(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826422
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20210121BHJP
B60C 15/024 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
B60C15/00 L
B60C15/024 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-235341(P2016-235341)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-90102(P2018-90102A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄二
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−127221(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第106114074(CN,A)
【文献】
実開昭54−041002(JP,U)
【文献】
特開平03−169727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードベース面の内側領域以外に、それぞれタイヤ幅方向に延びタイヤ周方向に並設された複数の溝部からなるリムずれ防止部が形成されており、
前記複数の溝部はそれぞれ、前記ビードベース面内で多角形の辺を構成するように配置され、
前記複数の溝部のうち隣接する前記溝部は、互いに連通しないように間隔をあけて設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記内側領域は、前記ビードベース面のビードトウから、ビードベース幅の5%以上15%以下の長さの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、ビードベース面に、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるリムずれ防止用の突条を形成したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
また他の空気入りタイヤとして、ビードベース面に、タイヤ軸方向に沿って延びる凸条をタイヤ周方向に複数形成したものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
さらに他の空気入りタイヤとして、ビードベース面に、タイヤ周方向に不連続で、かつビードトウとビードヒールを連結させない凹部を形成したものが公知である(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、前記いずれの空気入りタイヤであっても、ビードベース面に於けるタイヤ幅方向への空気の漏れとリム外れについて考慮したものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−19427号公報
【特許文献2】特開2003−170712号公報
【特許文献3】特開2002−211215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビードベース面での空気漏れとリムずれを効果的に防止する空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として
、ビードベース面の内側領域以外に、
それぞれタイヤ幅方向に延びタイヤ周方向に並設され
た複数の
溝部からなるリムずれ防止部が形成されて
おり、前記複数の溝部はそれぞれ、前記ビードベース面内で多角形の辺を構成するように配置され、前記複数の溝部のうち隣接する前記溝部は、互いに連通しないように間隔をあけて設けられていることを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成により、ビードベース面の内側領域はリムに対して面接触させることができ、空気漏れを防止可能となる。また、ビードベース面の内側領域以外に形成した
溝部によってリムずれを防止できる。
詳しくは、溝部によって形成されるエッジがリムに作用してリムずれを防止する。また、ビードベース面には溝部を設けただけであるので、タイヤ幅方向には、殆ど隙間が形成されず、空気漏れも発生しない。また、溝部がビードベース面内で多角形を構成するように配置されているため、コーナリング等で多方向に力が作用する場合であっても、有効にリムずれを防止することができる。
【0008】
前記内側領域は、前記ビードベース面のビードトウから、ビードベース幅の5%以上15%以下の長さの範囲であるのが好ましい。
【0009】
この構成により、リムに面接触する内側領域での空気漏れに対して十分な面積を確保することができる。
【0015】
この構成により、コーナリング等で多方向に力が作用する場合であっても、有効にリムずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ビードベース面の内側領域にはリムずれ防止部が形成されておらず、リムに対して内側領域を全面接触させることができるので、空気漏れを効果的に防止可能となる。また、ビードベース面の内側領域以外にはリムずれ防止部が形成されているので、走行時、特に制動時のリムずれを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのビードコア側を示すタイヤ子午線方向の概略断面図である。
【
図2】
図1に示すビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図4】他の実施形態に係るビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図5】他の実施形態に係るビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図6】他の実施形態に係るビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図7】
参考例に係るビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図8】他の実施形態に係るビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図9】他の実施形態に係るビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図10】他の実施形態に係るビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ1」と記載する。)のビードコア2側を示すタイヤ子午線方向の概略断面図である。ここでは、タイヤ1の内部構成についてビードコア2以外は図示を省略している。タイヤ1のリム3の当接受面4に当接される面がビードベース面5である。
【0020】
図2は、
図1に示すタイヤ1のビードベース面5を矢視A(ビードコア2からビードベース面5に延びる垂線に沿う方向)から見た平面図である。ビードベース面5は、タイヤ周方向につながった内周面で構成された、ビードトウ6からビードヒール7までの領域である。ビードベース面5は、何も形成されていない内側領域8(
図2中、2点鎖線で示す。)と、それ以外の複数の凹部すなわち溝部9が形成された外側領域10とで構成されている。
【0021】
内側領域8は、平坦面であり、リム3の当接受面4に面接触できるように構成されている。ここで、ビードトウ6からビードヒール7までの長さをビードベース幅BWと定義すると、内側領域8の形成範囲は、ビードトウ6からビードベース幅BWの5%以上15%以下の長さの範囲とするのが好ましい。これによれば、リム3の当接受面4に対してタイヤ幅方向に十分な長さを有する内側領域8を面接触させることができる。したがって、この接触領域によってタイヤ1の内部からの空気漏れを確実に防止することが可能となる。また、後述する溝部9の形成範囲が狭くなってリムずれ防止効果が損なわれるといったこともない。
【0022】
この場合、内側領域8は、ビードベース面5を矢視Aから透視(平面投影視)してビードコア2と重ならない位置とするのが好ましい。これによれば、ビードコア下部は、リムに対して圧力が高くなる位置のため、重ならないほうがリムずれ防止効果が損なわれない。
【0023】
ビードベース面5には、複数の溝部9が形成されている。溝部9はタイヤ幅方向に延びる直線状で、
図3に示すように、両端では溝底側が半径Rの円弧状に形成されている。各溝部9は、ビードベース面5の表面からの溝深さD、溝幅W、タイヤ周方向の溝間隔Pを自由に設定できる。但し、溝幅Wは溝長さLに比べて十分に小さく、ビードベース面5に圧接されることにより、溝幅が0となるように形成されているのが好ましい。そして、溝部9を形成することによって得られたエッジ部11は、リム3の当接受面4に圧接してずれを防止する機能を発揮するようにすればよい。また溝部9は、
図2、
図4、
図5及び
図6に示す種々のパターンで形成できる。
【0024】
図2では、内側領域8をビードトウ6からビードベース幅BW
の10%の長さの範囲としている。
図4では、内側領域8をビードトウ6からビードベース幅BWの50%の長さの範囲としている。
図5では、内側領域8をビードトウ6からビードベース幅BWの20%の長さの範囲としている。また、外側領域10にもビードヒール7から内側に、ビードベース幅BWの20%の長さの範囲を溝部9が形成されていない領域としている。
図
7の参考例では、溝部9をビードトウ6からビードヒール7までビードベース面5を横切るように形成している。つまり、内側領域8は形成されていない。
【0025】
溝部9は、直線状に限らず、図
6に示すような鋸歯状としたり、図示しないが、波形としたりする等、エッジ部11の長さを長くすることができる種々の形状とすることもできる。これによれば、溝部9によって形成されるエッジ部11の長さを長くして、タイヤ周方向へのリムずれ防止効果を高めることができる。また、タイヤ周方向以外へのリム3に対するタイヤ1の位置ずれを抑制してリム外れを防止する効果もある。
【0026】
溝部9は、タイヤ幅方向に沿って平行に形成するようにしたが、多角形を構成するように形成してもよい。例えば、
図8に示す三角形、
図9に示す四角形、
図10に示す六角形等で形成することができる。この場合、各辺を構成する溝部9は互いに連通しないように形成するのが好ましい。これによれば、リム3に対するタイヤ1のずれ防止を、タイヤ周方向だけでなく、種々の方向に対して発揮することができる。
【0027】
このように、溝部9を多角形に配置することで、路面からタイヤ1に作用する種々の方向からの力に対して、溝部9を構成するエッジ部11が有効に作用し、リム3の当接受面4に対する位置ずれを効果的に防止することができる。
【実施例】
【0028】
比較例及び実施例に係るタイヤ1について、リムずれ防止性能及びエア漏れ防止性能をそれぞれ比較例の場合を100として指数により評価した。
リムずれ防止性能については、速度50km/hで制動試験を10回繰り返し、リム3に対するタイヤ1のずれ量を測定した結果を評価した。
エア漏れ防止性能については、リム組み後、一定温度の室温で90日、静的放置し、内圧の低下状態を評価した。
【0029】
溝部9のレイアウトは、実施例1〜4については
図2、実施例5については
図4、実施例6については
図5とした。溝深さは実施例2を0.4mmとし、他は1.0mmとした。溝幅は実施例3を2.0mmとし、他は1.0mmとした。溝間隔は、実施例4を5.0mmとし、他は3.0mmとした。
【0030】
【表1】
【0031】
このように、溝深さを1.0mmとすることで、リム3の当接受面4に対するエッジ部11の変形度合いを最も適切なものとして位置ずれを効果的に防止することができた。溝深さは、0.4mm〜1.0mmの範囲とすることで、リムずれの防止効果が期待できる。また、溝幅及び溝間隔を大きくすればする程、リムずれ防止性能が悪化する。溝幅2.0mm以下、溝間隔5.0mm以下とすることでも、リムずれ防止効果が期待できる。
【0032】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0033】
前記実施形態では、リムずれ防止部の凹部の例として溝部9の異なる形態について説明したが、このリムずれ防止部は凹部に限らず、凸部で構成することもできる。例えば、前記各実施形態について凹部に代えて凸部を採用することで、凸部のエッジ部分がリム3の当接受面4に作用してリム3に対するタイヤ1の位置ずれを効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…タイヤ
2…ビードコア
3…リム
4…当接受面
5…ビードベース面
6…ビードトウ
7…ビードヒール
8…内側領域
9…溝部
10…外側領域
11…エッジ部