(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、第1の期間において、前記第1および第4の電界効果トランジスタをオン状態に制御しかつ前記第2および第3の電界効果トランジスタをオフ状態に制御し、
前記コントローラは、前記第1の期間に続く第2の期間において、前記第1の電界効果トランジスタをオン状態に制御しかつ前記第2〜第4の電界効果トランジスタをオフ状態に制御し、
前記コントローラは、前記第2の期間内において、前記差動増幅器によって前記第2の接続ノードと前記第1の電源ノードとの間の電位差を検出する、請求項1に記載の半導体装置。
前記コントローラは、第1の期間において、前記第1および第6の電界効果トランジスタをオン状態に制御しかつ前記第2〜第5の電界効果トランジスタをオフ状態に制御し、
前記コントローラは、前記第1の期間に続く第2の期間において、前記第1および第4の電界効果トランジスタをオン状態に制御しかつ前記第2、第3、第5および第6の電界効果トランジスタをオフ状態に制御し、
前記コントローラは、前記第2の期間に続く第3の期間において、前記第1の電界効果トランジスタをオン状態に制御し、前記第2〜第6の電界効果トランジスタをオフ状態に制御し、
前記コントローラは、前記第3の期間内において、前記第2の接続ノードと前記第1の電源ノードとの間の電位差を検出する、請求項4に記載の半導体装置。
前記コントローラは、前記第1〜第6の電界効果トランジスタのうち前記第1の電源ノードと前記第2の電源ノードとの間に互いに直列に接続された2個のトランジスタにおいて、一方のトランジスタをオン状態からオフ状態に切り替えかつ他方のトランジスタをオフ状態からオン状態に切り替える場合には、前記一方のトランジスタをオフ状態に切り替えてからデッドタイムの経過後に前記他方のトランジスタをオン状態に切り替え、
前記コントローラは、選択された一部のデッドタイムの期間内に前記差動増幅器によって対応のノード間の電位差を検出する、請求項4に記載の半導体装置。
前記差動増幅器が対応のノード間の電位差を検出しているときのデッドタイムの長さは、前記差動増幅器が電位差を検出していないときのデッドタイムの長さよりも長い、請求項7に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各実施形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0013】
<第1の実施形態>
[温度検出方法]
図1は、第1の実施形態の場合において、半導体素子の温度検出方法を説明するための図である。本実施形態では、半導体素子として絶縁ゲート型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)Tr1,Tr2を用いて構成されたハーフブリッジ回路20を例に挙げて説明する。ハーフブリッジ回路20は、たとえば電力変換装置の少なくとも一部を構成し、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)によって制御されるものである。
【0014】
図1を参照して、ハーフブリッジ回路20は、高電位ノード21と接続ノードUとの間に接続された電界効果トランジスタTr1と、接続ノードUと接地ノード22との間に接続された電界効果トランジスタTr2とを含む。高電位ノード21には高電位VHが与えられ、接地ノード22には接地電位GNDが与えられる。接続ノードUと高電位ノード21との間に負荷としてのインダクタ23が接続される。
【0015】
電界効果トランジスタTr1はハーフブリッジ回路20の上アームを構成し、電界効果トランジスタTr2はハーフブリッジ回路20の下アームを構成する。
図1の場合、電界効果トランジスタTr1および電界効果トランジスタTr2は、いずれもN型のMISFET(Metal Insulator Semiconductor FET)である。MISFETは、絶縁体が酸化物によって構成されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)を含む。したがって、電界効果トランジスタTr1のドレイン電極(D)は高電位ノード21に接続され、電界効果トランジスタTr1のソース電極(S)は接続ノードUに接続される。電界効果トランジスタTr2のドレイン電極(D)は接続ノードUに接続され、電界効果トランジスタTr2のソース電極(S)はシャント抵抗RESを介して接地ノード22に接続される。
【0016】
図1(A)を参照して、電界効果トランジスタTr1がオフ(Off)状態であり、電界効果トランジスタTr2がオン(On)状態であるとする。この場合、高電位ノード21から、インダクタ23、接続ノードU、および電界効果トランジスタTr2を順に介することによって接地ノード22に到達する通電電流101が流れる。
【0017】
図1(B)を参照して、
図1(A)の状態から電界効果トランジスタTr2がオフ状態になったとする。この場合、高電位ノード21から、インダクタ23および電界効果トランジスタTr1のボディダイオードを順に介して高電位ノード21に到達する循環電流102(回生電流とも称する)が流れる。ボディダイオードについては、
図2および
図3を参照して詳しく説明する。
【0018】
図1(C)を参照して、
図1(B)の状態から電界効果トランジスタTr1がオン状態になったとする。この場合、高電位ノード21から、インダクタ23および電界効果トランジスタTr1のチャネル領域を順に介して高電位ノード21に到達する循環電流103が流れる。
【0019】
インダクタ23をPWM制御する場合には、
図1(A)の状態と
図1(C)の状態とが交互に繰り返される。この場合、オン状態の電界効果トランジスタTr1,Tr2を介して高電位ノード21と接地ノード22との間に貫通電流が流れることを防止する必要があるので、
図1(A)の状態と
図1の(C)の状態との間に
図1(B)の状態、いわゆるデッドタイム(Dead Time)と呼ばれる期間が挟まれる。
【0020】
本開示による半導体素子の温度検出では、このデッドタイムの間に(すなわち、ボディダイオードに還流電流が流れた状態で)、電界効果トランジスタのソース・ドレイン間の電圧(すなわち、ボディダイオードのアノード・カソード間の順方向電圧)が検出される。ボディダイオードの順方向電圧は温度が増加するにつれて減少するので、ボディダイオードの順方向電圧を検出することによって、半導体素子の接合温度を正確に検出することができる。具体的には、
図1(A)の通電電流101が流れる状態から
図1(C)の循環電流103が流れる状態に移行する途中のデッドタイムにおいてボディダイオードの順方向電圧が検出される。
【0021】
[ボディダイオードについて]
以下、電界効果トランジスタのボディダイオードについて説明する。
図2では横型MISFETの場合について説明し、
図3では縦型MISFETの場合について説明する。
【0022】
図2は、横型MISFETの構成の一例を示す断面図である。
図2を参照して、横型MISFET30は、P型半導体基板31と、P型半導体基板31の上部の一部に形成されたP型拡散領域32(P−well)と、P型拡散領域32の上部の一部に形成されたN型不純物領域33,34とを含む。P型拡散領域32とN型不純物領域33とによってボディダイオード36が構成される。
【0023】
横型MISFET30は、さらに、N型不純物領域33の表面上に形成されたドレイン電極Dと、N型不純物領域34の表面上に形成されたソース電極Sと、ドレイン電極Dとソース電極Sとの間に形成されたゲート電極Gと、P型拡散領域32の表面上に形成されたバックゲート電極BGとを含む。ゲート電極Gは、ゲート絶縁膜35を介在して、P型拡散領域32の表面およびN型不純物領域33,34の表面と接続される。ソース電極Sとバックゲート電極BGとは配線を介して相互に接続されている。
【0024】
図2の横型MISFET30の構成では、ゲート電極Gに閾値電圧以上のゲート電圧が印加されることによって、ドレイン電極Dから、N型不純物領域33、P型拡散領域32の上部に形成されたNチャネル領域、N型不純物領域34を順に介してソース電極Sに至る通電電流101が流れる。もしくは、ソース電極Sから、N型不純物領域34、Nチャネル領域、N型不純物領域33を順に介してドレイン電極Dに至る循環電流103が流れる。
【0025】
一方、
図2の横型MISFET30の構成において、ゲート電極Gに閾値電圧以上のゲート電圧が印加されずに横型MISFET30がオフ状態の場合には、バックゲート電極BGから、P型拡散領域32およびN型不純物領域33を順に介してドレイン電極Dに至る方向に循環電流102が流れることができる。したがって、この循環電流102が流れている状態で、横型MISFET30のソース・ドレイン間電圧(すなわち、ボディダイオード36の順方向電圧)を検出することによって、横型MISFET30の接合温度を検出することができる。
【0026】
図3は、縦型MISFETの構成の一例を示す断面図である。
図3を参照して、縦型MISFET40は、高濃度のN+型ドレイン層44と、N+型ドレイン層44の上部に形成された低濃度のN−型ドリフト層43と、N−型ドリフト層43の上部の一部に形成されたP型ベース層42と、P型ベース層42の上部の一部に形成された高濃度のN+型ソース層41とを含む。P型ベース層42とN−型ドリフト層43とによってボディダイオード46が構成される。
【0027】
縦型MISFET40では、さらに、N+型ソース層41の表面の一部とP型ベース層42の表面の一部とN−型ドリフト層43の表面の一部の上に、ゲート絶縁膜45を介在してゲート電極Gが形成されるとともに、N+型ソース層41の表面の一部とP型ベース層42の表面の一部の上にソース電極Sが形成される。縦型MISFET40では、さらに、ソース電極Sとは反対側のN+型ドレイン層44の表面上にドレイン電極Dが形成される。
【0028】
図3の構成の縦型MISFET40では、ゲート電極Gに閾値電圧以上のゲート電圧が印加されることによって、ドレイン電極Dから、N+型ドレイン層44、N−型ドリフト層43、P型ベース層42の上部のNチャネル領域、N+型ソース層41を順に介してソース電極Sに至る通電電流101が流れる。もしくは、ソース電極SからN+型ソース層41、P型ベース層42上部のNチャネル領域、N−型ドリフト層43、N+型ドレイン層44を順に介してドレイン電極Dに至る循環電流103が流れる。
【0029】
一方、
図3の縦型MISFET40の構成において、ゲート電極Gに閾値電圧以上のゲート電圧が印加されずに縦型MISFET40がオフ状態の場合には、ソース電極Sから、P型ベース層42、N−型ドリフト層43、N+型ドレイン層44を介してドレイン電極Dに至る方向に循環電流102が流れることができる。したがって、この循環電流102が流れている状態で、縦型MISFET40のソース・ドレイン間電圧(すなわち、ボディダイオード46の順方向電圧)を検出することによって縦型MISFET40の接合温度を検出することができる。
【0030】
[半導体装置の構成]
次に、上記のMISFETのゲート電圧を制御するとともに、ボディダイオードのアノード・カソード間電圧を検出するための半導体装置の構成例について説明する。
【0031】
図4は、第1の実施形態による半導体装置の構成を示すブロック図である。
図4の半導体装置50Aは、ハーフブリッジ回路20を構成する電界効果トランジスタTr1,Tr2のオン・オフを制御し、さらに、電界効果トランジスタTr1のボディダイオードのカソード・アノード間電圧を検出するように構成されている。ハーフブリッジ回路20は、電力変換装置の少なくとも一部を構成する。また、ハーフブリッジ回路20と半導体装置50Aとはパワーモジュールの一部として構成されていてもよい。
【0032】
なお、ハーフブリッジ回路20の接続ノードUから負荷23の方向に流れる負荷電流IUを正に定義する。したがって、
図1の場合の通電電流101の符号は負(すなわち、負荷23からハーフブリッジ回路20の接続ノードUへの方向の電流)である。
【0033】
図4を参照して、半導体装置50Aは、高電位側のゲート駆動回路51と、低電位側のゲート駆動回路52と、差動増幅器53と、サンプル・ホールド回路54と、A/D(Analog to Digital)変換器55と、コントローラ56と、スイッチ57とを含む。
【0034】
ゲート駆動回路51は、コントローラ56からゲート制御信号VTを受信する。ゲート駆動回路51は、ゲート制御信号VTの基準電位を接地電位GNDから接続ノードUの電位VUに変換すると共に、このゲート制御信号VTの信号レベルを増幅することによって、高電位側の電界効果トランジスタTr1のゲート電極G1に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路51からゲート電極G1に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr1のオン・オフが制御される。
【0035】
ゲート駆動回路52は、コントローラ56から受信したゲート制御信号VBを増幅することによって、低電位側の電界効果トランジスタTr2のゲート電極G2に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路52からゲート電極G2に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr2のオン・オフが制御される。
【0036】
差動増幅器53は、入力ノードIN1,IN2と、出力ノードOTとを有する。入力ノードIN1は、オン・オフが切り替えられるスイッチ57を介して接続ノードUと接続される。これによって、入力ノードIN1には、接続ノードUの電位VUを取り込む。入力ノードIN2は、高電位ノード21と接続されることによって高電位ノード21の電位VHを取り込む。出力ノードOTは、サンプル・ホールド回路54と接続される。差動増幅器53は、入力ノードIN1と入力ノードIN2との電位差に比例した電圧信号を出力ノードOTから出力する。
【0037】
図4には、演算増幅器を用いて差動増幅器53を構成した例が示されている。
図4に示すように、差動増幅器53は、演算増幅器65と、抵抗素子61,62,63,64とを含む。
【0038】
具体的に、抵抗素子61は、入力ノードIN2と演算増幅器65の−端子との間に接続される。抵抗素子62は、演算増幅器65の−端子と出力端子(出力端子は、出力ノードOTに直結されている)との間に接続される。抵抗素子63は、入力ノードIN1と演算増幅器65の+端子との間に接続される。抵抗素子64の一端は演算増幅器65の+端子に接続され、抵抗素子64の他端には接地電位GNDを基準とする参照電圧Vrefが与えられる。
【0039】
なお、半導体装置50Aには接地電位GNDを取り込むための端子58が設けられている。端子58は、電界効果トランジスタTr2とシャント抵抗RESとの接続ノード(以下、低電位ノード24と称する)と接続される。
【0040】
上記の差動増幅器53の構成において、抵抗素子61,63の抵抗値をR1とし、抵抗素子62,64の抵抗値をR2とする。そうすると、差動増幅器53から出力される電圧Vtempは、
Vtemp=(VU−VH)×R2/R1+Vref …(1)
で表される。
【0041】
サンプル・ホールド回路54は、オン・オフが切り替えられるスイッチ70とコンデンサ71とを含む。スイッチ70の一端は差動増幅器53の出力ノードOTと接続され、スイッチ70の他端はコンデンサ71の一端と接続される。コンデンサ71の他端には、接地電位GNDが与えられる。スイッチ70の他端は、さらに、A/D変換器55に接続される。
【0042】
A/D変換器55は、サンプル・ホールド回路54のコンデンサ71の保持された電圧Vtempをデジタル変換し、デジタル変換された電圧Vtempをコントローラ56に出力する。
【0043】
コントローラ56は、ゲート制御信号VT,VBと、サンプル・ホールド回路54のスイッチ70のオン・オフを制御するための制御信号CTL1と、スイッチ57のオン・オフを制御するための制御信号CTL2を生成する。さらに、コントローラ56は、電圧Vtempが上限値に達した場合には、全ての電界効果トランジスタTr1,Tr2をオフにするなどの保護動作を行う。
【0044】
本実施形態では、制御信号CTL1がローレベル(Lレベル)からハイレベル(Hレベル)に切り替わることによってスイッチ70はオフ状態からオン状態に切り替わり、制御信号CTL2がLレベルからHレベルに切り替わることによってスイッチ57はオフ状態からオン状態に切り替わるものとする。制御信号CTL1,CTL2の論理レベルと対応するスイッチ70,57のオン・オフとの関係は上記と逆であってもよい。
【0045】
コントローラ56は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリなどを含むマイクロコンピュータによって構成されていてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)を利用して構成されていてもよいし、専用の回路によって構成されていてもよい。また、コントローラ56はこれらの回路を任意に組み合わせたものであってもよい。
【0046】
[半導体装置の動作]
図5は、
図4の半導体装置の動作を示すタイミング図である。
図5には、上から順に、ゲート制御信号VT、VB、制御信号CTL1,CTL2、および接続ノードUの電位VUの各波形が模式的に示されている。以下、主として
図4および
図5を参照して、
図4の半導体装置50Aの動作について説明する。
【0047】
時刻t1より以前は、コントローラ56は、ゲート制御信号VTをHレベルに設定し、ゲート制御信号VBをLレベルに設定する。これによって、高電位側の電界効果トランジスタTr1はオン状態に制御され、低電位側の電界効果トランジスタTr2はオフ状態に制御される。この結果、接続ノードUの電位VUは、高電位ノード21の電位VHに等しくなる。時刻t1の時点で
図1の循環電流103は0まで減衰しているとする。
【0048】
なお、時刻t1より以前は、コントローラ56は、制御信号CTL1,CTL2をLレベルに設定する。これにより、サンプル・ホールド回路54のスイッチ70およびスイッチ57はいずれもオフ状態である。
【0049】
時刻t1から時刻t2までの間の期間T11において、コントローラ56は、ゲート制御信号VTをLレベルに設定し、ゲート制御信号VBをHレベルに設定する。これによって、電界効果トランジスタTr1はオフ状態に制御され、電界効果トランジスタTr2はオン状態に制御される。この結果、接続ノードUの電位VUは接地電位GNDまで低下する。この期間T11の間、
図1(A)に示す通電電流101が流れ、その大きさは次第に増加する。
【0050】
時刻t2に、コントローラ56は、ゲート制御信号VBをHレベルからLレベルに切り替える。これによって、低電位側の電界効果トランジスタTr2はオン状態からオフ状態に切り替わり、接続ノードUの電位VUは接地電位GNDから上昇する。時刻t2から時刻t4までの期間T12の間、電界効果トランジスタTr1,Tr2は共にオフ状態のまま維持される。この期間T12の間、
図1(B)に示す循環電流102が、電界効果トランジスタTr1のボディダイオードに流れる。最終的に到達する接続ノードUの電位VUは、高電位ノード21の電位VHよりもボディダイオードの順方向電圧Vfだけ高くなる。
【0051】
接続ノードUの電位VUが最大値に達する遅延時間を考慮して、時刻t2から所定時間経過した時刻t3から時刻t4までの間、電界効果トランジスタTr1のボディダイオードの順方向電圧Vfが検出される。具体的にコントローラ56は、制御信号CTL1,CTL2をHレベルに設定することによって、サンプル・ホールド回路54のスイッチ70とスイッチ57とをオン状態にする。これによって、電界効果トランジスタTr1のソース・ドレイン間の電圧(すなわち、ボディダイオードの順方向電圧Vf)が差動増幅器53によって検出される。そして、差動増幅器53から出力された電圧Vtempは、サンプル・ホールド回路54によってサンプリングされ、コンデンサ71に保持される。コントローラ56は、このコンデンサ71に保持された電圧Vtempに基づいて電界効果トランジスタTr1の接合温度を検知する。
【0052】
ここで、ボディダイオードに流れる電流に応じて検出される電圧が変化するので、期間T12に切り替えられる直前の時刻t2における通電電流101の大きさを所定の値に制御する必要がある。この値は、期間T11の長さ(すなわち、キャリア周波数に応じた通電率)によって調整することができる。
【0053】
次の時刻t4において、コントローラ56は、ゲート制御信号VTをLレベルからHレベルに切り替える。これによって、高電位側の電界効果トランジスタTr1はオフ状態からオン状態に切り替わるので、
図1(C)、
図2、
図3に示すように循環電流の経路が電界効果トランジスタTr1のNチャネル領域を通る経路(103)に切り替わる。さらに、時刻t4においてコントローラ56は、制御信号CTL1,CTL2をHレベルからLレベルに切り替えることによって電界効果トランジスタTr1のソース・ドレイン間電圧のサンプリングを終了する。時刻t4から時刻t5までの期間T13の間、電界効果トランジスタTr1はオン状態で維持され、電界効果トランジスタTr2はオフ状態で維持される。
【0054】
次の時刻t5において、コントローラ56は、ゲート制御信号VTをHレベルからLレベルに切り替える。これによって、高電位側の電界効果トランジスタTr1はオン状態からオフ状態に切り替わるので、
図1(B)、
図2、
図3に示すように循環電流の経路がボディダイオードを通る経路(102)に切り替わる。時刻t5から時刻t6までの期間T14の間、電界効果トランジスタTr1,Tr2は共にオフ状態に維持される。
【0055】
この期間T14の間では、期間T12の場合と異なり、電界効果トランジスタTr1のソース・ドレイン間電圧のサンプリングは行われない。期間T12,T13,T14の間に循環電流は次第に減衰する(場合によっては0まで戻る)ので、期間T14ではボディダイオードの順方向電圧Vfの正確な測定ができないからである。したがって、電界効果トランジスタの接合温度の検出が行われるのは、電源から負荷に電力を供給する通電期間から回生期間に切り替わったときである。
【0056】
上記の期間T11〜T14がPWM信号の1周期に相当する。次の1周期である期間T21〜T24は、上記の期間T11〜T14にそれぞれ対応し、同様の制御が繰り返される。したがって、期間T21〜T24での負荷電流IUの変化は、期間T11〜T14での負荷電流IUの変化と同様である。具体的に、
図5の期間T11の開始時点(時刻t1)で0であった負荷電流IUは、通電期間T11の間に(時刻t1からt2まで)増加し、回生期間T12,T13,T14の間で(時刻t3からt6まで)次第に減少する。そして、期間T14の終了時点(時刻t6)において負荷電流IUは再び増加に転じる。負荷電流IUは、通電期間T21の間に再び増加し、回生期間T22,T23,T24の間で次第に減少する。
【0057】
図5の場合には、次の1周期である期間T21〜T24のうちの最初のデッドタイム期間T22において制御信号CTL1,CTL2をHレベルにすることによって、ボディダイオードの順方向電圧Vfの再測定を行っている。上記のような再測定は数回程度行ってもよく、この場合、複数回の測定結果を平均化した値を最終的な順方向電圧Vfに決定してもよい。
【0058】
図5のように順方向電圧Vfの再測定を行う場合には、期間T12における第1回目の測定と期間T22における第2回目の測定とで、順方向電圧Vfの測定条件を同じにするのが望ましい。具体的には、通電期間T11の開始時点(時刻t1)と通電期間T21の開始時点(時刻t6)とで負荷電流IUの初期値を0にするために、回生期間T12,T13,T14の間に負荷電流IUが0まで減衰しているのが望ましい。さらに、測定開始時点(すなわち、各通電期間T11,T21の終了時点)において負荷電流IUの大きさを等しくするために、通電期間T11の長さと通電期間T21の長さとを等しくするのが望ましい。さらに、ボディダイオードの順方向電圧Vfの測定期間である期間T12の長さと期間T22の長さとを等しくするのが望ましい。
【0059】
[効果]
上記のとおり第1の実施形態の半導体装置50Aによれば、パワーMISFETのボディダイオードの温度特性に基づいてパワーMISFETの接合温度を測定するので、従来方法に比べてより正確にMISFETの接合温度を測定することができる。さらに、サーミスタ、ダイオードなどの温度検出のためのセンサを設ける必要がないので、システムを構成するパーツを従来よりも削減することができる。
【0060】
<第1の実施形態の変形例>
以下、高電位側の電界効果トランジスタTr1に代えて、低電位側の電界効果トランジスタTr2の温度を測定する例について説明する。
【0061】
[温度検出方法]
図6は、第1の実施形態の変形例の場合において、半導体素子の温度検出方法を説明するための図である。
図6の説明図は
図1の説明図に対応するものであり、電界効果トランジスタTr1,Tr2を用いて構成されたハーフブリッジ回路20が示されている。このハーフブリッジ回路20は電力変換装置の少なくとも一部を構成するものと考えてよい。
図6の場合には、接続ノードUと低電位ノード24(低電位ノード24は、電界効果トランジスタTr2とシャント抵抗RESとの接続ノードである)との間に、電界効果トランジスタTr2の並列に負荷としてのインダクタ23が接続される。
【0062】
図6(A)を参照して、電界効果トランジスタTr1がオン(On)状態であり、電界効果トランジスタTr2がオフ(Off)状態であるとする。この場合、高電位ノード21から、電界効果トランジスタTr1、接続ノードU、インダクタ23、低電位ノード24を順に介することによって接地ノード22に到達する通電電流101が流れる。
【0063】
図6(B)を参照して、
図6(A)の状態から電界効果トランジスタTr1がオフ状態になったとする。この場合、接続ノードUから、インダクタ23、低電位ノード24、および電界効果トランジスタTr2のボディダイオードを順に介して接続ノードUに到達する循環電流102が流れる。
【0064】
図6(C)を参照して、
図6(B)の状態から電界効果トランジスタTr2がオン状態になったとする。この場合、接続ノードUから、インダクタ23、低電位ノード24、電界効果トランジスタTr2のNチャネル領域を順に介して接続ノードUに到達する循環電流103が流れる。
【0065】
インダクタ23をPWM制御する場合には、
図6(A)の状態と
図6(C)の状態とが交互に繰り返される。この場合、共にオン状態の電界効果トランジスタTr1,Tr2を介して高電位ノード21と接地ノード22との間に貫通電流が流れることを防止する必要があるので、
図6(A)の状態と
図6の(C)の状態との間に
図6(B)の状態、いわゆるデッドタイムの期間が挟まれる。
【0066】
本実施形態では、
図6(A)の通電電流101が流れる状態から
図6(C)の循環電流103が流れる状態に移行する途中のデッドタイムにおいて電界効果トランジスタTr2のソース・ドレイン間の電圧(すなわち、ボディダイオードのアノード・カソード間の順方向電圧)が検出される。そして、ボディダイオードの温度特性に基づいて電界効果トランジスタTr2の接合温度が検出される。
【0067】
[半導体装置の構成]
次に、実施の形態1の変形例における半導体装置の構成について説明する。
【0068】
図7は、第1の実施形態の変形例による半導体装置の構成を示すブロック図である。
図7の半導体装置50Bは、差動増幅器53の接続が
図4の半導体装置50Aの場合と異なる。
【0069】
具体的に
図7を参照して、差動増幅器53の入力ノードIN1は端子58を介して低電位ノード24と接続される。差動増幅器53の入力ノードIN2はスイッチ57を介して接続ノードUと接続される。
図7のその他の点は
図4の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0070】
[半導体装置の動作]
図8は、
図7の半導体装置の動作を示すタイミング図である。
図8のタイミング図は、
図5のタイミング図に対応するものであり、上から順に、ゲート制御信号VT、VB、制御信号CTL1,CTL2、および接続ノードUの電位VUの各波形が模式的に示されている。以下、主として
図7および
図8を参照して、
図7の半導体装置50Bの動作について説明する。
【0071】
時刻t1より以前は、コントローラ56は、ゲート制御信号VTをLレベルに設定し、ゲート制御信号VBをHレベルに設定する。これによって、高電位側の電界効果トランジスタTr1はオフ状態に制御され、低電位側の電界効果トランジスタTr2はオン状態に制御される。この結果、接続ノードUの電位VUは、低電位ノード24の電位(ほぼ接地電位GND)に等しくなる。時刻t1の時点で
図6の循環電流103は0まで減衰しているとする。
【0072】
なお、時刻t1より以前は、コントローラ56は、制御信号CTL1,CTL2をLレベルに設定する。これにより、サンプル・ホールド回路54のスイッチ70およびスイッチ57はいずれもオフ状態である。
【0073】
時刻t1から時刻t2までの間の期間T11において、コントローラ56は、ゲート制御信号VTをHレベルに設定し、ゲート制御信号VBをLレベルに設定する。これによって、電界効果トランジスタTr1はオン状態に制御され、電界効果トランジスタTr2はオフ状態に制御される。この結果、接続ノードUの電位VUは高電位ノード21の電位VHまで上昇する。この期間T11の間、
図6(A)に示す通電電流101が流れ、その大きさは次第に増加する。
【0074】
時刻t2に、コントローラ56は、ゲート制御信号VTをHレベルからLレベルに切り替える。これによって、高電位側の電界効果トランジスタTr1はオン状態からオフ状態に切り替わり、接続ノードUの電位VUは高電位ノード21の電位VHから下降する。時刻t2から時刻t4までの期間T12の間、電界効果トランジスタTr1,Tr2は共にオフ状態のまま維持される。この期間T12の間、
図6(B)に示す循環電流102が、電界効果トランジスタTr2のボディダイオードに流れる。このため、遅延時間の経過後に最終的に到達する接続ノードUの電位VUは、低電位ノード24の電位(すなわち、接地電位GND)よりもボディダイオードの順方向電圧Vfだけ低くなる。
【0075】
コントローラ56は、時刻t2から所定時間経過した時刻t3から時刻t4までの間、制御信号CTL1,CTL2をHレベルに設定することによって、サンプル・ホールド回路54のスイッチ70とスイッチ57とをオン状態にする。これによって、電界効果トランジスタTr2のソース・ドレイン間の電圧(すなわち、ボディダイオードの順方向電圧Vf)が差動増幅器53によって検出される。そして、差動増幅器53から出力された電圧Vtempは、サンプル・ホールド回路54によってサンプリングされ、コンデンサ71に保持される。コントローラ56は、このコンデンサ71に保持された電圧Vtempに基づいて電界効果トランジスタTr2の接合温度を検知する。
【0076】
次の時刻t4において、コントローラ56は、ゲート制御信号VBをLレベルからHレベルに切り替える。これによって、低電位側の電界効果トランジスタTr2はオフ状態からオン状態に切り替わるので、
図6(C)、
図2、
図3に示すように循環電流の経路が電界効果トランジスタTr2のNチャネル領域を通る経路(103)に切り替わる。さらに、時刻t4に、コントローラ56は、制御信号CTL1,CTL2をHレベルからLレベルに切り替えることによって電界効果トランジスタTr2のソース・ドレイン間電圧のサンプリングを終了させる。時刻t4から時刻t5までの期間T13の間、電界効果トランジスタTr1はオフ状態で維持され、電界効果トランジスタTr2はオン状態で維持される。
【0077】
次の時刻t5において、コントローラ56は、ゲート制御信号VBをHレベルからLレベルに切り替える。これによって、低電位側の電界効果トランジスタTr2はオン状態からオフ状態に切り替わるので、
図6(B)、
図2、
図3に示すように循環電流の経路がボディダイオードを通る経路(102)に切り替わる。時刻t5から時刻t6までの期間T14の間、電界効果トランジスタTr1,Tr2は共にオフ状態に維持される。この期間T14の間では、期間T12の場合と異なり、電界効果トランジスタTr1のソース・ドレイン間電圧のサンプリングは行われない。
【0078】
上記の期間T11〜T14がPWM信号の1周期に相当する。次の期間T21〜T24は、上記の期間T11〜T14にそれぞれ対応し、同様の制御が繰り返される。
【0079】
[効果]
以上の第1の実施形態の変形例の半導体装置50Bによっても、第1の実施形態の半導体装置50Aと同様の効果を奏することができる。
【0080】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、半導体装置50Cによって電力変換装置としてのモータ制御用のインバータ装置25を制御する例について説明する。
【0081】
[半導体装置の構成]
図9は、第2の実施形態による半導体装置の構成を示すブロック図である。
図9の半導体装置50Cは、電力変換装置としてのインバータ装置25(三相ブリッジ回路とも称する)を構成する電界効果トランジスタTr1〜Tr6のオン・オフを制御し、また、上アームの電界効果トランジスタTr1,Tr3,Tr5のボディダイオードのカソード・アノード間電圧を検出するように構成されている。半導体装置50Cとインバータ装置25とはパワーモジュールの一部として構成されていてもよい。
【0082】
図9を参照して、三相モータMは、三相同期モータまたはブラシレスDCモータなどである。三相モータMは、Y結線された固定子巻線L1,L2,L3を有する。
【0083】
インバータ装置25は、U相モータ電流IUを生成するための電界効果トランジスタTr1,Tr2と、V相モータ電流IVを生成するための電界効果トランジスタTr3,Tr4と、W相モータ電流IWを生成するための電界効果トランジスタTr5,電界効果トランジスタTr6とを含む。
図9の場合、電界効果トランジスタTr1〜Tr6はいずれもN型のMISFETである。
【0084】
より詳細には、電界効果トランジスタTr1は高電位ノード21と接続ノードUとの間に接続され、電界効果トランジスタTr2は接続ノードUと低電位ノード24との間に接続される。接続ノードUは固定子巻線L1の一端と接続され、固定子巻線L1の他端は中性点26と接続される。低電位ノード24は、シャント抵抗RESを介して接地ノード22と接続される。
【0085】
同様に、電界効果トランジスタTr3は高電位ノード21と接続ノードVとの間に接続され、電界効果トランジスタTr4は接続ノードVと低電位ノード24との間に接続される。接続ノードVは固定子巻線L2の一端と接続され、固定子巻線L2の他端は中性点26と接続される。
【0086】
同様に、電界効果トランジスタTr5は高電位ノード21と接続ノードWとの間に接続され、電界効果トランジスタTr6は接続ノードWと低電位ノード24との間に接続される。接続ノードWは固定子巻線L3の一端と接続され、固定子巻線L3の他端は中性点26と接続される。
【0087】
なお、モータ電流IU,IV,IWがインバータ装置25から三相モータMの方向に流れる場合、モータ電流IU,IV,IWの符号を正に定義するものとする。
【0088】
半導体装置50Cは、高電位側のゲート駆動回路51U,51V,51Wと、低電位側のゲート駆動回路52U,52V,52Wと、差動増幅器53と、サンプル・ホールド回路54と、A/D(Analog to Digital)変換器55と、コントローラ56と、スイッチSWa,SWb,SWcとを含む。
【0089】
ゲート駆動回路51Uは、コントローラ56からゲート制御信号VTuを受信する。ゲート駆動回路51Uは、ゲート制御信号VTuの基準電位を接地電位GNDから接続ノードUの電位VUに変換すると共に、そのゲート制御信号VTuの信号レベルを増幅することによって、高電位側の電界効果トランジスタTr1のゲート電極G1に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路51Uからゲート電極G1に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr1のオン・オフが制御される。
【0090】
同様に、ゲート駆動回路51Vは、コントローラ56からゲート制御信号VTvを受信する。ゲート駆動回路51Vは、ゲート制御信号VTvの基準電位を接地電位GNDから接続ノードVの電位VVに変換すると共に、そのゲート制御信号VTvの信号レベルを増幅することによって、高電位側の電界効果トランジスタTr3のゲート電極G3に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路51Vからゲート電極G3に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr3のオン・オフが制御される。
【0091】
同様に、ゲート駆動回路51Wは、コントローラ56からゲート制御信号VTwを受信する。ゲート駆動回路51Wは、ゲート制御信号VTwの基準電位を接地電位GNDから接続ノードWの電位VWに変換すると共に、そのゲート制御信号VTwの信号レベルを増幅することによって、高電位側の電界効果トランジスタTr5のゲート電極G5に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路51Wからゲート電極G5に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr5のオン・オフが制御される。
【0092】
ゲート駆動回路52Uは、コントローラ56から受信したゲート制御信号VBuを増幅することによって、低電位側の電界効果トランジスタTr2のゲート電極G2に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路52Uからゲート電極G2に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr2のオン・オフが制御される。
【0093】
同様に、ゲート駆動回路52Vは、コントローラ56から受信したゲート制御信号VBvを増幅することによって、低電位側の電界効果トランジスタTr4のゲート電極G4に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路52Vからゲート電極G4に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr4のオン・オフが制御される。
【0094】
同様に、ゲート駆動回路52Wは、コントローラ56から受信したゲート制御信号VBwを増幅することによって、低電位側の電界効果トランジスタTr6のゲート電極G6に供給する駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路52Wからゲート電極G6に供給される駆動電圧によって、電界効果トランジスタTr6のオン・オフが制御される。
【0095】
差動増幅器53は、
図4で説明したものと同様の構成を有する。差動増幅器53は、入力ノードIN1と入力ノードIN2との電位差に比例した電圧信号を出力ノードOTから出力する。
【0096】
より詳細には、差動増幅器53の入力ノードIN1は、オン・オフが切り替えられるスイッチSWaを介して接続ノードUと接続されることによって接続ノードUの電位VUを取り込み可能である。同様に、差動増幅器53の入力ノードIN1は、オン・オフが切り替えられるスイッチSWbを介して接続ノードVと接続されることによって接続ノードVの電位VVを取り込み可能である。同様に、差動増幅器53の入力ノードIN1は、オン・オフが切り替えられるスイッチSWcを介して接続ノードWと接続されることによって接続ノードWの電位VWを取り込み可能である。入力ノードIN2は、高電位ノード21と接続されることによって高電位ノード21の電位VHを取り込む。出力ノードOTは、サンプル・ホールド回路54と接続される。差動増幅器53は、入力ノードIN1と入力ノードIN2との電位差に比例した電圧信号を出力ノードOTから出力する。
【0097】
サンプル・ホールド回路54の構成は
図4の場合と同じであるので説明を繰り返さない。A/D変換器55は、サンプル・ホールド回路54のコンデンサ71の保持された電圧Vtempをデジタル変換し、デジタル変換された電圧Vtempをコントローラ56に出力する。
【0098】
コントローラ56は、ゲート制御信号VTu,VTv,VTw,VBu,VBv,VBwと、サンプル・ホールド回路54のスイッチ70のオン・オフを制御するための制御信号CTL1と、スイッチSWa,SWb,SWcのオン・オフを制御するための制御信号CTL2を生成する。さらに、コントローラ56は、電圧Vtempが上限値に達した場合には、全ての電界効果トランジスタTr1〜Tr6をオフにするなどの保護動作を行う。
【0099】
[モータ制御方法]
本実施形態では、いずれか2相のみに電流を流す2相励磁方式によって三相モータMが駆動される。この場合、モータ電流が流れる2相は、インバータ装置25によって60度の電気角ごとに切り替えられる。
【0100】
図10は、モータ電流の通電相の切り替えについて説明するための図である。
図10の横軸は電気角を表し、縦軸はモータ電流IU,IV,IWの大きさを模式的に示したものである。前述のように、モータ電流IU,IV,IWがインバータ装置25から三相モータMの方向に流れる場合、モータ電流IU,IV,IWの符号は正に定義される。
【0101】
図10を参照して、電気角が0度から60度の間では、固定子巻線L3から固定子巻線L1の方向にモータ電流が流れるようにインバータ装置25がPWM制御される。したがって、モータ電流IUの値は負であり、モータ電流IVの値は0であり、モータ電流IWの値は正である。
【0102】
電気角が60度から120度の間では、固定子巻線L2から固定子巻線L1の方向にモータ電流が流れるようにインバータ装置25がPWM制御される。したがって、モータ電流IUの値は負であり、モータ電流IVの値は正であり、モータ電流IWの値は0である。
【0103】
電気角が120度から180度の間では、固定子巻線L2から固定子巻線L3の方向にモータ電流が流れるようにインバータ装置25がPWM制御される。したがって、モータ電流IUの値は0であり、モータ電流IVの値は正であり、モータ電流IWの値は負である。
【0104】
電気角が180度から240度の間では、固定子巻線L1から固定子巻線L3の方向にモータ電流が流れるようにインバータ装置25がPWM制御される。したがって、モータ電流IUの値は正であり、モータ電流IVの値は0であり、モータ電流IWの値は負である。
【0105】
電気角が240度から300度の間では、固定子巻線L1から固定子巻線L2の方向にモータ電流が流れるようにインバータ装置25がPWM制御される。したがって、モータ電流IUの値は正であり、モータ電流IVの値は負であり、モータ電流IWの値は0である。
【0106】
電気角が300度から360度の間では、固定子巻線L3から固定子巻線L2の方向にモータ電流が流れるようにインバータ装置25がPWM制御される。したがって、モータ電流IUの値は0であり、モータ電流IVの値は負であり、モータ電流IWの値は正である。
【0107】
[接合温度の検出タイミング]
図10のモータ制御法によれば、通電相を切り替えた後の最初のデッドタイムの期間内において、電界効果トランジスタTr1〜Tr6のボディダイオードの順方向電圧を検出するようにすれば、三相モータMの駆動制御にほとんど影響を与えずに接合温度を検出することができる。なぜなら、今まで通電していなかった固定子巻線に通電を開始した直後の状態では、当該固定子巻線に流す電流の大きさは、定常状態の電流値よりも小さな電流値(たとえば、1〜2A程度)に制御することができるからである。この場合の小さな電流値は、ボディダイオードの順方向電圧Vfの測定に適した値になるように調整される。
【0108】
なお、通電相を切り替えた後の最初の数回のデッドタイムの期間内に電界効果トランジスタのボディダイオードの順方向電圧を検出し、検出した順方向電圧を平均化するようにしてもよい。ただし、第1の実施形態でも説明したように、電界効果トランジスタの接合温度の検出が行われる期間は、電源から負荷に電力を供給する通電期間から回生期間に切り替わったときである点に注意する必要がある。
【0109】
具体的に、固定子巻線L1に直接接続されたU相の上アームの電界効果トランジスタTr1の接合温度を検出する場合について説明する。この場合、固定子巻線L3から固定子巻線L2の方向への通電から固定子巻線L3から固定子巻線L1の方向への通電に切り替えた(
図10の111P、電気角0度)後、最初に電界効果トランジスタTr2をオン状態からオフ状態に切り替えてから電界効果トランジスタTr1をオフ状態からオン状態に切り替えるまでのデッドタイムが、接合温度の検出に用いられる。
【0110】
固定子巻線L1に直接接続されたU相の下アームの電界効果トランジスタTr2の接合温度を検出する場合について説明する。この場合、固定子巻線L2から固定子巻線L3の方向への通電から固定子巻線L1から固定子巻線L3の方向への通電に切替えた(
図10の111N、電気角180度)後、最初に電界効果トランジスタTr1をオン状態からオフ状態に切り替えてから電界効果トランジスタTr2をオフ状態からオン状態に切り替えるまでのデッドタイムが、接合温度の検出に用いられる。
【0111】
同様に、固定子巻線L2に直接接続されたV相の上アームの電界効果トランジスタTr3の接合温度を検出する場合について説明する。この場合、固定子巻線L1から固定子巻線L3の方向への通電から固定子巻線L1から固定子巻線L2の方向への通電に切替えた(
図10の112P、電気角240度)後、最初に電界効果トランジスタTr4をオン状態からオフ状態に切り替えてから電界効果トランジスタTr3をオフ状態からオン状態に切り替えるまでのデッドタイムが、接合温度の検出に用いられる。
【0112】
固定子巻線L2に直接接続されたV相の下アームの電界効果トランジスタTr4の接合温度を検出する場合について説明する。この場合、固定子巻線L3から固定子巻線L1の方向への通電から固定子巻線L2から固定子巻線L1の方向への通電に切り替えた(
図10の112N、電気角60度)後、最初に電界効果トランジスタTr3をオン状態からオフ状態に切り替えてから電界効果トランジスタTr4をオフ状態からオン状態に切り替えるまでのデッドタイムが、接合温度の検出に用いられる。
【0113】
同様に、固定子巻線L3に直接接続されたW相の上アームの電界効果トランジスタTr5の接合温度を検出する場合について説明する。この場合、固定子巻線L2から固定子巻線L1の方向への通電から固定子巻線L2から固定子巻線L3の方向への通電に切り替えた(
図10の113P、電気角120度)後、最初に電界効果トランジスタTr6をオン状態からオフ状態に切り替えてから電界効果トランジスタTr5をオフ状態からオン状態に切り替えるまでのデッドタイムが、接合温度の検出に用いられる。
【0114】
固定子巻線L3に直接接続されたW相の下アームの電界効果トランジスタTr6の接合温度を検出する場合について説明する。この場合、固定子巻線L1から固定子巻線L2の方向への通電から固定子巻線L3から固定子巻線L2の方向への通電に切り替えた(
図10の113N、電気角300度)後、最初に電界効果トランジスタTr5をオン状態からオフ状態に切り替えてから電界効果トランジスタTr6をオフ状態からオン状態に切り替えるまでのデッドタイムが、接合温度の検出に用いられる。
【0115】
なお、
図9の装置構成では上アームのトランジスタTr1,Tr3,Tr5の接合温度しか検出できない。しかし、
図7で説明したように差動増幅器53によって接続ノードU,V,Wと低電位ノード24との間の電位差を検出できるようにすれば、下アームの電界効果トランジスタTr2,Tr4,Tr6の接合温度の検出が可能になる。
【0116】
[温度検出の具体例]
以下、上記のタイミング112P(
図10の場合、電気角240)後の最初のデッドタイムにおいて、V相上アームの電界効果トランジスタTr3の接合温度を検出する場合についてさらに説明する。
【0117】
図11は、第2の実施形態の場合において、電界効果トランジスタの温度検出の具体例を説明するための図である。
【0118】
図11(A)を参照して、電界効果トランジスタTr1,Tr4がオン状態であり、電界効果トランジスタTr2,Tr3,Tr5,Tr6がオフ状態の場合が示されている。この場合、高電位側の電界効果トランジスタTr1、固定子巻線L1、固定子巻線L2、低電位側の電界効果トランジスタTr4の順番でモータ電流が流れる。
【0119】
図11(B)を参照して、
図11(A)の状態から電界効果トランジスタTr4がオフ状態(すなわち、デッドタイム)になったとする。この場合、高電位側の電界効果トランジスタTr1、固定子巻線L1、固定子巻線L2、高電位側の電界効果トランジスタTr3のボディダイオードの順番で循環電流(回生電流とも称する)が流れる。したがって、ボディダイオードの温度特性に基づいて電界効果トランジスタTr3の接合温度を検知することが可能である。
【0120】
図11(C)を参照して、
図11(B)の状態から電界効果トランジスタTr3がオン状態になったとする。この場合、高電位側の電界効果トランジスタTr1、固定子巻線L1、固定子巻線L2、高電位側の電界効果トランジスタTr3のチャネル領域の順番で循環電流(回生電流)が流れる。
【0121】
この後、
図11(B)のデッドタイムの状態を経て、
図11(A)の通電状態に戻るが、
図11(C)の状態の後のデッドタイムでは、電界効果トランジスタTr3の接合温度の検出は行われない。この点は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0122】
図12は、第2の実施形態の場合において、電界効果トランジスタの温度検出手順を示すタイミング図である。
図12では、
図10のタイミング112P(電気角240度)付近の各制御信号の波形と接続ノードVの電位VVの波形とが模式的に示されている。以下、主として
図9および
図12を参照して、電界効果トランジスタTr3の接合温度を検出する場合の半導体装置50Cの動作について説明する。
【0123】
時刻t1(
図10の電気角240度に対応する)の直前の期間では、コントローラ56は、固定子巻線L1から固定子巻線L3の方向に通電電流を流すようにインバータ装置25を制御している。この状態では、コントローラ56は、ゲート制御信号VTu,VBwをHレベルに設定し、ゲート制御信号VBu,VTv,VBv,VTwをLレベルに設定する。これによって、電界効果トランジスタTr1、固定子巻線L1、固定子巻線L3、電界効果トランジスタTr6の順番にモータ電流が流れる。
【0124】
時刻t1において、コントローラ56は、ゲート制御信号VBvをLレベルからHレベルに切り替え、ゲート制御信号VBwをHレベルからLレベルに切り替える。これによって、V相の低電位側の電界効果トランジスタTr4はオフ状態からオン状態に切り替わり、W相の低電位側の電界効果トランジスタTr6はオン状態からオフ状態に切り替わる。この結果、接続ノードVの電位VVは接地電位GNDまで低下する。
【0125】
時刻t1から時刻t2までの期間T11の間、上記の制御信号の状態が維持される。したがって、期間T11の間、
図11(A)に示すように固定子巻線L1から固定子巻線L2の方向にモータ電流(すなわち、通電電流)が流れ、固定子巻線L2に流れる電流の値は0から次第に増加する。なお、
図11(A)に図示していないが、時刻t1の直前の期間で固定子巻線L3を流れていた電流は循環電流として電界効果トランジスタTr5のボディダイオードを流れ、その電流値は次第に減少する。
【0126】
時刻t2に、コントローラ56は、ゲート制御信号VBvをHレベルからLレベルに切り替える。これによって、V相の低電位側の電界効果トランジスタTr4はオン状態からオフ状態に切り替わり、接続ノードVの電位VVは接地電位GNDから上昇する。時刻t2から時刻t4の期間T12の間、この制御信号の状態が維持される。したがって、期間T12の間、
図11(B)に示す循環電流が流れる。この循環電流は電界効果トランジスタTr3のボディダイオードを流れるので、最終的に到達する接続ノードVの電位VVは、高電位ノード21の電位VHよりもボディダイオードの順方向電圧Vfだけ高くなる。
【0127】
接続ノードVの電位VVが最大値に達する遅延時間を考慮して、時刻t2から所定時間経過した時刻t3から時刻t4までの間、電界効果トランジスタTr3のボディダイオードの順方向電圧Vfが検出される。具体的にコントローラ56は、制御信号CTL1,CTL2を制御することによって、サンプル・ホールド回路54のスイッチ70とスイッチSWbとをオン状態にする。これによって、電界効果トランジスタTr3のソース・ドレイン間の電圧(すなわち、ボディダイオードの順方向電圧Vf)が差動増幅器53によって検出される。そして、差動増幅器53から出力された電圧Vtempは、サンプル・ホールド回路54によってサンプリングされ、コンデンサ71に保持される。コントローラ56は、このコンデンサ71に保持された電圧Vtempに基づいて電界効果トランジスタTr3の接合温度を検知する。
【0128】
ここで、ボディダイオードに流れる電流に応じて検出される電圧が変化するので、期間T12に切り替えられる直前の時刻t2における固定子巻線L2に流れるモータ電流IVの大きさを所定の値に制御する必要がある。この値は、期間T11の長さ(すなわち、キャリア周波数に応じた通電率)によって調整することができる。
【0129】
次に時刻t4において、コントローラ56は、ゲート制御信号VTvをLレベルからHレベルに切り替える。これによって、高電位側の電界効果トランジスタTr3はオフ状態からオン状態に切り替わるので、
図11(C)に示すように循環電流の経路が電界効果トランジスタTr3のNチャネル領域を通る経路(
図2、
図3の103)に切り替わる。さらに、時刻t4においてコントローラ56は、制御信号CTL1,CTL2を制御することによって電界効果トランジスタTr3のソース・ドレイン間電圧のサンプリングを終了する。時刻t4から時刻t5までの期間T13の間、コントローラ56から出力される制御信号の状態が維持される。
【0130】
次の時刻t5において、コントローラ56は、ゲート制御信号VTvをHレベルからLレベルに切り替える。これによって、高電位側の電界効果トランジスタTr3はオン状態からオフ状態に切り替わるので、
図11(B)に示すように循環電流の経路がボディダイオードを通る経路(
図2および
図3の102)に切り替わる。時刻t5から時刻t6までの期間T14の間、コントローラ56から出力される制御信号の状態が維持される。
【0131】
この期間T14の間では、期間T12の場合と異なり、電界効果トランジスタTr1のソース・ドレイン間電圧のサンプリングは行われない。期間T12,T13,T14の間に固定子巻線L2を流れる循環電流は次第に減衰する(場合によっては0まで戻る)ので、期間T14ではボディダイオードの順方向電圧Vfの正確な測定ができないからである。
【0132】
上記の期間T11〜T14がPWM信号の1周期に相当する。次の期間T21〜T24は、上記の期間T11〜T14にそれぞれ対応し、同様の制御が繰り返される。
【0133】
図12の場合には、電界効果トランジスタTr3の接合温度の測定は、期間T12のみで行われる。この場合、デッドタイム期間T12,T14,T22,T24のうち、接合温度の測定が行われる期間T12の長さは、電圧Vtempのサンプリングに必要な時間だけ長くする必要がある。これに対して、他の期間T14,T22,T24の長さについては、損失を減らして各電界効果トランジスタTrの発熱を抑制するために、できるだけ短くするのが望ましい。したがって、期間T12の長さは、期間T14,T22,T24の長さよりも長い。
【0134】
差動増幅器53の遅延時間が十分に短く、サンプル・ホールド回路54のサンプリング速度およびA/D変換器55のAD変換速度が十分に高速な場合には、もしくは、ボディダイオードを介した電流経路での損失が問題にならない場合には、期間T12,T14,T22,T24の長さを互いに等しく設定しても構わない。
【0135】
[コントローラの動作]
以下、これまでの説明を総括して、
図9のコントローラ56の動作について説明する。
【0136】
図13は、コントローラの動作を示す機能ブロック図である。
図13を参照して、コントローラ56は、PWM信号生成部80と、温度検出タイミング判定部81と、デッドタイム付加部82と、制御信号生成部83とを含む。
【0137】
PWM信号生成部80は、モータ電流IU,IV,IWの検出値およびロータ(回転子とも称する)の位置の検出値の情報を定期的に取得する。モータ電流を検出するために、たとえば、インバータ装置25と三相モータMとの間の各相の電線路に電流検出抵抗を設けてもよいし、インバータ装置25の下アームの電界効果トランジスタTr2,Tr4,Tr6の各々と低電位ノード24との間に電流検出抵抗を設けてもよい。ロータの位置を検出するためにホール素子、レゾルバを三相モータMに設けてもよい。もしくは、モータ電流IU,IV,IWに基づいてロータの位置を推定するようにしてもよい(センサレス方式と称する)。
【0138】
PWM信号生成部80は、回転速度を制御する場合には、これらのモータ電流IU,IV,IWの検出値およびロータ(回転子とも称する)の位置の検出値に基づいて、外部から与えられた回転速度の指令値に実測値が等しくなるように、PWM信号であるゲート制御信号VTu*,VBu*,VTv*,VBv*,VTw*,VBw*を生成する。この時点ではデッドタイムは付加されていない。
【0139】
温度検出タイミング判定部81は、ロータの位置の検出値に基づいて各相の電界効果トランジスタの接合温度を検出するタイミングを判定する。具体的には
図10で説明したように、温度検出タイミング判定部81は、各相の固定子巻線L1,L2,L3へのモータ電流の供給を切り替えたタイミングから所定時間(または所定数のPWM周期)の間、温度検出中を表す信号を出力する。
【0140】
デッドタイム付加部82は、PWM信号生成部80から出力されたゲート制御信号VTu*,VBu*,VTv*,VBv*,VTw*,VBw*にデッドタイムを付加することによって、ゲート駆動回路51U,52U,51V,52V,51W,52Wにそれぞれ出力するゲート制御信号VTu,VBu,VTv,VBv,VTw,VBwを生成する。具体的に、高電位ノード21と低電位ノード24との間に互いに直列に接続された2個の電界効果トランジスタ(Tr1,Tr2;Tr3,Tr4;Tr5,Tr6)のうち一方のトランジスタをオン状態からオフ状態に切り替えかつ他方のトランジスタをオフ状態からオン状態に切り替える場合にデッドタイムが付加される。この場合、一方のトランジスタがオフ状態に切り替えられてからデッドタイムの経過後に他方のトランジスタがオン状態に切り替えられる。
【0141】
付加されるデッドタイムの長さは、電界効果トランジスタの接合温度を検出中であるか否かによって異なる。具体的に、差動増幅器53によって対応のノード間の電位差を検出しているときのデッドタイムの長さは、差動増幅器53によって電位差を検出していないときのデッドタイムの長さよりも長い。
【0142】
制御信号生成部83は、デッドタイム付加部82によってデッドタイムが付加されたゲート制御信号VTu,VBu,VTv,VBv,VTw,VBwと温度検出タイミング判定部81の出力とに基づいて、サンプル・ホールド回路54に出力する制御信号CTL1と、スイッチSWa,SWb,SWcに出力する制御信号CTL2とを生成する。
【0143】
上記のPWM信号生成部80、温度検出タイミング判定部81、デッドタイム付加部82、および制御信号生成部83の各機能は、CPUおよびメモリなどを含むマイクロコンピュータによって実現してもよいし、FPGAを利用して実現してもよいし、専用の回路によって実現してもよい。また、上記の各機能は、これらの回路を任意に組み合わせることによって実現してもよい。
【0144】
図14は、
図13のデッドタイム付加部の動作を示すフローチャートである。
図13および
図14を参照して、ステップS100において、デッドタイム付加部82は、PWM信号生成部80から受信した各相のPWM信号(VTu*,VBu*;VTv*,VBv*;VTw*,VBw*)について論理レベルを切り替えるタイミングであるか否かを判定する。
【0145】
ある相(以下、X相とする、X=U,V,W)のPWM信号について論理レベルを切り替えるタイミングである場合には(ステップS100でYES)、デッドタイム付加部82は、さらにステップS110において、温度検出タイミング判定部81から温度検出中を示す信号を受信しているか否かを判定する。
【0146】
上記の判定の結果、温度検出タイミング判定部81から温度検出中を示す信号を受信している場合には(ステップS110でYES)、デッドタイム付加部82は、さらに、X相のPWM信号の論理レベルの変化によって三相モータMへの電流の流れが通電電流から回生電流に変化するか否かを判定する。
【0147】
具体的に、通電電流が流れていることは、いずれか1つの相の上アームの電界効果トランジスタがオン状態に制御されていると共に他の1つの相の下アームの電界効果トランジスタがオン状態に制御されていることによって判定できる。回生電流が流れていることは、上記の通電電流が流れている場合においてオン状態に制御されている電界効果トランジスタのうちいずれか1つがオフ状態になったことによって判定できる。
【0148】
上記の判定によって電流の流れが通電から回生に変化したと判定された場合には(ステップS130でYES)、ステップS140において、デッドタイム付加部82は、通常のデッドタイムTD1よりも長いデッドタイムTD2の間、X相のPWM信号VTx,VBxを共にLレベルにする。一方、温度検出中でない場合(ステップS110でNO)、または、電流の流れが通電から回生に変化していない場合には(ステップS130でNO)、ステップS120において、デッドタイム付加部82は、通常のデッドタイムTD1の間、X相のPWM信号VTx,VBxを共にLレベルにする。
【0149】
デッドタイム(TD1またはTD2)の経過後に、デッドタイム付加部82は、X相のPWM信号VTx,VBxのHレベルとLレベルとを切り替える(ステップS150)。
【0150】
[効果]
第2の実施形態の半導体装置によれば、三相モータを制御するインバータ装置を構成する少なくとも1つのMISFETの接合温度を従来よりも精度良く検出することができる。さらに、サーミスタ、ダイオードなどの温度検出のためのセンサを設ける必要がないので、システムを構成するパーツを従来よりも削減することができる。
【0151】
また、三相モータの通電相を切り替えた後の最初のデッドタイムの期間内に接合温度を測定することによって、三相モータの動作にほとんど影響を与えることなくリアルタイムでMISFETの接合温度を検出することができる。
【0152】
<変形例>
電力変換装置を構成するブリッジ回路の構成は特に限定されない。たとえば、Hブリッジ(フルブリッジ)の場合にも上述した接合温度の検出方法を適用することができる。具体的にHブリッジの場合は、前述した
図11において、電界効果トランジスタTr5,Tr6と固定子巻線L3とが存在しないものと考えれば、
図11を参照した前述の動作説明がそのまま成立する。
【0153】
また、第1の実施形態のハーフブリッジ回路20を構成する電界効果トランジスタTr1,Tr2および第2の実施形態のインバータ装置25を構成する電界効果トランジスタTr1〜Tr6はいずれもN型であるとしたが、これらのトランジスタはいずれもP型であっても構わない。この場合、ゲート制御信号VT,VBの論理レベルがN型の場合と反転するが、温度検出に関する回路はN型の場合とほぼ同様に動作する。また、上記の電界効果トランジスタTr1〜Tr6は、N型とP型とが混在していてもよい。
【0154】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。