特許第6825958号(P6825958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825958
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】衝撃緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/12 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   F16F7/12
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-64504(P2017-64504)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168868(P2018-168868A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水間 宏行
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229804(JP,A)
【文献】 実開昭59−127936(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0041268(US,A1)
【文献】 実開昭49−049638(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/12
B60R 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方への衝撃荷重を直接受ける上板と、当該衝撃荷重を支持するように、前記上板の下方に平行に間隔をおいて設けられる下板と、
前記上板と下板との間にあって、夫々前記衝撃荷重の方向と軸心が一致するように並列的に複数配置されると共に、互いに上下端を突合せて軸線方向に直列的に複数段に配列され、かつ衝撃荷重を受けて軸線方向に塑性変形可能な円筒状のクラッシャブルパイプと、
前記並列的に配列された上下各段の複数のクラッシャブルパイプが均等に衝撃荷重を受けるように、当該クラッシャブルパイプの上下の接合部を軸線直交方向に連結する連結板と、を具備し、
前記各連結板の中央部及び前記下板の中央部には、それぞれ垂直に起立するガイド筒をそれぞれ備え
前記上板の中央部には、最上位の前記ガイド筒の上部を昇降自在に嵌合させる垂直のガイド凹部を備え
前記ガイド筒は、その上部が上位のガイド筒又は前記ガイド凹部内に入れ子式に摺動自在に嵌合して軸線上を収縮可能に連結しており
衝撃吸収時に、前記各ガイド筒の摺動によって前記上板、前記下板及び前記連結板の水平が維持されることを特徴とする衝撃緩衝装置。
【請求項2】
下方への衝撃荷重を直接受ける上板と、当該衝撃荷重を支持するように、前記上板の下方に平行に間隔をおいて設けられる下板と、
前記上板と下板との間にあって、夫々前記衝撃荷重の方向と軸心が一致するように並列的に複数配置されると共に、互いに上下端を突合せて軸線方向に直列的に複数段に配列され、かつ衝撃荷重を受けて軸線方向に塑性変形可能な円筒状のクラッシャブルパイプと、
前記並列的に配列された上下各段の複数のクラッシャブルパイプが均等に衝撃荷重を受けるように、当該クラッシャブルパイプの上下の接合部を軸線直交方向に連結する連結板と、を具備し、
前記上板の中央部及び前記各連結板の中央部には、それぞれ垂直に下方へ延出するガイド筒をそれぞれ備え
前記下板の中央部には、最下位の前記ガイド筒の下部を昇降自在に嵌合させる垂直のガイド凹部を備え
前記ガイド筒は、その下部が下位のガイド筒内に入れ子式に摺動自在に嵌合して軸線上を収縮可能に連結しており
衝撃吸収時に、前記各ガイド筒の摺動によって前記上板、前記下板及び前記連結板の水平が維持されることを特徴とする衝撃緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の落下などによる衝撃をパイプの軸線方向の塑性変形によって緩衝し、重量物それ自身やこれを受ける床面の破壊を防止するための緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物の落下などによる衝撃をパイプの軸線方向の塑性変形によって緩衝する装置として、例えば特許文献1に記載されるものが知られている。これは、衝撃荷重を直接受ける上板と衝撃荷重を支持する下板との間に、軸線を衝撃荷重の方向に一致させて多数の円筒状のクラッシャブルパイプを並列に介設して成るものである。クラッシャブルパイプは、さらに、上板と下板との間に、上下方向に直列に、互いに上下端を突合せて複数段に重ねられる。各段に並列する複数のクラッシャブルパイプが均等に衝撃荷重を受けるように、クラッシャブルパイプの上下の接合部を軸線直交方向に連結する連結板が設けられる。上板、連結板及び下板におけるクラッシャブルパイプを固定する個所には、軸線を上下に一致 させて複数の貫通孔が設けられる。上板の貫通孔には、上部蓋体が嵌合される。連結板には、上下のクラッシャブルパイプの下端、上端に当接する上下一対の連結リングが嵌合される。下板の貫通孔には、下部蓋体が嵌合される。上下に直列した複数のクラッシャブルパイプ内には、軸線方向に締め付けロッドが貫通し、その上端部のねじ部が上部蓋体に螺合され、上端部のねじ部が下部蓋体に螺合され、これによって上板、下板間の複数のクラッシャブルパイプと連結板とが上下方向に締め付け固定される。上下部蓋体には、締め付けロッドの上下端のねじ部に螺合させるために、これを回転させる必要上、工具掛け部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-168428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の緩衝装置においては、落下物の落下姿勢がクラッシャブルパイプの軸線に対して傾いている場合などに、クラッシャブルパイプが非軸対称に変形する。クラッシャブルパイプに非軸対称の変形が生じると、上板と下板との平行が崩れたり、相互のねじれが生じたりして初期の衝撃緩衝機能が得られない。
したがって、本発明は、クラッシャブルパイプを確実に軸対称に変形させることができ、また特定のクラッシャブルパイプに非軸対称の変形が生じる力が働いたとしても、それを他のクラッシャブルパイプの変形に波及させることがない衝撃緩衝装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明の緩衝装置1は、下方への衝撃荷重を直接受ける上板2と、当該衝撃荷重を支持するように、上板2の下方に平行に間隔をおいて設けられる下板3と、これら上板2と下板3との間にあって、夫々衝撃荷重の方向と軸心が一致するように並列的に複数配置されると共に、互いに上下端を突合せて軸線方向に直列的に複数段に配列され、かつ衝撃荷重を受けて軸線方向に塑性変形可能な円筒状のクラッシャブルパイプ4と、並列的に配列された上下各段の複数のクラッシャブルパイプ4が均等に衝撃荷重を受けるようにクラッシャブルパイプ4の上下の接合部を軸線直交方向に連結する連結板5とを具備する。各連結板5の中央部及び下板3の中央部には、それぞれ垂直に起立するガイド筒6が設けられる。上板2の中央部には、最上位のガイド筒6の上部を昇降自在に嵌合させる垂直のガイド凹部2aが設けられる。下位のガイド筒6の上部は、順次上位のガイド筒6又はガイド凹部2a内に入れ子式に摺動自在に嵌合する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の衝撃緩衝装置1においては、クラッシャブルパイプ4が衝撃荷重を受けて軸線方向に塑性変形するとき、特定のクラッシャブルパイプ4に非軸対称の異常な変形が生じたとしても、垂直に起立する上下ガイド筒6が摺動して、各連結板5の水平を維持するので、異常な変形の影響を他のクラッシャブルパイプ4に波及させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る衝撃緩衝装置の正面図である。
図2図1の衝撃緩衝装置の平面図である。
図3図1の衝撃緩衝装置の縦断正面図である。
図4図1の衝撃緩衝装置の衝撃吸収時の縦断正面図である。
図5図1の衝撃緩衝装置の使用状態の説明図である。
図6】他の実施形態の衝撃緩衝装置の縦断正面図である。
図7図6の衝撃緩衝装置の衝撃吸収時の縦断正面図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
例えば、原子力発電所等から廃棄される放射性廃棄物の溶融固化体を収容するキャニスタCは、図5に示すように、ピットP内に複数上下に積み上げて保管される。キャニスタCの搬入の際に、これを誤ってピットP内に落下させると、衝撃によりキャニスタCが破壊され、放射性物質が漏出するおそれがある。これを防止するために、この実施例の衝撃緩衝装置1が、ピットPの底部に設置される。
【0009】
図1ないし図4において、衝撃緩衝装置1は、衝撃荷重を直接受ける円形の上板2と、それの下方に平行に間隔をおいて設けられ、ピットPの底部において衝撃荷重を支持する円形の下板3と、衝撃荷重を受けて軸線方向に塑性変形するように、上板2と下板3との間に環状に並列する複数の円筒状のクラッシャブルパイプ4とを具備する。上板2上にキャニスタCのような大重量物が落下したとき、図4に示すように、クラッシャブルパイプ4が軸線方向に塑性変形して衝撃のエネルギを吸収し、キャニスタCあるいはピットPの床の破壊を防止する。
【0010】
クラッシャブルパイプ4は、また、互いに上下端を突合せて上下軸線方向に直列的にも複数段配列される。
【0011】
クラッシャブルパイプ4の上下の接合部には、円形の連結板5が介設される。この連結板5は、各上下段の複数のクラッシャブルパイプ4が均等に衝撃荷重を受けるように、クラッシャブルパイプ4を軸線直交方向に連結するものである。
【0012】
各連結板5及び下板3の中央部には、それぞれ垂直に起立するガイド筒6が設けられる。下位のガイド筒6の上部は、上位の連結板5を貫通して、順次上位のガイド筒6内に入れ子式に摺動自在に嵌合する。
【0013】
上板2の中央部には、最上位のガイド筒6の上部を摺動自在に嵌合させる垂直のガイド凹部2aが設けられる。
【0014】
しかして、この実施形態の衝撃緩衝装置1は、例えば、図5に示すように、放射性物質の溶融固化体を収容したキャニスタCを保管するためのピットP内の底部に設置される。そして、キャニスタCをピットP内に吊り降ろす際に、誤ってキャニスタCをピットP内に落下させた場合には、図4に示すように、その衝撃荷重によりクラッシャブルパイプ4が軸線方向に塑性変形し、衝撃荷重のエネルギを吸収する。
【0015】
この際、特定のクラッシャブルパイプ4に非軸対称の変形を生じさせる応力が生じても、垂直に起立する上下ガイド筒6が互いに、又はガイド凹部2aに対して摺動し、各連結板5の水平を維持するので、特定のクラッシャブルパイプ4の異常な変形の影響を他のクラッシャブルパイプ4に波及させることがない。このため、上板2と下板3との平行が崩れたり、相互のねじれが生じたりして初期の衝撃緩衝機能に影響を及ぼすことがない。
【0016】
図6図7に示す他の実施形態においては、上板2の中央部及び各連結板5の中央部に、それぞれ垂直に下方へ延出するガイド筒7が設けられる。順次上位のガイド筒7の下部が、下位の連結板5を貫通して下位のガイド筒7内に入れ子式に摺動自在に嵌合する。
【0017】
また、下板3の中央部には、最下位のガイド筒7の下部を上下摺動自在に嵌合させる垂直のガイド凹部3aが設けられる。
【0018】
衝撃吸収時には、各ガイド筒7の相互間又はガイド凹部3aとの間の摺動によって、連結板5の水平が維持される。
【符号の説明】
【0019】
1 衝撃緩衝装置
2 上板
2a ガイド凹部
3 下板
3a ガイド凹部
4 クラッシャブルパイプ
5 連結板
6 ガイド筒
6a 外側フランジ
6b 開口
7 ガイド筒
C キャニスタ
P ピット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7