(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駅間に設けられた前記現場機器は、単線双方向での前記鉄道車両の運行制御が可能なように上り方向用の閉そく信号機と下り方向用の閉そく信号機とを含み、同一区間におけるこれら上り及び下り方向用の前記閉そく信号機は近接して配置され、1つの前記電子端末に接続されることを特徴とする請求項1又は2の線区集中電子連動装置。
少なくとも1つの駅間が複線軌道からなり、該複線の各線に関して、単線双方向での前記鉄道車両の運行制御が可能なように前記上り方向用の閉そく信号機と前記下り方向用の閉そく信号機とそれぞれを含み、同一区間における該複線の各線の近接配置された前記上り及び下り方向用の閉そく信号機の組が互いに近接して配置され、前記1つの電子端末に接続されることを特徴とする請求項3の線区集中電子連動装置。
前記伝送網は、前記電子連動論理部と前記線区内の各駅の管轄範囲に対応して設けられた複数の前記電子端末との間で各種のデータを伝送するための上位伝送網と、該上位伝送網から分岐し、前記駅間の1以上の管轄範囲に対応して設けられた複数の前記電子端末との間で各種のデータを伝送するための下位伝送網とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの線区集中電子連動装置。
前記伝送網は、前記電子連動論理部と前記線区内の各駅の管轄範囲に対応して設けられた複数の前記電子端末との間で各種のデータを伝送するための第1伝送網と、前記電子連動論理部と前記線区内の前記各駅間の1以上の管轄範囲に対応して設けられた複数の前記電子端末との間で各種のデータを伝送するための第2伝送網とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの線区集中電子連動装置。
前記信号てこは自動操作可能であり、前記電子連動論理部は、列車の接近に応じて該信号てこの操作位置を自動的に切り換えることを特徴とする請求項7の線区集中電子連動装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る線区集中電子連動装置の一実施例を示す概略構成図である。この線区集中電子連動装置の制御対象となる鉄道路線の1線区には、複数(n)の駅1〜n毎の管轄範囲ST1〜STnが含まれ、かつ、各駅間の1以上の管轄範囲M11〜M22・・・が含まれる。一例として、
図1では、駅1と駅2の駅間に2つの管轄範囲M11、M12が設定され、駅2とその隣の駅3の駅間に2つの管轄範囲M21、M22が設定される例を示している。駅1〜n毎の管轄範囲ST1〜STn及び駅間の1以上の管轄範囲M11〜M22・・・に対応して電子端末30がそれぞれ設置される。各電子端末30には、それぞれに対応する管轄範囲内に存する現場機器40が接続される。現場機器40とは、公知のように、信号機、転てつ機、軌道回路などである。なお、駅間の1以上の管轄範囲M11〜M22・・・においては、現場機器40として、少なくとも信号機(閉そく信号機)及び該管轄範囲内の軌道上の列車の存在を検出するための軌道回路が設けられる。勿論、1つの駅間に設定される管轄範囲M11〜M22・・・の数は図示のような2に限らず、1であってもよく、あるいは3以上であってもよく、例えば該駅間の距離に依存して適宜の数が設定されてよい。
【0011】
指令所(センター)には電子連動論理部10が設置される。電子連動論理部10が設置される指令所は、線区内の適宜の1つの駅(例えば駅1)に設置されてもよいが、それに限らず、専用の管理センター等、駅以外の場所に設置されてもよい。指令所に設置された電子連動論理部10と、各駅1〜n毎の管轄範囲ST1〜STn及び駅間の管轄範囲M11〜M22・・・に対応して設置された電子端末30との間は、各種のデータを伝送するためのフェールセーフな伝送網20を介して接続される。伝送網20は、例えばシングルモードの光ファイバ21と各電子端末30に対応して設けられた光中継部22とによって二重系の双方向光データ伝送網を構成し、信頼性の向上を図っている。一例として、光データの伝送方式は、線区内の電子端末30の数に対応するチャンネル数分の伝送データを所定周期で繰り返しシリアル伝送する方式からなる。
【0012】
電子連動論理部10からみて送信方向の光データ伝送路には、各現場機器40の動作を指令する指令情報が当該現場機器40のIDと共に電子連動論理部10から伝送網20に送信され、該当する電子端末30でこの指令情報が受信され、該当するIDを持つ当該現場機器40が該指令情報によって作動される。これによって、所要の信号機あるいは転てつ機等の動作が制御される。また、電子連動論理部10からみて受信方向の光データ伝送路には、検出機能を備えた現場機器40(例えば軌道回路)による検出情報が当該現場機器40のIDと共に対応する電子端末30から伝送網20に送信され、電子連動論理部10でこの検出情報が受信され、フィードバック情報として利用される。さらに、すべての現場機器40に状態監視装置を付属して設置してもよく、該状態監視装置により該現場機器40の現在の動作状態を監視し、状態監視情報を当該現場機器40のIDと共に対応する電子端末30から伝送網20に送信し、電子連動論理部10でこの状態監視情報を受信し、フィードバック情報として利用する。
【0013】
伝送網20における光データ伝送路の接続形態は、カスケード接続あるいはループ接続など、任意の接続形態を採用してよい。なお、電子端末30は、プロセッサ機能を有しており、電子連動論理部10から伝送網20を介して受信した指令情報をデコードして所要の現場機器40に対して動作指示情報を供給し、また、各現場機器40から検出情報及び状態監視情報を受信し、これを伝送データに含めて伝送網20を介して電子連動論理部10に向けて送信する等の処理を行う。
【0014】
指令所には、電子連動論理部10に関連してPTC(programmed traffic control)装置11及び操作盤12等が設けられる。PTC装置11は、列車運行ダイヤに従って進路制御を行う装置である。操作盤12は、列車運行制御のために管理者によって操作される。なお、1つの鉄道路線を複数の線区に分割して管理する場合は、本発明に係る線区集中電子連動装置が複数設けられる。その場合、PTC装置11及び操作盤12は上位の指令センターに設置し、各線区集中電子連動装置の電子連動論理部10は上位の指令センターのPTC装置11に接続される。
【0015】
電子連動論理部10は、伝送網20を通じて各現場機器40の状態(全軌道回路の情報と連動情報)を、各駅及び各駅間を含む線区全体について収集し管理する。線区全体の連動機能を一組の電子連動論理部10において集中管理する線区集中連動方式を採用している。この線区集中連動方式の採用によって、線区全体の連動機能が一つの駅構内と同様な連動論理で実現される。電子連動論理部10は、収集した軌道回路情報や連動条件情報に基づいて、信号機の制御や転てつ機の転換や鎖錠などを行うための指令情報を生成する。それらの指令情報は、電子連動論理部10からフェールセーフな伝送網20を介して各電子端末30に送られ、該指令情報に応じた該電子端末30の制御により所要の現場機器40が動作される。このようにして電子連動論理部10は、線区全体から収集した情報に基づいて、線区全体の現場機器40を集中管理し遠隔制御を行う。
【0016】
これにより、連動論理が指令所に配置した電子連動論理部10の1箇所に集中され、各駅1〜n毎の管轄範囲ST1〜STn及び駅間の管轄範囲M11〜M22・・・には電子端末30がそれぞれ設備され、さらに電子連動論理部10と各電子端末30との間がフェールセーフな伝送網20で直接結ばれるので、従来のようなCTC伝送装置などが不要になり、装置構成の簡略化が図られる。また線区全体を一括管理するので、運行管理システムとしての信頼度が向上する。加えて、駅間の管轄範囲M11〜M22・・・に対応して現場機器40(例えば閉そく信号機、軌道回路等)及び電子端末30が設置されることにより、例えば単線からなる駅間に2以上の同一方向の列車が入ることを許可するような制御が可能となるので、駅間の単線に同一方向の複数列車が入ることを許可して効率的な列車運行を図ることができる。
【0017】
次に、
図2を参照して、本実施例が適用される駅及び駅間の鉄道軌道及び信号機の配置の一例を説明する。例えば、駅1の管轄範囲ST1において、駅構内の軌道は本線A1と3つの副本線B1,B2,B3とでなっており、単線双方向運行を可能にするために本線A1に沿う所定位置に上り方向の場内信号機S1及び下り方向の場内信号機S2がそれぞれ設置され、本線A1及び副本線B1,B2を下り方向に使用させるために出発信号機S3,S4,S5がそれぞれ所定位置に設置され、また、本線A1及び副本線B3,B1を上り方向に使用させるために出発信号機S6,S7,S8がそれぞれ所定位置に設置される。なお、便宜上、図で左方向を上り方向といい、右方向を下り方向という。また、
図2において、便宜上、軌道回路及び転てつ機等の図示は省略してある。
【0018】
図1に示したように、駅1の管轄範囲ST1(すなわち駅構内)に設けられた電子端末30には、これらの信号機等を含む管轄範囲ST1内の現場機器40がすべて接続される。駅構内における電子端末30に対するこれらの現場機器40の接続は電気信号ケーブルを介して行われる。好ましい実施例において、駅構内における電子端末30の設置場所を、これらの現場機器40の設置場所にできるだけ近い場所に設定するのがよく、これによって、接続用の電気信号ケーブル長を節約することができ、また、ケーブルの断線故障等の可能性を減らし得る。また、電子端末30を、信号機関連機構あるいは電気転てつ機あるいは軌道回路関連機構の収納ボックス内に一体的に収納するように構成してもよい。
【0019】
図2に示す例において、駅1の隣の駅2の管轄範囲ST2において、駅構内の軌道は本線A1と1つの副本線B1とでなっており、単線双方向運行を可能にするために本線A1に沿う所定位置に上り方向の場内信号機S10及び下り方向の場内信号機S11がそれぞれ設置され、下り専用の副本線B1に沿う所定位置に出発信号機S12が設置され、また、上り専用の本線A1に沿う所定位置に出発信号機S13が設置される。また、一例として、
図2においては、駅2の隣の駅3の管轄範囲ST3において、駅構内の軌道は本線A1と1つの副本線B1とでなっており、本線A1と副本線B1の両方で単線双方向運行が可能なように場内信号機及出発信号機が設けられる。
【0020】
駅間には少なくとも1つの閉そく信号機が設けられ、これに対応して少なくとも1つの駅間管轄範囲が設定される。例えば、
図2に示す例において、駅1と駅2の駅間には2つの閉そく信号機S15,S17(及びS16,S18)が設けられ、これに対応して2つの管轄範囲M11,M12が設定される。駅1と駅2の駅間は単線軌道であるが、単線双方向での鉄道車両の運行制御が可能なように上り方向用の閉そく信号機S15,S17と下り方向用の閉そく信号機S16,S18とを設けている。
【0021】
詳しくは、各管轄範囲M11,M12に対応して、上り方向用の閉そく信号機S15,S17と下り方向用の閉そく信号機S16,S18がそれぞれ設けられ、更に、図示しない軌道回路がそれぞれ設けられている。単線における上り方向の閉そく区間と下り方向の閉そく区間とを物理的に同一の閉そく区間として設定し、該同一の閉そく区間におけるこれら上り及び下り方向用の閉そく信号機(例えばS15とS16の組又はS17,S18の組)及びそれに対応する軌道回路を1つの管轄範囲(例えばM11)に対応づけて管理するものとし、これらの現場機器を該1つの管轄範囲(例えばM11又はM12)に対応する1つの電子端末30に接続する。これにより、単線双方向での鉄道車両の運行制御が可能な駅間の信号機配置とされる。駅間における電子端末30の設置場所も、対応する現場機器40の設置場所にできるだけ近い場所に設定するのがよく、これによって、接続用の電気信号ケーブル長を節約することができ、また、ケーブルの断線故障等の可能性を減らし得る。また、電子端末30を、信号機関連機構あるいは軌道回路関連機構の収納ボックス内に一体的に収納するように構成してもよい。
【0022】
更に、好ましい実施例において、同一区間(管轄範囲)におけるこれら上り及び下り方向用の閉そく信号機S15,S16(又はS17,S18)は近接して配置するものとする(例えば同じ柱に、又は軌道の1地点の左右に設けられた1対の柱のそれぞれに、同じ程度の高さで、固定設置する)。これにより、1つの電子端末30に対する上り及び下り方向用の閉そく信号機S15,S16(又はS17,S18)の接続距離を短くすることができるので、接続用の電気信号ケーブル長を節約することができ、また、ケーブルの断線故障等の可能性を減らし得る。
【0023】
なお、単線双方向での鉄道車両の運行制御が可能な駅間の閉そく区間において、従来は、単線軌道における鉄道車両の進行方向に応じて軌道回路を流れる検知電流の向きを反転させるために、1閉そく区間の両端においてそれぞれ軌道回路用電流の送受信器を設けなければならなかった。すなわち、1閉そく区間につき軌道回路用検知電流送受信器を二重に設けなければならなかった。これに対して、本発明においては、駅間の閉そく信号機及び軌道回路が電子連動論理部10によって集中管理されるため、1閉そく区間につき1個の軌道回路用検知電流送受信器を設けるだけで、単線双方向での鉄道車両の運行制御が可能である。従って、本発明においては、単線双方向の駅間の閉そく区間における軌道回路の構成を簡略化することができる。
【0024】
なお、駅間に設ける電子端末30に対する電力供給のために、対応する閉そく信号機(例えばS15,S16又はS17,S18)の電源装置として用いる線条変圧器から信号電源を取り出して、これを適宜降圧したものを使用するのがよい。その場合、信号機用の線条変圧器に対する高圧配電線は二重系とするのが信頼性の面で好ましい。
【0025】
図2において、その他の駅間の管轄範囲M21,M22等に設けられた閉そく信号機S21〜S24等の構成も、上記したものと同様であってよい。
【0026】
本発明において、駅間の軌道構成は、単線軌道に限らず、複線又は複々線軌道であってもよく、少なくとも1つの駅間が複線軌道からなっていてもよい。
図3は、駅1と駅2の駅間が軌道A1とA2の複線で構成されている例を示している。一方の軌道A1においては、2つの管轄範囲M11,M12に対応して、
図2に示したものと同様に閉そく信号機S15,S16の組及びS17,S18の組が設けられ、かつ軌道回路がそれぞれ設けられている。そして、他方の軌道A2においても、2つの管轄範囲M11,M12に対応して、
図2に示した閉そく信号機S15,S16の組及びS17,S18の組と同様の構成で、閉そく信号機S25,S26の組及びS27,S28の組が設けられ、かつ軌道回路がそれぞれ設けられる。すなわち、他方の軌道A2においても、単線双方向での鉄道車両の運行制御が可能なように上り方向用の閉そく信号機S25,S27と下り方向用の閉そく信号機S26,S28とが設けられる。これによって、複線軌道A1,A2において、上りと下りの複線運転ができるのみならず、単線並列運転もできるように、適宜に列車運行制御することができる。
【0027】
この場合、複線軌道A1,A2の各現場機器40は共通の駅間管轄範囲に対応づけられ、それに対応する1つの電子端末30に接続されるようにするとよい。例えば、駅間管轄範囲M11に対応する軌道A1用の閉そく信号機S15,S16及びそれに関連する軌道回路と、同じ駅間管轄範囲M11に対応する軌道A2用の閉そく信号機S25,S26及びそれに関連する軌道回路とが、該管轄範囲M11に対応して設けられた1つの電子端末30に接続されるようにしてよい。さらに、同じ電子端末30に接続されるべき各軌道A1,A2の上り及び下り方向用の閉そく信号機S15,S16の組及びS25,S26の組は、互いに近接して配置されるのが好ましい。例えば同じ柱に、又は並行する軌道A1,A2の1地点の左右に設けられた1対の柱のそれぞれに、同じ程度の高さで、各軌道A1,A2の上り及び下り方向用の閉そく信号機S15,S16の組及びS25,S26の組を、固定設置するとよい。これにより、1つの電子端末30に対する複線の上り及び下り方向用の閉そく信号機S15,S16の組及びS25,S26の組の接続距離を短くすることができるので、接続用の電気信号ケーブル長を節約することができ、また、ケーブルの断線故障等の可能性を減らし得る。
【0028】
ところで、
図1の例において、フェールセーフな伝送網20は、駅構内の管轄範囲ST1,・・・に対応して設置される電子端末30と駅間の管轄範囲M11,M12,・・・に対応して設置される電子端末30とを区別することなく、同一階層でネットワークを形成している。しかし、これに限らず、複数階層でネットワークを形成するようにフェールセーフな伝送網20を構成してもよい。
図4は、そのような複数階層からなる伝送網20の一例を示す。
図4において、伝送網20は、上位伝送網20aと複数の下位伝送網20b1,20b2,・・・とからなる。上位伝送網20aは、前記電子連動論理部10と線区内の各駅1〜nの管轄範囲ST1〜STnに対応して設けられた複数の電子端末30との間で各種のデータを伝送するように、光ファイバ21及び光中継部22等により構成され、かつ、前述と同様にフェールセーフに構成される。複数の下位伝送網20b1,20b2,・・・は、それぞれ、各駅間に設けられた電子端末30のデータを伝送するように光ファイバ21及び光中継部22等により構成され、各下位伝送網20b1,20b2,・・・が上位伝送網20aとの間で通信し、もって上位伝送網20aを経由して前記電子連動論理部10と各駅間に設けられた電子端末30との間でデータの送受信を行うように構成される。これらの下位伝送網20b1,20b2,・・・も前述と同様にフェールセーフに構成される。
【0029】
例えば、駅1と駅2の駅間に設定された複数の管轄範囲M11,M12の電子端末30がそれぞれの光中継部22を介して下位伝送網20b1に接続され、この下位伝送網20b1は近傍の駅1の構内で上位伝送網20aに接続される。同様に、他の各駅間に設定された複数の管轄範囲M21,M22,・・・の電子端末30がそれぞれの光中継部22を介してそれぞれの下位伝送網20b2,・・・に接続され、これらの下位伝送網20b2,・・・は近傍の駅2,・・・の構内で上位伝送網20aにそれぞれ接続される。
【0030】
このような伝送網20の階層化によって、例えば駅間の下位伝送網20b1,20b2,・・・のいずれかに不具合が生じた場合、不具合が生じた下位伝送網を除外して、上位伝送網20aを使用して少なくとも駅間を1閉そく区間とする閉そく制御は確保/継続することができる。なお、伝送網20の階層化形態は、
図4に示した例に限らず、他の任意の形態であってよい。例えば、複数の駅間にわたって1つの下位伝送網を構成するようにしてもよい。あるいは、2階層に限らず、3以上に階層化する形態であってもよい。
【0031】
フェールセーフな伝送網20の別の構成例として、複数の伝送網により並列的にネットワークを形成するようにしてもよい。
図5は、そのような並列的な伝送網20の一例を示す。
図5において、伝送網20は、第1伝送網20a1と第2伝送網20a2とからなる。第1伝送網20a1は、前記電子連動論理部10と線区内の各駅1〜nの管轄範囲ST1〜STnに対応して設けられた複数の電子端末30との間で各種のデータを伝送するように、光ファイバ21及び光中継部22等により構成され、かつ、前述と同様にフェールセーフに構成される。第2伝送網20a2は、前記電子連動論理部10と線区内の各駅間に設けられた複数の電子端末30との間で各種のデータを伝送するように光ファイバ21及び光中継部22等により構成される。この第2伝送網20a2も前述と同様にフェールセーフに構成される。このような並列的な伝送網20a1、20a2からなる構成においても、例えば駅間の第2伝送網20a2に不具合が生じた場合、駅毎の電子端末30を接続する第1伝送網20a1を使用して、少なくとも駅間を1閉そく区間とする閉そく制御は確保/継続することができる。
【0032】
駅間にあっては設置環境の面で、駅間の光中継部に接続する部分で伝送網に支障が生ずる可能性が相対的に高いが、前記
図4のような階層化された伝送網構成とすることで、駅間の下位伝送網に不具合が生じた場合の影響を少なくすることができる。また前記
図5のような並列化された伝送網構成とすることで、第1伝送網の独立性を高め、第2伝送網に生じた不具合の影響を受けないようにすることができる。
【0033】
一実施例において、駅及び駅間に設けられた各閉そく信号機を指令所又はセンターにおいて個別に制御できるようにするために、「信号てこ」を設置してもよい。好ましい実施例において、そのような「信号てこ」は、指令所に設けられた操作盤12上に表わされた鉄道軌道図における各閉そく信号機の配置に対応して該操作盤12上に配置された物理的な操作レバーからなる。
【0034】
図6(a)は、操作盤12上に表わされた単線軌道50の一部分を例示すると共に、該単線軌道50の一部分において存在する各閉そく信号機SG1〜SG5の現示をモニタするために配置された信号機モニタを例示し、かつ、各閉そく信号機に対応して該操作盤12上に配置された信号てこ(操作レバー)SL1〜SL5の一例を示す。図中、矢印は車両の進行方向を示す。また、1T〜5Tは、各閉そく信号機SG1〜SG5に対応する軌道回路の区間を示す。信号てこ(操作レバー)SL1〜SL5は、操作者によって、手動操作可能である。信号てこ(操作レバー)SL1〜SL5は、定常状態において定位(N)の位置に設定され、手動又は自動で反位(R)の位置に切り換えることができ、更に手動又は自動で定位(N)の位置に戻され得る。
【0035】
電子連動論理部10は、連動論理に加えて該信号てこSL1〜SL5の操作位置を考慮して対応する各閉そく信号機の現示を制御する。原則的に、信号てこSL1〜SL5が定位(N)に設定されているとき、それに対応する閉そく信号機SG1〜SG5の現示は「停止」(赤色、図でRで示す)であり、反位(R)に設定されているとき、それに対応する閉そく信号機SG1〜SG5の現示は連動論理に従う(「進行」(青色、図でGで示す)、「注意」(黄色、図でYで示す)、又は「停止」(R)など)。信号てこの操作位置を考慮して行う電子連動論理部10の制御モードとして、例えば自動モードと半自動モードとがある。自動モードにおいては、すべての信号てこを反位(R)に設定しておき、これにより、すべての閉そく信号機の現示が電子連動論理部10による連動論理に従うものとされる。半自動モードにおいては、一旦すべての信号てこを定位(N)に設定しておき、そのうち所要の閉そく信号機に対応する信号てこを反位(R)に切り換えられることに応じて、反位(R)に設定された閉そく信号機の現示が電子連動論理部10による連動論理に従うものとされる。
図6(a)は、このような半自動モードにおける制御例を示しており、信号てこSL4、SL5が反位(R)に操作者によって切り換えられ、他は定位(N)のままとされる例を示している。信号てこSL4、SL5が反位(R)に切り換えられることに応じて、それに対応する閉そく信号機SG4、SG5の現示が連動論理に従って制御される。すなわち、「停止」(R)を現示している閉そく信号機SG3の1区間手前の閉そく信号機SG4の現示が「注意」(Y)とされ、2区間手前の閉そく信号機SG5の現示が「進行」(G)とされる。
【0036】
図6(b)は、
図6(a)の状態から、さらに信号てこSL3が操作者によって反位(R)に切り換えられたときの制御例を示している。信号てこSL3が反位(R)に切り換えられることに応じて、「停止」(R)を現示している閉そく信号機SG2の1区間手前の閉そく信号機SG3の現示が「注意」(Y)に切り替わり、2区間手前の閉そく信号機SG4の現示が「進行」(G)に切り替わる。なお、
図6(b)において、仮に閉そく区間1Tに列車51が在線していたとすると、操作者が該閉そく区間1Tの信号てこSL1を反位(R)に切り換えたとしても、連動論理により該閉そく区間1Tの閉そく信号機SG1は「停止」(R)を維持するので、信号機SG1の現示は「停止」(R)のまま変化しない。
【0037】
半自動モードにおいて、信号てこは、操作者による手動操作に限らず、列車51の接近(在線位置)に応じて自動的に切り換えられるようになっていてもよい。
図7(a)(b)は、そのような信号てこの自動的切り換え例を示す。その場合、電子連動論理部10においては、列車51が在線位置の内方3軌道回路(必ずしも「内方3軌道回路」に限定されず、場所によって適宜変更してよい)の信号てこを反位(R)に自動的に切り換えるように、連動論理が組まれる。
図7(a)の例においては、区間5Tに列車51が在線するので、その内方3軌道回路の信号てこSL2、SL3、SL4が自動的に反位(R)に切り換えられることを示している。これにより、各信号機SG2,SG3,SG4,SG5の現示は、「注意」(Y)、「進行」(G)、「進行」(G)、「停止」(R)とされ、他は「停止」(R)である。なお、信号てこSL5は、列車51の区間5Tに進入する以前に自動的に反位(R)に切り換えられている。
図7(b)は、
図7(a)の状態から列車51がさらに進行して区間4Tに進入した状態を示しており、これに応じて、信号てこSL1が自動的に反位(R)に切り換えられ、かつ、信号てこSL5が自動的に定位(N)に戻される。これにより、各信号機SG1,SG2,SG3,SG4,SG5の現示は、「注意」(Y)、「進行」(G)、「進行」(G)、「停止」(R)、「停止」(R)とされ、他は「停止」(R)である。
【0038】
なお、上記実施例において、「信号てこ」は、操作盤12上に配置された物理的な操作レバーからなるものとしたが、これに限らず、例えばディスプレイ上に表現されたスイッチ又は操作レバーのアイコン画像からなっていてもよく、このアイコン画像に対する操作者の操作によって定位(N)又は反位(R)の切換えが行われるように構成されていてもよい。