特許第6826432号(P6826432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826432
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20210121BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20210121BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20210121BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-253739(P2016-253739)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103517(P2018-103517A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】安藤 崇宏
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−162203(JP,A)
【文献】 特開2018−089849(JP,A)
【文献】 特開2014−217966(JP,A)
【文献】 特開平10−034766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を形成するためのセクターモールドと、この内径側に位置しておりサイドウォール部を形成するための上下一対のサイドプレートとを備え、これらが径方向に対向する嵌合面を介して互いに嵌合可能に構成されたタイヤ加硫金型であって、
前記セクターモールド及び前記サイドプレートの少なくともいずれか一方は、
それぞれの前記嵌合面からタイヤ径方向に延びており、タイヤ幅方向外側へ凹となる、凹部と、
前記凹部の縁部及び/又は隅部に沿ってタイヤ径方向に延びており、前記嵌合面に連通する、溝状のソーカット溝と
を有しており、
前記ソーカット溝は、溝深さが前記嵌合面においてゼロになるように前記嵌合面に向かって漸減するように形成されている、タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記ソーカット溝は、前記サイドプレートに形成されている、
請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記ソーカット溝は、溝底面が段部又は角部を介することなく前記嵌合面に延びている、
請求項1又は2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記ソーカット溝は、溝幅が0.3mm以上1.0mm以下である、
請求項1〜のいずれか1つに記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
前記ソーカット溝は、溝深さが0.3mm以上1.0mm以下である、
請求項1〜のいずれか1つに記載のタイヤ加硫金型。
【請求項6】
トレッド部とサイドウォール部との間の型割り線から又は該型割り線に跨がってタイヤ径方向に延びる、タイヤ幅方向外側に突出した突部と、
前記突部の先端側角部及び/又は基端側縁部に沿って延びて前記型割り線に接続される、タイヤ幅方向外側へ凸となる凸条と
を有しており、
前記凸条は、タイヤ幅方向外側への突出量が前記型割り線においてゼロになるように前記型割り線に向かって漸減している、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫金型および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、例えばトレッド部に、周方向溝及び/又は横方向溝により区画された、複数のリブ又はブロックからなる陸部を有しており、このため空気入りタイヤを成形するタイヤ加硫金型には、前記陸部を成形するための凹部が形成されている。グリーンタイヤを加硫成形するとき、凹凸の大きな前記凹部へのゴムの流れ込み難さに起因して、特に凹部の縁部又は隅部にエア溜まりが生じやすい。
【0003】
特許文献1には、トレッド部の陸部を成形するため、金型のトレッド成形面に形成された凹部の底面に、この周縁部に沿って延びておりベントホールに連通する主エア抜き溝と、中央部をタイヤ幅方向に延びる補助エア抜き溝と、を形成し、補助エア抜き溝を主エア抜き溝に連通させた、タイヤ加硫金型が開示されている。このタイヤ加硫金型によれば、凹部の底面において、この周縁部に介在する空気が主エア抜き溝を通してベントホールに排出され、中央部に介在する空気が補助エア抜き溝を通して主エア抜き溝からベントホールに排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のタイヤ加硫金型によれば、最終的にベントホールから空気を排出させるものであり、このため、ベントホールに連通させるように、凹部の底面の周縁部や中央部にエア抜き溝を形成することを要する。このため、凹部から空気を排出する経路が複雑化してしまう。したがって、凹部におけるエア溜まりを抑制するに際して、空気を排出する空気排出経路を単純化する観点で更に改良する余地がある。
【0006】
本発明は、凹部から空気を排出する空気排出経路を単純化しつつ、凹部におけるエア溜まりを抑制可能な、タイヤ加硫金型およびこの金型により製造された空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、トレッド部を形成するためのセクターモールドと、この内径側に位置しておりサイドウォール部を形成するための上下一対のサイドプレートとを備え、これらが径方向に対向する嵌合面を介して互いに嵌合可能に構成されたタイヤ加硫金型であって、前記セクターモールド及び前記サイドプレートの少なくともいずれか一方は、それぞれの前記嵌合面からタイヤ径方向に延びており、タイヤ幅方向外側へ凹となる、凹部と、前記凹部の縁部及び/又は隅部に沿ってタイヤ径方向に延びており、前記嵌合面に連通する、溝状のソーカット溝とを有しており、前記ソーカット溝は、溝深さが前記嵌合面においてゼロになるように前記嵌合面に向かって漸減するように形成されている、タイヤ加硫金型を提供する。
【0008】
本発明によれば、ソーカット溝は、凹部の縁部及び/又は隅部に沿って嵌合面に連通するように延びているので、加硫成形時において、凹部の縁部及び/又は隅部に介在する空気を、ソーカット溝を介して嵌合面側へ効果的に排出できる。しかも、凹部から空気を排出する空気排出経路を、ソーカット溝を嵌合面に連通させることによって構成でき、ベントホールを介することを要しないので単純化できる。したがって、凹部からの空気排出経路を単純化しつつ、凹部におけるエア溜まりを抑制できる。また、型締め時において、ソーカット溝に沿って案内されるゴム流れが、嵌合面に向かってタイヤ幅方向内側に案内される。これによって、ソーカット溝に沿って案内されるゴム流れが、嵌合面に導入されることを抑制して、嵌合面におけるゴムの噛み込みを抑制できる。
【0009】
前記ソーカット溝は、前記サイドプレートに形成されていることが好ましい。
【0010】
本構成によれば、ソーカット溝は、サイドプレートにおいて嵌合面に向かってタイヤ径方向外径側に延びている。ここで、セクターモールドとサイドプレートとを有する所謂セグメンテッドモールドにおいては、型締め時にサイドプレートにより押圧されたサイドウォール部のゴムがタイヤ径方向外側へ移動しやすい。すなわち、型締め時に、サイドウォール部におけるゴム流れが、ソーカット溝の嵌合面に向かう方向に一致するので、ソーカット溝にゴムを導入させやすい。この結果、凹部の縁部及び隅部へのゴム流れを促進しつつ、空気を、ソーカット溝におけるゴム流れによって嵌合面側へより効果的に排出できる。
【0013】
前記ソーカット溝は、溝底面が段部又は角部を介することなく前記嵌合面に延びていることが好ましい。
【0014】
本構成によれば、型締め時において、ソーカット溝に沿って案内されるゴム流れが、溝底面における抵抗又は引っ掛かりを抑制しつつ、よりスムーズに嵌合面側へ案内される。
【0015】
前記ソーカット溝は、溝幅が0.3mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0016】
本構成によれば、ソーカット溝を目立ち難く構成しつつも、ソーカット溝による空気排出効果が十分に得られる。ソーカット溝の溝幅が、0.3mmより小さい場合、溝容積が小さくなるので、空気排出効果が十分に得られない。一方、ソーカット溝の溝幅が、1.0mmより大きい場合、加硫成形された空気入りタイヤにおいて、ソーカット溝により加硫成形された凸条が目立ちやすく、見栄えが低下する。特に、凹部から形成される突部を、タイヤ側部を装飾するために設ける場合には、目立ちやすい凸条による見栄えの低下が問題となる。
【0017】
前記ソーカット溝は、溝深さが0.3mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0018】
本構成によれば、ソーカット溝におけるゴムの密着を抑制しつつ、ソーカット溝による空気排出効果が十分に得られる。ソーカット溝の溝深さが、0.3mmより浅い場合、溝容積が小さくなるので、空気排出効果が十分に得られない。一方、ソーカット溝の溝深さが、1.0mmより深い場合、加硫成形時においてソーカット溝内にゴムが密着したり、加硫成形後にソーカット溝内にゴムが残留したりすることがあり、タイヤ加硫金型を頻繁に清掃することを要し、生産性が悪くなる。
【0019】
本発明の他の態様は、トレッド部とサイドウォール部との間の型割り線から又は該型割り線に跨がってタイヤ径方向に延びる、タイヤ幅方向外側に突出した突部と、前記突部の先端側角部及び/又は基端側縁部に沿って延びて前記型割り線に接続される、タイヤ幅方向外側へ凸となる凸条とを有しており、前記凸条は、タイヤ幅方向外側への突出量が前記型割り線においてゼロになるように前記型割り線に向かって漸減している、空気入りタイヤを提供する。
【0020】
本発明によれば、上述したタイヤ加硫金型で加硫成形した空気入りタイヤが得られる。すなわち、空気入りタイヤにおいて、突部の先端側角部又は基端側縁部におけるエア溜まりが抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るタイヤ加硫金型および空気入りタイヤによれば、凹部から空気を排出する空気排出経路を単純化しつつ、凹部におけるエア溜まりを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型の概略構成を示す断面図。
図2図1のA矢視による要部正面図。
図3図2のIII−III線における断面図。
図4図2のIV−IV線における断面図。
図5】タイヤ加硫装置の動作を概念的に示す図。
図6図1のタイヤ加硫金型によって製造した空気入りタイヤを示す要部正面図。
図7A】ソーカット溝を凹部の縁部のみに形成した変形例を示す断面図。
図7B】ソーカット溝を凹部の隅部のみに形成した変形例を示す断面図。
図8】ソーカット溝をサイドプレートにのみ形成した変形例を示す要部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各距離の比率等は現実のものとは相違している。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型10の概略構成を示す断面図であり、タイヤ径方向において一方側(図1において左側)のみ示している。図1に示されるように、タイヤ加硫金型10には、グリーンタイヤTがタイヤ軸線を上下方向に向けてセットされるようになっている。
【0025】
タイヤ加硫金型10は、グリーンタイヤTのトレッド部T1成形するための環状のセクターモールド11と、この内径側に位置しておりサイドウォール部T2を形成するための上下一対の上側サイドプレート12及び下側サイドプレート13と、上下一対のサイドプレート12,13のタイヤ幅方向内側における内径側端部にそれぞれ取り付けられておりビード部T3を成形するための上下一対の上側ビードリング14及び下側ビードリング15とを有している。
【0026】
セクターモールド11は、タイヤ周方向に複数のセクタ110に分割されており、それぞれ、タイヤ加硫金型10の開閉時にタイヤ径方向に移動するように設けられている。具体的には、それぞれのセクタ110は、型開き状態では放射状に径方向外側に位置して互いに離間しており、型締め状態では径方向内側に移動して互いに側面部において当接して環状のセクターモールド11が構成されるようになっている。すなわち、タイヤ加硫金型10は、セグメンテッドモールドとして構成されている。
【0027】
図1に示す型締め状態において、セクターモールド11と上下一対のサイドプレート12,13は、嵌合部16を介して径方向に嵌合している。嵌合部16は、各セクタ110の内径側端部に形成されたセクタ嵌合面16aと、上下一対のサイドプレート12,13の外径側端部に形成された上下一対のプレート嵌合面16bとを有し、これらは、径方向に対向しており、互いに径方向に当接することによって嵌合部16が構成されている。
【0028】
セクターモールド11は、タイヤ径方向の内側端部において、嵌合部16に向かって(タイヤ径方向内径側に進むにつれて)、タイヤ幅方向外側へ湾曲するセクタ湾曲面11aを有している。同様に、上下一対のサイドプレート12,13は、タイヤ径方向の外側端部において、嵌合部16に向かって(タイヤ径方向外径側に進むにつれて)、タイヤ幅方向外側へ湾曲する上側プレート湾曲面12a及び下側プレート湾曲面13aを有している。
【0029】
したがって、図1に示す断面視において、嵌合部16は、セクタ湾曲面11aと上側プレート湾曲面12a又は下側プレート湾曲面13aとによって、タイヤ幅方向外側に凹となる嘴状に構成されている。
【0030】
図2は、図1のA矢視であって、型締め状態におけるセクターモールド11と下側サイドプレート13との間の嵌合部16の周辺を、成形面側から見た要部正面図である。図2に示されるように、嵌合部16の周辺には、タイヤ幅方向外側に凹となる複数の凹部20が形成されている。
【0031】
凹部20は、正面視で略I状に形成された第1凹部20と、略H状に形成された第2凹部20とから構成されており、これらがタイヤ周方向に交互に繰り返し並ぶように配設されている。第1凹部20及び第2凹部20は、ともに嵌合部16に跨がってタイヤ径方向に延びている。
【0032】
図3は、図2のIII−III線における断面図であり、第1凹部20のタイヤ周方向に沿った断面図を示している。以下、第1凹部20を例にとって凹部20について説明する。図3に示されるように、第1凹部20は、金型基本成形面Sに対してタイヤ幅方向外側へ幅が狭くなるように台形状に凹設されており、基端部側(金型基本成形面S側)に位置する一対の縁部20aと、先端部側に位置する一対の隅部20bとを有している。縁部20a及び隅部20bは、それぞれR状に形成されている。
【0033】
縁部20a及び隅部20bにはそれぞれ、タイヤ幅方向外側に凹となる、溝状のソーカット溝23が形成されている。図2を併せて参照して、ソーカット溝23は、縁部20aに沿って形成された縁部ソーカット溝23と、隅部20bに沿って形成された隅部ソーカット溝23とを有し、それぞれタイヤ径方向に延びた端部が、嵌合部16に連通している。
【0034】
図3を参照して、ソーカット溝23は、溝幅Wが0.3mm以上1.0mm以下に形成されており、溝深さDが0.3mm以上1.0mm以下に形成されている。ソーカット溝23の溝底部23aは、R状断面(本実施形態では半円状)に形成されている。
【0035】
図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図であり、第1凹部20の嵌合部16近傍のタイヤ径方向に沿った断面図である。図4に示されるように、ソーカット溝23は、嵌合部16の近傍おいて、溝深さDが嵌合部16に向かって漸減するように形成されている。より具体的には、ソーカット溝23は、溝深さDが、嵌合部16においてゼロとなるように、嵌合部16からタイヤ径方向内径側の約10mmの範囲において漸減している。また、ソーカット溝23は、溝底面23bが、段部又は角部を介することなく、嵌合部16に向かって滑らかに又は直線状に延びている。
【0036】
ここで、ソーカット溝23の溝深さDがゼロであるとは、概ねゼロであることを意味しており、例えば、5/100mm以下の深さであれば概ねゼロとみなすことができる。
【0037】
セクターモールド11側に形成されたソーカット溝23も同様に、溝深さDが、嵌合部16においてがゼロとなるように、嵌合部16からタイヤ径方向外径側の約10mmの範囲において漸減している。図示は省略するが、第2凹部20についても同様である。
【0038】
以下、図5を参照して、上述したタイヤ加硫金型10においてなされるグリーンタイヤTの加硫成形を説明する。
【0039】
図5(a)に示されるように、型開き状態で、グリーンタイヤTをタイヤ軸心が上下方向を向くようにして下側サイドプレート13上に載置する。このとき、グリーンタイヤTは、下方側に位置するビード部T3において下側ビードリング15によって支持される。
【0040】
次に、図5(b)に示されるように、ブラダ3を膨張させて、その外周面でグリーンタイヤTの内側面を保持する。これにより、グリーンタイヤTは、下側ビードリング15とブラダ3とによって支持される。
【0041】
次に、図5(c)に示されるように、上側サイドプレート12を降下させて、型締め動作を開始する。これによりまず、上側ビードリング14がグリーンタイヤTの上方側に位置するビード部T3に当接する。
【0042】
次いで、図5(d)及び(e)に示されるように、上側サイドプレート12の降下にしたがって、上下一対のビードリング14,15によってグリーンタイヤTが一対のビード部T3を介して上下に押圧されて、上側サイドプレート12及び下側サイドプレート13に沿うように変形する。
【0043】
このとき、グリーンタイヤTは、上側サイドプレート12の降下にしたがって、サイドウォール部T2はビード部T3側に位置する部分から、上下一対のサイドプレート12,13に当接するようになり、上側サイドプレート12の降下終了時に、サイドウォール部T2のトレッド部T1側の部分が上下一対のサイドプレート12,13に当接する。すなわち、サイドウォール部T2は、上側サイドプレート12の降下につれて、タイヤ径方向内径側から外径側へ向かって順次、上下一対のサイドプレート12,13によって上下に挟持されるようになっている。換言すれば、サイドウォール部T2は、上側サイドプレート12の降下にしたがって、上下一対のサイドプレート12,13に、タイヤ径方向の内径側から嵌合部16へ向かって順に当接するようになっている。
【0044】
次に、図5(f)に示されるように、上側サイドプレート12の降下終了時において、セクタ110が径方向内側へ放射状に移動して環状のセクターモールド11を構成しつつ、上下一対のサイドプレート12,13の外径側に嵌合して型締め動作が完了する。
【0045】
このとき、グリーンタイヤTのトレッド部T1は、タイヤ幅方向の中央部と両側部とが、まずセクタ110の成形面に当接しやすく、この間に位置するショルダー部は、セクタ110の内径側への移動にしたがって当接しやすい。すなわち、トレッド部T1は、セクタ110の径方向内側への移動につれて、タイヤ幅方向の中央部と両側部が最初に当接して、次いで、これらの間の部分にかけて、セクタ110に当接するようになっている。
【0046】
図6に示されるように、上述したタイヤ加硫金型10によって成形された空気入りタイヤ1は、トレッド部T1とサイドウォール部T2にかけて、タイヤ幅方向外側に突出した突部30が形成される。突部30は、セクターモールド11と上下一対のサイドプレート12,13とによってこれらの間に形成される型割り線Lに跨がって、タイヤ径方向に延びており、第1凹部20によって形成されたI状の第1突部30と、第2凹部20によって形成されたH状の第2突部30とを有し、これがタイヤ周方向に交互に繰り返し並ぶように配設されている。
【0047】
突部30は、例えば、見栄えの向上を目的としてタイヤの側部に模様付けするための装飾用突起でもよく、若しくは、泥濘地におけるタイヤ側部のトラクション性を確保するためのブロックでもよい。本実施形態では、突部30は、見栄え若しくはトラクション性能を効果的に向上させるために、突出高さが高く、例えば2.0mm以上15.0mm以下に設定されている。
【0048】
ソーカット溝23によって、タイヤ幅方向外側に凸となる凸条33が形成されている。凸条33は、縁部ソーカット溝231によって形成された縁部凸条33と、隅部ソーカット溝23によって形成された角部凸条33とを有している。縁部凸条33は、凸部30の基端側縁部30aに形成されており、角部凸条33は、凸部30の先端側角部30bに形成されている。
【0049】
凸条33は、高さ(金型基本成形面Sにより形成される基本面からの突出高さ)が、型割り線Lにおいてゼロとなるように、型割り線Lに向かってタイヤ径方向に進むにつれて漸減するようになっている。
【0050】
上記説明したタイヤ加硫金型10によれば、以下の効果を奏する。
【0051】
(1)ソーカット溝23は、凹部20の縁部20a及び/又は隅部20bに沿って嵌合部16に連通するように延びているので、加硫成形時において、凹部20の縁部20a及び/又は隅部20bに介在する空気を、ソーカット溝23を介して嵌合部16へ効果的に排出できる。しかも、凹部20から空気を排出する空気排出経路を、ソーカット溝23を嵌合部16に連通させることによって構成でき、ベントホールを介することを要しないので単純化できる。したがって、凹部20からの空気排出経路を単純化しつつも、エア溜まりの生じやすい凹部20の縁部20a及び隅部20bに介在する空気の排出を促進することにより、凹部20におけるエア溜まりを抑制できる。
【0052】
(2)タイヤ加硫金型10は、セグメンテッドモールドであって、上述したように、型締め時に上下一対のサイドプレート12,13により押圧されたサイドウォール部T2は、タイヤ径方向の内径側から嵌合部16に向かって順次、上下一対のサイドプレート12,13に当接することになる。すなわち、ソーカット溝23を、サイドプレート12,13側に設けた場合には、型締め時のサイドウォール部T2におけるゴム流れが、ソーカット溝23において嵌合部16に向かう方向に一致するので、ソーカット溝23にゴムを導入させやすい。この結果、凹部20の縁部20a及び隅部20bへのゴム流れを促進しつつ、空気を、ソーカット溝23におけるゴム流れによって嵌合部16へより効果的に排出できる。
【0053】
(3)ソーカット溝23は、溝深さDが、嵌合部16においてゼロになるように嵌合部16に向かって漸減するように形成されている。これによって、型締め時において、ソーカット溝23に沿って案内されるゴム流れを、嵌合部16に向かってタイヤ径方向内側に案内できる。これによって、ソーカット溝23に沿って流れるゴム流れが、嵌合部16に引き込まれ難くなるので、嵌合部16におけるゴムの噛み込みを可及的に抑制できる。
【0054】
(4)ソーカット溝23は、溝底面23bが段部又は角部を介することなく嵌合部16に延びているので、型締め時において、ソーカット溝23に沿ったゴム流れを、溝底面23bにおける抵抗又は引っ掛かりを抑制しつつ、よりスムーズに嵌合部16側へ案内できる。これによって、嵌合部16への空気の排出を効果的に行うことができる。
【0055】
(5)ソーカット溝23は、溝幅Wが0.3mm以上1.0mm以下であるので、ソーカット溝23を目立ち難く構成しつつも、空気排出効果が十分に得られる。ソーカット溝23の溝幅Wが、0.3mmより小さい場合、溝容積が小さくなるので、空気排出効果が十分に得られない。一方、ソーカット溝23の溝幅Wが、1.0mmより大きい場合、加硫成形された空気入りタイヤにおいて、ソーカット溝23により加硫成形された凸条33が目立ちやすく、見栄えが低下しやすい。特に、凹部20から形成される突部30を、タイヤ側部を装飾するために設ける場合には、太幅に形成された凸条33による見栄えの低下が問題となる。
【0056】
(6)ソーカット溝23は、溝深さDが0.3mm以上1.0mm以下であるので、ソーカット溝23におけるゴムの密着を抑制しつつ、空気排出効果が十分に得られる。ソーカット溝23の溝深さDが、0.3mmより浅い場合、溝容積が小さくなるので、空気排出効果が十分に得られない。一方、ソーカット溝23の溝深さDが、1.0mmより深い場合、加硫成形時においてソーカット溝23内にゴムが密着したり、加硫成形後にソーカット溝23内にゴムが残留したりすることがあり、タイヤ加硫金型10を頻繁に清掃することを要し、生産性が悪い。
【0057】
上記実施形態では、凹部20の縁部20a及び隅部20bの両方に、ソーカット溝23を形成したが、これに限らない。すなわち、図7Aに示されるように、縁部20aにのみソーカット溝23を形成してもよく、図7Bに示されるように、隅部20bにのみソーカット溝23を形成するようにしてもよい。いずれにしても、凹部20の縁部20a及び/又は隅部20bに沿ってソーカット溝23を形成することにより、該金型を用いて加硫成形してなる空気入りタイヤは、突部30の形状に沿うように凸条33が形成されるので、見栄えの低下を抑制できる。
【0058】
上記実施形態では、ソーカット溝23を、セクターモールド11側と上下一対のサイドプレート12,13側とに形成したが、これに限らない。すなわち、ソーカット溝23を、セクターモールド11及び上下一対のサイドプレート12,13のいずれか一方側にのみ形成するようにしてもよい。この場合、サイドウォール部T2におけるゴム流れを考慮して、図8に示されるように、ソーカット溝23を、より効果が得られやすい上下一対のサイドプレート12,13側にのみ形成するようにしてもよい。
【0059】
上記実施形態では、凹部20が嵌合部16に跨がってタイヤ径方向に延びる場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、凹部20を、嵌合部16に接続されるように形成すればよく、セクターモールド11及び上下一対のサイドプレート12,13のいずれか一方側にのみ形成した場合にも、本発明を好適に適用できる。
【0060】
上記実施形態では、ソーカット溝23の溝底部23aを、R状に形成した場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、溝底部23aを、三角形状、矩形状、多角形状、又は台形状等、種々の形状に形成してもよい。ただし、ソーカット溝23におけるゴム流れを考慮して、溝底部23aをR状に形成すること好ましい。
【0061】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 タイヤ加硫金型
11 セクターモールド
12 上側サイドプレート
13 下側サイドプレート
14 上側ビードリング
15 下側ビードリング
16 嵌合部
20 凹部
20a 縁部
20b 隅部
23 ソーカット溝
23 縁部ソーカット溝
23 隅部ソーカット溝
23a 溝底部
23b 溝底面
30 突部
33 凸条
33 縁部凸条
33 角部凸条
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8