特許第6826102号(P6826102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6826102アミン含有ポリアケニルカップリング剤及びそれから調製されたポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826102
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】アミン含有ポリアケニルカップリング剤及びそれから調製されたポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/30 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   C08F8/30
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-507635(P2018-507635)
(86)(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公表番号】特表2018-525495(P2018-525495A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】US2016046276
(87)【国際公開番号】WO2017030855
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年7月29日
(31)【優先権主張番号】14/826,724
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510145211
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・ハイゼン,アドリアーン・アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス,カール
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/058137(WO,A1)
【文献】 特開2010−237560(JP,A)
【文献】 特開平05−140049(JP,A)
【文献】 特開昭58−213245(JP,A)
【文献】 HAYASHI Akio et al.,Second-Order Nonlinear Optical Properties of Poled Polymers of Vinyl Chromophore Monomers: Styrene, Methacrylate, and Vinyl Benzoate Derivatives Having One-Aromatic-Ring Push-Pull Chromophores,Chemistry of Materials,1992年,Vol.4, No.3,p.555-562
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00− 8/50
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー又はモノマーの混合物を重合してポリマーセグメントを形成し、
ポリマーセグメントをカップリング剤と反応させることを含む、ポリマーをカップリングさせる方法であって、
カップリング剤は、アミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を有する、方法。
【請求項2】
カップリング剤が、下記構造Iを有し、
【化1】
[式中、
Zはアミンであり、
R1〜R10は、各々互いに独立して、H、有機官能基又は末端アルケンであり、ここで少なくとも1つの末端アルケンが各ベンゼン環上にあり、
mは1〜8の整数である。]
カップリング剤との反応後にいずれかのリビングポリマーセグメントが残っている場合に、方法が、重合を停止させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カップリング剤の残基を含むポリマーであって、カップリング剤は、カップリング前に、アミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を有し、2つのポリマーブロック、即ち、
(a) 1,000〜160,000の数平均分子量を有するブロックA及び
(b) 1,000〜160,000の数平均分子量を有するブロックA’
をさらに含み、カップリング剤の残基が、ブロックA又はブロックA’の少なくとも1つをカップリングさせるか、又はブロックAをブロックA’にカップリングさせる、
ポリマー。
【請求項4】
以下に示す構造II
【化2】
[式中、
Zはアミンであり、
R11及びR12は、C1〜C7アルキルであり、
各ベンゼン環の残りの位置は、1つ以上の有機官能基で任意に置換されており
mは1〜8の整数である。]
を有するカップリング剤の残基を含む、請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
一般構成A−X−A’、A−X−A’−X−A、A’−X−A−X−A’、(A−A’)nX、(A−A’−A)nX、(A’−A−A’)nX又はそれらの混合物を有し、ここで、Xが式IIのカップリング剤の残基であり、nが2〜30の整数であり、ブロックA及びブロックA’が同じ又は異なる、請求項に記載のポリマー。
【化3】
【請求項6】
各ブロックA及び各ブロックA’が、互いに独立して、共役ジエン、モノアルケニルアレーン及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから重合される、請求項に記載のポリマー。
【請求項7】
Zがアルキルアミン又はアリールアミンから選択される非環式アミンである、請求項4に記載のポリマー。
【請求項8】
アミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を有するカップリング剤を開始剤と反応させて、反応性重合部位を有するリビングカップリング剤を形成させ、
反応性重合部位をモノマー又はモノマーの混合物と反応させ、
モノマー又はモノマーの混合物を重合させて、カップリング剤から伸びるポリマーセグメントを形成することを含む、ポリマーを形成する方法。
【請求項9】
アニオン性開始剤の存在下でモノマー又はモノマー混合物の重合が行われる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にポリマーカップリング剤に関する。特に、本開示は、アミン含有ポイルアルケニルカップリング剤、並びにそれから調製されたポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
カップリング剤は、完結したポリマーの形成のためにアニオン重合によって調製されたポリマーに一般に使用される。例えば、ポリマー、コポリマー及びブロックポリマーの形成では、第1のポリマーセグメント又は重合部分を調製することができ、逐次重合によりポリマーの形成を完結するのではなく、調製したセグメントを一緒に「カップリングさせる」カップリング剤を提供することができる。例えば、ハロゲン化ケイ素、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、ポリケトン、ポリ無水物、ジカルボン酸エステルをはじめとする多官能性カップリング剤が使用されてきた。さらに、ジビニルベンゼン(「DVB」)は、既知のポリアルケニルカップリング剤であり、共役ジエンポリマー、即ち、スチレンブロックコポリマー及び共役ジエンのポリマーの調製に使用されてきた。
【0003】
カップリング剤は、少なくとも2つのリビングポリマーアーム(同一又は異なる)をカップリングさせてカップリングされたポリマーを形成するのに十分に反応性でなければならない。カップリングされたポリマーは直鎖状ポリマーを形成することができる。例えば、カップリング剤が多数のリビングポリマーアームが結合したコアを形成し、そのためマルチアームポリマーを形成する場合に、追加のアームが生じることができる。さらに、このような反応の間、ポリマーアームのいくつかがカップリングせず、ポリマーの一部がカップリングされ、残りの部分がカップリングされない可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーの調製に使用することができるアミン含有ポリアルケニルカップリング剤が本明細書に開示される。
【0005】
第1の態様では、本開示は、
モノマー又はモノマーの混合物を重合して2つ以上のポリマーセグメントを形成し、
ポリマーセグメントをカップリング剤と反応させることを含み、カップリング剤はアミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を有する、
ポリマーをカップリングさせる方法に関する。
【0006】
第2の態様では、本開示は、第1の態様によるポリマーのカップリング方法であり、カップリング剤が構造I
【化1】
[式中、
Zはアミンであり、
〜R10は、各々互いに独立して、H、有機官能基又は末端アルケンであり、ここで少なくとも1つの末端アルケンは各ベンゼン環上にあり、
mは1〜8の整数である。]を有し、
この方法は、カップリング剤と反応した後にいずれかのリビングポリマーセグメントが残っている場合に重合を停止させることをさらに含む。
【0007】
第3の態様では、本開示は、カップリング剤の残基を含み、カップリング前に、カップリング剤は、アミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を有するポリマーに関する。
【0008】
第4の態様では、本開示は、
アミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を有するカップリング剤を開始剤と反応させて、反応性重合部位を有するリビングカップリング剤を形成し、
反応性重合部位をモノマー又はモノマーの混合物と反応させ、
モノマー又はモノマーの混合物を重合させて、カップリング剤から伸びるポリマーセグメントを形成する
ことを含む、ポリマーを形成する方法に関する。
【0009】
第5の態様では、本開示は、カップリング剤が下記構造I
【化2】
[式中、
Zはアミンであり、
〜R10は、各々互いに独立して、H、有機官能基又は末端アルケンであり、ここで少なくとも1つの末端アルケンは各ベンゼン環上にあり、
mは1〜8の整数である。]
を有し、方法が、重合後にいずれかのリビングポリマーセグメントが残っている場合に重合を停止させることをさらに含む、
第4の態様に従う方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、以下の詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。また、本明細書に記載された実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかし、当業者には、本明細書に記載された実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施できることが理解されるであろう。また、説明は、本明細書に記載された実施形態の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0011】
本明細書における「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーを含む。本明細書で使用される「ポリマー単位」という用語は、1つのモノマーによって形成され、1つのモノマーに対応するポリマー鎖の単位を指す。したがって、本明細書で使用される「モノマー」又は「モノマー単位」は、個々のモノマー又はポリマー鎖中の重合されたモノマーを指すことができる。ポリマーについて本明細書で使用される「セグメント」という用語は、ポリマーの部分的又は完全に重合された部分を指す。
【0012】
本明細書で使用される「分子量」という用語は、ポリマー又はコポリマーのブロックのg/モル単位のポリスチレン当量、又は見かけの分子量を指す。本明細書及び特許請求の範囲で言及される分子量は、ASTM D5296に従って行われるような、ポリスチレン較正標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。GPCは、分子サイズに従ってポリマーが分離される周知の方法であり、最大の分子が最初に溶離する。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準を用いて較正される。このように較正されたGPCを用いて測定されたポリマーの分子量は、見かけの分子量とも呼ばれるスチレン等価分子量である。ポリマーのスチレン含量及びジエンセグメントのビニル含量が既知である場合、スチレン等価分子量は真の分子量に変換され得る。使用される検出器は、好ましくは、紫外線及び屈折率検出器の組み合わせである。本明細書で表現される分子量は、GPCトレースのピークで測定され、一般に「ピーク分子量」と呼ばれる。
【0013】
本明細書中に開示される全ての範囲に関して、そのような範囲は、特定の組み合わせが具体的に列挙されていなくても、言及された上限及び下限の任意の組み合わせを含むことが意図される。
【0014】
ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーの調製に使用することができるアミン含有ポリアルケニルカップリング剤が本明細書中に開示される。例えば、ポリマーセグメントは、最初に、例えば、アニオン重合によって形成することができる。その後、アミン含有ポリアルケニルカップリング剤を使用して、ポリマーセグメントをカップリングさせて、完結したポリマー、セグメント又はコポリマーブロックを形成することができる。したがって、アミン官能基を有するカップリング剤を用いたアニオン重合を介してポリマーを形成することができる。
【0015】
アミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、例えば、ブタジエン又はイソプレンのような共役ジエン、スチレンのようなモノアルケニルアレーン、並びに他のモノマーから形成されたものをはじめとする、種々のポリマーセグメントをカップリングさせるために使用することができる。本明細書で使用されるカップリング剤という用語は、結合剤を含み、それを包含し、カップリングされたポリマー又は連結したポリマーの一部に含まれるか、又は全体に分散しているかに関わらず、ポリマーセグメントを直接的又は間接的に一緒に連結又はカップリングし、モノマー又はカップリングされるポリマーセグメントとは異なる任意の薬剤又は化合物を含む。
【0016】
本明細書に開示されるアミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、驚くほど有益な特性を有する。例えば、形成されたブロックコポリマー中のアミン官能基そのものの存在が有用であり得る。また、このカップリング剤は、驚くほど高いカップリング効率を有する。カップリング効率は、少なくとも90%、あるいは少なくとも94%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも97%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%であることができる。
【0017】
また、本明細書に開示されるカップリング剤は、アミン官能化ポリマーをカップリングさせるために有益に使用することができる。カップリング剤の残基がアミンを含有するので、それはカップリングしたアミン官能基化セグメントのアミン化学物質と協働する。
【0018】
カップリング剤
本明細書に開示されるアミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、架橋アミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を含む。アミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、2つのアルケニルベンゼン基、あるいは3つ以上のアルケニルベンゼン基を有することができる。アミン化合物は、環状又は非環式であることができ、1つ以上の窒素原子を含むことができる。アミン化合物は、アルケニルベンゼン基と共有結合する前に1つ以上の第1級又は第2級アミン部分を含むことができる。アミン化合物は、アルキルアミン、アリールアミン、環状アミン又は他の有機アミンであることができる。各アルケニルベンゼン基は、同じか又は異なる窒素に結合することができる。例えば、アミン化合物が1個の窒素官能基及び2個のアルケニルベンゼン基を含む場合、両方のアルケニルベンゼン基は各々同じ窒素に結合していてもよい。2つ以上の窒素官能基及び2つのアルケニルベンゼン基が存在する場合、2つのアルケニルベンゼン基は同じか又は異なる窒素に結合することができる。
【0019】
アルケニルベンゼン基は、各々、少なくとも1つの末端アルケニル基を有する。末端アルケニル基はビニル基であることができる。特に、アルケニルベンゼン基は、各々が1つのビニル基を有し、各々がリビングポリマーセグメントと結合し、したがって2つのリビングポリマーセグメントを一緒にカップリングして、カップリングされたポリマー又はポリマーブロックを形成する。ビニル官能基に加えて、アルケニルベンゼン基は、その他の点では置換されていないか又はアルキル、アリール、又はN、O又はSを含む他の基のような他の有機官能基で置換されていてもよい。
【0020】
カップリング剤は、以下に示す構造Iを有することができる。
【0021】
【化3】
式中、
Zはアミン、例えば、非環式アミン又は環状アミンであり、
〜R10は、各々互いに独立して、H、有機官能基又は末端アルケンであり、ここで少なくとも1つの末端アルケンは各ベンゼン環上にあり、
mは1〜8の整数である。
【0022】
官能基R〜R10に関して、各々は、互いに独立して、H、有機官能基又は末端アルケンであることができる。R〜Rの少なくとも1つ及びR〜R10の少なくとも1つは末端アルケンであり、したがってベンゼン環の各々に少なくとも1つのアルケニル基を形成する。さらに、場合によっては、各ベンゼン環には1つの末端アルケンのみが存在する。R〜Rの少なくとも1つ及びR〜R10末端アルケンの少なくとも1つは、同じ末端アルケンか、又は異なる末端アルケンであることができる。末端アルケンは、例えばC〜C末端アルケンであることができる。しかし、特定の例では、末端アルケンはビニル基(エテニル)である。したがって、各ベンゼン環は、1つのビニル基又は2つ以上のビニル基を有することができる。有機官能基は、直鎖状アルカン又は分枝状アルカン、アリール基、又はエーテルであることができる。
【0023】
上記のとおりに、上記のZは非環式アミンであってもよい。非環式アミンは、アルキルアミン及びアリールアミンを含むことができる。非環式アミンは、アンモニアであってもよい。アルキルアミンに関しては、アルキル成分は分枝状又は直鎖状であることができる。アルキルアミンは、C〜C18直鎖アルキルアミン、あるいはC〜C直鎖アルキルアミン、あるいはn−ブチルアミンであることができ、アルキル部分が分枝状であろうと直鎖状であろうと、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルである。特定の例において、アルキルアミンはn−ブチルアミンであることができる。したがって、非環式アルキルアミン有するカップリング剤は、以下に示すN,N−ビス(4−ビニルベンジル)ブチルアミン(「DVBBA」)を含む。
【0024】
【化4】
【0025】
示された化合物は4−ビニルベンジル誘導体を有するが、ビニル基はベンゼン環上の2−又は3−位に存在することもできる。さらに、例示的な実施形態はビニル末端アルケンを含むが、アルケンが炭化水素鎖の末端にある任意の適切な長さのアルケンが想定される。
【0026】
上記のように、非環式アミンはアリールアミンであってもよい。特に、アリールアミンのベンゼン環は、置換されていても置換されていなくてもよい。それは、例えば、アルキル、アリール、末端アルケン等の他の官能基有機官能基又はヘテロ原子N、O若しくはSで置換されていてもよい。これらは、ベンゼン環のオルト位、メタ位、又はパラ位又はそれらの任意の組み合わせで提供され得る。アミノ官能基及びベンゼン環は、C〜C18の直鎖状アルキル鎖又は分枝状アルキル鎖、あるいは少なくとも2個の炭素、あるいは少なくとも4個の炭素、あるいは少なくとも6個の炭素、あるいは少なくとも8個の炭素、あるいは少なくとも10個の炭素、あるいは12個の炭素(分枝状又は直鎖状であってもよい)を有する鎖で分離することができる。
【0027】
一例では、アリールアミンはベンジルアミンであり、それによって以下に示すカップリング剤N,N−ビス(4−ビニルベンジル)ベンジルアミン(「DVBBnA」)を形成する。
【0028】
【化5】
【0029】
ベンジルアミンは、ベンゼン環上のオルト位、メタ位、又はパラ位又はそれらの任意の組み合わせにおいてさらなる有機官能基を有することができる。上に示した例は4−ビニルベンジル誘導体であるが、ビニル基はベンゼン環上の2−又は3−位にあることもできる。さらに、アルケンが炭化水素鎖の末端にある任意の適切な長さのアルケンが想定される。
【0030】
上記のように、本明細書に開示されるアミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、架橋アミン化合物の窒素と各々共有結合した少なくとも2つのアルケニルベンゼン基を含むことができる。アミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、窒素と共有結合した3つのアルケニルベンゼン基を有することができる。これはまた、置換されたアリールアミンである構造IのZとして定義され得る。3つのアルケニルベンゼン基を窒素に結合させて、以下に示すN,N,N−トリス(4−ビニルベンジル)アミンを形成することができる。
【0031】
【化6】
【0032】
示された化合物において、アリールアミンは各々4−ビニルベンジル誘導体であるが、ビニル基は1つ以上のベンゼン環上の2−又は3−位に存在することもできる。さらに、アルケンが炭化水素鎖の末端にある任意の適切な長さのアルケンが想定される。
【0033】
上記のように、式I中のZは、環状アミンであってもよい。環状アミンは、2つ以上の窒素官能基を含むことができる。例えば、環状アミンは、環内に2つのアミンを含むことができ、各アミンの窒素は、アルキル結合を介してポリマーアームに結合する。環状アミンは、環に少なくとも2つの第2級アミンを有する任意の炭化水素環であることができる。環状アミンは、完全に飽和していてもよいし、あるいは部分的に飽和していてもよいし、あるいは不飽和であってもよく、O又はS等の他のヘテロ原子を含んでいてもよい。環状アミンは、例えば、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジナン、プリン、又はそれらの置換された等価物を含むことができる。例示的な環状アミンは、本開示から逸脱することなく、他の環状マルチアミンが使用され得ることを当業者が理解するように、決して限定的であることを意味するものではない。
【0034】
環状アミンは、ピペラジンであってもよく、したがって以下のように示される1,4−ビス(4−ビニルベンジル)ピペラジン(「DVBP」)を形成し得る。
【0035】
【化7】
【0036】
示された化合物は、4−ビニルベンジル誘導体を有するが、ビニル基はベンゼン環上の2−位又は3−位にあることもできる。さらに、アルケンが炭化水素鎖の末端にある任意の適切な長さのアルケンが想定される。
【0037】
開示されたカップリング剤は、特定の例のDVBBA、DVBBnA、DVBP、及びN,N,N−トリス(4−ビニルベンジル)アミンで記載されているが、本開示はこれらに限定されず、任意のアミン含有ポリアルケニルベンゼンを含むことに留意されたい。
【0038】
式Iに示されるように、アルケニルベンゼン基は、1〜8個の炭素の鎖であることができるアルキル架橋mを介してアミンに結合される。架橋基は、例えば、エチル、プロピル、ブチル、又はペンチル等のC〜Cアルキルを含むことができる。特定の例では、mは1であり、したがって基をメチレン架橋基にする。
【0039】
カップリング剤の残基
カップリングの結果として形成され、それにより、形成されたポリマー内に残留量のアミン含有ポリアルケニルカップリング剤を残す、カップリングされた(コ)ポリマーも本明細書に提供される。
【0040】
残留カップリング剤Xは、以下に示す構造IIを有するアミノ官能化ベンジルアルカン化合物であることができる。
【0041】
【化8】
式中、
Zは上記の定義を有する非環式アミン又は環状アミンのようなアミンであり、
11及びR12は、C〜Cアルキル鎖であり、
各ベンゼン環の残りの位置は、1つ以上のH又は有機官能基で置換されていてもよく、
mは1〜8の整数である。
【0042】
構造II中のZ並びに環状アミン又は非環式アミンは、構造Iについて上で記載したものと同じである。上記のように、R11及びR12は置換又は非置換アルカンである。これらの基は、末端アルケンがカップリング工程の間にポリマー鎖と反応した結果として生じ、カップリングされたポリマーセグメントへの結合を形成する。
【0043】
式IIのカップリング剤上のR11及びR12は、カップリング剤からポリマーの残りの部分へのアルカン結合を提供する。R11及びR12アルカンは、末端アルケンがカップリング工程の間にポリマー鎖と反応した結果形成され、カップリングされたポリマーセグメントへの結合を形成する。R11及びR12は、各ベンゼン環のメタ位、オルト位、又はパラ位に位置することができる。各ベンゼン環の残りの4つの位置は、1つ以上のH又は有機官能基、例えば、直鎖状又は分枝状アルカン、アリール基又はエーテルであることができる。
【0044】
整数mは、式Iについて記載したものと同じである。
【0045】
残基の構造IIを有する形成されたポリマーは、任意のモノマーのアニオン重合から形成することができる。モノマーの具体例としては、共役ジエン及びモノアルケニルアレーンが挙げられる。例示的な好適な共役ジエンとしては、ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン(ピペリレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン、及び4−エチル−1,3−ヘキサジエン並びにそれらの混合物が挙げられ、特にはブタジエン及び/又はイソプレである。例示的なモノアルケニルアレーン化合物としては、モノビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、モノビニルナフタレン及びo−、m−及びp−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン及びtert−ブチルスチレンのようなそのアルキル化誘導体が挙げられる。
【0046】
モノアルケニルアレーン化合物が本明細書に開示されるポリマーの調製に使用される場合、その量は70重量%以下であることができる。より詳細には、モノアルケニルアレーン化合物がブロック内で重合される場合、最終的にカップリングされたポリマー中のポリ(モノアルケニルアレーン)のブロックは、カップリングされたポリマーの重量に基づいて、好ましくは、50重量%以下、又は35重量%以下を含む。
【0047】
他のモノマーとしては、ビニルベンジルアミンをはじめとするアミン官能化スチレンモノマーが挙げられる。これらには、例えば、p−ビニルベンジルピペリジン、p−ビニルベンジルモルホリン、p−ビニルベンジルジメチルアミン、p−ビニルベンジルピロリジン、p−ビニルベンジル−ビス−(2−メトキシエチル)アミン、p−ビニルベンジルピペラジン、p−ジベンジルビニルベンジルアミン及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
ポリマーセグメント又はブロックは、上記モノマーの混合物、例えば、共役ジエン及びスチレン混合ブロックを含むことができる。これらは、例えば、ランダムコポリマー、テーパード又は制御された分布コポリマーであり得る。
【0049】
後続のカップリングでは、式IIのカップリング剤の残基は、
(a) ブロックA、
(b) ブロックA’、及び
(c) 式IIのカップリング剤の残基
を有するポリマー中に存在し、カップリング剤は、ブロックA又はブロックA’の少なくとも1つをカップリングさせるか、又はブロックAをブロックA’にカップリングさせる。
【0050】
ブロックA及びA’は、同じであっても異なっていてもよく、任意のモノマーから製造されるか、又は任意のモノマーからのセグメントを含むことができる。モノマーA及びA’は、前述の炭化水素モノマーのいずれかから製造することができる。
【0051】
いくつかの実施例では、ブロックA及びA’は、約1,000〜約160,000の数平均分子量を有することができる。別の例では、ブロックA及びA’は、約1,000〜約120,000、あるいは約1,000〜約80,000、あるいは約1,000〜約40,000、又は約1,000〜約20,000の数平均分子量を有する。ブロックA及びA’は、ほぼ同じ数平均分子量又は異なる数平均分子量を有するように合成することができる。
【0052】
いくつかの例では、ポリマーは、一般構造A−X−A’、A−X−A’−X−A、A’−X−A−X−A’、(A−A’)nX、(A−A’−A)X、(A’−A−A’)X又はそれらの混合物によって定義され、式中、Xは式IIのカップリング剤の残基であり、nは2〜約30、あるいは3〜30の整数であり、複数のブロックA及びブロックA’は同一又は異なる。本明細書に開示されるアミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、nが3以上、又は3〜30である星型分岐ポリマーを生成することができる。カップリングは、比較的低レベルの直鎖状カップリングを有する、即ち、nが2であるか、又はnが2〜3である非常に星型分岐した組成物を生成することができる。
【0053】
構造IIはポリマー鎖に対する2つの結合を示すが、構造は3つの結合も含むように適合させることができる。例えば、前述のように、カップリング剤は、3つの末端アルケニル基の変換時に3つのポリマー鎖結合を有するその構造の残基を形成するであろうN,N,N−トリス(4−ビニルベンジル)アミンを含むことができる。
【0054】
カップリングが完了した後、ポリマーアームのオレフィン性不飽和の少なくとも50%が水素化されるか、あるいはポリマーアームのオレフィン性不飽和の少なくとも80%が水素化されるか、あるいはポリマーアームのオレフィン性不飽和の少なくとも90%が水素化されるように、ポリマーが水素化され得る。
【0055】
アニオン重合及びカップリングのための方法
本明細書に開示されるカップリング剤は、部分的にアニオン重合によって調製されたカップリングされたポリマーを調製するために使用することができる。カップリングされたポリマーは、例えば、共役ジエン、スチレンを含むことができ、又は同じブロック又は異なるブロックにおいて共役ジエンとスチレンとのコポリマーであることができ、並びに他のポリマー単位であり得る。例示的な方法は以下の反応工程を含む。
a) アニオン性開始剤の存在下でモノマー又はモノマー混合物、例えば、少なくとも1つの共役ジエン及び1つ以上のモノアルケニルアレーン化合物を重合させて、リビングポリマーアーム又はアームの混合物を形成する工程、
b) リビングポリマーアームをアミン含有ポリアルケニルカップリング剤と反応させる工程、
c) いずれかのリビングポリマーが工程b)の後に残っている場合に重合を停止させる工程、及び
d) そのようにして生成されたカップリングされたポリマーを場合により官能化及び/又は水素化する工程。
【0056】
この方法は、上記の構造Iを有するアミン含有ポリアルケニルカップリング剤を利用することができる。これらには、例えば、特定のカップリング剤DVBBA、DVBBnA、DVBP、又はN,N,N−トリス(ビニルベンジル)アミン及びそれらの誘導体が含まれる。
【0057】
カップリング工程を開始するために、開始剤の存在下で初期ポリマーセグメント又はブロックを形成するためのモノマーユニットのアニオン溶液重合によってリビングポリマーを調製することができる。例えば、共役ジエン及びモノアルケニルアレーン化合物は、アニオン性開始剤、例えば、アルカリ金属又はアルカリ金属炭化水素、例えば、ナトリウムナフタレンの存在下で重合することができる。開始剤の例は、リチウム又はモノリチウム炭化水素である。当技術分野で既知の多くのリチウム炭化水素が好適であり、炭化水素は1〜40個の炭素原子を含み、リチウムが1個以上の水素原子を置き換えたものであってもよい。アルキルリチウム化合物等の一価のリチウム化合物に加えて、ジリチウム化合物及びポリリチウム化合物、並びに炭化水素リチウム化合物の混合物も使用できることを理解しなければならない。特に有利なものは、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム(「s−BuLi」)、ヘキシルリチウム、2−エチルヘキシルリチウム、n−ヘキサデシルリチウム等のようなアルキルリチウム化合物である。特定の例は、唯一の開始剤としてのs−BuLiである。
【0058】
リビングポリマーを調製するために使用される開始剤の濃度は、広い限界値の間で変化することができ、リビングポリマーの所望の分子量によって決定される。ブロックコポリマーの場合、炭化水素リチウム系開始剤は、通常、モノマー又はモノマー混合物の重量に基づいて、10〜2000ppmのLi、好ましくは100〜1000ppmのLiの量で使用される。共役ジエンポリマーの場合、炭化水素リチウム系開始剤は、通常、ジエンモノマーの重量に基づいて、10〜2000ppmのLi、好ましくは100〜1000ppmのLiという類似の濃度で使用される。開始剤は、場合により追加のモノマーと共に、2つ以上の段階で重合混合物に添加することができる。リビングポリマーはオレフィン性であり、場合により芳香族不飽和である。
【0059】
リチウム系開始剤の存在下でのアニオン重合によるポリマーの製造条件は、当該技術分野において周知である。典型的には、溶媒、開始剤及びモノマーは、最初は化学的不純物、水分及び空気(これらは全て重合に悪影響を与える)を含まない。モノマーは少なくとも90モルパーセント(モル%)の純度でなければならない。精製された流れが、開始剤が注入された反応器又は反応器の連鎖に入り、重合が始まる。
【0060】
上記のように、リビングコポリマーは、リビングブロックコポリマー、リビングランダムコポリマー又はリビングテーパードコポリマーであることができる。リビングブロックコポリマーは、ある量の第1の種類のモノマーを完全に重合させた後、ある量の別の種類のモノマーを添加することによって製造される。したがって、リビングブロックコポリマーは、モノマー種類の段階的なアニオン重合によって、例えば、イソプレンモノマーを重合させてリビングポリイソプレンを形成した後、別のモノマー、例えば、スチレンを添加し、式ポリイソプレン−ポリスチレン−Mを有するリビングブロックコポリマーを形成することによって調製することができ、又はスチレンモノマーを最初に重合させてリビングポリスチレンを形成した後、イソプレンモノマーを添加して、式ポリスチレン−ポリイソプレン−Mを有するリビングブロックコポリマーを形成することによって調製することができる。リビングコポリマーはまた、例えば、式ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/スチレン)−Mを有する中間ブロックAにおいてモノマーの制御された分布を有することができ、ポリ(ブタジエン/スチレン)コポリマーブロック中のスチレンの相対含量は、それがポリスチレンブロックに最も近いところでは低い。
【0061】
重合混合物に存在するモノマーのモル比が制御されたレベルに保たれるように、最も反応性のモノマー種類を、それほど反応性でないモノマー種類又は該モノマー種類の混合物のいずれかを含む重合反応混合物に徐々に添加することによって、リビングランダムコポリマーを調製することができる。共重合するモノマーの混合物を重合混合物に徐々に添加することによってこの無作為化を達成することも可能である。リビングランダムコポリマーは、いわゆるランダマイザーの存在下で重合を行うことによっても調製することができる。
【0062】
ランダマイザーは、触媒を失活させず、ランダム共重合の傾向をもたらす極性化合物である。適切なランダマイザーとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン等の第3級アミン;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジ−n−プロピルスルフィド、ジ−n−ブチルスルフィド、メチルエチルスルフィド等のチオエーテル;特に、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−オクチルエーテル、ジ−ベンジルエーテル、ジ−フェニルエーテル、アニソール、1,2−ジメチルオキシエタン、o−ジメトキシベンゼン等のエーテル、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテルが挙げられる。
【0063】
リビングテーパードコポリマーは、モノマーの混合物を重合させることによって調製され、モノマー間の反応性の差から生じる。例えば、モノマーAがモノマーA’よりも反応性である場合、コポリマーの組成はほぼ純粋なポリ−Aのものからほぼ純粋なポリ−A’のものへと徐々に変化する。
【0064】
アミン含有ポリアルケニルカップリング剤を用いた最適なカップリング結果のために、リビングポリマーは、好ましくは、例えば、カルバニオン基Mに最も近い、1つ以上のスチレンモノマー分子でキャップされる。その結果、スチレンモノマーはリビングポリマーの一部であり、それがカップリング剤又は2つ以上のカップリング剤分子から構成されたコアに結合される末端に位置する。
【0065】
その中でリビングポリマーが形成される溶媒は、不活性液状溶媒、例えば、炭化水素、例えば、脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−エチルヘキサン、石油エーテル、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、又は芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼンである。一般に、シクロヘキサンが好適な溶媒である。炭化水素の混合物、例えば、潤滑油の混合物を使用することもできる。
【0066】
重合が実施される温度は、−50〜150℃等の広い限界値の間で変化し得る。典型的には、小規模の場合0〜100℃、大規模な操作の場合150℃までの温度を3〜60時間の反応時間に使用することができる。あるいは、重合は約20〜約80℃で実施される。この反応は、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気中で実施するのが適切であり、圧力下、例えば、約0.5〜約10バールの圧力で実施することができる。重合は、モノマー供給物の少なくとも99%の変換を達成するのに十分な時間行うことができる。これは約1時間以内に達成することができる。
【0067】
リビングポリマーブロック又はそのセグメントの重合により、製造されたリビングポリマーをアミン含有ポリアルケニルカップリング剤と反応させる。アミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、モノマーの重合が実質的に完了した後にリビングポリマーに添加しなければならず、即ち、モノマーの実質的に全てがリビングポリマーに変換された後にのみカップリング剤が添加されなければならない。
【0068】
添加されるポリアルケニルカップリング剤の量は、広い限界値の間で変化し得るが、不飽和リビングポリマー1モル当たり少なくとも0.2モルが使用されることが好ましい。0.4〜5モル、好ましくは0.5〜4.5モルの量が好ましい。単一の仕込み又はそれ以上の段階で添加され得る量は、通常、リビングポリマーをカップリングされたポリマーに変換するようなものである。カップリングされたリビングポリマーの相対的割合は、カップリング効率であり、これについては後述する。
【0069】
カップリング剤の化学量論量(即ち、不飽和リビングポリマーの1当量当たり1モルの末端アルケン)を超えて使用される場合、カップリング剤分子は重合して、重合した又は架橋されたカップリング剤分子のコア又は核を形成することができる。それは多官能性カップリング剤として作用し、可溶性星形ポリマーを生じる。アームの数はかなり変動し得るが、典型的には4〜30の間、あるいは約10〜約20である。
【0070】
前述したように、星型ホモポリマーの例は、式A−x−Aで表され、星型コポリマーの例は、式(A−A’)−x−(A−A’)(nは通常3〜24の間、又は3〜30の整数であり、xは残基又は非環式アミン含有ポリアルケニルカップリング剤から形成される核である)で表されることができる。上記から、xは、DVBBA若しくはDVBBnAのような非環式アミン又はDVBPのような環状アミンから形成される核であることが分かる。また、より複雑な星型ポリマーを製造することもできる。
【0071】
別の方法では、カップリング剤を使用してポリマーを官能化することができる。例えば、末端アルケンの量が不飽和リビングポリマー1当量あたり約1.0モル以上であるようにカップル剤が添加される場合、官能化されたアルケニルベンジル(即ち、末端アルケン)が最終生成物中に未反応のまま残るように付加体を形成する可能性がある。これは末端官能基を有するポリマーを形成する。この官能基は、官能基として最終生成物中に保存することができ、又はアニオン性、ラジカル性又は他の反応性部分とのその後の化学反応に適用することができる。官能化の場合、不飽和リビングポリマーに対する末端アルケンのモル比は、約1.0以上であることが好ましい。カップリングを最小にし、官能化を最大化するために、1.0より大きい比を用いることができる。
【0072】
リビングコポリマーとアミン含有カップリング剤とのカップリングは、リビングコポリマーを形成させる重合反応と同じ溶媒中で行うことができる。適切な溶媒のリストは上記に示されている。カップリング反応のための温度はまた、広い限界値の間で変化することができ、例えば、0〜150℃、あるいは20〜120℃、あるいは50〜80℃、あるいは60〜70℃で変化することができる。この反応はまた、不活性雰囲気、例えば、窒素又はアルゴン中で、及び圧力下、例えば、0.5〜10バールの圧力で起こることができる。
【0073】
カップリング剤は必ずしも反応を終了させるものではない。リビングポリマーアームをアミン含有ポリアルケニルカップリング剤と反応させる際に生成されるポリマーは、依然として「生きている」かもしれない。このような場合、それらは、カルボアニオン性末端基と反応する化合物の添加等の任意の既知の方法で、失活させるか、又は「殺す」ことができる。適切な不活性化剤の例としては、1つ以上の活性水素原子を有する化合物、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール)又はカルボン酸(例えば、酢酸)、1つの活性ハロゲン原子、例えば、塩素原子を有する化合物(例えば、塩化ベンジル、クロロメタン)、1つのエステル基を有する化合物及び二酸化炭素である。このようにして失活されなければ、そのように生成された、カップリングされたポリマーを官能化及び/又は水素化することによって、リビングポリマーを殺すことができる。
【0074】
しかし、殺される前に、リビングポリマーを、同じか又は異なるモノマーのようなさらなる量のモノマー、例えば、上述の種類のジエン及び/又はモノアルケニルアレーン化合物と反応させることができる。これは星型ポリマーにとって特に重要である。ポリマー鎖の数を増やすことを別として、この追加の工程の効果は、少なくとも2つの異なる種類のポリマー鎖を有するリビング星型ポリマーを生成することである。
【0075】
したがって、これは、カップリングする前にリビングポリマーの混合物を使用する代わりのものである。例えば、リビングポリイソプレンから誘導されたリビング星型ポリマーをさらなるイソプレンモノマーと反応させて、異なる数平均分子量のポリイソプレン鎖を有するさらなるリビング星型ポリマーを生成することができる。あるいは、リビング星型ポリイソプレンホモポリマーをスチレンモノマーと反応させて、ポリイソプレン及びポリスチレンホモポリマー鎖の両方を有するさらなるリビング星型コポリマーを生成することができる。したがって、異なるポリマー鎖によって、異なる分子量の鎖及び/又は異なる構造の鎖が想定されることが分かる。これらのさらなる重合は、リビングポリマーを形成するための重合について記載したのと実質的に同じ条件下で行うことができる。追加の鎖は、上述したように、ホモポリマー、コポリマー鎖等であることができる。
【0076】
別の例示的な方法では、本明細書に記載されたカップリング剤のいずれかのある量を、本明細書に記載されたリチウム化合物等の開始剤と反応させて、リビングアニオン性カップリング剤を形成することができる。例えば、イソプレン又はブタジエンのようなモノマー単位を反応混合物に添加することができ、この反応混合物は実質的に上記のようにアニオン性カップリング剤種と反応して、リビング星形分枝ポリマーを形成する。次いで、リビング星型分枝ポリマーは、上記のように重合工程を停止させて、最終星型分枝ポリマー生成物を形成するために、停止されるか、又は「殺」され得る。この方法は、モノマー単位からのリビングポリマーアームの初期形成に続くカップリング剤の添加ではなく、重合がカップリング剤を用いて始まり、モノマーの添加が続くため、「インサイドアウト」法と呼ぶことができる。
【0077】
本明細書に開示されるように、分子量という用語は、ASTM 05296−11に従って行われるように、ポリスチレン較正標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリマー又はコポリマーのブロックのポリスチレン当量、又は見かけの分子量を指す。GPCは、分子サイズに従ってポリマーが分離される周知の方法であり、最大の分子が最初に溶離する。クロマトグラフは、市販のポリスチレンモル質量標準を用いて較正される。使用される検出器は、好ましくは、紫外線及び屈折率検出器の組み合わせである。ここで表される分子量は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として表される。分子量分布(D)はMに対するMの比として表される。カップリングしていない前駆体ポリマーのMに対するカップリングしたポリマーのMの比は、見かけの分岐度(DoB)として示される。この見かけの分枝度は、GPC法が上記のように分子サイズに基づいて分離するので、一般に、ポリマーアームの「実際の」数よりも低い。したがって、表1に示すDoB値は、ポリマーアームの「実際の」数よりも低い。
【0078】
本明細書に開示されたカップリング剤のアミン官能基は、カップリング後に四級化され得る。本明細書に開示されたようなアミン含有の、カップリングされたポリマーは、膜又は樹脂への形成の前又は後に、対応するオニウム塩に変換され得る。四級化は、例えば、F、Cl、Br又はI等のハロゲン化物を含むことができる任意の対アニオンを用いて行うことができる。ハロゲン化物を例示的な対イオンとして挙げているが、当業者であれば、対イオンの多数の種類を使用することができることを理解するであろう。
【0079】
形成されたポリマー、ブロックポリマー及びブロックコポリマーの水素化工程
本開示によるポリマーは、場合により水素化されてもよい。そのような場合には、形成されたポリマー中にジエンポリマー単位が存在する場合が含まれる。水素化は、改善された安定性をもたらすことができる。
【0080】
水素化は、水素化反応中に不活性な溶媒中で行うことができる。飽和炭化水素及び飽和炭化水素の混合物は非常に適しており、重合が行われたのと同じ溶媒中で水素化を行うことが有利であり得る。
【0081】
水素化は、当技術分野で既知のいくつかの水素化又は選択的水素化方法のいずれかを介して行うことができる。例えば、このような水素化は、例えば、US3,595,942号、第3,634,549号、第3,670,054号、第3,700,633号、及びRe.27,145に教示されたもののような方法を使用して達成されてきた。これらの方法は、エチレン性不飽和を含むポリマーを水素化するために作用し、適切な触媒の操作に基づく。このような触媒又は触媒前駆体は、好ましくは、ニッケル又はコバルトのような第VIII族金属を含み、これは、適切な還元剤、例えば、アルミニウムアルキル又は元素の周期律表の第I−A族、第II−A族及び第III−B族から選択される金属特にリチウム、マグネシウム又はアルミニウム、の水素化物と組み合わされる。この調製は、約20℃〜約80℃の温度で適切な溶媒又は希釈剤中で行うことができる。有用な他の触媒としては、チタン系触媒系が挙げられる。
【0082】
水素化は、共役ジエン二重結合の少なくとも約70%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも98%が還元されるような条件下で行うことができる。
【0083】
特性
本明細書に開示されたカップリング剤は、有利なカップリング特性を提供する。例えば、カップリング効率は、90%、あるいは少なくとも94%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも97%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%であることができる。アミン含有ポリアルケニルカップリング剤はまた高い分枝度をもたらすことが判っている。例えば、5%未満の線形アーム、あるいは3%未満の線形アーム、あるいは1%未満の線形アームが存在する。ここで線形とは、例えば、nが2である(A−A’)Xのような構成を意味する。
【0084】
さらに、本明細書に開示されたカップリング剤は、より低い多分散指数(M/M)を有するポリマーを提供する。例えば、多分散指数は、1.5未満、あるいは1.25未満、あるいは1.15未満、あるいは1.10未満であることができる。
【0085】
用途
アミン含有ポリアルケニルカップリング剤は、エンジンオイル、ギアオイル、自動トランスミッション流体、パワーステアリング流体、グリース及び同様の油圧油に使用するための粘度指数(VI)改良剤として使用するための星型分枝ポリマー、ブロックポリマー、及びブロックコポリマーの形成をもたらすことが判っている。さらに、本明細書に開示されるカップリング剤で形成されたポリマーは、低い多分散指数を示すことができる。本明細書に記載されたアミン含有ポリマー又はコポリマーはまた、分散剤及び乳化剤としての有用性を有することができる。
【0086】
本明細書に記載されたこれらのアミン含有のカップリングされたポリマー並びにそれらの四級化形態は、様々な用途及び最終用途で使用することができる。例えば、アミン含有のカップリングされたポリマーで形成された樹脂又は膜は、水処理及び軟化用途においてアニオン交換体として使用することができる。アミン含有のカップリングされたポリマーは、燃料電池又はレドックスフローセル(セパレータ相)、燃料電池及びレドックスフローセル用のアニオン交換膜、燃料電池、水電解槽(電解質)、酸電池(電解質セパレーター)、スーパーキャパシター(電解質)、金属回収工程用の分離セル(電解質バリア)、センサー(特に湿度を感知するためのセンサー)をはじめとする電極アセンブリに使用するためのポリマーセメント中の金属含浸炭素粒子の分散液等の電気化学的用途に使用することができる。アミン含有のカップリングされたポリマーは、パーベーパレーション又は脱塩膜として、また多孔質膜上のコーティングに使用される。それらは、ガス分離用途に有用であり得る。
【0087】
さらに、アミン含有のカップリングされたポリマーは、膜、被覆布及び布積層物が様々な環境要素(風、雨、雪、化学薬品、生物学的作用物質)からの保護の障壁を提供することができ、同時に膜又は布の一方の側から他方の側へ水を迅速に移動させる能力の結果として、例えば、水分を着用者の皮膚の表面から膜又は布の外側へ及びその逆へ逃がす能力の結果として、快適さのレベルを提供する防護服及び通気性布地用途に使用することができる。このような膜及び布から作られた完全なエンクロージャースーツは、煙、化学物質の流出、又は様々な化学物質又は生物学的作用物質への曝露が可能な緊急事態の場面で最初の応答者を保護することができる。生物学的災害への曝露が危険である医療用途、特に外科手術においても同様のニーズが生じる。これらの種類の膜から製造された外科用手袋及びドレープは、医療環境において有用であり得る他の用途である。
【0088】
したがって、いくつかの例では、アミン含有ポリマーは、燃料電池、濾過装置、湿度を制御するための装置、順方向電気透析のための装置、逆電気透析のための装置、圧力遅延浸透のための装置、正浸透のための装置、逆浸透のための装置、選択的に水を添加する装置、選択的に水を除去する装置、容量性脱イオン装置、分子濾過装置、水から塩を除去する装置、水圧破砕用途からの生成水を処理する装置、イオン輸送用途のための装置、水を軟化させるための装置、及び電池において有用であり得る膜に含まれることができる。
【0089】
アミン含有のカップリングされたポリマーは、少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、及び1つ以上の膜を備える電気脱イオンアセンブリのための膜に特に有利に用いられる。電気脱イオンアセンブリには、特に脱塩槽が含まれる。
【0090】
アミン含有のカップリングされたポリマーを含む膜は、アニオン膜に含まれることができる。アニオン性膜は、有利には、少なくとも1つのカチオン性膜と対になることができる。
【実施例】
【0091】
以下の実施例で使用されたアミン含有カップリング剤は、米国のシェパード・ケム(Shepherd Chem)から購入した。カップリング効率(CE)は、上記カップリング剤のいずれか1つが添加された時点で生きていた(P−Li)が、カップリング反応の完了時にカップリング剤の残基を介して連結されたポリマー鎖の割合として定義される。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データは、ポリマー生成物のカップリング効率を計算するために使用される。これらのGPC測定は、ASTM 05296−11に従って、ポリスチレン較正標準を用いて行った。全てのカップリングされた種についてのGPC曲線下の面積の合計は、カップリングした全ての部分の面積と、出発のカップリングされていないポリマー種の曲線下面積との合計で除算される。この比率に100を掛けて、カップリング効率をパーセンテージ値に変換する。同様に、線形結合率(LC)は、線形種の曲線下面積とカップリングされた全ての種の面積との比から計算される。見かけの分岐度(DoB)は、カップリングした種の数平均分子量と、カップリングしていない出発生成物の数平均分子量との間の比である。ピーク比は分岐度に相関する。一般に、ピーク比が高いほどDoBが高い。上述のように、GPC法は上記の分子サイズに基づいて分離するので、見掛けの分岐度は一般にポリマーアームの「実際の」数よりも低い。したがって、表1に示されたDoB値は、ポリマーアームの「実際の」数よりも低いため、信頼できる近似であると考えることができる。
【0092】
[実施例1ポリイソプレン(PI、実験1〜6)]
必要な分子量を狙うために、窒素雰囲気下の1L攪拌反応器に、60℃で、乾燥脱酸素化シクロヘキサン750ml、イソプレン50g及び0.3M溶液としてのシクロヘキサン中のs−BuLiの適量を続けて添加した。ポリイソプレンへのイソプレンの転化の完了後、乾燥シクロヘキサン中のジビニルベンゼン(「DVB」)(比較例6)又はDVBBnA(実験1)、DVBBA(実験2)若しくはDVBP(実験4)の同様の溶液のいずれかの1.0M溶液を3:1のCA:Liモル比を与えるような量で一度に加えた。実験3及び5では、0.3M s−BuLi溶液を70℃で添加し、DVBBA及びDVBPの溶液をそれぞれ使用した。カップリング反応の間、容器の温度を80℃に2時間上昇させた。得られたポリマーをメタノール/BHT中で沈殿させてサンプリングし、GPC分析に供した。実験1〜6から得られた結果及びデータを表1に示す。
【0093】
表1に示すように、DVVBnAは最も高い結合効率(95%)を示したが、最も低いピーク比も示した。DVBBA及びDVBPは、DVBを用いた比較実験よりも低いカップリング効率を示したが、DVBを用いた比較実験よりもピーク比が25〜67%増加した。また、驚くべきことに、反応温度が60℃から70℃に上昇すると、DVBP実験よりもDVBBA実験に顕著な効果があった(DVBBA及びDVBPについてそれぞれ4%及び1%の増加)。
【0094】
また、表1の実験2〜5に示されるように、反応温度の上昇によりDVBBAポリマー試料の多分散性が低下した(Mw/Mn=60℃での1.14対70℃での1.24)、一方同じ温度上昇はDVBP試料には何の効果もなかった(Mw/Mn=60℃での1.14対70℃での1.24)。
【0095】
[実施例2ポリスチレン(PS、実験7〜12)]
必要な分子量を狙うために、窒素雰囲気下の1L攪拌反応器に、60℃で、乾燥脱酸素化シクロヘキサン750ml、スチレン50g及び0.3M溶液としてのシクロヘキサン中のs−BuLiの適量を続けて添加した。ポリスチレンへのイソプレンの転化の完了後、乾燥シクロヘキサン中のDVBBnAの1.0M溶液を3:1のCA:Liモル比を与えるような量で一度に加えた。実験8及び10では、0.3M s−BuLi溶液をそれぞれ70℃及び25℃で添加した。実験9では、乾燥シクロヘキサン中のDVBBnAの1.0M溶液を、2:1のCA:Liモル比を与えるような量で一度に添加した。実験11及び12では、乾燥シクロヘキサン中のDVBBnAの1.0M溶液を、4.5:1のCA:Liモル比を与えるような量で一度に添加し、0.3M s−BuLi溶液をそれぞれ25℃及び50℃で添加した。カップリング反応の間、容器の温度を80℃に2時間上昇させた。得られたポリマーをメタノール/BHT中で沈殿させてサンプリングし、GPC分析に供した。実験7〜12から得られた結果及びデータを表1に示す。
【0096】
表1に示すように、DVBBnAを、ポリマーブロックとしてポリスチレンを使用する全てのカップリング実験に使用した。反応条件とは無関係に、ポリスチレン実験はポリイソプレンを用いた(95%)よりも高いカップリング効率(97〜99%)を示した。また、驚くべきことに、アニオン重合開始剤(Li)の量が33%増加すると、ピーク比が38%減少し、より低い反応温度(25℃及び50℃)でアニオン重合開始剤の量が33%増加すると、ピーク比が8〜15%しか減少せず、これは、形成されたポリマーのピーク比に対してCA:Li比が反応温度よりも重要であることがわかった。
【0097】
また、表1の実験7、9及び10に示されるように、反応温度の上昇により、DVBBnAポリマー試料のより高い単分散性がもたらされた(M/M=25℃で、1.23、60℃で、1.20、及び70℃で、1.15)。平均分子量も同様に25から70℃で顕著に増加した。実験10及び11では、M比が比較的変化しないが、CA:Li比の増加が形成されたポリマーの平均分子量をほぼ2倍にすることも示された。これは、過剰のカップリング剤を添加することによってポリマーの平均分子量を増加させることができるが、このような過剰のカップリング剤は形成されたポリマーの単分散性に顕著には影響しないことを示している。
【0098】
[実施例3:実験1のPI−DVBBnA−PIの水素化]
シクロヘキサンにポリマーを溶解させて、約10重量%の固形分を有するポリマー溶液を形成することにより、PI−DVBBnA−PI(実験1)のポリマー溶液を調製した。次に、150ppmのコバルト/アルミニウム触媒の存在下、水素ガスを40barg及び75℃の温度で導入することによりポリマーを水素化した。得られたポリマー溶液を75℃の1%クエン酸水溶液で2回洗浄した。アンモニア水で中和し、樹脂100部当たり0.2部(「phr」)のIrganox(R) 1010を添加した後、ポリマーを蒸気凝固により凝固させ、続いて60℃で真空下で乾燥させた。残留不飽和量は、H−NMRによって0.07meq/gと決定された。
【0099】
【表1】