(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1(a),(b)は、車両に搭載された電動ウィンチの基本動作を説明する説明図を、
図2は
図1の車両を上方から見た本発明のシステム構成を説明する説明図を、
図3(a)は車両に設置された操作パネルを示す平面図,(b)は介助者により車外から操作可能なリモコンを示す平面図を、
図4は電動ウィンチの詳細構造を示す斜視図を、
図5は
図4の電動ウィンチの内部構造(モータ部,ギヤ部)を説明する説明図を、
図6(a),(b)は、モータ部を制御する駆動回路(正回転状態,逆回転状態)を説明する電気回路図を、
図7(a),(b)は、モータ部を制御する駆動回路(短絡状態)を説明する電気回路図を、
図8は
図4の電動ウィンチの内部構造(ラチェット機構,弛み取り機構)を説明する説明図を、
図9は
図4の電動ウィンチを構成する部材の接続関係を模式的に示す図をそれぞれ示している。
【0018】
図1および
図2に示されるように、車両10は福祉車両であり、当該車両10の後方側(図中右側)には、車椅子(被牽引物)20を搭載し得る車椅子搭載スペース11が設けられている。車椅子搭載スペース11の車両前方側(図中左側)には、車両10の車幅方向(
図2の上下方向)に、所定間隔を持って一対の電動ウィンチ30が設置されている。
【0019】
一対の電動ウィンチ30は、先端側にフック31が設けられたベルト32を備えており、当該ベルト32は車椅子20を牽引するものである。具体的には、一対の電動ウィンチ30からベルト32をそれぞれ引き出して、フック31を車椅子20の左右側にある一対の前フレーム21にそれぞれ引っ掛ける。そして、この状態で一対の電動ウィンチ30を同期動作させ、ベルト32をそれぞれ引き込むことで、図中矢印M1の方向に車椅子20が移動される。
【0020】
車椅子搭載スペース11の車両後方側には、地面Gと車両10の床面Fとを緩やかな傾斜角度で接続するスロープ12が設置されている。スロープ12は、車両10の走行時には、床面Fに形成された格納部(図示せず)に格納されている。そして、スロープ12の使用時には、まず、車両10を停車させてかつバックドア13を開いた状態とする。そして、スロープ12を引っ張る等して格納部から引き出す。これにより、スロープ12は格納部から車外に向けて延出され、図示されるように傾斜される。
【0021】
一対の電動ウィンチ30を同期動作させてベルト32をそれぞれ引き込むことで、
図1(b)に示されるように、車椅子20はスロープ12上を移動していく。その後、図中破線で示されるように、車椅子20は床面F上に到達して車椅子搭載スペース11内に搭載される。また、一対の電動ウィンチ30によりベルト32をそれぞれ引き出すことで、
図1(b)に示されるように、車椅子搭載スペース11内に搭載された車椅子20を、床面Fから地面Gに移動させることができる。
【0022】
このようにスロープ12を設けることで、車椅子20の地面Gと床面Fとの間での移動を容易にしている。ここで、一対の電動ウィンチ30は、図示しない介助者(操作者)により操作され、一対の電動ウィンチ30の操作中においては、介助者は車椅子20の後方から当該車椅子20を支持するようにする。
【0023】
一対の電動ウィンチ30を制御する制御装置40は、
図2に示されるように構成されている。つまり制御装置40は、一対の電動ウィンチ30,コントローラ50,操作パネル60およびリモコン70から構成されている。一対の電動ウィンチ30とコントローラ50との間、および操作パネル60とコントローラ50との間には、通信線および電源線よりなる配線14が電気的に接続されている。なお、リモコン70はワイヤレス式で無線によりコントローラ50と通信自在であり、リモコン70を車外に持ち出すことで、一対の電動ウィンチ30を車外から操作可能となっている。
【0024】
ここで、
図2に示されるように、車両10の床面Fにはフック15を備えた一対の固定ベルト16が設置されている。一対の固定ベルト16のフック15は、車椅子搭載スペース11に搭載された車椅子20の左右側にある一対の車輪22にそれぞれ引っ掛けられる。これにより、車椅子搭載スペース11に搭載された車椅子20は、一対のベルト32のフック31および一対の固定ベルト16のフック15の合計4箇所で固定され、ひいては車両10内で車椅子20が移動したりがたついたりすることが抑制される。
【0025】
図3(a)に示されるように、操作パネル(操作部材)60は、パネル本体61を備えている。パネル本体61は車椅子搭載スペース11の中央から後方側に設けられ、操作パネル60は、車両10の外部でかつ後方側から操作可能となっている。パネル本体61には、主電源スイッチ62,ベルトフリースイッチ63,速度切替スイッチ64およびブザー(発音部材)65が設けられている。
【0026】
主電源スイッチ62は、制御装置40のシステム電源を入れる時に操作するものである。主電源スイッチ62をオン操作することでシステム電源がオン状態となり、これにより主電源スイッチ62のインジケータ62aが点灯する。また、主電源スイッチ62は、制御装置40をシステムリセット(初期化)する際にも操作される。具体的には、例えば3秒以上の長押しをすることで、システムリセットされる。
【0027】
ベルトフリースイッチ63は、一対の電動ウィンチ30のロック状態を解除する時に操作するものである。ベルトフリースイッチ63をオン操作(第1条件)し、かつ介助者によりベルト32を電動ウィンチ30に引き込ませる(第2条件)ことで、制御装置40が「ベルトフリーモード」に切り換えられる。これにより、一対のベルト32を引き出したり収納したりできるようになる。
【0028】
つまり、上述の第1条件および第2条件の双方を満たすことで、一対のベルト32を引き出して車外にある車椅子20に引っ掛けたり、一対の電動ウィンチ30から引き出されたそれぞれのベルト32の長さを揃えたりすることが可能となる。ここで、ベルトフリースイッチ63をオン操作すると、ベルトフリースイッチ63のインジケータ63aが点灯される。なお、コントローラ50(
図10参照)による「ベルトフリーモード」の動作については、後で詳述する。
【0029】
速度切替スイッチ64は、車椅子20を車椅子搭載スペース11に搭載したり車椅子搭載スペース11から降ろしたりする際に、一対のベルト32の移動速度、つまり引き込み速度や引き出し速度を、低速(LOW)または高速(HIGH)に切り替える時に操作するものである。
【0030】
また、ブザー65は、一対のベルト32の引き込み作動時や引き出し作動時、さらには一対の電動ウィンチ30の動作不良時(異常発生時)等において、電子音等の警告音を発生するものである。ただし、ブザー65に、電子音等の警告音を発生させるに限らず、音声によるアナウンス等を発生させても良い。
【0031】
図3(b)に示されるように、リモコン(操作部材)70は、乾電池駆動のワイヤレスリモートコントロールユニットであり、操作パネル60の主電源スイッチ62が操作されて、制御装置40のシステム電源がオン状態の時に使用可能となる。リモコン70は、リモコン本体71を備えている。リモコン本体71は、リモコン電源スイッチ72,入スイッチ73および出スイッチ74を備えている。リモコン70は、さらにインジケータ75を備えており、当該インジケータ75は、リモコン70の操作時等に点灯される。また、インジケータ75の点灯が暗くなったら乾電池(図示せず)を交換するようにする。
【0032】
ここで、リモコン70の操作は介助者によって行うようにする。そして、介助者がリモコン電源スイッチ72をオン操作して、その後、入スイッチ73を押すことにより、一対の電動ウィンチ30がそれぞれ同期動作される。なお、入スイッチ73を押している間は、それぞれの電動ウィンチ30が継続して駆動され、車椅子搭載スペース11への車椅子20の搭載が補助される。一方、出スイッチ74を押すと、今度はそれぞれの電動ウィンチ30が逆方向に駆動される。出スイッチ74を押している間は、車椅子搭載スペース11からの車椅子20の降ろし動作が補助される。すなわち、介助者が入スイッチ73や出スイッチ74の操作を止めることで、それぞれのスイッチ73,74が非操作状態とされて、リモコン70からコントローラ50に向けてモータ停止信号(操作信号OP(
図10参照))が出力される。
【0033】
また、リモコン70の操作中においては、介助者は車椅子20のグリップGR(
図1参照)を把持し、車椅子20を支持するとともに、その移動を誘導するようにする。このように、制御装置40は、一対の電動ウィンチ30を駆動制御することで、介助者による車椅子20の移動を補助するようになっている。
【0034】
車両10の左右側に設けられる一対の電動ウィンチ30は、何れも同じ形状かつ同じ構造のものが採用されている。したがって、
図4ないし
図9では、何れか一方の電動ウィンチ30のみを示し、以下、何れか一方の電動ウィンチ30を代表して、その詳細構造について説明する。
【0035】
図4および
図9に示されるように、電動ウィンチ30は、電動モータ部(電動モータ)80と、ドラム部90とを備えている。これらの電動モータ部80およびドラム部90は、複数の締結ネジ(図示せず)により一体化(ユニット化)されている。
【0036】
電動モータ部80は、モータ部81とギヤ部82とを備えている。モータ部81の内部には、
図5に示されるように、複数のマグネット81a(図示では2つのみ示す)が設けられ、これらのマグネット81aの内側には、コイル81bが巻装されたアーマチュア81cが回転自在に設けられている。アーマチュア81cの回転中心にはアーマチュア軸81dが固定されている。
【0037】
アーマチュア軸81dの長手方向中間部分には、一対のブラシ81eが摺接される整流子81fが設けられている。これにより、一対のブラシ81eから整流子81fを介してコイル81bに駆動電流が供給される。よって、アーマチュア軸81dが、正方向または逆方向に所定の回転数で回転される。
【0038】
モータ部81は、
図6および
図7に示される駆動回路DCによって駆動される。モータ部81の駆動回路DCには、一般的に広く知られている「Hブリッジ回路」を採用している。具体的には、駆動回路DCは、一対のスイッチング素子S1,S2を直列に繋いだ第1回路部L1と、一対のスイッチング素子S3,S4を直列に繋いだ第2回路部L2と、バッテリ(電源)BTを備えた第3回路部L3とを備え、これらの回路部L1〜L3は、それぞれ互いに並列に接続されている。そして、第1回路部L1の中点C1と、第2回路部L2の中点C2との間に、モータ部81(一対のブラシ81eおよび整流子81f)が設けられている。
【0039】
そして、コントローラ50(
図10参照)が、
図6(a)に示されるように、スイッチング素子S1,S4を「ON」に制御し、かつスイッチング素子S2,S3を「OFF」に制御することで、太線矢印に示すように駆動電流が流れ、ひいてはモータ部81は「正転」される。これに対し、コントローラ50が、
図6(b)に示されるように、スイッチング素子S3,S2を「ON」に制御し、かつスイッチング素子S1,S4を「OFF」に制御することで、太線矢印に示すように駆動電流が流れ、ひいてはモータ部81は「逆転」される。
【0040】
ここで、モータ部81には、コントローラ50の制御により、ショートブレーキ(短絡制動)が掛けられるようになっている。具体的には、コントローラ50が、
図7(a)に示されるように、スイッチング素子S1,S3(上段)を「ON」に制御し、かつスイッチング素子S2,S4(下段)を「OFF」に制御することで、モータ部81が短絡されて、その結果ショートブレーキが掛かる(ショートブレーキA)。また、コントローラ50が、
図7(b)に示されるように、スイッチング素子S2,S4(下段)を「ON」に制御し、かつスイッチング素子S1,S3(上段)を「OFF」に制御することによっても、モータ部81が短絡されて、その結果ショートブレーキが掛かる(ショートブレーキB)。
【0041】
ここで、本実施の形態においては、駆動回路DCを形成する4つのスイッチング素子S1〜S4に、電界効果トランジスタ(FET)を採用している。なお、スイッチング素子S1〜S4には、他のスイッチング素子を採用しても良い。
【0042】
図5に示されるように、アーマチュア軸81dの先端側(図中左側)には、ウォーム81gが一体に設けられ、当該ウォーム81gはギヤ部82の内部にまで延ばされている。ギヤ部82の内部には、ウォーム81gに噛み合わされるウォームホイール82aが回動自在に設けられている。これらのウォーム81gおよびウォームホイール82aによってウォーム減速機DSを構成している。
【0043】
そして、ウォーム減速機DSは、アーマチュア軸81dの回転速度R1を減速して高トルク化し、減速された回転速度R2(R2<R1)を、ウォームホイール82aを介して出力軸83に伝達する。ここで、出力軸83は、ドラム部90に向けて突出され、ドラム部90を形成するドラム92(
図8参照)を回転させる。すなわち、出力軸83の高トルク化された回転力は、ドラム92に伝達される。
【0044】
このように、ウォーム減速機DSを採用することで、外部(ドラム92)からの負荷によって出力軸83が回転されることが抑制される。つまり、ウォーム減速機DSは、アーマチュア軸81dからの回転力により出力軸83を減速した状態で容易に回転させることはできるが、出力軸83からの回転力ではアーマチュア軸81dを容易に回転させることはできない。このように、ウォーム減速機DSは、出力軸83に負荷される外力に対して、比較的大きなメカ的な制動力(機械的ブレーキ)を発生する。
【0045】
図9に示されるように、ギヤ部82(ウォームホイール82a)と出力軸83との間、つまりモータ部動力伝達経路におけるドラム92とウォーム減速機DSとの間には、電磁クラッチ84が設けられている。電磁クラッチ84は、コントローラ50により制御され、ドラム92とウォーム減速機DSとの間を「締結状態」または「開放状態」とする。具体的には、電磁クラッチ84を「締結状態」とすることで、ドラム92とウォーム減速機DSとは動力伝達可能に接続され、電磁クラッチ84を「開放状態」とすることで、ドラム92とウォーム減速機DSとは切り離される。
【0046】
なお、電磁クラッチ84は、ウォームホイール82aと一体回転する第1プレート(図示せず),出力軸83と一体回転する第2プレート(図示せず)およびステータコイル(図示せず)を備えている。そして、ステータコイルに駆動電流を供給(電源オン)することでステータコイルは電磁力を発生し、当該電磁力により各プレートは吸引されて締結される(締結状態)。一方、ステータコイルへの駆動電流の供給を停止(電源オフ)することで各プレートは切り離される(開放状態)。
【0047】
図4に示されるように、ドラム部90はケーシング91を備えている。ケーシング91は略箱形状に形成され、その内部には、
図8に示されるドラム92,ラチェット機構93および弛み取り機構94が収納されている。ケーシング91の外部には、ドラム92に巻き掛けられるベルト32の弛みを取り除く弛み取りモータ95,ドラム92の回転状態を検出する回転センサ96,電動モータ部80や弛み取りモータ95等に駆動電流を供給するための外部コネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続部97等が設けられている。
【0048】
ケーシング91の側部には、開口部91aが形成され、当該開口部91aからベルト32が出入り自在となっている。ベルト32は、ケーシング91の開口部91aの近傍に設けられた案内部材98によって出入りが案内され、これによりベルト32の捻れが防止される。また、案内部材98はフック31の通過を許さず、これによりベルト32の全てがケーシング91内に引き込まれるのを防止している。
【0049】
ここで、
図4の符号STは、電動ウィンチ30を車両10の床面F(
図2参照)に固定するための一対の取付ステーであり、これらの各取付ステーSTは、複数の締結ボルト(図示せず)によって床面Fに強固に固定されている。これにより電動ウィンチ30は、車両10に対してがたつくこと無く強固に固定される。
【0050】
ケーシング91の内部には、
図8に示されるように、ドラム92,ラチェット機構93および弛み取り機構94が収納されている。ただし、
図8に示される弛み取りモータ95,案内部材98およびフック31については、
図4に示されるようにケーシング91の外部に設けられている。
【0051】
ドラム92にはベルト32が巻き掛けられ、当該ドラム92の回転中心には、ドラム軸92aが一体回転可能に取り付けられている。ドラム軸92aには、電動モータ部80の出力軸83(
図9参照)の回転が伝達され、ドラム軸92aおよびドラム92は、電動モータ部80の正逆方向への回転駆動に伴って正逆方向に回転駆動される。これにより、ベルト32をケーシング91内に引き込んだり、ケーシング91外に引き出したりできる。
【0052】
ドラム92とドラム軸92aとの間には、
図9に示されるようにワンウェイクラッチ92bが設けられている。ワンウェイクラッチ92bは、ドラム軸92aがベルト32の引き込み方向(
図8において反時計回り方向)に向かって回転する際、そのままこの回転をドラム92に伝達するよう構成されている。一方、ドラム軸92aよりも先にドラム92がベルト32の引き込み方向に向かって回転すると、ドラム92の回転がドラム軸92aに伝達されず、ドラム92が空回りするよう構成されている。すなわち、ワンウェイクラッチ92bは、ドラム軸92aに対するドラム92の巻き取り方向への回転を許容し、ドラム軸92aに対するドラム92の引き出し方向への回転を規制している。
【0053】
ラチェット機構93は、ドラム92に一体回転可能に設けられたラッチギヤ93aと、ラッチギヤ93aと係合し、ドラム92のベルト32の引き込み方向(一方向)への回転を許容し、ベルト32の引き出し方向(他方向)への回転(
図8において時計回り方向)を規制する揺動自在な歯止め93bと、歯止め93bを揺動駆動するソレノイド駆動部材93cとを備えている。
【0054】
ソレノイド駆動部材93cは駆動ピン93dを備え、コントローラ50の制御によりソレノイド駆動部材93cに駆動電流を供給(電源オン)することで、駆動ピン93dはピンの軸方向に移動して引っ込む。これにより、ラッチギヤ93aと歯止め93bとの係合が解かれてリリース状態となり、ベルト32の引き込み方向および引き出し方向への双方向にドラム92が回転自在となる。よって、ドラム92の双方向への回転が許容されて、ひいては車椅子20を車椅子搭載スペース11から降ろせるようになる。
【0055】
一方、コントローラ50の制御によりソレノイド駆動部材93cへの駆動電流の供給を停止(電源オフ)することで、内蔵ばね(図示せず)のばね力により駆動ピン93dが突出される。これにより、ラッチギヤ93aに歯止め93bが係合されてロック状態となり、ベルト32の引き込み方向へのドラム92の回転を許容しつつ、ベルト32の引き出し方向へのドラム92の回転が規制され、ひいてはスロープ12上での車椅子20の後退が防止される。
【0056】
弛み取り機構94は、ドラム92に一体回転可能に設けられたスパーギヤ94aと、スパーギヤ94aに噛み合わされる小径ギヤ94bと、弛み取りモータ95により回転駆動される減速ギヤ機構94cとを備えている。弛み取りモータ95は、ベルト32を巻き取る方向に回転力を発生し、弛み取りモータ95の回転力は、
図9の弛み取りモータ動力伝達経路に示されるように、減速ギヤ機構94c,トルクリミッタ94d,小径ギヤ94bおよびスパーギヤ94aを介してドラム92に伝達される。
【0057】
また、小径ギヤ94bと減速ギヤ機構94cとの間には、
図9に示されるようにトルクリミッタ94dが設けられ、当該トルクリミッタ94dは一定以上のトルクの伝達をカットするようになっている。これにより弛み取りモータ95への過負荷を防止し、弛み取りモータ95を保護している。すなわち、弛み取りモータ95には、ベルト32の弛みを取ることができる程度のトルクを発生し得る小型モータを採用することができる。
【0058】
図10はコントローラの内部構造を示すブロック図を示している。
【0059】
図10に示されるように、コントローラ50は、操作パネル60およびリモコン70からの種々の操作信号OPの入力に基づいて、電動ウィンチ30を構成する駆動系部品(81,84,93c,95)を駆動制御する駆動制御部51を備えている。
【0060】
コントローラ50には、操作パネル60およびリモコン70からそれぞれ有線または無線で種々の操作信号OPが入力され、回転センサ96からは検出信号(入力信号)Pが入力される。また、コントローラ50には、電動ウィンチ30を構成するモータ部81,電磁クラッチ84,ソレノイド駆動部材93c,弛み取りモータ95が電気的に接続され、駆動制御部51は、操作信号OPや検出信号Pに基づいて、駆動系部品(81,84,93c,95)をそれぞれ制御する。なお、駆動制御部51は、一対の電動ウィンチ30を同期させて駆動制御する。
【0061】
ここで、回転センサ96はホール素子よりなり、回転センサ96と対向するドラム92の部分には、ドラム92の回転に伴って回転されるリングマグネット(図示せず)が設けられている。これにより、回転センサ96は、リングマグネットの回転に伴う磁極の切り替わりに対応して、矩形波信号(パルス信号)を発生するようになっている。
【0062】
そして、駆動制御部51は、入力された検出信号P(パルス信号)を積算したり、その出現タイミングを計ったりすることで、ベルト32の引き出し量やベルト32の移動速度等を算出する。なお、駆動制御部51で算出された種々のデータ、つまりベルト32の引き出し量や移動速度等は、電動ウィンチ30のきめ細かい駆動制御に利用される。
【0063】
ここで、駆動制御部51には、パルス比較部51aおよびDuty比設定部51bが設けられている。パルス比較部51aでは、検出信号Pの積算値(
図11におけるP(cnt))と、所定の制御ロジックで得られた閾値(
図11におけるClu(cnt))と、を比較する比較処理を実行する。また、パルス比較部51aでは、検出信号Pの積算値や上述の閾値等を記憶するようになっている。
【0064】
一方、Duty比設定部51bでは、所定の制御ロジックに基づいて、モータ部81に電気的な制動力を与えるショートブレーキ用のDuty比を設定するようになっている。すなわち、モータ部81の駆動回路DC(
図6および
図7参照)におけるスイッチング素子S1〜S4は、駆動制御部51によりPWM制御され、ショートブレーキの効き具合が調整可能となっている。
【0065】
なお、パルス比較部51aおよびDuty比設定部51bの詳細な動作については、後述する。
【0066】
次に、駆動制御部51の基本動作について説明する。
【0067】
[乗車動作]
介助者により操作パネル60の主電源スイッチ62(
図3(a)参照)が操作されると、制御装置40(
図2参照)のシステム電源がオン状態になる。次いで、リモコン70のリモコン電源スイッチ72が操作され、かつ入スイッチ73(
図3(b)参照)が操作されると、一対の電動ウィンチ30がそれぞれ同期して駆動制御される。これにより、ベルト32が引き込まれて、車椅子20が車椅子搭載スペース11(
図1参照)に向けて移動していく。
【0068】
[降車動作]
乗車動作とは逆に、車椅子20を車椅子搭載スペース11から車外に降ろす場合には、出スイッチ74(
図3(b)参照)を操作する。これにより、一対の電動ウィンチ30がそれぞれ同期して駆動制御される。これにより、ベルト32が引き出されて、車椅子20を車椅子搭載スペース11から降ろすことができる。
【0069】
[停止動作]
介助者が入スイッチ73や出スイッチ74の操作を止めると、リモコン70から駆動制御部51にモータ停止信号が入力される。すると、駆動制御部51は、電磁クラッチ84を締結状態(電源オン)に制御し、ラチェット機構93をロック状態(電源オフ)に制御し、さらにはモータ部81にショートブレーキ(
図7参照)を掛ける制御を実行する。これにより、ドラム92(
図8参照)の他方向への回転、つまりベルト32が引き出される方向への逆回転が阻止される。
【0070】
このように、モータ部81に、
図7に示されるようなショートブレーキを掛けることで、ドラム92の逆回転がより確実に防止される。この場合、モータ部81を短絡させるだけなので、消費電力が掛からない。なお、上述した電動ウィンチ30の停止状態は、
図13に示される時間t0の前の状態に対応している。
【0071】
次に、本発明の主要部であるコントローラ50による「ベルトフリーモード」の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0072】
図11はコントローラのベルトフリーモードの動作を説明するフローチャートを、
図12は
図11のステップS15での処理内容示すフローチャートを、
図13はベルトフリーモードの動作の流れを説明するタイミングチャートをそれぞれ示している。
【0073】
図1(a)に示されるように、車外にある車椅子20を車椅子搭載スペース11に搭載するには、ベルト32を自由に引き出せるようにすべく、まず、操作パネル60のベルトフリースイッチ63をオン操作する。このベルトフリースイッチ63のオン操作は介助者によって行うようにする。すると、
図11のステップS10に示されるように、コントローラ50による「ベルトフリーモード」の動作が開始される。
【0074】
具体的には、
図13に示されるように、待機状態(停止状態)にあった制御装置40が、時間t1の時点(ベルトフリースイッチ63が操作された後の時点)において、まずは「ベルトフリー準備状態」となる。
【0075】
ここで、ステップS10における「ベルトフリーモード」の開始直後は、制御装置40は、ベルトフリーとする前の準備の状態にあり、時間t1の段階では、未だベルト32を車外に引き出せない状態となっている。これにより、例えば、スロープ12上に車椅子20がある場合(
図1(b)参照)に、ベルトフリースイッチ63が誤操作されたとしても、ベルトフリーの状態にならずに済む。
【0076】
次に、
図11のステップS11において、ラチェット機構93のラッチギヤ93aと歯止め93bとを、確実に噛み合わせる動作(ラッチ噛合動作)を実行する。具体的には、
図13における時間t2の時点において、電磁クラッチ84の電源がオフになり、電磁クラッチ84が一旦「開放状態」となる。これにより、上述と同様に、例えば、スロープ12上に車椅子20がある場合に、ベルトフリースイッチ63が誤操作されたとしても、ベルトフリーの状態にならずに済む。また、電磁クラッチ84が「開放状態」となることでラチェット機構93のラッチギヤ93aと歯止め93bにかかる負荷を一度抜くことで過剰な噛み合わせ動作を防止でき、ラッチギヤ93aと歯止め93bとが確実に解除できる状態にすることが可能になる。
【0077】
次いで、
図11のステップS12において、電磁クラッチ84の電源をオンにして、電磁クラッチ84を再度「締結状態」にする。具体的には、
図13における時間t3の時点において、電磁クラッチ84が「締結状態」となる。このとき、駆動制御部51は、ベルト32の引き込み方向あるいは引き出し方向への移動を監視するために、ベルト32の監視フラグ、具体的には「L側(左側)移動フラグ」および「R側(右側)移動フラグ」をそれぞれ設定する。
【0078】
その後、直ぐに、
図11のステップS13において、ソレノイド駆動部材93cの電源をオンにして、ラチェット機構93を「リリース状態」にする。つまり、ラチェット機構93の歯止め93bとラッチギヤ93aとの噛み合いを解除する。具体的には、
図13における時間t4の時点において、ラチェット機構93を「リリース状態」にする。
【0079】
このとき、ドラム92には、ギヤ部82のウォーム減速機DS(
図5参照)の機能によって、比較的大きなメカ的な制動力が発生している。つまり、ベルト32の引き出しが抑制された状態となっている。これにより、例えば、スロープ12上に車椅子20がある場合であっても、車椅子20の後退が抑制される。
【0080】
仮に、車椅子20の利用者の体重が重い場合(例えば100kg等)で、車椅子20が後退するような場合であっても、モータ部81の駆動回路DCは短絡された状態(
図7参照)にあるので、モータ部81にはショートブレーキが掛かっており、モータ部81は制動力を発生する。よって、上述と同様に、例えば、スロープ12上に車椅子20がある場合に、ベルトフリースイッチ63が誤操作されたとしても、車椅子20の後退が加速されることが抑制される。
【0081】
続く
図11のステップS14では、パルス比較部51aが、回転センサ96(
図10参照)からの検出信号Pの積算値P(cnt)と、クラッチ開放基準値Clu(cnt)とを比較する処理を実行する。具体的には、積算値P(cnt)がクラッチ開放基準値Clu(cnt)以下であるか否かを判断する。そして、ステップS14においてP(cnt)>Clu(cnt)と判断した場合(no判定)は、介助者がベルト32を意図的に引き込み方向に操作していない、あるいはスロープ12上の車椅子20が後退している(ベルト32が引き出されている)として、ステップS15に進む。
【0082】
ここで、クラッチ開放基準値Clu(cut)は、前回の制御周期で得られた積算値P(cnt)から「2」パルス分を引いた値となっている。これにより、当該クラッチ開放基準値Clu(cut)と、今回の制御周期で得られた積算値P(cnt)と、を比較することで、ベルト32が引き込み方向に移動しているのか、引き出し方向に移動しているのか、を駆動制御部51により把握することができる。
【0083】
具体的には、前回の積算値P(cnt)が「100」であった場合には、今回のクラッチ開放基準値Clu(cut)は「98」となる。そして、今回の積算値P(cnt)が「101」であった場合には、ステップS14においてno判定となる。また、今回の積算値P(cnt)が「100」で前回と変わらない場合でも、ステップS14においてno判定となる。さらに、今回の積算値P(cnt)が「99」であった場合、つまりベルト32が若干引き込まれているような場合でも、この場合は「誤差」であるとしてステップS14ではno判定とされる。このように、ステップS14においてP(cnt)>Clu(cnt)と判断した場合には、介助者がベルト32を意図的に引き込み方向に操作していない、あるいはスロープ12上の車椅子20が後退しているとされる。
【0084】
これに対し、今回の積算値P(cnt)が「98」以下であった場合には、ステップS14においてP(cnt)≦Clu(cnt)と判断される(yes判定)。つまり、介助者が意図的にベルト32を引き出し方向とは逆方向の引き込み方向に引き込ませている(操作している)とされる。その後、ステップS16に進む。
【0085】
このように、介助者によるベルト32の引き込み方向への操作の確からしさ(介助者の意図)を得るために、「2」パルス分の差を持たせてクラッチ開放基準値Clu(cut)を設定している。ただし、クラッチ開放基準値Clu(cut)を設定するに際し、「2」パルス分の差に限らず、制御装置40に必要とされる仕様に応じて「3」パルス分以上の差を持たせることもできる。
【0086】
ステップS15では、Duty比設定部51bが、ショートブレーキ用のDuty比(制動PWMDuty比)を設定する。具体的には、Duty比設定部51bは、
図12に示されるように、ベルト32の移動速度(ベルト速度)に応じて、駆動回路DCを短絡させるPWM制御のDuty比を設定する。これにより、スロープ12上の車椅子20の後退が加速されることをより確実に抑えることができる。ただし、介助者は、車椅子20が後退していることを見つけた場合には、ベルトフリースイッチ63を速やかに操作して「ベルトフリーモード」の動作を緊急停止させるようにする。
【0087】
図12のステップS151では、駆動制御部51が、検出信号Pの入力に基づいてベルト32の移動速度を算出し、算出されたベルト32の移動速度が低速であるか否かを判断する。ここでは、算出されたベルト32の移動速度と、第1閾値α(例えば時速0.5km/h)とを比較する。そして、ステップS151での判断が、ベルト速度≦αであった場合(yes判定)には、ステップS152に進む。ステップS152では、ベルト32に車椅子20が接続されていない、あるいは車椅子20は殆ど後退していない(止まっている)として、Duty比を「0%」に設定する。その後、
図11のステップS17に進む。これに対し、ステップS151での判断が、ベルト速度>αであった場合(no判定)には、ステップS153に進む。
【0088】
ステップS153では、算出されたベルト32の移動速度が中速域にあるか否かを判断する。ここでは、算出されたベルト32の移動速度と、第2閾値β(例えば時速1.0km/h)とを比較する。そして、ステップS153での判断が、ベルト速度≦βであった場合(yes判定)には、ステップS154に進む。ステップS154では、車椅子20がゆっくりと徐々に後退しているとして、Duty比を「50%」に設定する。その後、
図11のステップS17に進む。これにより、車椅子20の後退(ベルト32の引き出し)が効果的に抑えられる。これに対し、ステップS153での判断が、ベルト速度>βであった場合(no判定)には、ステップS155に進む。
【0089】
ステップS155では、算出されたベルト32の移動速度が高速域にあるか否かを判断する。ここでは、算出されたベルト32の移動速度と、第3閾値γ(例えば時速2.0km/h)とを比較する。そして、ステップS155での判断が、ベルト速度≦γであった場合(yes判定)には、ステップS156に進む。ステップS156では、車椅子20は比較的速く後退しているとして、Duty比を「100%」に設定する。その後、
図11のステップS17に進む。これにより、車椅子20の後退(ベルト32の引き出し)が効果的に抑えられる。これに対し、ステップS155での判断が、ベルト速度>γであった場合(no判定)には、Duty比の設定をせずに、
図11のステップS17に進む。
【0090】
なお、上述のように、算出されたベルト32の移動速度を3つの閾値(第1閾値α,第2閾値β,第3閾値γ)とそれぞれ比較せずに、別途、Duty比設定マップ(図示せず)を設け、当該Duty比設定マップから、算出されたベルト32の移動速度に合わせてリニアにDuty比を決定するようにしても良い。
【0091】
図11のステップS17では、算出されたベルト32の移動速度がより高速域にあるか否かを判断する。ここでは、算出されたベルト32の移動速度が第3閾値γよりも大きいか否かを判断する。そして、ステップS17での判断が、ベルト速度≦γであった場合(no判定)には、ステップS18に進む。これに対し、ステップS17での判断が、ベルト速度>γであった場合(yes判定)には、ステップS19に進む。
【0092】
ステップS18では、パルス比較部51aが、今回の積算値P(cnt)と前回の積算値P-1(cnt)とを比較する処理を実行する。具体的には、今回の積算値P(cnt)が前回の積算値P-1(cnt)よりも大きいか否かを判断する。つまり、ステップS18では、ベルト32の引き出し量が増えているか否かを判断する。そして、ステップS18においてP(cnt)≦P-1(cnt)と判断した場合(no判定)は、介助者がベルト32を操作していない、あるいはスロープ12上で車椅子20が停止しているとして、上流側のステップS14に戻る。すなわち、ベルトフリースイッチ63が誤操作された場合であって、介助者がベルト32を操作していない、あるいはスロープ12上で車椅子20が停止している場合には、駆動制御部51はベルトフリーにする動作を実行させない。
【0093】
これに対し、ステップS18においてP(cnt)>P-1(cnt)と判断した場合(yes判定)は、スロープ12上で車椅子20が後退し、ベルト32の引き出し量が増えているとして、ステップS20に進む。ステップS20では、ベルト32の引き出し量が増えていることに基づいて、駆動制御部51により、クラッチ開放基準値Clu(cut)の更新作業が行われる。具体的には、ベルト32の引き出し量が増えて、今回の積算値P(cnt)が「105」であった場合には、当該積算値P(cnt)から「2」パルス分を引いた値を算出する。つまり、
図11のステップS20に示される既定値「n」は、本実施の形態では「2」である。そして、ステップS20で得られた「103」を、次回の制御周期のクラッチ開放基準値Clu(cut)に設定して、その後、ステップS14に戻る。
【0094】
ステップS19では、車椅子20が比較的速い速度でスロープ12上を後退しているとして、駆動制御部51により、ベルト32の移動を緊急停止させる処理を実行する。具体的には、ソレノイド駆動部材93cの電源をオフにして、ラチェット機構93のラッチギヤ93aと歯止め93bとを噛み合わせる。これにより、ドラム92の逆転が停止されて、それ以上の車椅子20の後退が防止される。そして、駆動制御部51は、ベルト32の移動が緊急停止されたことを介助者に知らせるべく、ブザー65を鳴動(警報を発生)させる。その後、ステップS22に進んで「ベルトフリーモード」の動作が停止される。
【0095】
ステップS14でP(cnt)≦Clu(cnt)と判断された後(yes判定後)のステップS16では、介助者が意図的にベルト32を引き出し方向とは逆方向の引き込み方向に引き込ませている(操作している)との判断、つまりベルト32の引き込み状態が検出されたとの判断に基づいて、駆動制御部51が、電磁クラッチ84の電源をオフにして、電磁クラッチ84を「開放状態」にする。さらに、駆動制御部51は、モータ部81のショートブレーキが掛かっている状態を解除する。つまり、
図7に示される駆動回路DCの短絡を解除させて、駆動回路DCを開放する。
【0096】
ここで、ステップS16の動作開始のトリガは、
図13の時間t5における「L側移動フラグ」が解除されたこと、つまり左側の電動ウィンチ30のベルト32が介助者の意思により「2」パルス分以上引き込まれたことと、
図13の時間t6における「R側移動フラグ」が解除されたこと、つまり右側の電動ウィンチ30のベルト32が介助者の意思により「2」パルス分以上引き込まれたこと、との双方を満たすことである。
【0097】
具体的には、
図13の時間t5において、左側の電動ウィンチ30の積算値P(cnt)は、「307」から「305」に「2」パルス分小さくなっている。また、
図13の時間t6において、右側の電動ウィンチ30の積算値P(cnt)は、「300」から「298」に「2」パルス分小さくなっている。
【0098】
これにより、
図13の時間t6以降において、「ベルトフリーモード」の動作が「ベルトフリー状態」とされて、左右側の電動ウィンチ30から、介助者は自由にベルト32をそれぞれ引き出せるようになる。ステップS16で「ベルトフリー状態」とされた後は、ステップS21に進み、駆動制御部51により、ベルトフリースイッチ63(
図3(a)参照)がオフ操作されたか否かを判断する。
【0099】
ステップS21でオフ操作されていないと判断(no判定)された場合には、「ベルトフリー状態」を継続すべくステップS14に戻る。一方、ステップS21でオフ操作されたと判断(yes判定)された場合には、「ベルトフリー状態」を停止させるべくステップS22に進む。その後、ステップS22において、「ベルトフリーモード」の動作が停止される。
【0100】
なお、
図13に示されるように、「ベルトフリーモード」の動作中は、弛み取りモータ95の電源は常時オンの状態(作動状態)となっている。したがって、介助者によるベルト32の引き込み方向への操作時には、ドラム92は小さい駆動トルクで回転されているので、積算値P(cnt)が小さくなる。このように、駆動制御部51は、介助者によるベルト32の引き込み方向への操作時において、積算値P(cnt)が小さくなることを監視できるようになっている。
【0101】
以上詳述したように、本実施の形態に係る電動ウィンチ30の制御装置40によれば、コントローラ50は、操作パネル60のベルトフリースイッチ63がオン操作されてベルト32を自由に引き出すための「ベルトフリーモード」の動作に切り換えられ、かつ回転センサ96からの検出信号Pに基づいてベルト32の引き込み状態が検出されると、電磁クラッチ84を連結状態から開放状態に制御する。
【0102】
これにより、介助者による操作パネル60のベルトフリースイッチ63のオン操作(第1条件)と、介助者によるベルト32の引き込み動作(第2条件)と、を経ない限り、電磁クラッチ84は連結状態から開放状態にならない。したがって、介助者の意思に基づいて確実にベルトフリー動作を行うことが可能となる。
【0103】
また、本実施の形態に係る電動ウィンチ30の制御装置40によれば、電動ウィンチ30は、ベルト32の引き込み方向への回転を許容し、ベルト32の引き出し方向への回転を規制するラチェット機構93を備え、コントローラ50は、「ベルトフリーモード」の動作に切り換えられると、ラチェット機構93の歯止め93bとラッチギヤ93aとの噛み合いを解除し、かつモータ部81の駆動回路DCを短絡させてモータ部81に制動力を発生させる。
【0104】
これにより、スロープ12上に車椅子20がある場合に、ベルトフリースイッチ63が誤操作されたとしても、車椅子20の後退が加速されることを効果的に抑えることが可能となる。
【0105】
さらに、本実施の形態に係る電動ウィンチ30の制御装置40によれば、コントローラ50は、「ベルトフリーモード」の動作に切り換えられ、かつベルト32の引き込み状態が検出されると、駆動回路DCの短絡を解除させる。
【0106】
これにより、介助者は、左右側の電動ウィンチ30から、略抵抗無く容易かつ自由にベルト32をそれぞれ引き出すことが可能となる。
【0107】
また、本実施の形態に係る電動ウィンチ30の制御装置40によれば、コントローラ50は、ベルト32の移動速度に応じて駆動回路DCの短絡をPWM制御して、制動力を調整する。
【0108】
これにより、モータ部81によるショートブレーキの大きさを最適化することができ、車椅子20のスロープ12上での後退を確実に抑えつつ、無駄な消費電力の発生を抑制することが可能となる。
【0109】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0110】
上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。