(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825933
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
A47K10/16 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-33717(P2017-33717)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138125(P2018-138125A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 進太郎
【審査官】
下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−019738(JP,A)
【文献】
特開2014−198094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれているトイレットロールであって、
紙管の内周面及び外周面の少なくとも一方の一部又は全部に消臭剤が付与され、
消臭剤が、有機酸及び有機酸塩の少なくとも一方とシクロデキストリンと天然物抽出エキスとを含みかつ下記A)又はC)の条件を満たすものである、ことを特徴とするトイレットロール。
A)シクロデキストリンが麦芽糖を付与されたものではない。
C)麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まない。
【請求項2】
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれているトイレットロールであって、
紙管の内周面及び外周面の少なくとも一方の一部又は全部に消臭剤が付与され、
消臭剤が、有機酸及び有機酸塩の少なくとも一方とシクロプロピル基を有するシクロデキストリンと天然物抽出エキスとを含みかつ下記A)〜C)の何れかの条件を満たすものである、ことを特徴とするトイレットロール。
A)シクロデキストリンが麦芽糖を付与されたものではない。
B)アミノ酸を含まない。
C)麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まない。
【請求項3】
前記消臭剤が、有機酸及び有機酸塩の少なくとも一方とシクロデキストリンと天然物抽出エキスとを含みさらに下記a)又はc)の条件を満たすものである、請求項1又は2記載のトイレットロール。
a)シクロデキストリンが還元糖を付与されたものではない。
c)還元糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まない。
【請求項4】
消臭剤は、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩及び二酸化塩素を含まない、請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項5】
消臭剤は、金属腐食性の酸性気化ガスを発生させる無機酸及び無機酸塩の少なくとも一方を含まない、請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項6】
消臭剤は、有機酸としてクエン酸及びリンゴ酸の少なくとも一方を含む、請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項7】
シクロデキストリンは、シクロプロピル基を有するものである請求項1記載のトイレットロール。
【請求項8】
天然物抽出エキスは、柿抽出物及び茶抽出物の少なくとも一方を含む、請求項1又は2記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のトイレットペーパーを紙管に巻いたトイレットロールに関し、特に、紙管に消臭剤を含むトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーの紙管に消臭剤を含ませた消臭機能付きトイレットペーパーがある。このような消臭機能付きトイレットペーパーは、トイレ空間に別途芳香剤製品や消臭剤製品等を置く必要がなくなるため、トイレ空間の省スペース化やトイレ空間のシンプル化をもたらす。
【0003】
しかし、このトイレットペーパーの紙管に消臭機能を付与したトイレットロールにおいては、紙管の消臭剤付与部分が褐色化したり、トイレットホルダーの押さえ部分など消臭剤付与面と接触する部分がその素材によっては腐食したりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−180533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、消臭剤付与部分が褐色化することなく、また、優れた消臭効果を奏する、消臭機能を有するトイレットロールを提供することにある。さらに、望ましくは消臭剤付与部分と接触する部分を腐食させることもない、消臭機能を有するトイレットロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
【0007】
〔請求項1記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれているトイレットロールであって、
紙管の内周面及び外周面の少なくとも一方の一部又は全部に消臭剤が付与され、
消臭剤が、有機酸及び有機酸塩の少なくとも一方とシクロデキストリンと天然物抽出エキスとを含みかつ
下記A)又はC)の条件を満たすものである、ことを特徴とするトイレットロール。
A)シクロデキストリンが麦芽糖を付与されたものではない。
C)麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まない。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーが紙管に巻かれているトイレットロールであって、
紙管の内周面及び外周面の少なくとも一方の一部又は全部に消臭剤が付与され、
消臭剤が、有機酸及び有機酸塩の少なくとも一方とシクロプロピル基を有するシクロデキストリンと天然物抽出エキスとを含みかつ下記A)〜C)の何れかの条件を満たすものである、ことを特徴とするトイレットロール。
A)シクロデキストリンが麦芽糖を付与されたものではない。
B)アミノ酸を含まない。
C)麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まない。
〔請求項3記載の発明〕
前記消臭剤が、有機酸及び有機酸塩の少なくとも一方とシクロデキストリンと天然物抽出エキスとを含みさらに下記a)又はc)の条件を満たすものである、請求項1又は2記載のトイレットロール。
a)シクロデキストリンが還元糖を付与されたものではない。
c)還元糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まない。
【0009】
〔請求項
4記載の発明〕
消臭剤は、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩及び二酸化塩素を含まない、請求項1又は2記載のトイレットロール。
【0010】
〔請求項
5記載の発明〕
消臭剤は、金属腐食性の酸性気化ガスを発生させる無機酸及び無機酸塩の少なくとも一方を含まない、請求項1又は2記載のトイレットロール。
【0011】
〔請求項
6記載の発明〕
消臭剤は、有機酸としてクエン酸及びリンゴ酸の少なくとも一方を含む、請求項1又は2記載のトイレットロール。
【0012】
〔請求項
7記載の発明〕
シクロデキストリンは、シクロプロピル基を有するものである請求項1記載のトイレットロール。
【0013】
〔請求項
8記載の発明〕
天然物抽出エキスは、柿抽出物及び茶抽出物の少なくとも一方を含む
、請求項1
又は2記載のトイレットロール。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明によれば、消臭剤付与部分が褐色化することなく、また、優れた消臭効果を奏する、消臭機能を有するトイレットロールを提供される。さらに、消臭剤付与部分と接触する部分を腐食させることもない、消臭機能を有するトイレットロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るトイレットロールの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を
図1及び2を参照しながら以下に説明する。但し、本発明は、この実施形態に限られない。
図1に示すとおり、本実施形態に係るトイレットロール10は、紙管11に帯状の家庭用薄葉紙であるトイレットペーパー12が巻かれたものである。本実施形態にかかるトイレットロール10の大きさ等は、限定はされないが、幅L1が100〜115mm、直径L2が100〜120mm、巻き長さ(トイレットペーパーの全長)が18〜120m、紙管内径L3が35〜50mmであるのが望ましい。この大きさであれば一般的なトイレットロール用のペーパーホルダーが利用でき、トイレットペーパーの長さも十分である。
【0017】
トイレットペーパー12は、微細な凹凸であるクレープを有する家庭用薄葉紙であるが、その具体的な組成・構成は限定されない。トイレットペーパー12は、1プライから3プライのものが望ましい。紙厚は、100〜350μmであるのが望ましい。また、1プライ当り米坪は、11.0〜25.0g/m
2であるのが望ましい。この範囲であれば使用時の柔らかさや吸水性を確保できる。
【0018】
なお、本発明に係る米坪とは、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法によるものであり、紙厚とは、JIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて5回測定した平均値をいう。
【0019】
本実施形態に係るトイレットロール10は、前記紙管11の内周面11A及び外周面11Bの少なくとも一方の一部又は全部に消臭剤が付与されている。そして、特にこの消臭剤は、有機酸及び有機酸塩の少なくとも一方と、シクロデキストリンと、天然物抽出エキスを含む。有機酸は、尿臭の成分であるアンモニアなどの臭気成分を化学的に消臭し、シクロデキストリンは、尿臭や便臭等のトイレ内の臭気成分を包接することによってこれらを消臭し、天然物抽出エキスは、トイレ空間の悪臭成分として知られる、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等を化学的に消臭する。これらの複合的、相乗的な効果によってトイレ空間の効果的な消臭が発現する。紙管に対する消臭剤の付与量については、特に限定されるものではなく、適宜に設計することができる。
【0020】
有機酸は、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルタル酸、アミノ酸、アジピン酸、アスコルビン酸が例示できる。有機酸塩は、乳酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グルタル酸塩、アミノ酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩が例示できる。塩を形成する無機塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が例示できる。また、有機塩基としては、窒素含有塩基、例えば一級、二級又は三級アミン、イミノ基、グアニジノ基、イミダゾリノ基、イミダゾリル基、ピリジル基等の基を有する化合物が例示できる。有機酸及び有機酸塩は、トイレットロールを構成するトイレットペーパーが、人体に直接触れるものであることを考慮して、人体に対する安全性の高いものであるのが望ましい。また、有機酸は、気化し難いものが望ましく、炭素数が4つ以上のものであるのが望ましい。この観点から特に好ましい有機酸は、クエン酸、リンゴ酸である。
【0021】
シクロデキストリンは、結合するグルコースの個数により、一般的にα-シクロデキストリン(グルコース6個)、β-シクロデキストリン(グルコース7個)、γ-シクロデキストリン(グルコース8個)があり、これらα、β、γの各シクロデキストリンは、内径が相違していて、その内径に応じたゲスト分子を内部に取り込む。つまり、トイレ空間の悪臭成分をゲスト分子として取り込んで包接体を形成することで消臭効果を発揮する。シクロデキストリンの内径は、α-シクロデキストリンで0.5〜0.6nm、β−シクロデキストリンで0.7〜0.8nm、γ−シクロデキストリンで0.9〜1.0nmである。本発明において用いるシクロデキストリンの種類は、必ずしも限定はされないが、安価であるとともに、トイレ空間における悪臭成分である尿臭や便臭を構成するアンモニアや硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等を効果的の包接することからβ-シクロデキストリンが好適である。また、本実施形態に係るシクロデキストリンは化学修飾されているものであってもよい。
【0022】
天然物抽出エキスは、茶 柿、ブドウ等の植物及び植物の加工品等から抽出された天然物由来の消臭効果を奏する成分である。より具体的には、植物及び植物の加工品から抽出されるなどした、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体を含むものなどである。ポリフェノール、ポリフェノール誘導体及びポリフェノール類似体は、フェノール性水酸基の反応等により、トイレ空間内の悪臭成分の一つであるアンモニアに対する高い消臭機能を有する。もちろん、天然物抽出エキスは、アンモニアに加えて、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンに対して反応性が有り、消臭機能を有するものも存在し、そのようなものであってもよい。ポリフェノールのより好ましい具体例としては、タンニン、カテキン、ルチン、アントシアニン、エラグ酸、クマリン、フラボンである。ポリフェノール誘導体のより好ましい具体例としては、タンニン誘導体、カテキン誘導体、ルチン誘導体、アントシアニン誘導体、エラグ酸誘導体、クマリン誘導体、フラボン誘導体である。ポリフェノール類似体のより好ましい具体例としては、タンニン前駆体、カテキン前駆体、ルチン前駆体、アントシアニン前駆体、エラグ酸前駆体、クマリン前駆体、フラボン前駆体である。これらはトイレの悪臭成分に対して特に高い消臭効果を発揮する。上記具体例のなかでも、特に好ましいものは、タンニン、タンニン誘導体及びタンニン前駆体とカテキン、カテキン誘導体及びカテキン前駆体である。また、タンニンのなかでも、柿由来の柿タンニンは、分子量が非常に大きく、消臭効果に極めて優れ、また、茶由来の茶カテキンも優れた消臭効果を奏する。したがって、本実施形態に係る天然物抽出エキスとしては、柿抽出物及び茶抽出物の少なくとも一方を含むものであるのが望ましい。
【0023】
他方で、消臭剤は、特徴的に、A)シクロデキストリンが麦芽糖を付与されたものではないか
、C)麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まないものである。すなわち、消臭剤は、麦芽糖が付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを一緒に含まない。より好ましくは、消臭剤は、a)シクロデキストリンが
還元糖を付与されたものではないか、c)還元糖が付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まないものである。特に好ましくは、還元糖、特に麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含まないものである。本発明者らによれば、紙管に消臭機能を付与したトイレットロールにおいて、紙管の消臭剤付与部分が褐色化するのは、消臭剤中のシクロデキストリンが還元糖、特に麦芽糖が付与されたものであるとともに、消臭剤中に緩衝剤等としてアミノ酸を含む場合に特に顕著に発生することを知見した。なお、シクロデキストリンに還元糖、特に麦芽糖を付与することは、シクロデキストリンの親水性を高めて製造性等の取り扱い性を高めるために行われる。本発明に係る消臭剤は、シクロデキストリンが還元糖、特に麦芽糖を付与されたものではないか、又は、アミノ酸を含まないものであるか、又が、麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とをともに含まないものであるため、紙管の消臭剤付与部分が顕著に褐色化しない。ここで、還元糖、特に麦芽糖が付与されたシクロデキストリンとアミノ酸とを含む消臭剤を紙管に付与した際に、その付与部分が褐色化する原因は、定かではないがアミノ化合物と還元基を有する糖類とが化学反応して種々の褐色化物質(メラノイジン)を生成するメイラード反応が生じたことによると推測される。なお、還元糖、特に麦芽糖を付与されたシクロデキストリンと、アミノ酸とをともに含まないものであると、褐色化が顕著に改善され、褐色化がほぼないものとなるため、消臭剤は、還元糖、特に麦芽糖を付与されたシクロデキストリンと、アミノ酸とをともに含まないものであるのが特に望ましい。
【0024】
但し、消臭剤は、上記のとおり、還元糖、特に麦芽糖を付与されたシクロデキストリンとアミノ酸との何れかを含まなければ褐色化の改善、特に見た目において許容できる程度まで改善される。したがって、シクロデキストリンが、還元糖、特に麦芽糖を付与されたものでない場合には、上記有機酸としてアミノ酸を含んでいてもよい。この場合、アミノ酸は効果的な有機酸の一つである。
【0025】
他方で、シクロデキストリンは、親水性であるのが望ましい。このような親水性が高められたシクロデキストリンとしてシクロプロピル基を付与したシクロデキストリンが挙げられる。還元糖、特に麦芽糖の付与はシクロデキストリンの親水性を高めるため、上記のとおり消臭剤がアミノ酸を含まない場合には、還元糖、特に麦芽糖が付与されたシクロデキストリンを用いることができるが、好ましいシクロデキストリンは、シクロプロピル基を付与したシクロデキストリンである。
【0026】
他方で、消臭剤は、次亜塩素酸、次亜塩素酸ソーダ及び二酸化塩素(安定化二酸化塩素を含む)が含まれていないのが望ましい。これらは、塩化水素等の金属腐食作用が強い酸性気化ガスを発生させるおそれがあり、係る酸性気化ガスは、アンモニア等の消臭効果を有するもののトイレットロールホルダーの材質が腐食しやすい金属性などである場合に、トイレットロールホルダーを腐食させるおそれがある。より好ましくは、消臭剤は、金属腐食性を有する酸性気化ガスを発生させる無機酸及び無機酸塩の少なくとも一方を含まないようにするのが望ましい。金属腐食性の強い酸性気化ガスの具体例としては、塩化水素、硫化水素、二酸化窒素が挙げられる。これらの発生源となる無機酸及び無機酸塩を含まないのが望ましい。
【0027】
本発明に係る消臭剤は、有機酸及び有機酸塩を含み、これらは、アンモニアに対する消臭効果を有する。したがって、本発明に係る消臭剤は、有機酸及び有機酸塩を含むことで、金属腐食性の強い酸性気化ガスを発生させるような物質を含まない場合でも十分な消臭効果を発現する。特に、本発明に係る有機酸等は、気化性が少ないものであっても十分に消臭効果を発現する。
【0028】
トイレットロール10の紙管11に対する消臭剤の付与は、トイレットロールの製造工程において、次のようにして行なうことができる。トイレットロールの製造方法は、一般的には、
図2に示すように、長尺の紙管30を製造する工程(A)と、その長尺の紙管30に幅広のトイレットペーパー原紙72を巻いて製品トイレットロールと同径で幅広のログ70を製造するログ製造工程と、ログ70を製品幅に裁断して個々のトイレットロール10にする裁断工程(C)と、を有している。長尺の紙管30を製造する工程(A)の具体例は、原反ロール31A,32Aから繰出された複数枚(図示例では二枚)の帯状の紙管原紙31,32のうち一方の紙管原紙31の一方面に糊付けロール51により糊を付与し、前記一方の紙管原紙31の糊付けされた面に他方の紙管原紙32を幅方向に一部重ね、前記他方の紙管原紙32の糊付け面と接しない面をマンドレルシャフト52に対向する面、すなわち紙管内面となる面にして、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に螺旋状に巻き付けて連続的に筒状部分を形成し、その筒状部分をトイレットロールの複数倍幅以上の幅でカッターによりカットして長尺のスパイラル紙管30(スパイラル式紙管とも称される)を形成する。このスパイラル紙管は、一方の紙管原紙31が紙管外面側、他方の紙管原紙32が紙管内面側となる態様の二層積層構造となる。なお、紙管原紙31,32としては、坪量が120〜220g/m
2、紙厚が150〜500μmであるのが望ましい。
【0029】
消臭剤は、このように長尺の紙管30を形成する工程において、原反ロール31A、32Aから繰出された一方又は双方の紙管原紙に対して、マンドレスシャフトの巻き取りまでの間に塗工機61や塗布装置を設けて付与することができる(図示例では、紙管原紙32に付与している)。塗工機61としては、フレキソ印刷機、グラビア印刷機等の既知の印刷機のなかから適宜選択することができる。また、スプレー塗布装置やローターダンプニング塗布装置を用いてもよい。塗工機61による消臭剤41の付与態様としては、ベタ印刷のほか網点状、円状、ブロック状など適宜のパターン印刷、図形などの模様印刷や文字の印刷として付与することができる。複数の紙管原紙の何れの紙管原紙のいずれの面に消臭剤を付与するかによって、紙管の外周面及び内周面のいずれか又は双方、さらにどの部分に消臭剤を付与するかを選択することができる。紙管原紙に消臭剤を付与した後にヒーター(乾燥機)62により付与部分の乾燥を行なうようにしてもよい。紙管に対する消臭剤の塗布量は、操業性と消臭性能を考慮して適宜に選択すればよい。
【実施例】
【0030】
次いで、本発明の実施例、比較例、従来例に係る消臭剤を付与した紙管に関して、その消臭効果と、腐食性と、褐色化とについて試験した。各例に係る試料は、内径42mm、長さ114mmでかつ原紙の坪量が170g/m
2、紙厚が200μmの紙管の外周面に対して、長手方向に沿って幅114mm程度で、下記表1に係る成分の組み合わせに係る消臭剤を0.12mL付与したものとした。また、各試験は、次のようにして行なった。
【0031】
(消臭効果試験)
尿臭を模擬した濃度100ppmのアンモニアを含む10Lの密閉容器内に、消臭剤を付与した各例に係る紙管を1本投入し、1時間後のアンモニアの濃度を検知管法にて測定した。アンモニアの濃度検知は、ガステック社製の検知器(GV−100S)および検知管(3Lおよび3La)を用いた。消臭効果については、検知管を利用して一定空間内のアンモニアの減少率(消臭率)を測定した。消臭率が85%以上を「○」、84〜50%を「△」、49〜0%を「×」と評価した。
【0032】
(褐色化試験)
上記のとおり114mm幅の紙管に消臭剤を0.12mL塗布した後、50℃、50%RHの環境下に調整した恒温槽内に、14日間静置した後、目視にて消臭剤付与部分を確認した。顕著に褐色化しているものを「×」、褐色化しているものを「△」、やや褐色化が見られるものを「○」、褐色化が確認できないものを「◎」と評価した。
【0033】
(腐食性試験)
容量50mLの容器に消臭剤を満たし、この消臭剤に長さ5cm、幅2cmの鉄板を1時間浸漬した後、水洗し風乾し、24時間経過後に、鉄板の変色を目視にて確認した。変色が見られるものを「×」、変色がやや見られるものを「△」、変色が無いものを「○」と評価した。
【0034】
【表1】
【0035】
上記表1に示されるように、本発明の実施例では、消臭性については優れた結果となり、褐色化についても優れた結果となった。なお、消臭効果は、実施例1〜実施例4で95%以上、比較例1が85%程度、比較例2が50%程度であった。比較例2は、褐色化や腐食性は問題なかったが、消臭効果が十分に発現しなかった。
【0036】
また、対腐食性についても金属腐食性を有する酸性気化ガスを発生させる無機酸及び無機酸塩の少なくとも一方を含まないことが望ましいことも確認できた。
【0037】
以上のことから、本発明により、消臭剤付与部分が褐色化することなく、優れた消臭効果を奏する、消臭機能を有するトイレットロールを提供され、さらに、消臭剤付与部分と接触する部分を腐食させることもない、消臭機能を有するトイレットロールも提供されることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
10…トイレットロール、31A,32A…原反ロール、31,32…紙管原紙、51…糊付けロール、30…長尺の紙管、52…マンドレルシャフト、61…塗工機、62…乾燥機、41…消臭剤、70…ログ、72…トイレットペーパー原紙、91…ログカッター、11…紙管、11A…紙管内面、11B…紙管外面、12…トイレットペーパー、L1…トイレットロールの幅、L2…トイレットロールの直径、L3…紙管内径。