特許第6826461号(P6826461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826461
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】高周波加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/68 20060101AFI20210121BHJP
   H05B 6/72 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   H05B6/68 320P
   H05B6/68 320A
   H05B6/68 370
   H05B6/72 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-35671(P2017-35671)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-142452(P2018-142452A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 正己
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−092751(JP,A)
【文献】 特開2011−129341(JP,A)
【文献】 特開2011−138721(JP,A)
【文献】 特開平05−144564(JP,A)
【文献】 特開2014−049276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/68
H05B 6/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上のマイクロ波を発生する発信源を持つマイクロ波発生ユニットと、加熱室と、前記加熱室の内部に設置されたマイクロ波放射手段を有し、前記加熱室に放射したマイクロ波を使用し対象物を加熱する高周波加熱装置であって、前記マイクロ波発生ユニットから前記マイクロ波放射手段に伝送するための伝送線路に進行波、反射波の電力を結合する結合回路と、前記結合回路と結合した進行波、反射波の電力値を比較可能な信号に変換する変換部を有し、
前記マイクロ波発生ユニットの周波数前記マイクロ波放射手段のアンテナ角度回転角度とを組み合わせて変化させた場合に検出される進行波、反射波の少なくともどちらか一方の電力値信号の特性に基づいて、負荷状態を検出することを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項2】
請求項1において、前記進行波、反射波の少なくともどちらか一方の電力値信号の特性は、該電力値信号の特性の最大値と最小値の差分値または比の比較であることを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項3】
請求項1において、前記反射波の電力値信号の特性は、反射波の電力値信号の特性の最大値と最小値の差分値または比の比較であることを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項4】
請求項1において、前記進行波、反射波の少なくともどちらか一方の電力値信号の特性は、前記進行波の電力値信号と反射波の電力値信号の差分値または比から得られる特性の最大値と最小値の差分値または比の比較であることを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項5】
請求項1において、前記進行波、反射波の少なくともどちらか一方の電力値信号の特性は、前記進行波の電力値信号と反射波の電力値信号の差分値または比から得られる特性の最大値と最小値と、前記マイクロ波発生ユニットの周波数前記マイクロ波放射手段のアンテナ角度回転角度とを組み合わせて変化させた場合の関係性の比較であることを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項6】
請求項1において、前記進行波、反射波の少なくともどちらか一方の電力値信号の特性は、前記進行波の電力値信号または反射波の電力値信号特性の少なくともどちらか一方の最大値と最小値と、前記マイクロ波発生ユニットの周波数前記マイクロ波放射手段のアンテナ角度回転角度とを組み合わせて変化させた場合の関係性の比較であることを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の1個以上のマイクロ波を発生する前記発信源において、加熱対象物に照射する信号をバースト波としON時間とOFF時間をコントロールし、進行波の電力値信号と反射波の電力値信号電力を測定する場合にマイクロ波のバースト波ON時間をマイクロ波の前記発信源が破壊・信頼性の低下が起こらないまで短くした請求項1から4のいずれか一つに記載の高周波加熱装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一つに記載の1個以上のマイクロ波を発生する前記発信源において、加熱対象物に照射する信号をバースト波としON時間とOFF時間及びON時の電力をコントロールし、進行波の電力値信号と反射波の電力値信号電力を測定する場合にマイクロ波のバースト波ON時間をマイクロ波の前記発信源が破壊・信頼性の低下が起こらないまで短くした高周波加熱装置。
【請求項9】
前記マイクロ波放射手段に伝送するための前記伝送線路が導波管であり反射波、進行波の電力を結合する前記結合回路がマイクロストリップ線路またはストリップ線路で構成された請求項1から8のいずれか一つに記載の高周波加熱装置。
【請求項10】
マイクロ波放射手段に伝送するための前記伝送線路および反射波、進行波の電力を結合する前記結合回路がマイクロストリップ線路またはストリップ線路で構成された請求項1から8のいずれか一つに記載の高周波加熱装置。
【請求項11】
前記マイクロ波発生ユニットの周波数前記マイクロ波放射手段の回転角度とを組み合わせて変化させた場合に検出される進行波の電力値信号を、マイクロ波を発生する発信源を持つマイクロ波発生ユニットの消費電力から求める請求項9に記載の高周波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波により対象物を処理する高周波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用電子レンジ、焼物・木材乾燥等の農工業製品、医療・化学等に、用いられる工業用高周波加熱装置等では、被加熱物の短時間加熱、食品の部分的な加熱、加熱状態のリアルタイムセンシング等の要望が高まっている。また、これらの要望を実現するために、これまでマイクロ波発生装置の主流であったマグネトロンから、周波数安定度の高い高周波発信機及び高周波電力増幅器を用いた固体化マイクロ波発生装置へ移行されようとしている。現状では、マイクロ波電力と価格の比で比較した場合、マグネトロンのコストパフォーマンス極めて高く、半導体で構成された高周波発信機及び高周波電力増幅器の固体化マイクロ波発生装置を用いた回路ではコスト高となる。しかし、今後多くの台数が製品化されることで低コスト化は進むと考えられる。このように固体化マイクロ波発生装置への移行が進めば、周波数の安定度も向上し周波数制御や位相制御が可能となるが、これを高精度に検知する検知回路が極めて重要となる。この検知技術が向上することで負荷の状態を把握し詳細な制御を行うことで負荷加熱の短時間化、部分的な加熱等の更なる機能向上が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-138721
【特許文献2】特開2013-33601
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロ波発生装置で発生されたマイクロ波は、加熱庫内に置かれた被加熱物にマイクロ波を放射する放射手段(アンテナ等)まで伝送線路を用いて送られる(進行波)。この時、加熱庫内が無負荷(被加熱物無)状態の場合、加熱庫内で電力は損失されることなく反射され大部分のマイクロ波電力がマイクロ波発生装置に戻る(反射波)。この無負荷状態や無負荷に近い状態での反射波は、最悪の場合マイクロ波発生装置への大きなダメージや寿命の低下を招いてしまう。そのために反射波を吸収しマイクロ波発生装置を保護するためにサーキュレータ回路やアイソレータ回路を別途付加しなければならず、コストの上昇や進行波の損失増加が課題となっていた。
【0005】
また、庫内に入れられた被加熱物が加熱された場合に水分含有量が変化する等の状態変化を進行波と反射波の電力量の比で捉える負荷状態検知にも用いることが可能であるが、進行波電力と反射波電力の比を高精度に検出する必要があり、これまでの検出回路では高精度に把握することはできなかった。例えば家庭用の電子レンジの場合この原因として、電子レンジ全体の小型化要求等から検出回路部も出来る限り小型化する必要があり十分な面積が取れない。さらに検出回路面積が制約されれば進行波電力と反射波電力を検出するための方向性結合器性能が犠牲となり精度が落ちてしまう等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するために、1個以上のマイクロ波を発生する発信源を持つマイクロ波発生ユニットと、加熱室と、前記加熱室の内部に設置されたマイクロ波放射手段を有し、前記加熱室に放射したマイクロ波を使用し対象物を加熱する高周波加熱装置であって、前記マイクロ波発生ユニットから前記マイクロ波放射手段に伝送するための伝送線路に進行波、反射波の電力を結合する結合回路と、前記結合回路と結合した進行波、反射波の電力値を比較可能な信号に変換する変換部を有し、前記マイクロ波発生ユニットの周波数前記マイクロ波放射手段のアンテナ角度回転角度とを組み合わせて変化させた場合に検出される進行波、反射波の少なくともどちらか一方の電力値信号の特性に基づいて、負荷状態を検出する高周波加熱装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マイクロ波発生装置への大きなダメージや寿命の低下を招く反射波を吸収し、マイクロ波発生装置を保護するためのサーキュレータ回路やアイソレータ回路を別途付加しなくても良く、コストの上昇や進行波の損失増加を抑制することが可能である。また、小型ながら進行波電力と反射波電力の比を高精度に検出することで高精度な負荷状態検知をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。
図2】本発明の第2実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。
図3】本発明の第3実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。
図4】本発明の第4実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。
図5】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置のマイクロ波発生ユニットで発生するマイクロ波発生パタンを示す図である。
図6】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置の周波数またはアンテナ角度と反射電力の関係を示す図である。
図7】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置の進行波電力と反射波電力との周波数またはアンテナ角度と電力の関係を示す図である。
図8】本発明の第1実施例から第4実施例及び第9実施例から第11実施形態である高周波加熱装置の方向性結合器の動作及び方向性を示す図である。
図9】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置に用いられる結合回路の構成を示す図である。
図10】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置に用いられる結合回路の構成を示す図である。
図11】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置に用いられる結合回路の構成を示す図である。
図12】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置に用いられる結合回路の構成を示す図である。
図13】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置に用いられる結合回路の構成を示す図である。
図14】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置に用いられる結合回路の構成を示す図である。
図15】本発明の第1実施例から第4実施例である高周波加熱装置に用いられる結合回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、無負荷や負荷の状態を検出するための方向性結合器等の検出回路を付加し、マイクロ波発生装置から出力される進行波電力と加熱庫内の負荷に対する反射波電力をモニタすることで、常にマイクロ波発生装置から出力される電力がマイクロ波の発信源が破壊または信頼性の低下が起こらない状態とすることが可能となる。また、常に反射波によってマイクロ波の発信源が破壊または信頼性の低下が起こらない場合には、加熱庫内の負荷に対し反射波が最も少なくなるように、マイクロ波発生装置の周波数、位相、マイクロ波を放射する放射手段(アンテナ等)の回転角度の変化を組み合わせたり、また複数の放射手段を持つ場合には各々のマイクロ波発生装置の周波数、位相、マイクロ波を放射する放射手段(アンテナ等)の回転角度の変化を最適に組み合わせることにより、マイクロ波発生装置の保護やコストの上昇や進行波の損失増加が低減できる。
【0010】
また、加熱庫内に入れられた被加熱物が加熱された場合に起きる水分含有量変化等の状態変化を、進行波と反射波の電力量の比または反射波電力を方向性結合器等の検出回路を付加し、常時マイクロ波発生装置から出力される進行波電力と加熱庫内の負荷に対する反射波電力をモニタすることで、水分含有量変化や被加熱物の誘電率(比誘電率、誘電体損)等の状態を把握可能となる。
【0011】
これらに用いられる無負荷や負荷の状態を検出する方向性結合器の検出精度を高精度化させるためには、方向性結合器の性能を決める指標の一つとして方向性が重要である。図20を用いて方向性結合器について説明する。
【0012】
マイクロ波発生装置から出力された進行波は方向性結合器を通過しマイクロ波を放射する放射手段(アンテナ等)に到達し加熱庫内へ放射される。ここで加熱庫内が無負荷(被加熱物無)や負荷での損失が少ない場合には、反射波が発生しマイクロ波発生装置に戻るがこの反射波が大きい場合にマイクロ波発生装置内に存在するマイクロ波発信源に破壊または信頼性の低下が起こる。また、この反射波電力と進行波電力の比または反射波電力を検出することで加熱庫内の状態を把握可能となる。
【0013】
方向性結合器の動作としてport1端子から入力された進行波T値に対し一定比率で結合させ結合進行波TCを得る。同様にport2端子から入力された反射波R値に対し一定比率で結合させ結合反射波RCを得る。この結合された結合進行波TCと結合反射波RCの比から負荷での反射波を得ることが可能となる。方向性結合器の動作及び方向性を図8に示す。
【0014】
また、この方向性結合器の検出精度を高精度化させるための指標である方向性は、反射波R値に対し一定比率で結合させ結合反射波RCを検知する端子であるport4に出力される結合反射波RCに、進行波Tからどの程度漏れ込むかを表すものであり、方向性D=結合反射波RC-漏洩進行波TLで定義される。この方向性Dが所望の周波数で大きな値であれば漏洩進行波TLが極めて少なくなり結合反射波RCへの影響を及ぼさなくなり、高精度に測定可能となる。しかし、方向性を広帯域でかつ高い値で実現しようとした場合には、漏洩進行波TLを打消すために複数の結合部分を1/4波長に並べる等の回路配置が必要となるため面積が増加してしまうが、図6に示した周波数またはアンテナ角度と反射電力の関係ように、反射波電力のみを検知する場合には、無負荷時の反射波電力の最大値と最小値の差ΔP_openと有負荷時の反射波電力の最大値と最小値の差ΔP_loadの差を比較することで負荷状態の検知が可能となる。
【0015】
また、更なる高精度化を行うための方法として図7に進行波電力と反射波電力との周波数またはアンテナ角度と電力の関係を示す。ここでは有負荷時における進行波電力の最大値と最小値の差ΔP_Twaveと反射波電力の最大値と最小値の差ΔP_Rwaveとの差ΔP_Loadを求め、さらに無負荷時における進行波電力の最大値と最小値の差ΔP_Twaveと反射波電力の最大値と最小値の差ΔP_Rwaveとの差ΔP_Openを求める。求められたΔP_LoadとΔP_Openの差を求めることで、より高精度に負荷状態の検知が可能となる。これらの方式により負荷検知が高精度に行うことを特長とする高周波加熱装置を実現できる。
【0016】
前記進行波の電力値信号と反射波の電力値信号の差分値または比から得られる特性の最大値と最小値と、周波数もしくは前記マイクロ波放射手段の角度または回転角度の少なくともどちらか一方を変化させた場合の関係性の比較で負荷状態を検知してもよい。または、
前記進行波の電力値信号または反射波の電力値信号特性の少なくともどちらか一方の最大値と最小値と、周波数もしくは前記マイクロ波放射手段の角度または回転角度の少なくともどちらか一方を変化させた場合の関係性の比較で負荷状態を検知してもよい。
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)である高周波加熱装置の基本的構成を、図1を用いて説明し、次に本実施形態の特徴構成について各図で説明する。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の第1実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。高周波加熱装置101は、加熱室102、マイクロ波放射手段103、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路104、マイクロ波発生ユニット105、マイクロ波発生ユニット105への電力を供給するインバータ回路の動作制御、インバータでの消費電力計算、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路104で得られた進行波電力及び反射波電力の各電力値を演算可能な電気信号に変換する検出・演算・制御回路部を持ち、マイクロ波発生ユニット105から出力されたマイクロ波電力を低損失な伝送線路により加熱室102まで伝送される。加熱室102内では回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段103から被加熱物に照射される。回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段103は、回転することで被加熱物での偏った加熱を防ぎ被加熱物の加熱温度を均一化するように動作する。しかし、回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段103だけでは、被加熱物の加熱温度を均一化することは困難であるため、さらにマイクロ波発生ユニット105の周波数を変化させることで被加熱物の加熱温度の均一化を図ることができる。マイクロ波発生ユニット105での周波数を変化させた場合には、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路104にて進行波及び反射波の電力をモニタし反射波電力/進行波電力が少なくなるように回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段103の角度、回転角度、またはマイクロ波発生ユニット105での周波数を変化させるように制御を行う。
【0019】
また、被加熱物の加熱時におけるマイクロ波発生パタンを図5に示す。マイクロ波電力をコントロールするための方法として、マイクロ波発生パタンAに示した、加熱時間TonとOFF時間Toffの時間を変化させたバースト波により加熱する方法と、マイクロ波発生パタンBに示した、加熱時間TonとOFF時間Toffの時間を固定した加熱時間Tonバースト波の信号電力を徐々に増加させてゆく方法を用いる。加熱開始時には、マイクロ波発生パタンBを用い、定常状態ではマイクロ波発生パタンAを用い加熱時間TonとOFF時間Toffの時間を変化させることで加熱時間や被加熱物の加熱均一化制御を行う。尚、マイクロ波発生パタンA及びマイクロ波発生パタンBを合わせて制御すれば更なる細かな加熱時間や被加熱物の加熱均一化制御が実現できる。またマイクロ波発生パタンA、マイクロ波発生パタンBどちらか一方のみの制御でも問題ない。
【0020】
更に加熱開始時に加熱室102内の負荷状態を知る得るために、マイクロ波発生パタンAにおいては加熱時間Tonを短くしOFF時間Toffの時間を長くすることで単位時間当たりの進行波電力を少なくすることが可能となり仮に加熱室102内に被加熱物が存在しない無負荷状態であっても反射波電力を抑制することができるためマイクロ波発生ユニット105へのダメージを少なくすることができる。また、マイクロ波発生パタンAにおいては加熱時間Ton時の電力を少なくしておくことで開始時の進行波電力を少なくすることが可能となり仮に加熱室102内に被加熱物が存在しない無負荷状態であっても反射波電力を抑制することができる。尚、マイクロ波発生パタンA及びマイクロ波発生パタンBを合わせて制御すれば更なる細かな進行波電力制御が実現できる。
【実施例2】
【0021】
図2は、本発明の第2実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。高周波加熱装置201は、加熱室202、マイクロ波放射手段203、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路204、マイクロ波発生ユニット205、マイクロ波放射手段203への電力を分配する電力分配器206、マイクロ波発生ユニット205への電力を供給するインバータ回路の動作制御、インバータでの消費電力計算、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路204で得られた進行波電力及び反射波電力の各電力値を演算可能な電気信号に変換する検出・演算・制御回路部を持ち、マイクロ波発生ユニット205から出力されたマイクロ波電力を低損失な伝送線路により電力分配器206に送信され、加熱室202内に設けられた複数のアンテナによるマイクロ波放射手段203に各々分配され、被加熱物に照射される。加熱室202内に設けられた複数のアンテナによるマイクロ波放射手段203への電力供給は、電力分配器206で使用されているアンテナ数に分配しても良い。加熱室202内に設けられた複数のアンテナによるマイクロ波放射手段203とすることで被加熱物での偏った加熱を防ぎ被加熱物の加熱温度を均一化するように動作する。しかし、加熱室202内に設けられた複数のアンテナによるマイクロ波放射手段203だけでは、被加熱物の加熱温度を均一化することは困難であるため、さらにマイクロ波発生ユニット205の周波数を変化させることで加熱温度の均一化を図ることができる。マイクロ波発生ユニット205での周波数を変化させた場合には、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路204にて進行波及び反射波の電力をモニタし反射波電力/進行波電力が少なくなるようにマイクロ波発生ユニット205での周波数を変化させるように制御を行う。
【0022】
また、被加熱物の加熱時におけるマイクロ波発生パタンに関する説明は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0023】
図3は、本発明の第3実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。高周波加熱装置301は、加熱室302、マイクロ波放射手段303、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路304、マイクロ波発生ユニット305、マイクロ波発生ユニット305への電力を供給するインバータ回路の動作制御、インバータでの消費電力計算、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路304で得られた進行波電力及び反射波電力の各電力値を演算可能な電気信号に変換する検出・演算・制御回路部を持ち、マイクロ波発生ユニット305から出力されたマイクロ波電力を低損失な伝送線路により加熱室302まで伝送される。加熱室302内では回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段303から被加熱物に照射される。回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段303は、回転することで被加熱物での偏った加熱を防ぎ被加熱物の加熱温度を均一化するように動作する。しかし、回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段303だけでは、被加熱物の加熱温度を均一化することは困難であるため、さらにマイクロ波発生ユニット305ではf1〜fnのうち少なくとも1つの周波数を出力することで被加熱物の加熱温度の均一化を図ることができる。マイクロ波発生ユニット305ではf1〜fnのうち少なくとも1つの周波数を出力させた場合には、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路304にて進行波及び反射波の電力をモニタし反射波電力/進行波電力が少なくなるように回転アンテナなどによるマイクロ波放射手段303の回転角度、または、マイクロ波発生ユニット305ではf1〜fnのうち少なくとも1つの周波数を出力させるように制御を行う。
【0024】
また、被加熱物の加熱時におけるマイクロ波発生パタンに関する説明は、実施例1と同様であるが、マイクロ波発生ユニット305においてf1〜fnでの中の複数個を動作させた場合、それらが常に同じマイクロ波発生パタンを持つ必要はない。これはすべてのマイクロ波発生パタンが異なっていても良く、例えば瞬時的にマイクロ波発生ユニット305中のf1〜fnのいずれか1個が動作していても良い。
【実施例4】
【0025】
図4は、本発明の第4実施例である高周波加熱装置の構成を示す図である。高周波加熱装置401は、加熱室402、マイクロ波放射手段403a〜403d、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路404a〜404d、マイクロ波発生ユニット405a〜405d、マイクロ波発生ユニット405a〜405dへの電力を供給するインバータ回路の動作制御、インバータでの消費電力計算、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路404a〜404dで得られた進行波電力及び反射波電力の各電力値を演算可能な電気信号に変換する検出・演算・制御回路部を持ち、マイクロ波発生ユニット405a〜405dから出力されたマイクロ波電力を低損失な伝送線路により加熱室402内に設けられた複数のアンテナによるマイクロ波放射手段403a〜403dに送信され、被加熱物に照射される。加熱室402内に設けられた複数のアンテナによるマイクロ波放射手段403a〜403dとすることで被加熱物での偏った加熱を防ぎ被加熱物の加熱温度を均一化するように動作する。しかし、加熱室402内に設けられた複数のアンテナによるマイクロ波放射手段403a〜403dだけでは、被加熱物の加熱温度を均一化することは困難である。マイクロ波発生ユニット405a〜405dではf1〜fnの全ての周波数が異なっていても、同じ周波数であっても良く、これらの周波数のマイクロ波を出力することで被加熱物の加熱温度の均一化を図ることができる。マイクロ波発生ユニット405a〜405dで出力させた場合には、進行波及び反射波の電力を結合する各々の結合回路404a〜404dにて進行波及び反射波の電力をモニタし各々の反射波電力/進行波電力が少なくなるようにマイクロ波発生ユニット405a〜405dではf1〜fnの全ての周波数が異なっていても、同じ周波数であっても良く、これらの周波数のマイクロ波を出力するように制御を行う。
【0026】
また、被加熱物の加熱時におけるマイクロ波発生パタンに関する説明は、実施例1と同様であるが、マイクロ波発生ユニット405a〜405dにおいてf1〜fnでの中の複数個を動作させた場合、それらが常に同じマイクロ波発生パタンを持つ必要はない。これはすべてのマイクロ波発生パタンが異なっていても良く、例えば瞬時的にマイクロ波発生ユニット405a〜405d中のf1〜fnのいずれか1個が動作していても良い。
【実施例5】
【0027】
図9は、本発明の第5実施例である高周波加熱装置に用いられる、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路の構成を示す図である。結合回路は、主線路601、結合線路602、誘電体603、グランド604のマイクロストリップ線路で構成されており、マイクロ波発生ユニットから出力されたマイクロ波は、主線路601にてマイクロ波放射手段に供給される。この時、結合線路602にて進行波及び反射波の電力を結合する。
【実施例6】
【0028】
図10は、本発明の第6実施例である高周波加熱装置に用いられる、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路の構成を示す図である。結合回路は、主線路701、結合線路702、誘電体703、グランド704のストリップ線路で構成されており、マイクロ波発生ユニットから出力されたマイクロ波は、主線路701にてマイクロ波放射手段に供給される。この時、結合線路702にて進行波及び反射波の電力を結合する。
【実施例7】
【0029】
図11は、本発明の第7実施例である高周波加熱装置に用いられる、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路の構成を示す図である。結合回路は、導波管主線路801、マイクロストリップ結合線路802a、802b、マイクロ波入出力端子803、結合穴804で構成されており、マイクロ波入出力端子803から入力されたマイクロ波は、結合穴804で結合されマイクロストリップ結合線路802a、802bに伝えられる。ここではマイクロストリップ結合線路802a、802bは導波管主線路801上面と接していないが、実際には結合穴804中心線の導波管主線路801上面に接する。更に方向性結合器の方向性を高めるためにマイクロストリップ結合線路802a、802bのように回転させ最適点を求める。
【実施例8】
【0030】
図12は、本発明の第8実施例である高周波加熱装置に用いられる、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路の構成を示す図である。結合回路は、導波管主線路901、マイクロストリップ結合線路902、マイクロ波入出力端子903、結合穴904で構成されており、マイクロ波入出力端子903から入力されたマイクロ波は、結合穴904で結合されマイクロストリップ結合線路902に伝えられる。ここではマイクロストリップ結合線路902は導波管主線路901上面と接していないが、実際には各結合穴904の中心線の導波管主線路801上面に接する。ここでは方向性結合器の方向性を高めるために複数の結合穴904を周波数に比例した長さに配置している。
【実施例9】
【0031】
図13は、本発明の第9実施例である高周波加熱装置に用いられる、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路の構成を示す図である。結合回路は、導波管主線路1001、ストリップ結合線路1002で構成されており、結合線路としてストリップ線路が使用されており実施例8と同等の動作をする。
【実施例10】
【0032】
図14は、本発明の第10実施例である高周波加熱装置に用いられる、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路の構成を示す図である。結合回路は、導波管主線路1101、同軸結合線路1102で構成されており、結合線路として同軸線路が使用されており実施例8と同等の動作をする。
【実施例11】
【0033】
図15は、本発明の第11実施例である高周波加熱装置に用いられる、進行波及び反射波の電力を結合する結合回路の構成を示す図である。結合回路は、導波管主線路1201、同軸結合線路1202で構成されており、結合線路として同軸線路が使用されており実施例8と同等の動作をする。
【符号の説明】
【0034】
高周波加熱装置 101、201、301、401
加熱室 102、202、302、402
マイクロ波放射手段 103、203、303、403a〜403d
結合回路 104、204、304、404a〜404d
マイクロ波発生ユニット 105、205、305、405a〜405d
主線路 601、701、
結合線路 602、702
誘電体 603、703
グランド604、704
導波管主線路 801、901、1001、1101、1201
マイクロストリップ結合線路 802a、802b、902
ストリップ結合線路 1002
同軸結合線路 1102、1202
マイクロ波入出力端子 803、903
結合穴 804、904
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15