特許第6826072号(P6826072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826072
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】特大量子ドットおよびその形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/88 20060101AFI20210121BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20210121BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20210121BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20210121BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20210121BHJP
   C01B 19/04 20060101ALI20210121BHJP
   C01B 19/00 20060101ALI20210121BHJP
   C01G 9/08 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   C09K11/88ZNM
   C09K11/08 B
   B82Y20/00
   B82Y30/00
   B82Y40/00
   C01B19/04 C
   C01B19/00 G
   C01G9/08
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-96779(P2018-96779)
(22)【出願日】2018年5月21日
(65)【公開番号】特開2018-199807(P2018-199807A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2018年8月21日
(31)【優先権主張番号】15/607,253
(32)【優先日】2017年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517456439
【氏名又は名称】優美特創新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】周 必泰
(72)【発明者】
【氏名】周 尚威
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲玉▼旻
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼ 勤政
(72)【発明者】
【氏名】謝 佳純
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−535692(JP,A)
【文献】 特表2015−533630(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0140586(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0128935(KR,A)
【文献】 特表2010−535691(JP,A)
【文献】 特開2006−186317(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106281311(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106753333(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第108285792(CN,A)
【文献】 国際公開第2018/151457(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/165597(WO,A1)
【文献】 Advanced Materials,2009年,21,1690-1694
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
B82Y 20/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C01B 19/00
C01B 19/04
C01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特大量子ドットであって、各前記特大量子ドットが、
CdSeから成るコアと、
ZnSから成り、前記コアの表面を包むシェルと、
前記コアと前記シェルの間に構成され、Cd、Se、Zn、およびSから成る合金と、
を含み、前記Cdおよび前記Seの含有量が、前記コアから前記シェルに向かって徐々に減少し、前記Znおよび前記Sの含有量が、前記コアから前記シェルに向かって徐々に増加し、各前記特大量子ドットの粒子サイズが10nm以上であり、
前記特大量子ドットが、励起時に90%以上の光ルミネッセンス量子効率で光を放射するものである特大量子ドット。
【請求項2】
前記コアの直径が、1〜4nmであり、前記合金と前記コアの総直径が、5〜8nmであり、各前記特大量子ドットの粒子サイズが、10nm〜15nmである請求項1に記載の特大量子ドット。
【請求項3】
前記特大量子ドットが、励起時に90%〜95%の範囲の光ルミネッセンス量子効率で光を放射するものである請求項1または2に記載の特大量子ドット。
【請求項4】
各前記特大量子ドットの前記コアが、固定された波長範囲の光源の光を吸収し、少なくとも1つの異なる波長範囲の光を放射するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の特大量子ドット。
【請求項5】
酢酸亜鉛(Zn(ac)2)、酸化カドミウム(CdO)、界面活性剤、および溶媒を混合してから、第1加熱処理を行うことによって、第1前駆体を提供し、前記第1前駆体が、前記界面活性剤を有するZn−複合体および前記界面活性剤を有するCd−複合体を含むステップと、
S元素、Se元素、およびトリオクチルホスフィン(TOP)を含む第2前駆体を前記第1前駆体に添加して、反応混合物を形成するステップと、
前記反応混合物に対して第2加熱処理を行った後、前記反応混合物を冷却して、前記反応混合物中に特大量子ドットを形成するステップと、
を含み、
前記第1加熱処理の温度が、260℃〜280℃の間であり、前記第2加熱処理の温度が、300℃〜320℃の間である、特大量子ドットの形成方法。
【請求項6】
レイン酸、トリオクチルホスフィン(TOP)、およびその組み合わせを含み、前記溶媒が、
前記界面活性剤が、オ1−オクタデセンを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1前駆体が、Zn−オレイン酸塩およびCd−オレイン酸塩を含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1加熱処理の加熱時間が、3分〜10分である請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2加熱処理の加熱時間が、5分〜30分である請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記Zn(ac)2の含有量が、前記第1前駆体の前記合計量に対し、2〜15mmolであり、前記CdOの含有量が、0.2〜5mmolであり、前記界面活性剤の含有量が、7〜70mmolであり、前記溶媒の含有量が、40〜50mLである請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記S元素の含有量が、前記第2前駆体の前記合計量に対し、2〜12mmolであり、前記Se元素の含有量が、0.1〜5.0mmolであり、前記トリオクチルホスフィン(TOP)の含有量が、5〜10mLである請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
各前記特大量子ドットが、
CdSeから成るコアと、
ZnSから成り、前記コアの表面を包むシェルと、
前記コアと前記シェルの間に構成され、Cd、Se、Zn、およびSから成る合金と、
を含み、前記Cdおよび前記Seの含有量が、前記コアから前記シェルに向かって徐々に減少し、前記Znおよび前記Sの含有量が、前記コアから前記シェルに向かって徐々に増加する請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
各前記特大量子ドットの粒子サイズが、10nm以上である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コアの直径が、1〜4nmであり、前記合金と前記コアの総直径が、5〜8nmであり、各前記特大量子ドットの粒子サイズが、10nm〜15nmである請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記特大量子ドットが、励起時に90% 以上の光ルミネッセンス量子効率で光を放射するものである請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記特大量子ドットが、励起時に90%〜95%の範囲の光ルミネッセンス量子効率で光を放射するものである請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
各前記特大量子ドットの前記コアが、固定された波長範囲の光源の光を吸収し、少なくとも1つの異なる波長範囲の光を放射することができる請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
各前記特大量子ドットの前記コアによって放射された光の放射ピーク波長が、前記第1前駆体を提供するステップ中に前記界面活性剤の含有量が増加するにつれて、減少する請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットおよびその形成方法に関するものであり、特に、特大量子ドットおよびその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ粒子、すなわち、量子ドット(quantum dot, QD)は、ナノサイズ(通常、<100nm)の直径および結晶構造を有する半導体材料であり、数百から数千の原子を含むことができる。量子ドットは非常に小さいため、単位体積毎の表面面積が大きく、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)も有する。したがって、対応するバルク半導体材料の固有特性とは異なるサイズに基づいた独特の物理化学特性を有する。
【0003】
量子ドットの光電特性は、コアサイズを調整することによって制御することができるため、量子ドットは、依然として、表示装置等に応用される積極的な研究対象となっている。量子ドットは、表示装置に使用される時、安定性、発光効率、色純度、寿命、および他の性質を増やす必要がある。
【0004】
現在、量子ドット応用に対する最大のチャレンジは、長期安定性である。強い光、高温、湿度、揮発性物質、および酸化物等の外部要因により、量子ドットの放射強度が不可逆的に衰退する可能性がある。量子ドットサイズ、主に、シェルの厚さが増加すると、安定性も増加するが、最初の量子ドット合成後に別途外部シェルを形成するために追加される複数の反応ステップ、または長い反応時間のいずれかを必要とするため、いずれもコストを上げ、放射量子収率を下げる。また、反応時間を制御し、反応中のコアとシェルの前駆体材料間の比率を変更することによって量子ドット放射ピーク波長(すなわち、色)を調整することも困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特大量子ドットおよびその形成方法を提供する。特大量子ドットは、長期安定性を向上させることができる。この方法は、界面活性剤の量を変更することによって、特大量子ドットの放射ピーク波長を微調整することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特大量子ドットを提供する。各特大量子ドットは、CdSeから成るコアと、ZnSから成るシェルと、コアとシェルの間に構成された合金とを含む。コアは、シェルに包まれる。合金は、Cd、Se、Zn、およびSから成り、CdおよびSeの含有量は、コアからシェルに向かって徐々に減少し、ZnおよびSの含有量は、コアからシェルに向かって徐々に増加する。各特大量子ドットの粒子サイズは、10nm以上である。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、コアの直径は、1〜4nmであり、合金とコアの総直径は、5〜8nmであり、各特大量子ドットの粒子サイズは、10nm〜15nmである。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、特大量子ドットは、励起時に90%以上の光ルミネッセンス量子効率(photoluminescence quantum efficiency)で光を放射することができる。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、特大量子ドットは、励起時に90%〜95%の範囲の光ルミネッセンス量子効率で光を放射することができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、各特大量子ドットのコアは、固定された波長範囲の光源の光を吸収し、少なくとも1つの異なる波長範囲の光を放射することができる。
【0011】
特大量子ドットの形成方法は、以下のステップを含む。まず、酢酸亜鉛(Zn(ac)2)、酸化カドミウム(CdO)、界面活性剤、および溶媒を混合してから、第1加熱処理を行うことによって、第1前駆体を提供する。第1前駆体は、界面活性剤を有するZn−複合体(Zn-complex)および界面活性剤を有するCd−複合体(Cd-complex)を含む。S元素、Se元素、およびトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine, TOP)を含む第2前駆体を第1前駆体に添加して、反応混合物を形成する。反応混合物に対して第2熱処理を行った後、反応混合物を冷却して、反応混合物中に特大量子ドットを形成する。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、界面活性剤は、オレイン酸、トリオクチルホスフィン(TOP)、およびその組み合わせを含む。溶媒は、1−オクタデセン(1-octadecene)、オレイン酸、トリオクチルホスフィン(TOP)、およびその組み合わせを含む。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、第1前駆体は、Zn−オレイン酸塩(Zn-oleate)およびCd−オレイン酸塩(Cd-oleate)を含む。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、第1熱処理の温度は、260℃〜280℃の間であり、第1加熱処理の加熱時間は、3分〜10分である。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、第2熱処理の温度は、300℃〜320℃の間であり、第2加熱処理の加熱時間は、5分〜30分である。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、Zn(ac)2の含有量は、第1前駆体の合計量に対し、2〜15mmolであり、CdOの含有量は、0.2〜5mmolであり、界面活性剤の含有量は、7〜70mmolであり、溶媒の含有量は、40〜50mLである。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、S元素の含有量は、第2前駆体の合計量に対し、2〜12mmolであり、Se元素の含有量は、0.1〜5.0mmolであり、トリオクチルホスフィン(TOP)の含有量は、5〜10mLである。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、各特大量子ドットは、CdSeから成るコアと、ZnSから成るシェルと、コアとシェルの間に構成された合金とを含む。シェルは、コアに包まれる。合金は、Cd、Se、Zn、およびSから成り、CdおよびSeの含有量は、コアからシェルに向かって徐々に減少し、ZnおよびSの含有量は、コアからシェルに向かって徐々に増加する。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、各特大量子ドットの粒子サイズは、10nm以上である。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、コアの直径は、1〜4nmであり、合金とコアの総直径は、5〜8nmであり、各特大量子ドットの粒子サイズは、10nm〜15nmである。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、特大量子ドットは、励起時に90%以上の光ルミネッセンス量子効率で光を放射することができる。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、特大量子ドットは、励起時に90%〜95%の範囲の光ルミネッセンス量子効率で光を放射することができる。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、各特大量子ドットのコアは、固定された波長範囲の光源の光を吸収し、少なくとも1つの異なる波長範囲の光を放射することができる。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、各特大量子ドットのコアによって放射された光の波長は、合成中に界面活性剤の含有量が増加するにつれて、減少する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明は、直径(または、粒子サイズ)が10nm以上の特大量子ドット、およびその形成方法を提供して、特大量子ドットの長期安定性を上げる。また、この方法は、界面活性剤の量を変更することによって特大量子ドットの放射ピーク波長を微調整することができるため、放射量子収率および半値全幅値(full width at half maximum, FWHM)を犠牲にしない。そのため、本発明の特大量子ドットは、強い光、高温等を有する表示装置(例えば、発光ダイオード(light emitting diode, LED)素子またはプロジェクタ用カラーホイール)への応用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0027】
図1】本発明の1つの実施形態に係る特大量子ドットを示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る特大量子ドットの製造フローを示すフローチャート図である。
図3】実例1〜7の放射ピーク波長とオレイン酸の量の間の関係を示した図である。
図4】実例1の量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像および高角度散乱暗視野法(HAADF−STEM)画像である。
図5】実例2の量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明についてさらに包括的に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができるため、ここに記載する実施形態に限定されると解釈するべきではない。明確にするため、図面における層および領域の厚さを拡大する。同じ、または類似する参照番号は、同じ、または類似する構成要素を示すため、以下の各段落において説明を省略する。
【0029】
本明細書において、「ある数値から別の数値」で表示した範囲は、明細書で当該範囲内の全ての数値を列挙することを回避するための概要的表示方法である。したがって、特定数値範囲についての描写は、当該数値範囲内の任意の数値および当該数値範囲内の任意の数値により限定される比較的小さな数値範囲を開示し、明細書において任意の数値および比較的小さな数値範囲が明記されていることと同じである。例えば、「10nm〜15nmの粒子サイズ」の範囲は、明細書において他の数値が列挙されているかどうかに関わらず、いずれも「11nm〜13nmの粒子サイズ」の範囲を開示する。
【0030】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る特大量子ドットを示す概略図である。
【0031】
図1を参照すると、特大量子ドット100は、CdSeから成るコア102と、ZnSから成るシェル106と、コア102とシェル106の間の構成された合金104とを含む。コア102は、シェル106に包まれる。合金104は、Cd、Se、Zn、およびSから成る。詳しく説明すると、合金104のCdおよびSeの含有量は、コア102からシェル106に向かって徐々に減少し、合金104のZnおよびSの含有量は、コア102からシェル106に向かって徐々に増加する。
【0032】
いくつかの実施形態において、コア102の直径102dは、1〜4nmであり、合金104とコア102の総直径104tは、5〜8nmである。いくつかの実施形態において、特大量子ドット100の粒子サイズ100sは、10nm以上である。別の実施形態において、特大量子ドット100の粒子サイズ100sは、10nm〜15nmである。特大量子ドット100のコア102は、吸収および放射に使用される。いくつかの実施形態において、特大量子ドット100のコア102は、固定された波長範囲の光源の光を吸収し、少なくとも1つの異なる波長範囲の光を放射することができる。例えば、コア102は、400nmよりも小さい波長を有する紫外光内で吸収し、コア102の粒子サイズ102dに応じて異なる色(例えば、赤色光、緑色光、または青色光)を有する可視光を放射することができる。特大量子ドット100のシェル106は、コア102を保護するために使用される。厚いシェル106は、優れた保護力を提供するため、長期安定性を高める。コア102とシェル106の間に構成された合金104は、コア102とシェル106の間の格子不整合(lattice mismatch)の影響を最小化する。
【0033】
言及すべきこととして、特大量子ドット100は、励起時に90%以上の光ルミネッセンス量子効率で光を放射することができるため、これは、特大量子ドット100のコア102が高品質で、欠陥が非常に少ないことを意味する。つまり、本発明の特大量子ドット100は、高い放射量子収率を維持しながら長期安定性を増やすことができる。そのため、本発明の特大量子ドット100は、強い光、高温等を有する表示装置(例えば、発光ダイオード(LED)素子またはプロジェクタ用カラーホイール)への応用に適している。別の実施形態において、特大量子ドット100は、励起時に90%〜95%の範囲の光ルミネッセンス量子効率で光を放射することができる。
【0034】
図2は、本発明の実施形態に係る特大量子ドットの製造フローを示すフローチャート図である。
【0035】
図2を参照すると、図1の特大量子ドット100の製造方法200は、以下の通りである。まず、ステップ202を実行する。酢酸亜鉛(Zn(ac)2)、酸化カドミウム(CdO)、界面活性剤、および溶媒を混合してから、第1加熱処理を行って、第1前駆体を形成する。いくつかの実施形態において、Zn(ac)2の含有量は、第1前駆体の合計量に対し、2〜15mmolであり、CdOの含有量は、0.2〜5mmolであり、界面活性剤の含有量は、7〜70mmolであり、溶媒の含有量は、40〜50mLである。いくつかの実施形態において、第1熱処理の温度は、260℃〜280℃の間であり、第1加熱処理の加熱時間は、3分〜10分である。
【0036】
第1熱処理を行った後、第1前駆体は、界面活性剤を有するZn−複合体および界面活性剤を有するCd−複合体を含むことができる。詳しく説明すると、CdおよびZn金属前駆体は、260℃〜280℃で界面活性剤(例えば、オレイン酸)のリガンド(ligand)と複合を開始する。言及すべきこととして、金属リガンド複合体(例えば、Zn−オレイン酸塩およびCd−オレイン酸塩)の形成により、ナノ結晶の核形成速度が減速するため、反応中の単位時間毎の種晶(seed crystal)の濃度を下げる。形成される種晶が少ないため、成長段階で種晶と結合可能な金属リガンド複合体がより多く存在する。そのため、量子ドットは、より大きく成長することができる。つまり、より遅く、より制御可能な成長を提供するため、欠陥の少ない量子ドットが形成される。これは、傾斜合金中間層の形成を容易にするため、量子ドットの直径を10nm以上の大きさまで成長させる。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、オレイン酸、トリオクチルホスフィン(TOP)、またはその組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、溶媒は、1−オクタデセン、オレイン酸、トリオクチルホスフィン(TOP)、およびその組み合わせを含むことができる。
【0037】
次に、ステップ204を実行する。S元素、Se元素、およびトリオクチルホスフィン(TOP)を含む第2前駆体を第1前駆体に添加して、反応混合物を形成する。いくつかの実施形態において、S元素の含有量は、第2前駆体の合計量に対し、2〜12mmolであり、Se元素の含有量は、0.1〜5.0mmolであり、トリオクチルホスフィン(TOP)の含有量は、5〜10mLである。
【0038】
その後、ステップ206を実行する。反応混合物に対して第2熱処理を行った後、反応混合物を冷却して、反応混合物中に特大量子ドットを形成する。いくつかの実施形態において、第2熱処理の温度は、300℃〜320℃の間であり、第2加熱処理の加熱時間は、5分〜30分である。
【0039】
本発明の信頼性を向上させるため、以下、いくつかの実例を列記して、本発明の特大量子ドット100についてさらに説明する。下記の実験について説明するが、使用した材料、その量と比率、処理詳細、および処理手順等は、本発明の範囲を逸脱しない限り、適切に変更可能である。したがって、下記の実施形態に基づく本発明に対して、限定的な解釈をしてはならない。
【0040】
実例1
【0041】
1atmおよび260℃において、12mmolのZn(ac)2、0.864mmolのCdO、47.5mmolのオレイン酸(OA)、および45mLの1−オクタデセン(ODE)を100mLのフラスコに追加して、透明な前駆体溶液を形成した。透明な前駆体溶液は、Zn−オレイン酸塩およびCd−オレイン酸塩を含む。界面活性剤−金属複合体(すなわち、Zn−オレイン酸塩およびCd−オレイン酸塩)を形成した後、フラスコをArおよびN2で充填し、310℃まで加熱した。所望の温度に達した時、10.68mmolの硫黄および0.3mmolのセレンを含有する6mLのトリオクチルホスフィン(TOP)をフラスコに迅速に注入した。反応温度を10分間300℃に維持した後、反応物を室温まで冷却した。直径(または、粒子サイズ)が10nm以上の特大量子ドットを形成した。紫外光(例えば、405nm)の照射により、特大量子ドットの光ルミネッセンス(PL)放射ピークは、530nm(すなわち、緑色光)である。特大量子ドットの放射量子収率は、93%であった。その結果を表1および図3に示す。
【0042】
実例2〜7
【0043】
実例2〜7の特大量子ドットを形成する製造ステップは、上述した実例1の製造ステップと類似する。実例1〜7の間で異なる点は、前駆体溶液に追加する界面活性剤(すなわち、OA)の含有量である(表1に示す)。実例2〜7のPL放射ピークおよび放射量子収率も表1および図3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
図4は、実例1の量子ドットの透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope, TEM)画像および高角度散乱暗視野法(high angle annular dark field scanning transmission electron microscopy, HAADF-STEM)画像である。図5は、実例2の量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【0046】
図5に示すように、実例2から合成された量子ドットを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。量子ドットのサイズは、約15nmであると判断される。
【0047】
また、界面活性剤(例えば、オレイン酸)の含有量を変更することによって、量子ドットのサイズおよびピーク放射波長を調整することができる。図4に示すように、量子ドットの平均径は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像(左上角の図を参照)から11nmであると判断された。高角度散乱暗視野法(HAADF−STEM)画像から明確にわかるように、量子ドットは、CdSeから成るコアと、ZnSから成るシェルと、コアとシェルの間の構成された合金とを含む。高角度散乱暗視野法(HAADF−STEM)画像から、量子ドット中の各元素の分布に基づいて、コアおよび合金のサイズを判断することも可能であった。図4に示すように、Seは、主に、コアに位置するため、Seの分布を測定することにより、コアの平均径は、3.7nmよりも小さいと判断された。量子ドットの合金層は、Cd、Se、Zn、およびSを含有した。Cdの分布を測定することにより、コアおよび合金層の平均径は、7.0nmであると判断された。ZnおよびSは、シェルおよび合金層の至る所に分布し、量子ドットのサイズは、ZnおよびSの分布から11nmであると判断された。
【0048】
図3は、実例1〜7の放射ピーク波長とオレイン酸の量の間の関係を示す図である。
【0049】
表1および図3に示すように、特大量子ドットによって放射された光の波長は、界面活性剤(例えば、オレイン酸)の含有量が増加するにつれて、減少する。詳しく説明すると、Znは、量子ドットのシェル層の主成分である。また、シェル層中のZnは、高温(>300℃)において、反応中に量子ドット光ルミネッセンス中心(主成分は、CdSe)の辺縁に向かって移動することができる。オレイン酸濃度が増加すると、Zn−オレイン酸塩複合体が増加し、その後、シェル内のZnの含有量が増加するため、最終的には、成長段階中に使用可能なZnの量が増加する。より多くのZnがシェル層に取り込まれるため、より多くの使用可能なZnが量子ドット光ルミネッセンス中心の辺縁に向かって移動し、亜鉛リッチ(Zn-rich)な合金構造を形成する。そのため、量子ドットのバンドギャップ(band gap)が増加する。バンドギャップが大きければ大きいほど、量子ドットの放射ピーク波長が短くなる。つまり、放射ピーク波長は、オレイン酸の含有量を変更することによって、所望の波長に容易に調整することができるため、対応する特大量子ドットの放射量子収率および半値全幅値(FWHM)を犠牲にしない。
【0050】
以上のように、本発明は、直径(または、粒子サイズ)が10nm以上の特大量子ドット、およびその形成方法を提供して、特大量子ドットの長期安定性を上げる。また、この方法は、界面活性剤の量を変更することによって特大量子ドットの放射ピーク波長を微調整することができるため、放射量子収率および半値全幅値(FWHM)を犠牲にしない。そのため、本発明の特大量子ドットは、強い光、高温等を有する表示装置(例えば、発光ダイオード(LED)素子またはプロジェクタ用カラーホイール)への応用に適している。
【0051】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示において、特大量子ドットおよびその形成方法を提供する。特大量子ドットは、10nm以上の粒子サイズを有する。そのため、本発明の特大量子ドットは、強い光、高温等を有する表示装置(例えば、発光ダイオード(LED)素子またはプロジェクタ用カラーホイール)への応用に適している。
【符号の説明】
【0053】
100 特大量子ドット
100s 特大量子ドットの粒子サイズ
102 コア
102d コアの粒子サイズ
104 合金
104t 合金とコアの総直径
106 シェル
202、204、206 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5