ16,17は樹脂レンズで構成されている。なお、以下では凹レンズ16を単にレンズ16と、凸レンズ17を単にレンズ17と称する場合がある。
また、凹レンズ16と凸レンズ17とを貼り合す際は、凹レンズ16を下にし、凸レンズ17を上にして貼り合わせ作業を行うため、
図2では、凹レンズ16を下にし、凸レンズ17を上にしてこれらを図示している。以下の説明における上下は、上述の貼り合わせ時の上下関係に基づいたものである。
なお、鏡筒12内に貼合わせレンズ18を組み込む際は、
図2に示す貼合わせレンズ18の上下を逆にして組み込む。
【0027】
凹レンズ16は、像側が凹面31とされ、物体側が凸面36とされている。また、凹レンズ16は、所望のレンズ機能を有するレンズ部16bとその外周縁の外側に形成された円環状のフランジ部16aとを備えている。また、凹レンズ16と凸レンズ17の貼り合わせに際しては、凹レンズ16の凹面31を上にして、この凹面31に接着剤を注入するようになっている。
【0028】
凸レンズ17は、光が通過する物体側の凸面41と像側の凸面46とを備えている。また、凸レンズ17は、所望のレンズ機能を有するレンズ部17bと、その外周に形成された円環状のフランジ部17aとを備えている。なお、凹レンズ16の像側の凹面31と凸レンズ17の物体側の凸面41はレンズ機能を有する範囲として有効径rを有する。
これら凹レンズ16と凸レンズ17とを貼り合わせる際には、凹レンズ16の像側の凹面31に凸レンズ17の物体側の凸面41を接着剤により接合する。
この場合に、凹レンズ16の凹面31と凸レンズ17の凸面41との間が接着層51となる。なお、
図2においては、接着剤を図示していないが、接着層51には、接着剤が充填された状態となっている。また、接着層51の範囲は、有効径rの範囲より広くなっており、後述する対向面54,55の間まで広がっている。
【0029】
レンズ16の有効径rの外側のフランジ部16aには、接着剤溜り53が円環状に設けられている。この接着剤溜り53は、断面略逆台形状に形成されており、平面円環状の底面53aと、この底面53aの内周側に、当該底面53aと連続して設けられた円環状の傾斜面53bと、底面53aの外周側に、当該底面53aと連続して設けられた円環状の傾斜面53cとから構成されている。
傾斜面53cは、接着剤溜り53の底面53aの外周縁から径方向外側に向けて斜め上側に向かう上り壁53cとなっている。この上り壁53cの外周側には上り壁53cの上縁と等しい高さの平坦面53dが上り壁53cと連続して設けられている。
また、傾斜面53bと前記凹面31との間には、平坦な対向面54が円環状に設けられている。この対向面54は凹レンズ16の有効径外に設けられており、有効径内におけるレンズ面(凹面)31と連続している。実際には、レンズ面31の有効径より外周側にはレンズ面31の外周側を構成する面があり、この面に対向面54が連続している。また、対向面54は、前記平坦面53dより上側(像側)に位置している。
【0030】
一方、レンズ17のレンズ面(凸面)41の外周側には、平坦な対向面55が円環状に、かつ対向面54と所定の間隔をもって設けられている。この対向面55の径方向の幅は対向面54の径方向の幅とほぼ等いか、若干広くなっている。対向面56は凸レンズ17の有効径外でかつ対向面55の外側に設けられており、対向面55に連続している。実際には、レンズ面41の有効径より外周側にはレンズ面41の外周側を構成する面があり、この面に対向面55が連続している。
【0031】
また、対向面55の外周側には、径方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜面56が対向面55と連続して設けられている。この傾斜面(対向面)56は前記傾斜面(対向面)53bと所定の間隔をもって対向して配置されるとともに、当該傾斜面53bより傾斜方向の長さが短くなっている。
また、傾斜面56の外周側には、平坦面57が傾斜面56と連続して設けられており、この平坦面57は接着剤溜り53の底面53aと平行となっている。また、平坦面57は底面53aおよび前記平坦面53dと所定の間隔をもって対向している。
【0032】
凹レンズ16の凹面31の底面にポッティングされた接着剤は凹レンズ16の凹面31と凸レンズ17の凸面の貼り合せにより凹面31と凸面間を充填し、その一部は、対向面54と対向面55との間に当該間を通るようにして広がり、当該間に充填され、さらに余分な接着剤が傾斜面(対向面)53bと傾斜面(対向面)56との間を傾斜面53bに沿って下って接着剤溜り53に流入する。したがって、接着剤溜り53の堰き止め部として機能する上り壁53cの高さは、余分な接着剤が上り壁53cの上端を越えないような高さに設定されている。
【0033】
また、上下のレンズ17,16の有効径内における上下のレンズ17,16のレンズ面41,31どうしの間の間隔より、上下のレンズ17,16の有効径外における対向面55,54どうし間の間隔および傾斜面(対向面)56,53bどうしの間の間隔が広くなっている。これにより、接着剤の中に混入あるいは発生した気泡が容易にレンズ部の外側に排出される。
さらに、レンズ面41,31どうしの間の間隔は径方向外側に向かうほど広くなっており、さらに気泡が排出され易くなっている。
具体的には、レンズ面41,31どうしの間の間隔は、レンズ面41,31の中央部付近(レンズ面41,31と光軸とが交差する部分およびその近傍)間の間隔より、レンズ面41,31の外周側の間隔が次第に広くなっている。つまり、レンズ面(凹面)31と、レンズ面(凸面)41は、凹と凸で異なるが略同形状となっている従来の貼合わせレンズと異なり、異なる形状の面となっている。凹面31および凸面41は、非球面であるが、概略的に、凹面31の曲率より凸面41の曲率の方が大きくなっている。これにより、凹面31と凸面41の間隔は、中心から周縁に向かうにつれて徐々に広くなるようになっている。なお、凹面31と凸面41を球面としてもよい。
また、対向面(傾斜面)53bと対向面(傾斜面)56との間の間隔は、対向面54と対向面55との間の間隔より広くなっている。
【0034】
また、レンズ16のフランジ部16aとレンズ17のフランジ部17aとは嵌合している。すなわち、フランジ部16aには、前記平坦面53dより外周側に平坦面53の外周縁から径方向外側に向かうほど下方(物体側)に傾斜する嵌合面58が設けられている。
また、フランジ部17aには、前記平坦面57より外周側に平坦面57の外周縁から径方向外側に向かうほど下方(物体側)に傾斜する嵌合面59が設けられている。
これら嵌合面58,59が嵌合することで、嵌合部60が構成されている。そして、レンズ16とレンズ17を貼り合せる際に、これら嵌合面58,59により、レンズ16,17の径方向(光軸直交方向)の位置決めがなされている。つまり、レンズ16,17の光軸が一致している。
このように嵌合部60を構成する嵌合面58,59は互いのレンズに対して光軸が一致するように誘導する機能を有するものであるため、嵌合面58,59の傾斜角は一致している必要性はない。但し、嵌合面58の光軸に対する角度は,嵌合面59の光軸に対する角度より小さいほうが好ましい。すなわち、光軸方向位置決めとしてのフランジ部16aフランジ部17aの当接面から離れるにしたがって、嵌合面58,59が互いに離れるようになっているのが好ましい。この逆に比べて製造上他方のレンズを呼び込みやすいというメリットがある。
また、貼り合せ完了の際に必ずしも嵌合面58,59が接触している必要はなく、所定の公差の範囲内であれば互いに離間していてもよい。嵌合面58,59が接触する場合、後述するフランジ部17aとフランジ部16aによる光軸方向の位置決めが困難となるケースがあるため、むしろ嵌合面58,59の直径方向の隙間量(一方の隙間量と光軸を挟んで他方側の隙間量の合計値)を光軸方向に見ていった場合の隙間量最小値をΔとした場合、0<Δ≦20μmの範囲を満たすのが好ましい。なお、隙間量最小値Δは、前提としてレンズ部の直径(明らかにレンズ面形状が変化しているフランジ面との境界における直径)が1.5〜3.0mmのレンズの場合に適用したときの値である。
さらに、嵌合部60の外側(外周側)では、フランジ部16aの上側(像側)の面16cとフランジ部17aの下側(物体側)の面17cとが互いに当接しており、これによって、レンズ16,17の光軸方向の位置決めがなされている。
【0035】
また、レンズ17のフランジ部17aの外周面より、レンズ16のフランジ部16aの外周面が径方向外側に突出している。つまり、レンズ17よりレンズ16の方が大径となっている。
【0036】
このような構成により、レンズ16、17の接合時には、平面視して、円板状の接着層51から略径方向に沿って外側に溢れ出した接着剤は、接着層51の外側の対向面54,55間(接着剤通路)および対向面53b,56間(接着剤通路)に至り、さらに径方向外側に接着剤が拡がるように流れ出て、接着剤通路の外側に設けられた接着剤溜り53に流入するようになっている。接着剤溜り53の外周部には、当該接着剤溜り53の底面53aから上側に向かう上り壁53cが設けられているので、接着剤溜り53に流入した余分な接着剤は上り壁53cによって堰き止められて、嵌合部60側に溢れ出ることがない。
【0037】
以上のように本実施の形態によれば、貼り合わされたレンズ16,17の間の接着層51より径方向外側でかつ、嵌合部60より径方向内側において、下側のレンズ16のフランジ部16aに接着剤溜り53が環状に設けられ、この接着剤溜り53の外周部に、当該接着剤溜り53の底面53aから上側に向かう上り壁53cが設けられているので、接着剤が接着層51を越えると当該接着剤は接着剤溜り53に流入するが、この流入した接着剤は上り壁53cによって堰き止められる。したがって、レンズ16,17どうしを接着剤によって貼り合わせる際に、接着剤が嵌合部60に溢れ出すのを防止できる。
【0038】
また、上下のレンズ17,16の有効径内におけるレンズ面41,31どうしの間の間隔より、レンズ17,16の有効径外における対向面55,54どうし間の間隔および対向面56,53bどうし間の間隔が広くなっている。したがって、レンズ17,16どうしを接合する場合に、接着剤がレンズ面41,31側から対向面55,54側に向けて径方向外側に流れていくが、この接着剤中の気泡は、貼合わされるレンズ17,16どうしが近づくにつれて、レンズ面41,31どうしの間から対向面55,54どうしの間および対向面(傾斜面)56,53bどうしの間に押し出されるように移動して、接着剤溜り53に流入するので、有効径の外側に排出され易くなる。したがって、レンズ面41,31どうしの間の気泡除去が容易となる。
【0039】
また、レンズ17のフランジ部17aの外周面より、レンズ16のフランジ部16aの外周面が径方向外側に突出しているので、レンズ16,17を貼合わせてなる貼合わせレンズ18を鏡筒12内に挿入して固定する場合に、レンズ16のフランジ部16aが鏡筒12の内周面に当接することで、貼合わせレンズ18の径方向の位置決めを行うことができる。また、レンズ17のフランジ部17aの外周面が鏡筒12の内周面に当接しないので、レンズ17には鏡筒12の内周面から力が作用しない。このため、この力に起因するレンズ16,17どうしの接着剥がれを防止できる。
【0040】
(第2の実施の形態)
図3は第2の実施の形態の貼合わせレンズ18Aを示す断面図である。
この貼合わせレンズ18Aが第1の実施の形態の貼合わせレンズ18と主に異なる点は、上側のレンズ17の接合面の形状であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と共通の構成に同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0041】
第2の実施の形態の貼合わせレンズ18Aは、物体側のレンズ16と、像側のレンズ17とを接着剤で貼り合わせたものである。
なお、鏡筒12内に貼合わせレンズ18Aを組み込む際は、
図3に示す貼合わせレンズ18Aの上下を逆にして組み込む。
【0042】
レンズ17の傾斜面56aは、第1の実施の形態におけるレンズ17の傾斜面56より傾斜方向の長さが長くなっており、当該傾斜面56aの外周縁は接着剤溜り53の底面53aの近傍に位置している。傾斜面56aの外周側には平坦面61が環状に設けられており、この平坦面61と底面53aとの間には僅かな間隔が設けられている。また、平坦面61の外周側には傾斜面62が環状に設けられている。この傾斜面62は径方向外側に向かうほど上方(像側)に傾斜しており、この傾斜面62の外周側に平坦面63が環状に設けられている。そして、この平坦面63の外周側に嵌合面59が設けられ、この嵌合面59がレンズ16の嵌合面58と嵌合している。
【0043】
また、本実施の形態では、上下のレンズ17,16の有効径内における上下のレンズ17,15のレンズ面41,31どうしの間の外周側の間隔と、上下のレンズ17,16の有効径外における対向面55,54どうし間の間隔と、傾斜面56a,53bどうしの間の間隔とが等しくなっている。
さらに、レンズ面41,31どうしの間の間隔は中心側の方が外周側より広くなっている。
【0044】
本実施の形態では、傾斜面56aが接着剤溜り53の傾斜面53bと長さがほぼ等しくなっているとともに、傾斜面56aと傾斜面53bとの間の間隔が、第1の実施の形態における傾斜面56と傾斜面53bとの間の間隔より狭いので、接着剤溜り53に溜まる接着剤を含めてレンズ16,17どうしの接着に要する接着剤の量が第1の実施の形態より少なくてすむという利点がある。このため、接着剤溜り53の容積が第1の実施の形態の接着剤溜り53の容積より小さくなっている。また、有効径外における接着層の面積が第1の実施の形態より広くなるので、その分、接着強度が高まるという利点がある。
また、本実施の形態では、レンズ16のフランジ部16aの外周面より、レンズ17のフランジ部17aの外周面が径方向外側に突出しているので、レンズ16,17を貼合わせてなる貼合わせレンズ18Aを鏡筒12内に挿入して固定する場合に、レンズ17のフランジ部17aが鏡筒12の内周面に当接することになる。
【0045】
また、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、接着剤溜り53に流入した接着剤は上り壁53cによって堰き止められるので、レンズ16,17どうしを接着剤によって貼り合わせる際に、接着剤が嵌合部60に溢れ出すのを防止できる。
さらに、貼合わせレンズ18Aを鏡筒12内に挿入して固定する場合に、レンズ17のフランジ部17aが鏡筒12の内周面に当接することで、貼合わせレンズ18Aの径方向の位置決めを行うことができる。また、レンズ16のフランジ部16aの外周面が鏡筒12の内周面に当接しないので、レンズ16には鏡筒12の内周面から力が作用しない。このため、この力に起因するレンズ16,17どうしの接着剥がれを防止できる。
【0046】
(第3の実施の形態)
図4は第3の実施の形態の貼合わせレンズ18Bを示す断面図である。
この貼合わせレンズ18Bが第2の実施の形態の貼合わせレンズ18Aと主に異なる点は、レンズ16とレンズ17との接合面間の間隔であるので、以下ではこの点について説明し、第2の実施の形態と共通の構成に同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0047】
本実施の形態では、上下のレンズ17,16の有効径内における上下のレンズ17,15のレンズ面41,31どうしの間の間隔より、上下のレンズ17,16の有効径外における対向面55,54どうし間の間隔、傾斜面56a,53bどうしの間の間隔および底面53aと平坦面61との間の間隔のほうが広くなっている。
また、対向面55,54どうし間の間隔と、傾斜面(対向面)56a,53bどうしの間の間隔と、底面53aと平坦面61との間の間隔とは等しくなっている。
さらに、レンズ面41,31どうしの間の間隔は径方向外側に向かうほど広くなっている。
【0048】
このように、本実施の形態では、上下のレンズ17,16の有効径内における上下のレンズ17,15のレンズ面41,31どうしの間の間隔より、上下のレンズ17,16の有効径外における対向面55,54どうし間の間隔、傾斜面(対向面)56a,53bどうしの間の間隔および底面53aと平坦面61との間の間隔のほうが広くなっている。
したがって、レンズ17,16どうしを接合する場合に、接着剤がレンズ面41,31側から対向面54,53側に向けて径方向外側に流れていくが、この接着剤中の気泡は、貼合わされるレンズ17,16どうしが近づくにつれて、レンズ面41,31どうしの間から対向面55,54どうしの間、対向面(傾斜面)56a,53bどうしの間および底面53aと平坦面61との間に押し出されるように移動して、接着剤溜り53に流入するので、有効径の外側に排出され易くなる。したがって、レンズ面41,31どうしの間の気泡除去が容易となる。
【0049】
また、本実施の形態においても第2の実施の形態と同様に、接着剤溜り53に流入した接着剤は上り壁53cによって堰き止められるので、レンズ16,17どうしを接着剤によって貼り合わせる際に、接着剤が嵌合部60に溢れ出すのを防止できる。
さらに、貼合わせレンズ18Bを鏡筒12内に挿入して固定する場合に、レンズ17のフランジ部17aが鏡筒12の内周面に当接することで、貼合わせレンズ18Aの径方向の位置決めを行うことができる。また、レンズ16のフランジ部16aの外周面が鏡筒12の内周面に当接しないので、レンズ16には鏡筒12の内周面から力が作用しない。このため、この力に起因するレンズ16,17どうしの接着剥がれを防止できる。
【0050】
(第4の実施の形態)
図5は第4の実施の形態の貼合わせレンズ18Cを示す断面図である。
貼合わせレンズ18Cは、
図5に示すように、物体側の凹レンズ66と、像側の凸レンズ67とを接着剤で貼り合わせたものである。
なお、凹レンズ66と凸レンズ67とを貼り合す際は、凹レンズ66を下にし、凸レンズ67を上にして貼り合わせ作業を行う
なお、鏡筒12内に貼合わせレンズ18Cを組み込む際は、
図5に示す貼合わせレンズ18Cの上下を逆にして組み込む。
【0051】
凹レンズ66は、像側が凹面31とされ、物体側が凸面36とされている。また、凹レンズ66は、その光学上の有効径の範囲となるレンズ部66bとその外周縁の外側に形成された円環状のフランジ部66aとを備えている。また、凹レンズ66と凸レンズ67の貼り合わせに際しては、凹レンズ66の凹面31を上にして、この凹面31に接着剤を注入するようになっている。
【0052】
凸レンズ67は、光が通過する物体側の凸面41と像側の凸面46とを備えている。また、凸レンズ67は、その有効径rの範囲となるレンズ部67bと、その外周縁の外側に形成された円環状のフランジ部67aとを備えている。
これら凹レンズ66と凸レンズ67とを貼り合わせる際には、凹レンズ66の像側の凹面31に凸レンズ67の物体側の凸面41を接着剤により接合する。
この場合に、凹レンズ66の凹面31と凸レンズ67の凸面41との間が接着層51となる。なお、
図5においては、接着剤を図示していないが、接着層51には、接着剤が充填された状態となっている。また、接着層51の範囲は、有効径rの範囲より広くなっており、対向面54,55の間まで広がっている。
【0053】
レンズ66の有効径rの外側のフランジ部66aには、接着剤溜り73が円環状に設けられている。この接着剤溜り73は、断面略L字状に形成されており、平面円環状の底面73aと、この底面73aの外周側に当該底面73aと連続して設けられた円筒状の傾斜面73cとから構成されている。
傾斜面73cは、接着剤溜り73の底面73aの外周縁から径方向外側に向けて斜め上側に向かう上り壁73cとなっている。この上り壁73cの外周側には、上り壁73cの上縁と等しい高さの平坦面73dが設けられている。
また、接着剤溜り73の底面73aの内周側には傾斜面73bが設けられ、この傾斜面73bと前記凹面31との間に、平坦な対向面54が円環状に設けられている。この対向面54は凹レンズ66の有効径外に設けられており、有効径内におけるレンズ面(凹面)31と連続している。実際にはレンズ面31の有効径より外周側にはレンズ面31と連続する面があり、この面に対向面54が隣接している。また、対向面54は、前記平坦面73dより上側(像側)に位置している。
【0054】
一方、レンズ67のレンズ面(凸面)41の外周側には、平坦な対向面55が円環状に、かつ対向面54と所定の間隔をもって設けられている。この対向面55の径方向の幅は対向面54の径方向の幅とほぼ等いか、若干広くなっている。
また、対向面55の外周側には、径方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜面76が設けられている。この傾斜面(対向面)76は前記傾斜面(対向面)73bと所定の間隔をもって対向して配置されるとともに、当該傾斜面73bと傾斜方向の長さがほぼ等しくなっている。
また、傾斜面76の外周側には、平坦面77が円環状に設けられており、この平坦面77は接着剤溜り73の底面73aと平行となっており、また、平坦面77は底面73aと所定の間隔をもって対向している。
【0055】
凹レンズ66の凹面31と凸レンズ67の凸面41との間に注入された接着剤の一部は、対向面54と対向面55との間に当該間を通るようにして広がり、当該間に充填され、さらに余分な接着剤が傾斜面73bと傾斜面76との間を傾斜面73bに沿って下って接着剤溜り73に流入する。したがって、接着剤溜り73の堰き止め部として機能する上り壁73cの高さは、余分な接着剤が上り壁73cの上端を越えないような高さに設定されている。
【0056】
また、上下のレンズ67,66の有効径内における上下のレンズ67,66のレンズ面41,31どうしの間の間隔より、上下のレンズ67,66の有効径外における対向面55,54どうし間の間隔および傾斜面76,73bどうしの間の間隔が広くなっている。
また、対向面(傾斜面)73bと対向面(傾斜面)76との間の間隔は、対向面54と対向面55との間の間隔より広くなっている。
なお、レンズ面41,31どうしの間の間隔は、レンズ面41,31の外周部側の間隔の方が、レンズ面41,31の中央部付近(レンズ面41,31と光軸とが交差する部分およびその近傍)間の間隔より広くなっている。
【0057】
また、レンズ66のフランジ部66aとレンズ67のフランジ部67aとは嵌合している。すなわち、レンズ67の平坦面77の外周側には傾斜面78が設けられている。この傾斜面78は平坦面77の外周縁から径方向外側に向けて斜め上側に向かうように形成されており、光軸に対する傾斜角度は、前記上り壁73cと等してくなっている。
そして、この傾斜面78と上り壁73cの上部73eとが嵌合することで、嵌合部60Aが構成されている。すなわち、上り壁73cの略上半分が嵌合面73eとされ、傾斜面78の全体が嵌合面78とされ、これら嵌合面73e,78どうしが嵌合することで、嵌合部60Aが構成されている。この嵌合部60によってレンズ66,67の径方向の位置決めがなされている。つまり、レンズ66,67の光軸が一致している。
また、レンズ67の傾斜面78の外周側には平坦面79が円環状に設けられている。なお、この平坦面79はフランジ部67aの下面(物体側の面)に形成され、前記平坦面73dはフランジ部66aの上面(像側の面)に形成されている。
そして、嵌合部60Aの外側(外周側)では、フランジ部66aの上側(像側)の平坦面73dとフランジ部67aの下側(物体側)の平坦面79cとが互いに当接しており、これによって、レンズ66,67の光軸方向の位置決めがなされている。
【0058】
また、レンズ67のフランジ部67aの外周面より、レンズ66のフランジ部66aの外周面が径方向外側に突出している。つまり、レンズ67よりレンズ66の方が大径となっている。
【0059】
このような構成により、レンズ66、67の接合時には、平面視して、円板状の接着層51から略径方向に沿って外側に溢れ出した接着剤は、接着層51の外側の対向面54,55間(接着剤通路)および傾斜面73b,76間(接着剤通路)に至り、さらに、径方向外側に接着剤が拡がるように流れ出て、接着剤通路の外側に設けられた接着剤溜り73に流入するようになっている。接着剤溜り73の外周部には、当該接着剤溜り73の底面73aから上側に向かう上り壁73cが設けられているので、接着剤溜り73に流入した余分な接着剤は上り壁73cによって堰き止められて、嵌合部60A側に溢れ出ることがない。
【0060】
図6は、本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。
図6に示すように、カメラモジュール300は、フィルタ100が装着されたレンズユニット11を含んで構成されている。このレンズユニット11は上述したように貼合わせレンズ18を有している。したがって、カメラモジュール300は貼合わせレンズ18を備えたものとなっている。なお、カメラモジュール300において、レンズユニット11に、貼合わせレンズ18に代えて、貼合わせレンズ18A,18B,18Cを組み込んでもよい。
【0061】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(フランジ、台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0062】
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒1の外周面との間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0063】
パッケージセンサ304は、上ケース301の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成された物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光して到達した光を電気信号に変換する。変換された電気信号はカメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0064】
以上のように本実施の形態によれば、貼り合わされたレンズ66,67の間の接着層51より径方向外側でかつ、嵌合部60Aより径方向内側において、下側のレンズ66のフランジ部66aに接着剤溜り73が環状に設けられ、この接着剤溜り73の外周部に、当該接着剤溜り73の底面73aから上側に向かう上り壁73cが設けられているので、接着剤が接着層51を越えると当該接着剤は接着剤溜り73に流入するが、この流入した接着剤は上り壁73cによって堰き止められる。したがって、レンズ66,67どうしを接着剤によって貼り合わせる際に、接着剤が嵌合部60Aに溢れ出すのを防止できる。
【0065】
また、上下のレンズ67,66の有効径内におけるレンズ面41,31どうしの間の間隔より、レンズ67,66の有効径外における対向面55,54どうし間の間隔および対向面(傾斜面)76,73bどうし間の間隔が広くなっている。したがって、レンズ67,66どうしを接合する場合に、接着剤がレンズ面41,31側から対向面55,54側に向けて径方向外側に流れていくが、この接着剤中の気泡は、貼合わされるレンズ67,66どうしが近づくにつれて、レンズ面41,31どうしの間から対向面55,54どうしの間および対向面(傾斜面)76,73bどうしの間に押し出されるように移動して、接着剤溜り73に流入するので、有効径の外側に排出され易くなる。したがって、レンズ面41,31どうしの間の気泡除去が容易となる。
【0066】
また、レンズ67のフランジ部67aの外周面より、レンズ66のフランジ部66aの外周面が径方向外側に突出しているので、レンズ66,67を貼合わせてなる貼合わせレンズ18Cを鏡筒12内に挿入して固定する場合に、レンズ66のフランジ部66aが鏡筒12の内周面に当接することで、貼合わせレンズ68の径方向の位置決めを行うことができる。また、レンズ67のフランジ部67aの外周面が鏡筒12の内周面に当接しないので、レンズ67には鏡筒12の内周面から力が作用しない。このため、この力に起因するレンズ66,67どうしの接着剥がれを防止できる。
さらに、嵌合部60Aは、上り壁73cの上部の嵌合面73dと、上側のレンズ67のフランジ部67aに設けられた傾斜面78(嵌合面)との嵌合によって構成されている。したがって、上り壁73cの上部を利用して嵌合部60Aを構成できるので、下側のフランジ部66aに嵌合部を構成する別の嵌合形状を形成する必要がない。
また、カメラモジュール300は、貼合わせレンズ11を有するレンズユニット20を備えているので、上述の貼合わせレンズ11の作用効果をカメラモジュール300で得ることができる。
【0067】
なお、第1〜4実施の形態では、貼合わせレンズ18,18A,18B,18Cは樹脂レンズであるが、本発明の貼合わせレンズは、樹脂レンズに限られるものではなく、ガラスレンズであってもよい。