特許第6825992号(P6825992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825992
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】原子炉格納容器内酸素測定方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   G21C17/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-108661(P2017-108661)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-205040(P2018-205040A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 基茂
(72)【発明者】
【氏名】羽生 大仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 愛実
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 幸基
(72)【発明者】
【氏名】田中 元気
【審査官】 中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−004534(JP,A)
【文献】 特開昭60−042690(JP,A)
【文献】 特開昭60−187893(JP,A)
【文献】 特開平06−242066(JP,A)
【文献】 特開平10−293196(JP,A)
【文献】 特開2000−098075(JP,A)
【文献】 特開2007−163208(JP,A)
【文献】 特開2008−203265(JP,A)
【文献】 特開2012−083226(JP,A)
【文献】 特開2013−104745(JP,A)
【文献】 特開2015−125129(JP,A)
【文献】 特開2015−125138(JP,A)
【文献】 米国特許第06524534(US,B1)
【文献】 山添 昇 ほか,化学センサ材料としての固体電解質,電気化学および工業物理化学,日本,1987年,第55巻第3号,pp. 200-204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
G21C 9/00
G21D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器のサンプル気体取り出し部に接続された送気配管を通じて、ブロワを用いて、前記原子炉格納容器内のサンプル気体を取り出して、前記原子炉格納容器の外に配置された格納容器外酸素測定器を通過させ、前記格納容器外酸素測定器を通過した後の前記サンプル気体を前記原子炉格納容器のサンプル気体返送部を通じて前記原子炉格納容器内に戻す、サンプル気体循環ステップと、
前記格納容器外酸素測定器により、前記送気配管を通じて取り出されたサンプル気体の酸素分圧を測定するサンプル気体酸素分圧測定ステップと、
前記原子炉格納容器内に配置された格納容器内酸素測定器により前記原子炉格納容器内の酸素分圧を測定する格納容器内酸素分圧測定ステップと、
前記サンプル気体酸素分圧測定ステップから得られた前記サンプル気体の酸素分圧に基づいて、前記格納容器内酸素分圧測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の酸素分圧を修正する修正ステップと、
を有することを特徴とする原子炉格納容器内酸素測定方法。
【請求項2】
前記格納容器外酸素測定器は酸素濃度測定器を含み、
前記サンプル気体酸素分圧測定ステップは、
前記格納容器外酸素測定器により前記サンプル気体の酸素濃度を測定する酸素濃度測定ステップと、
前記原子炉格納容器内の圧力を測定する圧力測定ステップと、
前記酸素濃度測定ステップから得られた酸素濃度と、前記圧力測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の圧力とに基づいて酸素分圧を演算する第1の酸素分圧演算ステップと、
を含み、
前記格納容器内酸素測定器は前記原子炉格納容器内の酸素分圧に対応する出力電流を出力する酸素センサを含み、
前記格納容器内酸素分圧測定ステップは、
前記酸素センサの出力電流に基づいて前記原子炉格納容器内の酸素分圧を演算する第2の酸素分圧演算ステップを含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の原子炉格納容器内酸素測定方法。
【請求項3】
原子炉格納容器内に可搬型酸素測定器を搬入する測定器搬入ステップと、
前記可搬型酸素測定器により前記原子炉格納容器内の酸素分圧を測定する可搬型酸素分圧測定ステップと、
前記原子炉格納容器内に固定された格納容器内酸素測定装置の出力に基づいて、前記原子炉格納容器内の酸素分圧を測定する固定型酸素分圧測定ステップと、
前記可搬型酸素分圧測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の酸素分圧に基づいて、前記固定型酸素分圧測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の酸素分圧を修正する修正ステップと、
を有することを特徴とする原子炉格納容器内酸素測定方法。
【請求項4】
前記可搬型酸素測定器は酸素濃度測定器を含み、
前記可搬型酸素分圧測定ステップは、
前記可搬型酸素測定器により前記原子炉格納容器内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定ステップと、
前記原子炉格納容器内の圧力を測定する圧力測定ステップと、
前記酸素濃度測定ステップから得られた酸素濃度と、前記圧力測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の圧力とに基づいて酸素分圧を演算する第1の酸素分圧演算ステップと、
を含み、
前記格納容器内酸素測定器は前記原子炉格納容器内の酸素分圧に対応する出力電流を出力する酸素センサを含み、
前記固定型酸素分圧測定ステップは、
前記酸素センサの出力電流に基づいて前記原子炉格納容器内の酸素分圧を演算する第2の酸素分圧演算ステップを含むこと、
を特徴とする請求項3に記載の原子炉格納容器内酸素測定方法。
【請求項5】
前記格納容器内酸素測定器は、固体酸化物形酸素イオン伝導体を用いた限界電流式の酸素センサを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の原子炉格納容器内酸素測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子炉格納容器内酸素測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用原子炉施設には、過酷事故発生時に原子炉および関連施設の安全性を確保するための機器があり、事故の状況把握および収束に向けた対応が採れるような機構を有している。
【0003】
特に、原子炉格納容器内の気相状態は通常運転時の異常感知および過酷事故時の状況把握のために重要な情報であり、常時監視が求められている。
【0004】
従来の原子炉施設において、格納容器雰囲気モニタにより気相中の水素および酸素濃度などを測定している。当該機器は原子炉格納容器外部に設置されており、原子炉格納容器内部の気相をブロワにより当該機器まで移送し、冷却器などを用いて湿度、温度、圧力などを調整し測定を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−532079号公報
【特許文献2】特開2015−125138号公報
【特許文献3】特開昭60−042690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の過酷事故が発生したように既設施設のみでは過酷事故に対応するための十分な対応が採れないことが明らかになっている。従来の原子炉施設において、過酷事故発生時に交流電源を失った場合は、格納容器雰囲気モニタを動作させることができず、現状では常時監視を達成できていない。特に、福島第一原子力発電所での過酷事故では水素と酸素の反応による水素爆発により原子炉施設を損なう事象が発生しており、水素爆発防止のための気相濃度監視が重要である。
【0007】
そこで、交流電源を必要とする気体の移送や除湿、冷却、降圧などの調整等を行わず、過酷事故時の気相組成を測定するシステムが求められている。
【0008】
特に酸素は水素と共存することで燃焼、爆発を引き起こすため、その濃度測定はアクシデントマネジメント上、重要な位置づけとなっている。
【0009】
このような状況に対応するための先行技術として、水素と酸素の燃焼反応より酸素濃度を測定する方法が提案されている。そのような技術を用いた場合は、水素共存下の酸素濃度測定が可能となるものの、水素が共存していない環境では測定することができなかった。
【0010】
また、酸素センサは定期的に校正をすることが望ましいが、複雑形状である原子炉格納容器内に設置した場合、酸素センサに校正気体供給用の配管を引き回すことは設置スペースの観点から困難である。
【0011】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、交流電源喪失時において原子炉格納容器内の酸素濃度または酸素分圧を測定可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明一つの態様によれば、原子炉格納容器内酸素測定方法は、原子炉格納容器のサンプル気体取り出し部に接続された送気配管を通じて、ブロワを用いて、前記原子炉格納容器内のサンプル気体を取り出して、前記原子炉格納容器の外に配置された格納容器外酸素測定器を通過させ、前記格納容器外酸素測定器を通過した後の前記サンプル気体を前記原子炉格納容器のサンプル気体返送部を通じて前記原子炉格納容器内に戻す、サンプル気体循環ステップと、前記格納容器外酸素測定器により、前記送気配管を通じて取り出されたサンプル気体の酸素分圧を測定するサンプル気体酸素分圧測定ステップと、前記原子炉格納容器内に配置された格納容器内酸素測定器により前記原子炉格納容器内の酸素分圧を測定する格納容器内酸素分圧測定ステップと、前記サンプル気体酸素分圧測定ステップから得られた前記サンプル気体の酸素分圧に基づいて、前記格納容器内酸素分圧測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の酸素分圧を修正する修正ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の一つの態様によれば、原子炉格納容器内酸素測定方法は、原子炉格納容器内に可搬型酸素測定器を搬入する測定器搬入ステップと、前記可搬型酸素測定器により前記原子炉格納容器内の酸素分圧を測定する可搬型酸素分圧測定ステップと、前記原子炉格納容器内に固定された格納容器内酸素測定装置の出力に基づいて、前記原子炉格納容器内の酸素分圧を測定する固定型酸素分圧測定ステップと、前記可搬型酸素分圧測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の酸素分圧に基づいて、前記固定型酸素分圧測定ステップから得られた前記原子炉格納容器内の酸素分圧を修正する修正ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、既設の原子炉施設に大幅な改造工事をしなくても、交流電源喪失時において原子炉格納容器内の酸素濃度または酸素分圧を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る原子炉施設の一実施形態を示す模式的な立断面図である。
図2】本発明に係る原子炉施設の一実施形態で利用可能な限界電流式酸素センサの特性の一例を示すグラフであって、酸素分圧と出力電圧の関係を示すグラフである。
図3】本発明に係る原子炉格納容器内酸素測定方法の第1の実施形態の手順を示すフロー図である。
図4】本発明に係る原子炉格納容器内酸素測定方法の第2の実施形態の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る原子炉施設の一実施形態を示す模式的な立断面図である。ここでは、原子炉施設の一例として沸騰水型原子力発電所を示している。原子炉建屋11の内部に原子炉格納容器12が収められており、原子炉格納容器12内に核燃料を収めた原子炉圧力容器13が設置されている。原子炉格納容器12はドライウェル21とウェットウェル22に分かれていて、原子炉圧力容器13はドライウェル21内に配置されている。
【0019】
ドライウェル21およびウェットウェル22の雰囲気組成等を常時分析監視するために、原子炉格納容器12の外部に格納容器雰囲気モニタ14が設置されている。ドライウェル21から格納容器雰囲気モニタ14に気相部の気体を送るためのドライウェル気相送気配管(送気配管)41が接続され、ウェットウェル22から格納容器雰囲気モニタ14に気相部の気体を送るためのウェットウェル気相送気配管(送気配管)42が接続されている。また、格納容器雰囲気モニタ14で計測を行った気体をドライウェル21に戻すための返送配管43が接続されている。
【0020】
格納容器雰囲気モニタ14は、ブロワ31と、冷却器(熱交換器)32と、酸素濃度検出器(格納容器外酸素測定器)33とを備えている。ドライウェル気相送気配管41およびウェットウェル気相送気配管42から送られた気体は、ブロワ31によって昇圧されて、冷却器32で冷却された後に酸素濃度検出器33に送られる。酸素濃度検出器33から排出された気体は、返送配管43を通してドライウェル21(原子炉格納容器12)に戻される。
【0021】
格納容器雰囲気モニタ14に含まれる酸素濃度検出器33は、原子炉格納容器12の外に設置されるものであるから、原子炉の定期検査時または通常運転時に適宜校正を行うことができる。
【0022】
原子炉格納容器12には圧力計35が設置されている。なお、図1では圧力計35をドライウェル21に設置した例を示しているが、圧力計をドライウェル21とウェットウェル22の両方に設置してもよい。さらに、格納容器雰囲気モニタ14にも圧力計を設置してもよい。
【0023】
ドライウェル気相送気配管41、ウェットウェル気相送気配管42それぞれが原子炉格納容器12に接続されている箇所、すなわち、サンプル気体取り出し部36、37の近傍の原子炉格納容器12内に、格納容器内酸素センサ(格納容器内酸素測定器)15a、15bが配置されている。さらに、返送配管43が原子炉格納容器12に接続されている箇所、すなわち、サンプル気体返送部38の近傍の原子炉格納容器12内に、格納容器内酸素センサ15c(格納容器内酸素測定器)が配置されている。
【0024】
また、配管類や圧力計などの計器およびそれらの信号を取り出す電線(図示なし)や過酷事故発生時に対応するための機器(図示なし)が配置されている。
【0025】
格納容器内酸素センサ15a、15b、15cは、たとえば、固体酸化物形イオン伝導体を用いた限界電流式である。
【0026】
過酷事故時の原子炉格納容器12内の雰囲気は原子炉圧力容器13の破損等に伴い300℃程度の温度、1MPa以下の圧力、高線量雰囲気、飽和蒸気圧相当の水蒸気雰囲気となり得る。また、過酷事故の程度や進展状況によっては交流電源喪失により付帯設備が機能しなくなる可能性がある。
【0027】
ところで、限界電流式酸素センサは、たとえば、イットリア安定化ジルコニアなどの固体酸化物形酸素イオン伝導体に金属もしくは金属酸化物からなる電極を用いて電圧を印加することで酸素イオンを選択的に透過させ、イオン透過に伴う電流値を測定することで酸素分圧を測定する。固体酸化物形酸素イオン伝導体を機能させるために固体酸化物形酸素イオン伝導体部分は300〜800℃程度に加熱して使用する。そのため、過酷事故時に想定される温度の気相が限界電流式酸素センサ内に流入した際もその機能を維持することが可能である。
【0028】
また、限界電流式酸素センサの構成は、外部圧力と圧力差を生じるような密閉部分がない構造となっており、原子炉格納容器12内の圧力が上昇した場合においてもその構造が破壊されることはない。
【0029】
加えて、限界電流式酸素センサは無機物構成が可能であり、過酷事故時の高線量雰囲気でもその機能を維持することが可能である。
【0030】
限界電流式酸素センサは、印加する電圧によっては水の電気分解が発生するため、原子炉格納容器12内で使用する場合は水の電気分解が発生する電位以下で使用することが望ましい。水の電気分解温度は固体酸化物形酸素イオン伝導体および電極温度に依存するため、推奨される運転電位を一概に規定することはできないが、標準水素電極の電位に対して2.0V以下の電位で運転することが望ましい。限界電流式酸素センサは、その原理上直流電源のみで稼働し、原子炉格納容器内部に直接設置し、冷却や除湿などの交流電源を必要とする気相の前処理等を行わないため、交流電源が失われた環境においても稼働することが可能である。
【0031】
上記説明の通り、限界電流式酸素センサは、所定の運転条件内で動作させることで過酷事故時の原子炉格納容器12内雰囲気に対応することが可能であり、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cとして使用することが可能である。
【0032】
固体酸化物形酸素イオン伝導体を用いた限界電流式酸素センサの特性について、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る原子炉施設の一実施形態で利用可能な限界電流式酸素センサの特性の一例を示すグラフであって、酸素分圧と出力電圧の関係を示すグラフである。図2に示すように、限界電流式の酸素センサは、酸素分圧に応じて応答電流が直線的に増える挙動を示す。予め酸素分圧に応じた応答直線を取得しておくことで、酸素濃度既知の雰囲気による1点校正もしくは2点校正が可能である。
【0033】
格納容器内酸素センサ15a、15b、15cは、放射線照射や時間経過によって特性が変化することが考えられるので、設置後に適宜、校正を行う必要がある。しかし、これらのセンサは原子炉格納容器12内に設置されるため、センサを原子炉格納容器12の外に取り出して校正作業を行うことは困難である。そのため、この実施形態では、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの計測対象とほぼ同等の気体を計測対象として格納容器雰囲気モニタ14を用いた計測を行い、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの校正を行う。格納容器雰囲気モニタ14は原子炉格納容器12の外に配置されているので、詳細説明は省略するが、適宜校正を行うことができる。
【0034】
本実施形態によれば、原子炉の通常運転時および定期点検時に、格納容器雰囲気モニタ14および格納容器内酸素センサ15a、15b、15cにより、原子炉格納容器12内の気体の酸素濃度または酸素分圧を測定することができる。また、格納容器雰囲気モニタ14および格納容器内酸素センサ15a、15b、15cで互いに対応する位置の原子炉格納容器12内の気体を測定対象とすることから、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの出力を格納容器雰囲気モニタ14の出力によって校正することができる。さらに、電源喪失事故時に、格納容器雰囲気モニタ14による原子炉格納容器12内の気体の測定ができなくなった場合でも、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cよる原子炉格納容器12内の気体の酸素分圧の測定を行うことができる。
【0035】
しかも、既設の格納容器雰囲気モニタ14や、ドライウェル気相送気配管41、ウェットウェル気相送気配管42および返送配管43を利用することにより、新たに格納容器内酸素センサ15a、15b、15cを追設するだけで実現できる。
【0036】
図3は、本発明に係る原子炉格納容器内酸素測定方法の第1の実施形態の手順を示すフロー図である。
【0037】
図1に示す構成で、まず、ブロワ31を駆動することにより、原子炉格納容器12内の気体(サンプル気体)を循環させる(ステップS11)。すなわち、原子炉格納容器12内の気体は、ドライウェル気相送気配管41およびウェットウェル気相送気配管42を通じて、格納容器雰囲気モニタ14に送り込まれる。格納容器雰囲気モニタ14内でブロワ31を出たサンプル気体は、冷却器32で冷却された後に酸素濃度検出器33へ送られる。酸素濃度検出器33を通過したサンプル気体は返送配管43を通じて原子炉格納容器12内に戻される。
【0038】
つぎに、格納容器雰囲気モニタ14内の酸素濃度検出器33により、サンプル気体の酸素濃度を検出する(ステップS12)。これとともに、原子炉格納容器12内の圧力を圧力計35によって測定する(ステップS13)。この圧力は、格納容器雰囲気モニタ14内の圧力計(図示せず)によって測定してもよい。
【0039】
つぎに、格納容器雰囲気モニタ14より得られた酸素濃度指示値と原子炉格納容器12内の圧力計より得られた圧力の測定結果に基づいて、原子炉格納容器12内の酸素分圧を演算する(第1の酸素分圧演算ステップS14)。
【0040】
一方、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cによる出力電流を検出する(ステップS15)。つぎに、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの出力電流に基づいて、原子炉格納容器12内の酸素分圧を演算する(第2の酸素分圧演算ステップS16)。
【0041】
つぎに、第1の酸素分圧演算ステップS14の結果と第2の酸素分圧演算ステップS16の結果とを比較し(ステップS17)、これらの結果が所定の範囲で一致しない場合(ステップS17でNoの場合)は、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの電流値を校正する(ステップS18)。すなわち、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの出力電流から酸素分圧を演算する際の変換式を調整する。
【0042】
ステップS17で、第1の酸素分圧演算ステップS14の結果と第2の酸素分圧演算ステップS16の結果が所定の範囲で一致した場合(ステップS17でYesの場合)は、校正完了とする。
【0043】
本実施形態を採ることにより、原子炉格納容器12内部に格納容器内酸素センサ15a、15b、15cを校正するための配管や機器を新たに設置することなく、原子炉通常運転時も格納容器内酸素センサの健全性確認および校正が可能となる。
【0044】
[第2の実施形態]
図4は、本発明に係る原子炉格納容器内酸素測定方法の第2の実施形態の手順を示すフロー図である。
【0045】
この第2の実施形態では、上述の第1の実施形態と同様に格納容器内酸素センサ15a、15b、15cを原子炉格納容器12内に設置する。格納容器内酸素センサ15a、15b、15cは、たとえば、固体酸化物形イオン伝導体を用いた限界電流式である。これにより、電源喪失事故時でも、原子炉格納容器12内の酸素濃度を測定することができる。
【0046】
第1の実施形態では、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの校正のために格納容器雰囲気モニタ14のデータを用いるが、第2の実施形態では、格納容器内酸素センサ15の校正のために可搬酸素センサ(図示せず)のデータを用いる点が相違する。
【0047】
原子炉格納容器12内に格納容器内酸素センサ15a、15b、15cがあらかじめ固定設置されているものとする。この格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの校正は、たとえば原子炉が停止している定期検査時等に行う。図4に示すように、定期検査時に可搬酸素センサを原子炉格納容器12内の格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの近傍に搬入して仮設する(ステップS21)。このとき、可搬酸素センサとともに可搬酸素センサの近傍に可搬圧力計(図示せず)を搬入して仮設してもよい。
【0048】
つぎに、原子炉格納容器12内に搬入された可搬酸素センサによりその位置での酸素濃度を検出する(ステップS22)。このとき、原子炉格納容器12内の圧力を、既設の圧力計またはこのとき搬入された可搬圧力計によって測定する(ステップS23)。
【0049】
つぎに、ステップS22で得られた酸素濃度と、ステップS23で得られた圧力とに基づいて、その位置の酸素分圧を演算する(第1の酸素分圧演算ステップS24)。
【0050】
一方、第1の実施形態のステップS15と同様に、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cによる出力電流を検出する(ステップS25)。つぎに、第1の実施形態のステップS16と同様に、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの出力電流に基づいて、原子炉格納容器12内の酸素分圧を演算する(第2の酸素分圧演算ステップS26)。
【0051】
つぎに、第1の酸素分圧演算ステップS24の結果と第2の酸素分圧演算ステップS26の結果とを比較し(ステップS27)、これらの結果が所定の範囲で一致しない場合(ステップS27でNoの場合)は、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの電流値を校正する(ステップS28)。すなわち、格納容器内酸素センサ15a、15b、15cの出力電流から酸素分圧を演算する際の変換式を調整する。
【0052】
ステップS27で、第1の酸素分圧演算ステップS24の結果と第2の酸素分圧演算ステップS26の結果が所定の範囲で一致した場合(ステップS27でYesの場合)は、校正完了とする。
【0053】
この第2の実施形態を採ることで原子炉格納容器12内部に格納容器内酸素センサ15a、15b、15c校正用の配管敷設や機器を新たに設置することなく、格納容器内酸素センサ15の健全性確認および校正が可能となる。
【0054】
[他の実施形態]
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
11…原子炉建屋、 12…原子炉格納容器、 13…原子炉圧力容器、 14…格納容器雰囲気モニタ、 15a,15b,15c…格納容器内酸素センサ(格納容器内酸素測定器)、 21…ドライウェル、 22…ウェットウェル、 31…ブロワ、 32…冷却器(熱交換器)、 33…酸素濃度検出器(格納容器外酸素測定器)、 35…圧力計、 36、37…サンプル気体取り出し部、 38…サンプル気体返送部、 41…ドライウェル気相送気配管(送気配管)、 42…ウェットウェル気相送気配管(送気配管)、 43…返送配管
図1
図2
図3
図4