特許第6826369号(P6826369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6826369-接続端子の固定構造及び回路モジュール 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826369
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】接続端子の固定構造及び回路モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/51 20110101AFI20210121BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   H01R12/51
   H01R4/34
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-36883(P2016-36883)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-157294(P2017-157294A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月25日
【審判番号】不服2020-3603(P2020-3603/J1)
【審判請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆一
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 内田 博之
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−85084(JP,U)
【文献】 実開昭50−41085(JP,U)
【文献】 実開平1−143073(JP,U)
【文献】 実開昭58−152780(JP,U)
【文献】 特開平11−339873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/51 , H01R 4/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に設けられた接続端子をプリント基板に固定する接続端子の固定構造であって、
前記接続端子は、該接続端子を前記プリント基板に螺設する締結部材が挿通される挿通孔が形成された接続部と、前記電線の端部が圧着接続される圧着部と、を有し、
前記プリント基板に前記圧着部が嵌設される長穴が、貫通形成され
前記電線は、前記長穴に嵌設されている圧着部から、前記プリント基板の前記接続端子が螺設された面と反対側の面に配設される
ことを特徴とする接続端子の固定構造。
【請求項2】
請求項に記載の接続端子の固定構造を有するプリント基板を備えた、回路モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に接続される接続端子の固定構造及び回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板に電線(ワイヤ)を接続する場合、電線の端部に接続端子を設け、この接続端子がねじなどによりプリント基板に固定される。接続端子は、例えば、中央部分にねじが挿通される挿通孔が形成された板状の接続部と、電線の端部に圧着接続される圧着部と、を備える(例えば、特許文献1)。
【0003】
プリント基板に直接接続端子を設ける場合、一般的に、接続端子の圧着部が配線パターンに干渉しないように、プリント基板の配線パターンが設けられた面と反対側の面に圧着部を配置してプリント基板に接続端子が接続される(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、プリント基板に取付ボスを設け、この取付ボスに接続端子を接続すると、接続端子の圧着部がプリント基板に干渉することなく、プリント基板に接続端子を接続することができる(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−93263号公報
【特許文献2】特開平11−68306号公報
【特許文献3】特開2002−50417号公報
【特許文献4】特開2011−65894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外力等によって接続端子が回転すると、接続端子の接続信頼性が低下するおそれや、圧着部が異電位の配線パターンなどと接触して短絡に至るおそれがある。
【0007】
例えば、アース端子を固定台に固定する場合には、固定台にアース端子が内嵌する端子収容凹部が形成され、端子収容凹部にアース端子を嵌合してアース端子の位置決めが行われる。しかし、プリント基板は、厚さが1.0mm〜2.0mm程度の平面板状であるので、プリント基板に接続端子の嵌合部を形成することは困難である。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、プリント基板と電線とを接続する接続端子の回転を防止し、以てプリント基板の信頼性の向上に寄与する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の接続端子の固定構造の一態様は、電線の端部に設けられた接続端子をプリント基板に固定する接続端子の固定構造であって、前記接続端子は、該接続端子を前記プリント基板に螺設する締結部材が挿通される挿通孔が形成された接続部と、前記電線の端部が圧着接続される圧着部と、を有し、前記プリント基板に前記圧着部が嵌設される長穴が形成されたことを特徴としている。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明の回路モジュールは、上記の接続端子の固定構造を有するプリント基板を備えている。
【発明の効果】
【0011】
以上の発明によれば、プリント基板と電線とを接続する接続端子の回転を防止し、プリント基板の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る接続端子の固定構造を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る接続端子の固定構造を示す図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る接続端子の固定構造及び回路モジュールについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る接続端子1a,1bの固定構造は、プリント基板2に、接続端子1aを介して電線3aを接続し、接続端子1bを介して電線3bを接続するものである。
【0015】
接続端子1aは、プリント基板2に接続される扁平な板状の接続部4aと、接続部4aに連接された円筒状の圧着部5aと、を備える。接続部4aの中央部には、挿通孔(図示せず)が形成され、この挿通孔には、接続端子1aをプリント基板2に螺設するねじ6aが挿通される。また、圧着部5aは、電線3aの端部が嵌挿された状態で圧着され、圧着部5aに電線3aが圧着接続される。同様に、接続端子1bは、ねじ6bが挿通される挿通孔が形成された扁平な板状の接続部4bと、電線3bの端部が嵌挿された状態で圧着される圧着部5bと、を備える。なお、図1では、圧着部5a,5bの幅は、電線3a,3bの幅とほぼ同じであるが、圧着部5a,5bの幅は、電線3a,3bの幅よりも細い場合や太い場合がある。
【0016】
プリント基板2上には、配線パターン2a,2bが形成される。また、プリント基板2には、ねじ6a,6bが螺着される接続用スルーホール7a,7bが形成される。プリント基板2の接続用スルーホール7aの近傍には、接続端子1aの圧着部5aが嵌設される長穴8aが形成される。同様に、プリント基板2の接続用スルーホール7bの近傍には、接続端子1bの圧着部5bが嵌設される長穴8bが形成される。なお、接続用スルーホール7a乃至7cの穴壁面は必要に応じて銅めっきが施されるが、銅めっきは必ずしも必要なものではない。また、プリント基板2には、コンデンサなどの電子部品9が設けられ、これら電子部品9と配線パターン2a,2bにより回路モジュールが構成されることとなる。
【0017】
長穴8aは、接続用スルーホール7aに接続された接続端子1aの圧着部5aが配置される箇所に、プリント基板2を貫通して形成される。長穴8aの幅(短軸の長さ)は、圧着部5aや電線3aの幅よりも大きく形成される。したがって、長穴8aの幅は、圧着部5aが嵌合または挿通可能かつ、電線3aの直径(幅)よりも大きい形状に形成される。また、長穴8aの長さ(長軸の長さ)は、少なくとも、プリント基板2の接続端子1aを螺設した面側に電線3aを折り曲げた場合に、プリント基板2と電線3aとが干渉しない程度に収まる大きさに形成される。具体的には、長穴8aの長さは、圧着部5aの長さと、圧着部5aに接続された電線3aの最小曲げ半径と、の和以上となるように形成されることが好ましい。長穴8bの幅及び長さも同様である。
【0018】
プリント基板2に電線3aを配設する場合、接続端子1aの圧着部5aに電線3aの端部が嵌挿された状態で圧着部5aを圧着して、電線3aの端部に接続端子1aを圧着接続する。そして、圧着部5aの凸部(すなわち、電線3aの端部を圧着した部分であって、接続部4aから延在する圧着部5aの平坦面から突出した部分)がプリント基板2側に向けられ、圧着部5aがプリント基板2の長穴8aに嵌設される。さらに、圧着部5aを長穴8aに嵌設させた状態で、接続端子1aの接続部4aに形成された挿通孔にねじ6aを挿通した後、ねじ6aをプリント基板2の接続用スルーホール7aに螺着する。このようにして、プリント基板2に接続端子1aが固定され、配線パターン2aと接続端子1a(すなわち、電線3a)が同電位となる。同様に、配線パターン2bと接続端子1bとが同電位となるように、ねじ6bによりプリント基板2上に接続端子1b(すなわち、電線3b)が螺設される。なお、電線3a,3bは、プリント基板2の接続端子1a,1bを螺設した面及び接続端子1a,1bを螺設した面と反対側の面のいずれに配設することもできる。
【0019】
以上のような、本発明の実施形態に係る接続端子1a,1bの固定構造によれば、圧着部5a,5bを長穴8a,8bに嵌設させることで、接続端子1a,1bを所定の位置に固定できるようになる。このように、接続端子1a,1bを、回転せず所望の位置に固定することで、接続端子1a,1bの圧着部5a,5bが異電位の配線パターン2a,2bや電子部品9などと短絡することが防止され、プリント基板2の信頼性が向上する。また、ねじ6a,6bの締め付け時にも接続端子1a,1bの確実な位置決めができるとともに、接続端子1a,1bの回転を防止できる。
【0020】
このように、接続端子1a,1bの回転を防止し、かつ接続端子1a,1bの位置決めを確実とすることで、接続端子1a,1bの圧着部5a,5bと周囲(配線パターン2a,2bや電子部品9など)との沿面距離L1〜L4が組み立て方によらず一定に保たれる。それにより、異電位の配線パターン2a,2bや電子部品9などの距離も最小限の沿面距離を確保すればよく、必要な電流に対して十分な配線パターン幅を確保でき、電子部品9同士の間隔も最小限に詰めることができる。その結果、プリント基板2の信頼性と小型化を両立することができる。
【0021】
さらに、プリント基板2に長穴8a,8bを形成するだけなので、プリント基板2の加工が容易である。つまり、一般的なプリント基板は、製造上の制約により、1.0mm〜2.0mm程度の薄い板状であるので、プリント基板に対する外形加工は、穴を開ける、切り落とすなどの平面的な加工に限られ、一部を窪ませるような厚み方向の加工を行うことが困難である。そこで、本発明の接続端子1a,1bの固定構造では、接続端子1a,1bの圧着部5a,5bが嵌設される長穴8a,8bをプリント基板2に形成する簡単な加工で、接続端子1a,1bの回転防止及び位置決めを確実にすることができる。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る接続端子1a,1bの固定構造は、インバータやコンバータなどの回路構成を有する回路モジュールに適用することで、接続端子1a,1bの回転による短絡が防止され、回路モジュールの信頼性を向上することができる。
【0023】
また、接続用スルーホール7a,7bの周囲に背が高い電子部品9があっても、プリント基板2の長穴8a,8bを通してプリント基板2の電子部品9が設けられていない面(すなわち、プリント基板2の裏面)に電線3a,3bを配置することができる。その結果、電線3a,3bの取り回しが楽になり、電線3a,3bの長さも短くすることができる。
【0024】
例えば、図2に示すように、IGBTモジュールのような発熱モジュール10とプリント基板2とは、金属スペーサ11を介して設けられる。つまり、発熱モジュール10とプリント基板2との間に空間距離を設けることで、発熱モジュール10からの熱がプリント基板2に伝わりにくいように設計される。このように発熱モジュール10と離間して配置されたプリント基板2では、プリント基板2の裏面側に十分な空間が存在しており、圧着部5a,5bから延伸する電線3a,3bをプリント基板2の裏面に配置することが可能となる。電子部品9が実装されているプリント基板2面に電線3a,3bを配置する場合と比較して、何も実装されていないプリント基板2の裏面に電線3a,3bを配置する場合の方が、電線3a,3bの長さを短くすることができ、伝播遅延時間を短くすることができる。
【0025】
なお、本発明の実施形態の説明では、本発明の好ましい態様を示して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において適宜設計変更が可能である。
【0026】
例えば、本発明の接続端子の固定構造は、基板上に形成される配線パターンが片面でも両面でも適用することができる。一般的に基板の片面に配線パターンが形成されている場合は、部品搭載側と反対の面に配線パターンが形成される。なお、実施形態のプリント基板2では、プリント基板2上に基板表面と基板裏面とで同じ配線パターンが形成されており、2重の配線パターンにして電流が流せられるようにパターン幅を大きくしている。
【符号の説明】
【0027】
1a,1b…接続端子
2…プリント基板
2a,2b…配線パターン
3a,3b…電線
4a,4b…接続部
5a,5b…圧着部
6a,6b…ねじ
7a,7b,7c…接続用スルーホール
8a,8b…長穴
9…電子部品
10…発熱モジュール
11…金属スペーサ
図1
図2