(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステップ(c)では、前記曲管部の湾曲方向最外側から離れるに従って、幅を小さくした幅保持部材を前記伸縮部に嵌め込む、請求項1または2記載の管路更生方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、嵌合部材の部分で伸縮するだけなので、曲管部の曲がり(曲率または屈曲角度)が大きい場合には、十分に対応できないという問題があった。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管路更生方法を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、既設管の曲管部の曲がりが大きい場合でも、曲管部を適切に更生できる、管路更生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、帯板状部材を螺旋状に巻回して既設管内に更生管を形成することで管路を更生する方法において、既設管の曲管部を更生するための管路更生方法であって、(a)更生管を形成した際に内面となる側に形成される基板と幅方向に伸縮可能な伸縮部とを有する曲線用帯板状部材、曲線用帯板状部材の側縁部同士を接続するための嵌合部材、および、幅保持部材を用意するステップ、(b)曲線用帯板状部材を曲管部内で螺旋状に巻回して仮製管するステップ、(c)ステップ(b)の後、曲管部の湾曲方向外側に位置する曲線用帯板状部材の伸縮部を幅方向に伸ばした拡張状態とし、当該伸縮部に幅保持部材を嵌め込んで当該拡張状態を保持するステップ、(d)ステップ(c)の後、曲線用帯板状部材の側縁部同士を嵌合部材によって接続して製管するステップを含む、管路更生方法である。
【0009】
第1の発明では、ステップ(а)において、曲線用帯板状部材(曲線用ストリップ)、嵌合部材(ジョイナ)および幅保持部材などのこの管路更生方法に使用する部材を用意する。曲線用帯板状部材としては、更生管を形成した際に内面となる側に形成される基板と幅方向に伸縮可能な伸縮部とを有するものを用意する。次に、ステップ(b)において、曲線用帯板状部材の側縁部間に所定間隔の隙間ができるように、曲線用帯板状部材を曲管部内で螺旋状に巻回して仮製管する。続いて、ステップ(c)において、曲管部の湾曲方向外側に位置する曲線用帯板状部材の伸縮部を幅方向に伸ばした拡張状態とする。このとき、伸縮部には元の状態に戻ろうとする縮小方向の力が働くので、幅保持部材を伸縮部に嵌め込むことで伸縮部の拡張状態を保持する。そして、ステップ(d)において、曲線用帯板状部材の側縁部同士を嵌合部材によって接続して更生管を製管する。
【0010】
第1の発明によれば、伸縮部を有する曲線用帯板状部材を用いるので、曲管部の曲がりが大きい場合にも対応可能となる。また、曲線用帯板状部材を仮製管したときに、伸縮部に幅保持部材を嵌め込んでその拡張状態を保持するので、伸縮部の拡張状態を適切に保持できる。したがって、既設管の曲管部の曲がりが大きい場合でも、曲管部を適切に更生できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、ステップ(b)では、予め計算した伸縮部の目標拡張幅を考慮して仮製管を行い、ステップ(c)では、目標拡張幅に相当する幅を有する幅保持部材を伸縮部に嵌め込む。
【0012】
第2の発明では、ステップ(b)において曲線用帯板状部材を仮製管するとき、予め計算した伸縮部の目標拡張幅を考慮した仮製管を行う。すなわち、螺旋状に巻き回す曲線用帯板状部材の側縁部間には、概ね、嵌合部材の嵌め込み代に、伸縮部の目標拡張幅を加えた大きさの隙間を設けておくようにする。そして、ステップ(c)では、目標拡張幅に相当する幅を有する幅保持部材を伸縮部に嵌め込む。
【0013】
第2の発明によれば、更生管の製管作業をスムーズに行うことができる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、ステップ(c)では、曲管部の湾曲方向最外側から離れるに従って、幅を小さくした幅保持部材を伸縮部に嵌め込む。
【0015】
第3の発明では、ステップ(c)において伸縮部に嵌め込む幅保持部材は、曲管部の湾曲方向最外側から離れるに従って幅が小さくされる。
【0016】
第3の発明によれば、伸縮部の拡張状態を適切に保持することができる。
【0017】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、幅保持部材は、弾性材料によって形成され、ステップ(d)では、嵌合手段を用いて、幅保持部材を基板から内面側に突出しない厚さまで圧縮しつつ、曲線用帯板状部材および嵌合部材を厚み方向に押圧して、曲線用帯板状部材の側縁部同士を嵌合部材によって接続する。
【0018】
第4の発明では、幅保持部材として、ウレタンゴムおよびクロロプレンゴム等の弾性材料によって形成されたものを用いる。そして、ステップ(d)において曲線用帯板状部材を嵌合部材によって接続する製管作業は、製管機などの嵌合手段を用いて曲線用帯板状部材および嵌合部材を厚み方向に押圧することで行う。また、この製管作業は、幅保持部材が製管作業の障害とならないように、嵌合手段を用いて、幅保持部材を曲線用帯板状部材の基板から内面側に突出しない厚さまで圧縮しながら行う。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、伸縮部を有する曲線用帯板状部材を用いるので、曲管部の曲がりが大きい場合にも対応可能となる。また、曲線用帯板状部材を仮製管したときに、伸縮部に幅保持部材を嵌め込んでその拡張状態を保持するので、伸縮部の拡張状態を適切に保持できる。したがって、既設管の曲管部の曲がりが大きい場合でも、曲管部を適切に更生できる。
【0020】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、この発明の一実施例である管路更生方法は、ストリップ(帯板状部材)を螺旋状に巻き回し、そのストリップの側縁部同士をジョイナ(嵌合部材)で接続することによって既設管100内に更生管10を形成する管路更生方法において、既設管100の曲管部100bを更生するときに用いられる。詳細は後述するように、既設管100の直管部100aを更生する際には、直線用ストリップ12が用いられ、曲管部100bを更生する際には、曲線用ストリップ14が用いられる。また、この実施例では、各ストリップ12,14の側縁部同士を接続するジョイナ16としては、共通のものが用いられる。
【0023】
なお、この発明に係る管路更生方法は、鉄筋コンクリート製、合成樹脂製および金属製などの円形管および非円形管を含む種々の既設管100の更生に適用可能であり、特に、800mm−3000mmの中大口径を有する下水管の更生に適している。また特に、この管路更生方法は、曲管部100bの曲がり(曲率または屈曲角)が大きい場合に好適に用いられる。たとえば、既設管100が円形管の場合には、曲管部100bが6度以上の屈曲角度を有するもの、既設管100が矩形管および馬蹄形管などの非円形管の場合には、曲管部100bが3度以上の屈曲角度を有するものの更生に適している。以下の説明では、屈曲角度が12度の曲管部100bを有する、口径1500mmの鉄筋コンクリート製の円形管を更生することを想定して説明することとする。
【0024】
先ず、この管路更生方法に用いる更生部材の一例について説明する。
図2に示すように、直線用ストリップ12は、長帯状の基板20を備える。基板20は、更生管10を形成した際に内面となる側に形成され、基板20の第1主面20aは、更生管10の内面を構成する。また、基板20の第2主面20bには、幅方向に所定間隔で配置される複数のリブ22が形成される。リブ22は、略T字状に形成されており、後述する充填材に埋め込まれることでアンカ機能を発揮する。さらに、基板20の両側縁部には、後述するジョイナ16の第2係合部32と嵌め合わされる第1係合部24が形成される。
【0025】
直線用ストリップ12は、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって一体成形され、リブ22および第1係合部24は、基板20の長手方向の全長に亘って形成される。直線用ストリップ12の幅は、たとえば250mmであり、その高さは、たとえば17.5mmである。
【0026】
図3に示すように、ジョイナ16は、長帯状のジョイナ基板30を備える。ジョイナ基板30の第1主面30aは、直線用ストリップ12の第1主面20aと共に更生管10の内面を構成する。また、ジョイナ基板30の両側縁部には、直線用ストリップ12の第1係合部24(または後述する曲線用ストリップ14の第1係合部54)に嵌め合わされる第2係合部32が形成される。この第2係合部32には、エラストマなどの止水材34が設けられる。
【0027】
さらに、ジョイナ基板30の中央部には、幅方向に伸縮可能な伸縮部36が設けられる。伸縮部36は、ジョイナ基板30の第2主面30bから突出するU字状の溝部38と、溝部38全体を覆うように第2主面30b同士を連結する波形状のフレキシブル部40とを含む。また、溝部38の内側中央部には、長手方向に延びる小溝状の切欠部38aが形成されている。このような伸縮部36は、溝部38の変形に応じて伸縮可能であると共に、溝部38を幅方向に破断(分割)することで、フレキシブル部40の変形に応じた大きな伸縮が可能となる。
【0028】
ジョイナ16のジョイナ基板30、第2係合部32および溝部38は、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって一体成形される。また、フレキシブル部40は、たとえば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂などによって形成され、熱可塑性ポリウレタンベースの接着剤などを用いてジョイナ基板30に固着される。第2係合部32および伸縮部36は、ジョイナ基板30の長手方向の全長に亘って形成される。
【0029】
既設管100の直管部100a内に更生管10を形成する際には、直管部100aの内面に沿うように直線用ストリップ12を螺旋状に巻回す。そして、
図4に示すように、直線用ストリップ12の第1係合部24とジョイナ16の第2係合部32と嵌め合わせて、ジョイナ16によって直線用ストリップ12の側縁部同士を接続する。
【0030】
また、
図5に示すように、曲線用ストリップ14は、長帯状の基板50を備える。基板50は、更生管10を形成した際に内面となる側に形成され、基板50の第1主面50aは、更生管10の内面を構成する。また、基板50の第2主面50bには、幅方向に所定間隔で配置される複数のリブ52が形成される。リブ52は、略T字状に形成されており、後述する充填材に埋め込まれることでアンカ機能を発揮する。さらに、基板50の両側縁部には、ジョイナ16の第2係合部32と嵌め合わされる第1係合部54が形成される。リブ52および第1係合部54は、基板50の長手方向の全長に亘って形成される。
【0031】
また、基板50には、幅方向に伸縮可能な伸縮部56が長手方向の全長に亘って設けられる。この実施例では、3つの伸縮部56が幅方向に所定間隔で配置され、伸縮部56のそれぞれは、上述のジョイナ16が有する伸縮部36と同様の構成を有する。すなわち、伸縮部56は、基板50の第2主面50b側に突出するU字状の溝部58と、溝部58全体を覆うように第2主面50b同士を連結する波形状のフレキシブル部60とを含む。また、溝部58の内側中央部には、小溝状の切欠部が形成されている。このような伸縮部56は、溝部58の変形に応じて伸縮可能であると共に、溝部58を幅方向に破断させることで、フレキシブル部60の変形に応じた大きな伸縮が可能となる。この実施例の伸縮部56は、溝部58の変形に応じた最大拡張幅(伸び量)が7mm以上に設定され、フレキシブル部60の変形に応じた最大拡張幅が25mmに設定されている。したがって、3つの伸縮部56を有する曲線用ストリップ14全体では、溝部58を破断させることで、幅方向に75mm伸びる(拡張する)ことが可能である。ただし、溝部58またはフレキシブル部60の変形に応じた伸縮部56の最大拡張幅の設定値は、適宜変更可能であり、たとえば、フレキシブル部60の変形に応じた伸縮部56の最大拡張幅は、25mmより大きくても小さくても構わない。
【0032】
また、この実施例では、曲線用ストリップ14は、3つの部材を組み合わせることで形成される。すなわち、曲線用ストリップ14は、曲線用ストリップ14の両側部分を構成する2つの側部材14aと、曲線用ストリップ14の中央部分を構成する1つの中央部材14bとを、製造工場等で一体化することによって製造される。たとえば、中央部材14bとしては、上述のジョイナ16と同じ構成のものが用いられ、側部材14aとしては、中央部に伸縮部56を有し、両側縁部に第1係合部54を有するものが用いられる。各部材14a,14bの基板、係合部、リブおよび溝部などは、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって一体成形され、それにフレキシブル部が接着剤等で固着される。そして、側部材14aおよび中央部材14bの係合部同士を嵌め合わせて一体化することによって、曲線用ストリップ14が形成される。
【0033】
曲線用ストリップ14の幅および高さは、直線用ストリップ12の幅および高さと略同じ大きさに設定されており、その幅は、たとえば250mmであり、その高さは、たとえば17.5mmである。曲線用ストリップ14の側縁部同士をジョイナ16によって接続する際には、上述の直線用ストリップ12の場合と同様に、曲線用ストリップ14の第1係合部54とジョイナ16の第2係合部32とを嵌め合わせるとよい。
【0034】
続いて、
図1および
図6−
図8を参照して、既設管100の曲管部100bを更生する管路更生方法の一例について具体的に説明する。なお、既設管100の更生区間は、曲管部100bの前後に直管部100aを有するものとする。
【0035】
この管路更生方法では、更生管10の施工に先立つ施工計画の一部として、既設管100の口径および曲管部100bの屈曲角などから、曲管部100bの湾曲方向外側Xと湾曲方向内側Yとの軸方向長さの違い(つまり湾曲方向外側Xでの曲線用ストリップ14の必要拡張幅)を計算または測定する。そして、その必要拡張幅に基づき、引き伸ばす伸縮部56の数および各伸縮部56における目標拡張幅を計算(計画)する。目標拡張幅は、各伸縮部56の最大拡張幅に収まる範囲内の値とされる。なお、この実施例では、ジョイナ16も曲線用ストリップ14と同様の伸縮部36を有するので、引き伸ばす伸縮部には、ジョイナ16の伸縮部36も含むものとする。
【0036】
具体例を挙げて説明すると、この実施例では、既設管100の口径が1500mmであり、その曲管部100bの屈曲角が12度であるので、曲管部100bの湾曲方向外側Xにおける必要拡張幅は、約340mmとなる。各伸縮部36,56の最大拡張幅は25mmであるため、引き伸ばす伸縮部36,56の必要数は14箇所以上となる。また、施工した更生管10の曲がりがスムーズとなるように、伸縮部36,56を伸ばす開始箇所および最終箇所(軸方向の両端箇所)の拡張幅は、中間箇所よりも小さめに設定することが好ましい。そこで、たとえば、引き伸ばす伸縮部36,56の数を15箇所に設定する。そして、伸縮部36,56の湾曲方向最外側における目標拡張幅は、開始箇所および最終箇所では10mmとし、中間箇所(2箇所目から14箇所目まで)では25mmとする。なお、伸縮部36,56の湾曲方向最内側における目標拡張幅は、0mmであり(つまり湾曲方向最内側では伸縮部36,56を拡張させない)、湾曲方向最外側から最内側に向かうに従って、伸縮部36,56の目標拡張幅は徐々に小さくなる。
【0037】
既設管100を更生するときには、先ず、既設管100の更生区間近傍の地上に、直線用ストリップ12、曲線用ストリップ14、ジョイナ16および幅保持部材102、並びに図示しないスペーサおよび製管機などの必要な部材および装置を適宜用意しておく。そして、高圧洗浄機などを用いて既設管100内を洗浄した後、既設管100の内面頂部にスペーサを設置する。スペーサは、既設管100と更生管10との間に充填材の注入ホースを導入するための案内通路を形成する。
【0038】
次に、既設管100内に更生管10を施工する。この実施例では、曲管部100bの手前側の直管部100aから順に更生管10を施工していく。直管部100aを更生する際には、従来通り、直線用ストリップ12を直管部100aの内面に沿って螺旋状に巻き回すと共に、その側縁部同士をジョイナ16で接続することで、直管部100a内に更生管10を形成する。手前側の直管部100a内への更生管10の形成が終了すると、直線用ストリップ12の端部を切断してビス等を用いて既設管100に固定しておく。
【0039】
続いて、曲線用ストリップ14を用いて曲管部100b内に更生管10を形成する。ここで、直線用ストリップ12から曲線用ストリップ14への切り替えは、予め計画した伸縮部56の拡張開始箇所の1巻き程度手前の位置で行うことが好ましい。また、直線用ストリップ12と曲線用ストリップ14との切替部分は、たとえば、ストリップ12,14の端面同士を1cm程度の間隔で突き合わせて、曲線用ストリップ14の端部をビス等で既設管100に固定すると共に、ストリップ12,14の端面間の隙間にはパテ等を埋め込んでおく(パテ処理する)とよい。この際には、硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の板部材を隙間に嵌め込む等して、パテ上を板部材で覆っておくことが好ましい。合成樹脂製の板部材としては、たとえば、短尺の直線用ストリップ12または矩形板などを用いることができる。ただし、直線用ストリップ12と曲線用ストリップ14とは、接続部材を用いて接続することもできる。
【0040】
曲線用ストリップ14を用いて更生管10を形成する際には、先ず、
図6に示すように、曲線用ストリップ14を曲管部100b(
図6では省略)の内面に沿って螺旋状に巻き回して仮製管する。この仮製管は、予め計算した伸縮部36,56の目標拡張幅を考慮して行う。すなわち、螺旋状に巻き回す曲線用ストリップ14の側縁部間には、概ね、ジョイナ16の嵌め込み代に、伸縮部36,56の目標拡張幅を加えた大きさの隙間を設けておくようにする。したがって、仮製管した曲線用ストリップ14の側縁部間の隙間は、曲管部100bの湾曲方向外側Xにおいて幅が大きく、湾曲方向内側Yにおいて幅が小さくなる。
【0041】
曲線用ストリップ14を仮製管すると、続いて、
図7に示すように、曲管部100bの湾曲方向外側Xに位置する曲線用ストリップ14の伸縮部56を幅方向に引き伸ばした拡張状態とする。そして、拡張した伸縮部56に幅保持部材102を嵌め込んでその拡張状態を保持する。
【0042】
具体的に説明すると、湾曲方向外側Xに位置する伸縮部56を拡張する際には、カッタ等の治具を適宜用いて、手作業で溝部58を分割する。たとえば、湾曲方向最外側を中心として約270度の部分において溝部58を分割する。その後、幅方向に溝部58を開きながらフレキシブル部60を伸ばすように変形させることで、伸縮部56を幅方向に拡張させる。溝部58を開く際には、たとえばスナップリングプライヤの先端に爪を設けた専用治具を用いるとよい。伸縮部56を拡張させると、伸縮部56には元の状態に戻ろうとする縮小方向の力が働くので、目標拡張幅に相当する幅を有する幅保持部材102を伸縮部56の溝部58に嵌め込むことで、伸縮部56の拡張状態を保持する。伸縮部56の拡張状態を保持しておくことにより、曲線用ストリップ14の側縁部間の隙間は、ジョイナ16の嵌め込み代に相当する大きさに保持される。したがって、後述するジョイナ16による接続作業が容易となり、更生管10の製管作業をスムーズに行うことができる。
【0043】
幅保持部材102としては、たとえば角棒状の部材が用いられる。幅保持部材102の長さは、たとえば300〜600mmである。また、この実施例では、異なる幅を有する複数種類の幅保持部材102を用意する。そして、曲管部100bの湾曲方向最外側に位置する伸縮部56に最大幅の幅保持部材102を嵌め込み、湾曲方向最外側から離れるに従って、幅を小さくした幅保持部材102を伸縮部56に嵌め込む。これによって、伸縮部56の拡張状態を適切に保持できる。具体例を挙げると、この実施例では、25mm、20mmおよび10mmの幅を有する3種類の幅保持部材102が用意される。そして、湾曲方向最外側に位置する伸縮部56には、25mm幅の幅保持部材102が嵌め込まれ、曲管部100bの上面側および下面側に位置する伸縮部56には、10mm幅の幅保持部材102が嵌め込まれ、その間の曲管部100bの斜め上側および斜め下側に位置する伸縮部56には、20mm幅の幅保持部材102が嵌め込まれる。
【0044】
また、幅保持部材102の高さ(厚み)は、伸縮部56に嵌め込んだときにその一部が基板50の第1主面50aから少し突出する高さに設定されることが好ましく、この実施例では15mmである。このように幅保持部材102を第1主面50aから突出させておくことで、製管作業終了後に伸縮部56から幅保持部材102を取り外し易くなる。
【0045】
また、幅保持部材102の材質は特に限定されないが、ウレタンゴムおよびクロロプレンゴム等の弾性材料に形成されることが好ましい。幅保持部材102を弾性材料によって形成する場合、そのショアA硬度は50以上90以下であることが好ましく、60以上80以下であることがより好ましい。これによって、幅保持部材102は、曲線状に延びる伸縮部56に追従可能な適度な柔軟性と、伸縮部56の拡張状態を保持可能な圧縮強度とを有する。また、後述のように製管機を用いて曲線用ストリップ14の側縁部同士をジョイナ16によって接続する際に、高さ方向(厚み方向)に圧縮可能な適度な柔軟性と形状復元性とを有する。
【0046】
幅保持部材102を伸縮部56に嵌め込むと、続いて、曲線用ストリップ14の側縁部同士をジョイナ16によって接続して製管する。このとき、ジョイナ16の伸縮部36の溝部38は、カッタ等の治具を適宜用いて予め分割しておく。そして、曲線用ストリップ14の第1係合部54とジョイナ16の第2係合部32とを嵌め合わせる際には、曲管部100bの湾曲方向外側Xに配置されるジョイナ16の伸縮部36を幅方向に引き伸ばすようにする。
【0047】
また、曲線用ストリップ14とジョイナ16とを接続する製管作業は、製管機などの嵌合手段(嵌合装置)を用いて、曲線用ストリップ14およびジョイナ16を厚み方向に押圧することによって行う。この際、幅保持部材102が製管作業の障害とならないように、製管機によって幅保持部材102を曲線用ストリップ14の基板50から内面側に突出しない厚さまで圧縮しながら(つまり、伸縮部56内に押し込みつつ)、製管作業を行うとよい。このように、基板50から突出しないように幅保持部材102を圧縮しながら製管することは、上述のような所定硬度の弾性材料によって形成される幅保持部材102を用いることで可能となる。なお、製管後に押圧が解除されると、幅保持部材102は、復元されて基板50の第1主面50aから少し突出する状態に戻る。
【0048】
曲線用ストリップ14をジョイナ16によって接続する製管作業が終了すると、伸縮部56から幅保持部材102を取り外す。取り外した幅保持部材102は、他の施工などに再利用可能である。なお、伸縮部36,56の拡張状態は、曲線用ストリップ14とジョイナ16とが互いに引き合うことで保持される。また、
図8に示すように、幅保持部材102を取り外すことで更生管10の内面側に形成された凹部(伸縮部36,56の内部)には、エポキシ系コーキング材などのパテ104を埋め込んでおくとよい。
【0049】
曲管部100b内への更生管10の形成が終了すると、上述の直線用ストリップ12から曲線用ストリップ14への切り替えと同様に、曲線用ストリップ14から直線用ストリップ12に切り替えて、直線用ストリップ12を用いて後ろ側の直管部100a内に更生管10を形成する。なお、曲線用ストリップ14から直線用ストリップ12への切り替えは、予め計画した伸縮部56の拡張最終箇所の1巻き程度後の位置で行うことが好ましい。
【0050】
既設管100の更生区間の全長に亘って更生管10が形成されると、既設管100の内面と更生管10の外面との間に、セメントミルク系の充填材(裏込材)を注入することによって、既設管100と更生管10とが一体化した複合管を形成する。その後、片付け作業などを適宜実施することによって、既設管100の更生作業が終了する。
【0051】
以上のように、この実施例によれば、伸縮部56を有する曲線用ストリップ14を用いるので、曲管部100bの曲がりが大きい場合にも対応可能となる。また、曲線用ストリップ14を仮製管したときに、伸縮部56に幅保持部材102を嵌め込んでその拡張状態を保持するので、伸縮部56の拡張状態を適切に保持できる。したがって、既設管100の曲管部100bの曲がりが大きい場合でも、曲管部100bを適切に更生できる。
【0052】
なお、上述した直線用ストリップ12、曲線用ストリップ14およびジョイナ16等の具体的構成ないし形状(リブ22,52、係合部24,34,54、伸縮部36,56等)は、単なる一例であり、適宜変更可能である。
【0053】
たとえば、上述の実施例では、曲線用ストリップ14は3つの伸縮部56を有しているが、曲線用ストリップ14に設けられる伸縮部56は少なくとも1つ以上あればよい。また、上述の実施例では、曲線用ストリップ14は、3つの部材を組み合わせることで形成したが、組み合わせる数は任意に変更可能であるし、一体成形された1つの部材としてもよい。
【0054】
さらに、たとえば、上述の実施例では、伸縮部56のフレキシブル部60は、
図5に示すような波形状の断面形状を有しているが、U字状または半円状の断面形状を有していてもよいし、
図9に示すように略ハート状の断面形状を有していてもよい。また、上述の実施例では、伸縮部56は、第2主面50bから突出するU字状の溝部58を備えているが、
図10に示すように、溝部58の代わりに、長手方向に延びる小溝状の切断部62を備えていてもよい。或いは、
図11に示すように、伸縮部56は、溝部58の代わりに、長手方向に延びる貫通部64を備えていてもよい。
【0055】
また、上述の実施例では、伸縮部36を備えるジョイナ16を用いるようにしたが、ジョイナ16は、必ずしも伸縮部36を備える必要はない。また、ジョイナ16が伸縮部36を備える場合でも、曲管部100bの更生において必ずしも伸縮部36を拡張させる必要はない。
【0056】
さらに、上述の実施例では、異なる幅を有する複数種類の幅保持部材102を用意し、湾曲方向最外側から離れるに従って段階的に幅を小さくした幅保持部材102を伸縮部56に嵌め込むようにしたが、徐々に幅が変わる(湾曲方向最外側から離れるに従って徐々に幅小となる)幅保持部材102を用意して、伸縮部56に嵌め込むようにしてもよい。また、一定幅の幅保持部材102を湾曲方向最外側の所定領域に嵌め込むだけでもよい。
【0057】
さらにまた、上述の実施例では、幅保持部材102を伸縮部56に嵌め込んだときに、幅保持部材102の一部が基板50の第1主面50aから少し突出するようにしたが、必ずしも幅保持部材102を第1主面50aから突出させる必要はない。また、幅保持部材102は、製管作業終了後に伸縮部56から必ずしも取り外す必要はない。たとえば、幅保持部材102を第1主面50aから突出しないように伸縮部56内に嵌め込んだままの状態にしておき、適宜、パテ埋め等することもできる。
【0058】
また、上述の実施例では、既設管100の更生区間として曲管部100bの前後に直管部100aを有するものを例示したが、更生区間は、曲管部100bのみで構成されていてもよい。また、更生区間は、曲管部100bから始まるものであってもよいし、曲管部100bで終わるものであってもよい。
【0059】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。