(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
【0015】
本実施形態に係る押出成形品の製造方法は、第一の熱硬化性樹脂、第一の架橋剤及び第一の反応制御剤を含有する第一の液状材料を動的架橋して、動的架橋物を得る動的架橋工程と、第二の架橋剤及び第二の反応制御剤を含有する第二の液状材料を、動的架橋物と混合して、成形原料を得る混合工程と、成形原料を押出成形して、押出成形品を得る押出成形工程と、を備える。
【0016】
本実施形態では、第一の液状材料を動的架橋により増粘させ、増粘後の液状材料(動的架橋物)に第二の液状材料を配合して成形原料とすることで、容易に押出成形により成形品を得ることができる。これにより、本実施形態に係る製造方法では、第一の熱硬化性樹脂が低粘度であっても、また、それを含む第一の液状材料が低粘度であっても、押出成形が可能となる。
【0017】
第一の熱硬化性樹脂の23℃、せん断速度1s
−1における粘度は、例えば、15000Pa・s未満であってよく、2000Pa・s未満でもよく、200Pa・s未満であってもよく、20Pa・s未満でもよく、0.5Pa・s未満でもよい。このような第一の熱硬化性樹脂は、押出成形への適用が困難であるため、上述の効果が顕著に奏される。
【0018】
また、第一の液状材料の23℃、せん断速度1s
−1における粘度は、例えば、1500Pa・s未満であってよく、500Pa・s未満であってもよく、200Pa・s未満であってもよい。このような液状材料は、そのままでは押出成形による成形が困難であるため、上述の効果が顕著に奏される。
【0019】
成形原料の23℃、せん断速度1s
−1における粘度は、例えば4000Pa・s以上であり、好ましくは5500Pa・s以上であり、より好ましくは7000Pa・s以上である。これにより押出成形による成形性が一層向上する傾向がある。成形原料の上記粘度の上限は特に限定されず、例えば、50000Pa・s以下であってよく、好ましくは45000Pa・s以下であり、より好ましくは40000Pa・s以下である。
【0020】
なお、本明細書中、熱硬化性樹脂、液状材料及び成形原料の粘度は、レオメーター(直径35mm、コーン角度4°のコーンプレートを装着したThermo SCIENTIFIC製HAAKE RheoStress 6000を使用)に測定試料3gを乗せ、試料温度23℃、せん断速度1s
−1の条件で測定される粘度を示す。当該粘度は、温度23℃、せん断速度1S
−1の条件でレオメーターにより測定される粘度、ということもできる。但し、粘度が12000Pa・sを超える材料は、レオメーターでの粘度測定が困難であるため、以下の方法で測定される値をその粘度とする。株式会社東洋精機製作所製のキャピラリー押出試験機を使用し、成形原料20gを23℃、ダイス穴径φ1mm、円筒流路長10mmの条件で、せん断速度60s
−1、120s
−1、240s
−1、600s
−1、1200s
−1、2400s
−1及び6000s
−1のときの粘度をそれぞれ測定し、横軸にせん断速度、縦軸に粘度をプロットしたグラフを作成する。次いで、そのプロットを累乗近似曲線で近似し、近似曲線からせん断速度1s
−1の時の粘度を外挿して、これを23℃、せん断速度1s
−1における粘度とする。
【0021】
動的架橋物は、温度23℃、せん断速度1.08×10
2S
−1における粘度として、210Pa・s以上の粘度を有することが好ましい。当該粘度は、350Pa・s以上であることがより好ましく、500Pa・s以上であることが更に好ましい。このような粘度の動的架橋物が得られるように動的架橋工程を制御することで、成形原料の押出成形による成形性が一層向上する傾向がある。なお、動的架橋物の上記粘度の上限は特に限定されず、例えば、1500Pa・s以下であってよく、好ましくは1250Pa・s以下であり、より好ましくは1000Pa・s以下である。
【0022】
なお、本明細書中、動的架橋物の粘度は、株式会社東洋精機製作所製のキャピラリー押出試験機を用い、動的架橋物20gを温度23℃、ダイス穴径φ1mm、円筒流路長10mm、せん断速度1.08×10
2s
−1の条件で測定される粘度を示す。すなわち、当該粘度は、温度23℃、せん断速度1.08×10
2S
−1の条件でキャピラリー押出試験機により測定される粘度、ということもできる。
【0023】
好適な一態様において、温度23℃、せん断速度1.08×10
2S
−1における動的架橋物の粘度は、210Pa・s以上であり、温度23℃、せん断速度1S
−1における成形原料の粘度は、4000Pa・s以上である。また、本態様において、第一の液状材料は、エムアンドケー株式会社製加硫度試験機MDRH2030を用いた加硫試験によりトルク−時間曲線を求めたとき、下記式(i)で求められる傾きθ
tcが、0.05〜0.70dN・m/minである。このような態様によれば、成形原料が押出成形性に特に優れたものとなり、外観が良好な押出成形品を容易に得ることができる。
θ
tc=0.4×(MH−ML)/(T
50−T
10) …(i)
[式中、MHは、トルクの最大値(dN・m)を示し、MLは、トルクの最小値(dN・m)を示し、T
50は、トルクが最小値MLから(MH−ML)×0.5の値に上昇するまでの時間(min)を示し、T
10は、トルクが最小値MLから(MH−ML)×0.1の値に上昇するまでの時間(min)を示す。]
【0024】
第一の液状材料が含有する第一の架橋剤及び第一の反応制御剤は、第二の液状材料が含有する第二の架橋剤及び第二の反応制御剤とそれぞれ同種でも異なっていてもよい。また、第二の液状材料は第二の熱硬化性樹脂を含んでいてよく、当該第二の熱硬化性樹脂は、第一の熱硬化性樹脂と同種でも異なっていてもよい。
【0025】
好適な一態様において、上記製造方法は、熱硬化性樹脂、架橋剤及び反応制御剤を含有する所定の液状材料(A)から得られる成形品と類似の組成を有する成形品を、押出成形で得る方法であってよい。また、このとき、第一の液状材料と第二の液状材料とを合計した材料組成が、液状材料(A)の材料組成とが同じになるように、第一の液状材料及び第二の液状材料の材料組成を調整してもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る製造方法は、増粘はするが粉化しない組成で調製された第一の液状材料を、動的架橋により増粘し、これに架橋剤を含む第二の液状材料を混合して押出成形する方法ということもできる。単に第一の液状材料を動的架橋により押出可能な粘度にしただけでは、所望の物性を有する成形品を得ることは難しく、第一の液状材料の動的架橋後に第二の液状材料を混合することで、所望の物性を有する成形品を得ることができる。
【0027】
以下、本実施形態に係る製造方法の各工程について詳述する。
【0028】
<動的架橋工程>
動的架橋工程は、第一の熱硬化性樹脂、第一の架橋剤及び第一の反応制御剤を含有する第一の液状材料を動的架橋して、動的架橋物を得る工程である。
【0029】
第一の熱硬化性樹脂は、第一の架橋剤によって架橋可能で、且つ、第一の反応制御剤によってその架橋反応速度を低下できるものであればよい。
【0030】
第一の熱硬化性樹脂は、架橋性基を有することが好ましく、架橋性基としてビニル基を含有することがより好ましい。架橋性基は、第一の熱硬化性樹脂の主鎖の末端に結合していてよく、側鎖に結合していてもよい。第一の熱硬化性樹脂は、1分子中に架橋性基をいくつ有していてもよく、1分子中に架橋性基を2以上有することが好ましい。
【0031】
第一の熱硬化性樹脂は、架橋性基を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、末端又は側鎖に架橋性基が導入された変性ジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0032】
第一の熱硬化性樹脂としては、例えば、以下の平均組成式(1)で表され、且つ、1分子中に少なくとも2つの反応性基を有するオルガノポリシロキサンが好適に用いられる。
R
1aSiO
(4−a)/2 …(1)
(式(1)中、R
1は置換又は非置換の一価の炭化水素基(好ましくは炭素数1〜10の置換又は非置換の炭化水素基)であり、aは1.5〜2.8の正数である。)
【0033】
式(1)のオルガノポリシロキサンにおいて、架橋性基の含有量は、全R
1中の0.01〜5モル%であることが好ましい。このような第一の熱硬化性樹脂としては、信越化学工業株式会社等の各社市販品を使用してよい。
【0034】
第一の架橋剤は、第一の熱硬化性樹脂を架橋可能なものであればよい。第一の架橋剤は、第一の熱硬化性樹脂が有する架橋性基の種類に応じて適宜選択できる。
【0035】
第一の架橋剤は、例えば、第一の熱硬化性樹脂が有する架橋性基と反応して、第一の熱硬化性樹脂と第一の架橋剤とを結合させることが可能な反応性基を有していてよく、当該反応性基を1分子中に2つ以上有していることが好ましい。
【0036】
第一の熱硬化性樹脂が架橋性基としてビニル基を有するとき、第一の架橋剤は、反応性基としてヒドロシリル基(Si−H)を有することが好ましい。また、第一の架橋剤は、1分子中に少なくとも2つのヒドロシリル基を有するポリシロキサンであることがより好ましく、このようなポリシロキサンとしては、例えば、末端又は側鎖に2以上のヒドロシリル基が導入された変性ジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0037】
第一の架橋剤としては、例えば、以下の平均組成式(2)で表され、且つ、1分子中に少なくとも2つ(好ましくは2〜50)のヒドロシリル基を有するポリシロキサンが好適に用いられる。
R
2bH
cSiO
(4−b−c)/2 …(2)
(式(2)中、R
2は置換又は非置換の一価の炭化水素基(好ましくは炭素数1〜10の置換又は非置換の炭化水素基)であり、bは0.7〜2.1の正数であり、cは0.001〜1.0の正数であり、b+cは0.8〜3.0の正数である。)
【0038】
第一の架橋剤として使用できる市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製「KF−99」、「KF−9901」、「C25B」等が挙げられる。
【0039】
第一の液状材料は、第一の熱硬化性樹脂と第一の架橋剤との架橋反応を促進する第一の触媒を更に含有していてよい。第一の触媒は、架橋反応の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、第一の熱硬化性樹脂がビニル基を有し、第一の架橋剤がヒドロシリル基を有する場合、第一の触媒はヒドロシリル化反応触媒であってよい。
【0040】
第一の触媒は、例えば白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム等の白金族の活性金属を有する触媒であってよく、2種以上の活性金属を有する触媒であってもよい。
【0041】
第一の触媒がヒドロシリル化反応触媒であるとき、第一の触媒としては、白金族金属系触媒が好ましく、白金触媒がより好ましい。
【0042】
第一の反応制御剤は、第一の熱硬化性樹脂及び第一の架橋剤による架橋反応の反応速度を低下させることができるものであればよい。例えば、第一の反応制御剤は、第一の触媒の触媒活性を抑制することで架橋反応の反応速度を低下させるものであってよい。第一の反応制御剤は、架橋反応の種類、第一の触媒の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0043】
第一の触媒が白金族金属系触媒であるとき、第一の反応制御剤は白金族金属系触媒の触媒活性を制御できるものであればよく、例えば、有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム系化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。このような第一の反応制御剤の具体例としては、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3−メチル−3−1−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0044】
第一の液状材料は、上記以外の成分を更に含有していてよい。例えば、第一の液状材料は、充填材、改質剤、繊維等を更に含有していてよい。
【0045】
充填材としては、例えば、セライト、シリカ、カーボンブラック、黒鉛、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスチョップドストランド、ガラスパウダー、セルロース、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、ウィスカー等が挙げられる。
【0046】
改質剤としては、例えば、帯電防止剤、表面グロス調整剤、熱安定剤、耐侯安定剤、耐衝撃剤、オイルやガムなどの柔軟材、摺動剤、難燃剤、耐熱向上剤、発泡剤等が挙げられる。
【0047】
繊維としては、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、樹脂繊維、セルロース繊維等が挙げられる。
【0048】
第一の液状材料における第一の熱硬化性樹脂の配合量は、第一の液状材料の全量基準で、例えば50質量%以上であってよく、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。また、第一の液状材料における第一の熱硬化性樹脂の配合量は、第一の液状材料の全量基準で、例えば98質量%以下であってよく、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%である。
【0049】
第一の液状材料において、第一の架橋剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.77質量部以上であってよく、好ましくは0.80質量部以上、より好ましくは0.85質量部以上である。また、第一の架橋剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば1.75質量部以下であってよく、好ましくは1.50質量部以下、より好ましくは1.25質量部以下である。
【0050】
また、第一の液状材料は、第一の熱硬化性樹脂が有する架橋性基の総数A
1に対する第一の架橋剤が有する反応性基の総数A
2の比(A
2/A
1)が、0.05以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
【0051】
第一の液状材料において、第一の触媒の配合量は、第一の熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、触媒中の活性金属換算で、0.05質量ppm以上であってよく、好ましくは0.25質量ppm以上、より好ましくは0.5質量ppm以上である。また、第一の触媒の配合量は、第一の熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、触媒中の活性金属換算で、1000質量ppm以下であってよく、好ましくは750質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下である。
【0052】
第一の液状材料において、第一の反応制御剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることが更に好ましい。第一の反応制御剤の配合量を多くすることで、フィルム状又は塊状の架橋体の発生が抑制され、より均一な動的架橋物及びより外観に優れる押出成形品が得られる。また、第一の反応制御剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.2質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以下であることがより好ましく、0.13質量部以下であることが更に好ましい。これにより、架橋反応が十分に進行し、適した粘度の動的架橋物が得られやすくなる。
【0053】
第一の液状材料は、エムアンドケー株式会社製加硫度試験機MDRH2030を用いた加硫試験によりトルク−時間曲線を求めることで、その架橋反応の挙動を確認することができる。具体的には、エムアンドケー株式会社製加硫度試験機MDRH2030に試料4gを10秒以内に一度に乗せ、乗せ終わってから5秒以内に振幅角1°、ねじり振動数毎分100回、で20分間、一定温度(動的架橋工程における架橋温度)で加硫試験を行い、時間あたりのトルクの変化を測定することで、トルク−時間曲線が求められる。
図1は、トルク−時間曲線の具体例を示す図である。
【0054】
第一の液状材料は、上記トルク−時間曲線において、下記式(i)で求められる傾きθ
tcが0.05〜0.70dN・m/minであることが好ましく、0.08〜0.65dN・m/minであることがより好ましい。
θ
tc=0.4×(MH−ML)/(T
50−T
10) …(i)
【0055】
式(i)中、MH(dN・m)は、トルク−時間曲線におけるトルクの最大値を示し、ML(dN・m)は、トルク−時間曲線におけるトルクの最小値を示す。また、T
50(min)は、トルク−時間曲線において、トルクが最小値MLから(MH−ML)×0.5の値に上昇するまでの時間(すなわち、
図1中のtc
50−ML)を示す。また、T
10(min)は、トルク−時間曲線において、トルクが最小値MLから(MH−ML)×0.1の値に上昇するまでの時間(すなわち、
図1中のtc
10−ML)を示す。
【0056】
このような第一の液状材料では、動的架橋時にフィルム状又は塊状の架橋体が形成されることが避けられ、成形原料の押出成形性が向上し、押出成形品が外観に一層優れたものとなる。
【0057】
第一の液状材料は、上述の傾きθ
tcが好適な範囲内となるようにその材料組成を調整してよい。具体的には、例えば、第一の反応制御剤の配合量を多くすることで傾きθ
tcは小さくなる傾向があり、第一の架橋剤の配合量を少なくすることで傾きθ
tcは小さくなる傾向があり、第一の熱硬化性樹脂の架橋性基が末端に導入されることにより傾きθ
tcは大きくなる傾向があり、第一の触媒の配合量を多くすることで傾きθ
tcは大きくなる傾向がある。これらの傾向を踏まえて、第一の液状材料の材料組成を適宜調整してよい。
【0058】
本実施形態において、第一の液状材料の動的架橋は、例えば、連続式又はバッチ式の混練機を用いて、スクリューやロータを回転させながら架橋反応させることによって行うことができる。
【0059】
動的架橋の架橋温度は、第一の液状材料の組成に応じて適宜調整してよく、例えば40〜160℃であってよく、60〜140℃であることが好ましい。また、動的架橋の架橋温度は、例えば、上述の傾きθ
tcが上述の数値範囲内となる温度としてよい。動的架橋の架橋温度は設定温度を一定にして行ってもよく、θ
tcが上述の数値範囲内となるように適宜変化させてもよい。バッチ式の混練機では、例えば、熱媒、ヒーター等を用いた加熱手段、冷水が流通する冷却水路を用いた冷却手段などをヒーターに取り付けることで、好ましい架橋温度に制御することができる。押出機では、例えば、シリンダーにヒーターを取り付けたり、冷却水路を設けたりすることで好ましい架橋温度に制御することができる。
【0060】
動的架橋時の混練条件は特に限定されないが、例えば、せん断速度を50(s
−1)以上とすることが好ましく、100(s
−1)以上とすることが好ましい。せん断速度は、例えば7000(s
−1)以下であってよく、好ましくは4000(s
−1)以下である。
【0061】
動的架橋物は、温度23℃、せん断速度1.08×10
2S
−1における粘度が210Pa・s以上となるように架橋されていることが好ましい。当該粘度は、350Pa・s以上であることがより好ましく、500Pa・s以上であることが更に好ましい。上記粘度の上限は特に限定されず、例えば、1500Pa・s以下であってよく、好ましくは1250Pa・s以下であり、より好ましくは1000Pa・s以下である。
【0062】
動的架橋工程で得られた動的架橋物は、そのまま混合工程に供してよく、冷却、素練り等の前処理工程を経て混合工程に供してもよい。
【0063】
<混合工程>
混合工程は、第二の架橋剤及び第二の反応制御剤を含有する第二の液状材料を、動的架橋物と混合して、成形原料を得る工程である。
【0064】
第二の架橋剤は、動的架橋物中の第一の熱硬化性樹脂(又はその架橋物)を架橋可能なものであればよい。第二の架橋剤は、動的架橋物中に残存する架橋性基の種類に応じて適宜選択できる。
【0065】
第二の架橋剤は、例えば、第一の熱硬化性樹脂が有する架橋性基と反応して、第一の熱硬化性樹脂と第二の架橋剤とを結合させることが可能な反応性基を有していてよく、当該反応性基を1分子中に2つ以上有していることが好ましい。
【0066】
第一の熱硬化性樹脂が架橋性基としてビニル基を有するとき、第二の架橋剤は、反応性基としてヒドロシリル基(Si−H)を有することが好ましい。また、第二の架橋剤は、1分子中に少なくとも2つのヒドロシリル基を有するポリシロキサンであることがより好ましく、このようなポリシロキサンとしては、例えば、末端又は側鎖に2以上のヒドロシリル基が導入された変性ジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0067】
第二の架橋剤としては、例えば、上述の平均組成式(2)で表され、且つ、1分子中に少なくとも2つ(好ましくは2〜50)のヒドロシリル基を有するポリシロキサンが好適に用いられる。
【0068】
第二の架橋剤として使用できる市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製「KF−99」、「KF−9901」、「C25B」等が挙げられる。
【0069】
第二の架橋剤は、第一の架橋剤と同種であってよく異なっていてもよいが、同種であることが好ましい。
【0070】
第二の液状材料は、第一の熱硬化性樹脂と第二の架橋剤との架橋反応を促進する第二の触媒を更に含有していてよい。第二の触媒は、架橋反応の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、第一の熱硬化性樹脂がビニル基を有し、第二の架橋剤がヒドロシリル基を有する場合、第二の触媒はヒドロシリル化反応触媒であってよい。
【0071】
第二の触媒は、例えば白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム等の白金族の活性金属を有する触媒であってよく、2種以上の活性金属を有する触媒であってもよい。
【0072】
第二の触媒がヒドロシリル化反応触媒であるとき、第二の触媒としては白金触媒を特に好適に用いることができる。
【0073】
第二の触媒は、第一の触媒と同種であっても異なっていてもよいが、同種であることが好ましい。
【0074】
第二の反応制御剤は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の架橋剤による架橋反応の反応速度を低下させることができるものであればよい。例えば、第二の反応制御剤は、第一又は第二の触媒の触媒活性を抑制することで架橋反応の反応速度を低下させるものであってよい。第二の反応制御剤は、架橋反応の種類、第一又は第二の触媒の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0075】
第一又は第二の触媒が白金族金属系触媒であるとき、第二の反応制御剤は白金族金属系触媒の触媒活性を制御できるものであればよく、例えば、有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム系化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。このような第二の反応制御剤の具体例としては、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3−メチル−3−1−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0076】
第二の反応制御剤は、第一の反応制御剤と同種であっても異なっていてもよいが、同種であることが好ましい。
【0077】
第二の液状材料は、第二の熱硬化性樹脂を更に含有していてよい。第二の熱硬化性樹脂は、第一の熱硬化性樹脂が有する架橋性基と同じ架橋性基を有していることが好ましい。例えば、第一の熱硬化性樹脂がビニル基を有する場合は、第二の熱硬化性樹脂もビニル基を有することが好ましい。
【0078】
第二の熱硬化性樹脂は、第一の熱硬化性樹脂と同種でも異なっていてもよいが、同種であることが好ましい。
【0079】
第二の液状材料は、上記以外の成分を更に含有していてよい。例えば、第二の液状材料は、充填材、改質剤、繊維等を更に含有していてよい。これらの各成分は、第一の液状材料における各成分と同種であっても異なっていてもよい。
【0080】
第二の液状材料において、第二の架橋剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、例えば0.3質量部以上であってよく、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは0.8質量部以上である。また、第二の架橋剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、例えば3.0質量部以下であってよく、好ましくは2.0質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以下である。
【0081】
また、第二の液状材料は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の熱硬化性樹脂が有する架橋性基の総数B
1に対する、第一の架橋剤及び第二の架橋剤が有する反応性基の総数B
2の比(B
2/B
1)が、0.15以上となるように第二の架橋剤を配合したものであることが好ましい。また、比(B
2/B
1)は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.5以上である。また、比(B
2/B
1)は、例えば5.5以下であってよく、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。
【0082】
第二の液状材料が第二の触媒を含有するとき、第二の触媒の配合量は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、例えば0.05質量ppm以上であってよい。また、第二の触媒の配合量は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、例えば300質量ppm以下であってよく、好ましくは200質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以下である。
【0083】
第二の液状材料において、第二の反応制御剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上であることがより好ましい。第二の反応制御剤の配合量を多くすることで、第二の液状材料の添加時に架橋反応が急激に進行することが避けられ、押出成形性に優れる成形原料が得られやすくなる。また、第二の反応制御剤の配合量は、第一の熱硬化性樹脂及び第二の熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、例えば0.10質量部以下であってよく、好ましくは0.07質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下である。
【0084】
混合工程では、第二の液状材料を事前に準備し、動的架橋物と準備した第二の液状材料とを混合してもよく、第二の液状材料の各成分と動的架橋物とを同時に混合してもよく、動的架橋物と第二の反応制御剤を混合してから第二の架橋剤を混合することで実質的に動的架橋物と第二の液状材料とを混合してもよい。これらのうち、第二の液状材料を事前に準備し、動的架橋物と準備した第二の液状材料とを混合する方法がより好ましい。
【0085】
本実施形態において、温度23℃、せん断速度1S
−1における成形原料の粘度は、例えば4000Pa・s以上であり、好ましくは5500Pa・s以上であり、より好ましくは7000Pa・s以上である。これにより、成形原料が押出成形性に一層優れたものとなり、押出成形品の外観がより良好になる傾向がある。上記粘度の上限は特に限定されず、例えば、せん断速度1s
−1の粘度が50000Pa・s以下であってよく、好ましくは45000Pa・s以下であり、より好ましくは40000Pa・s以下である。
【0086】
<押出成形工程>
押出成形工程は、成形原料を押出成形して、押出成形品を得る工程である。成形原料の押出成形は、公知の種々の押出成形機を用いて行うことができる。押出成形機としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等が挙げられる。
【0087】
押出成形工程における成形条件は、成形原料の組成、成形品の形態等に応じて適宜調整してよい。例えば、成形温度は、−20〜80℃であってよく、好ましくは0〜40℃である。
【0088】
本実施形態に係る製造方法で製造される押出成形品の形状及び用途は特に限定されず、例えば、チューブ、ホース、パイプ、電線被覆部材等の管状成形品;ガスケット、窓枠用気密材、ウェザーストリップ等のパッキン類;現像ロール、定着ロール等のロール類;滑り止めシート等の防滑用材;コーナーガード等の保護部材;丸棒、角棒等の棒材;自動車窓ガラス用、建物のガラス磨き用のワイパー類;などが挙げられる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例で使用した各成分は、以下のとおりである。
<熱硬化性樹脂>
・ViMeSi−1
末端または側鎖にビニル基を持つポリシロキサン(15Pa・s、ビニル基含有量0.86mol%)。
・ViMeSi−2
両末端がトリメチルシロキサンで封鎖され側鎖にビニル基を持ったポリシロキサン(0.6Pa・s、ビニル基含有量0.15mol%)。
・ViMeSi−3
両末端がジメチルビニルシロキサンで封鎖されたポリシロキサン(3Pa・s、ビニル基含有量0.36mol%)。
・ViMeSi−4
両末端がジメチルビニルシロキサンで封鎖されたポリシロキサン(0.35Pa・s、ビニル基含有量1.00mol%)。
・ViMeSi−5
両末端がトリメチルシロキサンで封鎖され側鎖にビニル基を持ったポリシロキサン(9500Pa・s、ビニル基含有量0.15mol%)。
【0092】
<架橋剤>
・KF−99
両末端がトリメチルシロキサンで封鎖され側鎖にヒドロシリル基を持つメチルハイドロジェンポリシロキサン(0.02Pa・s、商品名:KF−99(信越化学工業社製))。
<反応制御>
・制御剤
1−エチニル−1−シクロヘキサノール。
【0093】
<触媒>
・Pt触媒
白金量1質量%の白金触媒。
<充填剤>
・AB
アセチレンブラック。
・充填材
平均粒径1μmの結晶性シリカ。
<シリコーンオイル>
・シリコーンオイル
両末端がトリメチルシロキサンで封鎖されたジメチルポリシロキサン(0.1Pa・s、商品名:KF−96(信越化学工業社製))。
【0094】
(実施例1〜17)
実施例1〜17では、表1又は表2に示す組成の第一の液状材料を動的架橋し、次いで、表1又は表2に示す組成の第二の液状材料を動的架橋物に添加して混練して成形原料を得た。また、得られた成形原料を、直径1mmのキャピラリー状に押出成形して、押出成形品を得た。
【0095】
なお、動的架橋は、株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル4C150ミキサーを用い、第一の液状材料32gをせん断速度520s
−1で10分間撹拌して行った。なお、動的架橋時の架橋温度は、表1又は表2に記載の温度とした。
【0096】
また、動的架橋物と第二の液状材料との混練は、株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル4C150ミキサーを用いて、まず、動的架橋物32gを設定温度20℃、せん断速度80s
−1で5分間撹拌し、次いで、1分間でせん断速度が80s
−1から520s
−1まで連続的に変化させる間に第二の液状材料を添加し、添加後、せん断速度520s
−1で9分間撹拌することで行った。
【0097】
また、押出成形は、株式会社東洋精機製作所製のキャピラリー押出試験機を用いて、成形原料20gを材料温度23℃、押出速度0.28mm/sで直径1mmのキャピラリーに押出す条件で行った。
【0098】
各実施例において、第二の液状材料との混練前の動的架橋物の粘度、及び、成形原料の粘度を測定した。なお、動的架橋物の粘度及び成形原料の粘度はそれぞれ上述の方法で測定した。また、各実施例の第一の液状材料について、上述の加硫試験によるトルク−時間曲線を求め、傾きθ
tcを算出した。結果を表1又は表2に示す。
【0099】
各実施例で調製された動的架橋物、成形原料及びそれらを調製した装置の混練部について、フィルム状又は塊状の架橋体の有無について確認し、架橋体が確認できない場合をA、直径20mm、厚み0.5mmの円形枠内に入る程度の架橋体が確認された場合をB、直径30mm、厚み0.5mmの円形枠内に入る程度の架橋体が確認された場合をC、上記円形枠内に入りきらない架橋体が確認された場合をDとして評価した。結果を表1又は表2に示す。
【0100】
また、各成形原料の押出成形性を以下の方法で評価した。キャピラリー押出試験機で、直径1mmのキャピラリーの形状で1000mm以上連続で押出成形できた場合をA、成形中に希に切れることがあり、成形品の外観が他と比較して凹凸があり、径が太くなるものをB、押出成形できなかった場合をCとして評価した。結果を表1又は表2に示す。
【0101】
(比較例1〜10)
表3に示す組成の第一の液状原料を動的架橋し、次いで、表3に示す組成の第二の液状材料を動的架橋物に添加して混練して成形原料を得た。なお、動的架橋及び混練は、実施例と同様の方法で行った。
【0102】
各比較例において、実施例と同様に、第二の液状材料との混練前の動的架橋物の粘度、及び、成形原料の粘度を測定した。また、各比較例の第一の液状材料について、上述の加硫試験によるトルク−時間曲線を求め、傾きθ
tcを算出した。結果を表3に示す。
【0103】
比較例7〜9では、動的架橋物に第二の液状材料を添加した際に架橋反応が急激に進行して全体がゴム状の架橋塊となり、混練終了後の成形原料は粉状となった。この粉状の成形原料は、キャピラリー押出試験機で押出成形することができなかった。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
比較例2の押出成形性評価では、成形品の外観に光沢があり、径が細くなり、押出成形後に5分放置すると変形・扁平したので、実質的には押出成形できないものと判断した。