(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826384
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】留め具
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20210121BHJP
【FI】
F16B19/00 E
F16B19/00 N
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-130092(P2016-130092)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-3935(P2018-3935A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】名島 正浩
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−303309(JP,A)
【文献】
特開2013−096519(JP,A)
【文献】
特開2014−105795(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0086704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材の取付孔に取り付けられる留め具であって、
フランジ状の頭部と、
前記頭部から軸方向に沿って延出する複数の壁部と、
取付孔の裏縁に係止するための係止部を有し、軸方向に沿って延びる複数の脚部と、を備え、
複数の前記脚部および複数の前記壁部は、周方向に交互に配置され、
前記頭部側に位置する前記脚部の先端は、前記頭部から離れており、
前記頭部側と反対に位置する前記脚部の基端側は、隣合う前記壁部の一方に連結され、前記脚部の先端側は、隣合う前記壁部の他方に連結されることを特徴とする留め具。
【請求項2】
前記壁部の他方と前記脚部の先端側とを連結し、前記壁部の他方から傾斜して延出する連結部を備えることを特徴とする請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
複数の前記壁部は、
前記脚部の基端側に連結される一対の第1壁部と、
前記脚部の先端側に連結され、一対の前記第1壁部と周方向に交互に配置される一対の第2壁部と、を有し、
前記第1壁部は、前記第2壁部より前記頭部から離れる方向に延在することを特徴とする請求項1に記載の留め具。
【請求項4】
前記第2壁部の一部と前記第1壁部との間にスリットが形成されることを特徴とする請求項3に記載の留め具。
【請求項5】
前記頭部は、取付孔より径方向外側の位置で突出し、前記壁部に連設する突部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材の取付孔に留めるための留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体パネルに内装パネルや飾り材などを取り付ける場合に、留め具が用いられる(特許文献1参照)。特許文献1に開示されるトリムクリップは、頭部と、頭部の下面から垂設される軸芯部と、軸芯部に併設される複数の弾性係止片とを備える。このトリムクリップの軸芯部は、断面十字形をなす柱状に形成され、4つの弾性係止片は、軸芯部の突片の間にそれぞれ配置される。弾性係止片の上端部は、頭部の下面に接合され、弾性係止片の下端部は、軸芯部に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−303309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術では、弾性係止片の上端部が頭部の下面に接合されているため、弾性係止片を取付孔から引き抜く際の損傷を抑えられるものの、弾性係止片が撓みづらくなって取付孔への挿入抵抗が大きくなる。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付孔への挿入抵抗を低減しつつ、取付孔から引き抜く際の損傷を抑えることができる留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の留め具は、被取付部材の取付孔に取り付けられる留め具であって、フランジ状の頭部と、頭部から軸方向に沿って延出する複数の壁部と、取付孔の裏縁に係止するための係止部を有し、軸方向に沿って延びる複数の脚部と、を備える。複数の脚部および複数の壁部は、周方向に交互に配置され、頭部側に位置する脚部の先端は、頭部から離れており、頭部側と反対に位置する脚部の基端側は、隣合う壁部の一方に連結され、脚部の先端側は、隣合う壁部の他方に連結される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、取付孔への挿入抵抗を低減しつつ、取付孔から引き抜く際の損傷を抑えることができる留め具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、留め具の斜視図であって、異なる方向から見た図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、留め具の側面図であって、異なる方向から見た図である。
【
図3】
図2(a)に示す留め具のA−A断面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図2(a)に示す留め具のB−B断面図であり、
図4(b)は、
図2(a)に示す留め具のC−C断面図である。
【
図5】
図2(a)に示す留め具のD−D断面図である。
【
図6】
図2(a)に示す留め具のE−E断面図である。
【
図7】
図7(a)は、
図2(b)に示す留め具のF−F断面図であり、
図7(b)は、
図2(a)に示す留め具のG−G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(a)および
図1(b)は、留め具10の斜視図であって、異なる方向から見た図である。また、
図2(a)および
図2(b)は、留め具10の側面図であって、異なる方向から見た図である。
【0010】
留め具10は、取付部材を被取付部材に取り付けるため、または被取付部材に留めるために用いられる。例えば、留め具10は、車体パネルに内装パネルを取り付けるため、内装パネルに飾り部品を取り付けるため等に使用される。
【0011】
留め具10は、フランジ状の頭部26と、頭部26の裏面から延出する複数の第1壁部30および第2壁部32と、パネルの取付孔に挿入される複数の脚部34と、第2壁部32と連結部36を連結する連結部36と、を備える。
【0012】
頭部26は、第1取付部20、第2取付部22およびフランジ部24を有する。第1取付部20および第2取付部22は、円板状にそれぞれ形成され、軸方向に対向する。第1取付部20は、内装パネルの取付孔に挿入され、第2取付部22とともに内装パネルの孔縁を挟持する。フランジ部24は、傘状に形成され、取付状態で車体パネルの表面に引っかかる。
【0013】
第1壁部30は、フランジ部24の裏面から垂下するように延び、第2壁部32は、フランジ部24の裏面から垂下するように延びる。第1壁部30および第2壁部32は、フランジ部24の裏面に軸方向に沿って垂設される。第1壁部30は、複数の脚部34を支持する。第1壁部30および第2壁部32は、車体パネルの取付孔の挿入ガイドとして機能し、また取付後に留め具10の動きを制限する。
【0014】
複数の脚部34は、第1壁部30から屈曲して頭部26側のフランジ部24に向かって軸方向に沿って延びる。脚部34の先端は、頭部26のフランジ部24の裏面から離れており、フランジ部24に連結する場合と比べて脚部34は撓みやすく構成されている。複数の脚部34は、第1壁部30を挟んで一対ずつ形成される。脚部34は、先端側に係止部40を有する。係止部40は、テーパ状に形成され、車体パネルの取付孔の裏縁に係止する。
【0015】
連結部36は、
図2(a)に示すように第2壁部32から延出して脚部34の先端側に連結する。
図2(b)に示すように脚部34の先端側は、第1壁部30には連結されていない。連結部36により、脚部34の剛性を確保して、車体パネルから脚部34を引き抜く際に、脚部34が損傷しづらくなるように構成できる。これにより、内装パネルを車体パネルから繰り返し着脱することが可能となる。
【0016】
複数の突部38は、フランジ部24の裏面から突出し、第1壁部30および第2壁部32の径方向外側に連設する。突部38は、車体パネルの取付孔より径方向外側に位置する。これにより、脚部34を車体パネルの取付孔に挿入する際に、過剰に取付孔に押し込んでも突部38が取付孔の表縁に当接し、脚部34の先端が取付孔を通り抜けて、車体パネルの裏面に落ち込むことを制限できる。また、突部38を第1壁部30および第2壁部32に連設することで、容易に成形できる。
【0017】
なお、以下では、第1壁部30および第2壁部32がフランジ部24から垂下する方向を軸方向といい、頭部26が軸中心から張り出す方向を径方向という。
【0018】
図3は、
図2(a)に示す留め具10のA−A断面図である。
図4(a)は、
図2(a)に示す留め具10のB−B断面図であり、
図4(b)は、
図2(a)に示す留め具10のC−C断面図である。
図3および
図4(a)に示すように、第1壁部30および第2壁部32は、軸中心から径方向外向きに張り出し、断面が十字形状になるように形成されている。なお、
図3に示すように、第2壁部32と第1壁部30の一部にはスリット42が形成されている。
【0019】
軸中心29から径方向外向きに張り出す一対の第1壁部30と第2壁部32は、周方向に交互に配置される。複数の壁部30、32は、軸中心29からそれぞれ一対ずつ径方向外向きに張り出しており、その間に脚部34がそれぞれ配置される。また、複数の壁部30、32および複数の脚部34は、周方向に交互に配置される。取付状態の留め具10に対して車体パネルの表面に沿う方向への力が作用した場合に、第1壁部30および第2壁部32は、車体パネルの取付孔の縁に当接して、係止部40の係止が外れることを抑える。
【0020】
複数の脚部34は、
図4(a)に示すように、第1壁部30から延出しており、脚部34の基端側は第1壁部30に連結する。脚部34は、基端側で第1壁部30から第1壁部30の面直方向に張り出す張出部34aを有する。一方で、複数の脚部34の先端側は、
図4(b)に示すように、連結部36を介して第2壁部32にも連結する。つまり、脚部34の基端側は、隣合う壁部30、32の一方の第1壁部30に基端側の張出部34aで連結され、脚部34の先端側は、隣合う壁部30、32の他方の第2壁部32に先端側の連結部36で連結される。
【0021】
これにより、脚部34を基端側と先端側で支持できるため、車体パネルの取付孔から引き抜く際の損傷を抑え、留め具10を繰り返し使用することが可能となる。また、脚部34の撓み幅に対する反力の変化量が、脚部34の先端側をフランジ部24に連結する場合や、脚部34の先端側を第1壁部30と第2壁部32の両方に連結する場合と比べて、小さくなる。これにより、車種等によって取付孔の径が異なっても、留め具10の挿入性を同程度に保つことができる。また、脚部34を先端側と基端側で異なる方向に連結することで、脚部34がこじるように撓む。これにより、異なる孔径の取付孔に取り付ける場合に、撓み幅に対する径方向外向きの反力の変化量を小さくして、挿入力の差を低減できる。
【0022】
連結部36は、軸方向幅より径方向幅が薄くなるように板状に形成されている。脚部34が軸方向に延びるのに対し、連結部36は周方向に延び、脚部34および連結部36は撓みやすい方向が異なる。連結部36は、第2壁部32に対して鋭角θに傾斜して、周方向に沿うように形成される。連結部36は、第2壁部32から略45度に傾斜して張り出し、第1壁部30に対しても鋭角、つまり略45度に傾斜する。連結部36は、連結部36の外周面の面直方向に撓みやすいため、脚部34を軸中心に向かって撓みやすくでき、留め具10の車体パネルの取付孔への挿入力を低減できる。
【0023】
連結部36は、第2壁部32および脚部34より径方向内側に位置する。これにより、連結部36が取付孔の縁に引っかかりにくくできる。
【0024】
図5は、
図2(a)に示す留め具10のD−D断面図である。
図5に示すように、脚部34および連結部36は、フランジ部24から軸方向に離れている。これにより、脚部34の撓みやすくできる。
【0025】
図6は、
図2(a)に示す留め具10のE−E断面図である。
図6では
図3の断面と同じ位置の留め具10を示すが、
図3の矢視と逆方向であり、軸方向上方に見た図を示す。
【0026】
図3では、脚部34が基端側の張出部34aにより第1壁部30に連結しているが、
図6では、脚部34が先端側の連結部36により第2壁部32に連結している。これにより、車種等によって取付孔の径が異なった場合に、脚部34の径方向内向きの撓みやすさの差を小さくして、留め具10の挿入性を同程度に保つことができる。
【0027】
図7(a)は、
図2(b)に示す留め具10のF−F断面図であり、
図7(b)は、
図2(a)に示す留め具10のG−G断面図である。
図7(a)に示すように、第1壁部30は、フランジ部24の裏面から延出し、
図7(b)に示すように、第2壁部32もフランジ部24の裏面から延出する。
【0028】
第2壁部32は、第1壁部30より軸方向長さが短く、第2壁部32の下端は第1壁部30より脚部34の基端側、すなわちフランジ部24から離れて位置する。つまり、第1壁部30は、第2壁部32よりフランジ部24から離れる方向、すなわち下方に延びる。これにより、第2壁部32を小さくして軽量化できる。また、第2壁部32を連結部36より下方に延ばすことで、取付孔への挿入時に第2壁部32がガイドとなって連結部36が取付孔の縁に引っかかることを抑えることができる。
【0029】
図3および
図7(b)に示すように、第2壁部32の下方には軸方向上向きに切り欠くようにスリット42が形成される。第2壁部32の一部は、スリット42により第1壁部30から離れて形成される。スリット42を軸方向に長くするほど、第2壁部32の剛性を低くでき、連結部36を介して連結される脚部34を撓みやすくできる。
【0030】
たとえば、スリット42の上端を連結部36よりフランジ部24側に位置するように形成することで、いっそう第2壁部32の剛性を低下させて、脚部34を撓みやすく構成できる。また、スリット42は第2壁部32の下端から軸方向において連結部36と重なる位置にまで切り欠くように形成されてよい。
【0031】
図1(a)に示すように、第2壁部32の根元から軸方向に沿ってリブ28が形成される。リブ28は、第1壁部30から径方向外向きに突出し、第1壁部30の剛性を高くする。
【0032】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0033】
実施例では、軸中心から径方向外向きに4つの壁部が張り出し、その間に4つの脚部34が設けられる態様を示したが、この態様に限られない。たとえば、3つの壁部に3つの脚部が設けられてよい。いずれにしても、脚部の基端側は隣合う壁部の一方に連結され、脚部の先端側は隣合う壁部の他方に連結される。
【0034】
実施例では、第2壁部32の下部を第1壁部30から離間させるスリット42を設ける態様を示したが、この態様に限られない。たとえば、スリット42を設けず、第2壁部32は、軸中心から径方向外向きに立設するように形成されてよい。
【符号の説明】
【0035】
10 留め具、 20 第1取付部、 22 第2取付部、 24 フランジ部、 26 頭部、 28 リブ、 30 第1壁部、 32 第2壁部、 34 脚部、 36 連結部、 38 突部、 40 係止部、 42 スリット。