(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。すべての図面において同一または相当する構成には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0017】
(船舶の全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る船舶の全体構成を示す図である。
本実施形態において、
図1に示す船舶9は、敵艦からの護衛を目的とする艦艇である。
図1に示すように、船舶9は、船体1と、その内部に具備された火災対処支援装置2と、を備えている。
また、船舶9は武器Aを搭載している。更に、船体1内の各所にはセンサSが設置されている。各センサSから出力されるセンサ情報は、火災対処支援装置2に出力される。センサSは、例えば、温度センサである。センサSは、敵艦からの攻撃を受ける等の原因で火災が発生した際に、当該火災の発生を検知可能とされている。
【0018】
(火災対処支援装置の機能構成)
図2は、第1の実施形態に係る火災対処支援装置の機能構成を示す図である。
図2に示すように、火災対処支援装置2は、CPU20と、メモリ21と、操作部22と、表示部23と、記録媒体24と、外部接続インターフェイス25とを備えている。
【0019】
CPU20は、記録媒体24等に格納されたプログラムやデータをメモリ21上に読み出し、処理を実行することで、後述の各機能を実現する演算装置である。
メモリ21は、CPU20のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリ(RAM)である。
操作部22は、例えば、マウス、タッチパネル及びキーボード等で構成され、操作者(ユーザ)の指示を受けてCPU20に各種操作等を入力する。
表示部23は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等により実現され、CPU20による処理結果を表示する。
記録媒体24は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の大容量記録デバイスにより実現され、OS(Operation System)、アプリケーションプログラム、及び、各種データ等を記憶する。本実施形態においては、後述する船内マップ情報、設備配置情報も、記録媒体24に記録されている。
外部接続インターフェイス25は、外部装置とのインターフェイスである。特に、本実施形態においては、外部接続インターフェイス25は、船体1(
図1)の各所に配置されたセンサSと接続される。
【0020】
CPU20は、上述のプログラムに基づいて動作することで、
図2に示す火災区画特定部201、隣接区画特定部202、支援情報通知部203、武器使用可否判定部204及び消火作業可否判定部205としての機能を発揮する。
火災区画特定部201は、センサSによるセンサ情報に基づいて、船体1に含まれる複数の区画(後述)のうち、火災が発生した火災区画を特定する。
隣接区画特定部202は、船内マップ情報に基づいて、船体1に含まれる複数の区画のうち、火災区画に隣接する隣接区画を特定する。ここで、船内マップ情報とは、船体1の内部において複数の区画に分割された空間(区画)の位置関係を示す情報である。
支援情報通知部203は、設備配置情報に基づいて、隣接区画にて消火作業を行うべきか否かを示す支援情報を通知する。ここで、設備配置情報とは、記録媒体24に予め用意された情報テーブルであって、使用する武器(
図1に示す武器A)に関連する設備が配置されている区画を示す情報テーブルである。
武器使用可否判定部204は、被害状況(火災区画の位置)及び設備配置情報に基づいて、指定した武器(例えば、武器A)について使用が可能か否かを判定する。
消火作業可否判定部205は、被害状況(火災区画、隣接区画の位置)及び設備配置情報に基づいて、「指定した武器(武器A)を使用可能な状態に維持する」という条件の下、隣接区画において消火作業を実施できるか否かを判定する。
【0021】
なお、本実施形態において、船内マップ情報や設備配置情報は、火災対処支援装置2の内部に具備された大容量記録デバイス(記録媒体24)に記録されるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。即ち、他の実施形態において、上述の船内マップ情報や設備配置情報は、遠隔地に配置され、かつ、広域通信ネットワークを介して通信可能に接続されたサーバ(例えば、クラウドサーバ)に記録される態様であってもよい。
【0022】
(船体の区画及び設備の配置例)
図3は、第1の実施形態に係る船体の区画及び設備の配置例を示す図である。
図3に示すように、船体1の内部は、浸水に対する安全性を高める目的で、複数の区画に分割されている。
図3に示す例では、船体1は、区画1−1〜1−4、区画2−1〜2−4に分割されている。上述した船内マップ情報には、この区画1−1〜1−4、2−1〜2−4の位置関係(どの区画とどの区画が隣接しているか)が記録されている。
各区画1−1〜1−4、2−1〜2−4には、それぞれ、センサSが設置されている。火災対処支援装置2は、センサSから出力されるセンサ情報を個別に識別することで、どの区画に火災が発生したかを把握することができる。
【0023】
船体1の各区画には、武器Aに関連する設備が配置されている。
図3に示す例において、武器Aに関連する設備とは、関連機器X、関連機器Y、給電線E11、E12、E13、E14、E22、E23、E24、転換給電線ET12、諸管P11、P12である。これらの設備は、武器Aを使用するために必要な設備である。したがって、上記設備が存在する区画で火災が発生した場合や、消火作業(海水消火)を行った場合、原則として、武器Aを使用することができなくなる。しかし、状況によっては、消火作業よりも武器Aの使用を優先すべき場合が想定される。この場合、武器Aを使用可能な状態に維持するために、特定の区画においては消火作業を行わないことが要求される。
【0024】
図3に示す例では、武器Aの関連機器Xは区画1−2に、関連機器Yは区画2−2に配置されている。
また、武器Aに給電するための給電線E11、E12、E13、E14は、それぞれ、区画1−1、1−2、1−3、1−4に導設されている。同様に、給電線E22、E23、E24は、それぞれ、区画2−2、2−3、2−4に導設されている。このうち、給電線E12、E13、E14、E22、E23、E24は、常用給電線であり、給電線E11は非常用給電線である。常用給電線(E12、E13、E14)及び非常用給電線(E11)は、区画1−2に配置された転換給電線ET12によって切り替え可能とされる。
図3に示す例では、更に、関連機器Xに、諸管P11、P12が接続されている。諸管P11、P12は、例えば、冷媒を循環させるための配管等である。
図3に示す例では、諸管P11は、区画1−1に配設され、諸管P12は、区画1−2に配設されている。
【0025】
(設備配置情報のデータ構造)
図4は、第1の実施形態に係る設備配置情報のデータ構造を示す図である。
図4に示す設備配置情報は、武器Aの各種関連設備の配置位置(区画)を示している。
図4に示すように、設備配置情報は、各区画に配置された各種設備(「関連機器」、「給電線」、「転換給電線」、「諸管」)の有無が、「区画」別に対応付けて記録されている。
図4に示す設備配置情報は、
図3に示した配置例に対応している。この設備配置情報によれば、例えば、区画1−1には、給電線E11及び諸管P11が配置されていることが把握される。また、設備配置情報によれば、区画1−2には、関連機器X、給電線E12、転換給電線ET12及び諸管P12が配置されていることが把握される。また、設備配置情報によれば、区画2−2には、関連機器Y及び給電線E22が配置されていることが把握される。
【0026】
図4には、武器Aについての設備配置情報のみを示したが、船舶9が武器A以外の武器を更に搭載している場合、記録媒体24(
図2)には、別の武器(武器B、武器C、・・)についての設備配置情報が更に記録されていてもよい。
【0027】
(処理フロー)
図5〜
図8は、それぞれ、第1の実施形態に係る火災対処支援装置の処理フローを示す第1の図〜第4の図である。
図5〜
図8を参照しながら、本実施形態に係る火災対処支援装置2の処理の流れについて説明する。
【0028】
図5は、火災対処支援装置2の大まかな処理の流れを示している。
図5に示す処理は、例えば、航海中に、繰り返し実行される。
【0029】
まず、火災対処支援装置2の火災区画特定部201は、各区画に設置されたセンサSからセンサ情報を収集する(ステップS01)。
火災区画特定部201は、各センサ情報(例えば、温度検出値)を取得して、火災が発生したか否かを判定する(ステップS02)。この場合において、火災区画特定部201は、例えば、センサSにおける温度検出値が所定の判定閾値を上回った場合に、「火災が発生した」と判定する。
何れのセンサSでも火災の発生が検知されていない場合(ステップS02:NO)、火災区画特定部201は、ステップS01に戻り、センサ情報の収集処理を繰り返す。
何れかのセンサSで火災の発生が検知された場合(ステップS02:YES)、火災対処支援装置2は、ステップS03以降の処理を実行する。
【0030】
次に、火災対処支援装置2の武器使用可否判定部204は、操作部22(
図2)を通じて、戦闘指揮官から使用すべき武器の指定を受け付ける(ステップS03)。ここで、武器使用可否判定部204が、戦闘指揮官から「武器A」の指定を受けたものとして、以下説明する。
【0031】
武器使用可否判定部204は、被害状況(火災の発生位置)に基づいて、指定された武器Aの使用可否を判断する(ステップS04)。このステップS04の処理の詳細については後述する。
【0032】
次に、火災対処支援装置2の支援情報通知部203は、ステップS04の処理結果に基づいて、武器Aが使用可能か否かを判定する(ステップS05)。火災により武器Aが使用不可である場合(ステップS05:NO)、支援情報通知部203は、表示部23(
図2)を通じて、武器Aが使用不可である旨を乗員に通知する(ステップS06)。更に、支援情報通知部203は、表示部23を通じて、武器Aに関する電源を遮断する旨の指示(電源遮断リコメンド)を通知する(ステップS07)。この場合、支援情報通知部203は、更に、火災区画及びその隣接区画で消火作業を行うべき指示を通知する。この指示により、乗員は、武器Aの使用をあきらめるとともに、電源を遮断して消火作業に専念すべきことを把握することができる。
【0033】
他方、武器Aが使用可能である場合(ステップS05:YES)、次に、消火作業可否判定部205は、火災の発生箇所(火災区画)の隣接区画において、消火作業を行うべきか否かを示す情報(消火作業可否リコメンド)を通知する(ステップS08)。このステップS08の処理の詳細については後述する。
【0034】
次に、
図6を参照しながら、
図5のステップS04(武器Aの使用可否判断)の処理内容について詳細に説明する。
【0035】
図5のステップS04にて、まず、火災区画特定部201は、センサSからのセンサ情報に基づき、敵艦から被害を受ける等の原因で火災が発生した区画である火災区画を特定する(ステップS10)。
【0036】
次に、武器使用可否判定部204は、設備配置情報(
図4)を参照して、ステップS10で特定された火災区画に関連機器、諸管が配置されているか否かを判定する(ステップS11)。当該火災区画に関連機器、諸管が配置されている場合(ステップS11:YES)、武器使用可否判定部204は、武器Aは使用不可能であると判定する(ステップS12)。
【0037】
ここで、上記ステップS11〜ステップS12の処理について、
図3、
図4に示す例を用いて説明する。
(例1)特定された火災区画が区画1−1であった場合、
図4に示す設備配置情報によれば、当該区画1−1には諸管P11が配置されていることが分かる(ステップS11:YES)。この場合、諸管P11が配置された火災区画(区画1−1)で消火作業を実施する必要があるため、諸管P11(ひいては関連機器X)を使用できなくなる。したがって、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用不可能であると判定する(ステップS12)。
(例2)特定された火災区画が区画2−2であった場合、
図4に示す設備配置情報によれば、当該区画2−2には関連機器Yが配置されていることが分かる(ステップS11:YES)。この場合も、関連機器Yが配置された火災区画(区画2−2)で消火作業を実施する必要があるため、関連機器Yを使用できなくなる。したがって、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用不可能であると判定する(ステップS12)。
【0038】
他方、火災区画に関連機器、諸管が配置されていない場合(ステップS11:NO)、次に、武器使用可否判定部204は、当該火災区画に常用給電線が配置されているか否かを判定する(ステップS13)。
【0039】
火災区画に常用給電線が配置されている場合(ステップS13:YES)、更に、武器使用可否判定部204は、設備配置情報を参照して、火災区画以外の区画に転換給電線が配置されているか否かを判定する(ステップS14)。
【0040】
転換給電線が配置されていない場合(ステップS14:NO)、火災区画に配置された常用給電線を用いずに武器Aに給電する手段は存在しない。したがって、当該火災区画における消火作業に伴い電源遮断を行う必要があるため、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用不可であると判定する(ステップS12)。
【0041】
転換給電線が配置されている場合(ステップS14:YES)、更に、武器使用可否判定部204は、当該転換給電線を切り替えることで火災区画に配置されている常用給電線を用いなくとも武器Aに給電可能か否かを判定する(ステップS15)。火災区画に配置されている常用給電線を用いずに武器Aに給電できない場合(ステップS15:NO)、当該火災区画における消火作業に伴い電源遮断を行う必要があるため、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用不可であると判定する(ステップS12)。
【0042】
他方、転換給電線を切り替えることで火災区画に配置されている常用給電線を用いずに武器Aに給電可能である場合(ステップS15:YES)、当該転換給電線を切り替えることで、武器Aを使用可能な状態を維持しつつも、火災区画で消火作業を行うことが可能となる。したがって、支援情報通知部203は、まず、表示部23を通じて、乗員に向けて転換給電線にて電源を転換すべき旨(電源転換リコメンド)を通知する(ステップS16)。そして、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用可能であると判定する(ステップS17)。
【0043】
火災区画に常用給電線が配置されていない場合(ステップS13:NO)、当該火災区画には武器Aに関する設備が配置されていないと判断される。したがって、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用可能であると判定する(ステップS17)。
【0044】
ここで、上記ステップS13〜ステップS17の処理について、
図3、
図4に示す例を用いて説明する。
(例3)例えば、火災区画が区画1−3であった場合、
図4に示す設備配置情報によれば、当該区画1−3には給電線E13(常用給電線)が配置されていることが分かる。この場合、給電線E13が配置された火災区画(区画1−3)で消火作業を実施する必要があるため、武器使用可否判定部204は、設備配置情報を参照して、火災区画以外の区画で転換給電線があるか否かを判定する(ステップS14)。その結果、武器使用可否判定部204は、区画1−2に転換給電線ET12が存在することを把握する。続いて、武器使用可否判定部204は、当該転換給電線ET12を切り替えることで給電線E13を用いずに武器Aに給電可能か否かを判定する(ステップS15)。この場合、給電線E13(常用給電線)の代わりに給電線E11(非常用給電線)を用いて武器Aに給電可能であることが分かる(ステップS15:YES)。したがって、支援情報通知部203が電源転換リコメンドを通知する(ステップS16)とともに、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用可能であると判定する(ステップS17)。
(例4)例えば、火災区画が区画2−3であった場合、
図4に示す設備配置情報によれば、当該区画2−3には給電線E23(常用給電線)が配置されていることが分かる。この場合、給電線E23が配置された火災区画(区画2−3)で消火作業を実施する必要があるため、武器使用可否判定部204は、設備配置情報を参照して、火災区画以外の区画で転換給電線があるか否かを判定する(ステップS14)。その結果、武器使用可否判定部204は、区画1−2に転換給電線ET12が存在することを把握する。続いて、武器使用可否判定部204は、当該転換給電線ET12を切り替えることで給電線E23を用いずに武器Aに給電可能か否かを判定する(ステップS15)。この場合、転換給電線ET12を切り替えたとしても、給電線E23を用いずに武器Aに給電することはできない(ステップS15:NO)。したがって、武器使用可否判定部204は、武器Aが使用不可能であると判定する(ステップS12)。
【0045】
次に、
図7を参照しながら、
図5のステップS08(隣接区画における消火作業可否のリコメンド)の処理内容について詳細に説明する。
【0046】
図5のステップS08において、まず、火災対処支援装置2の隣接区画特定部202は、船内マップ情報を参照して、火災区画に隣接する隣接区画のうちの一つを特定する(ステップS20)。
【0047】
次に、火災対処支援装置2の消火作業可否判定部205は、設備配置情報(
図4)を参照して、ステップS20で特定された隣接区画に関連機器、諸管が配置されているか否かを判定する(ステップS21)。隣接区画に関連機器、諸管が配置されている場合(ステップS21:YES)、当該隣接区画で消火作業を行うと、関連機器等を使用できなくなり、ひいては武器Aを使用できなくなる。そこで、消火作業可否判定部205は、武器Aを使用可能な状態に維持するために、当該隣接区画では消火作業を行うべきではないと判定する。そして、支援情報通知部203は、消火作業可否判定部205による上記判定結果に基づいて、消火作業不可リコメンドを通知する(ステップS22)。
【0048】
他方、隣接区画に関連機器、諸管が配置されていない場合(ステップS21:NO)、次に、消火作業可否判定部205は、当該隣接区画に常用給電線が配置されているか否かを判定する(ステップS23)。
【0049】
隣接区画に常用給電線が配置されている場合(ステップS23:YES)、更に、消火作業可否判定部205は、設備配置情報を参照して、災区画以外のいずれかの区画に転換給電線が配置されているか否かを判定する(ステップS24)。
【0050】
転換給電線が配置されていない場合(ステップS24:NO)、隣接区画に配置された常用給電線を用いずに武器Aに給電する手段は存在しない。したがって、当該隣接区画において消火作業を実施しようとすると、電源遮断により武器Aを使用できなくなる。そこで、消火作業可否判定部205は、武器Aを使用可能な状態に維持するために、当該隣接区画では消火作業を行うべきではないと判定する。そして、支援情報通知部203は、消火作業可否判定部205による上記判定結果に基づいて、消火作業不可リコメンドを通知する(ステップS22)。
【0051】
転換給電線が配置されている場合(ステップS24:YES)、更に、消火作業可否判定部205は、当該転換給電線を切り替えることで当該隣接区画に配置されている常用給電線を用いなくとも武器Aに給電可能か否かを判定する(ステップS25)。隣接区画に配置されている常用給電線を用いずに武器Aに給電できない場合(ステップS25:NO)、当該隣接区画において消火作業を実施しようとすると、電源遮断により武器Aを使用できなくなる。そこで、消火作業可否判定部205は、武器Aを使用可能な状態に維持するために、当該隣接区画では消火作業を行うべきではないと判定する。そして、支援情報通知部203は、消火作業可否判定部205による上記判定結果に基づいて、消火作業不可リコメンドを通知する(ステップS22)。
【0052】
他方、転換給電線を切り替えることで隣接区画に配置されている常用給電線を用いずに武器Aに給電可能である場合(ステップS25:YES)、当該転換給電線を切り替えることで、武器Aを使用可能な状態を維持しつつも、当該隣接区画で消火作業を行うことが可能となる。したがって、支援情報通知部203は、まず、表示部23を通じて、乗員に向けて転換給電線にて電源を転換すべき旨(電源転換リコメンド)を通知する(ステップS26)。そして、消火作業可否判定部205は、火災区画における火災を早期に消火するために当該隣接区画からも消火作業を行うべきと判定する。そして、支援情報通知部203は、消火作業可否判定部205による上記判定結果に基づいて、消火作業リコメンドを通知する(ステップS27)。
【0053】
隣接区画に常用給電線が配置されていない場合(ステップS23:NO)、当該隣接区画には武器Aに関する設備が配置されていないと判断される。即ち、武器Aの使用可否に影響を与えることなく、当該隣接区画で消火作業を行うことができる。そこで、消火作業可否判定部205は、火災区画における火災を早期に消火するために当該隣接区画でも消火作業を行うべきと判定する。そして、支援情報通知部203は、消火作業可否判定部205による上記判定結果に基づいて、消火作業リコメンドを通知する(ステップS27)。
【0054】
隣接区画が複数ある場合、消火作業可否判定部205は、全ての隣接区画について上記ステップS20〜ステップS27の処理(消火作業可否判定処理)を行った否かを判定する(ステップS28)。全ての隣接区画について消火作業可否判定処理を行っていない場合(ステップS28:NO)、消火作業可否判定部205は、別の隣接区画を特定し(ステップS20)、以降の処理を繰り返し実行する。全ての隣接区画について消火作業可否判定処理を行った場合(ステップS28:YES)、火災対処支援装置2は処理を終了する。
【0055】
ここで、上記ステップS21〜ステップS28の処理について、
図3、
図4に示す例を用いて説明する。
(例5)例えば、火災区画が区画1−3であった場合、隣接区画特定部202は、マップ情報を参照して、当該火災区画に隣接する隣接区画が区画1−2、区画1−4及び区画2−3であることを特定する(ステップS20)。
まず、消火作業可否判定部205は、区画1−2における消火作業可否判定を行う。
図4に示す設備配置情報によれば、当該区画1−2には関連機器X、諸管P12が配置されていることが分かる(ステップS21:YES)。この場合、関連機器X等が配置された火災区画(区画1−2)で消火作業を実施すると、関連機器Xを使用できなくなり、ひいては武器Aを使用できなくなる。したがって、支援情報通知部203は、区画1−2について消火作業不可リコメンドを通知する(ステップS22)。
次に、消火作業可否判定部205は、区画1−4における消火作業可否判定を行う。
図4に示す設備配置情報によれば、当該区画1−4には給電線E14(常用給電線)が配置されていることが分かる(ステップS23:YES)。この場合、給電線E14が配置された隣接区画(区画1−4)で消火作業を実施できるか否かを更に検討するため、消火作業可否判定部205は、設備配置情報を参照して、火災区画以外の区画で転換給電線があるか否かを判定する(ステップS24)。その結果、消火作業可否判定部205は、区画1−2に転換給電線ET12が存在することを把握する。続いて、消火作業可否判定部205は、当該転換給電線ET12を切り替えることで給電線E14を用いずに武器Aに給電可能か否かを判定する(ステップS25)。この場合、給電線E14(常用給電線)の代わりに給電線E11(非常用給電線)を用いて武器Aに給電可能であることが分かる(ステップS25:YES)。したがって、支援情報通知部203は、電源転換リコメンドを通知する(ステップS26)とともに、区画1−4について消火作業リコメンドを通知する(ステップS27)。
次に、消火作業可否判定部205は、区画2−3における消火作業可否判定を行う。
図4に示す設備配置情報によれば、当該区画2−3には給電線E23(常用給電線)が配置されていることが分かる(ステップS23:YES)。この場合、給電線E23が配置された隣接区画(区画2−3)で消火作業を実施できるか否かを更に検討するため、消火作業可否判定部205は、設備配置情報を参照して、火災区画以外の区画で転換給電線があるか否かを判定する(ステップS24)。その結果、消火作業可否判定部205は、区画1−2に転換給電線ET12が存在することを把握する。続いて、消火作業可否判定部205は、当該転換給電線ET12を切り替えることで給電線E23を用いずに武器Aに給電可能か否かを判定する(ステップS25)。この場合、転換給電線ET12を切り替えたとしても、給電線E23を用いずに武器Aに給電することはできない(ステップS25:NO)。したがって、支援情報通知部203は、区画2−3については消火作業不可リコメンドを通知する(ステップS22)。
【0056】
なお、消火作業不可リコメンドが通知された隣接区画であっても、火災の状況によっては、武器Aの使用をあきらめてでも消火作業を優先すべきことが想定される。この場合における火災対処支援装置2の処理フローについて、
図8を参照しながら説明する。
応急指揮官が被害状況を目視等で確認した結果、消火作業不可リコメンドが通知された隣接区画で消火作業を行うべきと判断した場合、応急指揮官は、操作部22を通じて、その旨の指示を火災対処支援装置2に入力する(ステップS30)。
消火作業不可リコメンドが通知された隣接区画で消火作業を行うべき指示が入力された場合(ステップS30:YES)、支援情報通知部203は、武器Aについての電源遮断リコメンドを通知する(ステップS31)。そして、支援情報通知部203は、武器Aについて使用不可能である旨の通知を行う(ステップS32)。
【0057】
(作用・効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る火災対処支援装置2は、船体1の区画のうち、火災が発生した火災区画を特定する火災区画特定部201と、船体の区画のうち、火災区画に隣接する隣接区画を特定する隣接区画特定部202と、使用する武器(武器A)に関連する設備が配置されている区画を示す設備配置情報に基づいて、隣接区画にて消火作業を行うべきか否かを示す支援情報を通知する支援情報通知部203と、を備えている。そして、支援情報通知部203は、隣接区画に武器Aに関連する設備が配置されている場合には、支援情報として、隣接区画にて消火作業を行うべきではないことを通知する。
このようにすることで、武器Aの関連設備が配置されている特定の隣接区画では消火作業を実施すべきではない旨のリコメンドが直ちに通知されるので、武器Aの使用を確保した上で、火災による被害を最小限に止めるための対処を迅速かつ正確に把握することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る支援情報通知部203は、武器Aへの給電経路を転換することで、隣接区画に配置された給電線を用いずに当該武器Aに給電可能と判断した場合に、支援情報として、隣接区画にて消火作業を行うべきことを通知する。
このようにすることで、武器Aに関する設備(給電線)が配置された区画であったとしても、当該給電線を用いずに武器Aを使用可能な状態を維持できる場合には、当該隣接区画で消火作業を行うべき旨の通知がなされる。したがって、隣接区画で消火作業を実施できることを迅速に判断することができ、早期の鎮火に資することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る支援情報通知部203は、火災区画に武器Aに関連する設備(関連機器X、Y等)が配置されている場合には、支援情報として、当該武器Aを使用できないことを通知する。これにより、乗員は、武器Aの使用をあきらめて、火災区画及び全ての隣接区画にて消火作業を行うべきことを把握することができ、早期の鎮火に資することができる。
【0060】
以上、第1の実施形態に係る火災区画特定部201及び船舶9について詳細に説明したが、火災区画特定部201の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
例えば、他の実施形態に係る火災対処支援装置2は、使用する武器(武器A)に関連する設備の防水性を考慮して、消火作業可否の判断を行ってもよい。例えば、ある隣接区画に配置されている設備が消火作業に耐え得る程度の防水性を有している場合、当該隣接区画で消火作業を行ったとしても武器Aの使用を確保できる、との判断に基づき、当該隣接区画に消火作業を行う旨の指示(消火作業リコメンド)を通知してもよい。この場合において、設備配置情報(
図4)には、第1の実施形態に係る情報に加え、各設備(又は区画)のそれぞれについての防水性の有無に関する情報が記録されている態様であってもよい。
【0061】
また、上述の各実施形態においては、上述した火災対処支援装置2の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0062】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。更に、火災対処支援装置2は、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。