(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のレジンコーテッドサンドは、骨材と樹脂とを含有している。
【0018】
骨材は、砂状材料および粒状材料であって、例えば、耐熱性骨材、耐火性骨材などが挙げられる。骨材として、より具体的には、例えば、石英質を主成分とする珪砂、フラタリ砂、アルミナ砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、ムライト砂などの天然骨材、例えば、合成ムライト砂、マグネシア、フライアッシュなどの合成骨材などが挙げられる。また、これらは、新砂、回収砂、再生砂、および、これらの混合砂など、いずれであってもよい。これら骨材は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0019】
骨材は、レジンコーテッドサンドの目的および用途に応じて、適宜選択される。レジンコーテッドサンドを鋳型材料として用いる場合、好ましくは、天然骨材が挙げられ、より好ましくは、珪砂、フラタリ砂が挙げられる。
【0020】
なお、骨材の粒子形状、粒子径および粒度分布は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0021】
骨材の含有割合は、耐火性の観点から、レジンコーテッドサンドの総量100質量部に対して、例えば、80質量部以上、好ましくは、85質量部以上、より好ましくは、90質量部以上であり、例えば、99質量部以下、好ましくは、98質量部以下である。
【0022】
樹脂は、リグニンとフェノール類とアルデヒド類との反応生成物を含有している。好ましくは、樹脂は、リグニンとフェノール類とアルデヒド類との反応生成物からなる。
【0023】
リグニンは、グアイアシルリグニン(G型)、シリンギルリグニン(S型)、p−ヒドロキシフェニルリグニン(H型)などの基本骨格からなる高分子フェノール性化合物であって、植物全般に含まれている。
【0024】
リグニンは、例えば、製造方法により分類され、具体的には、植物を爆砕法で処理して得られる爆砕リグニン、植物を蒸解法で処理して得られる蒸解リグニンなどが挙げられる。入手容易性の観点から、好ましくは、蒸解リグニンが挙げられる。
【0025】
また、リグニンは、原料となる植物の種類によっても分類され、例えば、木本系植物由来リグニン、草本系植物由来リグニンが挙げられる。
【0026】
木本系植物由来リグニンとしては、例えば、針葉樹(例えば、スギなど)に含まれる針葉樹系リグニン、例えば、広葉樹に含まれる広葉樹系リグニンなどが挙げられる。このような木本系植物由来リグニンは、H型を基本骨格とするリグニンを含まず、例えば、針葉樹系リグニンはG型を基本骨格とし、広葉樹系リグニンは、G型およびS型を基本骨格としている。
【0027】
草本系植物由来リグニンとしては、例えば、イネ科植物(麦わら、稲わら、とうもろこし、タケなど)に含まれるイネ系リグニンなどが挙げられる。このような草本系植物由来リグニンは、H型、G型およびS型の全てを基本骨格としている。
【0028】
これらのリグニンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0029】
リグニンとして、好ましくは、草本系植物由来リグニン、より好ましくは、コーンストーバー(とうもろこしの芯、茎、葉など)に由来する草本系植物由来リグニンが挙げられる。
【0030】
また、リグニンとして、好ましくは、反応性の観点から、H型の基本骨格を3質量%以上、より好ましくは、9質量%以上、さらに好ましくは、14質量%以上の割合で含有することが挙げられる。
【0031】
このようなリグニンは、例えば、リグニンの原料となる植物材料(例えば、針葉樹、広葉樹、イネ科植物など)をアルカリ(例えば、苛性ソーダなど)により蒸解して得られるパルプ廃液(黒液)から、アルカリリグニンとして取り出すことができる。
【0032】
なお、アルカリによる蒸解条件としては、特に制限されず、公知の条件が採用される。
【0033】
また、リグニンは、好ましくは、酸により変性される。
【0034】
すなわち、リグニンとして、好ましくは、酸により変性されたリグニンが挙げられる。
【0035】
酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、例えば、カルボン酸、スルホン酸などの有機酸などが挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用することができる。酸として、好ましくは、カルボン酸が挙げられる。
【0036】
換言すれば、リグニンとして、より好ましくは、カルボン酸により変性されたリグニン(以下、カルボン酸変性リグニンと称する場合がある。)が挙げられる。
【0037】
カルボン酸変性リグニンにおいて、カルボン酸としては、例えば、カルボキシ基を1つ有するカルボン酸(以下、単官能カルボン酸と称する場合がある。)が挙げられ、具体的には、例えば、飽和脂肪族単官能カルボン酸、不飽和脂肪族単官能カルボン酸、芳香族単官能カルボン酸などが挙げられる。
【0038】
飽和脂肪族単官能カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸などが挙げられる。
【0039】
不飽和脂肪族単官能カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、リノール酸などが挙げられる。
【0040】
芳香族単官能カルボン酸としては、例えば、安息香酸、2−フェノキシ安息香酸、4−メチル安息香酸などが挙げられる。
【0041】
これらカルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
カルボン酸として、好ましくは、飽和脂肪族単官能カルボン酸、より好ましくは、酢酸が挙げられる(換言すれば、リグニンとして、酢酸により変性されたリグニンが好適である。)。上記のカルボン酸を用いれば、カルボン酸変性リグニンを簡易に得ることができ、また、得られるカルボン酸変性リグニンは、後述するように、有機溶媒に対する溶解性が比較的高く、また、溶融温度が比較的低温(100〜200℃程度)であるため、取扱性にも優れる。
【0043】
また、カルボン酸は、水溶液として調製することができる。そのような場合、カルボン酸水溶液の濃度は、特に制限されず、適宜設定される。
【0044】
カルボン酸変性リグニンの製造方法は、特に制限されず、公知の方法に準拠することができる。
【0045】
具体的には、例えば、リグニンの原料となる植物材料(例えば、針葉樹、広葉樹、イネ科植物など)を、カルボン酸(好ましくは、酢酸)を用いて蒸解することによって、パルプ廃液としてカルボン酸変性リグニンを得ることができる。
【0046】
蒸解方法としては、特に制限されないが、例えば、リグニンの原料となる植物材料と、カルボン酸および無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)とを混合し、反応させる。
【0047】
カルボン酸の配合割合は、リグニンの原料となる植物材料100質量部に対して、カルボン酸(100%換算)が、例えば、500質量部以上、好ましくは、900質量部以上であり、例えば、30000質量部以下、好ましくは、15000質量部以下である。
【0048】
また、無機酸の配合割合は、リグニンの原料となる植物材料100質量部に対して、無機酸(100%換算)が、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0049】
また、反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは、250℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0050】
このような蒸解によって、パルプが得られるとともに、パルプ廃液としてカルボン酸変性リグニンが得られる。
【0051】
次いで、この方法では、濾過などの公知の分離方法によってパルプを分離し、濾液(パルプ廃液)を回収し、必要により、未反応のカルボン酸を、例えば、ロータリーエバポレーター、減圧蒸留などを用いた公知の方法により除去(留去)する。その後、大過剰の水を添加してカルボン酸変性リグニンを沈殿させ、濾過することによって、固形分としてカルボン酸変性リグニンを回収する。
【0052】
また、カルボン酸変性リグニンを得る方法は、上記に限定されず、例えば、アルカリリグニンなどのカルボン酸により変性されていないリグニン(以下、未変性リグニン)とカルボン酸とを反応させることにより、カルボン酸変性リグニンを得ることもできる。
【0053】
このような方法では、未変性リグニンとして、好ましくは、粉末状の未変性リグニンが挙げられる。
【0054】
粉末状の未変性リグニンの平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0055】
平均粒子径が上記範囲であれば、未変性リグニンの凝集を抑制して、未変性リグニンをカルボン酸に対して良好に分散することができる。
【0056】
なお、粉末状の未変性リグニンは、塊状の未変性リグニンを公知の方法で乾燥および粉砕することにより得ることができ、また、市販品を用いることもできる。
【0057】
未変性リグニンとカルボン酸とを反応させる方法としては、例えば、未変性リグニンと、カルボン酸および無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)とを混合し、反応させる。
【0058】
カルボン酸の配合割合は、未変性リグニン100質量部に対して、カルボン酸(100%換算)が、例えば、300質量部以上、好ましくは、500質量部以上であり、例えば、15000質量部以下、好ましくは、10000質量部以下である。
【0059】
また、無機酸の配合割合は、未変性リグニン100質量部に対して、無機酸(100%換算)が、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0060】
また、反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは、250℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0061】
このようなカルボン酸変性リグニンは、取扱性に優れる。
【0062】
すなわち、カルボン酸により変性されていないリグニンは、有機溶媒に対する溶解性が比較的低く、また、溶融しないため、用途によっては、取扱性に劣る場合がある。
【0063】
一方、上記のようにカルボン酸により変性されたリグニンは、有機溶媒(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、メタノールなどの脂肪族アルコール類、例えば、フェノール、クレゾール、ビスフェノールAなどのフェノール類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、その他、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性溶媒など)に対する溶解性が比較的高く、比較的低温(100〜200℃程度)において溶融可能であるため、取扱性に優れる。
【0064】
そのため、カルボン酸変性リグニンは、上記の有機溶媒の溶液として用いることもできる。そのような場合、溶液におけるカルボン酸変性リグニンの濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上である。
【0065】
また、カルボン酸変性リグニンの平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、2cm以下、好ましくは、1cm以下である。
【0066】
また、カルボン酸変性リグニンは、上記の有機溶媒(好ましくは、酢酸エチル)により溶解可能な成分(可溶成分)と、上記の有機溶媒によって溶解不能な成分(不溶成分)との混合物として得られる場合がある。
【0067】
このような場合、カルボン酸変性リグニンとして、可溶成分と不溶成分との混合物(粗カルボン酸変性リグニンと称する。)を用いることができる。
【0068】
また、可溶成分と不溶成分とを分離して、可溶成分のみを用いることもでき、また、不溶成分のみを用いることもできる。さらには、分離された可溶成分と不溶成分とを、混合して用いることもできる。
【0069】
カルボン酸変性リグニンとして、好ましくは、可溶成分が挙げられる。
【0070】
可溶成分と不溶成分とを分離する方法としては、例えば、上記した有機溶媒による抽出法などが採用される。
【0071】
なお、抽出条件は、使用される有機溶媒、および、粗カルボン酸変性リグニンの物性などに応じて、適宜設定される。
【0072】
カルボン酸変性リグニンを用いれば、抗折力、および、なりより性の向上を図ることができる。
【0073】
また、抗折力、および、なりより性のさらなる向上を図る観点から、カルボン酸変性リグニンは、好ましくは、さらに、フェノール類(後述)により変性される。
【0074】
すなわち、リグニンとして、好ましくは、カルボン酸(より好ましくは、酢酸)およびフェノール類(後述)により変性されたリグニン(以下、カルボン酸−フェノール変性リグニンと称する場合がある。)が挙げられる。
【0075】
このようなカルボン酸−フェノール変性リグニンは、好ましくは、後述するように、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂(後述)の製造において、カルボン酸変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類を順次反応させることにより、その中間生成物として調製される。なお、順次反応についての詳細は後述する。
【0076】
フェノール類は、フェノールおよびその誘導体(フェノール変性体)であって、例えば、フェノール、さらには、例えば、o−クレゾール、p−クレゾール、p−ter−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−または2,6−キシレノール、m−クレゾール、レゾルシノール、3,5−キシレノール、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタンなどが挙げられる。また、フェノール誘導体としては、例えば、塩素、臭素などのハロゲンにより置換されたハロゲン化フェノール類なども挙げられる。これらフェノール類は、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、フェノールの誘導体(フェノール変性体)が用いられる場合、フェノールが変性されるタイミングは特に制限されず、リグニンとフェノール類とアルデヒド類との反応前、反応後、反応と同時のいずれでもよい。
【0077】
フェノール類として、耐熱性の観点から、好ましくは、フェノールが挙げられる。
【0078】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド(n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド)、フルフラール、グリオキサール、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンなどが挙げられる。また、アルデヒドの一部が、フルフリルアルコールなどに置換されていてもよい。これらアルデヒド類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0079】
アルデヒド類として、好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0080】
また、アルデヒド類は、例えば、水溶液として用いることができる。そのような場合において、アルデヒド類の濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0081】
また、アルデヒド類とともに、ケトン類を配合することもできる。
【0082】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、ジフェニルケトンなどが挙げられる。これらケトン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
ケトン類が配合される場合、ケトン類の配合割合は、固形分基準で、アルデヒド類100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
【0084】
そして、リグニンとフェノール類とアルデヒド類(および必要により配合されるケトン類(以下同様))とを反応させるには、上記の各成分(リグニン、フェノール類およびアルデヒド類)を配合し、加熱する。
【0085】
この反応において、フェノール類の配合割合は、リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
【0086】
また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。また、アルデヒド類の配合割合は、リグニン100質量部に対して、例えば、1.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、例えば、350質量部以下、好ましくは、300質量部以下である。
【0087】
また、リグニンおよびフェノール類の総量100質量部に対して、リグニンが、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。また、フェノール類が、例えば、50質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。
【0088】
また、この反応では、酸触媒が添加される。すなわち、上記の各成分は、酸触媒下において反応する。
【0089】
酸触媒としては、例えば、有機酸、無機酸などが挙げられる。
【0090】
有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、キュメンスルホン酸、ジノニルナフタレンモノスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などのスルホン酸化合物、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有するリン酸エステル類、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸などが挙げられる。
【0091】
無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
【0092】
これら酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0093】
酸触媒として、好ましくは、有機酸、より好ましくは、シュウ酸が挙げられる。
【0094】
酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、酸触媒が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0095】
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されず、リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよく、また、リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合時に同時に添加されてもよく、さらに、リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合後に添加されてもよい。
【0096】
反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
【0097】
これにより、リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の反応生成物として、リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(以下、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂と称する場合がある。)を含む樹脂組成物が得られる。
【0098】
より具体的には、酸触媒下におけるフェノール類とアルデヒド類との反応によって、ノボラック型フェノール樹脂が得られ、また、そのノボラック型フェノール樹脂が、リグニンにより変性される。すなわち、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂を含む樹脂組成物が得られる。
【0099】
また、リグニンとフェノール類とアルデヒド類との反応では、上記のように、上記各成分を一括配合して反応させることもできるが、上記各成分を順次配合して反応させることもできる。より具体的には、例えば、まず、リグニンとフェノール類とを反応させ、次いで、得られた反応生成物と、アルデヒド類とを反応させることができる。
【0100】
抗折力、および、なりより性の向上を図る観点から、好ましくは、上記各成分を順次配合して反応させる。具体的には、まず、リグニンとフェノール類とを反応させ、次いで、得られた反応生成物と、アルデヒド類とを反応させる。
【0101】
リグニンとフェノール類との反応において、フェノール類の配合割合は、リグニンに対して過剰であり、具体的には、リグニン100質量部に対して、例えば、120質量部以上、好ましくは、150質量部以上であり、例えば、1000質量部以下、好ましくは、600質量部以下である。
【0102】
また、リグニンおよびフェノール類の総量100質量部に対して、リグニンが、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。また、フェノール類が、例えば、50質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。
【0103】
また、この反応では、上記の酸触媒が添加される。
【0104】
酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0105】
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されず、リグニンおよびフェノール類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよく、また、リグニンおよびフェノール類の配合時に同時に添加されてもよく、さらに、リグニンおよびフェノール類の配合後に添加されてもよい。
【0106】
反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
【0107】
これにより、フェノール類がリグニンにより変性される。換言すれば、リグニンがフェノール類により変性され、フェノール変性リグニンが得られる。
【0108】
このとき、リグニンが、カルボン酸(好ましくは、酢酸)により変性されたリグニンである場合、カルボン酸(好ましくは、酢酸)により変性されたリグニンが、さらに、フェノール類により変性される。その結果、カルボン酸(好ましくは、酢酸)と、フェノール類とにより変性されたリグニン(カルボン酸−フェノール変性リグニン)が得られる。
【0109】
なお、上記の反応では、過剰のフェノール類が、未反応成分として残存する。そのため、反応生成物には、好ましくは、遊離のフェノール類が含有される。
【0110】
そして、この方法では、上記により得られる反応生成物と、アルデヒド類とを反応させる。すなわち、反応生成物に含まれるフェノール変性リグニンおよびフェノール類と、アルデヒド類とを反応させる。
【0111】
この反応において、アルデヒド類の配合割合は、フェノール類(フェノール変性リグニンの製造において原料として用いられたフェノール類)100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0112】
また、この反応では、必要に応じて、上記の酸触媒を適宜の割合で添加することもできる。
【0113】
反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
【0114】
これにより、上記の反応生成物(フェノール変性リグニンおよび遊離のフェノール類)と、アルデヒド類とが反応する。その結果、フェノール変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂が得られる。
【0115】
なお、上記の方法では、必要により、蒸留などの公知の方法によって、未反応原料(未反応のフェノール類など)や酸触媒を除去することができる。
【0116】
リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、例えば、1000以上、好ましくは、2000以上であり、例えば、9000以下、好ましくは、7000以下である。
【0117】
リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂の含有割合は、骨材100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0118】
また、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂の含有割合は、レジンコーテッドサンドの総量100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0119】
また、樹脂は、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂の他、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂を含有することもできる。
【0120】
リグニンに変性されていないノボラック型フェノール樹脂としては、特に制限されず、公知のノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。また、ノボラック型フェノール樹脂は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、商品名SP615(旭有機材社製)、商品名SP1000D(旭有機材社製)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0121】
リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、例えば、1000以上、好ましくは、2000以上であり、例えば、6000以下、好ましくは、4000以下である。
【0122】
また、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂と、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂との混合樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、例えば、1000以上、好ましくは、2000以上であり、例えば、9000以下、好ましくは、7000以下である。
【0123】
リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂の含有割合は、レジンコーテッドサンドの総量100質量部に対して、例えば、0質量部以上であり、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0124】
また、樹脂が、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂と、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂とを含有する場合、それらの総量100質量部に対して、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂が、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。また、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂が、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0125】
また、樹脂は、好ましくは、硬化剤(架橋剤)を含有する。
【0126】
硬化剤としては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート、アルデヒド、ホルムアルデヒドを生成する化合物、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、不飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。硬化剤として、好ましくは、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、アルデヒド、ホルムアルデヒドを生成する化合物、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、不飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸無水物などが挙げられる。
【0127】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールSグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールADグリシジルエーテル型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシなどが挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、カーボンニュートラルに対応した天然由来エポキシ樹脂が挙げられ、具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸エステル類、エポキシ化アマニ油、ダイマー酸変性エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0128】
ポリイソシアネートとしては、公知のポリイソシアネート化合物が挙げられ、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、例えば、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族イソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネートなどが挙げられる。また、ポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート化合物の変性体も挙げられる。具体的には、ポリイソシアネート化合物の多量体、ポリイソシアネート化合物のポリオール変性体、ポリイソシアネート化合物のビウレット変性体などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0129】
アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒドが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0130】
ホルムアルデヒドを生成する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。
【0131】
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族多価カルボン酸、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0132】
多価カルボン酸無水物としては、例えば、マロン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、ピメリン酸無水物、スベリン酸無水物、アゼライン酸無水物、エチルナジック酸無水物、アルケニルコハク酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物などの脂肪族多価カルボン酸無水物、例えば、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、フタル酸無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0133】
不飽和多価カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、α−エチルアクリル酸、α−n−プロピルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0134】
不飽和多価カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0135】
硬化剤として、硬化性、耐熱性観点から、より好ましくは、ホルムアルデヒドを生成する化合物が挙げられ、とりわけ好ましくは、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。
【0136】
硬化剤の含有割合は、レジンコーテッドサンドの総量100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0137】
また、樹脂の総量100質量部に対して、硬化剤が、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0138】
また、レジンコーテッドサンドは、さらに、添加剤を含有することができる。
【0139】
添加剤としては、例えば、硬化促進剤、滑剤など、その他、充填剤、着色剤、可塑剤、安定剤、離型剤などが挙げられ、好ましくは、硬化促進剤、滑剤が挙げられる。
【0140】
硬化促進剤としては、特に制限されないが、例えば、シクロアミジン化合物、キノン化合物、3級アミン類、有機ホスフィン類、イミダゾール類(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなど)、消石灰などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0141】
滑剤としては、特に制限されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミド、オキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、カルバナワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0142】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0143】
なお、添加剤の含有割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0144】
レジンコーテッドサンドを製造する方法は、特に制限されないが、例えば、まず、上記の方法により樹脂を製造し、その後、骨材と樹脂とを加熱混合する。
【0145】
加熱混合として、具体的には、例えば、まず、骨材を加熱する。加熱温度は、骨材の種類などに応じて適宜設定されるが、例えば、100℃以上、好ましくは、110℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、170℃以下である。
【0146】
次いで、加熱された骨材と、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂とを、上記の割合で混合および撹拌し、さらに、必要により、硬化剤および硬化促進剤を添加して、冷却しながら、塊状の骨材が粒状に崩壊するまで混練および撹拌する。その後、必要により滑剤を添加し、さらに混練および撹拌する。
【0147】
これにより、骨材がリグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂により被覆され、レジンコーテッドサンドが得られる。
【0148】
このようなレジンコーテッドサンドの製造方法によれば、レジンコーテッドサンドを効率よく製造することができる。
【0149】
そして、このようなレジンコーテッドサンドは、リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物(リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂)が、含有される。このような反応生成物は、リグニンを含有するため、カーボンニュートラルに対応し、また、工業的に生産が容易である。さらに、このような反応生成物を用いることにより、十分な抗折力、および、なりより性を得ることができる。
【0150】
そのため、レジンコーテッドサンドは、鋳型材料として、好適に用いられる。
【0151】
レジンコーテッドサンドを鋳型材料として用いる場合、例えば、成形型内に、重力落下方式や吹き込み方式などの公知の方法でレジンコーテッドサンドを充填し、加熱によりレジンコーテッドサンドを硬化させた後、成形型から取り出す。
【0152】
加熱条件は、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上であり、例えば、350℃以下、好ましくは、300℃以下である。また、加熱時間は、例えば、30秒以上、好ましくは、1分以上であり、例えば、5分以下、好ましくは、3分以下である。
【0153】
これにより、硬化物として、中子鋳型などの鋳型を得ることができる。
【0154】
なお、レジンコーテッドサンドの用途は、上記に限定されず、種々の産業分野において、用いることができる。
【実施例】
【0155】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0156】
また、各実施例および各比較例において採用される測定方法を、下記する。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量測定>
サンプルをテトラヒドロフランに溶解させ、試料濃度を1.0g/Lとして、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって測定し、サンプルの分子量分布を得た。
【0157】
その後、得られたクロマトグラム(チャート)から、標準ポリスチレンを検量線として、サンプルの重量平均分子量を算出した。測定装置および測定条件を以下に示す。
データ処理装置:品番HLC−8320GPC(東ソー社製)
示差屈折率検出器:品番UV−8320検出器(東ソー社製)
カラム:品番G2500×2+G2000×2(東ソー社製)
移動相:THF
カラム流量:1mL/min
試料濃度:1g/L
注入量:50μL
測定温度:40℃
分子量マーカー:標準ポリスチレン
製造例1(未変性リグニン(アルカリリグニン))
麦わらのアルカリ蒸解パルプ製造時に副生する黒液(固形分30%まで濃縮したもの)1000質量部に、62.5%硫酸水溶液を添加し、pHを3〜4とした。その後、濾過することにより、固形分として未変性リグニンを得た。
【0158】
製造例2(酢酸変性リグニン)
コーンストーバー100質量部を、95質量%の酢酸1000質量部および硫酸3質量部と混合し、還流下において4時間反応させた。反応後、濾過してパルプを除去し、パルプ廃液を回収した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてパルプ廃液中の酢酸を除去し、体積が1/10になるまで濃縮した後、その濃縮液の10倍量(質量基準)の水を添加し、濾過することにより、固形分として酢酸変性リグニンを得た。
【0159】
製造例3(リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂(一括反応))
フェノール493.5gをフラスコに入れ、50℃程度まで加熱してフェノールを液化させ、その後、製造例1で得られた未変性リグニン150gを添加した。
【0160】
次いで、シュウ酸(酸触媒)7.62gと、92%パラホルムアルデヒド(HCHO)溶液117.3gとを添加し、95℃で2.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで110℃まで昇温し、110℃で1.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで120℃まで昇温し、120℃で2時間反応させた。
【0161】
反応後、2300gの水を添加し、強く撹拌した後に静置し、デカンテーションで水を除去することによって、シュウ酸およびフェノールを除去した。さらに、適宜、水を加えつつ120℃、0.08MPaの条件で減圧蒸留し、残留フェノールを除去した。なお、減圧蒸留はフェノール残存率が3%以下になるまで繰り返した。
【0162】
これにより、未変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂)を得た。
【0163】
得られた樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)を、表1に示す。
【0164】
製造例4(酢酸リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂(一括反応))
製造例2で得られた酢酸変性リグニンを用い、製造例3と同様の方法で操作を行い、酢酸変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(酢酸リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂)を得た。
【0165】
得られた樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)を、表1に示す。
【0166】
製造例5(酢酸リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂(順次反応))
フェノール493.5gをフラスコに入れ、50℃程度まで加熱してフェノールを液化させ、その後、製造例2で得られた酢酸変性リグニン150gを添加した。
【0167】
次いで、シュウ酸(酸触媒)7.62gを添加し、その後、130℃で2.5時間反応させた。これにより、酢酸変性リグニンをフェノールにより変性させた。
【0168】
その後、80℃まで冷却し、92%パラホルムアルデヒド溶液117.3gを添加し、95℃で2.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで110℃まで昇温し、110℃で1.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで120℃まで昇温し、120℃で2時間反応させた。
【0169】
反応後、2300gの水を添加し、強く撹拌した後に静置し、デカンテーションで水を除去することによって、シュウ酸およびフェノールを除去した。さらに、適宜、水を加えつつ120℃、0.08MPaの条件で減圧蒸留し、残留フェノールを除去した。なお、減圧蒸留はフェノール残存率が3%以下になるまで繰り返した。
【0170】
これにより、酢酸変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(酢酸リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂)を得た。
【0171】
得られた樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)を、表1に示す。
【0172】
製造例6〜7(酢酸リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂(一括反応))
表1に示す配合処方とした以外は、製造例4と同様にして、酢酸変性リグニンで変性されたノボラック型フェノール樹脂(酢酸リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂)を得た。
【0173】
得られた樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)を、表1に示す。
【0174】
製造例8(混合樹脂)
製造例7で得た樹脂と、市販のノボラック型フェノール樹脂(品番SP615、旭有機材社製)を120℃で混合した。このとき、樹脂の質量比を、製造例7で得た樹脂:市販のノボラック型フェノール樹脂=2:1とした。
【0175】
これにより、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂と、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂との混合樹脂1を得た。
【0176】
得られた樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)を、表1に示す。
【0177】
製造例9(混合樹脂)
製造例7で得た樹脂と、市販のノボラック型フェノール樹脂(品番SP615、旭有機材社製)を120℃で混合した。このとき、樹脂の質量比を、製造例7で得た樹脂:市販のノボラック型フェノール樹脂=1:1とした。
【0178】
これにより、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂と、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂との混合樹脂2を得た。
【0179】
得られた樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)を、表1に示す。
【0180】
製造例10(混合樹脂)
製造例7で得た樹脂と、市販のノボラック型フェノール樹脂(品番SP615、旭有機材社製)を120℃で混合した。このとき、樹脂の質量比を、製造例7で得た樹脂:市販のノボラック型フェノール樹脂=1:2とした。
【0181】
これにより、リグニン変性−ノボラック型フェノール樹脂と、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂との混合樹脂3を得た。
【0182】
得られた樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)を、表1に示す。
【0183】
参考例1、実施例
2〜8および比較例1〜2
実験用スピードミキサーに、130〜140℃に予熱した珪砂10kgと、各製造例で得られた樹脂200gとを投入し、60秒間混練した。
【0184】
次いで、ミキサー内にヘキサメチレンテトラミン水溶液(水150gにヘキサメチレンテトラミン30gを溶解した溶液)を添加し、ブロワーで送風しながら砂の塊状物が粒状に崩壊するまで混練した。
【0185】
そして、ステアリン酸カルシウム10gを添加し、さらに5秒間混練した。
【0186】
これにより、レジンコーテッドサンド(RCS)を得た。
【0187】
評価
(1)冷間抗折力(強度)
レジンコーテッドサンドを用いて、JIS−K−6910(1999年)に準じて、JIS式テストピース(幅:10mm×厚さ:10mm×長さ:60mm、焼成条件:250℃×60秒間)を作成した。そして、JIS式テストピースを用いて、JACT試験法:SM−1に準じてその強度を測定した。
【0188】
(2)最大たわみ量および破断時間(なりより性)
レジンコーテッドサンドを120mm×50mm×5mmの大きさに成形し、260℃×40秒間の条件で焼成した後、常温まで放置し冷却した。これにより、試験用鋳型片を製造した。
【0189】
次いで、
図1に示すように、鋳型片を支持台にセットし、発熱体(直径:8mmのエレマ棒)を200℃から徐々に加熱し、800℃まで昇温させた。
【0190】
また、鋳型片の先端部から10mmの位置にレーザー変位計をセットし、昇温過程における鋳型片の測定点の変位(変形)量を測定した。
【0191】
この時、鋳型片は、発熱体の加熱部分で破断する。このとき、破断するまでに得られた変位量(変化量)の最大値を「最大たわみ量」、破断するまでに要した時間を「破断時間」とする。これらの数値が大きいほど、なりより性に優れるとして評価した。
【0192】
なお、冷間抗折力が30kgf/cm
2以上、かつ、最大たわみ量が0.5mm以上、かつ、破断時間が300s以上であれば、鋳型に使用可能である。
【0193】
【表1】
【0194】
(考察)
比較例1〜2に示されるように、アルカリリグニンや酢酸変性リグニンを、フェノール類およびアルデヒド類と反応させずに樹脂として用いると、樹脂と骨材とを混練できず、レジンコーテッドサンドを得ることができなかった。
【0195】
一方、
実施例2〜8に示されるように
、酢酸変性リグニンと、フェノール類およびアルデヒド類とを反応させた反応生成物(リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂)を樹脂として用いると、樹脂と骨材とを混練でき、レジンコーテッドサンドを得ることができた。また、これはリグニンを含有するため、カーボンニュートラルに対応し、工業的に生産が容易であった。
【0196】
さらに、各実施例のレジンコーテッドサンドは、一般のフェノール樹脂レジンコーテッドサンドと同程度の抗折力、および、なりより性を有しており、十分に使用可能であることが確認された。