(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プラテン押圧部は、印字時のみ前記プラテンを前記プロテクタに近付く方向に押圧する一方、それ以外の時は該プラテンを該プロテクタから遠ざかる方向に退避させる電動機構を備えている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプリンタ。
【背景技術】
【0002】
この種のプリンタとしては、例えば、銀行等の金融機関で用いられ、冊子状の媒体としての通帳のページ面に対して印字ヘッドによって印字を行うものがある。印字ヘッドとしては、例えば、ドットインパクト式が知られている。ドットインパクト式の印字ヘッドは、一文字または複数文字に対応するマトリクス状に配置された複数のドットワイヤを備え、印字すべき文字に応じたドットワイヤを突出させることにより、インクリボンを媒体のページ面に押し付けて文字を転写するものである。
【0003】
他方、冊子状の媒体としての通帳には、複数枚重ねられた紙の紙面を二等分する中央線に沿って折り畳むことによって冊子状にされたものがある。尚、このような冊子状の媒体の折り目部分は、センターホールドとも呼ばれる。
【0004】
冊子状の媒体としての通帳に印字を行うプリンタは、筐体と、通帳挿入口と、媒体搬送路と、媒体搬送機構と、印字ヘッドと、プロテクタと、プラテンとを有している。
【0005】
通帳挿入口は、筐体に形成され、ページを開いた状態の通帳が挿入される。媒体搬送路は、通帳挿入口から筐体内部に延在している。媒体搬送機構は、搬送ローラ等を備え、媒体搬送路内の通帳を搬送する。印字ヘッドは、媒体搬送路に設けられ、開いた状態の通帳のページ面に印字を行う。プロテクタは、プリンタに挿入された通帳のページ面を臨むように印字ヘッドと一体に設けられている。プラテンは、媒体搬送路を介してプロテクタに対向する位置に、プロテクタとの対向距離を可変に設けられている。プラテンは、例えば、コイルばね等の弾性部材によってプロテクタに近付く向きに付勢されている。これにより、プリンタに挿入された通帳は、プラテンによってプロテクタに対して押圧される。
【0006】
ところで、プリンタに挿入された通帳の特に印字箇所付近のページ間に隙間(空気層)があると、印字すべきページ面が不安定であるため、印字不良や印字品質の低下の虞がある。さらに、印字時に高速で突出する印字ヘッドのドットワイヤによってページが押されてページが振動する。ページの振動は、印字時の騒音の原因となる。これらの不都合を防ぐためには、冊子状の媒体の特に印字箇所付近のページ間に、隙間を生じさせない必要がある。前述した印字ヘッドと一体に設けられたプロテクタと、変位可能なプラテンとから成る構造は、プリンタに挿入された媒体の特に印字箇所付近のページ間に隙間が生じないようにするための媒体保持機構を構成するものである。
【0007】
ところで、前述したように、冊子状の媒体としての通帳は開いた状態でプリンタに挿入されるため、開いたページによって厚さが異なる。例えば、前半のページを開いた状態でプリンタに挿入された通帳は、挿入方向の前半分の厚さが薄い一方、挿入方向の後半分、即ち、センターホールド以降の後半分の厚さが厚い状態となる。反対に、後半のページを開いた状態でプリンタに挿入された通帳は、挿入方向の前半分の厚さが厚い一方、挿入方向の後半分、即ち、センターホールド以降の後半分の厚さが薄い状態となる。
【0008】
このように媒体搬送方向に沿って厚さが変化する媒体に対しても、前述したプロテクタとプラテンとから成る媒体保持機構を有するプリンタであれば、冊子状の媒体の厚さの変化をある程度吸収することができる。
【0009】
この種のプリンタのうち、特に、プロテクタとプラテンとから成る媒体保持機構を有するプリンタは、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0010】
特許文献1に開示されたプリンタは、通帳のページ面における印字すべき行がセンターホールド付近か否かを判断し、印字すべき行が通帳のセンターホールド付近の場合は、センターホールド付近の紙の膨らみが潰れるようにプラテンを印字ヘッドに近付く方向に変位させる制御手段を有している。
【0011】
また、特許文献2に開示されたプリンタは、通帳のページ面のセンターホールド付近に印字を行う際に、通帳が反らないように、リボンガイドの媒体搬送方向における両端が、通帳の厚い部分を逃がし得る形状となっている。
【0012】
さらに、特許文献3に開示されたプリンタは、上下動可能なプラテンと、プラテンを駆動するプラテン駆動手段と、印字ヘッドの先端部分において揺動自在に支持されたプロテクタと、プロテクタを回動させるプロテクタ回動手段とを有している。このプリンタは、通帳の搬送時は、通帳が引っ掛からないようにプロテクタを傾斜させる一方、印字時は、プラテンを上動させると共にプロテクタを媒体搬送路に対して平行にする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明によるプリンタの実施形態を説明する。
【0022】
尚、図中、矢印W(Wl、Wr)、矢印H(Hl、Hu)、矢印D(Df、Dr)はそれぞれ、プリンタの幅方向(左方向、右方向)、高さ(上下)方向(下方向、上方向)、奥行方向(前方向、後ろ方向)を表している。また、後述する通帳の搬送方向は、プリンタの奥行方向Dと平行であり、媒体搬送路の路幅方向は、プリンタの幅方向Wと平行であり、媒体搬送路の路高方向は、プリンタの高さ方向と平行であり、通帳のプリンタへの挿入方向は、プリンタの後ろ方向Drと同じであり、通帳のプリンタからの排出方向は、プリンタの前方向Dfと同じである。
【0023】
まずはじめに、本発明の理解の助けとして、本発明の関連技術について、図面を参照して説明する。
【0024】
[第1の関連技術]
図7を参照すると、特許文献1に開示されたものに似た第1の関連技術としてのプリンタは、通帳Tのページ面における印字すべき行がセンターホールドTc付近か否かを判断し、印字すべき行が通帳TのセンターホールドTc付近の場合は、このセンターホールドTc付近の紙の膨らみが潰れるようにプラテン66を印字ヘッドプロテクタ44に近付く方向(Hu)に変位させる移動手段を有している。
【0025】
しかし、第1の関連技術としてのプリンタは、通帳TのセンターホールドTc付近を印字する際に、プラテン66が上昇すると、厚さが厚い挿入方向Drの後半分のおもて面がプロテクタ44に干渉して通帳Tが反るため、厚さが薄い挿入方向Drの前半分のページ間に空気層が発生し、印字不良、印字品質低下、また、騒音の発生の虞がある。
【0026】
[第2の関連技術]
また、
図8を参照すると、特許文献2に開示されたものに似た第2の関連技術としてのプリンタは、通帳のページ面のセンターホールド付近に印字を行う際に通帳が反らないように、リボンガイドプロテクタ84の、媒体搬送方向(D)における両端が、通帳の厚さが厚い部分を逃がし得る形状841となっている。これにより、印字の際の通帳の反りが発生せず、印字不良、印字品質低下、騒音の発生の防止が期待できる。
【0027】
しかし、第2の関連技術としてのプリンタは、媒体搬送路A内において通帳を搬送する際に、通帳の厚さが厚い部分が、上前搬送ガイド91fや上後搬送ガイド91rに引っ掛かり易く、媒体の搬送に支障を来すという問題がある。
【0028】
[第3の関連技術]
さらに、
図6を参照すると、特許文献3に開示されたものに似た第3の関連技術としてのプリンタは、上下動可能なプラテン106と、プラテン106を駆動するプラテン駆動手段と、印字ヘッド103の先端部分において揺動自在に支持されたプロテクタ104と、プロテクタ104を回動させるプロテクタ回動手段とを有している。このプリンタは、通帳の搬送時は通帳が引っ掛からないようにプロテクタ104を傾斜させる一方、通帳への印字時はプラテン106を上動させると共に、プロテクタ104を媒体搬送路に対して平行にする。
【0029】
しかし、第3の関連技術としてのプリンタは、印字中はプロテクタ104を媒体搬送路に対して平行にしている。また、プロテクタ104の構造上、印字中にプロテクタ104を傾斜させることは不可能である。つまり、特許文献3に開示されたものに似たプリンタは、特許文献1に開示された
図7に示されたプリンタと同様に、通帳のセンターホールド付近を印字する際に、プラテン106が上昇すると、厚さが厚い挿入方向の後半分のおもて面がプロテクタ104に干渉して通帳が反ることになる。このため、厚さが薄い挿入方向の前半分のページ間に空気層が発生し、印字不良、印字品質低下、また、騒音の発生の虞がある。
【0030】
次に、本発明の第1の実施形態、第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
[第1の実施形態]
図4を参照すると、本発明の第1の実施形態によるプリンタは、筐体20と、筐体20の前面に形成された通帳挿入口21と、媒体搬送路Aと、媒体搬送機構(一部のみ図示)と、印字ヘッド3と、プロテクタ4と、プラテン6と、プラテン押圧部(図示せず)とを有している。尚、本プリンタは、キャリア、媒体検出部、プロテクタ態勢切替部等(いずれも後述する)をも有しているが、
図4においては、図示を省略している。
【0032】
尚、本プリンタは、冊子状の媒体としての通帳に加え、単葉の媒体としての伝票等をも搬送ならびに印字可能に構成されている。
図4中、符号22は、伝票挿入口を示している。符号23は、伝票専用の媒体搬送路と通帳および伝票に共通の媒体搬送路Aとの合流点を示している。
【0033】
媒体搬送路Aは、媒体搬送路Aは、筐体20内に設けられており、通帳の幅に対応した路幅方向(W)および挿入され得る最大の厚さの通帳に対応した路高方向(H)を有すると共に、搬送方向(D)に延在している。より具体的には、媒体搬送路Aは、下前搬送ガイド11fおよび上前搬送ガイド12fと、下後搬送ガイド11rおよび上後搬送ガイド12rとにより、路高方向(H)が規定されている。
【0034】
媒体搬送機構は、複数の搬送ローラ9、複数の押圧ローラ10を含み、媒体搬送路A内にて、冊子状の媒体としての通帳Tを、そのセンターホールドを路幅方向(W)に平行にし、かつ、ページを開いた状態で、搬送する。
【0035】
さらに
図5〜
図7をも参照すると、印字ヘッド3は、ドットインパクト型であり、媒体搬送路Aの路高方向(H)の側方に設けられ、媒体搬送路A内の通帳Tのページ面に印字を行う。
【0036】
プロテクタ4は、印字ヘッド3の先端部の周囲に設けられ、路幅方向(W)に平行な中心軸5を中心として揺動可能であり、さらに、媒体搬送路Aを臨むプロテクタ先端面を備えている。
【0037】
プラテン6は、媒体搬送路Aを介してプロテクタ4に対向するように設けられ、路高方向(H)に変位可能であり、搬送方向(D)および路幅方向(W)に平行なプラテン先端面6aを備えている。
【0038】
プラテン押圧部は、少なくとも印字時にプラテン6をプロテクタ4に近付く方向に押圧する。
【0039】
本プリンタにおいては特に、プロテクタ4が中心軸5を中心として揺動可能であることに加え、そのプロテクタ先端面は、中心軸5に沿った稜線からそれぞれ媒体搬送路Aから遠ざかるように傾斜した対の斜面4a1および4a2を含んでいる。
【0040】
尚、プロテクタ先端面の稜線には、R付けが施されている。このR付けの半径は、通帳Tの先端が引っ掛かることがない反面、後述するように対の斜面4a1および4a2の一方が媒体搬送路Aに対して平行の態勢となったときに、この平行な領域が可及的広面積となるような寸法となっている。
【0041】
本プリンタはさらに、媒体検出部(図示せず)と、プロテクタ態勢切替部(一部のみ図示している)とを有している。
【0042】
媒体検出部は、通帳Tの搬送方向がどちら向きであるかと、媒体搬送路A内の通帳Tのセンターホールドを介した両側の厚さの大小とを検出する。前者の検出には、プリンタの動作全般を制御する制御部からの信号を検出するか、あるいは、媒体搬送機構からの信号を検出すればよい。後者の検出には、リードスイッチ等の機械的構成か、あるいは、光学センサや画像処理を用いたものであってもよい。
【0043】
プロテクタ態勢切替部は、電気モータまたは電磁石等の電動機構(図示せず)と、リンク7と、ロッド8とを備え、媒体検出部の検出結果に基づいて、プロテクタ4の揺動方向における態勢を切り替える。
【0044】
プロテクタ態勢切替部は、媒体検出部の検出結果に基づいて、プロテクタ4の態勢を、以下の(1)かつ(2)のように切り替える。
【0045】
(1)通帳Tの搬送時に、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、搬送方向(DrまたはDf)の上流側の斜面が開くように、プロテクタ4の態勢を切り替える。
(2)印字時に印字ヘッド3が通帳Tの厚さが薄い側に位置している時に、プロテクタ4の対の斜面のうち、通帳Tの厚さが厚い側を臨む側の斜面が開き、かつ、反対側の斜面が搬送方向(D)に平行となるように、プロテクタ4の態勢を切り替える。
【0046】
本プリンタはさらにまた、印字ヘッド3を搭載し、ガイドシャフト2に沿って路幅方向(W)に移動可能なキャリア1を有している。プロテクタ4は、中心軸5を中心として揺動可能な状態でキャリア1に搭載されている。プロテクタ態勢切替部は、少なくとも、プロテクタ4に機械的に接続した部分がキャリア1に搭載されている。
【0047】
さらに、本プリンタにおいて、プラテン押圧部は、電気モータまたは電磁石等の電動機構(図示せず)を備え、印字時のみプラテン6をプロテクタ4に近付く方向に押圧する一方、それ以外の時はプラテン6をプロテクタ4から遠ざかる方向に退避させる。あるいは、プラテン押圧部は、プラテン6をプロテクタ4に近付く方向に付勢するバネ部材から成っていてもよい。
【0048】
尚、プロテクタ先端面の対の斜面4a1および4a2は、中心軸5に沿った稜線に関して対称形状を呈している。対の斜面4a1および4a2間の頂角は、一方の斜面が媒体搬送路Aに対して平行である時に他方の斜面の開き角度が最大厚さの通帳Tを避け得る角度となっている。
【0049】
また、プラテン先端面6aは、搬送方向(D)の両端が媒体搬送路Aから遠ざかる方向に、平面状または曲面状の面取りが施されている。この形状は特に、プラテン押圧部がプラテン6を付勢するバネ部材から成る場合には、必要である。
【0050】
次に、本プリンタの動作について、さらに
図8〜
図10をも参照して説明する。
【0051】
図8〜
図10は通帳を搬送および印字する際の実施例である。
【0052】
図8は、本プリンタに対し、通帳Tが、挿入方向Drにおける前半分の厚さが薄く(
図8中、符号Tnを付している)、センターホールドTcを介した後半分の厚さが厚い(
図8中、符号Tkを付している)状態で挿入された後、薄い前半分のページ面のうちの特にセンターホールドTc付近に印字を行う場面を表している。
【0053】
通帳挿入口21(
図4)から挿入された通帳Tは、搬送ローラ9と押圧ローラ10とによってクランプされ、搬送方向(Dr)に搬送される。
【0054】
媒体検出部は、通帳Tの搬送方向がどちら向きであるのかを検出し、この検出結果に基づいて、プロテクタ態勢切替部は、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、搬送方向の上流側の斜面4a1が開くように、プロテクタ4の態勢を切り替える。これにより、通帳Tがプロテクタ4に引っ掛かることがない。
【0055】
続いて、ページ面の印字すべき箇所(行)、即ち、薄い前半分のページ面のうちの特にセンターホールドTc付近が印字ヘッド3の直下に到達すると、搬送が停止される。
【0056】
媒体検出部は、印字時に印字ヘッド3が通帳Tの厚さが薄い側(Tn)に位置していることを検出し、この検出結果に基づいて、プロテクタ態勢切替部は、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、通帳Tの厚さが厚い側(Tk)を臨む側の斜面4a1が開き、かつ、反対側の斜面4a2が搬送方向(D)に平行となるように、プロテクタ4の態勢を切り替える。ただし、前工程にて既に、プロテクタ4はその態勢となっているため、この態勢が維持される。
【0057】
続いて、プラテン押圧部に駆動されてプラテン6が上方向Huに上昇し、
図8に示された状態となり、印字ヘッド3によって印字が行われる。このとき、斜面4a2が搬送方向(D)に平行となっているため、通帳Tの印字箇所付近がプロテクタ4の斜面4a2とプラテン6のプラテン先端面6aとによって保持される。併せて、斜面4a1が開いているため、通帳Tの厚さが厚い側(Tk)がプロテクタ4に干渉することがない。よって、印字箇所のページ間に空気層が形成されることがなく、正常な印字が行われると共に、不要な騒音が発生することがない。
【0058】
図8の状態から、プラテン押圧部に駆動されてプラテン6が下方向Hlに下降し、通帳Tは、搬送ローラ9と押圧ローラ10とによって搬送方向(Dr)にさらに搬送される。
【0059】
続いて、ページ面の次に印字すべき箇所(行)、即ち、厚い後半分のページ面が印字ヘッド3の直下に到達すると、搬送が停止され、プラテン押圧部に駆動されてプラテン6が上方向Huに上昇し、印字ヘッド3によって印字が行われる。印字が終了すると、プラテン押圧部に駆動されてプラテン6が再び下方向Hlに下降する。
【0060】
図9は、厚い後半分のページ面に印字を行った後に、通帳Tを本プリンタから排出すべく搬送方向(Df)に搬送する場面を表している。
【0061】
通帳Tへの全ての印字が終了して通帳Tをプリンタから排出するのに際し、媒体検出部は、通帳Tの搬送方向がどちら向きであるかを検出し、この検出結果に基づいて、プロテクタ態勢切替部は、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、搬送方向Dfの上流側の斜面4a2が開くように、リンク7を矢印S方向に回動させ、プロテクタ4の態勢を切り替える。これにより、通帳Tがプロテクタ4に引っ掛かることがない。
【0062】
通帳Tは、搬送ローラ9と押圧ローラ10とによって搬送方向(Df)に搬送され、通帳挿入口21(
図4)から排出される。
【0063】
図10は、本プリンタに対し、通帳Tが、挿入方向Drにおける前半分の厚さが厚く(
図10中、符号Tkを付している)、センターホールドTcを介した後半分の厚さが薄い(
図10中、符号Tnを付している)状態で挿入された後、薄い後半分のページ面のうちの特にセンターホールドTc付近に印字を行う場面を表している。
【0064】
図示はしないが、通帳挿入口21(
図4)から挿入された通帳Tは、搬送ローラ9と押圧ローラ10とによってクランプされ、搬送方向(Dr)に搬送される。
【0065】
媒体検出部は、通帳Tの搬送方向がどちら向きであるのかを検出し、この検出結果に基づいて、プロテクタ態勢切替部は、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、搬送方向の上流側の斜面4a1が開くように、プロテクタ4の態勢を切り替える。これにより、通帳Tがプロテクタ4に引っ掛かることがない。
【0066】
続いて、ページ面の印字すべき箇所(行)、即ち、薄い後半分のページ面のうちの特にセンターホールドTc付近が印字ヘッド3の直下に到達すると、搬送が停止される。
【0067】
媒体検出部は、印字時に印字ヘッド3が通帳Tの厚さが薄い側(Tn)に位置していることを検出し、この検出結果に基づいて、プロテクタ態勢切替部は、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、通帳Tの厚さが厚い側(Tk)を臨む側の斜面4a2が開き、かつ、反対側の斜面4a1が搬送方向(D)に平行となるように、
図10に示されるようにリンク7を矢印S方向に回動させ、プロテクタ4の態勢を切り替える。
【0068】
続いて、プラテン押圧部に駆動されてプラテン6が上方向Huに上昇し、
図10に示された状態となり、印字ヘッド3によって印字が行われる。このとき、斜面4a1が搬送方向(D)に平行となっているため、通帳Tの印字箇所付近がプロテクタ4の斜面4a1とプラテン6のプラテン先端面6aとによって保持される。併せて、斜面4a2が開いているため、通帳Tの厚さが厚い側(Tk)がプロテクタ4に干渉することがない。よって、印字箇所のページ間に空気層が形成されることがなく、正常な印字が行われると共に、不要な騒音が発生することがない。
【0069】
印字が終了すると、プラテン押圧部に駆動されてプラテン6が再び下方向Hlに下降する。
【0070】
通帳Tへの全ての印字が終了して通帳Tをプリンタから排出するのに際し、媒体検出部は、通帳Tの搬送方向がどちら向きであるかを検出し、この検出結果に基づいて、プロテクタ態勢切替部は、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、搬送方向Dfの上流側の斜面4a2が開くように、リンク7を矢印S方向に回動させ、プロテクタ4の態勢を切り替える。ただし、前工程にて既に、プロテクタ4はその態勢となっているため、この態勢が維持される。これにより、通帳Tがプロテクタ4に引っ掛かることがない。
【0071】
通帳Tは、搬送ローラ9と押圧ローラ10とによって搬送方向(Df)に搬送され、通帳挿入口21(
図4)から排出される。
【0072】
本実施形態によれば、印字時に冊子状の媒体のページ間に空気層が発生することを防止できると共に、媒体を支えることなく搬送することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、プロテクタの態勢切替を、第1の実施形態のような媒体検出部およびプロテクタ態勢切替部によって行わず、搬送される媒体としての通帳からの力やプラテンからの押圧力によって、いわば受動的に行われる点が、第1の実施形態とは異なる。それ以外の点については、第1の実施形態と同じか同様であるため、図面をも含め、第1の実施形態の説明を援用することとし、詳細な説明は省略する。
【0074】
図4を参照すると、本発明の第2の実施形態によるプリンタは、第1の実施形態と同様に、筐体20と、媒体搬送路Aと、媒体搬送機構と、印字ヘッド3と、プロテクタ4と、プラテン6と、プラテン押圧部(図示せず)とを有している。尚、本プリンタは、キャリアをも有しているが、
図4においては、図示を省略している。
【0075】
尚、本プリンタは、冊子状の媒体としての通帳に加え、単葉の媒体としての伝票等をも搬送ならびに印字可能に構成されている。
【0076】
媒体搬送路Aは、媒体搬送路Aは、筐体20内に設けられており、通帳の幅に対応した路幅方向(W)および挿入され得る最大の厚さの通帳に対応した路高方向(H)を有すると共に、搬送方向(D)に延在している。
【0077】
媒体搬送機構は、複数の搬送ローラ9、複数の押圧ローラ10を含み、媒体搬送路A内にて、冊子状の媒体としての通帳Tを、そのセンターホールドを路幅方向(W)に平行にし、かつ、ページを開いた状態で、搬送する。
【0078】
さらに
図11をも参照すると、プロテクタ4は、印字ヘッド3の先端部の周囲に設けられ、路幅方向(W)に平行な中心軸5を中心として揺動可能であり、さらに、媒体搬送路Aを臨むプロテクタ先端面を備えている。
【0079】
プラテン6は、媒体搬送路Aを介してプロテクタ4に対向するように設けられ、路高方向(H)に変位可能であり、搬送方向(D)および路幅方向(W)に平行なプラテン先端面6aを備えている。
【0080】
プラテン押圧部は、少なくとも印字時にプラテン6をプロテクタ4に近付く方向に押圧する。
【0081】
本プリンタにおいても、第1の実施形態と同様に、プロテクタ4が中心軸5を中心として揺動可能であることに加え、そのプロテクタ先端面は、中心軸5に沿った稜線からそれぞれ媒体搬送路Aから遠ざかるように傾斜した対の斜面4a1および4a2を含んでいる。プロテクタ先端面の稜線には、R付けが施されている。
【0082】
プロテクタ4は、以下の(1)かつ(2)のように、受動的に切り替わる。
【0083】
(1)通帳Tの搬送時は、プロテクタ4の対の斜面4a1および4a2のうち、搬送される通帳Tによって押し広げられることにより、通帳Tの搬送方向(DrまたはDf)の上流側の斜面が受動的に開き、プロテクタ4の態勢が切り替わる。
(2)印字時に印字ヘッド3が通帳Tの厚さが薄い側に位置している時に、プロテクタ4の対の斜面のうち、通帳Tの厚さが厚い側を臨む側の斜面が通帳Tの厚さが厚い側に押し広げられることにより開き、かつ、反対側の斜面が、通帳Tを介したプラテン6からの押圧力により、搬送方向(D)に平行となるように、プロテクタ4の態勢が切り替わる。
【0084】
本実施形態によれば、印字時に冊子状の媒体のページ間に空気層が発生することを防止できると共に、媒体を支えることなく搬送することができるという第1の実施形態と同じ作用効果に加え、構造が簡素であるため、低コストに製造でき、省エネルギであり、また、耐久性の向上も期待できる。
【0085】
尚、第1および第2の実施形態では言及していないが、本プリンタは、冊子状の媒体としての通帳のページを自動的にめくるページ送り機構をさらに有していてもよい。
【0086】
また、本プリンタは、スタンドアローンに構成されるだけでなく、現金自動預け支払い機にプリンタユニットとして搭載される形態であってよい。
【0087】
尚、本発明によるプリンタにおいては、プロテクタとプラテンとの挟み込みによる冊子状の媒体の保持に関し、厳密に云えば、搬送方向における印字ヘッドを中心とした一方の側のみが挟み込まれ、他方の側は挟み込みがなされていない。しかし、発明者等による実機実験によれば、実用上十分な保持作用がなされ、印字箇所のページ間に、問題となるような空気層は形成されないことが確認されている。