特許第6826137号(P6826137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6826137アスベスト体切断システムおよびアスベスト体撤去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826137
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】アスベスト体切断システムおよびアスベスト体撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
   E04G23/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-12626(P2019-12626)
(22)【出願日】2019年1月28日
(65)【公開番号】特開2020-118006(P2020-118006A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年9月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】脇 多賀夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 英介
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−156213(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0935679(KR,B1)
【文献】 特開昭56−069024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02、23/08
B26D 3/16
B08B 15/00−15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストを含有するアスベスト体を切断するシステムであって、
アスベスト体を切断する電動丸鋸と、
前記電動丸鋸を覆う箱体と、
当該箱体に接続された集塵機と、を備え、
前記箱体は、一対の箱体部材に分割可能であり、
前記箱体の上面には、当該箱体の外部から腕を挿入可能なグローブバッグが設けられ、
前記箱体の側面には、前記電動丸鋸が出し入れ可能な扉が開閉可能に設けられていることを特徴とするアスベスト体切断システム。
【請求項2】
請求項に記載のアスベスト体切断システムを用いてアスベスト体を撤去する方法であって、
既存建物よりアスベスト体を取り外し、当該アスベスト体を架台上に配置する工程と、
当該アスベスト体を覆うように前記箱体を設置し、当該箱体に前記集塵機を接続する工程と、
前記箱体の扉を開いて当該箱体の内部に前記電動丸鋸を配置する工程と、
前記集塵機により前記箱体内部の粉塵を回収しながら、前記箱体の外部から前記グローブボックスの中に腕を入れて前記電動丸鋸を把持し、前記電動丸鋸により前記アスベスト体を切断して複数に分割する工程と、
当該分割したアスベスト体を搬出する工程と、を備えることを特徴とするアスベスト体撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストを含有する建材であるアスベスト体を切断するアスベスト体切断システム、及びこのアスベスト体切断システムを用いたアスベスト体撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アスベストを除去する装置が提案されている(特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、アスベスト面の剥離粉砕を行う除去手段と、密植された線材製のシール手段を備え除去手段の作用部の全体を掩覆する透明材製の密閉手段と、照明装置付の把持手段と、コンプレッサに接続される吸引用可撓管よりなる吸引手段、から構成されるアスベスト除去具が示されている。
特許文献2には、相対向する対面が開口している筒体枠と、この筒体枠を支持する支持部を有するグローブバッグ取付治具が示されている。
特許文献3には、建物の外壁と、外壁の外側に設置された仮設支持材と、仮設支持材を介して外壁の外面を覆う第一飛散防止材と、建物の内部に設置された第二飛散防止材とを備える飛散防止構造が示されている。
既存建物からアスベスト板を取り外して撤去する場合がある。この場合、建物躯体から取り外したアスベスト板のサイズが大きいと、重量が大きいため、アスベスト板を容易に搬出できない、という課題があった。
そこで、アスベスト板を切断して複数に分割した後に搬出することが考えられるが、アスベスト板の切断時にアスベストが飛散する、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−321525号公報
【特許文献2】特開2007−204973号公報
【特許文献3】特許第5764073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アスベストが飛散するのを防止しつつ、アスベストを含有する建材であるアスベスト体を容易に切断できる、アスベスト体切断システムおよびアスベスト体撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アスベストを含有するアスベスト体の解体撤去方法として、既存建物内のアスベスト体の取付け箇所の近傍に、アスベスト体を切断するための電動丸鋸を配置し、この電動丸鋸を覆う箱体を分割可能とすることで、箱体を軽量化して移動性を高めるとともに、この箱体内の電動丸鋸により、作業者がアスベストに触れることなくアスベスト体を切断することで、解体撤去対象のアスベスト体が大きくて重い場合でも、比較的容易に搬出できる点に着眼し、本発明に至った。
第1の発明のアスベスト体切断システム(例えば、後述のアスベスト体切断システム1)は、アスベストを含有するアスベスト体(例えば、後述のアスベスト板2)を切断するシステムであって、アスベスト体を切断する切断装置(例えば、後述の電動丸鋸10)と、前記切断装置を覆う箱体(例えば、後述の箱体20)と、当該箱体に接続された集塵機(例えば、後述の集塵機11)と、を備え、前記箱体は、一対の箱体部材(例えば、後述の箱体部材21)に分割可能であり、前記切断装置は、前記箱体の内部に配置されることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、箱体内部において、切断装置によりアスベスト体を切断することで、アスベスト体を容易に複数に分割して、搬出できる。
このとき、切断装置を箱体で覆うとともに、この箱体に集塵機を接続した。よって、集塵機により、アスベスト体の切断時に箱体内部に飛散したアスベストを回収して、アスベストが箱体外部に漏れるのを防止できる。
また、箱体を一対の箱体部材に分割可能としたので、箱体の持ち運びや収納が容易となる。
【0007】
第2の発明のアスベスト体切断システムは、前記切断装置は、電動丸鋸(例えば、後述の電動丸鋸10)であり、前記箱体の上面または側面には、当該箱体の外部から腕を挿入可能なグローブバッグ(例えば、後述のグローブバッグ40)が設けられることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、腕を挿入可能なグローブバッグを箱体に設けたので、作業者がアスベストに触れることなく、箱体内部の切断装置を操作して、アスベスト体を切断できる。
【0009】
第3の発明のアスベスト体撤去方法は、上述のアスベスト体切断システム(例えば、後述のアスベスト体切断システム1)を用いてアスベスト体(例えば、後述のアスベスト板2)を撤去する方法であって、既存建物よりアスベスト体を取り外し、当該アスベスト体を架台(例えば、後述の後述の架台50)上に配置する工程(例えば、後述のステップS1)と、当該アスベスト体を覆うように前記箱体(例えば、後述の箱体20)を設置し、当該箱体に前記集塵機(例えば、後述の集塵機11)を接続する工程(例えば、後述のステップS2)と、前記集塵機により前記箱体内部の粉塵を回収しながら、前記箱体内部の切断装置(例えば、後述の電動丸鋸10)により前記アスベスト体を切断して複数に分割する工程(例えば、後述のステップS3)と、当該分割したアスベスト体を搬出する工程(例えば、後述のステップS4)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、持ち運び容易なアスベスト体切断システムを用いて、既存建物から取り外したアスベスト体を複数に分割して搬出する。よって、従来のような大規模なアスベスト体の養生装置を設置しなくても、アスベストが飛散するのを防止しつつアスベスト体を容易に切断できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アスベストが飛散するのを防止しつつ、アスベストを含有する建材であるアスベスト体を切断できる、アスベスト体切断システムおよびアスベスト体撤去方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るアスベスト体切断システムの斜視図である。
図2図1に示すアスベスト体切断システムの箱体の分解斜視図である。
図3図2に示す箱体の平面図およびA−A断面図である。
図4図3に示す箱体のC−C矢視図およびD−D矢視図である。
図5】前記アスベスト体切断システムを用いてアスベスト板を既存建物から撤去する手順のフローチャートである。
図6】アスベスト体の撤去手順の説明図(その1:アスベスト板の姿図)である。
図7】アスベスト体の撤去手順の説明図(その2:切断状況)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アスベストを含有する建材(アスベスト体)を切断するアスベスト体切断システムと、このアスベスト体切断システムを用いたアスベスト体の撤去方法である。アスベスト体切断システムの特徴は、既存建物内のアスベスト体の取付け箇所の近傍に、アスベスト体を切断するための電動丸鋸を配置し、この電動丸鋸を覆う箱体を分割可能とすることで、箱体を軽量化して移動性を高めるとともに、この箱体に外部側から腕を入れる挿入袋部(グローブバッグ)を設け、この箱体内の電動丸鋸により、作業者がアスベストに触れることなく電動丸鋸を操作して、アスベスト体を複数に分割できる点である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアスベスト体切断システム1の斜視図である。
アスベスト体切断システム1は、アスベストを含有する建材であるアスベスト体としてのアスベスト板2を切断するものである。本発明のアスベスト体切断システム1が対象とするアスベスト体は、既存建物に取り付けられかつ取り外し可能な、アスベストを含有する建材であり、アスベスト板2のほか、アスベスト筒状体、配管エルボやボイラーなどのアスベスト保温材、アスベスト耐火被覆材、アスベスト断熱材が含まれる。本実施形態では、アスベスト体としてアスベスト板2を撤去する場合について、アスベスト体切断システム1の構成と、このアスベスト体切断システム1を用いた撤去方法とについて説明する。
アスベスト体切断システム1は、アスベスト板2を切断する切断装置としての電動丸鋸10(図7参照)と、電動丸鋸10を覆う箱体20と、箱体20に接続された集塵機11と、を備える。
箱体20は、図2に示すように、一対の箱体部材21に分割可能である。
【0014】
図3(a)は、箱体20の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図4(a)は、図3(a)のC−C矢視図であり、図4(b)は、図3(a)のD−D矢視図である。
箱体20の外面は、4つの側面30A、30B、30C、30Dと、上面30Eと、互いに対向する2つの側面30B、30Dと上面30Eとの間が切り欠かれて形成された斜面30F、30Gと、で構成される。
箱体20は、高耐食性溶融めっき鋼板(ZAM(登録商標))のアングル材からなる箱状の骨組み22と、この骨組み22の側面30A〜30Dに取り付けられた透明性の高いアクリル板23と、骨組み22の上面30Eおよび斜面30F、30Gに取り付けられた透明性の高い塩化ビニルフィルム24と、を備える。
【0015】
箱体20の側面30A、30Cの下部には、一部が切り欠かれて、アスベスト板2が嵌合する凹部25が形成されている(図1参照)。
箱体20の上面30Eには、塩化ビニルフィルム24を開口して取り付けられた一対の袋状のグローブバッグ40が設けられている。作業者が箱体20の外部からグローブバッグ40の中に腕を挿入することで、箱体20内部の空気に触れることなく、箱体20内部で作業可能である。
また、箱体20の側面30Aには、アクリル板23が一部切り欠かれて開閉可能な扉41が設けられており、この扉41を通して、電動丸鋸10を箱体20に出し入れ可能である。
【0016】
また、箱体20の側面30Cには、アクリル板23が一部切り欠かれて、開口42および開口43が形成されている。開口42には、集塵機11のダクト12が接続可能な接続金物26が取り付けられている。
集塵機11を駆動すると、開口43を通して、外部の空気を箱体20内部に取り込むとともに、開口42およびダクト12を通して、箱体20内部の空気(粉塵)が集塵機11に吸い込まれる。
【0017】
以下、アスベスト体切断システム1を用いてアスベスト板2を既存建物から撤去する手順について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、図6に示すように、既存建物の躯体からアスベスト板2を取り外して架台50の上に配置する。
ステップS2では、一対の箱体部材21を連結して箱体20を組み立てて、図7に示すように、アスベスト板2を覆うようにこの箱体20を設置する。次に、箱体20に集塵機11を接続する。なお、図7では、理解を容易にするために、箱体20を破線で示している。
ステップS3では、図7に示すように、まず、箱体20の扉41を開いて箱体20内部に電動丸鋸10を配置する。次に、作業者が箱体20の外部からグローブバッグ40の中に腕を挿入し、電動丸鋸10を把持する。次に、集塵機11を駆動して箱体20内部の粉塵を回収しながら、箱体20内部の電動丸鋸10により、アスベスト板2を切断して複数に分割する。
ステップS4では、分割したアスベスト板2を図示しないアスベスト廃棄用袋に入れて、建物外に搬出する。よって、ステップS3でアスベスト板2を切断する際には、アスベスト廃棄用袋に収納できるサイズになるまで、アスベスト板2を切断する。
【0018】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)箱体20内部において、電動丸鋸10によりアスベスト板2を切断することで、アスベスト板2を容易に複数に分割して、搬出できる。
このとき、電動丸鋸10を箱体20で覆うとともに、この箱体20に集塵機11を接続した。よって、集塵機11により、アスベスト板2の切断時に箱体20内部に飛散したアスベストを回収して、アスベストが箱体外部に漏れるのを防止できる。
また、箱体20を一対の箱体部材21に分割可能としたので、箱体20の持ち運びや収納が容易となる。
【0019】
(2)腕を挿入可能なグローブバッグ40を箱体20に設けたので、作業者がアスベストに触れることなく、箱体20内部の電動丸鋸10を操作して、アスベスト板2を切断できる。
(3)箱体20の側面30Aに扉41を設けたので、この扉41を通して電動丸鋸10を箱体20の出し入れが容易となる。
(4)箱体20に集塵機11のダクト12が接続される接続金物26を取り付けたので、集塵機11を箱体20に容易に接続できる。
(5)箱体20の上面30Eおよび斜面30F、30Gに塩化ビニルフィルム24を取り付けたので、この塩化ビニルフィルム24に適宜開口を設けることで、グローブバッグ40を取り付ける位置を自在に設定できる。
(6)骨組み22を高耐食性溶融めっき鋼板で形成したので、高塩分環境下での耐食性を確保できる。
(7)箱体20をアクリル板23と塩化ビニルフィルム24を併用して製作したので、箱体20が軽量となり、移動性が良好となる。
【0020】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上述の実施形態では、箱体20の上面30Eにグローブバッグ40を設けたが、これに限らず、箱体20の斜面30F、30Gや側面30A、30Cに設けてもよい。
また、上述の実施形態では、ステップS2にて、一対の箱体部材21を連結して箱体20を組み立てた後、ステップS3にて、箱体20の扉41を通して箱体20内部に電動丸鋸10を入れたが、これに限らない。例えば、電動丸鋸10を挟んで一対の箱体部材21を連結することで、電動丸鋸10を箱体20内部に設置してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1…アスベスト体切断システム 2…アスベスト板(アスベスト体)
10…電動丸鋸(切断装置) 11…集塵機 12…集塵機のダクト
20…箱体 21…箱体部材 22…骨組み 23…アクリル板
24…塩化ビニルフィルム 25…凹部 26…接続金物
30A、30B、30C、30D…側面 30E…上面 30F、30G…斜面
40…グローブバッグ 41…扉 42…開口 43…開口 50…架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7