(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る媒体供給装置10について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る媒体供給装置10を備える印字システム1を説明する概略図である。
【0012】
印字システム1は、本発明の実施形態に係る媒体供給装置10と、媒体供給装置10から供給された単葉状の印字媒体(以下、単葉媒体という)Pに印字を施す印字装置20とを備える。
【0013】
印字装置20は、印字媒体に文字、図形等を印字する。印字装置20における印字方式としては、インクジェット方式、レーザ方式、熱転写方式等が挙げられる。印字装置20は、媒体供給装置10から印字媒体としての単葉媒体Pの供給を受ける。
【0014】
本実施形態において、単葉媒体Pは、印字装置20に適用された印字方式に適合するものである。単葉媒体Pとしては、通常の印字媒体、製品に取り付けるタグ、製品に貼付して用いるラベル等が挙げられる。また、単葉媒体Pは、RFID(Radio Frequency Identification)仕様のICチップ及びアンテナパターンが組み込まれたタグ、ラベル等であってもよい。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る媒体供給装置10は、単葉媒体Pが積載される台座11と、台座11に設置されて印字装置20に向けて単葉媒体Pを供給するための供給機構12とを備える。また、媒体供給装置10は、積載された単葉媒体Pを押圧する押圧機構13を有する。
【0016】
図示しないが、媒体供給装置10は、単葉媒体Pの供給機構12が印字装置20の媒体受取部21に合致するように位置合わせ可能な構造を有する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る媒体供給装置10の供給機構12の一部を開放して説明する拡大側面図である。なお、
図2では、説明の便宜上、一部の部材が除いて描かれている。
【0018】
供給機構12は、第1ローラ121と、第2ローラ122と、支持部123とを備える。
図2においては、第1ローラ121と、第2ローラ122は、支持部123及び後述する第1ギア131に隠れているため、破線で示されている。
【0019】
第1ローラ121は、回転軸121aにおいて、装置本体に回転自在に取り付けられている。また、媒体供給装置10は、第1ローラ121を回転させるための駆動モータ(図示しない)が設けられている。第1ローラ121の回転軸121aには、駆動モータと接続するための駆動ギア141が設けられている。
【0020】
また、第1ローラ121は、台座11に積載された単葉媒体Pの最下の単葉媒体Pの裏面に当接するように配置されている。第1ローラ121は、最下の単葉媒体Pの裏面に当接して、単葉媒体Pを所定の搬送方向(
図2における矢印MD)に搬送する。
【0021】
第1ローラ121が単葉媒体Pに当接した際にスリップしないように、第1ローラ121の表面には、摩擦係数の大きい材料が配置されていることが好ましい。或いは、第1ローラ121が摩擦係数の大きい材料で形成されていてもよい。
【0022】
第2ローラ122は、回転軸122aにおいて、支持部123に回転自在に取り付けられている。第2ローラ122は、第1ローラ121の上方且つ第1ローラ121よりも搬送方向下流側に配置されている。また、第2ローラ122は、第1ローラ121と同方向に回転するように構成されている。第2ローラ122は、単葉媒体Pの表面に当接するように配置されている。
【0023】
支持部123は、第1ローラ121の回転軸121aに回動自在に取り付けられている。これにより、支持部123は、第2ローラ122を第1ローラ121の回転軸121aに対して矢印S方向に揺動自在となっている。
【0024】
供給機構12は、第2ローラ122を第1ローラ121と同方向に回転させるための機構として、第1ギア131と、第2ギア132と、中間ギア133とを備える。
【0025】
第1ギア131は、第1ローラ121と同軸に取り付けられている。
【0026】
第2ギア132は、第2ローラ122と同軸に取り付けられている。
【0027】
中間ギア133は、第1ギア131と第2ギア132との間に配置されており、回転軸133aにおいて支持部123に対して回転自在に取り付けられている。中間ギア133は、第1ギア131と第2ギア132の両方に噛合されている。
【0028】
ここで、第1ギア131,第2ギア132及び中間ギア133のギア比は、第2ローラ122のトルクが第1ローラ121のトルクよりも下回るように設定されている。
【0029】
供給機構12は、第1ギア131と、第2ギア132と、中間ギア133とを備えることによって、第1ローラ121と第2ローラ122とを下記に説明するように動かすことができる。
【0030】
すなわち、駆動ギア141を介して駆動モータから伝達された矢印C1方向の回転によって、第1ローラ121が回転させられると、第1ローラ121に取り付けられた第1ギア131が矢印C1方向に回転する。
【0031】
第1ギア131の矢印C1方向の回転は、矢印C2方向の回転として中間ギア133に伝達される。さらに、中間ギア133の矢印C2方向の回転は、第2ギア132に矢印C3方向の回転として伝達される。これにより、第2ローラ122は、第1ローラ121と同じ方向(矢印C1方向)に回転することができる。
【0032】
上記構成を備える供給機構12において、支持部123は、揺動方向(矢印S)に揺動することにより、搬送される単葉媒体Pに第2ローラ122を近づける状態になっていることが好ましい。
【0033】
そこで、第2ローラ122、支持部123、第1ギア131、第2ギア132及び中間ギア133からなる揺動部分の重心が第1ローラ121の回転軸121aよりも搬送方向下流側に位置するように構成する。
【0034】
これにより、揺動部分の自重によって、支持部123が自ずと搬送方向下流側に傾いて、第2ローラ122を単葉媒体Pの表面に当接することができる。
【0035】
なお、支持部123は、第2ローラ122が単葉媒体P1に向けて倒れ込み過ぎると、単葉媒体P1の正常搬送を妨げることになるため、支持部123の揺動動作には、揺動方向Sに所定の可動範囲が設定されている。
【0036】
このため、図示しないが、供給機構12には、正常に送り出される単葉媒体Pの表面よりも第2ローラ122が下方に下がらないように、支持部123の揺動動作を規制するためのストッパが設けられている。
【0037】
次に、媒体供給装置10における単葉媒体Pが供給される動作を説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る媒体供給装置10の供給機構12の動作を説明するための拡大側面図である。なお、
図3では、説明の便宜上、一部のギア類が除いて描かれている。
【0038】
媒体供給装置10において、第1ローラ121は、積載された単葉媒体Pの最下の単葉媒体P1に当接するように配置されている。このため、第1ローラ121が矢印C1方向に回転すると、第1ローラ121に当接した単葉媒体P1が搬送方向MDに送り出される。
【0039】
一方、第2ローラ122は、上述したギア構成によって、第1ローラ121と同方向である矢印C3方向に回転する。すなわち、第2ローラ122は、搬送方向MDに沿って搬送される単葉媒体P1が第2ローラ122に当接すると搬送方向MDの上流側に戻される方向に回転している。
【0040】
また、支持部123は、第2ローラ122が単葉媒体Pの上面に当接するように回動しており、第2ローラ122のトルクは、第1ローラ121のトルクよりも下回るように構成されている。
【0041】
これにより、単葉媒体P1が第1ローラ121によって搬送方向MDに送り出される際には、単葉媒体P1の上面が搬送方向と反対方向に回転する第2ローラ122とスリップした状態で、単葉媒体P1は、搬送方向MDに送り出される。
【0042】
このため、最下の単葉媒体P1よりも上に位置する単葉媒体P2が単葉媒体P1と重なった状態で搬送方向に送り出された場合であっても、単葉媒体P2は、第2ローラ122によって阻まれて留保され、第2ローラ122よりも搬送方向MDの下流側に搬送されない。
【0043】
したがって、媒体供給装置10は、積載された複数の単葉媒体Pを一枚ずつ供給することができる。
【0044】
ここで、
図1に示す押圧機構13について説明する。押圧機構13は、単葉媒体Pを押圧している。
【0045】
最下の単葉媒体Pと第1ローラ121の接触圧を十分に高める観点から、押圧機構13は、単葉媒体Pを第1ローラ121に向けて押圧するように配置されていることが好ましい。
図3に示す押圧機構13では、先端部分13aは、第1ローラ121の鉛直上方に配置されている。
【0046】
単葉媒体Pの十分な積載量がある場合には、単葉媒体Pの重量によって、最下の単葉媒体P1と第1ローラ121との接触圧が大きくなる。このため、第1ローラ121のトルクが単葉媒体P1に効率的に伝わることができ、単葉媒体P1をスムースに送り出すことができる。
【0047】
一方、単葉媒体Pの積載量が減ってくると、第1ローラ121にかかる重量が軽減する。このため、最下の単葉媒体P1と第1ローラ121との接触圧が低減する。このとき、第1ローラ121がスリップし易くなり、第1ローラ121のトルクが単葉媒体P1に伝わりにくくなる。このような場合には、最下の単葉媒体P1がスムースに送り出されなくなる。
【0048】
これに対して、押圧機構13によれば、後者の状況になっても、最下の単葉媒体P1と第1ローラ121との接触圧を高い状態で保持できる。これにより、第1ローラ121のトルクを単葉媒体P1に効率的に伝えることができ、単葉媒体P1をスムースに送り出すことができる。
【0049】
最下の単葉媒体P1と第1ローラ121との接触圧が高められることにより、万一、単葉媒体P1と単葉媒体P2とが重なった状態で送り出されたとしても、単葉媒体P1よりも上に位置する単葉媒体P2が第2ローラ122によって阻まれて留保され、第2ローラ122よりも搬送方向MDの下流側に搬送されない。このため、単葉媒体Pが重なった状態で送り出されることが防止される。
【0050】
また、媒体供給装置10においては、第2ローラ122が単葉媒体Pの上面に当接するように揺動可能に配置されているため、供給する単葉媒体Pの厚みの変化にも対応可能である。
【0051】
図4は、本発明の実施形態に係る媒体供給装置10において、
図3に示した例とは異なる厚みの単葉媒体Pを供給するときの供給機構12の動作を説明するための拡大側面図である。
【0052】
図2を用いて説明したように、支持部123は、矢印S方向に揺動可能に配置されている。このため、
図3を用いて説明した場合よりも厚い単葉媒体Pが用いられた場合には、第2ローラ122は、
図4に示すように矢印S方向に動くことができる。
【0053】
このように、本実施形態においては、第2ローラ122、支持部123、第1ギア131、第2ギア132及び中間ギア133からなる揺動部分が自重により傾斜する構成とされている。これにより、単葉媒体Pの厚みが変わっても、第1ローラ121と最下の単葉媒体P1との当接を保持しながら単葉媒体P1の上の単葉媒体P2を阻むことのできるローラ間の位置関係が実現できる。
【0054】
また、本実施形態に係る媒体供給装置10は、上記揺動部分が自重により傾斜する構成とされている。このため、例えば、単葉媒体Pに部分的な厚みの変化がある場合や、凹凸がある場合や、搬送中に単葉媒体Pが搬送面の鉛直方向にぶれるような場合等があっても、第1ローラ121及び第2ローラ122は、単葉媒体Pに追従できる。
【0055】
したがって、この場合であっても、媒体供給装置10は、積載された複数の単葉媒体Pを一枚ずつ供給することができる。
【0056】
[その他の実施形態]
本実施形態においては、媒体供給装置10から単葉媒体Pの供給を受ける装置が印字装置20の場合について説明したが、ファクシミリ、複写機、光学読取装置等であってもよい。或いは、ファックス機能、印字機能、複写機能及び光学読取機能を備えた複合機であってもよい。
【0057】
上述した実施形態において、支持部123を、揺動方向(矢印S)において、第2ローラ122を単葉媒体Pに近づけるように傾斜させるために、ねじりばね等を用いて支持部123を付勢してもよい。
【0058】
上述した実施形態において、第1ローラ121のローラ径は、第2ローラ122のローラ径よりも大きく設定されていてもよい。これにより、第1ローラ121のトルクを第2ローラ122のトルクよりも大きくすることができる。このため、単葉媒体P1を搬送方向MDに搬送しやすく、単葉媒体P2を留めやすくすることができる。
【0059】
上述した実施形態において、第2ローラ122のトルクが第1ローラ121のトルクよりも下回るようにギア比を設定する代わりに、第2ローラ122の摩擦係数を第1ローラ121の摩擦係数よりも低く設定してもよい。
【0060】
これにより、第2ローラ122が第1ローラ121と同じトルクで回転しても、単葉媒体Pの搬送を妨げることなく、搬送方向MDに供給することができる。
【0061】
上述した実施形態において、台座11には、単葉媒体Pを送り出すための供給口が形成された仕切壁が設けられていてもよい。供給口は、適用可能な各種単葉媒体Pのうち、最大の厚みを有する単葉媒体Pに併せたサイズに形成されていることが好ましい。
【0062】
これにより、積載された単葉媒体Pのうち仕切壁の供給口よりも上方に位置する単葉媒体Pに対しては、仕切壁によって、単葉媒体Pの搬送方向下流側の端部が揃えられる。また、供給口に対応する位置にある単葉媒体Pに対しては、仮に、最下の単葉媒体P1に重なって供給口から送り出されたとしても、第2ローラ122によって阻まれて留保され、第2ローラ122よりも搬送方向MDの下流側に搬送されない。このため、単葉媒体Pが重なった状態で送り出されることが防止される。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。